JP4063650B2 - 電解コンデンサの駆動用電解液 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解コンデンサの駆動用電解液(以下、電解液と称す)の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電解コンデンサの電解液は、エチレングリコールを主溶媒とし、カルボン酸またはそのアンモニウム塩と、ホウ酸またはそのアンモニウム塩とを溶解し、さらにマンニトール、ソルビトール等の多価アルコールを添加すると電解液の耐電圧を向上することが知られている。さらに、ポリエチレングリコールやポリビニルアルコール等の合成高分子を配合することも提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特公平7−48460号公報(第2頁、表)
【特許文献2】
特公平7−63047号公報(第3頁、表1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、平均分子量が1000以上のポリエチレングリコールやポリビニルアルコール等の合成高分子は耐電圧を向上させる効果は高いが、比抵抗の上昇が大きく、かつ、エチレングリコールを主溶媒とする電解液に対する溶解性が非常に低いという問題があった。
【0005】
また、ポリビニルアルコール等の合成高分子の添加により、製品内部の発熱と酸素によって高分子の主鎖が切断され、長期間初期の耐電圧を維持できないという問題があった。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、耐電圧の向上を図ることができるとともに、エチレングリコールを主成分とする溶媒に対する溶解性が高く、かつ、高温での比抵抗上昇を抑えることができる電解コンデンサの駆動用電解液を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため各種検討した結果、エチレングリコールに対して溶解性の高い4−オクチルジフェニルアミンを添加した電解液が、低比抵抗で、かつ高耐電圧性を有し、高温で安定であることを見出した。
【0008】
すなわち本発明に係る電解液では、エチレングリコールを主溶媒とし、カルボン酸またはその塩と、ホウ酸またはその塩と、以下の化学式で表される4−オクチルジフェニルアミンとを溶解したことを特徴とする。
【0009】
【化2】
【0010】
本発明において、4−オクチルジフェニルアミンの溶解量は、電解液全体に対して0.1〜10.0wt%であることが好ましい。
【0011】
本発明において、カルボン酸としては、アゼライン酸、セバシン酸、1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸、7−ビニルヘキサデセン−1,16−ジカルボン酸等を例示することができる。
【0012】
カルボン酸あるいはホウ酸の塩としては、アンモニウム塩の他、メチルアミン、エチルアミン、t−ブチルアミン等の一級アミン塩、ジメチルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン等の二級アミン塩、トリメチルアミン、ジエチルメチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエチルアミン等の三級アミン塩、テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等の四級アンモニウム塩等を例示することができる。
【0013】
また、上記エチレングリコールに混合する副溶媒としては、水の他、プロピレングリコール等のグリコール類、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等のラクトン類、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等のアミド類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、イソブチレンカーボネート等の炭酸類、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルスルホキシド等のオキシド類、エーテル類、ケトン類、エステル類等を例示することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明に係る電解液では、エチレングリコールを主成分とする溶媒に、少なくとも、カルボン酸またはその塩と、ホウ酸またはその塩と、4−オクチルジフェニルアミンとを溶解する。ここで、4−オクチルジフェニルアミンの溶解量は、電解液全体に対して0.1〜10.0wt%とする。
【0015】
本発明に係る電解液において、4−オクチルジフェニルアミンは電極箔表面に効率良く皮膜を形成するため、電解液の比抵抗上昇を抑制しながら、少量の溶解で耐電圧を向上させることができる。
従来、平均分子量が1000を超えるポリエチレングリコールの場合、溶解性が低下し数パーセントの溶解が限界であったが、本発明の4−オクチルジフェニルアミンはエチレングリコールに対する溶解性が高く、容易に電解液に溶解する。また、熱に対しても分解しにくく、高温での製品の特性安定化が図れる。
【0016】
【実施例】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。表1〜3の組成で電解液を調合し、30℃における比抵抗および85℃における火花発生電圧(電解液の耐電圧)を測定した結果を表1〜3に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
【表3】
【0020】
表1〜3に示すように、ポリエチレングリコールを添加した従来例2,3に示す電解液と比較して本発明である実施例1〜12に示す電解液は4−オクチルジフェニルアミンを少量溶解することで火花発生電圧を向上させ、比抵抗上昇を抑えることができる。
【0021】
なお、4−オクチルジフェニルアミンの電解液に対する溶解量は0.1〜10.0wt%の範囲が好ましく、0.1wt%未満では十分な効果が得られず、10.0wt%を超えると電解液の比抵抗が高くなりすぎ低比抵抗用途に不向きとなる。
【0022】
次に、タブ端子を陽極箔および陰極箔に固着し、セパレータを介して巻回したコンデンサ素子に、従来例1、実施例1〜6の電解液を各々含浸した後、アルミニウム製外装ケース内に封口ゴムと共に挿入し、直径35.0mm、長さ40.0mm、定格電圧450V、静電容量390μFの電解コンデンサを各10個作製しエージングを行った。
【0023】
これらの製品を 105℃の恒温槽中で定格電圧を2000時間印加し、tanδを測定した結果を表4に示す。
【0024】
【表4】
【0025】
表4に示すように、4−オクチルジフェニルアミンを溶解した本発明の実施例1〜6に係る電解液を用いると、製品のtanδ上昇が抑えられ、かつショートパンクが発生していない。このことから、高温で長時間電解液の比抵抗上昇と耐電圧の低下が抑制されていることが分かる。これに対して、4−オクチルジフェニルアミンを溶解しなかった従来例1は、製品のtanδ上昇が大きく、2000時間までにショートパンクが発生した。
【0026】
なお、本発明は実施例に限定されるものではなく、先に例示したカルボン酸やその塩を単独または複数混合しても本実施例と同等の効果があり、さらに、先に例示した溶媒を目的によって混合しても、本実施例と同等の効果が得られる。
【0027】
【発明の効果】
上記のとおり、本発明に係る電解液には4−オクチルジフェニルアミンを溶解したので、電解液の耐電圧の向上を図ることができ、かつ高温で長期間、電解液の比抵抗上昇と耐電圧の低下を抑制できる。従って、製品のtanδ増加およびショートパンク発生の抑制を図ることができる。さらに、4−オクチルジフェニルアミンは、エチレングリコールを主溶媒とした溶媒に容易に溶解するので、電解液の調合時間をも短くすることができる。
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