JP3987145B2 - 塗料組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低温加工性、塗膜硬度及び耐ブロッキング性に優れた塗膜を形成できる塗料組成物、特に器物加工用のプレコート塗装鋼板用として適した塗料組成物、及びこの塗料組成物を塗装してなる塗装金属板に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、VTR、ラジカセ、電子レンジなどの家電製品などの器物に加工される塗装鋼板用の上塗塗料としては、ポリエステル樹脂を基体樹脂とし、メラミン樹脂又はイソシアネート化合物を硬化剤とした組成物を樹脂成分とする有機溶剤型塗料が使用されている。なかでも硬化剤としてメラミン樹脂、特にメチルエーテル化メチロールメラミン樹脂との混合物に硬化触媒を配合した塗料が多く用いられている。
【0003】
上記従来の塗料を塗装した塗装鋼板は、器物に加工する場合、一般に四季を問わずプレス成型などによって成型加工されるが、冬場の低温においては塗膜の加工性が劣るため冬場においては加工性は極めて重要である。例えば寒冷地域での成型加工は0℃で行われることも少なくないため塗膜のガラス転移温度は、50℃以下でないと十分な加工性が得られないという現状にある。
【0004】
一方、加工性を重要視して塗膜のガラス転移温度を低下させると、塗膜硬度が低下して塗膜に傷が付きやすくなり、また塗装鋼板をシート状に堆積したり、コイル状に巻き取った場合、特に夏場の高温において、その荷重により塗膜にブロッキングを生じやすくなるという問題がある。
【0005】
このため低温での加工性(0℃での折曲げ加工試験で2T以上の良好な加工性)、塗膜硬度及び高温での耐ブロッキング性を満足する塗膜を形成できる塗料の開発が急務となっている。
【0006】
そこで本発明者らは、低温での加工性、塗膜硬度及び高温での耐ブロッキング性を満足する塗膜を形成できる塗料を得るべく鋭意研究の結果、ポリエステル−メラミン樹脂系塗料において、特定のポリエステル樹脂及び架橋剤を組合わせた組成物であって、該組成物から得られる硬化塗膜の動的弾性率及び架橋間分子量が特定の範囲となるものを使用することによって上記目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、(A)数平均分子量8,000〜18,000、ガラス転移温度−20℃以上で5℃未満、水酸基価5〜40mgKOH/gであるポリエステル樹脂20〜80重量部、(B)数平均分子量13,000〜30,000、ガラス転移温度5〜35℃、水酸基価2〜25mgKOH/gであるポリエステル樹脂5〜65重量部及び(C)メラミン樹脂架橋剤15〜35重量部からなる樹脂成分を含有するか、又は該樹脂成分と、該樹脂成分100重量部に対して(D)硬化触媒を酸量に換算した値で2.0重量部以下となる量含有する塗料組成物であって、該ポリエステル樹脂(B)が該ポリエステル樹脂(A)より数平均分子量が1,000以上大きいものであり、かつ該塗料組成物から得られる硬化塗膜の100℃における動的弾性率が2.0×108 dyne/cm2 以上であり、架橋間分子量が300〜1,300であることを特徴とする塗料組成物を提供するものである。
【0008】
また本発明は、金属板上に、ポリエステル系プライマー塗膜又はエポキシ系プライマ塗膜を介して、請求項1記載の塗料組成物の硬化塗膜が形成されてなることを特徴とする塗装金属板を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の態様】
以下、本発明の塗料組成物について、さらに詳細に説明する。
【0010】
ポリエステル樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)
本発明組成物における(A)成分及び(B)成分であるポリエステル樹脂は、水酸基を含有するポリエステル樹脂であり、オイルフリーポリエステル樹脂、油変性アルキド樹脂、また、これらの樹脂の変性物、例えばウレタン変性ポリエステル樹脂、ウレタン変性アルキド樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0011】
上記オイルフリーポリエステル樹脂は、多塩基酸成分と多価アルコール成分とのエステル化物からなるものである。多塩基酸成分としては、例えば無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸などから選ばれる1種以上の二塩基酸及びこれらの酸の低級アルキルエステル化物が主として用いられ、必要に応じて安息香酸、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸などの一塩基酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸などの3価以上の多塩基酸などが併用される。多価アルコール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの二価アルコールが主に用いられ、さらに必要に応じてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールを併用することができる。これらの多価アルコールは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。両成分のエステル化又はエステル交換反応は、それ自体既知の方法によって行うことができる。酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、及びこれらの酸の低級アルキルエステル化物が特に好ましい。
【0012】
アルキド樹脂は、上記オイルフリーポリエステル樹脂の酸成分及びアルコール成分に加えて、油脂肪酸をそれ自体既知の方法で反応せしめたものであって、油脂肪酸としては、例えばヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、キリ油脂肪酸などを挙げることができる。アルキド樹脂の油長は30%以下、特に5〜20%程度のものが好ましい。
【0013】
ウレタン変性ポリエステル樹脂としては、上記オイルフリーポリエステル樹脂、又は上記オイルフリーポリエステル樹脂の製造の際に用いられる酸成分及びアルコール成分を反応させて得られる低分子量のオイルフリーポリエステル樹脂を、ポリイソシアネート化合物とそれ自体既知の方法で反応せしめたものが挙げられる。また、ウレタン変性アルキド樹脂は、上記アルキド樹脂、又は上記アルキド樹脂製造の際に用いられる各成分を反応させて得られる低分子量のアルキド樹脂を、ポリイソシアネート化合物とそれ自体既知の方法で反応せしめたものが包含される。ウレタン変性ポリエステル樹脂及びウレタン変性アルキド樹脂を製造する際に使用しうるポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどが挙げられる。上記のウレタン変性樹脂は、一般に、ウレタン変性樹脂を形成するポリイソシアネート化合物の量がウレタン変性樹脂に対して30重量%以下の量となる変性度合のものを好適に使用することができる。
【0014】
エポキシ変性ポリエステル樹脂としては、上記ポリエステル樹脂の製造に使用する各成分から製造したポリエステル樹脂を用い、この樹脂のカルボキシル基とエポキシ基含有樹脂との反応生成物や、ポリエステル樹脂中の水酸基とエポキシ樹脂中の水酸基とをポリイソシアネート化合物を介して結合した生成物などの、ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂との付加、縮合、グラフトなどの反応による反応生成物を挙げることができる。かかるエポキシ変性ポリエステル樹脂における変性の度合は、一般に、エポキシ樹脂の量がエポキシ変性ポリエステル樹脂に対して、0.1〜30重量%となる量であることが好適である。
【0015】
以上に述べたポリエステル樹脂のうち、特に好適なものとしては、オイルフリーポリエステル樹脂が挙げられる。
【0016】
本発明塗料組成物においては、得られる塗膜の低温加工性及び高温での耐ブロッキング性の点から、ポリエステル樹脂として2種類のポリエステル樹脂(A)及び(B)が併用される。
【0017】
ポリエステル樹脂(A)は、数平均分子量8,000〜18,000、好ましくは9,000〜17,000、ガラス転移温度(Tg点)−20℃以上で5℃未満、好ましくは−10℃以上で5℃未満、水酸基価5〜40mgKOH/g、好ましくは7〜30mgKOH/gであるポリエステル樹脂である。ポリエステル樹脂(B)は、数平均分子量13,000〜30,000、好ましくは14,000〜28,000、ガラス転移温度5〜35℃、好ましくは5〜32℃、水酸基価2〜25mgKOH/g、好ましくは3〜20mgKOH/gであるポリエステル樹脂である。
【0018】
本発明において、ガラス転移温度(Tg)は、示差熱分析(DTA)によるものであり、また数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定したものである。
【0019】
ポリエステル樹脂(A)において、数平均分子量が8,000未満では加工性が劣り、一方、18,000を超えると得られる塗膜の架橋度が低くなり耐ブロッキング性が低下する。Tg点が−20℃未満では得られる塗膜の硬度が低くなり、一方、5℃以上になると得られる塗膜の加工性と耐ブロッキング性とのバランスが取れなくなる。また水酸基価が5mgKOH/g未満になると得られる塗膜の架橋度が低くなり耐ブロッキング性が低下し、一方、40mgKOH/gを超えると得られる塗膜の加工性が劣化する。
【0020】
ポリエステル樹脂(B)において、数平均分子量が13,000未満では加工性が劣り、一方、30,000を超えると得られる塗膜の架橋度が低くなり耐ブロッキング性が低下する。Tg点が5℃未満では得られる塗膜の加工性と耐ブロッキング性とのバランスが取れなくなる。一方、35℃以上になると得られる塗膜の加工性が劣化する。また水酸基価が2mgKOH/g未満になると得られる塗膜の架橋度が低くなり耐ブロッキング性が低下し、一方、25mgKOH/gを超えると得られる塗膜の加工性が劣化する。
【0021】
本発明塗料組成物においては、ポリエステル樹脂(A)及び(B)を併用するが、ポリエステル樹脂(B)としてポリエステル樹脂(A)より数平均分子量が1,000以上大きい樹脂を使用することが必要である。ポリエステル樹脂(A)に加えて分子量の大きいポリエステル樹脂(B)を併用することによって、得られる塗膜の加工性の実用水準を保持しながら、塗膜硬度及び耐ブロッキング性を向上させることが可能となる。
【0022】
メラミン樹脂硬化剤(C)
本発明組成物における(C)成分であるメラミン樹脂硬化剤としては、メラミンとホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドなどのアルデヒド成分との付加反応生成物(1量体及び多量体のいずれであってもよい)であるメチロール化メラミン樹脂のメチロール基の一部又は全部を、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノールなどの炭素原子数1〜6の低級アルコールによってエーテル化したものが挙げられる。
【0023】
上記メラミン樹脂硬化剤の代表例としては、メチロール化メラミン樹脂のメチロール基の一部又は全部を、メチルアルコールによってエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルアルコールによってブチルエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、あるいはメチルアルコールとブチルアルコールとの両者によってエーテル化したメチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化メラミン樹脂などが挙げられる。
【0024】
上記メラミン樹脂の具体例としては、例えばサイメル300、同303、同325、同327、同350、同730、同736、同738[以上、いずれも三井サイテック(株)製]、メラン522、同523[以上、いずれも日立化成(株)製]、ニカラックMS001、同MX430、同MX650[以上、いずれも三和ケミカル(株)製]、スミマールM−55、同M−100、同M−40S[以上、いずれも住友化学(株)製]、レジミン740、同747[以上、いずれもモンサント社製]などのメチルエーテル化メラミン樹脂;ユーバン20SE、同225[以上、いずれも三井東圧(株)製]、スーパーベッカミンJ820−60、同L−117−60、同L−109−65、同47−508−60、同L−118−60、同G821−60[以上、いずれも大日本インキ化学工業(株)製]などのブチルエーテル化メラミン樹脂;サイメル232、同266、同XV−514、同1130[以上、いずれも三井サイテック(株)製]、ニカラックMX500、同MX600、同MS35、同MS95[以上、いずれも三和ケミカル(株)製]、レジミン753、同755[以上、いずれもモンサント社製]、スミマールM−66B[住友化学(株)製]などのメチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化メラミン樹脂などを挙げることができる。これらのメラミン樹脂は1種で又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0025】
メラミン樹脂硬化剤としては、上記のうちメチルエーテル化メラミン樹脂又はメチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化メラミン樹脂を50重量%以上含有するものが好ましく、なかでもメチルエーテル化メラミン樹脂又はメチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化メラミン樹脂(前者)とブチルエーテル化メラミン樹脂(後者)とからなり、前者/後者の重量比が、30/1〜1/1、好ましくは15/1〜3/1の範囲内のものが耐ブロッキング性、加工性、塗膜硬度、耐汚染性などの点から好適である。
【0026】
硬化触媒(D)
本発明の塗料組成物には、ポリエステル樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)とメラミン樹脂硬化剤(C)との硬化反応を促進するために、必要に応じて、硬化触媒を併用することができる。使用しうる硬化触媒としては、例えば、強酸、強酸の中和物などが挙げられ、代表例として、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸などの強度の酸であるスルホン酸化合物、これらのスルホン酸化合物のアミン中和物などを挙げることができる。これらのうち、塗料の安定性、反応促進効果、得られる塗膜の物性などの点から、p−トルエンスルホン酸のアミン中和物及び/又はドデシルベンゼンスルホン酸のアミン中和物が好適である。硬化触媒の使用量は、ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)及びメラミン樹脂硬化剤(C)の合計量100重量部あたり、酸化合物に換算した値として、一般に2.0重量部以下、好ましくは0.1〜1.5重量部の範囲内が適している。ここで「酸化合物に換算した値」とは、硬化触媒が酸の中和物である場合には、硬化触媒から中和剤を除いた酸そのものの量を意味する。硬化触媒が酸自体である場合には、その酸自体の量を意味する。
【0027】
塗料組成物の調製及び塗装
本発明の塗料組成物は、以上に述べたポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)、メラミン樹脂硬化剤(C)、さらに必要に応じて硬化触媒(D)を混合することによって調製することができる。
【0028】
その際のポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)とメラミン樹脂硬化剤(C)との固形分重量による配合比率は、成分(A)、(B)及び(C)の固形分の合計量を100重量部とすると以下のとおりの範囲である。
【0029】
ポリエステル樹脂(A): 20〜80重量部、好ましくは30〜70重量部、
ポリエステル樹脂(B): 5〜65重量部、好ましくは15〜55重量部、
メラミン樹脂硬化剤(C):15〜35重量部、好ましくは20〜30重量部。
上記配合比率において、ポリエステル樹脂(A)の量が20重量部未満となると耐ブロッキング性が劣化し、一方、80重量部を超えると加工性が低下する。また、ポリエステル樹脂(B)の量が5重量部未満となると加工性が低下し、一方、65重量部を超えると耐ブロッキング性が劣化する。さらに、メラミン樹脂硬化剤(C)の量が15重量部未満となると耐ブロッキング性、塗膜硬度、耐溶剤性などが劣化し、一方、35重量部を超えると加工性が低下する。
【0030】
本発明の塗料組成物は、上記ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)、メラミン樹脂硬化剤(C)、さらに必要に応じて硬化触媒(D)から実質的になることができるが、取扱い上及び塗装性の面などから、通常、有機溶剤が含有せしめられる。該有機溶剤としては、上記(A)、(B)、(C)及び必要に応じて使用される(D)の各成分を溶解ないし分散できるものが使用でき、具体的には、例えば、トルエン、キシレン、高沸点石油系炭化水素などの炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテルアルコール系溶剤などを挙げることができ、これらは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0031】
本発明の塗料組成物は、着色顔料を含有しない塗料として使用することができるが、着色顔料を含有するエナメル塗料としても使用することができる。着色顔料としては、塗料分野で通常使用されている着色顔料、例えば、シアニンブルー、シアニングリーン、アゾ系やキナクリドン系などの有機赤色顔料、ベンツイミダゾロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系及びキノフタロン系などの有機黄色顔料;チタン白、チタンイエロー、ベンガラ、カーボンブラック、黄鉛及び各種焼成顔料などの無機着色顔料が挙げられる。
【0032】
また、本発明組成物は、必要に応じて、アルミニウ粉、銅粉、ニッケル粉、酸化チタン被覆マイカ粉、酸化鉄被覆マイカ粉及び光輝性グラファイトなどの光輝性顔料;タルク、クレー、シリカ、マイカ、アルミナなどの体質顔料;塗料用としてそれ自体既知の消泡剤、塗面調整剤などの添加剤などを含有していてもよい。さらに、本発明の組成物には、塗膜表面に細かな縮み模様を形成するためや塗膜の表面硬度の向上などの目的で、アミン化合物などを配合してもよい。そのようなアミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−n−ブチルアミンなどの2級又は3級アミンを挙げることができる。
【0033】
本発明の塗料組成物は、該塗料組成物から得られる硬化塗膜の100℃における動的弾性率Eが、2.0×108 dyne/cm2 以上、好ましくは3.0〜5.5dyne/cm2 の範囲であり、架橋間分子量が300〜1,300、好ましくは500〜1,100の範囲であることが必要である。
【0034】
本発明において、「動的弾性率E」及び「架橋間分子量」は、ブリキ板に乾燥膜厚が20μmとなるように塗布し、素材到達温度が230℃となる条件で60秒間焼付けた後、塗膜を剥離し、この硬化塗膜について、自動動的粘弾性測定器[東洋ボールドウィン社製、モデルレオバイブロンDDV−II−EA]を用い、周波数110Hzにて測定した動的粘弾性挙動から得られるものである。「動的弾性率E」は、測定温度100℃にて測定した動的弾性率であり、「架橋間分子量」は、上記のように測定した動的粘弾性挙動を、Flory 等による下記のゴム粘弾性理論式にあてはめて求めた理論計算値である。
【0035】
架橋間分子量Mc=3ρRT/Emin
[式中、ρは試料塗膜の比重(g/cm3 )を示し、Rは気体定数であって、R=8.31×107 ( erg/deg・mol )であり、Tは動的弾性率最小となる温度(゜K)、Emin は温度Tのときの最小弾性率(dyne/cm )を示す]
塗料組成物から得られる硬化塗膜の100℃における動的弾性率が、2.0×108 dyne/cm2 より低くなると高温における耐ブロッキング性が悪くなる。また硬化塗膜の架橋間分子量が300未満になると低温での加工性が低下し、一方、架橋間分子量が1,300を超えると高温における耐ブロッキング性が劣化する。
【0036】
本発明組成物は、前記ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)、メラミン樹脂硬化剤(C)、さらに必要に応じて硬化触媒(D)を前記所定の割合で含有し、かつ該塗料組成物から得られる硬化塗膜の動的弾性率及び架橋間分子量を上記範囲となるように組成を適宜選定することによって、加工性、耐ブロッキング性に優れ、硬度、耐溶剤性、耐汚染性などが良好な、器物加工用のプレコート塗装鋼板用として適した塗料組成物を得ることができる。
【0037】
本発明組成物は、例えば、金属板、プラスチックス、ガラス板などの種々の被塗物に塗装することができるが、塗装金属板を製造する場合には、被塗物として金属板を使用する。被塗物として使用される金属板としては、冷延鋼板、亜鉛系メッキ鋼板、アルミニウム板などを挙げることができ、なかでも亜鉛系メッキ鋼板を好適に使用することができる。亜鉛系メッキ鋼板としては、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、鉄−亜鉛合金メッキ鋼板、ニッケル−亜鉛合金メッキ鋼板、アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板(例えば「ガルバリウム」、「ガルファン」という商品名のメッキ鋼板)など、及びこれらの亜鉛系メッキ鋼板にリン酸亜鉛処理、クロメート処理などの化成処理を施してなる化成処理亜鉛系メッキ鋼板などを挙げることができる。また、金属板上に、耐食性の向上や塗料の密着性向上などを目的に、プライマー塗膜を設けたプライマー塗装金属板も被塗物として使用することができる。このプライマー塗膜としては、ポリエステル系プライマー、エポキシ系プライマーから得られる塗膜が好適であり、通常、2〜10μmの膜厚を有する。
【0038】
本発明の塗料組成物の塗装は、特に制限されるものではなく、例えば、ロール塗装、カーテンフロー塗装、浸漬塗装、スプレー塗装などを用いて行うことができ、その際の塗装膜厚は、通常、乾燥塗膜厚で5〜30μm、特に10〜25μmの範囲内が好適である。また、上記塗料組成物の硬化条件は、塗料が硬化する焼付条件の中から適宜選択することができるが、連続的に移動する長尺の、金属板やプライマー塗装金属板に、ロール塗装などによって連続的に塗装するコイルコーティングの場合には、通常、素材到達最高温度(PMT)160〜260℃で15〜90秒の範囲内、特にPMT190〜230℃で20〜60秒の範囲内の条件が好適である。
【0039】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも重量基準によるものとする。
【0040】
実施例1〜5及び比較例1〜5
後記表1に示す組成配合にて塗料化を行い、各上塗塗料を得た。クロメート処理を施した厚さ0.5mmの電気亜鉛メッキ鋼板上に、関西ペイント(株)製、KPカラー8620プライマー(プレコート鋼板用ポリエステル系プライマー)を乾燥膜厚が約4μmとなるように塗装し、素材到達最高温度が220℃となるように30秒間焼付け、プライマー塗装鋼板を得た。このプライマー塗装鋼板上に上記のようにして得た各上塗塗料をバーコータにて乾燥膜厚が約18μmとなるように塗装し、素材到達最高温度が220℃となるように45秒間焼付けて各上塗塗装鋼板を得た。得られた塗装鋼板について各種試験を行った。
【0041】
その試験結果を表3に示す。なお表1におけるポリエステル樹脂及びメラミン樹脂の量は固形分重量による表示であり、硬化触媒の量は、それぞれのスルホン酸化合物の量に換算して重量表示した。なお、実施例及び比較例の上塗塗料の塗料化に際しては、白色顔料であるチタン白の分散を行った。また、シクロヘキサノン/スワゾール1500(コスモ石油(株)製、芳香族石油系高沸点溶剤)=60/40(重量比)の混合溶剤を塗料粘度調整などのために使用した。塗装に際しては、塗料粘度をフォードカップ#4で約90秒(25℃)に調整した。
【0042】
実施例6
実施例1において、クロメート処理を施した厚さ0.5mmの電気亜鉛メッキ鋼板上に、プライマーを塗装せずに、この鋼板に直接に後記表1の実施例6の欄に記載の配合の塗料組成物を塗装する以外は実施例1と同様に行い、メッキ鋼板上にプライマー塗膜を介さずに上塗塗膜を形成した塗装鋼板を得た。得られた塗装鋼板について各種試験を行った。その結果を表3に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1中の(註)は、それぞれ下記のとおりの意味を有する。
【0045】
表1中の(*1)〜(*7)に示すポリエステル樹脂は、いずれも東洋紡績(株)製のポリエステル樹脂であり、下記表2に示す性状値を有する。
【0046】
【表2】
【0047】
(*8)サイメル303:三井サイテック(株)製、低分子量メチルエーテル化メラミン樹脂、ヘキサキス(メトキシメチル)メラミンの含有量が60重量%以上。
【0048】
(*9)スーパーベッカミンJ−820−60:大日本インキ化学工業(株)製、n−ブチルエーテル化メラミン樹脂。
【0049】
(*10)ネイキュア5225:米国 キング インダストリイズ社製、ドデシルベンゼンスルホン酸のアミン中和物溶液。
【0050】
【表3】
【0051】
表3中における試験は下記試験方法に従って行った。
【0052】
試験方法
塗面外観:塗面(30cm×30cm)の外観を肉眼で観察した。塗面にハジキ、凹み、曇りなどの塗面異常の認められないものを良好(○)とした。
【0053】
折曲げ加工性:20℃及び0℃の室内において、塗面を外側にして試験板を180°折り曲げて、折曲げ部分にワレが発生しなくなるT数を目視にて評価し表示した。T数とは、折り曲げ部分の内側に何もはさまずに180°折り曲げを行った場合を0T、試験板と同じ厚さの板を1枚はさんで折り曲げた場合を1T、2枚の場合を2T、……(以下、同様)……、6枚の場合を6Tとした。
【0054】
鉛筆硬度:塗装板の塗膜について、JIS K−5400 8.4.2(1990)に規定する鉛筆引っかき試験を行い、すり傷による評価を行った。
【0055】
耐衝撃性:JIS K−5400 8.3.2(1990)デュポン式耐衝撃性試験に準じて、落錘重量500g、撃芯の尖端直径1/2インチ、落錘高さ50cmの条件にて塗装板の塗面の衝撃を与えた。ついで衝撃を加えた部分にセロハン粘着テープを貼着し、瞬時にテープを剥がしたときの塗膜の剥がれ程度を下記基準で評価した。
【0056】
○:塗面に剥がれが認められない
△:塗面にわずかの剥がれが認められる
×:塗面にかなりの剥がれが認められる。
【0057】
密着性:JIS K−5400 8.5.2(1990)碁盤目−テ−プ法に準じて、試験板の塗膜表面にカッターナイフで素地に到達するように、直交する縦横11本ずつの平行な直線を1mm間隔で引いて、1mm×1mmのマス目を100個作成した。その表面にセロハン粘着テ−プを密着させ、テ−プを急激に剥離した際のマス目の剥れ程度を観察し下記基準で評価した。
【0058】
○:塗膜の剥離が全く認められない
△:塗膜がわずかに剥離したが、マス目は90個以上残存
×:塗膜がかなり剥離し、マス目の残存数は90個未満。
【0059】
耐ブロッキング性:2枚の試験板の塗面同志を合せて、温度50℃、加重80kg/cm2 の条件で24時間密着させた後、2枚の試験板を剥がした。その剥がし易さを評価した。
【0060】
◎:塗面同志が全くくっつかず板が容易にとれる
○:塗面同志がわずかにくっつくが、板が容易にとれる
△:塗面同志がかなりくっつき、板を剥がすのに力を要するが、剥がした塗面に異常は認められない
×:塗面同志が強くくっつき、剥がすと塗面に異常が認めらる。
【0061】
耐溶剤性:20℃の室内においてメチルエチルケトンをしみ込ませたガーゼにて塗面に約1Kg/cm2 の荷重をかけて、約5cmの長さの間を往復させた。プライマ−塗膜(プライマー塗膜のない場合は鋼板)が見えるまでの往復回数を記録した。50回の往復でプライマ−塗膜が見えないものは50<と表示した。
【0062】
耐食性:JIS Z−2371に準じて、塩水噴霧試験を500時間行った。試験後の塗板の平面部における白錆発生の面積率で評価した。白錆発生面積率が、1%未満の場合は◎、1%以上で10%未満の場合は○、10%以上で30%未満の場合は△、30%以上の場合は×と表示する。
【0063】
【発明の効果】
本発明塗料組成物は、特定の2種類のポリエステル樹脂とメラミン樹脂硬化剤とを含有し、また該塗料組成物から得られる硬化塗膜の100℃における動的弾性率が2.0×108 dyne/cm2 以上であり、架橋間分子量が300〜1,300であることにより、冬場における加工性、塗膜硬度及び夏場における耐ブロッキング性を満足し、かつ耐候性など塗装鋼板用として優れた性能を有する塗膜を形成することができる。
Claims (3)
- (A)数平均分子量8,000〜18,000、ガラス転移温度−20℃以上で5℃未満、水酸基価5〜40mgKOH/gであるポリエステル樹脂20〜80重量部、(B)数平均分子量13,000〜30,000、ガラス転移温度5〜35℃、水酸基価2〜25mgKOH/gであるポリエステル樹脂5〜65重量部及び(C)メラミン樹脂架橋剤15〜35重量部からなる樹脂成分を含有するか、又は該樹脂成分と、該樹脂成分100重量部に対して(D)硬化触媒を酸量に換算した値で2.0重量部以下となる量含有する塗料組成物であって、該ポリエステル樹脂(B)が該ポリエステル樹脂(A)より数平均分子量が1,000以上大きいものであり、かつ該塗料組成物から得られる硬化塗膜の100℃における動的弾性率が2.0×108 dyne/cm2 以上であり、架橋間分子量が300〜1,300であることを特徴とする塗料組成物。
- 架橋剤(C)が、メチルエーテル化メラミン樹脂、及びメチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化メラミン樹脂から選ばれる少なくとも1種のメラミン樹脂とブチルエーテル化メラミン樹脂との混合樹脂であることを特徴とする請求項1記載の塗料組成物。
- 金属板上に、ポリエステル系プライマー塗膜又はエポキシ系プライマ塗膜を介して、請求項1記載の塗料組成物の硬化塗膜が形成されてなることを特徴とする塗装金属板。
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