JP3991592B2 - 電解コンデンサ駆動用電解液およびそれを用いた電解コンデンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電解コンデンサ駆動用電解液およびそれを用いた電解コンデンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図2は電解コンデンサに用いられるコンデンサ素子の構成を示す一部展開斜視図である。同図において、アルミニウム箔をエッチング処理によって実効表面積を拡大させた表面に化成法により誘電体酸化皮膜を形成した陽極箔31とアルミニウム箔をエッチング処理した陰極箔32とをクラフト紙やマニラ紙などからなるセパレータ33を介して巻回することによりコンデンサ素子が構成されている。このコンデンサ素子は陽極箔31および陰極箔32にそれぞれ引き出しリード34を接続し、駆動用電解液(図示せず)を含浸させるとともに、このコンデンサ素子をアルミニウムケースなどの金属ケース(図示せず)内に挿入してゴム等の封止材(図示せず)で封止することにより電解コンデンサが得られる。
【0003】
上記駆動用電解液は、有機溶媒と溶質として硼酸もしくは硼酸アンモニウムが用いられているが、これらは比較的化成性が良好であることから高圧用として長期にわたって使用されている。しかし、硼酸もしくは硼酸アンモニウムは、分子内に縮合水を有するため、高温でも特に100℃以上で使用する電解コンデンサに用いることはできなかった。
【0004】
そこで非水系の駆動用電解液の溶質として、アゼライン酸、ブチルオクタン二酸(特公昭60−13293号公報)、5,6−デカンジカルボン酸(特公昭63−15738号公報)、側鎖を有する二塩基酸(特開平2−145539号公報)等の二塩基酸及びそれらの塩を用いた駆動用電解液が知られている。これら有機カルボン酸は、駆動用電解液中の水分を低減できるため、100℃以上の環境下でも水分による内圧上昇による電解コンデンサの開弁を抑制することができるとされている。
【0005】
また、駆動用電解液の火花発生電圧および化成性を改善する目的でポリエチレングリコール(特公平3−76776号公報)、ポリグリセリン(特公平7−70443号公報)、ポリビニルアルコール(特公平7−22087号公報)、アルキレンブロックポリマー(特開平2−312218号公報)等の界面活性剤を添加することも知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年高調波対策回路や車両用に用いられる電解コンデンサは、従来の電解コンデンサ以上の高耐圧、高耐熱、長寿命が必要とされており、その要求を満足させるためには、上記従来の駆動用電解液に使用していた有機カルボン酸もしくはその塩に溶質として界面活性剤を添加した駆動用電解液では、更なる高耐圧化(火花発生電圧の向上)、高耐熱、長寿命の点で満足することができないという課題があった。
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、電解コンデンサの高耐圧、高耐熱、長寿命に寄与できる電解コンデンサ駆動用電解液を提供し、この電解コンデンサ駆動用電解液を電解コンデンサに使用することにより、高耐圧、高耐熱、長寿命の電解コンデンサを得ることを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の請求項1に記載の発明は、有機溶媒に有機酸および/またはその塩の1種以上を溶質として含み、かつ一般式(化2)で示されるポリN−ビニルアセトアミドを添加した構成とするもので、一般式(化2)で示されるポリN−ビニルアセトアミドは、水への溶解性が高く有機溶媒に溶解し難いので粘性を高めることができ、また、駆動用電解液中で適度に溶解して分散効果を発揮することができることから、電導度を低下させずに火花発生電圧を飛躍的に向上させることができるという作用を有する。
【0009】
【化2】
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、有機溶媒に無機酸および/またはその塩の1種以上を溶質として含み、かつ一般式(化2)で示されるポリN−ビニルアセトアミドを添加した構成とするものであり、請求項1に記載の発明による作用効果をより効果的に得ることができるという作用を有する。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、一般式(化2)で示されるポリN−ビニルアセトアミドと多価アルコールを添加した構成とするもので、酸化皮膜の修復過程である溶解→生成をより良いバランスを保って行うことができるため、請求項1または2に記載の発明による作用効果よりもさらに火花発生電圧を向上させることができるという作用を有する。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3に記載の発明において、ポリN−ビニルアセトアミドの添加量を規定するものであり、また、本発明の請求項5に記載の発明は、ポリN−ビニルアセトアミドの分子量を規定するもので、使用可能な添加量の範囲または分子量の範囲を規定することにより、請求項1〜3に記載の発明により得られる作用をより効果的に得ることができるという作用を有する。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜3に記載の電解コンデンサ駆動用電解液を使用して電解コンデンサとした構成とするもので、高耐圧で信頼性の高い電解コンデンサを得ることができるという作用を有する。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施の形態における電解コンデンサの構成を示す一部切欠斜視図である。同図において、アルミニウム箔をエッチング処理により実効表面積を拡大した表面に陽極酸化により誘電体酸化皮膜を形成した陽極箔1と、アルミニウム箔をエッチング処理した陰極箔2とをセパレータ3を介して巻回することによりコンデンサ素子9を構成し、このコンデンサ素子9の陽極箔1および陰極箔2にそれぞれ引き出し用陽極リード5、陰極リード6を接続し、このコンデンサ素子9に駆動用電解液4を含浸させて、このコンデンサ素子9をアルミニウムケース8内に挿入し、封口体7で封止することにより電解コンデンサが構成されている。
【0015】
上記駆動用電解液4は、有機溶媒に有機酸および/またはその塩の1種以上を溶質として含み、かつ一般式(化2)で示されるポリN−ビニルアセトアミドを添加したものであり、駆動用電解液の粘性を高めることができ、また駆動用電解液4中に適度に溶解して分散効果を発揮することができることから、電導度を低下することなく火花発生電圧を飛躍的に向上させることができる。
【0016】
以下、本実施の形態について実施例を用いて詳細に説明する。
【0017】
(表1)の実施例1〜4はポリN−ビニルアセトアミドを用いた駆動用電解液、比較例1〜5はポリN−ビニルアセトアミドを用いない駆動用電解液で、それぞれの駆動用電解液の組成と火花発生電圧値を示す。
【0018】
【表1】
【0019】
(表1)から明らかなように、ポリN−ビニルアセトアミドを用いた駆動用電解液は、化成性に優れており高い火花発生電圧を得ることができる。
【0020】
また、駆動用電解液の電導度は、実施例1および2に示すような有機酸を用いることにより、高い電導度を維持し、火花発生電圧を飛躍的に向上させることができる。実施例4の駆動用電解液でも、比較例1の有機酸を用いたときの電導度レベルには及ばないが、比較例5の硼酸、硼酸アンモニウムを用いたものと同等レベルを維持することができる。
【0021】
次に、ポリN−ビニルアセトアミドの添加量および分子量を変えたときの駆動用電解液の組成と火花発生電圧値を(表2)に示す。
【0022】
【表2】
【0023】
(表2)から明らかなように、比較例6のポリN−ビニルアセトアミドを添加しないときの火花発生電圧に対して、実施例5〜13のようにポリN−ビニルアセトアミドの添加量を変えたときの火花発生電圧は、その添加量に応じて火花発生電圧を向上させることができる。しかし、添加量が10wt%を越えると溶液の粘度が極端に上昇し、溶液の電導度が低下して駆動用電解液としての機能を果たすことができなくなる。従って、ポリN−ビニルアセトアミドの添加量は0.01wt%〜10wt%の範囲にするのが好ましい。
【0024】
また、実施例11〜13はポリN−ビニルアセトアミドの分子量を変えたときの火花発生電圧の結果を示したものである。ポリN−ビニルアセトアミドの分子量を高くすると微量の添加で火花発生電圧を向上させることができる。しかし、分子量が高くなるにつれて溶媒中に溶解しにくくなるため、ポリN−ビニルアセトアミドの分子量は1000〜1000000の範囲が好ましい。
【0025】
次に、ポリN−ビニルアセトアミドを添加した駆動用電解液を用いた電解コンデンサについて説明する。
【0026】
実施例3と比較例3および5の駆動用電解液を用いて、図1に示した電解コンデンサを各20個作製し、寿命試験を行った結果を(表3)に示す。ここで使用した電解コンデンサは定格500WV33μFであり、寿命試験の試験温度は105℃で行った。
【0027】
【表3】
【0028】
(表3)から明らかなように、実施例3の駆動用電解液を用いた電解コンデンサは、火花発生電圧が高いという特徴から製品試作段階であるエージング工程および寿命試験を通じてショートパンク等の不具合も発生せず、寿命試験後の容量変化率、tanδ変化、漏れ電流(LC)、外観変化の特性においても変化が少なく信頼性の高い電解コンデンサを得ることができる。
【0029】
次に、実施例3の駆動用電解液を用いた電解コンデンサを20個作製し、この電解コンデンサの高温安定性を確認するために、試験温度を125℃中で寿命試験を行った。その結果を(表4)に示す。ここで使用した電解コンデンサは定格500WV10μFである。
【0030】
【表4】
【0031】
(表4)から明らかなように、実施例3の駆動用電解液を用いた電解コンデンサは125℃という高温度環境下で評価しても、寿命試験後のショートパンク等の不具合も生じず、試験後の容量変化率、tanδ変化、漏れ電流(LC)、外観変化のどの特性においても変化が少なく信頼性の高い電解コンデンサを得ることができる。
【0032】
上記実施例4では、ヘキシット類、ペントース類としてマンニットを用いたが、その他としてタリット、ソルビット、イジット、アロズルシット、ズルシット、キシリット、ペンタエリトリット、キシロース、アラビノース、リブロース、キシルロース、リキソース等を用いることができ、いずれにおいてもその効果はマンニットと同等の特性を得ることができる。
【0033】
また、上記ヘキシット類はD体、L体、メソ体等の立体異性体が存在するが、立体異性体による効果の違いはなかった。
【0034】
さらに、上記ヘキシット類、ペントース類およびグリセリンの多価アルコール類を同時に1種以上添加しても、その効果は何等問題ない。
【0035】
上記各実施例で用いた溶媒は全てエチレングリコールを用いたが、これ以外の溶媒としてアミド類、ラクトン類、グリコール類、硫黄化合物類、炭酸塩類を単独で用いるか、または混合して使用することができる。この中でも、好ましい溶媒は炭酸プロピル、ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、エチレンシアノヒドリン、エチレングリコールモノまたはジアルキルエーテル等である。そしてこれらの少なくとも1種以上を用いることにより、各実施例と同様の効果が得られる。
【0036】
上記実施例の有機酸は安息香酸、アゼライン酸、1,7−オクタンジカルボン酸を用いたが、その他の有機酸としてはアジピン酸、グルタル酸、フタル酸、マレイン酸、安息香酸、5,6−デカンジカルボン酸、1,6−デカンジカルボン酸等を用いることができる。また、この有機酸の塩としてはアンモニウム塩以外にアミン塩、アミジン系塩等を使用することができる。その有機酸および/またはその塩は、単独はもちろんのこと、使用用途に応じて2種以上の混合でも問題なく、上記各実施例と同等の効果を得ることができる。
【0037】
【発明の効果】
以上のように本発明の電解コンデンサ駆動用電解液は、有機溶媒に有機酸および/またはその塩の1種以上を溶質として含み、かつ一般式(化2)で示されるポリN−ビニルアセトアミドを添加した構成とするもので、一般式(化2)で示されるポリN−ビニルアセトアミドは、水への溶解性が高く有機溶媒に溶解し難いので粘性を高めることができ、また、駆動用電解液中で適度に溶解して分散効果を発揮することができることから、電導度を低下させずに火花発生電圧を飛躍的に向上させることができる。
【0038】
また、一般式(化2)で示されるポリN−ビニルアセトアミドを添加した駆動用電解液を用いて電解コンデンサにすることにより、125℃という高温度の環境下でも500V以上の高耐圧で、長時間特性の安定した電解コンデンサの供給に寄与することができ、工業的な価値の大なるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態における電解コンデンサの構成を示す一部切欠斜視図
【図2】 従来の電解コンデンサのコンデンサ素子を示す一部展開斜視図
【符号の説明】
1 陽極箔
2 陰極箔
3 セパレータ
4 駆動用電解液
5 陽極リード
6 陰極リード
7 封口体
8 アルミニウムケース
9 コンデンサ素子
Claims (6)
- 有機溶媒に無機酸および/またはその塩の1種以上を溶質として含む請求項1に記載の電解コンデンサ用駆動用電解液。
- 一般式(化1)で示されるポリN−ビニルアセトアミドと多価アルコールを添加した請求項1または請求項2からなる電解コンデンサ駆動用電解液。
- 一般式(化1)で示されるポリN−ビニルアセトアミドの添加量を0.01wt%〜10wt%の範囲とした請求項1〜3いずれか一つに記載の電解コンデンサ駆動用電解液。
- 一般式(化1)で示されるポリN−ビニルアセトアミドの分子量が1000〜1000000の範囲である請求項1〜3いずれか一つに記載の電解コンデンサ駆動用電解液。
- 上記請求項1〜3いずれか一つに記載の電解コンデンサ駆動用電解液を用いた電解コンデンサ。
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