JP4637662B2 - 電解コンデンサの駆動用電解液 - Google Patents

Description

本発明は、電解コンデンサの駆動用電解液（以下、電解液と称す）の改良に関するものであり、特に耐電圧を改善した電解液に関するものである。

従来、中高圧用アルミニウム電解コンデンサの電解液としては、エチレングリコールを主成分とする溶媒に対して高級二塩基酸やホウ酸またはそのアンモニウム塩を配合し、さらに、電解液の耐電圧を上昇させるためにマンニトール、ソルビトール等の多価アルコールを添加した電解液が提案されている（例えば、特許文献１参照）。
特公昭５４−３９９０５号公報

しかしながら、マンニトール、ソルビトール等の多価アルコールは添加量に対する耐電圧の向上が緩慢であるため、多量に配合せざるを得ず、比抵抗が上昇するという問題点がある。また、多価アルコールを多量に添加すると、高級二塩基酸やホウ酸とエステル化反応を起こし、比抵抗が著しく上昇するという問題点がある。

以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、比抵抗を上昇させることなく、耐電圧を向上可能な電解液を提供することにある。

本発明は、各種実験の結果得られたものであり、イソボルニルアクリレートが立体的に大きな骨格を有すること、および多価アルコールと比較して電極箔への吸着性が高いことに着目し、その特性を電解液に適応させることにより課題の解決を図ったものである。

すなわち、本発明を適用したアルミニウム電解コンデンサの駆動用電解液では、エチレングリコールを主溶媒とし、少なくとも、有機カルボン酸またはその塩と、以下の化学式で示されるイソボルニルアクリレートとを配合し、イソボルニルアクリレートの配合量が、電解液全体に対して２．０〜５．０ｗｔ％であることを特徴とする。

本発明において、有機カルボン酸としては、アゼライン酸、セバシン酸、安息香酸、１，６−デカンジカルボン酸、５，６−デカンジカルボン酸、７−ビニルヘキサデセン−１，１６−ジカルボン酸等を挙げることができる。
また、アルミニウム電解コンデンサの定格電圧、すなわち、低圧や中圧の場合には、有機カルボン酸として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、チオジプロピオン酸などを用い、オキシカルボン酸として、グリコール酸、乳酸、酒石酸、サリチル酸、マンデル酸などを用い、モノカルボン酸として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸、安息香酸、ｐ−ニトロ安息香酸、アニス酸、クミン酸、ケイ皮酸、ナフトエ酸などを用いてもよい。
さらに、ボロジシュウ酸、ボロジグリコール酸、ボロジサリチル酸、エチレングリコールホウ酸エステルなどを併用してもよい。

また、有機カルボン酸の塩としては、メチルアミン、エチルアミン、ｔ−ブチルアミン等の一級アミン塩、ジメチルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン等の二級アミン塩、トリメチルアミン、ジエチルメチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエチルアミン等の三級アミン塩、テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等の四級アンモニウム塩、アンモニウム塩等を挙げることができる。

なお、本発明に係る電解液には、さらに、漏れ電流の低減、耐電圧向上、ガス吸収等の目的で種々の添加剤を加えることができる。添加剤の例として、リン酸化合物、ホウ酸化合物、多価アルコール類、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールのランダム共重合体及びブロック共重合体に代表される高分子化合物、ニトロ化合物等が挙げられる。

本発明を適用した電解液において、イソボルニルアクリレートは、添加量が少なくても耐電圧の向上に効果的であり、その理由は、イソボルニルアクリレートが電極箔表面に吸着して電極箔を保護するためと考えられる。また、イソボルニルアクリレートは、高級二塩基酸やホウ酸とエステル化反応を起こして比抵抗を上昇させることもない。それ故、本発明に係る電解液によれば、比抵抗を上昇させることなく、耐電圧を向上することができる。

以下、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。まず、表１に示す組成で電解液を調合した後、３０℃における比抵抗および８５℃における火花発生電圧（電解液の耐電圧）を測定した。その結果を表１に示す。

表１より、マンニトールを添加した従来例１，２と比較して、本発明の実施例１〜８に係る電解液では、比抵抗上昇を抑制しながら、耐電圧の向上が図れていることが分かる。
ここで、イソボルニルアクリレートの配合量が、２．０ｗｔ％未満（比較例１）では耐電圧の向上が十分でなく、配合量が５．０ｗｔ％を超える（比較例６）と耐電圧の向上が緩慢となり、かつ、比抵抗が上昇する。それ故、添加量は、電解液全体に対して２．０〜５．０ｗｔ％の範囲が好ましいと言える。

なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、先に記載した各種溶質を単独または複数配合した電解液やその他添加剤を加えた電解液、副溶媒を混合した電解液についても実施例と同等の効果が得られた。

Claims (1)

1. エチレングリコールを主溶媒とし、少なくとも、有機カルボン酸またはその塩と、以下の化学式で示されるイソボルニルアクリレートとを配合し、
   前記イソボルニルアクリレートの配合量が、電解液全体に対して２．０〜５．０ｗｔ％であることを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液。