JP3992232B2 - 食品の保存性向上剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品の保存性向上剤に関するものであり、詳しくは耐熱性細菌等の微生物に対して静菌作用を有する乳化剤を含有する液状の組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ある種のポリグリセリン脂肪酸モノエステルに抗菌性があることは以前から知られており(例えば、特許文献1参照)、従来からポリグリセリン脂肪酸エステルを添加して食品の保存性を向上させる試みがなされていた(例えば、特許文献2,3,4,5参照)。しかしここで用いられているものは平均重合度が6以上のポリグリセリン脂肪酸エステルであり、その効果も満足できるものではなかった。
【0003】
その後我々は、エステルを構成する脂肪酸がラウリン酸、ミリスチン酸及びパルミチン酸の1種又は2種以上からなり、エステル中のモノエステル含量が70%以上であるジグリセリン脂肪酸モノエステルに強い抗菌性があることを知り(例えば、特許文献6,7参照)、続いてエステルを構成するポリグリセリンがジ、トリ、テトラ、ペンタグリセリンの1種又は2種以上からなり、エステルを構成する脂肪酸がカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸及びパルミチン酸の1種又は2種以上からなり、エステル中のモノエステル含量が70%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルにも抗菌性があることを知った(例えば、特許文献8,9,10参照)。しかし、上記のポリグリセリン脂肪酸モノエステルの内、カプリン酸以上のエステルは、融点が30〜60℃前後の常温で半固体状或いは固体状であるため常温では水に分散しにくく、そのままでは使いづらいことが問題となっていた。
【0004】
そこでこの問題点を解決するものとして、溶融状態のポリグリセリン脂肪酸エステルと加温された水とを攪拌下混合し、ペースト状の組成物を得る方法(例えば、特許文献11参照)、ポリグリセリン脂肪酸モノエステル、アルコール及び多価アルコール等を含む組成物(例えば、特許文献12参照)、或いはポリグリセリン脂肪酸モノエステルを可溶化した組成物(例えば、特許文献13参照)が提示されている。
しかし、前2者はHLB値の低いポリグリセリン脂肪酸モノエステルの場合、得られた組成物を室温で長期間保存すると分離したり、底に沈殿状のものが生じたりするなどの問題があって実用化は難しく、又後者は製造上の制約から有効成分としてのポリグリセリン脂肪酸モノエステルの濃度が低いという欠点があった。
【0005】
【特許文献1】
米国特許第4002775号明細書
【特許文献2】
特開昭62−179371号公報
【特許文献3】
特開昭62−205748号公報
【特許文献4】
特開昭63−059862号公報
【特許文献5】
特開昭63−276445号公報
【特許文献6】
特開平08−228735号公報
【特許文献7】
特開平08−228736号公報
【特許文献8】
特開平10−225281号公報
【特許文献9】
特開平10−295346号公報
【特許文献10】
特開平10−295347号公報
【特許文献11】
特開平08−176294号公報
【特許文献12】
特開2000−078947号公報
【特許文献13】
特開平10−295272号公報(第3頁右欄第30〜37行)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、食品の変質の原因となる微生物に対して静菌作用を有するポリグリセリン脂肪酸モノエステルを高濃度で含有し、且つ長期間保存しても分離・沈殿等を生じない液状の組成物を提供するためなされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、耐熱性細菌等の微生物に対して静菌作用を有するポリグリセリン脂肪酸モノエステルと増粘安定剤を併用することにより上記課題が解決されることを見出し、この知見に基づいて更に検討を行い、本発明をなすに至った。
【0008】
即ち、本発明の方法は、
(1) 平均重合度が2〜3のポリグリセリンと脂肪酸とのエステルであって、該エステル中のモノエステル含量が50質量%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル(a)、増粘安定剤(b)及び水(c)を含有することを特徴とする食品の保存性向上剤、
(2) 更にアルコール(d)を含有することを特徴とする前記(1)に記載された食品の保存性向上剤、
(3) 更に有機酸、有機酸の塩、無機酸及び無機酸の塩から選ばれる1種又は2種以上(e)を含有することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載された食品の保存性向上剤、
(4) 前記(1)〜(3)のいずれかに記載された保存性向上剤が添加されていることを特徴とする食品、
(5) 食品が低酸性飲料であることを特徴とする前記(4)に記載された食品、
(6) 食品がコーヒー乳飲料、カフェオーレ、ミルクティー、ミルクココア又はミルクセーキであることを特徴とする前記(4)に記載された食品、
に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の組成物は、耐熱性細菌等の微生物に対して静菌作用を有するポリグリセリン脂肪酸モノエステルを、増粘安定剤と共に水に分散させることにより得られる。
【0010】
本発明では、耐熱性細菌に対して静菌作用を有するポリグリセリン脂肪酸エステルとして平均重合度が2〜3のポリグリセリンと脂肪酸とのエステルが用いられる。ここで、平均重合度が2〜3のポリグリセリンとは、平均重合度が約1.5〜2.4のジグリセリン及び平均重合度が約2.5〜3.4のトリグリセリン又はこれらの混合物であって、ジグリセリン及び/又はトリグリセリンを、ポリグリセリン或いはポリグリセリン混合物全体に対して好ましくは約50質量%以上、より好ましくは約80質量%以上、更に好ましくは約90質量%以上含むものである。
また、このようなポリグリセリンとエステルを形成している脂肪酸としては、炭素数約8〜24の飽和或いは不飽和脂肪酸から選ばれた1種又は2種以上の脂肪酸が挙げられる。飽和又は不飽和の脂肪酸は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよいが、好ましくは炭素数8〜18の脂肪酸、具体的には例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸から選ばれる1種又は2種以上であって、これらの脂肪酸の含有量は、脂肪酸或いは脂肪酸混合物全体に対して、好ましくは約70質量%以上、更に好ましくは約90質量%以上である。
【0011】
本発明において、平均重合度が2〜3のポリグリセリンと脂肪酸とのエステルであるポリグリセリン脂肪酸エステル(a)としては、好ましくはジグリセリン或いはトリグリセリンと炭素数12〜18の飽和脂肪酸とのエステル、例えばジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノミリステート、ジグリセリンモノパルミテート、トリグリセリンモノラウレート、トリグリセリンモノミリステート、トリグリセリンモノパルミテート、トリグリセリンモノステアレート等が挙げられ、更に好ましくはジグリセリンモノミリステート或いはトリグリセリンモノパルミテートである。
該ポリグリセリン脂肪酸エステル中のモノエステル含量は通常約50質量%以上、好ましくは約70質量%以上である。これは、ジエステル以上の多価エステルや遊離のポリグリセリン等には、実用的な意味において静菌効果が弱く、それ故モノエステルの含量が50質量%未満では十分な静菌効果が期待できないからである。
【0012】
ここで、ジグリセリンモノミリステートとしては、例えばジグリセリンとミリスチン酸を等モルで反応させ、反応物から未反応のポリオールを減圧下留去したものが挙げられるが、更に分子蒸留により留分として得られるモノエステル含量が70質量%以上のものとすることができる。尚ここで用いられるジグリセリンは、工業的にはグリセリンを脱水縮合し、さらに蒸留することにより精製されるが、通常ジグリセリンの外に少量のグリセリン、トリグリセリン等が含まれている。
【0013】
同様に、トリグリセリンモノパルミテートとしては、例えばトリグリセリンとパルミチン酸を等モルで反応させ、反応物から未反応のポリオールを分離・除去したものが挙げられるが、更に分子蒸留、カラムクロマトグラフィー或いは溶剤抽出等により精製されたモノエステル含量が50質量%以上のものであることが好ましい。尚ここで用いられるトリグリセリンは、工業的にはグリセリンを脱水縮合したものを例えば蒸留することにより得られ、通常トリグリセリンの外に少量のジグリセリン、テトラグリセリン等が含まれている。
【0014】
本発明において用いられる増粘安定剤としては、アラビアガム、アルギン酸及び/又はその塩、カシアガム、ガティガム、カラギナン、カラヤガム、キサンタンガム、キチン、キトサン、グアーガム、サイリウムシードガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、デキストラン、トラガントガム、ファーセレラン、プルラン、ペクチン、ローカストビーンガム等が挙げられ、好ましくはキサンタンガム、グアーガム、タマリンドシードガム、トラガントガム、ローカストビーンガムであり、特に好ましくはキサンタンガム、タマリンドシードガムである。これら増粘安定剤は、単独で用いるか、又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0015】
本発明において用いられるアルコールとしては、「含水特級」及び「含水一級」として規格が定められている、エチルアルコール濃度95.0容量%以上の食品工業用アルコールが挙げられる。これらのアルコールには、飲用への転用を防止するため食品用フレーバー等の変性剤が混和されており、その変性剤は用途によって選択することができる。またアルコール事業法に基づく許可を得ることにより無変性アルコールも使用することができる。アルコールは主として該組成物の保存安定化(防腐・防黴)の目的で加えられる。
【0016】
本発明において用いられる有機酸としては、アジピン酸、クエン酸、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、酒石酸、乳酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸、コハク酸等が挙げられ、好ましくはクエン酸、乳酸であり、特に好ましくはクエン酸である。また本発明において用いられる有機酸の塩としては、食品添加物として認可されている上記有機酸のナトリウム塩又はカリウム塩が挙げられる。これら有機酸やその塩は、単独で用いるか、又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0017】
本発明において用いられる無機酸やその塩としては、ピロリン酸四カリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸、リン酸三カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等が挙げられ、好ましくはリン酸、リン酸三カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムであり、特に好ましくはリン酸、リン酸三カリウム、リン酸三ナトリウム等が挙げられる。これら無機酸やその塩は、単独で用いるか、又は2種以上の混合物として用いることができる。
上記酸及び/又はその塩もまたアルコールと同じ目的で加えられる。これらの酸及び/又はその塩は組成物のpHが5.0以下、好ましくは4.5以下、更に好ましくは3.5以下となるよう配合され、緩衝作用を持たせるため有機酸或いは無機酸とその塩を組み合わせて用いるのが好ましい。
【0018】
本発明になる乳化剤組成物を製造するための装置は特に限定されないが、例えば、攪拌機、加熱用のジャケット、邪魔板を備えた通常の攪拌・混合槽が用いられる。攪拌機に装備する攪拌翼の形状はプロペラ型、かい十字型、ファンタービン型、ディスクタービン型、いかり型のいずれでも良いが、好ましくはディスクタービン型、いかり型である。
【0019】
該組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば水に増粘安定剤を加え、約40〜95℃、好ましくは約60〜80℃で攪拌・溶解するのが良い。有機酸及び/又はその塩や、無機酸及び/又はその塩を用いる場合は、増粘安定剤と共に水に加えられる。次に溶融したポリグリセリン脂肪酸エステルを加え約60〜80℃で攪拌・混合し、コロイド状態、ミセル状態或いは1種の液晶状態の分散液を室温まで冷却することにより、製造される。得られた組成物の性状は乳化剤の濃度により異なり、濃度の順に液状、ペースト状、或いはゲル状を呈する。
尚、アルコールは、必要に応じて、冷却時に分散液に添加され、均一に混合される。
【0020】
冷却はジャケットに水を通すことにより行われるが、好ましくは攪拌・混合槽より液状の上記分散液を抜き出し、ボテーター(ケメトロン社)、オンレーター(桜製作所社)、コンサーム(アルファ・ラバル社)等の急冷混捏装置を用いて冷却する方法である。この方法により、容器への充填、計量が容易となる。
【0021】
本発明における該組成物100質量%中の各成分は、ポリグリセリン脂肪酸エステル(a)が約1〜80質量%、好ましくは約5〜50質量%、更に好ましくは約10〜40質量%、増粘安定剤(b)が約0.01〜30質量%、好ましくは約0.1〜20質量%、アルコール(d)が約0.5〜30質量%、好ましくは約1〜20質量%、更に好ましくは約1〜10質量%、酸及び/又はその塩(e)が約0.01〜10質量%、好ましくは約0.05〜5質量%、残りが水(c)から構成される。
【0022】
該組成物中には、本発明の目的を阻害しない範囲で、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン等の食品用乳化剤を加えることができる。ここで、グリセリン脂肪酸エステルには、グリセリンと脂肪酸のエステルの他、グリセリン酢酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン縮合リシノール酸エステルが含まれる。またレシチンには、分別レシチン、酵素分解レシチン、酵素処理レシチンが含まれる。
【0023】
更に、該組成物中には、本発明の目的を阻害しない範囲で、例えばプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、キシロース、ブドウ糖、果糖等の単糖、ショ糖、乳糖、麦芽糖等のオリゴ糖、デキストリン、水飴等のでん粉分解物、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース等のマルトオリゴ糖等の糖類、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、還元水飴等の糖アルコール類の他、香料、着色料、酸化防止剤、ビタミン類、抗菌剤等を配合することができる。
【0024】
本発明になる食品の保存性向上剤を添加する対象の食品としては、特に限定されないが、例えば冷凍すり身、蒲鉾、竹輪、さつま揚げ、魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品、ハム、ソーセージ等の畜肉製品、緑茶、ウーロン茶、麦茶、混合茶(ブレンドティー)、コーヒー、コーヒー乳飲料、カフェオーレ、紅茶、ミルクティー、ココア、ミルクココア、ミルクセーキ、汁粉等の低酸性飲料、果汁やフレーバー、機能性素材等を含んだ機能性飲料、スポーツ飲料、栄養補給飲料等の酸性飲料、ポテトサラダ、マカロニサラダ、餃子、シュウマイ、厚焼き玉子、和え物、煮物等の惣菜類、浅漬け等の漬物類、米飯・おかゆ類、豆腐・厚揚げ類、生麺、茹で麺、蒸し麺等の麺類、小豆餡、いも餡、栗餡等の餡類、フラワーペースト、カスタードクリーム等のクリーム類、ハンバーグ、肉団子等の挽肉加工品、ネギトロ、タタキ等の魚肉加工品、カレードーナッツ、中華饅頭(肉まん)等の芯部具材類、親子丼、牛丼、カツ丼等の丼物、が挙げられ、特に低酸性飲料(ミネラルウオーター、冷凍果汁飲料及び原料用果汁以外の清涼飲料水の内、pH4.6以上で、かつ水分活性が0.94を越えるもの)に高い効果を示す。更に上記食品を瓶詰、缶詰、レトルトパウチ、レトルトパウチ、各種プラスチックフィルムによりケーシング、チルドまたはレトルトした密封包装食品も挙げられる。
【0025】
本発明になる食品の保存性向上剤の添加量は、食品に対して通常約0.01〜5質量%、好ましくは約0.1〜3質量%、より好ましくは約0.2〜2質量%である。また、本発明の食品は、ポリグリセリン脂肪酸エステル (a)を約0.0001〜0.3質量%含むのが好ましい。
【0026】
本発明の対象となる耐熱性細菌としては特に限定されないが、一般的には、Bacillus subtilus、Bacillus coagulans 、Bacillus stearothermophilus、Bacillus licheniformis、Bacillus flexus、 Clostridium thermosaccharolyticum、Streptococcus thermophilus、Alicyclobacillus acidoterrestris、 Alicyclobacillus acidocaldarius 、Alicyclobacillus cycloheptanicus等が挙げられる。
【0027】
【実施例】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
(試験例1)
[原材料]
・ジグリセリンモノミリステート
(ポエムDM−100:理研ビタミン社;モノエステル含量 約80質量%)
・トリグリセリンモノパルミテート
(試作例1;モノエステル含量 約70質量%)
・トリグリセリンモノパルミテート
(試作例2;モノエステル含量 約40質量%)
・キサンタンガム(エコーガム:大日本製薬社)
・タマリンドシードガム(グリロイド:大日本製薬社)
・エタノール(食品工業用;濃度95.0容量%以上)
・クエン酸(食品添加物:扶桑化学工業社)
・クエン酸三ナトリウム(食品添加物:扶桑化学工業社)
【0028】
[実施例および比較例の配合組成]
【表1】
【0029】
[試作例、実施例および比較例組成物の作り方]
(試作例1及び試作例2) グリセリン20kgに酸化カルシウムを40g加え、260℃で3時間グリセリン縮合反応を行った後、リン酸を72g添加して中和し、冷却した。得られた組成物は、グリセリン59質量%、ジグリセリン23質量%、トリグリセリン12質量%、テトラグリセリン5質量%、ペンタグリセリン1質量%であった。その組成物を分子蒸留し、蒸留温度を傾斜的に上げながら順にフラクションを留去し、トリグリセリン90質量%を含むフラクションを得た。このトリグリセリンを活性炭処理して精製した後、パルミチン酸(純度96質量%)をトリグリセリンに対して1:1(モル比)の割合で混合し、260℃で1時間エステル化反応を行った。エステル化反応終了後、反応液を100℃で保持しながら15分間静置することによって反応液を二層分離し、未反応のトリグリセリンを含む層を除去し、トリグリセリンモノパルミテート反応物(試作例2)を得た。
得られたトリグリセリンモノパルミテート反応物をヘキサンに分散させ、次にメタノール−水混液(メタノール:水=95:5)を加えて分配抽出し、メタノール−水層をロータリーエバポレーター(ヤマト科学社)を用いて脱溶剤後、更にクロロホルムと水により分配抽出した。クロロホルム層をロータリーエバポレーターで脱溶剤し、純度70.9質量%のトリグリセリンモノパルミテート(試作例1)を得た。
【0030】
(実施例1)300mlトールビ―カーにキサンタンガムと水を入れて約70℃に加熱し、均一に分散・溶解する。次に、攪拌機(スリーワンモーターFBL-600:HEIDON社、5cm径4枚羽根型攪拌翼2段装着)をセットし、低速で攪拌しながら溶融したポエムDM−100を加え、その後温度を約70℃に保ちながら500rpmで20分間攪拌、混合した。尚、処理量は全量を300gとした。
【0031】
(実施例2)300mlトールビ―カーにキサンタンガムと水を入れて約70℃に加熱し、均一に分散・溶解する。次に、実施例1と同じ攪拌機をセットし、低速で攪拌しながら溶融したポエムDM−100を加え、その後温度を約70℃に保ちながら500rpmで20分間攪拌、混合した。得られた混合物を室温まで冷却し、エタノールを加え均一に混合した。尚、処理量は全量を300gとした。
【0032】
(実施例3)300mlトールビ―カーにキサンタンガム、クエン酸、クエン酸三ナトリウムと水を入れて約70℃に加熱し、均一に分散・溶解する。次に、実施例1と同じ攪拌機をセットし、低速で攪拌しながら溶融したポエムDM−100を加え、その後温度を約70℃に保ちながら500rpmで20分間攪拌、混合した。得られた混合物を室温まで冷却し、エタノールを加え均一に混合した。尚、処理量は全量を300gとした。
【0033】
(実施例4)300mlトールビ―カーにタマリンドシードガムと水を入れて約70℃に加熱し、均一に分散・溶解する。次に、実施例1と同じ攪拌機をセットし、低速で攪拌しながら溶融したトリグリセリンモノパルミテート(試作例1)を加え、その後温度を約70℃に保ちながら500rpmで20分間攪拌、混合した。得られた混合物を室温まで冷却し、エタノールを加え均一に混合した。尚、処理量は全量を300gとした。
【0034】
(比較例1)300mlトールビ―カーに水を入れて約70℃に加熱し、次に実施例1と同じ攪拌機をセットし、低速で攪拌しながら溶融したポエムDM−100を加え、その後温度を約70℃に保ちながら500rpmで20分間攪拌、混合した。尚、処理量は全量を300gとした。
【0035】
(比較例2)実施例4のトリグリセリンモノパルミテート(試作例1)をトリグリセリンモノパルミテート(試作例2)に代えて、同様に攪拌、混合した。得られた混合物を室温まで冷却し、エタノールを加え均一に混合した。尚、処理量は全量を300gとした。
【0036】
[組成物の性状]
方法: 作製直後の組成物の性状を目視で観察した。次に組成物を300ml広口ガラス瓶に移し、蓋を締めて室温で1ヶ月保存し、状態の変化を観察した。
【0037】
[結果]
【表2】
【0038】
(試験例2)
カフェオーレを作製し、保存試験を行った。飲料の配合を表3に示す。
【0039】
【表3】
【0040】
[飲料用液の作製]
コーヒー抽出液を水に加え、重曹を添加してpHを6.8に調整した後60〜70℃に加熱し、脱脂粉乳、グラニュー糖を加え溶解する。次に予め約70℃に加温して、ポエムB−10を分散・溶解させた牛乳を加えて混合し、得られた調合液を高圧式ホモジナイザーを用いて150kgf/cm2、60〜70℃で2回均質化処理を行い、カフェオーレを作製した。
【0041】
[試験方法]
上記飲料溶液に、実施例1、実施例2、実施例3の試料組成物を、有効成分(ここではポエムDM−100)濃度800ppmとなるよう添加した飲料溶液をそれぞれ作製し、レトルト滅菌処理(121℃、20分間)した。室温まで冷却した処理液を、予め滅菌済みの250ml容PETボトルに無菌的に充填し、そこにBacillus licheniformis胞子を2.5×101個/ml植菌し、密封した。このようにして作製した密封飲料を30℃で3日間保存した。対照として、試料組成物無添加のものを準備し、同時に試験した。
【0042】
[評価方法]
1.耐熱性細菌の増殖阻害効果
ポテトデキストロース寒天(PDA)培地による希釈平板培養(37℃、3日間)により、生菌数を計数した。
【0043】
[結果]
【表4】
【0044】
(試験例3)
コーヒー乳飲料を作製し、保存試験を行った。飲料の配合を表5に示す。
【0045】
【表5】
【0046】
[飲料用液の作製]
コーヒー抽出液(約90℃)を水に加え、重曹を添加してpHを6.8に調整した後60〜70℃に加熱し、グラニュー糖を加え溶解する。次に予め約70℃に加温して、ポエムB−10を分散・溶解させた牛乳を加えて混合し、得られた調合液を高圧式ホモジナイザーを用いて170kgf/cm2、60℃で2回均質化処理を行い、コーヒー乳飲料を作製した。
【0047】
[試験方法]
上記飲料溶液に、実施例1、実施例2、実施例3の試料組成物を、有効成分(ここではポエムDM−100)濃度500ppmとなるよう添加した飲料溶液をそれぞれ作製し、レトルト滅菌処理(121℃、20分間)した。室温まで冷却した処理液を、予め滅菌済みの250ml容PETボトルに無菌的に充填し、そこにBacillus coagulans胞子を1.0×104個/ml植菌し、密封した。このようにして作製した密封飲料を30℃で4週間保存した。対照として、試料組成物無添加のものを準備し、同時に試験した。
【0048】
[評価方法]
1.耐熱性細菌の増殖阻害効果
ポテトデキストロース寒天(PDA)培地による希釈平板培養(37℃、3日間)により、生菌数を計数した。
【0049】
[結果]
【表6】
【0050】
(試験例4)
ミルクティーを作製し、保存試験を行った。飲料の配合を表7に示す。
【0051】
【表7】
【0052】
[飲料用液の作製]
紅茶抽出液(約90℃)を水に加え、重曹を添加してpHを6.8に調整した後60〜70℃に加熱し、グラニュー糖を加え溶解する。次に予め約70℃に加温して、ポエムB−10を分散・溶解させた牛乳を加えて混合し、得られた調合液を高圧式ホモジナイザーを用いて200kgf/cm2、60℃で2回均質化処理を行い、ミルクティーを作製した。
【0053】
[試験方法]
上記飲料溶液に、実施例4又は比較例2の試料組成物を有効成分(ここではトリグリセリンモノパルミテート試作例1及び2)濃度500ppmとなるよう添加した飲料溶液をそれぞれ作製し、レトルト滅菌処理(121℃、20分間)した。室温まで冷却した処理液を、予め滅菌済みの250ml容PETボトルに無菌的に充填し、そこにClostridium thermosaccharolyticum胞子を8.5×104個/ml植菌し、密封した。このようにして作製した密封飲料を40℃で1ヶ月間保存した。対照として、試料組成物無添加のものを準備し、同時に試験した。
【0054】
[評価方法]
1ヶ月後開封し、変敗の有無を官能的に評価した。
【0055】
[結果]
【表8】
(試験例5)
卵黄37.5質量部、砂糖32質量部を混合した後、小麦粉10質量部を加えミキシングしたものに、実施例4及び比較例2の試料組成物 3.3質量部を添加し、80℃まで加熱した牛乳250質量部を加える。これを加熱して練り上げ、カスタードクリームを調製した。室温まで冷却した後、無菌のポリエチレン袋に小分けし、25℃恒温器中で保存した。保存1,2、3および4日後に生菌数を測定した。
【0056】
[結果]
【表9】
【0057】
【発明の効果】
食品の変質の原因となる微生物に対して静菌作用を有するポリグリセリン脂肪酸モノエステルを高濃度で含有し、常温で長期間保存しても分離したり、底に沈殿状のものを生じることはない組成物が提供される。該組成物は、計量等の取り扱いが容易で、食品に添加しても速やかに均一に分散するため広範囲の食品に使用可能であり、とりわけ乳成分を含む低酸性飲料に顕著な効果を奏する。
Claims (5)
- 平均重合度が2〜3のポリグリセリンと脂肪酸とのエステルであって、該エステル中のモノエステル含量が50質量%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル(a)、増粘安定剤(b)及び水(c)を含有し、向上剤100質量%中、(a)の含有量が10〜40質量%であり、(b)の含有量が0.01〜30質量%であることを特徴とする食品の保存性向上剤。
- 向上剤100質量%中、増粘安定剤(b)の含有量が0.1〜20質量%である請求項1に記載の食品の保存性向上剤。
- 向上剤100質量%中、増粘安定剤(b)の含有量が0.1〜0.3質量%である請求項1に記載の食品の保存性向上剤。
- 更にアルコール(d)を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された食品の保存性向上剤。
- 更に有機酸、有機酸の塩、無機酸及び無機酸の塩から選ばれる1種又は2種以上(e)を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載された食品の保存性向上剤。
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