JP2004043451A - (メタ)アクリル酸類の製造方法 - Google Patents
(メタ)アクリル酸類の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004043451A JP2004043451A JP2003135721A JP2003135721A JP2004043451A JP 2004043451 A JP2004043451 A JP 2004043451A JP 2003135721 A JP2003135721 A JP 2003135721A JP 2003135721 A JP2003135721 A JP 2003135721A JP 2004043451 A JP2004043451 A JP 2004043451A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- meth
- decomposition
- liquid
- acrylic acid
- producing
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
Abstract
【効果】(メタ)アクリル酸類のミカエル付加物を含有する高沸物を加熱分解して有価物を回収する方法において、分解残渣物を、分解反応器から貯蔵タンクに、閉塞なく送出することができ、長期連続運転が可能となる。
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、アクリル酸もしくはメタクリル酸(以下、これらを総称して(メタ)アクリル酸という。)、又はそれらのエステル(以下、(メタ)アクリル酸とそれらのエステルを総称して(メタ)アクリル酸類という。)の製造方法に関する。更に詳しくは、(メタ)アクリル酸類の製造工程で副生する(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルのミカエル付加物を分解し、有益化合物を回収することにより、産業廃棄物の量を削減し、かつ高い回収率によって工業的に有利な(メタ)アクリル酸類を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アクリル酸又はアクリル酸エステル類の製造時に副生するミカエル付加物の分解方法としては、アクリル酸の製造プロセスにおいては触媒を用いない熱分解方法が一般的に採用されるが(特許文献1参照)、アクリル酸エステルの製造プロセスの場合は、ルイス酸もしくはルイス塩基の存在下に加熱して分解する方法が知られている(特許文献2〜6参照)。また、ミカエル付加物の分解反応方式としては、分解反応を行いながら目的の分解反応生成物を蒸留で留去させる反応蒸留方式が一般的に採用されている。また、アクリル酸の製造工程で副生するミカエル付加物と、アクリル酸エステルの製造工程で副生するミカエル付加物とを併せて熱分解する方法も公知であり、無触媒、反応蒸留方式で熱分解する方法(特許文献7参照)と、高濃度の酸触媒を用いて分解する方法(特許文献8参照)等がある。
【特許文献1】特開平11−12222号公報
【特許文献2】特開昭49−55614号公報
【特許文献3】特公平7−68168号公報
【特許文献4】特開平9−110791号公報
【特許文献5】特開平9−124552号公報
【特許文献6】特開平10−45670号公報
【特許文献7】特開平8−225486号公報
【特許文献8】特開平9−183753号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来、かかる分解反応の塔頂にて製品、あるいは反応原料として有用なアクリル酸、アクリル酸エステル、アルコールの回収量を増加させるためには、分解反応温度を上げ、塔底抜き出し量を抑える必要があるが、これにより塔底液が高粘度液体となること、分解温度が高温のため易重合性物質であるアクリル酸あるいはアクリル酸エステルのオリゴマ−あるいはポリマーが発生すること、反応原料中に含まれる物質の一部が析出すること等により分解反応塔塔底部での固形物堆積とこの堆積物に含有された液による重合物の発生、およびこれらの堆積物が運転変動時に液排出ラインへ流れ込むことで液排出ラインに突然の閉塞が発生するために分解反応塔を長期間安定して運転する方法がなかった。特に一旦分解反応塔塔底部に固形物が堆積すると堆積固形物中に吸蔵された易重合性液は、流動できないことと分解反応温度が比較的高温であるため極めて重合し易くなり、この重合によって更に堆積物量を増加させてしまう現象が発生するために何らかの対策が切望されていた。
本発明は、このような従来の(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルのミカエル付加物の分解反応における問題点を克服し、分解反応塔内に堆積物を残留させないことで、分解反応塔内部での重合物の発生防止、および抜き出し配管での突然の閉塞を防止し、安定した運転方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決するため、各種の検討を行った結果、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルのミカエル付加物の分解反応において、分解反応塔塔底部の固形物蓄積を防止し、これによる重合を回避するために、塔底部の液流動を円周方向とすることが極めて効果的であることを見出して、本発明に到達した。
即ち、本発明の要旨は、プロピレン、プロパンもしくはイソブチレンの気相接触酸化を含む反応工程、及び要すれば更にエステル化工程を含む反応工程で(メタ)アクリル酸類を製造する方法において、ミカエル付加物を含有する高沸点混合物を分解反応器で分解して、(メタ)アクリル酸類を回収するに当たり、該分解反応器内の液状反応残渣物に円周方向の液流動(旋回流)を強制的に発生させながら該液状反応残渣物を抜き出すことを特徴とする(メタ)アクリル酸類の製造方法に存する。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明をさらに詳しく説明する。
<(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステル>
本発明は、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルの製造に際して取得される高沸点混合物(以下、単に高沸物と略称することがある)の分解処理に適用できる。例えば、プロピレン又はイソブチレンをMo−Bi系複合酸化物触媒の存在下、気相接触酸化し、アクロレイン又はメタクロレインを生成し、更にMo−V系複合酸化物触媒の存在下、気相接触酸化して得られる(メタ)アクリル酸を製造するプロセスに適用できる。この際、プロピレン等を酸化して主としてアクロレイン又はメタクロレインを生成する前段反応とアクロレイン又はメタクロレインを酸化して主として(メタ)アクリル酸を生成する後段反応をそれぞれ別の反応器で行うものでも、一つの反応器に前段反応を行う触媒と後段反応を行う触媒を同時に充填して反応を行うものでも構わない。また、プロパンをMo−V−Te系複合酸化物触媒、或いはMo−V−Sb系複合酸化物触媒等を用いて気相酸化するアクリル酸の製造プロセスにも適用できる。更には、(メタ)アクリル酸にアルコールを反応させてそのエステルを製造するプロセスにも適用できる。
【0006】
これらのプロセスにおいて、目的物を分離した後に得られる高沸点混合物(高沸物)が、本発明の分解対象物である。アクリル酸エステルとしては、炭素数1〜8のアルキル又はシクロアルキルエステルがあげられる。たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ターシャリーブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸メトキシエチル等が挙げられる。メタクリル酸エステルについても上記と同様のエステルが挙げられる。
【0007】
<ミカエル付加物>
本発明の分解対象物である高沸物に含有されるミカエル付加物とは、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルの炭素・炭素二重結合に、水、アルコール、(メタ)アクリル酸などの活性水素化合物がイオン付加したものである。具体的には、例えばアクリル酸を製造する場合のミカエル付加物として、下記に例示するようなアクリル酸2量体(以下、ダイマー)、アクリル酸3量体(以下、トリマー)、アクリル酸4量体(以下、テトラマー)、β―ヒドロキシプロピオン酸等である。
ダイマー: H2C=CH−C(=O)−O−CH2−CH2−C(=O)−OH
トリマー: H2C=CH−C(=O)−O−CH2−CH2−C(=O)−O−CH2−CH2−C(=O)−OH
テトラマー:H2C=CH−C(=O)−O−CH2−CH2−C(=O)−O−CH2−CH2−C(=O)−O−CH2−CH2−C(=O)−OH
β―ヒドロキシプロピオン酸:HO−CH2−CH2−C(=O)−OH
【0008】
一方、アクリル酸エステルを製造する場合のミカエル付加物として、上述のアクリル酸エステルへのアクリル酸のミカエル付加物、具体的にはβ―アクリロキシプロピオン酸エステル(ダイマーのエステル);アルコールのミカエル付加物、具体的にはβ―アルコキシプロピオン酸エステル、ダイマー、トリマー、テトラマーのエステル体、β―ヒドロキシプロピオン酸、β―ヒドロキシプロピオン酸エステル類等がある。
β―アクリロキシプロピオン酸エステル: H2C=CH−C(=O)−O−CH2−CH2−C(=O)−OR
β―アルコキシプロピオン酸エステル : RO−CH2−CH2−C(=O)−OR
トリマーのエステル: H2C=CH−C(=O)−O−CH2−CH2−C(=O)−O−CH2−CH2−C(=O)−OR
β―ヒドロキシプロピオン酸エステル:HO−CH2−CH2−C(=O)−OR
【0009】
メタクリル酸及びメタクリル酸エステルについてもほぼ上記と同様である。相違点はα−位の水素がメチル基に置換される結果、プロピオン酸(エステル)がイソ酪酸(エステル)となる点のみである。
【0010】
反応分解器に供給する高沸物は、上記ミカエル付加物を含有する高沸点混合物である。ミカエル付加物の含有量は製造プロセスによって大幅に変動しうるが、通常1〜90重量%、好ましくは2〜70重量%程度のミカエル付加物を含有する高沸物が用いられる。高沸物には、(メタ)アクリル酸類を製造する工程で副生する化合物、もしくはプロセス助剤として使用する物質も含まれている。具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル類、マレイン酸、マレイン酸エステル類、フルフラール、ベンズアルデヒド、ポリマー、オリゴマー、エステル製造原料として使用するアルコール類、重合禁止剤、具体的にはアクリル酸銅、ジチオカルバミン酸銅、フェノール化合物、フェノチアジン化合物等である。
【0011】
ジチオカルバミン酸銅としては、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジプロピルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅等のジアルキルジチオカルバミン酸銅、エチレンジチオカルバミン酸銅、テトラメチレンジチオカルバミン酸銅、ペンタメチレンジチオカルバミン酸銅、ヘキサメチレンジチオカルバミン酸銅等の環状アルキレンジチオカルバミン酸銅、オキシジエチレンジチオカルバミン酸銅等の環状オキシジアルキレンジチオカルバミン酸銅等である。
フェノール化合物としては、ハイドロキノン、メトキシハイドロキノン(メトキノン)、ピロガロール、カテコール、レゾルシン、フェノール、またはクレゾール等である。フェノチアジン化合物としては、フェノチアジン、ビスー(α―メチルベンジル)フェノチアジン、3,7−ジオクチルフェノチアジン、ビスー(α―ジメチルベンジル)フェノチアジン等である。上記以外の物質もプロセスによっては含まれる場合があるが、本発明に影響しないことは明らかである。
【0012】
<(メタ)アクリル酸類を製造する工程>
前述の高沸物は、例えば、プロピレンまたはアクロレインを接触気相酸化して得られた(メタ)アクリル酸含有ガスを水または有機溶媒と接触させて(メタ)アクリル酸を溶液として捕集した後、抽出、蒸留等の精製工程を経て得られる。(メタ)アクリル酸エステルを製造する工程は、例えば、(メタ)アクリル酸とアルコールを有機酸、あるいはカチオン性イオン交換樹脂等を触媒として反応させるエステル化反応工程、該反応で得られた粗(メタ)アクリル酸エステル液を濃縮する為の単位操作として抽出、蒸発、蒸留を行う精製工程よりなる。各単位操作は、エステル化反応の(メタ)アクリル酸とアルコールの原料比、エステル化反応に用いる触媒種、あるいは原料、反応副生成物等それぞれの物性により適宜選定される。
【0013】
<高沸物の熱分解反応の製造ライン図>
図面を参照して記述する。図1は、本発明の熱分解反応の製造ラインの一例であり、記号及び番号は下記を意味する。
A:分解反応器
B:器底ポンプ
C:加熱用熱交換器
1:高沸物供給ライン
2:残渣液抜出ライン
3:加熱用熱交換器供給ライン
3の2:加熱用戻りライン
4:残渣液系外排出ライン
5:旋回流形成用戻りライン
6:有価物回収ライン
【0014】
高沸物はライン1より分解反応器Aに供給される。分解反応器Aへの供給は連続的または間欠的(半連続的)に実施できるが、連続供給が好ましい。分解反応器で生成する有価物および一部の高沸物を構成する物質は回収ライン6より、連続的にガス状で抜き出され、そのままガス状、もしくは冷却して液状で製造工程へ戻される。分解反応器Aが塔型反応器である場合には、冷却した液の一部を分解反応塔の塔頂部分へ還流液として戻してもよい。
残渣液は、残渣液抜出ライン2及び器底ポンプBを経て、その一部はライン3を経て加熱用熱交換器Cへ供給され、分解反応器Aに戻される。残りはライン4より系外へ送出される。戻り液量と系外排出量との関係は、加熱用熱交換器での熱バランス、分解反応器での滞留時間など諸要因により適宜に設定できる。
本発明の分解反応器内の円周方向の流れ(以下、旋回流ということがある。)は、図1ではライン5の戻り液によって形成される。ライン5は分解反応器本体の接線方向に設置され、ライン5より供給される液体の流れによって器内に旋回流が発生する。ライン5の戻り液量は、ライン1の原料供給量に対して通常0.2〜5重量倍の範囲から選択される。上記範囲未満では充分な旋回流を形成しにくい。ライン3の2を流れる加熱用戻り液は旋回流の形成とは関係なく、熱バランスなどからその流量が決定される。
【0015】
図2は、分解反応器に供給する原料液によって円周方向の流れを作るもので、ライン1によって実施される。ライン1が分解反応器本体の接線方向に設置され、ライン1より供給される原料液によって塔内の旋回流が発生する。この場合、ライン1は、分解反応器内に滞留する反応液の液面より下方になるよう液面を制御する必要がある。
【0016】
図3は、撹拌翼を用いて分解反応器内に旋回流を発生させる装置の一例である。
A:分解反応器
B:器底ポンプ
D:残渣液撹拌設備
1:高沸物供給ライン
2の1、2の2:残渣液抜出ライン
4:残渣液系外排出ライン
6:有価物回収ライン
7:熱媒供給ライン
8:熱媒抜出ライン
高沸物はライン1より分解反応器Aに供給される。分解反応器Aで分解された有価物、および一部の高沸物を構成する物質は回収ライン6より抜き出され、ガス状、もしくは冷却して液状で製造工程へ戻される。分解反応器Aが塔型反応器である場合には、一部の冷却した液を分解反応器の頂部へ還流液として戻すこともある。残渣液は、ライン4より系外へ送出される。熱媒供給ライン7と熱媒抜出ライン8は例示であって、熱媒の種類によって供給ラインと抜出ラインの位置が変更することもある。
【0017】
本発明の分解反応器内の円周方向の流れ(旋回流)は、図3では残渣液撹拌設備Dによって実施される。撹拌設備Dは撹拌翼、撹拌軸、撹拌用モーター等からなり、これによって分解反応器の内容液が円周方向の流体流れを形成することができる。撹拌翼の回転数は、通常、翼の先端速度が0.2〜5m/秒となるように翼形状や翼径に基づいて適宜選択される。旋回流を形成した残渣液は残渣液抜出ライン2の1又は2の2から抜き出される。残渣液抜出ライン2の1は分解反応器本体の接線方向に設置した例、残渣液抜出ライン2の2は分解反応器中央部に設置した例である。抜出ライン2の1の場合は、撹拌翼の撹拌効果とあいまって、良好な旋回流を保持することができる。
【0018】
図4は、分解反応器Aの断面と旋回流形成用ラインとの接続位置関係を示す図である。図1のライン5(旋回流形成用戻りライン5)、もしくは図2のライン1(高沸物供給ライン1)が、分解反応器本体の接線方向に設置され、これにより分解反応器内に円周方向の流れ(旋回流)を作ることができる。また、図3の残渣液抜き出しライン2の1は、分解反応器本体の接線方向に設置されれ、撹拌翼の撹拌効果とあいまって、良好な旋回流を保持することができる。
【0019】
図5は、分解反応器Aの器底部に堆積した固形物を模式的に示す図(塔長方向断面図)である。左右の堆積物が合体すると抜出口が閉塞状態となり、器底液の抜き出しが不能となり、器底ポンプBがキャビテーションを起こすこととなる。
【0020】
<高沸物の分解反応>
高沸物中に含まれるミカエル付加物を加熱することにより(メタ)アクリル酸を主体とする単量体に分解することができる。高沸物中に(メタ)アクリル酸エステルが含まれている場合は、条件によって、(メタ)アクリル酸とアルコールに加水分解することができるし、分解せずにエステルのまま回収することもできる。
分解反応の温度は、110〜250℃、好ましくは120〜230℃に調節される。図1において、高沸物は加熱用熱交換器Cで加熱され、温度制御が行われる。図1のように分解反応器Aの外部に加熱器が設置されるもの以外に、分解反応器内に設置されるインナーコイル型、分解反応器周囲に設置されるジャケット型加熱器等があり、いずれの型式の加熱装置も使用可能である。
【0021】
分解反応の滞留時間は、高沸物の組成、触媒の有無、分解反応温度によって異なる。分解反応温度が低い場合は比較的長時間、例えば10〜50時間、高い場合は30分〜10時間である。反応圧力は、減圧条件、常圧条件のいずれでもよい。
【0022】
分解反応は、高沸物のみを対象として実施することができるが、分解反応を促進する目的で酸触媒の存在下、または水を共存させることもできる。分解反応触媒としては、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、塩化アルミニウムのような酸またはルイス酸が主に使用できる。触媒及び/または水は、予め高沸物と混合して、または高沸物とは別に分解反応器Aに供給される。高沸物中にポリマー、重合防止剤、触媒等が含まれる場合は、これらは分解されることなく、通常はそのまま分解残渣物中に濃縮される。
【0023】
<分解反応器の構造>
分解反応器Aの構造は、塔型、槽型などいずれでもよい。塔型反応器の場合、内容物として一般の蒸留塔に使用されるトレイ、あるいは充填物が設置される場合があり、分解反応が行われると共に蒸留操作がなされるので好ましい。充填物としては、規則充填物として、スルザー・ブラザース社製のスルザーパック、住友重機械工業社製の住友スルザーパッキング、メラパック、グリッチ社製のジェムパック、モンツ社製のモンツパック、東京特殊金網社製のグッドロールパッキング、日本ガイシ社製のハニカムパック、ナガオカ社製のインパルスパッキング等が用いられる。
不規則充填物としては、ノートン社製のインタロックスサドル、日鉄化工機社製のテラレット、BASF社製のポールリング、マストランスファー社製のカスケード・ミニ・リング、日揮社製のフレキシリング等であり、これら充填物は如何なるもの用いてもよく、また1種類以上を組み合わせて使用しても良い。
【0024】
トレイとしては、ダウンカマーのある泡鐘トレイ、多孔版トレイ、バルブトレイ、スーパーフラックトレイ、マックスフラクストレイ等、ダウンカマーの無いデユアルトレイ、ディスクアンドドーナツ型トレイ等がある。トレイ、あるいは充填物を組み合わせて使用しても良く、また、分解反応物の内部にこれら内容物が全く無くても良い。
【0025】
本発明において円周方向の液流動(旋回流)は、強制的に発生させるものであり、高沸物原料または器底液(塔底液)の戻り液を反応器の接線方向から供給することによって実施できる。接線方向からの供給口がない場合は、反応器に付設した撹拌翼により旋回流を形成することとなる。場合によっては、両者の手段を併用することもできる。
撹拌翼など付設した槽型反応器の場合は、必要に応じてバッフルを設けてもよい。
撹拌翼は、円周流れを発生させるものならいずれの型式でも使用できる。具体的には、アンカー翼、(1段以上の)多段パドル翼、(1段以上の)多段傾斜パドル翼、格子翼、マックスブレンダー翼(住友重機械社商品名)、フルゾーン翼(神鋼パンテック社商品名)等で、1種以上、かつ1段又は2段以上の多段に用いることができる。フルゾーン翼は、反応器の中心部に垂直に設置された回転軸に放射流型翼が回転軸方向に2段以上取り付けられ、回転軸方向に隣接した翼は互いに回転軸方向に対し90度以下の位相をずらした位置関係であり、かつ、該回転軸方向に隣接した翼の上段側の最下部が下段側の最上部より下位にある構造を有する(特開平7−33804号公報参照)。撹拌翼として特に好ましいのは、アンカー翼、格子翼、又はフルゾーン翼である。
撹拌翼と共に設置される邪魔板(以下、バッフル)に対しても、本発明では規制がない。いずれの型式でもよく、また配置されなくても良い。具体的には、棒型、板型、櫛型等であり、1種以上、かつ1本以上の設置が可能である。特に好ましいのは棒型1本設置、板型1枚設置などである。
【0026】
<分解反応器の残渣物の抜き出し>
分解反応器から分解残渣物は適宜の方法で抜き出される。分解反応塔の塔底部抜出位置は、塔の塔底鏡部であればいずれの場所でも良い。好ましくは、塔底最下部より塔径の1/2以内の範囲である。鏡部より上部に位置すると鏡部に固形物が蓄積する。残渣物はタンクなどに保管された後、焼却処理または製造プロセスへ循環使用される。一方、ミカエル付加物またはエステルの分解生成物として、アクリル酸、メタクリル酸、アルコールなどが分解反応器の上部(塔頂)から連続的に抜き出される。これらは精製系に導かれ、または製造プロセスの適宜の位置に循環される。
【0027】
【実施例】
以下に、本発明を具体的に説明するために、実施例および比較例を挙げて詳細に説明するが本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、高沸物の組成分析は、水素炎イオン化検出器(FID)付きのガスクロマトグラフを用いて常法に従って実施した。
【0028】
<実施例1>
図1に示す設備で高沸物の分解反応を実施した。分解反応器として外径600mm、長さ1800mm、材質はハステロイCの塔型反応器を使用した。原料として下記組成の高沸物をライン1より580kg/hで連続的に供給した。
[ 高沸物(原料)組成 ]
アクリル酸ブチル: 22重量%
β―ブトキシプロピオン酸ブチル: 67重量%
アクリロキシプロピオン酸ブチル: 4重量%
β―ヒドロキシプロピオン酸ブチル: 2重量%
ハイドロキノン: 3重量%
メトキシキノン: 2重量%
また、分解反応触媒として硫酸1重量%水溶液をライン1に58kg/h(原料供給液に対し10重量%)で供給し、反応圧力100kPa、分解温度190℃、滞留時間1時間で分解反応を実施した。
【0029】
塔頂のライン6からアクリル酸及びブタノールを主体とする有価物を438kg/hで回収する一方、下記組成の反応残渣物を200kg/hでライン4を経て系外に抜き出した。
[ 反応残渣物組成 ]
アクリル酸ブチル: 11.0重量%
β―ブトキシプロピオン酸ブチル:68.5重量%
アクリロキシプロピオン酸ブチル: 2.0重量%
β―ヒドロキシプロピオン酸ブチル:0.3重量%
ハイドロキノン: 8.7重量%
メトキシキノン: 5.8重量%
ブタノール: 0.8重量%
硫酸: 2.9重量%
反応器Aのライン2から35350kg/hの塔底液が抜き出され、ライン5に設置した流量制御弁(図1には記載なし)により、反応器Aに対して接線方向に設置されたライン5(図4参照)より350kg/hの塔底液を反応器Aに戻した。残り34800kg/hは加熱用熱交換器C及び加熱用戻りライン3の2を経て反応器Aに戻した。この際、ライン5からの戻り液により反応器Aの底部に旋回流が形成された。
なお、ライン3の配管は4B、ライン5の配管は11/2(1.5)Bであった。
6ヶ月連続運転を行った後、運転を停止して分解反応塔内部を点検した。分解反応塔塔底部には蓄積物が無かった。また、運転中、反応残渣物の送出配管は閉塞が無かった。
【0030】
<比較例1>
ライン5の分解反応塔への接続を、接線方向ではなく、塔中心方向に設置した以外は実施例1と同様な装置(図1)で操作をおこなった。
2ヶ月運転後、ポンプBで突然キャビテーションが発生した。分解反応塔の運転を停止し、内部を点検した結果、分解反応塔塔底部に固形物が蓄積していた。分解反応塔の塔底部に蓄積していた固形物の状態を図5に示す。
【0031】
<実施例2>
実施例1と同様な装置(図1)を用いて下記組成の高沸物をライン1より580kg/hで連続的に供給した。
反応圧力72kPa、分解温度190℃、滞留時間1時間で分解反応を実施し、塔頂のライン6からアクリル酸を主体とする有価物を449kg/hで回収する一方、下記組成の反応残渣物を131kg/hでライン4を経て系外に抜き出した。
分解反応塔の塔底液は、塔底鏡部の最下位に設置された3/4Bノズル(ライン2)より抜き出され、ポンプBに供給された。ポンプBを経由し、ライン4から131kg/hで抜き出され、ライン3へは32000kg/hで4B径の配管で加熱用熱交換器Cを経て、分解反応塔に戻り液として供給された。
一方、分解反応塔に円周方向の流れを形成するためライン5からポンプBにて分解反応塔の塔底液が戻り液として供給された。ライン5の配管径は 11/2(1.5)Bで、流量は400kg/hでライン5に設置された流量制御弁(図には記載無し)で実施した。
6ヶ月連続運転を行った後、運転を停止して分解反応塔内部を点検した。分解反応塔塔底部には蓄積物が無かった。また、運転中、反応残渣物の送出配管は閉塞が無かった。
【0032】
<比較例2>
実施例2において、ライン5の分解反応塔への接続を、接線方向では無く、塔中心方向に設置した以外は実施例2と同様な設備で操作をおこなった。
70日運転後、ポンプBで突然キャビテーションが発生した。分解反応塔の運転を停止し、内部を点検した結果、分解反応塔塔底部に固形物が蓄積していた。分解反応塔塔底部に蓄積していた固形物の状態は図5のようであった。
【0033】
<実施例3>
撹拌翼としてアンカー翼を設置した図3に示す分解反応塔(バッフル無し)を使用して、実施例2と同様の高沸物の分解反応を実施した。分解反応塔はジャケットを有し、槽径600mm、高さ1000mmで、アンカー翼の翼径は540mmである。アンカー翼の回転数を20rpmとし、実施例2と同じ運転条件で操作して、6ヶ月後に停止して内部を点検した結果、塔内に固形物の蓄積は無かった。また、塔底最下部に設置した抜き出しラインも同期間の間、閉塞は無かった。
【0034】
【発明の効果】
(メタ)アクリル酸類のミカエル付加物を含有する高沸物を加熱分解して有価物を回収する方法において、分解反応残渣物を、分解反応器から貯蔵タンクに、閉塞なく送出することができ、長期連続運転が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱分解反応の製造ラインの一例(分解反応器への戻り液によって旋回流形成)を示す。
【図2】熱分解反応の製造ラインの一例(分解反応器に供給する原料液によって旋回流形成)を示す。
【図3】熱分解反応の製造ラインの一例(撹拌翼によって旋回流形成)を示す。
【図4】分解反応器Aの水平方向断面と旋回流形成用ラインとの接続位置関係を示す図である。
【図5】分解反応器Aの器底部に堆積した固形物を模式的に示す図(塔長方向断面図)である。
【符号の説明】
A:分解反応器
B:塔底ポンプ
C:加熱用熱交換器
D:撹拌設備
E:堆積物
1:高沸物供給ライン
2:器底液抜出ライン
3:加熱用熱交換器供給ライン
4:反応残渣物系外抜出ライン
5:旋回流形成用戻りライン
6:有価物回収ライン
Claims (8)
- プロピレン、プロパンもしくはイソブチレンの気相接触酸化を含む反応工程、及び要すれば更にエステル化工程を含む反応工程でアクリル酸もしくはメタクリル酸、又は(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法において、ミカエル付加物を含有する高沸点混合物を分解反応器で分解して、(メタ)アクリル酸類を回収するに当たり、該分解反応器内の液状反応残渣物に円周方向の液流動を強制的に発生させながら該液状反応残渣物を抜き出すことを特徴とする(メタ)アクリル酸類の製造方法。
- 円周方向の液流動を、分解反応器内に設置した撹拌翼で実施することを特徴とする請求項1に記載の(メタ)アクリル酸類の製造方法。
- 撹拌翼が、アンカー翼、多段パドル翼、多段傾斜パドル翼又は格子翼であることを特徴とする請求項1又は2に記載の(メタ)アクリル酸類の製造方法。
- 撹拌翼の構造が、反応器の中心部に垂直に設置された回転軸に放射流型翼が回転軸方向に2段以上取り付けられ、回転軸方向に隣接した翼は互いに回転軸方向に対し90度以下の位相をずらした位置関係であり、かつ、該回転軸方向に隣接した翼の上段側の最下部が下段側の最上部より下位にある請求項1又は2に記載の方法。
- 円周方向の液流動を、分解反応器の外部から供給する液により発生させることを特徴とする請求項1に記載の(メタ)アクリル酸類の製造方法。
- 分解反応器の外部から供給する液が、原料として供給される高沸点混合物、又は分解反応器から抜き出された液状反応残渣物の戻り液であることを特徴とする請求項1又は5項に記載の(メタ)アクリル酸類の製造方法。
- 高沸点混合物が(メタ)アクリル酸のダイマーを含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル酸類の製造方法。
- 高沸点混合物がβ−アルコキシプロピオン酸アルキル又はβ−アルコキシイソ酪酸アルキルを含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル酸類の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003135721A JP2004043451A (ja) | 2002-05-16 | 2003-05-14 | (メタ)アクリル酸類の製造方法 |
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002141194 | 2002-05-16 | ||
JP2003135721A JP2004043451A (ja) | 2002-05-16 | 2003-05-14 | (メタ)アクリル酸類の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004043451A true JP2004043451A (ja) | 2004-02-12 |
Family
ID=31719406
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003135721A Pending JP2004043451A (ja) | 2002-05-16 | 2003-05-14 | (メタ)アクリル酸類の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004043451A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101344004B1 (ko) | 2010-04-08 | 2013-12-20 | 주식회사 엘지화학 | (메트)아크릴산 에스테르 제조시 생성되는 부산물의 분해 및 회수방법 |
JP2014198707A (ja) * | 2013-03-13 | 2014-10-23 | 三菱化学株式会社 | 共役ジエンの製造方法 |
JP2017131833A (ja) * | 2016-01-27 | 2017-08-03 | 月島機械株式会社 | 粒子の製造装置及び粒子の製造方法 |
JP2019156738A (ja) * | 2018-03-09 | 2019-09-19 | 三菱ケミカル株式会社 | (メタ)アクリル酸エステルの製造方法 |
-
2003
- 2003-05-14 JP JP2003135721A patent/JP2004043451A/ja active Pending
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101344004B1 (ko) | 2010-04-08 | 2013-12-20 | 주식회사 엘지화학 | (메트)아크릴산 에스테르 제조시 생성되는 부산물의 분해 및 회수방법 |
JP2014198707A (ja) * | 2013-03-13 | 2014-10-23 | 三菱化学株式会社 | 共役ジエンの製造方法 |
JP2017131833A (ja) * | 2016-01-27 | 2017-08-03 | 月島機械株式会社 | 粒子の製造装置及び粒子の製造方法 |
US10434486B2 (en) | 2016-01-27 | 2019-10-08 | Tsukishima Kikai Co., Ltd. | Device for producing particles and method for producing particles |
JP2019156738A (ja) * | 2018-03-09 | 2019-09-19 | 三菱ケミカル株式会社 | (メタ)アクリル酸エステルの製造方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3999160B2 (ja) | 易重合性物質の製造方法 | |
JP5715318B2 (ja) | アクリル酸の製造方法 | |
EP1452518B1 (en) | Process for producing (meth)acrylic acid compounds | |
KR20040014281A (ko) | 아크릴산의 제조방법 | |
US7476299B2 (en) | Vessel for easily polymerizable compound | |
US20060205979A1 (en) | Method of purifying (meth)acrylic acid | |
JP2004043451A (ja) | (メタ)アクリル酸類の製造方法 | |
JP4192465B2 (ja) | (メタ)アクリル酸類製造時の副生物の分解方法 | |
JP2005179352A (ja) | (メタ)アクリル酸の精製方法 | |
JP2023100734A (ja) | 不飽和カルボン酸エステルの製造方法 | |
KR20090124964A (ko) | 수성 (메트)아크릴산의 생성 방법 | |
JP2004043448A (ja) | (メタ)アクリル酸類の製造方法 | |
JP4186459B2 (ja) | 易重合性化合物用の塔設備 | |
RU2300515C2 (ru) | Способ получения (мет)акриловых кислот каталитическим окислением пропилена или изобутилена (варианты), способ разложения побочного продукта (варианты), установка для осуществления способа | |
EP4166534A1 (en) | Method for producing easily polymerizable compound | |
JP2003246764A (ja) | (メタ)アクリル酸の製造方法 | |
JP2005170931A (ja) | 易重合性化合物用の容器 | |
TWI458705B (zh) | 甲基丙烯酸之製備方法 | |
JP2013173801A (ja) | アクリル酸の製造方法 | |
US20050267313A1 (en) | Process for producing (meth)acrolein or (meth)acrylic acid | |
JP2003252824A (ja) | (メタ)アクリル酸類製造時の副生物の分解方法 | |
WO2005082827A1 (ja) | 高粘性物質の取扱い方法 | |
JP2005336066A (ja) | (メタ)アクロレイン又は(メタ)アクリル酸の製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20040922 |
|
RD03 | Notification of appointment of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423 Effective date: 20040922 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20070219 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070306 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20070724 |