JP3989193B2 - 易重合性物質における重合防止方法および(メタ)アクリル酸またはそのエステルの製造方法 - Google Patents
易重合性物質における重合防止方法および(メタ)アクリル酸またはそのエステルの製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、充填塔の重合防止方法に関し、より詳細には、撥水処理または濡潤処理を施した充填物を使用した充填塔における重合防止方法、および該充填物を配置した充填塔による(メタ)アクリル酸またはそのエステルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクリル酸やメタクリル酸等の易重合性化合物は、工業的な製造原料であり大規模なプラントで大量に生産される化学物質である。例えば、(メタ)アクリル酸を例に取れば、該易重合性化合物は、プロピレン、イソブチレン、t−ブタノール、メチル−t−ブチルエーテル、アクロレインなどの接触気相酸化反応によって製造される。
【0003】
しかしながら、該接触気相酸化反応によって得られた反応ガス中には、目的物たる(メタ)アクリル酸の副生物等が混在する。例えば、該反応によって主として非凝縮性の気体すなわち未変換プロピレン、イソブチレン、沸点がアクリル酸の沸点よりも低い低沸点の有機化合物すなわち水蒸気、未変換アクロレイン、副反応で生じるホルムアルデヒド、酢酸等の不純物、沸点がアクリル酸の沸点よりも高沸点の化合物すなわち無水マレイン酸、フルフラール、ベンズアルデヒド、安息香酸、アクリル酸二量体等が発生する。このため、目的物を精製するために、各種の蒸留塔による精留や分留が行われている。
【0004】
一般に蒸留塔では、蒸留塔の塔頂に昇ってくる低沸点成分に富む蒸気を冷却・凝縮させ、この凝縮液を塔頂から降らせて下から昇ってくる蒸気と接触させて凝縮液中の低沸点成分を気化させ、同時に蒸気中の高沸点成分を凝集して液化させている。この結果、蒸留塔では塔頂を出る蒸気の低沸点成分の純度が増加し、同時に塔底に落下する液体の高沸点成分の純度も増加する。
【0005】
このような蒸留塔の一つである充填塔は、構造が簡単で製作が容易であり、ガスの圧力損失が少ないなどの利点のために、多用される装置である。充填塔内には、高性能物質移動装置として、省エネルギーのためおよび製品の歩留まり向上や処理量増加、圧力損失の減少を目的に、またはフォーミング、ミスト同伴などを解決するために、各種の充填物が使用されている。特に、易重合性物質の精製においては、分離性能の向上を目的として充填物が多用されている。
【0006】
例えば、塔内に充填物を規則的または不規則的に設置し、塔の上方から落下する液と塔下方から上昇する蒸気とを充填物表面で十字流または向流で気液接触させる。これによって、気液接触面が増大し十分な気液間の物質移動が行われ、物質分離が効率的に達成される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来から充填塔に使用される充填物としては、比表面積、空隙率、機械的強度が大きく、見かけ密度が小さく、耐食性が大きく安価なことなどの条件が要求されるのみであった。したがって、易重合性物質含有溶液の充填塔における気液物質移動操作では、気液の接触不良等により重合物が発生する場合があった。
【0008】
例えば、アクリル酸が、プロピレンおよび/またはアクロレインを分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化して製造される場合、このアクリル酸含有液組成には、水、酢酸およびアクロレイン等の不純物が含まれ、アクリル酸の重合が極めて起こり易くなっている。このような重合を防止するために、一般に、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、フェノチアジンなどの種々の重合防止剤が単独あるいは数種組み合わされて製造プロセス中に添加され、アクリル酸等の重合が抑制されるが、これらの化合物は易重合性物質よりも高沸点であるため、蒸留蒸気中に含まれず有効に易重合性物質の重合を防止することができない。このため塔内で重合を生じ、分離精製効率が低下し、製品の品質が悪化すると共に、重合物の装置への付着および気液液路の閉塞により連続運転が妨げられる。
【0009】
このような場合、早期に重合物を除去する必要があるが、重合物を除去するためには、精製プロセスを停止しなければならず、また付着した重合物の除去も一般に困難である。
【0010】
また、充填塔にはリボイラが接続される場合が多いが、リボイラからは蒸気のみならずリボイラ経由で循環する塔底液も多く吹き込まれる。従って、精製目的物の蒸気が蒸留塔内の上昇速度に伴い上昇すると共に、塔底液の飛沫を同伴し、これが蒸気と共に充填物層まで運ばれる場合がある。これによって、塔底液の一部が塔頂留出製品に混入する結果、蒸留分離効率を悪化させる場合もある。特に、充填塔内で充填物に重合物が付着すると重合物の除去処理にも多大な労力を必要とする。
【0011】
したがって、特に易重合性物質の蒸留や分離精製に使用される充填塔において、易重合性物質の分離精製を維持しつつも易重合性物質の重合を防止し、製品精製度の高い目的物を製造する方法が求められる。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、充填塔に詰め込まれる充填物について詳細に検討した結果、充填物の表面を、濡潤処理することで、気液接触による分離効率を低下させることなく、かつ易重合性物質の重合を防止できることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の第一は、易重合性物質を取り扱う充填塔において、塔内部に詰め込んだ充填物の表面が、撥水処理または濡潤処理を施したものであることを特徴とする、充填塔における重合防止方法である。
【0014】
充填塔に使用する充填物は、塔内での気液接触面を増加して気液接触効率を向上させることを目的として使用される。このため、充填物表面上では還流液の分離効率を向上させるために、所定時間、充填物表面上に還流液が拡布され、かつ気液接触が十分に行われるほどに該溶液が該充填物表面に保持されることが必要となる。一方、充填物表面に保持される還流液は、一旦蒸留された易重合性物質と凝縮したものである。たとえ塔底液に重合防止剤を使用しても、該還流液中には高沸点物質である重合防止剤が含まれず、このため充填物表面で易重合性物質の重合物を発生しやすい。
【0015】
しかしながら、本発明者は、充填物表面に十分な撥水処理または濡潤処理を施したところ、分離効率を低下させることなく、しかも易重合性物質による重合の発生を防止できることを見い出したのである。また、この処理によって、同時に充填物に対する重合物の付着自体も抑制することもできるのである。充填物表面におけるわずかな改良によりこの様な優れた効果が得られることは、従前に全く予測できなかったことである。これにより充填塔内の重合物の発生および重合物による閉塞を効果的に抑制し、長期連続運転を可能とすることができる。以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明で使用する充填物としては、撥水処理または濡潤処理を施したものであれば、特に制限はない。本発明において、「濡潤処理」とは、充填物の表面を充填物内で使用する溶媒や更に精製目的物を含有する溶液で濡らしたときに、目視によって液のはじきがない状態をいう。また、撥水処理としては、充填物表面の一部または全部の表面粗度を、JIS B601(−1994)によるRy12.5以下とする処理がある。このような濡潤処理と撥水処理とは、その本質を同じくするものではない。しかしながら、本発明では、そのいずれによっても充填物の表面における重合物の発生および付着を抑制できることを見出したものであり、いずれも好ましい。濡潤処理によれば、充填物表面に重合防止剤を含有する精製塔内の易重合性物質含有溶液が十分に保持される結果、該充填物表面における重合物の発生を効果的に抑制することができるからであり、一方、撥水処理によれば、充填物表面上で易重合性物質含有溶液が直ちにはじかれて充填物表面から離脱して重合を防止できるからと考えられる。特に濡潤処理によれば最低液流量を減少させることもでき、効率的な物質分離の精製が同時に達成される。
【0017】
本発明のおける濡潤処理としては、充填物表面を例えばショットブラスト、サンドブラスト、タンブラ等がある。
【0018】
本来、ショットブラスト、サンドブラスト、タンブラ等は、鋳造品に付着する砂を取り去る処理であるが、本発明ではこれらの処理によって表面に傷をつけたところ、易重合性物質含有溶液をよく保持できることが判明したのである。この濡潤処理によって重合が防止できる理由に付いては明確ではないが、充填塔で易重合性物質を精製する場合に添加された重合防止剤を含有する易重合性含有溶液が、充填物表面に保持される結果、重合が防止されるものと考えられる。また、充填物表面に精製対象溶液が十分に保持され、これによって気液分離が効率的に行われる結果、精製効率も向上するものと考えられる。
【0019】
ここにショットブラスト処理とは、鉄製のショットや、ワイヤをカットしたグリッドを羽根車で鋳造品に投射するものである。したがって、ショットブラスト装置は、通常、砂落としを行った後の鋳肌清掃に用いられ、または砂つき鋳造品の砂落としに用いる場合もある。このような装置を強力ショットブラスト装置、またはコアノックアウト装置と称するが、本発明では従来公知のショットブラスト処理装置を使用することができる。本発明において、濡潤処理に用いられる従来公知のショットブラスト処理は、その装置の羽根の回転数、ショットの投射速度、ショットの大きさ、処理時間によって規定されるものではなく、表面処理の効果としては、水をかけると液のはじきがなく表面全体が十分に濡れる状態である。
【0020】
サンドブラストは、砂を0.2〜0.5MPaの空気でノズルから噴射し、品物の表面をきれいにするものである。また、タンブラは、回転ドラム内に目的物と、多角形の鉄粒を入れ清掃するものである。1回の処理時間は特に制限はないが、回転数は0.7〜1/sの場合に0.5〜1時間程度である。ドラムには、径10〜15mmの穴があり、砂が落ちるようにしてある。鉄粒の大きさは、15〜20mmのものが一般に使用されるが、特にこれに制限されるものではない。
【0021】
本発明では、特に充填物の表面処理方法としてショットブラストを用いることが好ましい。ショットブラストによれば、充填物表面を清掃し、又は表面にある程度の傷を与えることで簡便に充填物の液の濡れ状態を改善し、充填物表面で液を十分に保持できるからである。しかも、表面のでこぼこによって液のホールドアップ量を向上させ、分離効率を向上させることもできる。すなわち、充填塔における液ホールドアップ量は、充填層単位容積当たりの液容量としてあらわされ、塔内の全液量に対応するホールドアップは、流下液量に対応する動的ホールドアップと塔内に静止したまま存在する液量に対応する静的ホールドアップの和と考えられる。上記ショットブラスト処理によれば、表面が濡潤されるために表面上に滞留する易重合性物質含有溶液の滞留時間が延長され、これによって全体の液ホールドアップ量が維持され、この結果、気液分離の効率が高く維持されるものと考えられる。
【0022】
なお、充填塔と原料供給段との関係について説明すれば、原料供給段は充填塔のいずれに存在してもよく、その位置についての制限はない。一般には、充填塔の塔頂部近傍にはコンデンサーが付属され、塔底部近傍にはリボイラーが配置される。還流液はコンデンサーを経て充填塔に導入され、リボイラーによって加熱された塔底液の一部はガス状となる。このため、充填物は充填塔内でこのような気液混合相内に静置され、その表面が液で濡れる場合と表面が気相で被われる場合とを繰り返している。本発明では、充填物に濡潤処理を行った場合には充填物表面が液で十分に濡れることが好ましいのであるが、特に該溶液が重合防止剤を含有する場合に重合防止効果に優れる。また、気相中で揮発しやすい重合防止剤を併用すると、気相中に重合防止剤が揮散するため、気相中にある充填物表面の重合をより効果的に防止することができる。
【0023】
一方、本発明では撥水処理によって充填物表面に付着する易重合性物質含有溶液の滞留時間が短縮される結果、易重合性物質の重合自体を防止できる。JISB601(−1994)によるRyが12.5という表面粗度にすると、充填塔内において充填物表面に付着する溶液が速やかに弾き飛ばされる結果、充填物表面の液の滞留をなくすことができる。特に、該液が重合防止剤を含まない気相中の凝縮液である場合には極めて重合物が発生しやすい条件となっているが、本発明によれば撥水処理によって重合を防止することができる。従って、該撥水処理は、気相側および液相側のいずれに充填される充填物にも効果的である。
【0024】
このような撥水処理によりJIS B601(−1994)によるRyが12.5とするには、バフ研磨などの機械研磨や電解研磨がある。
【0025】
バフ研磨は、主として平滑面または光沢面を得る場合に用いられる研磨法であるが、固定研磨剤による粗研磨、半固体ないし遊離研磨剤による中研磨および仕上げ研磨を採用できる。バフ研磨剤は、革や布などの柔軟性材料で研磨する他、トリポリケイ石、酸化クロム、炭化ケイ素、溶融アルミナ、焼成アルミナ、酸化クロムを研磨剤として含有する油脂性、非油脂性またはスプレー用剤等を使用することができる。
【0026】
電解研磨は、金属表面を溶解させながら平滑化する方法であり、充填物の材質が鉄鋼、ステンレスなどの場合の電解研磨溶液としては、過塩素酸系、硫酸系、リン酸系、硫酸−リン酸系等を使用することができる。鉄鋼はその組成の相違のみならず、熱処理、加工の程度によりその組織の相違が大きいため、使用する充填物に応じて適宜選択することができる。従って、過塩素酸系の電解質に一般に添加される無水酢酸の量や電解温度、電流密度、電圧、電解時間等は、充填物により適宜選択すればよい。なお機械研磨を行い、更に電解研磨処理を行ってもよい。このように、充填物にバフをかけ、電解研磨などの方法により表面粗度を下げることで、充填物表面での乾きを十分に防ぐことができるため、重合を防止することができるのである。
【0027】
なお本発明で使用する充填物の形状、サイズ、素材等の他の要素は、使用する充填塔のサイズや形状、使用目的等により適宜選択できる。また、素材には特に制限は無く、アルミナ製、またはステンレス製、金属製であることが好ましい。これらによれば易重合体物質と反応せず、易重合性物質に変性等を与えず、充填物自体の腐食を生ずることがないからである。
【0028】
本発明の充填物のJIS B601(−1994)によるRyは、12.5以下であることが好ましく、より好ましくは3.2以下である。12.5を越えると易重合物質含有溶液の滞留が生じやすく、これによって重合物が発生する場合があるからである。なお、充填物の全表面が、JIS B601(−1994)によるRyは、12.5以下であることが好ましいが、充填物の形状からこのような処理が困難な場合がある。したがって、本発明においては少なくとも一部がJIS B601(−1994)によるRyは、12.5以下の基準を満たせばよい。
【0029】
本発明で使用する充填物としては、アルミナ製、またはステンレスなどの金属製であることが好ましい。易重合性物質含有溶液の精製には、該物質を蒸留するために加熱する必要があり、しかも汎用原料の精製には一度に大量の供給原料を精製する必要があり、加圧、高温に対する耐久性、および製品効率の観点から圧力損失の減少などが要求されるからである。また、充填塔への供給原料と反応しないことも重要な要素である。この点、アルミナ製、またはステンレスなどの金属製であれば、成形性に優れ、かつ上記要求を満たせるからである。
【0030】
本発明で使用する充填物の形状や名称としては特に規定はなく、いかなる形状のものでも好ましく使用することができる。このような充填物としては、公知のラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、フレキシリング、カスケード・ミニ・リング、ラシヒスーパーリング、インターロックス・メタルタワー・パッキングおよびインタロックスサドルものからなる群から選ばれる1種以上や、化学工学便覧(化学工学会編)、第6版604頁、図11・13記載の充填物、更に、メラパック、ジェムパック、テクノパック、モンツパック、インタロックスハイパフォーマンスストラクチャードパッキング、フレキシパック、その他化学工業便覧(化学工学協会編)、第6版567頁の金属板型規則充填物を好ましく使用することができる。充填物は、使用する充填塔のサイズ、供給原料の種類や供給量、温度条件、圧力条件、理論段数、圧力損失、最低液流量、その他の要素によって、使用する径、形状、材質などを選択することができる。本発明では、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、フレキシリング、カスケード・ミニ・リング、ラシヒスーパーリング、インターロックス・メタルタワー・パッキングおよびインタロックスサドルは、いずれも1m3当たりの充填物表面積が高く、かつ空隙率も高いため、物質交換が効率的に行われ、かつ圧力損失を減少することができ、好ましい。特に、これらの中でもカスケード・ミニ・リングリングを使用することが好ましい。1m3当たりの充填物表面積が高く、かつ空隙率に優れるからである。
【0031】
本発明の対象となる充填塔としては、パッキングサポート上に、規則的または不規則的に充填物を塔内に詰め込んだものである。塔自体の使用目的は特に制限されず、蒸留、抽出、吸収、放散、反応などに使用される塔が含まれる。したがって、蒸留塔、吸収塔、抽出塔等と呼称される場合も含まれる。
【0032】
このような充填塔としては特に制限はなく、従来公知の充填塔が対象となる。しかしながら、本発明においては、充填塔内装物の表面粗度がJIS B601によるRy12.5以下であることが好ましい。充填塔内部がこのような表面粗度を有すれば、その表面から液を速やかに弾き飛ばし、液の滞留をなくすことができ、重合の防止および重合物の付着を抑制することができるからである。
【0033】
このような充填塔内装物としては、液分散板、フラッシュ・フィード液分散板、1次液分散板、コレクター、蒸気分散板、パッキング・サポート、充填層抑板などがある。なお、これら内装物をJIS B601によるRy12.5以下とするには、上記したバフ研磨などの機械研磨や電解研磨を行えばよい。
【0034】
本発明は、特に易重合性物質を取り扱う充填塔であることを特徴とする。ここに易重合性物質としては、気体、液体の別を問わず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸又はこれらのエステル体、スチレン、アクリロニトリルが例示できる。アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等が適用対象として挙げられ、メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル等が適用対象として挙げられる。
【0035】
また、易重合性物質含有溶液としては、更に溶媒や高沸点物質、易重合性物質の生成時の副生物との混合物を含んでもよい。特に好ましくは、易重合性物質がアクリル酸、メタクリル酸またはこれらのエステル体であり、易重合性物質含有溶液としては、これに溶媒その他の不純物を含有したものが例示できる。このような不純物としては、易重合性物質がアクリル酸およびアクリル酸エステルの場合には、アクリル酸を接触気相酸化反応で得る際に副生する酢酸、プロピオン酸、アクロレイン、マレイン酸、水、ホルマリンを挙げることができる。また、易重合性物質がメタクリル酸およびメタクリル酸エステルの場合には、メタクリル酸を接触気相酸化反応で得る際に副生するメタクロレイン、アクリル酸、酢酸などを不純物として挙げることができる。
【0036】
かかる溶剤には、(メタ)アクリル酸などの重合性物質の重合を防止するために、一般にアクリル酸等の易重合性物質の重合防止剤として知られている化合物を添加してもよい。
【0037】
このような重合防止剤としては、ニトロソ化合物、N−オキシル化合物、N−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物、フェノール化合物、フェノチアジン化合物、銅塩化合物、マンガン塩化合物等の公知の化合物を単独で、または組み合わせて使用することができる。
【0038】
ニトロソ化合物としては、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンおよびそのアンモニウム塩や、p−ニトロソフェノール、N−ニトロソジフェニルアミンが挙げられる。
【0039】
N−オキシル化合物については特に制限はなく、一般にビニル化合物に重合防止剤として知られているN−オキシル化合物であればいずれも用いることができる。これらのなかでも、下記式(1)で表される2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシル類:
【0040】
【化1】
【0041】
(ただし、式中、R1はCHOH、CHCH2OH、CHCH2CH2OH、CHOCH2OH、CHOCH2CH2OH、CHCOOH、またはC=Oを示し、R2はHまたはCH2OHを示す)が好適に用いられる。N−オキシル化合物であれば特に限定されずに用いることができるが、良好な重合防止効果を与え得る2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシル、4,4’,4”−トリス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシル)フォスファイトのうち1種または2種以上を用いることが好ましい。特に、N−オキシル化合物として2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシル、または4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシルを用いた場合には、成分中に金属を含まなくても安定剤系となるため、安定剤による設備の金属腐食の恐れがなくなり、廃液の処理も容易になる。
【0042】
N−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物の代表例としては、1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどを挙げることができる。これらN−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物は単独でも、あるいは2種以上混合しても用いることができる。
【0043】
2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物の具体例としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。なお、N−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物や2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物は、市販されるN−オキシル化合物製品中に不純物として含有される場合があるが、このような場合には市販のN−オキシル化合物の使用によって、併せてN−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物や2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物を併用したことになる。
【0044】
フェノール化合物としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノールを挙げることができる。p−メトキシフェノールは、特にN−オキシル化合物およびフェノチアジン化合物と組合せて使用した際の重合防止効果がハイドロキノンより優れているため好ましい。また、これらのフェノール化合物は2種を併用してもよい。
【0045】
フェノチアジン化合物としては、フェノチアジン、ビス−(α−メチルベンジル)フェノチアジン、3,7−ジオクチルフェノチアジン、ビス−(α−ジメチルベンジル)フェノチアジン等を挙げることができる。
【0046】
銅塩化合物としては特に制限されず、無機塩、有機塩のいずれであってもよく、様々なものを用いることができる。例えばジアルキルジチオカルバミン酸銅、酢酸銅、ナフテン酸銅、アクリル酸銅、硫酸銅、硝酸銅、塩化銅などが挙げられる。これらの銅塩化合物は一価、二価のいずれのものも用いることができる。上記銅塩化合物の中では、効果などの点からジアルキルジチオカルバミン酸銅が好ましい。
【0047】
ジアルキルジチオカルバミン酸銅としては、例えば、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジプロピルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、ジペンチルジチオカルバミン酸銅、ジヘキシルジチオカルバミン酸銅、ジフェニルジチオカルバミン酸銅、メチルエチルジチオカルバミン酸銅、メチルプロピルジチオカルバミン酸銅、メチルブチルジチオカルバミン酸銅、メチルペンチルジチオカルバミン酸銅、メチルヘキシルジチオカルバミン酸銅、メチルフェニルジチオカルバミン酸銅、エチルプロピルジチオカルバミン酸銅、エチルブチルジチオカルバミン酸銅、エチルペンチルジチオカルバミン酸銅、エチルヘキシルジチオカルバミン酸銅、エチルフェニルジチオカルバミン酸銅、プロピルブチルジチオカルバミン酸銅、プロピルペンチルジチオカルバミン酸銅、プロピルヘキシルジチオカルバミン酸銅、プロピルフェニルジチオカルバミン酸銅、ブチルペンチルジチオカルバミン酸銅、ブチルヘキシルジチオカルバミン酸銅、ブチルフェニルジチオカルバミン酸銅、ペンチルヘキシルジチオカルバミン酸銅、ペンチルフェニルジチオカルバミン酸銅、ヘキシルフェニルジチオカルバミン酸銅などが挙げられる。これらのジアルキルジチオカルバミン酸銅は、一価の銅塩であってもよく、二価の銅塩であってもよい。これらの中で、効果及び入手しやすいなどの点からジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅及びジブチルジチオカルバミン酸銅が好ましく、特にジブチルジチオカルバミン酸銅が好適である。
【0048】
マンガン塩化合物としては、ジアルキルジチオカルバミン酸マンガン(アルキル基はメチル、エチル、プロピル、ブチルのいずれかで、同一であっても異なっていても良い)、ジフェニルジチオカルバミン酸マンガン、蟻酸マンガン、酢酸マンガン、オクタン酸マンガン、ナフテン酸マンガン、エチレンジアミン四酢酸のマンガン塩化合物等が挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。
【0049】
本発明では、充填物の表面処理の相違、充填塔の使用形態、使用溶媒の種類によって好ましい重合防止剤を適宜選択することができる。特に、気相側に充填される充填物に対しては揮発しやすい重合防止剤や、気相側で効果を発揮する重合防止剤を併用することが有効である。揮発しやすい重合防止剤または気相側で効果を発揮する重合防止剤としては、ニトロソ化合物があり、これを充填塔に投入することが好ましい。
【0050】
使用される重合防止剤の量は操作条件に応じて適宜調整され、特に限定はされない。しかし、用いられる重合防止剤の総量を捕集される反応ガス中の(メタ)アクリル酸の質量に対して3〜3500ppm(質量基準)とするのが好ましい。個々の重合防止剤の好ましい使用量は、N−オキシル化合物は反応ガス中のアクリル酸の質量に対し1〜500ppm、マンガン塩化合物、あるいは銅塩化合物は反応ガス中のアクリル酸の質量に対し1〜200ppm、ニトロソ化合物の場合は1〜500ppm、フェノール化合物の場合は、1〜500ppm、フェノチアジン化合物の場合は1〜500ppm、N−ヒドロキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン化合物の場合は1〜500ppm、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物の場合は1〜500ppmである。
【0051】
更に、重合防止の供給場所や投与方法は特に限定されないが、捕集塔の塔頂から供給することが好ましい。また、重合防止剤はあらかじめ溶剤と混合した後に供給すると、重合防止剤が捕集塔内で均一に分散されるので効果的である。溶剤には捕集溶剤やアクリル酸を用いることが好ましく、精製塔で分離した捕集溶剤を再利用するのが経済的である。
【0052】
また重合防止剤の添加は、精製工程の場合には、(メタ)アクリル酸等の蒸発蒸気量に対して上記した量を添加することが推奨される。なお、蒸発蒸気量とは、発生するモノマーの蒸気の総量を意味する。モノマー蒸気の総量は計算で容易に算出することができ、重合防止剤の投入基準を決定する上で重要な因子となる数字である。
【0053】
本発明の第二は、表面の少なくとも一部が、濡潤処理した充填物または撥水処理した充填物を充填した充填塔で、重合防止剤の共存下、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらのエステルから選ばれる少なくとも1種を精製することを特徴とする、(メタ)アクリル酸またはそのエステルの製造方法である。
【0054】
本発明は、充填物の表面を易重合性物質含有溶液の滞留をなくす処理を施すことによって、充填物表面における重合物の発生を防止し、これによって連続した長期の易重合性物質の製造を可能とすることができるのである。
【0055】
このような充填物の表面を易重合性物質含有溶液の滞留をなくす処理としては撥水処理があり、例えば、JIS B601によるRy12.5以下とする処理がある。また、本発明の製造方法で使用する充填塔も上記の充填塔を使用することができる。
【0056】
本発明は、表面を易重合性物質含有溶液の滞留をなくす処理をした充填物を配置した充填塔でアクリル酸、メタクリル酸およびそれらのエステルから選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する溶液を精製することが特徴であり、充填塔への易重合性物質含有溶液の供給量や充填塔の圧力条件、温度条件、その他の条件は、従来公知の条件を適用できる。
【0057】
例えば、アクリル酸含有溶液として、プロピレンおよび/またはアクロレインを気相接触酸化して得られるアクリル酸含有ガスを水と接触させて、アクリル酸をアクリル酸水溶液として捕集し、このアクリル酸水溶液を上記充填物を配置した充填塔に供給して、精製する。
【0058】
充填塔のサイズや、充填量など他の要件も従来公知の方法を適用できる。しかしながら、充填物の充填方法としては、偏流を起こさないように、充填ムラを生じないようにパッキングサポート上に、少量ずつ常に充填個所をかえて山を作らないようにして充填することが好ましい。また、充填作業において形状が変形しやすいものを充填する場合には、充填塔内に予め水をはり、この中にゆっくりと充填物を落下させながら充填することが好ましい。
【0059】
本発明では、充填塔に一般に易重合性物質の重合防止剤を添加することが好ましい。上記のごとく、充填物表面における重合物の発生を防止する際に濡潤処理を行った場合には特に、充填物表面に付着する溶液中に重合防止剤が含まれることで効果的に重合を防止できるからである。
【0060】
使用できる重合防止剤、使用量および投与方法は、上記本発明の第一で記載したのと同様のものを使用できる。
【0061】
なお、メタクリル酸その他(メタ)アクリル酸エステルの場合にも、公知の製造条件を適用して同様に使用することができる。
【0062】
【実施例】
以下、本発明の実施例により具体的に説明する。
【0063】
(実施例1)
ステンレス鋼製(SUS316)の(Dodwell Industrial社製)カスケードミニリングNo.2Pにアルミナショットブラストで表面処理した充填物を不規則に充填した内径900mmの充填塔を用い、アクリル酸の精製を行った。
【0064】
表面処理を濡潤処理を施した該充填物の表面処理程度は、充填前に水をかけて確認したところ、表面全体が十分に濡れ、液のはじきがない状態であった。一方で、濡潤処理を行っていない充填物は、表面に濡れの部分と液のはじきを生じる部分が混在していた。
【0065】
充填層の高さを5000mmとし、そのうち上部2500mmに表面処理を施していない充填物を、残りに表面処理した充填物を配置した。
【0066】
蒸留に供したアクリル酸含有液の組成は、アクリル酸65質量%、水30質量%、酢酸3質量%液であり、19,000kg/hrで充填塔塔頂より投入し、塔頂温度68℃、塔頂圧力200kPa、塔底温度78℃、塔底圧力275kPa、塔底抜き出し液量17,800kg/hrの条件で精製した。6ヶ月連続運転した後、塔内を点検した。
【0067】
点検の結果、表面処理を施していない充填物層には充填物表面に総量約30リットルの重合物が付着していたが、表面処理を施した充填物には総量約3リットルの重合物が付着するのみであった。
【0068】
(実施例2)
実施例1に加えて、塔頂より重合防止剤としてハイドロキノン400ppm(原料供給液中アクリル酸濃度に対して)を投入した。
【0069】
6ヶ月の連続運転の後に、塔内を点検した。点検の結果、表面処理を施していない充填物層には充填物表面に総量約15リットルの重合物が付着していたが、表面処理を施した充填物には重合物は全く見られなかった。
【0070】
(実施例3)
充填物表面の表面粗度をJIS B601によるRy12.5以下とする撥水処理を施した充填物を充填した以外は、実施例1と同様の組成、流量の液を用いて蒸留を行った。
【0071】
点検の結果、表面処理を施していない充填物層には充填物表面に総量約80リットルの重合物が付着していたが、表面処理を施した充填物には総量約5リットルの重合物が付着するのみであった。
【0072】
(実施例4)
ステンレス鋼製(SUS316)の(Dodwell Industrial社製)カスケードミニリングNo.2Pにアルミナショットブラストで表面処理した充填物を不規則に充填した内径900mmの充填塔を用い、アクリル酸の精製を行った。
【0073】
表面処理を濡潤処理を施した該充填物の表面処理程度は、充填前に水をかけて確認したところ、表面全体が十分に濡れ、液のはじきがない状態であった。一方で、濡潤処理を行っていない充填物は、表面に濡れの部分と液のはじきを生じる部分が混在していた。
【0074】
充填層の高さを5000mmとし、そのうち下部2500mmに表面処理を施していない充填物を、残りに表面処理した充填物を配置した。
【0075】
蒸留に供したアクリル酸含有液の組成は、アクリル酸65質量%、水30質量%、酢酸3質量%液であり、19,000kg/hrで充填塔塔頂より投入し、塔頂温度68℃、塔頂圧力200kPa、塔底温度78℃、塔底圧力275kPa、塔底抜き出し液量17,800kg/hrの条件で精製した。6ヶ月連続運転した後、塔内を点検した。
【0076】
点検の結果、表面処理を施していない充填物層には充填物表面に総量約40リットルの重合物が付着していたが、表面処理を施した充填物には総量約2リットルの重合物が付着するのみであった。
【0077】
(実施例5)
充填物表面の表面粗度をJIS B601によるRy12.5以下とする撥水処理を施した充填物を充填した以外は、実施例4と同様の組成、流量の液を用いて蒸留を行った。
【0078】
点検の結果、表面処理を施していない充填物層には充填物表面に総量約100リットルの重合物が付着していたが、表面処理を施した充填物には総量約5リットルの重合物が付着するのみであった。
【0079】
【発明の効果】
本発明によれば、充填塔に配置する充填物の表面に、撥水処理または濡潤処理を行うことで、充填物表面に生ずる重合物の発生を抑制することができる。また、該処理によって重合性物質の付着を防止することもできる。易重合性物質の精製では、その化学的性質から蒸留塔内で重合物が発生し,これによって長期連続運転が制限され、または停止時の重合物の除去に多大な時間と費用とが必要とされるが,本発明によれば充填物をショットブラストなどの撥水処理や、JIS B601(−1994)によるRy12.5以下とする処理を行うことで、上記課題を簡便に解決することができる。
【0080】
また、本発明の製造方法によれば、アクリル酸、メタクリル酸、またはこれらのエステル体を、重合物等の不純物の混入を抑制し、かつ連続運転によって安定して製造することができる。
Claims (6)
- 易重合性物質を取り扱う充填塔において、塔内部に詰め込んだ充填物の表面が、濡潤処理を施したものであることを特徴とする、充填塔における重合防止方法。
- 該濡潤処理が、ショットブラストであることを特徴とする、請求項1記載の重合防止方法。
- 充填物の形状が、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、フレキシリング、カスケードミニリング、ラシヒスーパーリング、インターロックス・メタルタワー・パッキングおよびインタロックスサドルからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1または2に記載の重合防止方法。
- 更に、該充填塔内に重合防止剤を添加することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の重合防止方法。
- 該充填塔の充填物以外の塔内装物の表面が、JIS B601によるRy12.5以下とすることである、請求項1〜4のいずれかに記載の重合防止方法。
- 表面の少なくとも一部が、濡潤処理した充填物を充填した充填塔で、重合防止剤の共存下、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらのエステルから選ばれる少なくとも1種を精製することを特徴とする、(メタ)アクリル酸またはそのエステルの製造方法。
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