JP3993721B2 - スパッタリングターゲット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スパッタリング法により薄膜を製造する際に使用されるスパッタリングターゲットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スパッタリングターゲットは、一般的にターゲット部材がバッキングプレートとに接合された構造を有している。ターゲット部材とバッキングプレートとの接合方法としては、インジウム半田等の接合剤によるろう付け法が一般的であり、製造設備を導入する際のコストが低く、またフラットパネルディスプレイ用の大型サイズのターゲットに対しても比較的容易に適応できるという利点を有している。
【0003】
特に液晶表示装置を始めとしたフラットパネルディスプレイ分野では近年大型化および高精細化が進んでおり、その表示用電極であるITO(Indium Tin Oxide)薄膜は高導電性、高透過率といった特徴を有し、更に微細加工も容易に行えることから、需要が急速に高まっている。
【0004】
このようなITO薄膜は、例えば、酸化インジウムと酸化スズとからなる複合酸化物ターゲットをバッキングプレートに接合したスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法により製造されている。
【0005】
ITOターゲットをアルゴンガスと酸素ガスとの混合ガス雰囲気中で連続してスパッタリングした場合、積算スパッタリング時間の増加と共にターゲット表面にはノジュールと呼ばれる黒色の付着物が析出する。インジウムの低級酸化物と考えられているこの黒色の付着物は、ターゲットのエロージョン部の周囲に析出するため、スパッタリング時の異常放電の原因となりやすく、またそれ自身が異物(パーティクル)の発生源となることが知られている。
【0006】
その結果、連続してスパッタリングを行うと、形成された薄膜中に異物欠陥が発生し、これが液晶表示装置等のフラットパネルディスプレイの製造歩留まりを低下させる原因となっていた。特に近年、フラットパネルディスプレイの分野では、高精細化が進んでおり、このような薄膜中の異物欠陥は素子の動作不良を引き起こすため、特に解決すべき重要な課題となっていた。
【0007】
このような問題を解決するため、例えば特開平8−60352号のように、ターゲットの密度を6.4g/cm3以上とするとともにターゲットの表面粗さを制御することにより、ノジュールの発生を低減できることが報告されている。
【0008】
しかしながら、近年、液晶表示素子の高精細化、高性能化にともない形成される薄膜の性能を向上させることを目的として、低い印加電力で放電を行う成膜方法が採用されるようになってきた。この低い印加電力での成膜により、上記のような手法を取り入れたターゲットを用いた場合においても、ノジュールが発生し問題となってきている。これは、印加電力が低下されたことにより、一度発生したノジュールの核が、強い印加電力によって消滅することなく、掘れ残りの核となる確率が増加したことによると考えられている。
【0009】
一方、ITO薄膜以外を使用したフラットパネルディスプレイの分野でも高精細化が進み、また、記録媒体分野では高記録密度化が進むのに伴い、スパッタリング法による成膜の際に基板に付着し、製品の歩留まり低下の原因となるパーティクル低減に対する要求が強まっている。
【0010】
パーティクルの生成原因としては、成膜装置に起因するもの、ターゲットの非エロージョン部に堆積した粒子がターゲット表面から剥離したもの等が知られており、これらに対しては成膜装置の改良やターゲットの改良によって低減されつつあるが、更なる改善が望まれている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、ノジュールの発生しやすい、低い印加電力で放電を行う成膜方法を用いた場合においてもターゲット表面に発生するノジュール量を低減できるITOスパッタリングターゲットを提供することにある。
【0012】
また、本発明の別の課題は、パーティクル発生量の少ないスパッタリングターゲットを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、ITOスパッタリングターゲットのノジュールの発生量を低減させるため、ノジュールの形成原因について詳細な検討を行った。その結果、一部のノジュールは、ITO焼結体とバッキングプレートとの接合に用いているハンダ材である金属インジウムが、スパッタリング中にターゲット表面のエロージョン部に付着し、付着した金属インジウムを核としてターゲットが掘れ残り、ノジュールとなることを発見した。金属インジウムが、掘れ残りを発生させる核となる原因は未だ明らかではないが、ターゲット表面に付着した金属インジウムは、スパッタリングガス中に含まれる酸素と反応して酸化インジウムを形成し、この酸化インジウムはITOと比べて抵抗率が非常に高いために掘れ残るものと考えられる。
【0014】
更に本発明者等は、ITOスパッタリングターゲットを含む、ターゲット部材とバッキングプレートとが接合剤により接合されているスパッタリングターゲットについても検討を行った結果、接合材が、スパッタリング中に弾き出されて基板に付着し、0.5〜3μm程度のパーティクルとなる現象が発生していることを発見した。
【0015】
そこで本発明者等は、スパッタリングターゲットの構造について詳細な検討を行った結果、図1に示すようにバッキングプレートとして台状の突出部分を有するバッキングプレート3を用いた場合、突出部分に接合するターゲット部材1をバッキングプレートの突出部分よりも大きく加工し、突出部分の一部あるいは全周に渡り、張り出させた状態で接合剤2を用いてボンディングしてなるスパッタリングターゲットが、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
即ち、本発明は、ターゲット部材を、台状の突出部分を有するバッキングプレートの突出部分に接合剤により接合してなるスパッタリングターゲットにおいて、ターゲット部材の接合部を含む面の面積が、バッキングプレート上の突出部分により形成される接合面の面積より大きいターゲット部材であることを特徴とするスパッタリングターゲット、又は、ターゲット部材を、台状の突出部分を有するバッキングプレートの突出部分に接合剤により接合してなるスパッタリングターゲットにおいて、ターゲット部材が、突出部分をすべて覆い、かつ、突出部分の一部あるいは全周に渡って張り出した形状であることを特徴とするスパッタリングターゲットに関する。
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明に使用できるターゲット部材としては、特に限定されるものではなく、例えば、実質的にインジウム、スズおよび酸素からなるITO焼結体等の酸化物焼結体やアルミニウム、クロム、チタンおよびニッケル等の金属単体焼結体および合金焼結体を挙げることができ、また、その製造方法も、特に限定されるものでなく、粉末冶金法、溶解法、鍛造法、圧延法およびこれらを組み合わせた方法等を挙げることができる。
【0019】
以下、ITO焼結体とクロム金属焼結体を例として、その製造方法の一例を示すが、本発明のターゲット部材として使用可能な焼結体は、これらの限定されるものではない。
【0020】
(1) ITO焼結体によるターゲット部材の製造方法
始めに、酸化インジウム粉末と酸化スズ粉末との混合粉末或いはITO粉末等にバインダー等を加え、プレス法或いは鋳込法等の成形方法により成形してITO成形体を製造する。この際、使用する粉末の平均粒径が大きいと焼結後の密度が充分に上昇しない場合があるので、使用する粉末の平均粒径は1.5μm以下であることが望ましく、更に好ましくは0.1〜1.5μmである。こうすることにより、より焼結密度の高い焼結体を得ることが可能となる。
【0021】
また、混合粉末またはITO粉末中の酸化スズ含有量は、スパッタリング法により薄膜を製造した際に比抵抗が低下する5〜15重量%とすることが望ましい。
【0022】
次に得られた成形体に必要に応じて、CIP等の圧密化処理を行う。この際CIP圧力は充分な圧密効果を得るため2ton/cm2以上、好ましくは2〜3ton/cm2であることが望ましい。ここで始めの成形を鋳込法により行った場合には、CIP後の成形体中に残存する水分およびバインダー等の有機物を除去する目的で脱バインダー処理を施してもよい。また、始めの成形をプレス法により行った場合でも、成型時にバインダーを使用したときには、同様の脱バインダー処理を行うことが望ましい。
【0023】
このようにして得られた成形体を焼結炉内に投入して焼結を行う。焼結方法としては、いかなる方法でも用いることができるが、生産設備のコスト等を考慮すると大気中焼結が望ましい。しかしこの他HP法、HIP法および酸素加圧焼結法等の従来知られている他の焼結法を用いることができることは言うまでもない。
【0024】
焼結条件についても適宜選択することができるが、充分な密度上昇効果を得るため、また酸化スズの蒸発を抑制するため、焼結温度が1450〜1650℃であることが望ましい。焼結時の雰囲気としては大気或いは純酸素雰囲気であることが好ましい。また焼結時間についても充分な密度上昇効果を得るために5時間以上、好ましくは5〜30時間であることが望ましい。
【0025】
こうすることにより、焼結密度の高いITO焼結体を得ることができる。本発明においては、使用するITO焼結体の密度は特に限定されないが、焼結体のポアのエッジ部での電界集中による異常放電やノジュールの発生をより抑制するため、相対密度で99%以上とすることが好ましく、より好ましくは99.5%以上である。
【0026】
(2) クロム金属焼結体によるターゲット部材の製造方法
始めに、平均粒径70μm以下のクロム粉末をゴム製の成形型に充填する。この際、使用する粉末の酸素含有量が高いとスパッタリングの際に異常放電が生じやすくなり、また得られた薄膜の抵抗値も高くなる場合があるため、酸素含有量は300ppm以下が好ましく、更に好ましくは150ppm以下である。こうすることにより、より安定な放電特性と、低い抵抗値を有するクロム薄膜を得ることが可能となる。
【0027】
次に、クロム粉末が充填されたゴム型に対してCIP等の圧密化処理を行う。この際CIP圧力は充分な圧密効果を得るため1ton/cm2以上、好ましくは2〜3ton/cm2であることが望ましい。
【0028】
このようにして得られた成形体を焼結炉内に投入して焼結を行う。焼結方法としては、真空焼結法、ホットプレス法やHIP法等いずれの方法も用いることができるが、より高密度の焼結体を得るためにはHIP焼結法が望ましい。
【0029】
焼結条件についても適宜選択することができるが、充分な密度上昇効果を得るため、焼結温度が1100℃〜1700℃であることが望ましい。焼結時の雰囲気としては真空雰囲気であることが好ましい。また焼結時間についても充分な密度上昇効果を得るために0.5時間以上、好ましくは1〜3時間であることが望ましい。
【0030】
こうすることにより、焼結密度の高いクロム焼結体を得ることができる。本発明においては、使用するクロム焼結体の密度は特に限定されないが、焼結体のポアのエッジ部での電界集中による異常放電やノジュールの発生をより抑制するため、相対密度で99%以上とすることが好ましく、より好ましくは99.5%以上である。
【0031】
続いて上記のような方法により製造された焼結体を所望の大きさに研削加工する。この加工は、焼結体の接合部を含む面の面積が、バッキングプレート上の突出部分(台座)により形成される接合面の面積より大きくなるように加工すればよく、具体的には、焼結体が接合した際、台座部分をすべて覆い、かつ、台座の一部あるいは全周に渡って張り出した形状となるようにすればよい。
【0032】
接合面から見た台座の形状としては、正方形、長方形等の多角形、円形、楕円等、任意の形状とすることが可能である。
【0033】
張り出す度合いとしては、例えば方形のターゲットにおいては、台座から張り出す長さを各辺とも0.5mm〜3.0mmとすることが好ましく、更に好ましくは、2mm〜3mmとする。張り出しの長さが、0.5mmより小さくなると本発明によって得られる効果が小さくなる場合があり、3.0mmを超えると、本発明の効果は得られるものの不必要に焼結体の大きさが大きくなってコスト高となってしまう。また、円形のターゲットにおいても張り出し部分の長さを0.5mm〜3.0mmの範囲とすることが好ましい。
【0034】
また、この台座から張り出させる部分は、台座を形成する各辺の一部であっても本発明による効果を得ることができるが、全周に渡らせることによってより大きな効果を得ることができ好ましい。
【0035】
さらに、焼結体の接合面で台座より張り出した部分に関しては、接合剤が付着していないことが好ましい。
【0036】
図2に示すように、複数枚の焼結体を単一のバッキングプレート上に接合するような分割ターゲットで、前記分割ターゲットを構成する焼結体の一部分だけが、バッキングプレートの台座上に接合されるようなスパッタリングターゲットにおいては、台座上に設置される焼結体の4辺の内、隣接する他の焼結体と隣り合っていない辺(辺a−a'及び辺b−b')のみを張り出させることが好ましい。
【0037】
次に、前記焼結体のスパッタリング面を機械的に研磨し、被スパッタリング面の表面粗さを制御する。ITO焼結体の場合、Raが0.8μm以下、かつ、Rmaxが7.0μm以下に加工することが好ましい。より好ましくは、Raが0.1μm以下、かつ、Rmaxが2μm以下である。一方、金属単体/合金焼結体の場合、Raが5.0μm以下、より好ましくは、Raが3.5μm以下に加工することが好ましい。こうすることにより、ターゲット表面の凹凸部で発生する異常放電や異常放電によるノジュールの形成を効果的により抑制することが可能となる。
【0038】
焼結体がITOの場合、高密度であるほど硬度が高く、研削加工中に焼結体内部にクラックを生じ易いので、加工は湿式加工で行うことが望ましい。
【0039】
このようにして得られた、焼結体をバッキングプレート上に接合する。本発明に使用されるバッキングプレートは特に限定されないが、無酸素銅およびリン青銅等があげられる。
【0040】
接合は、例えば、次に示すような工程で行えばよい。まず、焼結体とバッキングプレートとを使用する接合剤の融点以上に加熱する。次に加熱された焼結体およびバッキングプレートの接合面に接合剤を塗布する。接合剤としては、インジウム半田等が好ましい。このとき、焼結体の接合面であってバッキングプレートの台座からはみ出す部分には、接合剤が付着しないようにポリイミド等の耐熱性のテープで被覆することが望ましい。
【0041】
次に接合剤塗布済みの焼結体とバッキングプレートの接合面同士を合わせてバッキングプレートの台座上の所望の位置に接合し、室温まで冷却することにより、本発明のスパッタリングターゲットを得ることができる。
【0042】
スパッタリングに際し、スパッタリングガスとしては、アルゴンなどの不活性ガスなどに必要に応じて酸素ガスや窒素ガスなどが加えられ、通常2〜10mTorrにこれらのガス圧を制御しながら、放電が行われる。放電のための電力印可方式としては、DC、RFあるいはこれらを組み合わせたものが使用可能であるが、放電の安定性を考慮し、DCあるいはDCにRFを重畳したものが好ましい。
【0043】
ターゲットに加えられる電力密度については特に制限はないが、ITO焼結体を用いたスパッタリングターゲットでは、近年の低電力放電(2.0W/cm2以下)の条件下において、特に有効である。
【0044】
また、本発明によるスパッタリングターゲットは、ターゲットに付加機能を持たせることを目的として、ターゲット部材に他の元素を添加してもよい。例えば、ITOターゲット部材として添加可能な第3元素としては、例えば、Mg,Al,Si,Ti,Zn,Ga,Ge,Y,Zr,Nb,Hf,Ta等を例示することができる。これら元素の添加量は、特に限定されるものではないが、ITOの優れた電気光学的特性を劣化させないため、(第3元素の酸化物の総和)/(ITO+第3元素の酸化物の総和)/100で0%を超え20%以下(重量比)とすることが好ましい。
【0045】
また、ITOターゲットと同様、ターゲットに付加機能を持たせるために、アルミニウムターゲット部材として添加可能な第2元素としては、例えば、Ti,Zr,Si,Cu,Y,Ta,Nd等を例示することができ、クロムターゲット部材として添加可能な第2元素としては、例えば、Ti,B,Mo,Zr,Si,Cu,Ta,W、Mn,Ta等を例示することができ、チタンターゲット部材として添加可能な第2元素としては、例えば、Al,Zr,Si,Cu,Ta,Nd,Ni,Mo,W等を例示することができ、ニッケルターゲット部材として添加可能な第2元素としては、例えば、Ti,Cr,Al,Zr,Si,Cu,Y,Ta,Mo,W,Ti,Mn等を例示することができる。
【0046】
これら添加元素の数は1種または2種類以上でもよく、また、添加量については、特に限定されるものではないが、ターゲットの特性を劣化させないため、ターゲット部材中に占める添加元素の総和が0%を超え50%以下(原子比)とすることが好ましい。
【0047】
【実施例】
以下、本発明を実施例をもって更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
実施例1
平均粒径1.3μmの酸化インジウム粉末900gと平均粒径0.7μmの酸化スズ粉末100gをポリエチレン製のポットに入れ、乾式ボールミルにより72時間混合し、混合粉末を製造した。前記混合粉末のタップ密度を測定したところ2.0g/cm3であった。
【0049】
この混合粉末を金型に入れ、300kg/cm2の圧力でプレスして成形体とした。この成形体を3ton/cm2の圧力でCIPによる緻密化処理を行った。次にこの成形体を純酸素雰囲気焼結炉内に設置して、以下の条件で焼結した。
【0050】
(焼結条件)
焼結温度:1500℃、昇温速度:25℃/Hr、焼結時間:10時間、焼結炉への導入ガス:酸素、導入ガス線速:2.6cm/分、
得られた焼結体の密度をアルキメデス法により測定したところ7.11g/cm3(相対密度:99.4%)であった。
【0051】
この焼結体を湿式加工法により102.6mm×178.8mm、厚さ6mmの焼結体に加工し、さらに焼結体のスパッタリング面の表面粗さをRa=0.7μm、Rmax=5.5μmに機械加工した。
【0052】
次に、この焼結体のボンディング面の周囲を幅0.5mmで全周に渡ってポリイミドテープでマスキングを行った。このようにして得られた、焼結体とバッキングプレートを156℃まで加熱した後、それぞれの接合面にインジウム半田を塗布した。次に、焼結体をバッキングプレートの101.6mm×177.8mm、高さ1mmの台座上に、張り出し部分が各辺とも0.5mmとなる位置に配置した後、室温まで冷却し、マスキング用に使用したポリイミドテープを剥離してターゲットとした。
【0053】
このターゲットを以下のスパッタリング条件でスパッタリングを行った。
【0054】
DC電力 :300w
スパッタガス:Ar+O2
ガス圧 :5mTorr
O2/Ar :0.1%
以上の条件により連続的にスパッタリング試験を60時間実施した。放電後のターゲットの外観写真をコンピュータを用いて画像処理を行いノジュール発生量を調べた。その結果、ターゲット表面の20%の部分にノジュールが発生していた。
【0055】
実施例2
実施例1と同じ条件でITO焼結体を製造した。得られた焼結体の密度をアルキメデス法により測定したところ7.11g/cm3(相対密度:99.4%)であった。
【0056】
この焼結体を湿式加工法により107.6mm×183.8mm、厚さ6mmの焼結体に加工し、さらに焼結体のスパッタリング面の表面粗さをRa=0.7μm、Rmax=5.5μmに機械加工した。
【0057】
次に、この焼結体のボンディング面の周囲を幅3.0mmで全周に渡ってポリイミドテープでマスキングを行った。このようにして得られた、焼結体とバッキングプレートを156℃まで加熱した後、それぞれの接合面にインジウム半田を塗布した。次に、焼結体をバッキングプレートの101.6mm×177.8mm、高さ1mmの台座上に、張り出し部分が各辺とも3.0mmとなる位置に配置した後、室温まで冷却し、マスキング用に使用したポリイミドテープを剥離してターゲットとした。
【0058】
このターゲットを実施例1と同様のスパッタリング条件で連続的にスパッタリング試験を60時間実施した。放電後のターゲットの外観写真をコンピュータを用いて画像処理を行いノジュール発生量を調べた。その結果、ターゲット表面の15%の部分にノジュールが発生していた。
【0059】
実施例3
実施例1と同じ条件でITO焼結体を製造した。得られた焼結体の密度をアルキメデス法により測定したところ7.11g/cm3(相対密度:99.4%)であった。
【0060】
この焼結体を湿式加工法により107.6mm×183.8mm、厚さ6mmの焼結体に加工し、さらに焼結体のスパッタリング面の表面粗さをRa=0.08μm、Rmax=1.1μmに機械加工した。
【0061】
次に、この焼結体のボンディング面の周囲を幅3.0mmで全周に渡ってポリイミドテープでマスキングを行った。このようにして得られた、焼結体とバッキングプレートを156℃まで加熱した後、それぞれの接合面にインジウム半田を塗布した。次に、インジウム半田を用いて焼結体をバッキングプレートの101.6mm×177.8mm、高さ1mmの台座上に、張り出し部分が各辺とも3.0mmとなる位置に配置した後、室温まで冷却し、マスキング用に使用したポリイミドテープを剥離してターゲットとした。
【0062】
このターゲットを実施例1と同様のスパッタリング条件で連続的にスパッタリング試験を60時間実施した。放電後のターゲットの外観写真をコンピューターを用いて画像処理を行いノジュール発生量を調べた。その結果、ターゲット表面の4%の部分にノジュールが発生したにすぎなかった。
【0063】
比較例1
実施例1と同じ条件でITO焼結体を製造した。得られた焼結体の密度をアルキメデス法により測定したところ7.11g/cm3(相対密度:99.4%)であった。
【0064】
この焼結体を湿式加工法により101.6mm×177.8mm、厚さ6mmの焼結体に加工し、さらに焼結体のスパッタリング面の表面粗さをRa=0.7μm、Rmax=5.5μmに機械加工した。
【0065】
このようにして得られた、焼結体とバッキングプレートを156℃まで加熱した後、それぞれの接合面にインジウム半田を塗布した。次に、焼結体をバッキングプレートの101.6mm×177.8mm、高さ1mmの台座上に、各辺とも焼結体が台座から張り出さない位置に配置した後、室温まで冷却し、ターゲットとした。
【0066】
このターゲットを実施例1と同様のスパッタリング条件で連続的にスパッタリング試験を60時間実施した。放電後のターゲットの外観写真をコンピュータを用いて画像処理を行いノジュール発生量を調べた。その結果、ターゲット表面の59%の部分にノジュールが発生していた。
【0067】
実施例4
平均粒径60μmのクロム粉末(酸素含有量:150ppm)をゴム製の型に入れ、脱気封入した。このゴム型3ton/cm2の圧力でCIPによる緻密化処理を行った。次にこの成形体をゴム型から取出し、所望の形に加工した後、鉄製のカプセルに充填した。この際、成形体及び鉄製カプセルを加熱しながらカプセル内部を真空装置で脱気処理し、所望の真空度に到達した後封止した。HIP焼結は、温度:1300℃、圧力:1500kg/cm2、保持時間:2時間の条件で実施した。
【0068】
得られた焼結体の密度をアルキメデス法により測定したところ7.19g/cm3(相対密度:100%)であった。
【0069】
この焼結体を湿式加工法により102.6mm×178.8mm、厚さ6mmの焼結体に加工し、さらに焼結体のスパッタリング面の表面粗さをRa=1.8μmに機械加工した。
【0070】
次に、この焼結体のボンディング面の周囲を幅0.5mmで全周に渡ってポリイミドテープでマスキングを行った。このようにして得られた焼結体とバッキングプレートとを156℃まで加熱した後、それぞれの接合面にインジウム半田を塗布した。次に、焼結体をバッキングプレートの101.6mm×177.8mm、高さ1mmの台座上に、張り出し部分が各辺とも0.5mmとなる位置に配置した後、室温まで冷却し、マスキング用に使用したポリイミドテープを剥離してターゲットとした。
【0071】
このターゲットを以下のスパッタリング条件でスパッタリングを行った。
【0072】
DC電力 :2kW
スパッタガス:Ar
ガス圧 :5mTorr
以上の条件により連続的にスパッタリング試験を10時間実施した後、同スパッタリング条件にて、ガラス基板上に膜厚300nmのクロム薄膜を形成し、SEM/EDSを用いて表面解析を実施したところクロム以外の不純物は確認されなかった。
【0073】
実施例5
実施例4と同じ条件でクロム焼結体を製造した。得られた焼結体の密度をアルキメデス法により測定したところ7.19g/cm3(相対密度:100%)であった。
【0074】
この焼結体を湿式加工法により107.6mm×183.8mm、厚さ6mmの焼結体に加工し、さらに焼結体のスパッタリング面の表面粗さをRa=1.6μmに機械加工した。
【0075】
次に、この焼結体のボンディング面の周囲を幅3.0mmで全周に渡ってポリイミドテープでマスキングを行った。このようにして得られた焼結体とバッキングプレートとを156℃まで加熱した後、それぞれの接合面にインジウム半田を塗布した。次に、焼結体をバッキングプレートの101.6mm×177.8mm、高さ1mmの台座上に、張り出し部分が各辺とも3.0mmとなる位置に配置した後、室温まで冷却し、マスキング用に使用したポリイミドテープを剥離してターゲットとした。
【0076】
このターゲットを実施例4と同様のスパッタリング条件で連続的にスパッタリング試験を10時間実施した後、同スパッタリング条件にて、ガラス基板上に膜厚300nmのクロム薄膜を形成し、SEM/EDSを用いて表面解析を実施したところクロム以外の不純物は確認されなかった。
【0077】
実施例6
平均粒径50μmのアルミニウム粉末をゴム製の型に入れ、脱気封入した。このゴム型3ton/cm2の圧力でCIPによる緻密化処理を行った。次にこの成形体をゴム型から取出し、所望の形に加工した後、アルミニウム製のカプセルに充填した。この際、成形体及びアルミニウム製カプセルを加熱しながらカプセル内部を真空装置で脱気処理し、所望の真空度に到達した後封止した。HIP焼結は、温度:500℃、圧力:1500kg/cm2、保持時間:2時間の条件で実施した。
【0078】
得られた焼結体の密度をアルキメデス法により測定したところ2.70g/cm3(相対密度:100%)であった。
【0079】
この焼結体を湿式加工法により102.6mm×178.8mm、厚さ6mmの焼結体に加工し、さらに焼結体のスパッタリング面の表面粗さをRa=1.7μmに機械加工した以外は実施例4と同様にターゲットを製造し、連続的にスパッタリング試験を10時間実施した後、同スパッタリング条件にてガラス基板上に膜厚300nmのアルミニウム薄膜を形成し、SEM/EDSを用いて表面解析を実施したところ、アルミニウム以外の不純物は確認されなかった。
【0080】
実施例7
平均粒径40μmのチタン粉末をゴム製の型に入れ、脱気封入した。このゴム型3ton/cm2の圧力でCIPによる緻密化処理を行った。次にこの成形体をゴム型から取出し、所望の形に加工した後、鉄製のカプセルに充填した。この際、成形体及び鉄製カプセルを加熱しながらカプセル内部を真空装置で脱気処理し、所望の真空度に到達した後封止した。HIP焼結は、温度:1000℃、圧力:1500kg/cm2、保持時間:2時間の条件で実施した。
【0081】
得られた焼結体の密度をアルキメデス法により測定したところ4.51g/cm3(相対密度:100%)であった。
【0082】
この焼結体を湿式加工法により102.6mm×178.8mm、厚さ6mmの焼結体に加工し、さらに焼結体のスパッタリング面の表面粗さをRa=1.5μmに機械加工した以外は実施例4と同様にターゲットを製造し、連続的にスパッタリング試験を10時間実施した後、同スパッタリング条件にてガラス基板上に膜厚300nmのチタン薄膜を形成し、SEM/EDSを用いて表面解析を実施したところ、チタン以外の不純物は確認されなかった。
【0083】
実施例8
平均粒径1μmのニッケル粉末をゴム製の型に入れ、脱気封入した。このゴム型3ton/cm2の圧力でCIPによる緻密化処理を行った。次にこの成形体をゴム型から取出し、所望の形に加工した後、鉄製のカプセルに充填した。この際、成形体及び鉄製カプセルを加熱しながらカプセル内部を真空装置で脱気処理し、所望の真空度に到達した後封止した。HIP焼結は、温度:1100℃、圧力:1500kg/cm2、保持時間:2時間の条件で実施した。
【0084】
得られた焼結体の密度をアルキメデス法により測定したところ8.90g/cm3(相対密度:100%)であった。
【0085】
この焼結体を湿式加工法により102.6mm×178.8mm、厚さ6mmの焼結体に加工し、さらに焼結体のスパッタリング面の表面粗さをRa=1.9μmに機械加工した以外は実施例4と同様にターゲットを製造し、連続的にスパッタリング試験を10時間実施した後、同スパッタリング条件にてガラス基板上に膜厚300nmのニッケル薄膜を形成し、SEM/EDSを用いて表面解析を実施したところ、ニッケル以外の不純物は確認されなかった。
【0086】
比較例2
実施例4と同じ条件でクロム焼結体を製造した。得られた焼結体の密度をアルキメデス法により測定したところ7.18g/cm3(相対密度:100%)であった。
【0087】
この焼結体を湿式加工法により101.6mm×177.8mm、厚さ6mmの焼結体に加工し、さらに焼結体のスパッタリング面の表面粗さをRa=3.7μmに機械加工した。
【0088】
このようにして得られた焼結体とバッキングプレートとを156℃まで加熱した後、それぞれの接合面にインジウム半田を塗布した。次に、焼結体をバッキングプレートの101.6mm×177.8mm、高さ1mmの台座上に、各辺とも焼結体が台座から張り出さない位置に配置した後、室温まで冷却し、ターゲットとした。
【0089】
このターゲットを実施例4と同様にターゲットを製造し、連続的にスパッタリング試験を10時間実施した後、同スパッタリング条件にてガラス基板上に膜厚300nmのクロム薄膜を形成し、SEM/EDSを用いて表面解析を実施したところクロム薄膜中にインジウムからなるパーティクルの存在が多数確認された。
【0090】
比較例3
実施例6と同じ条件でアルミニウム焼結体を製造した。得られた焼結体の密度をアルキメデス法により測定したところ2.70g/cm3(相対密度:100%)であった。
【0091】
この焼結体を湿式加工法により101.6mm×177.8mm、厚さ6mmの焼結体に加工し、さらに焼結体のスパッタリング面の表面粗さをRa=1.7μmに機械加工した。
【0092】
このようにして得られた焼結体とバッキングプレートとを156℃まで加熱した後、それぞれの接合面にインジウム半田を塗布した。次に、焼結体をバッキングプレートの101.6mm×177.8mm、高さ1mmの台座上に、各辺とも焼結体が台座から張り出さない位置に配置した後、室温まで冷却し、ターゲットとした。
【0093】
このターゲットを実施例4と同様にターゲットを製造し、連続的にスパッタリング試験を10時間実施した後、同スパッタリング条件にてガラス基板上に膜厚300nmのアルミニウム薄膜を形成し、SEM/EDSを用いて表面解析を実施したところアルミニウム薄膜中にインジウムからなるパーティクルの存在が多数確認された。
【0094】
比較例4
実施例7と同じ条件でチタン焼結体を製造した。得られた焼結体の密度をアルキメデス法により測定したところ4.51g/cm3(相対密度:100%)であった。
【0095】
この焼結体を湿式加工法により101.6mm×177.8mm、厚さ6mmの焼結体に加工し、さらに焼結体のスパッタリング面の表面粗さをRa=1.5μmに機械加工した。
【0096】
このようにして得られた焼結体とバッキングプレートとを156℃まで加熱した後、それぞれの接合面にインジウム半田を塗布した。次に、焼結体をバッキングプレートの101.6mm×177.8mm、高さ1mmの台座上に、各辺とも焼結体が台座から張り出さない位置に配置した後、室温まで冷却し、ターゲットとした。
【0097】
このターゲットを実施例4と同様にターゲットを製造し、連続的にスパッタリング試験を10時間実施した後、同スパッタリング条件にてガラス基板上に膜厚300nmのチタン薄膜を形成し、SEM/EDSを用いて表面解析を実施したところチタン薄膜中にインジウムからなるパーティクルの存在が多数確認された。
【0098】
比較例5
実施例8と同じ条件でニッケル焼結体を製造した。得られた焼結体の密度をアルキメデス法により測定したところ8.90g/cm3(相対密度:100%)であった。
【0099】
この焼結体を湿式加工法により101.6mm×177.8mm、厚さ6mmの焼結体に加工し、さらに焼結体のスパッタリング面の表面粗さをRa=1.9μmに機械加工した。
【0100】
このようにして得られた焼結体とバッキングプレートとを156℃まで加熱した後、それぞれの接合面にインジウム半田を塗布した。次に、焼結体をバッキングプレートの101.6mm×177.8mm、高さ1mmの台座上に、各辺とも焼結体が台座から張り出さない位置に配置した後、室温まで冷却し、ターゲットとした。
【0101】
このターゲットを実施例4と同様にターゲットを製造し、連続的にスパッタリング試験を10時間実施した後、同スパッタリング条件にてガラス基板上に膜厚300nmのニッケル薄膜を形成し、SEM/EDSを用いて表面解析を実施したところニッケル薄膜中にインジウムからなるパーティクルの存在が多数確認された。
【0102】
【発明の効果】
本発明により、製膜時問題となるノジュールの発生を防止することができ、また、パーティクル発生量の抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のスパッタリングターゲットの断面の一例を示す図である。
【図2】 分割ターゲットを構成する焼結体の一部分だけが、バッキングプレートの台座上に接合されるような、本発明のスパッタリングターゲットの外観の一例を示す図である。
【符号の説明】
1:焼結体
2:接合剤
3:バッキングプレート
Claims (6)
- 実質的にインジウム、スズおよび酸素からなるITO焼結体からなるターゲット部材を、台状の突出部分を有するバッキングプレートの突出部分に接合剤により接合してなるITOスパッタリングターゲットにおいて、前記ターゲット部材の接合部を含む面の面積が、バッキングプレート上の突出部分により形成される接合面の面積より大きいことを特徴とするスパッタリングターゲット。
- 実質的にインジウム、スズおよび酸素からなるITO焼結体からなるターゲット部材を、台状の突出部分を有するバッキングプレートの突出部分に接合剤により接合してなるITOスパッタリングターゲットにおいて、前記ターゲット部材が、突出部分をすべて覆い、かつ、突出部分の一部あるいは全周に渡って張り出した形状であることを特徴とするスパッタリングターゲット。
- ターゲット部材の張り出した部分の長さが、0.5mm〜3.0mmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスパッタリングターゲット。
- ターゲット部材の接合にかかる表面のうち、ターゲット部材とバッキングプレートの突出部分との接合部以外の面に、接合剤が付着していないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスパッタリングターゲット。
- ITO焼結体の相対密度が、99%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のスパッタリングターゲット。
- ITO焼結体のスパッタリング面の平均線中心粗さ(Ra)が0.8μm以下、かつ最大高さ(Rmax)が7.0μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のスパッタリングターゲット。
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