JP4366170B2 - 電解コンデンサの駆動用電解液 - Google Patents

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本発明は、電解コンデンサの駆動用電解液(以下、電解液と称す)に関するものであり、特に電解液の耐電圧の向上と、製品での長期信頼性を改善するものである。
従来、中高圧用電解コンデンサの電解液としては、エチレングリコールを主成分とする溶媒に、安息香酸、有機カルボン酸、ホウ酸またはそのアンモニウム塩を溶解し、さらに耐電圧向上を目的としてマンニトール、ソルビトール等の炭素数6程度の多価アルコール類、または、合成高分子であるポリエチレングリコールやポリビニルアルコールを添加していた(例えば特許文献1、2参照)。
特開平1−220426号公報 特公平7−48460号公報
上記のマンニトール、ソルビトール等は、電解液の耐電圧を向上させるためには、多量の添加が必要であるが、多量に添加すると比抵抗が上昇するという問題があった。
また、ポリエチレングリコールは、平均分子量が1,000以下の比較的重合度の小さいものは、電解液に対する溶解性は高いが耐電圧向上の効果が小さい。一方、平均分子量が1,000を超えると、耐電圧向上の効果は高いが、電解液に対する溶解性が低く、多量に添加できないという問題があった。
そして、ポリビニルアルコールは、少量の添加で電解液の耐電圧向上を図ることができるが、電解液に対する溶解性が著しく低いため、長時間の加熱、撹拌を必要とし、作業面で問題があった。
したがって、比抵抗の上昇を抑制しつつ、耐電圧の向上を図ることができ、かつ溶解性の向上も可能な電解液が求められていた。
本発明は、上記の課題を解決するため各種検討した結果、見出されたものであり、クロトン酸とアリルアルコールの共重合体が、ポリエチレングリコールやポリビニルアルコールよりも、エチレングリコールに対する溶解性が高く、耐電圧の向上が図れることに着目し、その特性を電解液に適用しようとするものである。
すなわち、エチレングリコールを主成分とする溶媒に、有機カルボン酸またはその塩と、ホウ酸またはそのアンモニウム塩と、以下の化学式で示されるクロトン酸−アリルアルコール共重合体とを溶解し、クロトン酸−アリルアルコール共重合体の溶解量が、1.0〜20.0wt%であることを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液である。
Figure 0004366170
そして、上記クロトン酸−アリルアルコール共重合体の平均分子量が、2,000〜20,000であることを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液である。
上記有機カルボン酸としては、安息香酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸、7−ビニルヘキサデセン−1,16−ジカルボン酸等を例示することができる。
さらに、有機カルボン酸の塩としては、アンモニウム塩の他、メチルアミン、エチルアミン、t−ブチルアミン等の一級アミン塩、ジメチルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン等の二級アミン塩、トリメチルアミン、ジエチルメチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエチルアミン等の三級アミン塩、テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等の四級アンモニウム塩等を例示することができる。
また、エチレングリコールに混合する副溶媒としては、水の他、プロピレングリコール等のグリコール類、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等のラクトン類、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等のアミド類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸類、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルスルホキシド等のオキシド類、エーテル類、ケトン類、エステル類等を例示することができる。
クロトン酸−アリルアルコール共重合体は、クロトン酸とアリルアルコールを付加重合して得られるポリマーであり、クロトン酸とアリルアルコールの共重合体の構造を併せ持つことにより、エチレングリコールを主成分とする溶媒に容易に溶解し、電解液の比抵抗上昇を抑えながら耐電圧の向上を図ることができる。
また、上記重合体を用いた電解液は、高温下でも分解しにくく、アリルアルコールの水酸基が電極箔に対する保護作用を示すため、製品での長期信頼性が改善される。
エチレングリコールを主成分とする溶媒に、有機カルボン酸またはその塩と、ホウ酸またはそのアンモニウム塩とを溶解した電解液に、クロトン酸−アリルアルコール共重合体(平均分子量:2,000〜20,000)を1.0〜20.0wt%溶解する。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
表1、2の組成で電解液を調合し、30℃における電解液の比抵抗および85℃における電解液の火花発生電圧(耐電圧)を測定し、表1、2の結果を得た。
Figure 0004366170
Figure 0004366170
表1より明らかなように、クロトン酸−アリルアルコール共重合体を10.0wt%溶解した実施例4は、マンニトールを同量溶解した従来例2よりも比抵抗が20Ω・cm小さく、耐電圧が55V高くなっていることが分かる。
また、クロトン酸−アリルアルコール共重合体を1.0wt%溶解した実施例2は、ポリビニルアルコールを同量溶解した従来例5よりも比抵抗が10Ω・cm小さく、耐電圧が10V高くなっていることが分かる。
また、ポリエチレングリコールを10.0wt%、ポリビニルアルコールを5.0wt%とすると、完全に溶解しなかった。
ここで、クロトン酸−アリルアルコール共重合体の溶解量は、1.0〜20.0wt%の範囲が好ましい。1.0wt%未満では耐電圧上昇の効果が小さく、20.0wt%を超えると耐電圧は向上するが、比抵抗が高くなるので、低比抵抗用途に不向きとなる。
次に、実施例4の電解液組成で、クロトン酸−アリルアルコール共重合体の平均分子量と電解液の耐電圧との関係を検討し、図1の結果を得た。
図1より明らかなように、平均分子量が1,000未満では耐電圧上昇の効果が小さいが、2,000以上で耐電圧向上の効果が得られることが分かる。
ただし、平均分子量が20,000を超えると、クロトン酸−アリルアルコール共重合体の粘度が高くなるため、電解液の調合に時間がかかるようになる。
よって、クロトン酸−アリルアルコール共重合体の平均分子量は、2,000〜20,000の範囲が好ましい。
また、表2では、クロトン酸−アリルアルコール共重合体の平均分子量を変えたもの、有機カルボン酸またはその塩の種類を変えたものを、実施例7〜14として従来例と比較した。実施例7〜14も比抵抗の上昇を抑制しながら耐電圧が向上していることが分かる。
上記の結果を踏まえ、陽極箔および陰極箔にタブ端子を固着し、セパレータを介して巻回したコンデンサ素子に、表1の電解液を各々含浸した後、アルミニウム製外装ケース内に封口ゴムと共に挿入し、直径35.0mm、長さ35.0mm、定格電圧400V、静電容量390μFの電解コンデンサを各10個作製し、エージングを行った。
これらの製品を 105℃の恒温槽中で定格電圧を2000時間印加し、静電容量、tanδ、漏れ電流を測定し表3の結果を得た。
なお、上記の電解液において、クロトン酸−アリルアルコール共重合体、ポリエチレングリコール、およびポリビニルアルコールの平均分子量は、各々3,000として比較した。
Figure 0004366170
表3より明らかなように、本発明のクロトン酸−アリルアルコール共重合体を溶解した実施例は、製品の容量減少、tanδ上昇が抑えられ、安定した特性を示している。
しかし、クロトン酸−アリルアルコール共重合体を溶解しなかった従来例1、2、または、これの代わりにポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールを溶解した従来例3、5は、製品のtanδ上昇および容量減少が大きかった。
なお、本発明による電解液に、火花発生電圧安定化のために、マンニトールの他、ソルビトール、キシリトール、ズルシトール等の多価アルコールや、リン酸エステルまたは亜リン酸の塩を溶解してもよい。
また、本発明による電解液が含有する水分量は、低いほどよいが、8.0wt%以下が好ましい。
さらに、電解液のpHは、必要に応じアンモニア水等のpH調整剤でpH4〜8、好ましくはpH5〜7に調整する。
クロトン酸−アリルアルコール共重合体の平均分子量と電解液の耐電圧との関係を示す特性図である。

Claims (2)

  1. エチレングリコールを主成分とする溶媒に、有機カルボン酸またはその塩と、ホウ酸またはそのアンモニウム塩と、以下の化学式で示されるクロトン酸−アリルアルコール共重合体とを溶解し、クロトン酸−アリルアルコール共重合体の溶解量が、1.0〜20.0wt%であることを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液。
    Figure 0004366170
  2. 請求項1記載のクロトン酸−アリルアルコール共重合体の平均分子量が、2,000〜20,000であることを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液。
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