JP4441392B2 - 電解コンデンサの駆動用電解液 - Google Patents

Description

本発明は、電解コンデンサの駆動用電解液（以下、電解液と称す）に関するものである。さらに詳しくは、耐電圧を向上させるための組成に関するものである。

従来、中高圧用のアルミニウム電解コンデンサの電解液には、エチレングリコールを主溶媒とし、有機カルボン酸またはそのアンモニウム塩と、ホウ酸またはそのアンモニウム塩とを溶解し、電解液の耐電圧を上昇させるためマンニトール、ソルビトール等の多価アルコールを添加した電解液が用いられてきた（例えば特許文献１、２参照）。
特公平７−４８４６０号公報（第２頁） 特公平７−６３０４７号公報（第２頁、表１）

しかしながら、マンニトール、ソルビトール等の多価アルコールは添加量に対する耐電圧の上昇が緩慢であるため、配合量を多くしなければならないという問題点がある。また、多価アルコールは、有機カルボン酸やホウ酸とエステル化反応により耐電圧が上昇するが、配合量を増やすと、比抵抗が著しく上昇するという問題点がある。

以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、比抵抗を上昇させることなく、耐電圧を向上することができる電解コンデンサの駆動用電解液を提供することにある。

本発明は上記課題を解決するため、種々検討した結果見出したものであり、ジメチルベンジルカルビノールに着目し、多価アルコールよりも耐電圧を向上できる特性を電解液に適用しようとするものである。

すなわち、本発明に係る電解コンデンサの駆動用電解液では、エチレングリコールを主溶媒とし、有機カルボン酸またはその塩の１種以上と、ホウ酸またはそのアンモニウム塩と、以下の化学式で示されるジメチルベンジルカルビノールとを配合したことを特徴とする。

本発明において、ジメチルベンジルカルビノールの配合量は、電解液全体に対して０．５〜２．０ｗｔ％であることが好ましい。０．５ｗｔ％未満では耐電圧の上昇効果が十分でなく、２．０ｗｔ％を超えると比抵抗が上昇する傾向にある。

本発明において、有機カルボン酸としては、アゼライン酸、セバシン酸、安息香酸、１，６−デカンジカルボン酸、５，６−デカンジカルボン酸、７−ビニルヘキサデン−１、１６−ジカルボン酸等を用いることができる。

また、有機カルボン酸の塩としては、アンモニウム塩の他、メチルアミン、エチルアミン、ｔ−ブチルアミン等の一級アミン塩、ジメチルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン等の二級アミン塩、トリメチルアミン、ジエチルメチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエチルアミン等の三級アミン塩、テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等の四級アンモニウム塩等を例示することができる。

さらに、上記の電解液には、漏れ電流の低減、耐電圧向上、ガス吸収等の目的で種々の添加剤を加えることができる。添加剤の例として、リン酸化合物、ホウ酸化合物、多価アルコール類、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールのランダム共重合体及びブロック共重合体に代表される高分子化合物、ニトロ化合物等が挙げられる。

本発明を適用した電解液では、ジメチルベンジルカルビノールの少量の添加で耐電圧を向上させることができる。従って、耐電圧を高めた場合でも、電解液の比抵抗の上昇を抑えることができる。

本発明に係る電解コンデンサの電解液は、エチレングリコールを主溶媒とし、有機カルボン酸またはその塩の１種以上と、ホウ酸またはそのアンモニウム塩と、以下の化学式で示されるジメチルベンジルカルビノールとを配合したものであり、後述するように、少量の添加で電解液の耐電圧の向上を図ることができる。ここで、ジメチルベンジルカルビノールの配合量は、電解液全体に対して０．５〜２．０ｗｔ％であることが好ましい。

本発明に係る電解コンデンサの電解液において、ジメチルベンジルカルビノールは、少量の添加で電解液の耐電圧を向上させる理由として、以下のように考えられる。まず、ジメチルベンジルカルビノールは、有機カルボン酸、ホウ酸とのエステル化反応により耐電圧を高める。
また、ジメチルベンジルカルビノールは、電極表面に対する吸着性が高い。従って、ジメチルベンジルカルビノールを添加すると、電極表面近傍で、上記の有機カルボン酸、ホウ酸とのエステル化反応が起こると考えられる。従って、少量の添加で耐電圧を効果的に向上させることができる。

以下、実施例に基づいて本発明を適用したアルミニウム電解コンデンサの駆動用電解液をより具体的に説明する。まず、表１の組成で電解液を調合した後、３０℃における比抵抗および８５℃における火花発生電圧（電解液の耐電圧）を測定した。その結果を表１に示す。

まず、有機カルボン酸塩を１，６−デカンジカルボン酸アンモニウムとした場合の実施例１〜８とした場合について説明する。

表１において、ジメチルベンジルカルビノール、マンニトールが同量のもの、すなわち、配合量が１．０ｗｔ％の実施例３と従来例２とを比較し，配合量が２．０ｗｔ％の実施例６と従来例３とを比較すると分かるように、実施例の方が比抵抗が小さく、かつ、火花発生電圧（耐電圧）が上昇していることがわかる。

但し、ジメチルベンジルカルビノールの配合量が０．５ｗｔ％未満では耐電圧の上昇効果が十分でなく（実施例１）、また、配合量が２．０ｗｔ％を越えると比抵抗が上昇する傾向にあり（実施例７）、低比抵抗用途においては好ましくない。よって、ジメチルベンジルカルビノールの配合量は、電解液全体に対して０．５〜２．０ｗｔ％の範囲が好ましい。

なお、有機カルボン酸をアゼライン酸アンモニウムとした場合（実施例９〜１３）、およびセバシン酸アンモニウムとした場合（実施例１４〜１６）も、上記と同様、ジメチルベンジルカルビノールによる火花発生電圧（耐電圧）の上昇効果が見られた。

なお、ジメチルベンジルカルビノールを溶解させた効果は、上記実施例に限定されるものではなく、先に記載した有機カルボン酸やその塩を単独または複数溶解した電解液に用いても同等の効果があった。

Claims (2)

1. エチレングリコールを主溶媒とし、有機カルボン酸またはその塩の１種以上と、ホウ酸またはそのアンモニウム塩と、以下の化学式で示されるジメチルベンジルカルビノールとを配合したことを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液。
   

   
2. 請求項１において、ジメチルベンジルカルビノールの配合量が、電解液全体に対して０．５〜２．０ｗｔ％であることを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液。