JP3852804B2 - 酸化物系共晶体セラミックス繊維の製造方法 - Google Patents

酸化物系共晶体セラミックス繊維の製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一方向凝固成長により製造したラメラ幅の小さい微細等方組織の酸化物系共晶体セラミックスからなる高温降伏強度等に優れた繊維の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
セラミックス繊維は、主に繊維強化複合材料の強化材として、プラスチック、金属、セラミックスの強化に使用される。強化用繊維としては、アルミナ、SiC/C等の連続繊維、SiCウイスカ−、六チタン酸カリウムウイスカ、アルミナ短繊維等がある。高強度かつ高温耐熱性材料の強化用繊維としては、SiC、Al2 3 が適するが、SiCは反応性に富み、また、Al2 3 は、高温強度が十分でない。
【0003】
熱絶縁材、フィルター、強化用材等に適するセラミックス酸化物連続繊維の製法に関しては、例えば米国特許第5,348,918号明細書にイットリア−アルミナ繊維の製法が開示されている。この方法は、水性混合物から出発して、前駆体を成形して未焼成の連続繊維とし、これを焼結して繊維を得るものである。一方向凝固成長で作成したAl23 /YAG共晶体のバルク結晶材は公知であり、また、反応性が低く、高強度であり、かつ耐酸化性に優れた高温用複合材料に使用することができる繊維として一方向凝固成長させた共晶体繊維も知られている(特表平9−501135号公報)。この繊維は、Al23 とY23の共晶体等各種の酸化物系共晶体からなり、金属強化材としては、径約25〜100μが適し、セラミックス強化材としては径約10〜20μが好適であるとされる。この繊維の製造法としては、エッジデファインドフイルム供給成長法(EFG)という、融液を上方へ引き上げる公知の方法が、特に好適であると記載されているだけである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
省エネ、環境面の要求から、1600℃以上の超高温大気中で安定に使用できる材料による熱効率の向上が強く望まれており、SiC、Si34 を筆頭に幅広い研究がなされているが、SiC、Si34 、硼素繊維は1000℃以下では優れた強度を有するものの、それ以上の高温領域に適する材料ではなく、酸化防止のためのコーティングを必要とするという不利がある。これに対し、Al23 /Y23 等の酸化物系セラミックスは、高温領域における酸化防止のためのコーティングが不要であり、高温酸化性領域で使用される高温材料として期待されている。
【0005】
しかしながら、上記米国特許第5,348,918号明細書に示される焼結法で製造されるAl2 3 /Y23 は、界面状態がシャープではなく、降伏応力が十分でない。また、上記の特表平9−501135号公報に開示されたEFG法によれば、高温強度に優れた一方向性凝固成長した共晶セラミックス繊維が得られるものの、育成速度が遅く、添付されている顕微鏡写真からもわかるとおり組織の微細化がなされておらず、さらに強度的に満足の行く繊維とその製造方法、製造装置の開発が求められていた。本発明は、これまで得られていないラメラの幅が10μより微細な等方組織を有する高温強度に極めて優れた共晶体セラミックス繊維の製造方法の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明者は、各種複合材料の中でも高温強度、耐酸化性に最も優れた潜在能力を持つ酸化物系セラミックス基複合材料に着目し、Al23 /Y23 を代表とする酸化物系共晶体の繊維化を試みた。その手段として、本発明者は、本発明者らが先に発明したシリコン単結晶等の製造を目的とした「マイクロ引き下げ法」の発明(特願平7−35805号、特開平8−231299号公報)の装置および方法を用いて、酸化物系セラミックス繊維の製造可能性について鋭意研究開発を進めた結果、該マイクロ引き下げ装置を用い、坩堝材料、ホットゾーンの工夫、育成速度の制御等により、一方向凝固成長プロセスによって、酸化物系共晶体のラメラ幅をサブミクロンオーダまで微細化し、高温強度特性に優れた太さ数百〜数十μmの酸化物系共晶体セラミックス繊維を得ることに成功した。
【0007】
本発明の製造方法により、ラメラ幅の小さい微細な等方組織を有し、高温特性に優れた新規な繊維自体、すなわち、坩堝底部に設けた細孔から下方へ引き出されて一方向凝固成長した酸化物系共晶体であって、共晶体の各マトリックスがサブミクロンスケールに制御されたラメラ幅の小さい微細等方組織をもつ高温強度に優れた酸化物系共晶体セラミックス繊維を提供する。
【0008】
本発明の製造方法には、該酸化物系共晶体セラミックス繊維を製造するための装置、すなわち、坩堝と、坩堝底部に設けた細孔から流出する融液に接触させる種を保持する種保持具と、種保持具を下方に移動させる移動機構と、該移動機構の移動速度制御装置と、坩堝を加熱する誘導加熱手段とを具備した一方向凝固成長装置であって、該坩堝はイリジウム金属またはイリジウム合金坩堝であり、坩堝底部外周にイリジウム金属またはイリジウム合金からなる発熱体であるアフターヒータを配置し、該アフターヒータは誘導加熱手段のパワー調整により発熱量の調整を可能とすることによって坩堝底部に設けた細孔から引き出される融液の固液境界相の加熱温度の制御を可能とした製造装置を用いる
【0009】
本発明の製造方法は、上記装置を用い、坩堝内に共晶組成の酸化物原料粉末を挿入して溶融し、坩堝底部に設けた細孔から種保持具により下方へ引き出される繊維の引き出し速度を1mm/min以上、より好ましくは10mm/min以上とすることにより共晶体のラメラの幅を10μ以下の微細等方組織とすることを特徴とする
【0010】
この製造方法において、当然ながら、種保持具を下方に移動させる移動機構の速度を制御することにより共晶体の成長速度を制御できるが、本発明の製造方法では、坩堝底部に設けた細孔から流出した融液の固化部と細孔先端との間のメルトの幅を観察し、その幅の変動に応じて、誘導加熱手段のパワーを調整することにより、アフターヒータの発熱量を調整して一方向凝固成長速度を高精度に制御することも可能とした。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を用いて本発明を説明する。図1は、本発明の製造方法で得られたAl23 /YAG繊維の反跳電子像(BEI)写真である。図2は、引き下げ速度とラメラ幅の関係を示す図である。ラメラ幅は、画像処理ソフトを利用してラメラ幅の統計分布をとり、そこから値を得る公知の手段で求められる。図3は、本発明の製造方法に用いる装置の断面図である。図4は、本発明の製造方法に用いる装置の他の実施例を示す断面図である。図5は、メルトのメニスコスの状態を示す模式図である。図6−Aは、坩堝底部に設けた細孔内の融液に種を接触させて引き下げを開始する際の状態を示す概念図であり、図6−Bは、本発明の製造方法に用いる装置において、坩堝底部に設けた細孔から流出した融液の固化部と細孔先端との間に形成されるメルトを示す概念図である。図7は、メニスコスの高さと幅の比を一定にする場合の、誘導加熱コイルのパワーと引き下げ速度との関係を示す図である。図8は、超高温域における三点曲げ試験の結果で、荷重と変位との関係を示す降伏応力線図である。
【0012】
本発明の製造方法で得られる繊維は、酸化物系セラミックス共晶体からなる。酸化物系共晶体として代表的なAl23 −Y2 3 の相図は、上記特表平9−501135号公報に示されている。Al23 −Y23 系共晶体としては、約18〜22モル%のY2 3 を含有するAl23 −3Y23 ・5Al2 3 (YAG)をはじめとして、約39〜43モル%、約58〜62モル%、約78〜82モル%の各範囲のY23 を含有する共晶組成も好適である。本発明の製造方法によりこの様な微細等方組織をとるのは、Al23 /YAGだけに限らず、その他のAl23 /RAP(R:稀土類、P:ペロブスカイト)共晶体、Al23 /RAG、Fe34 /RIP(I:鉄)、Fe34 /RIG、ZrO2 /RZP、ZrO2 /RZGや上記特表平9−501135号公報に開示されている2元系、3元系の酸化物系共晶体への適用も可能である。
【0013】
図1のAl2 3 /YAG繊維のBEI写真において、明るい部分はYAG、暗い部分がAl23 を示し、両者が互いに絡み合った等方組織を示している。写真の下の数値は、それぞれ引き下げ速度(mm/min)を示している。この写真および図2に示す引き下げ速度とラメラの幅の関係から明らかなように、他の共晶材料と同様、λ2 ・R=Const.の関係式に従うもので、作成速度を上げることにより、組織の微細化が進み、ラメラの幅は狭く、強度が大きい等方組織を持っている。また、本発明の製造方法で得られるAl23 /YAG繊維は、Al23 /YAGの界面がシャープであるという特徴を有し、従来知られている焼結法等によるAl23 /YAG繊維と比べて、降伏強度が著しく優れている。この界面のシャープさにより、優れた降伏強度を呈するメカニズムはまだ明らかにされていないが、バルクの実験データなどから、界面にアモルファス相がなく、結晶/結晶というシャープな界面のときに優れた降伏応力を示すというデータが得られている。
【0014】
本発明の製造方法に用いる装置は、本発明者らが先に発明したシリコン単結晶等の製造を目的とした細線状結晶製造装置(特開平8−231299号公報)を改良したものである。先の発明の装置は、坩堝と、種保持具と、前記坩堝および/又は種保持具が上下方向に可動な移動機構と、坩堝を加熱する手段とを具備する細線状結晶製造装置において、前記坩堝および/又は種保持具の移動が、0.4mm/min以上の速度で、その速度の設定値の1%以内の精度で行うことのできるようにしたものである。
【0015】
該公報には、「一般に結晶成長における制御因子である温度では応答性が悪く瞬時に変更できないため、これを作成する細線状結晶の太さ等の制御因子とするのは不適であり、むしろ温度は一定温度に保つことが重要である」と記載され、具体的には、「CCDカメラによって成長する細線状シリコンの直径を計測し、引き下げ速度を制御するようにし、例えば450±20μmφ×400mm長さの細線状シリコン単結晶を製造した」と記載されているように、成長速度の制御因子として温度は不適当であることを開示している。
【0016】
酸化物系セラミックスは、シリコンとは、坩堝とのぬれ角に基づく凝固成長態様が大きく相違し、共晶体を一方向凝固成長して組織の微細化された繊維の太さ一定の理想的高温強度を持つセラミックス繊維を製造することは、上記発明の装置の坩堝を単に高融点材料の溶解用坩堝として公知のイリジウム金属坩堝に変更し、上記発明と同様な引下げ速度の制御を行っても不可能である。
【0017】
そこで、本発明者は、上記発明で不適とされた温度制御を積極的に採用して一方向凝固成長速度の制御を行うことの可能性を追及し、実現可能な装置の構造を見出した。本発明の製造方法に用いる装置は、図3に示すとおり、坩堝1内に原料を保持する。酸化物系共晶体製造用原料は高融点物質なので、高周波誘導加熱を用い、坩堝は高融点材料であるイリジウム金属またはレニウムを1〜20%含有するイリジウム−レニウム等のイリジウム合金が適する。イリジウムは、酸化物共晶体融液とのぬれ性が悪く(接触角が90°<θ)安定なメニスコスを形成するので好適である。本発明は、このような坩堝を使用することにより、融液が坩堝内で対流を起こしているため、得られる共晶体の均質性が高い。坩堝の酸化を防ぐために、Arガス雰囲気を用い、結晶性の向上のために用いるO2 との比を厳密にコントロールした不活性ガス等の雰囲気ガスを石英チューブ5の上部より導入し、下部より排気する。図4に示すように坩堝1の下部には複数の細孔7を設け、複数本の繊維を同時に製造することも可能である。
【0018】
坩堝1は、サファイアホルダ3で保持し、アルミナ製のヒートシールド4で坩堝1の全体を遮蔽して、石英チューブ5内に設置する。石英チューブ5の外周には、高周波誘導加熱用コイル6を配置し、坩堝1内の原料を加熱昇温し、溶融し、融液とする。融液は、坩堝の底部中央に鉛直に設けられた細孔7を通って、下方に流出して種保持具8にセットした種9に接触し、種保持具8の引き下げ軸を引き下げることにより、一方向凝固成長して繊維10となり、ヒートシールド4の孔11を通り、下方へ種保持具8の移動機構により連続的に引き下げられる。種保持具8の移動機構としては、特開平8−231299号公報に示されているような、種保持具をボールネジとサーボモータとギヤによって回転させて移動させる機構等の公知の手段を採用できる。下方へ引き出した繊維は巻き取り装置で巻き取ることができる。
【0019】
本発明の製造方法においては坩堝から流下する融液は、図5に示す坩堝の細孔のRcap 、結晶のRcryst と坩堝の下端と結晶との間の高さからなるメルト部にメニスコスが形成される。図の○印と点線で示す曲線の外側は安定成長域となり、曲線の内側は不安定となる。坩堝の細孔(capillary)の径の半分の径まではパワーの制御で、引き下げ速度20mm/minという高速度までは確実に安定成長可能とすることができる。本発明の製造方法において、メニスコス(幅、高さ)と安定成長する繊維径の関係は、Tatarchenko(ロシア)らが提唱する下記の理論式とよく合う。
【0020】
【数1】
Figure 0003852804
【0021】
本発明の製造方法に用いる装置では、坩堝1の底部側面部にイリジウム金属またはイリジウム合金からなる発熱体であるアフターヒータ2を設置する。図3に示す単一の細孔7を有する坩堝の場合は、該アフターヒータ2は、細孔7の鉛直線を中心線とする円筒状部材が好適である。
【0022】
本発明の製造方法に用いる装置を用いて、酸化物系セラミックス共晶体の一方向凝固成長を行う際には、まず図6−Aに示すように先端の尖ったサファイア種9を坩堝1の細孔7内の融液に接触させ、種9の引き下げを開始する。細孔7から出た融液は一方向凝固成長を開始し固液界面が形成される。そして、坩堝1の底部の細孔7の先端と融液の固化部との間には、図6−Bに示すように坩堝1の細孔7の外に位置するメルトMが形成される。メルトMは、高さHと幅Lを有しており、設定した引き下げ速度で成長を行わせる際に、凝固成長速度が遅いと高さHが小さくなり、成長速度が速いと高さHが大きくなる。それを常に一定に保つためにパワーを制御する。どのように誘導加熱コイル6のパワーを制御するかは、実験データにより最適化の条件を設定できる。
【0023】
坩堝底部の細孔7の先端と融液の固化部との間のメルトMを観察し、その変動に応じて、アフターヒータ2の発熱量を誘導加熱コイル6のパワーの増減により調整する。このため、細孔7の先端におけるメルトMを石英チューブ5の外部よりCCDカメラ(図示せず)によって観察できるように、ヒートシールド4に覗き窓12を設け、サファイアホルダ3、アフターヒータ2には開口を設ける。メルト幅と高さをCCDカメラで観察し、メルト幅と高さに応じてカウントされるピクセル数と誘導加熱コイル6のパワー調整の関係式を予め求めておき、実際の引き下げにおいて、CCDカメラで得られるピクセルのカウント数の変動に基づき、高周波誘導加熱コイル6のパワーを増減してアフターヒータ2の発熱温度を調節する。このアフターヒータ2の発熱温度調整により共晶体の一方向凝固成長速度のマクロな制御を行う。すなわち、細孔7の先端におけるメルトMの高さHが大きいときは温度を下げ、高さHが小さいときは温度を上げることにより共晶体の凝固成長速度のマクロな制御を行うことができる。また、結晶性のミクロな制御は、繊維10の径の観察に基づく移動機構(図示せず)の速度制御による引き下げ速度の微調整によって行う。
【0024】
図7は、メニスコスの比を一定に保ったときの誘導加熱コイル6のパワーと引き下げ速度との関係についてのデータを示す。H:Lを1:3としたときはパワーはやや高め、1:6のときは、やや低めであり、これらのデータベースから加熱温度によるマクロな制御を行う。
【0025】
【実施例】
原料は、Y2 3 、Al2 3 (ともに99.99%)酸化物粉末をAl23 /YAGの共晶組成にて数gを仕込み、よく攪拌したものを用いた。坩堝およびアフターヒータにはイリジウム金属を用い、それをセラミックスの保温材で覆い、誘導加熱コイルのパワーを5.00kw以下とし、融解温度1840℃で融解した。酸素を含むアルゴンガス流雰囲気にてサファイアを種として用い、マイクロ引き下げ法により、設定引き下げ速度を20mm/minまでとして一方向凝固成長させた。坩堝細孔径は200μmφとした。アフターヒータは円筒状とし、繊維から円筒内面までの距離は7mmとした。最も細いもので115μmφの繊維を得た。CCDカメラによりメルト幅の観察を行い、メルト幅が基準値より10%増加に対して誘導加熱コイルのパワーを約10W落とす条件とした。これにより、図1に示すように、引き下げ速度に応じてラメラ幅の異なる微細な等方組織(断面図)が得られた。画像のピクセル数をカウントすることによりAl23 対YAGの比を概算した結果、成長速度・構造のスケールに関わらず、その比は誤差の範囲で一定(仕込み組成そのまま)であることが分かった。
【0026】
非常に速い引き下げ速度(20mm/min)条件下では、Al23 /YAG境界のシャープな均一組織を持つものが得られた。図1の反跳電子像BEIからもわかるとおり、これは、YAGの回りをAl23 が囲むという均一組織を持っている。この引き下げ速度では、融点の低いYAGがこの速度で十分に成長でき、融点の高いAl23 の成長速度との差が顕著に現れる。図8に、1700℃の高温下におけるAl23 /YAGの降伏応力曲線を示すとおり、従来例の単結晶繊維や他のセラミック繊維等は荷重増大に対して変位量が直線的に増大して、ある一定荷重で小さい変位量でいきなり破断するのに対し、本発明の製造方法で得られる繊維は、一定の荷重増加までは変位量が直線的に増大し、その後もややフラットな曲線で示されるように、荷重の増大に変位が追従し、その後破断するという極めて優れた高温強度を有することが確認された。
【0027】
【発明の効果】
本発明の製造方法により得られる一方向凝固成長した共晶体セラミックス繊維は、これまで得られていないラメラの幅が10μより微細な等方組織を有し、高温降伏強度に極めて優れおり、高温酸化性雰囲気で使用される金属、セラミックスの強化用繊維として特に適する。また、本発明の製造方法に用いる装置は、坩堝として底部に短い長さの細孔を有するイリジウム坩堝を用い、坩堝底部のメルト部の温度制御をアフターヒータの使用により実現したものであり、簡易な装置構造により、待望されていた上記共晶体セラミックス繊維を大量生産できるという優れた効果をもたらすものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法で得られたAl23 /YAG繊維の反跳電子像(BEI)写真である。
【図2】本発明の製造方法における引き下げ速度とラメラ幅の関係を示す図である。
【図3】本発明の製造方法に用いる装置の断面図である。
【図4】本発明の製造方法に用いる装置の他の実施例を示す断面図である。
【図5】メルトのメニスコスの状態を示す模式図である。
【図6】図6−Aは、坩堝底部に設けた細孔内の融液に種を接触させて引き下げを開始する際の状態を示す概念図であり、図6−Bは、本発明の製造方法に用いる装置において、坩堝底部に設けた細孔から流出した融液の固化部と細孔先端との間に形成されるメルトを示す概念図である。
【図7】メニスコスの高さと幅の比を一定としたときの誘導加熱コイルのパワーと引き下げ速度との関係を示す図である。
【図8】超高温域における三点曲げ試験の結果で荷重と変位との関係を示す。
【符号の説明】
1 イリジウム坩堝
2 イリジウムアフターヒータ
4 アルミナヒートシールド
5 石英チューブ
6 高周波誘導加熱コイル
7 坩堝底部の細孔
8 種保持具
9 サファイア種
10 一方向凝固成長した繊維
11 CCDカメラ用覗き窓

Claims (2)

  1. 坩堝と、坩堝底部に設けた細孔から流出する融液に接触させる種を保持する種保持具と、種保持具を下方に移動させる移動機構と、該移動機構の移動速度制御装置と、坩堝を加熱する誘導加熱手段とを具備した一方向凝固成長装置であって、該坩堝はイリジウム金属またはイリジウム合金坩堝であり、坩堝底部外周にイリジウム金属またはイリジウム合金からなる発熱体であるアフターヒータを配置し、坩堝及びアフターヒータは、誘導加熱手段の出力調整により発熱量の調整を可能とすることによって坩堝底部に設けた細孔から引き出される融液の固液境界相の加熱温度の制御を可能とした装置を用い、坩堝内に共晶組成の酸化物原料粉末を挿入して溶融し、坩堝底部に設けた細孔から種保持具により下方へ引き出され一方向凝固成長する繊維の引き出し速度を1mm/min以上とすることにより共晶体のラメラの幅を10μ以下の微細等方組織とすることを特徴とする酸化物系共晶体セラミックス繊維の製造方法。
  2. 坩堝底部に設けた細孔から流出した融液の固化部と細孔先端との間のメルト幅を観察し、その幅の変動に応じて、誘導加熱手段のパワーを調整することにより、アフターヒータの発熱量を調整して一方向凝固成長速度を制御することを特徴とする請求項記載の酸化物系共晶体セラミックス繊維の製造方法。
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