JP4441393B2 - アルミニウム電解コンデンサの駆動用電解液 - Google Patents

Description

本発明は、アルミニウム電解コンデンサの駆動用電解液（以下、電解液と称す）に関するものである。

従来、アルミニウム電解コンデンサの電解液は、エチレングリコール等の多価アルコールを主溶媒とし、カルボン酸またはそのアンモニウム塩を溶解したものが用いられていた（例えば特許文献１、２参照）。
特公平７−４８４６０号公報（第２頁、表） 特公平７−６３０４７号公報（第３頁、表１）

しかしながら、上記の電解液にあっては、副溶媒の水、主溶媒であるエチレングリコールと有機カルボン酸とが反応してエステル化するときに生ずる水、または、電解コンデンサ素子中の電解紙に含有されている水が高温下でアルミニウム電極箔表面の酸化物と結合して水和酸化物を生成し、この水和酸化物により、電解コンデンサの静電容量の減少、損失の増大等が起こり、信頼性が低下するという問題点がある。

以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、水和酸化物の生成に起因する電極の劣化を防止可能なアルミニウム電解コンデンサの駆動用電解液を提供することにある。

本発明は、上記課題を解決するため各種検討した結果、見出されたものであり、電解液に防水効果を持つフリルを溶解し、これにより電極表面を覆うことで、水和酸化物の生成を抑えようとするものである。

すなわち、本発明に係る電解コンデンサの駆動用電解液では、エチレングリコールを主溶媒とし、少なくとも、有機カルボン酸またはその塩と、ホウ酸またはそのアンモニウム塩と、以下の化学式で示すフリルとを配合したことを特徴とする。

本発明において、フリルの配合量は、電解液全体に対して１．０〜５．０ｗｔ％であることが好ましい。１．０ｗｔ％未満では容量変化率、ｔａｎδの上昇の抑制効果が十分ではなく、５．０ｗｔ％を超える量を添加しても、それ以上の耐水性の向上効果がないばかりでなく、電解液の比抵抗が上昇する傾向にある。

本発明において、有機カルボン酸としては、アゼライン酸、セバシン酸、１，６−デカンジカルボン酸、５，６−デカンジカルボン酸、７−ビニルヘキサデセン−１，１６−ジカルボン酸等を例示することができる。

また、カルボン酸の塩としては、アンモニウム塩の他、メチルアミン、エチルアミン、ｔ−ブチルアミン等の一級アミン塩、ジメチルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン等の二級アミン塩、トリメチルアミン、ジエチルメチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエチルアミン等の三級アミン塩、テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等の四級アンモニウム塩等を例示することができる。

本発明に係るアルミニウム電解コンデンサの駆動用電解液において、フリルは、アルミニウム電極箔表面に水和酸化物が生成することを抑える。従って、本発明によれば、電解コンデンサの静電容量の減少、損失（ｔａｎδ）の上昇を抑制することができ、電解コンデンサの信頼性の向上を図ることができる。

本発明を適当したアルミニウム電解コンデンサの駆動用電解液は、エチレングリコールを主溶媒とし、少なくとも、有機カルボン酸またはその塩と、ホウ酸またはそのアンモニウム塩と、上記の化学式で示すフリルとを配合したものであり、後述するように、電解コンデンサの静電容量の減少、損失（ｔａｎδ）の上昇を抑制することができ、電解コンデンサの信頼性の向上を図ることができる。
ここで、フリルの配合量は、電解液全体に対して１．０〜５．０ｗｔ％であることが好ましい。

本発明に係る電解液において、コンデンサの静電容量の減少、損失（ｔａｎδ）の上昇を抑制する理由としては、フリルが防水効果を備え、その効果が持続するので、電極箔表面に吸着した状態で、水がアルミニウム電極箔表面の酸化物と結合して水和酸化物が生成されるのを抑えるためと考えられる。

以下、実施例に基づいて、本発明を適用したアルミニウム電解コンデンサの駆動用電解液をより具体的に説明する。まず、表１に示す組成で電解液を調合した後、３０℃における電解液の比抵抗と８５℃における火花発生電圧（電解液の耐電圧）を測定した。その結果を表１に示す。

次に、表１に示す電解液を用いて、直径１０．０ｍｍ、長さ１２．５ｍｍ、定格電圧３５０Ｖ、静電容量１０μＦのアルミニウム電解コンデンサを各１０個作製した。
これらの製品を１０５℃の恒温槽中で３０００時間、定格電圧を印加した後、静電容量とｔａｎδを測定した。その結果を表２に示す。

表２に示すように、フリルを配合した実施例１〜７に係る電解液を用いたアルミニウム電解コンデンサでは、従来例に比べて、容量変化率、ｔａｎδの上昇が抑制されていることが分かる。

また、表１、２に示すように、フリルの電解液に対する配合量は、電解液全体に対して１．０〜５．０ｗｔ％の範囲が好ましい。１．０ｗｔ％未満では容量変化率、ｔａｎδの上昇の抑制効果が十分ではなく（実施例１参照）、５．０ｗｔ％を超える量を添加しても、それ以上の耐水性の向上効果がないばかりでなく、電解液の比抵抗が上昇するためである（実施例５参照）。

なお、フリルの効果は、上記実施例に限定されるものではなく、先に記載した各種化合物を単独または複数溶解した電解液に用いても実施例と同等の効果があった。

Claims (2)

1. エチレングリコールを主溶媒とし、少なくとも、有機カルボン酸またはその塩と、ホウ酸またはそのアンモニウム塩と、以下の化学式で示すフリルとを配合したことを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液。
   

   
2. 請求項１において、フリルの配合量が、電解液全体に対して１．０〜５．０ｗｔ％であることを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液。