JP3992469B2 - 酸化物系共晶体のバルクの製造装置と製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱構造材料に適する酸化物系共晶体(Al2O3/YAG, Al2O3/YAG/ZrO2等)のバルクの製造装置と製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
酸化物共晶体は高温構造材料として注目されている。従来、この材料の製造はブリッジマン法がもっぱら使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
現在、火力発電用のガスタービンシステムにおけるタービン翼および炉壁は、1300℃以上に耐えられる構造材料がないため、効率は落ちるが冷却運転を行っている。ここで、
大気中での1500℃無冷却運転が可能になれば、10%程度のエネルギー効率の向上が見込まれ、1%の向上が1兆円規模での省エネルギーをもたらすと試算されていることから、無冷却運転を可能とする耐熱構造材料の開発の社会的効果は大きい。その他にも、当該材料は自動車などのエンジン部材や、焼却炉の炉壁として酸化雰囲気中、1200℃域での応用も期待されている。
【0004】
これまで、酸化物共晶体は、上記のような応用分野の候補材料として期待されていたが、
従来法であるブリッジマン法では、成長方向の緩やかな温度勾配(2〜3℃/mm)のため、強度の鍵を握る「共晶組織の大きさ」が大きくなってしまい、共晶組織の微細化が進まず、実用化に十分な強度が1500℃、大気中で1000MPaとされているのに対して、1500℃で300MPa程度の強度を発現する材料しか得られず、強度の向上が行き詰まっていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、ブリッジマン法では到達できない急峻な温度勾配を成長方向に実現し、同時に、径方向に均質な温度分布を実現する方法および装置を開発することにより共晶組織が微細になり、強度の飛躍的な向上をもたらした酸化物共晶体のバルクを得ることに成功した。
【0006】
すなわち、本発明は、坩堝と、坩堝底部に設けた細孔から流出する共晶組成の酸化物原料の融液に接触させる種結晶を保持する種結晶保持具と、種結晶保持具を下方に移動させて結晶成長させる移動機構と、
該移動機構の移動速度制御装置と、坩堝を加熱する高周波誘導加熱手段と、
を具備した一方向凝固成長装置であって、
該坩堝はイリジウム金属またはイリジウム合金坩堝であり、坩堝底部側面部の外周にイリジウム金属またはイリジウム合金からなる発熱体であるアフターヒータを配置し、坩堝及びアフターヒータは、高周波誘導加熱手段の出力調整により発熱量の調整を可能とすることによって坩堝底部に設けた細孔から引き出される融液の固液境界相の加熱温度の制御を可能とした装置において、
坩堝底部に細孔を複数個設け、該細孔の径(単位;mm)を下記の式1で示される実効偏析係数keffが1になり、
keff = k[k + (1-k)exp(-Vd/D)]-1 (式1)
(式1において、 D は液相中の拡散係数, k=C A S /C A L (C A S :固相における混合相の濃度, C A L :液相における混合相の濃度 ) , d は拡散相厚;単位mm, V は結晶成長速度;単位 mm/min であり、dは2〜5とする。)
且つ、融液が垂れ落ちない大きさとし、かつ種結晶の上端を水平面とし、複数の細孔から流下した融液を種結晶の上端平面に接触させて合流させることができる間隔で複数の細孔を配置したことを特徴とする酸化物系共晶体のバルクの製造装置である。
また、本発明は、坩堝は、アルミナホルダで保持し、アルミナ断熱材で坩堝の全体を遮蔽して、石英管内に設置し、石英管の外周には、高周波誘導加熱用RFコイルを配置し、複数の細孔の先端における融液を石英管の外部より観察できるように、アルミナ断熱材にC CDカメラ用覗き窓を設け、アルミナホルダ、アフターヒータには開口を設けたことを特徴とする上記の製造装置である。
【0007】
また、本発明は、上記の装置を用い、坩堝内に共晶組成の酸化物原料粉末を挿入して溶融し、坩堝底部に設けた複数の細孔の先端から流下する融液が種結晶保持具により下方へ引き出され一方向凝固成長する共晶体の引き出し開始に際して、
複数の細孔のうち中心部の細孔から流下した融液にまず種結晶の上端平面を接触させ、該融液を水平方向に広げて隣接する細孔から流下した融液に接触させ、形成されるメニスカスを観察し、融液が坩堝底部全体に広がり、目的の結晶径を得たのを確認した後、前記式1を満たす結晶成長速度(V)で結晶成長を行うことを特徴とする耐熱構造材料用酸化物系共晶体バルクの製造方法である。
また、本発明は、アフターヒータの発熱温度調整により複数の細孔の先端における融液の高さが大きいときは温度を下げ、高さが小さいときは温度を上げることにより共晶体の一方向凝固成長速度のマクロな制御を行うことを特徴とする上記の耐熱構造材料用酸化物系共晶体バルクの製造方法である。
【0008】
また、本発明は、上記の装置を用い、坩堝内に共晶組成の酸化物原料粉末を挿入して溶融し、坩堝底部に設けた複数の細孔から種結晶保持具により下方へ引き出され一方向凝固成長する共晶体の引き出し速度を0.01〜20mm/minとすることを特徴とする耐熱構造材料用酸化物系共晶体バルクの製造方法である。
また、本発明は、結晶成長方向の温度勾配を100〜150℃/mmとすることを特徴とする上記の耐熱構造材料用酸化物系共晶体バルクの製造方法である。
【0009】
本発明者らは、先に、イリジウム金属またはイリジウム合金坩堝底部側面部の外周にアフターヒータを配置し、アフターヒータの発熱量の調整を可能とすることによって坩堝底部に設けた細孔からマイクロ引き下げ装置を用いて引き出される融液の固液境界相の加熱温度の制御を可能とすることにより、共晶体のラメラの幅を10μ以下の微細等方組織とした太さ数百〜数十μmの高温強度特性に優れた酸化物系共晶体セラミックス繊維の製造方法を開発した(特開平11−278994号公報)。
【0010】
上記の方法によれば、温度勾配の急峻な引き下げ法を用いてブリッジマン法に比べて10分の1の共晶組織サイズを有する共晶体繊維を作製できた。しかし、坩堝底部に設けた細穴を大きくすると、「融液が垂れ落ちてしまう」という現象が起き、引き下げ法でのバルクの結晶成長はできないので、「繊維」を「バルク」にするには大きな問題点が存在した。
【0011】
本発明は、この方法を改良することにより、結晶成長方向の温度勾配がブリッジマン法の2〜3℃/mmに対して、最大で150℃/mm、好ましくは100〜150℃/mmという急峻な温度勾配を実現し、同時に径方向に関しては極めて均質な温度分布を実現する結晶作製技術により共晶組織を均質に微細化することに成功し、従来の酸化物系共晶体の強度を大幅(5倍程度)に上回る、1500℃、大気中で800MPaという、実用化物性が射程に入る結果を得た。
【0012】
抵抗加熱炉を坩堝周りに設置して間接的に加熱する方法では、坩堝のみならず周辺部も加熱されるため成長方向に緩やかな温度勾配を実現する場合には適するものの、急峻な温度勾配は実現できない。本発明は、坩堝をイリジウム金属またはイリジウム合金坩堝とし、高周波誘導加熱手段を用いることにより周辺雰囲気を加熱することなく坩堝のみを熱して原料を加熱溶解するので急峻な温度勾配を実現することができる。
【0013】
さらに、共晶組織は温度分布に極めて敏感であり、径方向の温度分布に勾配ができていると、共晶組織は不均一になってしまう。本発明では、坩堝がイリジウム金属またはイリジウム合金坩堝であり、坩堝底部の複数の細孔から流下する融液が一体になってメニスカスが形成されて凝固することにより共晶体のバルクが形成されることになる。
【0014】
本発明の方法は、標準的な結晶成長速度を15mm/min、最大で 20mm/minという高速に設定することができ、結晶成長速度はブリッジマン法に比べて、400〜1200倍程度高速である。
【0015】
本発明によれば、バルクでも高強度が実現できるため、優れた特性を有する酸化物共晶体の実用化に大きく貢献する。本発明の方法で得られた酸化物共晶体は、1500℃の高温酸化雰囲気においても粒成長は見られず、高い耐酸化性を示すので、ジェットエンジンや超高温ガスタービンの部材といった耐熱構造材料としての実用化が期待できる。その他、自動車のエンジン部材(排ガス系、動弁など)にも、焼却炉壁としても使用可能である。
【0016】
また、本発明の製造方法は、細孔の配置に応じて、円柱状のもののみならず、角状、板状のものの製造も可能とする製造方法であるので、加工プロセスを軽減でき、歩留まりが高いことが期待される。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の装置の構成を図1を用いて説明する。なお、図1の左部の円内は坩堝1の底部の拡大図を示している。原料は坩堝1内に保持する。酸化物系共晶体製造用原料は高融点物質なので、高周波誘導加熱を用い、坩堝は高融点材料であるイリジウム金属またはロジウムを1〜20%含有するイリジウム−ロジウム等のイリジウム合金が適する。
【0018】
イリジウムは、酸化物共晶体融液とのぬれ性が悪く(接触角が90°<θ)、坩堝の細孔から流下する融液と種結晶との間に安定なメニスカスを形成するので好適である。また、このような坩堝を使用すると、融液が坩堝内で対流を起こしているため、得られる共晶体の均質性が高い。
【0019】
坩堝1は、アルミナホルダ3で保持し、アルミナ断熱材4で坩堝1の全体を遮蔽して、石英管5内に設置する。石英管5の外周には、高周波誘導加熱用RFコイル6を配置し、坩堝1内の原料を加熱昇温し、溶融し、融液とする。坩堝1の底部側面部の外周にはイリジウム金属またはイリジウム合金からなる発熱体であるアフターヒータ2を設置する。
【0020】
坩堝の酸化を防ぐために、Arガス雰囲気を用い、結晶性の向上のために用いるO2 との比を厳密にコントロールした不活性ガス等の雰囲気ガスを石英管5の上部より導入し、下部より排気する。坩堝1の下部には拡大図に示すように酸化物共晶体融液が流下する複数の細孔7を設ける。
【0021】
融液は、坩堝1の底部に鉛直に設けられた複数の細孔7を通って、下方に流出して種結晶保持具8にセットした種結晶(サファイヤ)9に接触し、種結晶保持具8の引き下げ軸を引き下げることにより、一方向凝固成長して共晶体のバルク10となり、下方へ種結晶保持具8の移動機構により連続的に引き下げられる。種結晶保持具8の移動機構としては、種結晶保持具8をボールネジとサーボモータとギヤによって回転させて移動させる機構等の公知の手段を採用できる。
【0022】
図2は、坩堝底部の細孔から融液を種結晶に接触させて引き下げる工程の態様を示す模式図である。まず、図2に示すように、製造する共晶体バルクの径より小さく、細孔径より大きい径の種結晶9を中心の細孔7−3に接触させ(図2のA)、坩堝底部の中央部に後述の図3に示すようなメニスカスを形成する。種結晶9の径は細孔7−3に隣接する細孔間の幅よりは小さい。
【0023】
この状態で種結晶9をゆっくりと下方へ移動、すなわち、結晶成長を開始すると、細孔7−3から流下した融液が水平に広がり始め、近接する細孔7−2、7−4に達するとそちらの細孔から流下する融液の供給も手伝って更に広いメニスカスが形成される(図2のB)。同様に、坩堝底部全体に融液が広がるまでゆっくりと結晶成長を続ける(図2のC)。融液が坩堝底部全体に広がり、目的の結晶径を得たのをCCDカメラにて確認した後、必要な速度(例えば、20mm/min)での結晶成長を行う(図2のD)。
【0024】
細径ファイバーの作製時は、細孔の径は微細なものが用意されるので細孔の径、深さなどのパラメータについての特別な工夫は重要ではないが、バルク体を作る際は細孔の径、深さは無視できないパラメータとなる。
【0025】
細孔の径(単位mm)を規定する実効偏析係数keffは以下の式1で表される。
keff = k[k + (1-k)exp(-Vd/D)]-1 (式1)ここで,Dは液相中の拡散係数,k=CA S/CA L(CA S:固相における混合相の濃度,CA L:液相における混合相の濃度),dは拡散相厚(単位mm),Vは結晶成長速度(単位mm)である。式1で示される実効偏析係数keffを1にすることは、作製結晶を均質にするために必須である。
【0026】
拡散相厚dに当たるのが細孔の深さであり、細孔の径はDと強い相関関係(細孔の径が大きくなるとDが大きくなる)を持つ。式1からわかるとおり、実効偏析係数keffを1にするには、V、dを大きくしてDを小さくするのが理想である。
【0027】
引き下げ法の場合、結晶成長速度のVは従来法に比して非常に早いのでこれは理想的である。拡散相厚dに当たる細孔の深さも大きいのが望ましい。すなわち、細孔の深さは深い方が望ましい。しかし、深すぎるとシードタッチの作業が非常に困難になるため、その最適値は目的物に合わせる必要がある。例えば、酸化物共晶体の場合は細孔は深さ2mm以上5mm以下、すなわちdは2〜5が好ましい。また、細孔の径はDと強い相関関係(細孔の径が大きくなるとDが大きくなる)を持つので、細孔の径は小さい方が望ましい。
【0028】
結晶径Rcryを大きくするためには坩堝細孔Rcapを大きくしなければならないが、そうすると、融液が細い孔から垂れ落ちてしまうので、坩堝細孔Rcapは実効偏析係数keffが約1になり、且つ、融液が垂れ落ちない径として、坩堝下端に細孔を複数個設けて、複数の細孔から流下した融液を種結晶の上端平面に接触させて合流させるようにした。融液が垂れ落ちない径は、酸化物共晶体の場合、400μmφ以下であり、好ましくは200μmφ〜300μmφである。細孔の深さは、偏析係数keffの制御と融液の粘度の観点から2mm〜5mm程度が好ましい。
【0029】
本発明においては坩堝底部の細孔から流下する融液は、図3に示す坩堝の細孔のRcapの径、結晶のRcryst の径と、坩堝(die)の下端と結晶(crystal)との間の高さからなる融液部を形成し、該融液部にメニスカスが形成される。図の○印と点線で示すメニスカスの曲線の外側は安定結晶成長域となり、該曲線の内側は不安定結晶成長域となる。ただし、本発明においては、Rcapを大きくできないので、その代わりに坩堝の底部に設けた複数の細孔から流下する融液を合流させることによって坩堝の底面Rbottomを径制御のパラメータとした。その結果、引き下げ速度20mm/minという高速度までは確実に安定成長可能となった。
【0030】
本発明の装置を用いて、酸化物系共晶体のバルクの一方向凝固成長を行う際には、坩堝細孔Rcapは上記の要件を満たすように酸化物系共晶体材料の種類に応じて定める。また、細孔の数は共晶体材料の大きさに応じて上記の条件を満たすように定める。まず、図2のAに示すように、先端の平らな種結晶(サファイア)9を坩堝1の中心の細孔7−3の下部に位置させ、原料を溶解し細孔7−3に溜まった融液に接触させて、その融液の水平方向の広がりにより隣接する細孔から流下する融液と接触させて複数の細孔から出た融液を合流させて一方向凝固成長を開始し固液界面を形成する。
【0031】
坩堝1の底部の複数の細孔7の先端から流下する融液と種結晶との間に形成される固化部の変動に応じて、アフターヒータ2の発熱量をRFコイル6のパワーの増減により調整する。このため、複数の細孔7の先端における融液のメニスカスを石英管5の外部より観察できるように、アルミナ断熱材4にCCDカメラ用覗き窓12を設け、アルミナホルダ3、アフターヒータ2には開口を設ける。
【0032】
メニスカスの融液幅と高さをCCDカメラで観察し、融液幅と高さに応じてカウントされるピクセル数と高周波誘導加熱コイル6のパワー調整の関係式を予め求めておき、実際の引き下げにおいて、CCDカメラで得られるピクセルのカウント数の変動に基づき、高周波誘導加熱コイル6のパワーを増減して坩堝およびアフターヒータ2の発熱温度を調節する。
【0033】
このアフターヒータ2の発熱温度調整により共晶体の一方向凝固成長速度のマクロな制御を行う。すなわち、複数の細孔7の先端における融液の高さが大きいときは温度を下げ、高さが小さいときは温度を上げることにより共晶体の一方向凝固成長速度のマクロな制御を行うことができる。また、結晶成長速度のミクロな制御は、共晶体のバルク10の径の観察に基づく移動機構(図示せず)の速度制御による引き下げ速度の微調整によって行う。
【0034】
Al2O3 −Y2O3 系共晶体としては、約18〜22モル%のY2O3を含有するAl2O3 −3Y2O3・5Al2O3(YAG)をはじめとして、約39〜43モル%、約58〜62モル%、約78〜82モル%の各範囲のY2O3を含有する共晶組成も好適である。その他のAl2O3/YAG/ZrO2、Al2O3/RAP(R:稀土類、P:ペロブスカイト)共晶体、Al2O3/RAG、Fe3O4/RIP(I:鉄)、Fe3O4/RIG、ZrO2/RZP、ZrO2/RZGやその他の2元系、3元系の酸化物系共晶体への適用も可能である。
【0035】
【実施例】
実施例1
原料は、Y2 O3 、Al2 O3 (ともに99.99%)酸化物粉末をAl2 O3 /YAGの共晶組成にて数gを仕込み、よく攪拌したものを用いた。坩堝およびアフターヒータにはイリジウム金属を用い、それをセラミックスの保温材で覆い、高周波誘導加熱コイルのパワーを5.00kw以下とし、融解温度1840℃で融解した。酸素を含むアルゴンガス流雰囲気にて、上端が平らな径1mmのサファイア単結晶棒を種結晶として用い、引き下げ法により、設定引き下げ速度を20mm/minまでとして一方向凝固成長させた。
【0036】
イリジウム金属製坩堝細孔径は200μmφとし、それぞれの間隔を3mmとして7個設けた。細孔の孔の深さは4mmとした。
【0037】
アフターヒータは円筒状とし、共晶体バルク外面から円筒内面までの距離は4mmとした。図4に示す外観形状の径7mmのAl2 O3 /YAG共晶体のロッドを得た。得られたバルク共晶体の組織は1μm以下に微細化されており、バルクの外側と中心付近を比較してもそのサイズは均質である。共晶組織が不均質であると強度劣化の原因になるが、本発明の製造方法により製造した共晶体では、図5に示すように、(a)端部、(b)中央部ともに均質な微細組織が得られた。これは、融液を保持しているIr坩堝自体が高周波により加熱されており、径方向に均質な温度分布が実現したためである。
【0038】
実施例2
実施例1の原料に、ZrO2(99.99%)酸化物粉末をAl2 O3 /YAG/ZrO2の共晶組成になるように仕込み、実施例1と同様に共晶体のロッドを製造した。図4に示す外観形状の径7mmのAl2 O3 /YAG/ZrO2共晶体バルクを得た。
【0039】
実施例3
図6に示す円筒状の容器の底部に細孔を直線状に並べたイリジウム金属製坩堝用い、実施例2と同条件で酸化物共晶体板状バルクを製造した。図7に示すように、外観形状で幅7〜10mm、厚さ1mmのAl2 O3 /YAG/ZrO2共晶体板状バルクを得た。
【0040】
【発明の効果】
本発明の一方向凝固成長した共晶体バルクは、高温引張り強度に極めて優れおり、高温酸化性雰囲気で使用される耐熱構造材料として特に適する。また、本発明の装置は、坩堝として底部に短い長さの複数の細孔を有するイリジウム坩堝を用い、坩堝底部の融液部の温度制御をアフターヒータの使用により実現したものであり、簡易な装置構造により、待望されていた酸化物共晶体バルクを大量生産できるという優れた効果をもたらすものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造装置を示す概念図である。
【図2】本発明の製造方法において、坩堝底部の細孔から融液を種結晶に接触させて引き下げる工程の態様を示す模式図である。
【図3】本発明の製造方法において、融液のメニスカスの状態を示す模式図である。
【図4】実施例1および実施例2で得られた酸化物共晶体バルクの形状を示す図面代用光学写真である。
【図5】実施例1で得られた酸化物共晶体バルクの微細組織を示す図面代用顕微鏡組織写真である。
【図6】実施例3の板状酸化物共晶体バルクを得るための坩堝底部の模式図である。
【図7】実施例3で得られた板状酸化物共晶体バルクの形状を示す図面代用光学写真である。
Claims (6)
- 坩堝と、坩堝底部に設けた細孔から流出する共晶組成の酸化物原料の融液に接触させる種結晶を保持する種結晶保持具と、種結晶保持具を下方に移動させて結晶成長させる移動機構と、
該移動機構の移動速度制御装置と、坩堝を加熱する高周波誘導加熱手段と、
を具備した一方向凝固成長装置であって、
該坩堝はイリジウム金属またはイリジウム合金坩堝であり、坩堝底部側面部の外周にイリジウム金属またはイリジウム合金からなる発熱体であるアフターヒータを配置し、坩堝及びアフターヒータは、高周波誘導加熱手段の出力調整により発熱量の調整を可能とすることによって坩堝底部に設けた細孔から引き出される融液の固液境界相の加熱温度の制御を可能とした装置において、
坩堝底部に細孔を複数個設け、該細孔の径(単位;mm)を下記の式1で示される実効偏析係数keffが1になり、
keff = k[k + (1-k)exp(-Vd/D)]-1 (式1)
(式1において、 D は液相中の拡散係数, k=C A S /C A L (C A S :固相における混合相の濃度, C A L :液相における混合相の濃度 ) , d は拡散相厚;単位mm, V は結晶成長速度;単位 mm/min であり、dは2〜5とする。)
且つ、融液が垂れ落ちない大きさとし、かつ種結晶の上端を水平面とし、複数の細孔から流下した融液を種結晶の上端平面に接触させて合流させることができる間隔で複数の細孔を配置したことを特徴とする酸化物系共晶体のバルクの製造装置。 - 坩堝は、アルミナホルダで保持し、アルミナ断熱材で坩堝の全体を遮蔽して、石英管内に設置し、石英管の外周には、高周波誘導加熱用RFコイルを配置し、複数の細孔の先端における融液を石英管の外部より観察できるように、アルミナ断熱材にCCDカメラ用覗き窓を設け、アルミナホルダ、アフターヒータには開口を設けたことを特徴とする請求項1記載の製造装置。
- 請求項1記載の装置を用い、坩堝内に共晶組成の酸化物原料粉末を挿入して溶融し、坩堝底部に設けた複数の細孔の先端から流下する融液が種結晶保持具により下方へ引き出され一方向凝固成長する共晶体の引き出し開始に際して、
複数の細孔のうち中心部の細孔から流下した融液にまず種結晶の上端平面を接触させ、該融液を水平方向に広げて隣接する細孔から流下した融液に接触させ、形成されるメニスカスを観察し、融液が坩堝底部全体に広がり、目的の結晶径を得たのを確認した後、前記式1を満たす結晶成長速度(V)で結晶成長を行うことを特徴とする耐熱構造材料用酸化物系共晶体バルクの製造方法。 - アフターヒータの発熱温度調整により複数の細孔の先端における融液の高さが大きいときは温度を下げ、高さが小さいときは温度を上げることにより共晶体の一方向凝固成長速度のマクロな制御を行うことを特徴とする請求項3記載の耐熱構造材料用酸化物系共晶体バルクの製造方法。
- 請求項1記載の装置を用い、坩堝内に共晶組成の酸化物原料粉末を挿入して溶融し、坩堝底部に設けた複数の細孔から種結晶保持具により下方へ引き出され一方向凝固成長する共晶体の引き出し速度を0.01〜20mm/minとすることを特徴とする耐熱構造材料用酸化物系共晶体バルクの製造方法。
- 結晶成長方向の温度勾配を100℃〜150℃/mmとすることを特徴とする請求項5記載の耐熱構造材料用酸化物系共晶体バルクの製造方法。
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