JP4044167B2 - 塗料組成物及びこれを用いた塗装金属板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗膜のスベリ性が良好で耐擦り傷性の優れた塗膜を形成でき、かつリコート性、塗装性の良好な塗料組成物、ならびにこの塗料組成物を塗装してなる塗装金属板に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、コイルコーティングなどの連続塗装によって塗装される器物加工用や建材用のプレコート塗装鋼板用の上塗塗料としては、ポリエステル樹脂を基体樹脂とし、架橋剤としてメチルエーテル化メチロールメラミン樹脂又はポリイソシアネート化合物を組合せた樹脂系の塗料が、多く用いられている。これらのプレコート塗装鋼板については、近年、硬度、加工性に加えて、プレス加工時における傷つき防止や塗膜の耐擦り傷性向上の点から塗膜表面のスベリ性が要求されてきている。
【0003】
塗膜表面のスベリ性を向上させる方法としては、従来、塗料中に潤滑剤を配合する方法が用いられている。
【0004】
しかしながら、プレコート塗装鋼板用のポリエステル樹脂系塗料において、潤滑剤としてシリコーンオイルを配合すると、塗膜表面の動摩擦係数を低下させ塗膜表面にスベリ性を向上させる効果は大きいが、塗装時に塗膜にハジキを発生させやすいという問題があった。また潤滑剤としてポリエチレンワックスを塗膜表面に所期のスベリ性が得られるまで配合すると、この塗料から得られる塗膜の上にリコートした場合にリコート塗膜の付着性が悪い、すなわちリコート付着性が悪いという問題があった。
【0005】
本発明は、プレコート塗装鋼板用のポリエステル樹脂系塗料において、硬度、加工性が良好であって、塗膜表面のスベリ性の優れた塗膜を形成でき、塗装時に塗膜にハジキを発生することがなく、リコート付着性に問題のない塗料を得ることを目的とするものである。
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ポリエステル樹脂系塗料において、潤滑剤として、シリコーンオイルと、パラフィンワックス及び/又は脂肪酸エステルワックス、との両者を特定量配合することによって上記目的を達成することができることを見出し本発明を完成するに至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、(A)水酸基含有ポリエステル樹脂60〜95重量部及び(B)メラミン樹脂及びブロック化ポリイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤5〜40重量部、
からなる皮膜形成性樹脂成分の固形分合計量100重量部に対して、
(C)変性シリコーンオイル0.01〜1重量部と、パラフィンワックス及び脂肪酸エステルワックスから選ばれる少なくとも1種のワックス0.5〜10重量部、とからなる潤滑剤成分、
を含有することを特徴とする塗料組成物を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、金属板上に、直接に、又はポリエステル系プライマー塗膜もしくはエポキシ系プライマ塗膜を介して、上記塗料組成物の上塗硬化塗膜が形成されてなることを特徴とする塗装金属板を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明塗料組成物について、さらに詳細に説明する。
【0010】
ポリエステル樹脂(A)
本発明組成物における(A)成分であるポリエステル樹脂は、水酸基を含有するポリエステル樹脂であり、オイルフリーポリエステル樹脂、油変性アルキド樹脂、また、これらの樹脂の変性物、例えばウレタン変性ポリエステル樹脂、ウレタン変性アルキド樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0011】
上記オイルフリーポリエステル樹脂は、多塩基酸成分と多価アルコール成分とのエステル化物からなるものである。多塩基酸成分としては、例えば無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸などから選ばれる1種以上の二塩基酸及びこれらの酸の低級アルキルエステル化物が主として用いられ、必要に応じて安息香酸、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸などの一塩基酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸などの3価以上の多塩基酸などが併用される。多価アルコール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの二価アルコールが主に用いられ、さらに必要に応じてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールを併用することができる。これらの多価アルコールは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。両成分のエステル化又はエステル交換反応は、それ自体既知の方法によって行うことができる。酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、及びこれらの酸の低級アルキルエステル化物が特に好ましい。
【0012】
アルキド樹脂は、上記オイルフリーポリエステル樹脂の酸成分及びアルコール成分に加えて、油脂肪酸をそれ自体既知の方法で反応せしめたものであって、油脂肪酸としては、例えばヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、キリ油脂肪酸などを挙げることができる。アルキド樹脂の油長は30%以下、特に5〜20%程度のものが好ましい。
【0013】
ウレタン変性ポリエステル樹脂としては、上記オイルフリーポリエステル樹脂、又は上記オイルフリーポリエステル樹脂の製造の際に用いられる酸成分及びアルコール成分を反応させて得られる低分子量のオイルフリーポリエステル樹脂を、ポリイソシアネート化合物とそれ自体既知の方法で反応せしめたものが挙げられる。また、ウレタン変性アルキド樹脂は、上記アルキド樹脂、又は上記アルキド樹脂製造の際に用いられる各成分を反応させて得られる低分子量のアルキド樹脂を、ポリイソシアネート化合物とそれ自体既知の方法で反応せしめたものが包含される。ウレタン変性ポリエステル樹脂及びウレタン変性アルキド樹脂を製造する際に使用しうるポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどが挙げられる。上記のウレタン変性樹脂は、一般に、ウレタン変性樹脂を形成するポリイソシアネート化合物の量がウレタン変性樹脂に対して30重量%以下の量となる変性度合のものを好適に使用することができる。
【0014】
エポキシ変性ポリエステル樹脂としては、上記ポリエステル樹脂の製造に使用する各成分から製造したポリエステル樹脂を用い、この樹脂のカルボキシル基とエポキシ基含有樹脂との反応生成物や、ポリエステル樹脂中の水酸基とエポキシ樹脂中の水酸基とをポリイソシアネート化合物を介して結合した生成物などの、ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂との付加、縮合、グラフトなどの反応による反応生成物を挙げることができる。かかるエポキシ変性ポリエステル樹脂における変性の度合は、一般に、エポキシ樹脂の量がエポキシ変性ポリエステル樹脂に対して、0.1〜30重量%となる量であることが好適である。
【0015】
以上に述べたポリエステル樹脂のうち、特に好適なものとしては、オイルフリーポリエステル樹脂が挙げられる。
【0016】
また、ポリエステル樹脂(A)は得られる塗膜の加工性及び硬度のバランスの点から、数平均分子量は、1,000〜35,000であることが好ましく、さらに好ましくは7,000〜30,000であり、ガラス転移温度(Tg点)は、−10℃〜80℃であることが好ましく、さらに好ましくは−5℃〜30℃であり、水酸基価は、3〜160mgKOH/gであることが好ましく、さらに好ましくは5〜30mgKOH/gであるポリエステル樹脂が好適である。
【0017】
本発明において、ガラス転移温度(Tg)は、示差熱分析(DTA)によるものであり、また数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定したものである。
【0018】
架橋剤(B)
(B)成分である架橋剤は、上記ポリエステル樹脂(A)と反応して樹脂(A)を硬化させることができるものであり、代表例として、アミノ樹脂、ブロック化ポリイソシアネート化合物を挙げることができる。
【0019】
上記アミノ樹脂としては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂が挙げられる。上記反応に用いられるアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等が挙げられる。また、上記メチロール化アミノ樹脂を適当なアルコールによってエーテル化したものもアミノ樹脂として使用できる。エーテル化に用いられるアルコールの例としてはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノールなどが挙げられる。
【0020】
上記ブロック化ポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物のフリーのイソシアネート基をブロック化剤によってブロック化してなる化合物である。
【0021】
上記ブロック化する前のポリイソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネートもしくはトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの如き脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネートもしくはイソホロンジイソシアネートの如き環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネートもしくは4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートの如き芳香族ジイソシアネート類の如き有機ジイソシアネートそれ自体、またはこれらの各有機ジイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した如き各有機ジイソシアネート同志の環化重合体、更にはイソシアネート・ビウレット体等が挙げられる。
【0022】
イソシアネート基をブロックするブロック化剤としては、例えばフェノール、クレゾール、キシレノールなどのフェノール系;ε−カプロラクタム;δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどラクタム系;メタノール、エタノール、n−又はi−プロピルアルコール、n−,i−又はt−ブチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコールなどのアルコール系;ホルムアミドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エ
チル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系などのブロック化剤を好適に使用することができる。
【0023】
上記ポリイソシアネート化合物と上記ブロック化剤とを混合することによって容易に上記ポリイソシアネート化合物のフリーのイソシアネート基をブロックすることができる。
【0024】
架橋剤(B)は、1種の架橋剤からなっていてもよいし、2種以上の架橋剤の混合物であってもよい。
【0025】
本発明組成物において、樹脂成分100重量部中、水酸基含有樹脂(A)と架橋剤(B)との配合量は下記範囲内にあることが必要である。
【0026】
水酸基含有樹脂(A):60〜95重量部、好ましくは65〜85重量部、
架橋剤(B) :5〜40重量部、好ましくは15〜35重量部。
【0027】
潤滑剤(C)
潤滑剤(C)は、変性シリコーンオイルと、パラフィンワックス及び脂肪酸エステルワックスから選ばれる少なくとも1種のワックス、との混合物である。
【0028】
上記変性シリコーンオイルは、シリコーンオイルの側鎖及び/又は末端に有機基を導入した構造を有するものであり、有機基の種類に応じて、ポリエーテル変性[−R−(C2 H4 O)a −(C3 H6 O)b −R´]、メチルスチリル変性[−CH2 −CH(CH3 )−Ph]、アルキル変性[−Ca H2a+1]、高級脂肪酸エステル変性[−OCOR´]、高級アルコキシ変性[−OR´]、フッ素原子含有炭化水素基変性[−CH2 CH2 CF3 ]、アミノ変性[−R−NH2 ]、エポキシ変性[−R−Glycidil、又は−R−(3,4−エポキシシクロヘキシル)]、カルボキシル変性[−R−COOH]、カルビノール変性[−R−OH]、メタクリル変性[−R−C(CH3 )=CH2 ]、メルカプト変性[−R−SH]、フェノール変性[−R−Ph−OH]などの変性シリコーンオイルを挙げることができる。(上記各式において、Rはアルキレン基などの2価の有機基又は直接結合を表し、R´はアルキル基などの1価の有機基を表し、Phはフェニル基又はフェニレン基を表し、a及びbはそれぞれ0以上の整数を表す。)
これらのうち、ポリエーテル変性シリコーンオイルが、スベリ性とリコート性のバランスの点から好ましい。
【0029】
ポリエーテル変性シリコーンオイルの市販品としては、例えば、「DK Q8−8195」、「ペインタッド57」、「ペインタッドM」(以上、いずれもダウコーニング アジア社製)などを挙げることができる。
【0030】
前記パラフィンワックスの代表例としては、マイクロクリスタリンワックスなどを挙げることができ、マイクロクリスタリンワックスはスベリ性とリコート性のバランスの点から好適である。マイクロクリスタリンワックスの市販品としては、ハイディスパーX−3322、同X−7009(以上、いずれも岐阜セラック製造所製)、マルチワックス180M(Witoco Chmie(ウイトコ ケミー)社製)、トプコS923(東洋ペトロライト社製)などを挙げることができる。
【0031】
前記脂肪酸エステルワックスの代表例としては、モンタンワックス、ラノリンワックス、カルナウバワックス、蜜ロウ、鯨ロウなどを挙げることができる。これらのうち、モンタンワックス、ラノリンワックスがスベリ性とリコート性のバランスの点から好ましい。モンタンワックスの市販品としては、CR−112(興洋化学(株)製)などを挙げることができ、モンタンワックスとマイクロクリスタリンワックスとの混合ワックスとして、ミクロッフラットTK−17B(興洋化学(株)製)を挙げることができる。ラノリンワックスの市販品としては、クロダランSWL(クローダ ジャパン社製)、ラノセリン(クローダ ジャパン社製)、精製ラノリン(中京油脂社製)などを挙げることができる。
【0032】
本発明組成物において、潤滑剤(C)は、前記ポリエステル樹脂(A)と架橋剤(B)とからなる皮膜形成性樹脂成分の固形分合計量100重量部に対して、変性シリコーンオイルが、0.01〜1重量部、好ましくは0.02〜0.5重量部、さらに好ましくは0.03〜0.3重量部の範囲であり、パラフィンワックス及び脂肪酸エステルワックスから選ばれる少なくとも1種のワックスが、0.5〜10重量部、好ましくは1〜5重量部、さらに好ましくは1.5〜4重量部の範囲である。
【0033】
上記変性シリコーンオイルの量が、0.01重量部未満では、塗膜表面のスベリ性が十分でなくなり、一方、1重量部を超えると塗面にハジキ発生などの塗膜外観不良を発生しやすくなる。上記パラフィンワックス及び脂肪酸エステルワックスから選ばれる少なくとも1種のワックスの量が、0.5重量部未満では、塗膜表面のスベリ性が十分でなくなるとともに、塗面にハジキ発生などの塗膜外観不良が発生するのを抑制できなくなり、一方、10重量部を超えると得られる塗面のリコート付着性が悪くなる。
【0034】
本発明組成物において、潤滑剤(C)として、変性シリコーンオイルのみを使用すると塗面にハジキ発生などの塗膜外観不良を発生しやすいという問題があり、また変性シリコーンオイルを使用せずに、パラフィンワックス及び/又は脂肪酸エステルワックスのみを使用するとリコート付着性が悪化するという問題がある。変性シリコーンオイルと上記ワックス類との両者を所定量併用することによって、塗膜にハジキなどの塗膜外観不良を起すことなく、またリコート付着性を劣化させることなく、塗膜表面の動摩擦係数を低下、すなわち滑り性を向上させることができる。
【0035】
本発明の塗料組成物は、ポリエステル樹脂(A)、架橋剤(B)、潤滑剤成分(C)から実質的になることができるが、必要に応じて、硬化触媒;有機溶剤;着色顔料;アルミニウ粉、銅粉、ニッケル粉、酸化チタン被覆マイカ粉、酸化鉄被覆マイカ粉及び光輝性グラファイトなどの光輝性顔料;タルク、クレー、シリカ、マイカ、アルミナなどの体質顔料;塗料用としてそれ自体既知の消泡剤、塗面調整剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0036】
上記硬化触媒は、ポリエステル樹脂(A)と架橋剤(B)との硬化反応を促進するため必要に応じて配合されるものであり、架橋剤(B)の種類に応じて適宜選択して使用することができる。
【0037】
架橋剤(B)がメラミン樹脂、特に低分子量の、メチルエーテル化またはメチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化メラミン樹脂である場合には、硬化触媒としてスルホン酸化合物又はスルホン酸化合物のアミン中和物が好適に用いられる。スルホン酸化合物の代表例としては、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸などを挙げることができる。スルホン酸化合物のアミン中和物におけるアミンとしては、1級アミン、2級アミン、3級アミンのいずれであってもよい。これらのうち、塗料の安定性、反応促進効果、得られる塗膜の物性などの点から、p−トルエンスルホン酸のアミン中和物及び/又はドデシルベンゼンスルホン酸のアミン中和物が好適である。
【0038】
架橋剤(B)がブロック化ポリイソシアネート化合物である場合には、架橋剤であるブロック化ポリイソシアネート化合物のブロック剤の解離を促進する硬化触媒が好適であり、好適な硬化触媒として、例えば、オクチル酸錫、、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、2−エチルヘキサン酸鉛などの有機金属触媒などを挙げることができる。
【0039】
前記有機溶剤は、本発明組成物の塗装性の改善などのため必要に応じて配合されるものであり、ポリエステル樹脂(A)、架橋剤(B)及び潤滑剤成分(C)の各成分を溶解ないし分散できるものが使用でき、具体的には、例えば、トルエン、キシレン、高沸点石油系炭化水素などの炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテルアルコール系溶剤などを挙げることができ、これらは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0040】
前記必要に応じて使用できる着色顔料としては、塗料分野で通常使用されている着色顔料、例えば、チタン白、亜鉛華などの白色顔料;シアニンブルー、シアニングリーン、アゾ系やキナクリドン系などの有機赤色顔料、ベンツイミダゾロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系及びキノフタロン系などの有機黄色顔料;チタンイエロー、ベンガラ、カーボンブラック、黄鉛及び各種焼成顔料などの無機着色顔料が挙げられる。
【0041】
本発明組成物は、例えば、金属板、プラスチックス、ガラス板などの種々の被塗物に塗装することができるが、塗装金属板を製造する場合には、被塗物として金属板を使用する。被塗物として使用される金属板としては、冷延鋼板、亜鉛系メッキ鋼板、アルミニウム板などを挙げることができ、なかでも亜鉛系メッキ鋼板を好適に使用することができる。亜鉛系メッキ鋼板としては、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、鉄−亜鉛合金メッキ鋼板、ニッケル−亜鉛合金メッキ鋼板、アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板(例えば「ガルバリウム」、「ガルファン」という商品名のメッキ鋼板)など、及びこれらの亜鉛系メッキ鋼板にリン酸亜鉛処理、クロメート処理などの化成処理を施してなる化成処理亜鉛系メッキ鋼板などを挙げることができる。また、金属板上に、耐食性の向上や塗料の密着性向上などを目的に、プライマー塗膜を設けたプライマー塗装金属板も被塗物として使用することができる。このプライマー塗膜としては、ポリエステル系プライマー、エポキシ系プライマーから得られる塗膜が好適であり、通常、2〜10μmの膜厚を有する。
【0042】
本発明の塗料組成物の塗装は、特に制限されるものではなく、例えば、ロール塗装、カーテンフロー塗装、浸漬塗装、スプレー塗装などを用いて行うことができ、その際の塗装膜厚は、通常、乾燥塗膜厚で5〜30μm、特に10〜25μmの範囲内が好適である。また、上記塗料組成物の硬化条件は、塗料が硬化する焼付条件の中から適宜選択することができるが、連続的に移動する長尺の、金属板やプライマー塗装金属板に、ロール塗装などによって連続的に塗装するコイルコーティングの場合には、通常、素材到達最高温度(PMT)160〜260℃で15〜90秒の範囲内、特にPMT190〜230℃で20〜60秒の範囲内の条件が好適である。
【0043】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも重量基準によるものとする。
【0044】
実施例1〜8及び比較例1〜5
後記表1に示す組成配合にて塗料化を行い、各上塗塗料を得た。クロメート処理を施した厚さ0.5mmの電気亜鉛メッキ鋼板上に、関西ペイント(株)製、KPカラー8620プライマー(プレコート鋼板用ポリエステル系プライマー)を乾燥膜厚が約4μmとなるように塗装し、素材到達最高温度が220℃となるように30秒間焼付け、プライマー塗装鋼板を得た。このプライマー塗装鋼板上に上記のようにして得た各上塗塗料をバーコータにて乾燥膜厚が約18μmとなるように塗装し、素材到達最高温度が220℃となるように45秒間焼付けて各上塗塗装鋼板を得た。得られた塗装鋼板について各種試験を行った。
【0045】
その試験結果を表3に示す。なお表1におけるポリエステル樹脂、メラミン樹脂及びブロック化ポリイソシアネート化合物の量は固形分重量による表示であり、硬化触媒の量は、中和スルホン酸化合物については、それぞれの中和剤を除いたスルホン酸の量に換算して重量表示し、錫化合物については固形分重量表示した。なお、実施例及び比較例の上塗塗料の塗料化に際しては、白色顔料であるチタン白の分散を行った。また、シクロヘキサノン/スワゾール1500(コスモ石油(株)製、芳香族石油系高沸点溶剤)=60/40(重量比)の混合溶剤を塗料粘度調整などのために使用した。塗装に際しては、塗料粘度をフォードカップ#4で約90秒(25℃)に調整した。
【0046】
実施例9
実施例1において、クロメート処理を施した厚さ0.5mmの電気亜鉛メッキ鋼板上に、プライマーを塗装せずに、この鋼板に直接に後記表1の実施例9の欄に記載の配合の塗料組成物を塗装する以外は実施例1と同様に行い、メッキ鋼板上にプライマー塗膜を介さずに上塗塗膜を形成した塗装鋼板を得た。得られた塗装鋼板について各種試験を行った。その結果を表3に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1中の(註)は、それぞれ下記のとおりの意味を有する。
【0049】
表1中の(*1)〜(*5)に示すポリエステル樹脂は、いずれも東洋紡績(株)製のポリエステル樹脂であり、下記表2に示す性状値を有する。
【0050】
【表2】
【0051】
(*6)サイメル303:三井サイテック(株)製、低分子量メチルエーテル化メラミン樹脂、ヘキサキス(メトキシメチル)メラミンの含有量が60重量%以上。
(*7)スーパーベッカミンJ−820−60:大日本インキ化学工業(株)製、n−ブチルエーテル化メラミン樹脂。
(*8)デスモデュールBL−3175:住友バイエルウレタン(株)製、ブロック化ポリイソシアネート化合物。
【0052】
(*9)ネイキュア5225:米国 キング インダストリイズ社製、ドデシルベンゼンスルホン酸のアミン中和物溶液。
(*10)フォーメートTK-1:武田薬品工業(株)製、有機錫系硬化触媒。
【0053】
(*11)DK Q8−8195:ダウコーニング アジア社製、ポリエーテル変性シリコーンオイル。
(*12)ペインタッド57:ダウコーニング アジア社製、ポリエーテル変性シリコーンオイル。
(*13)クロダランSWL:クローダ ジャパン社製、ラノリンワックス。
(*14)ハイディスパーX−3322:岐阜セラック製造所製、マイクロクリスタリンワックス。
(*15)ミクロフラットTK−17B:興洋化学(株)製、モンタンワックスとマイクロクリスタリンワックスとの混合ワックス。
【0054】
【表3】
【0055】
表3中における試験は下記試験方法に従って行った。
【0056】
試験方法
塗面外観:塗装鋼板の塗面(30cm×30cm)の外観を肉眼で観察し欠き基準にて表かした。
【0057】
○:塗面に、ハジキ、凹み、曇りなどの塗面異常が認められない
△:塗面に、ハジキ、凹み、曇りのいずれかが少し認められる
×:塗面に、著しいハジキ、凹み、曇りのいずれかが認められる。
【0058】
鉛筆硬度:塗装鋼板の塗膜について、JIS K−5400 8.4.2(1990)に規定する鉛筆引っかき試験を行い、すり傷による評価を行った。
【0059】
耐衝撃性:JIS K−5400 8.3.2(1990)デュポン式耐衝撃性試験に準じて、落錘重量500g、撃芯の尖端直径1/2インチ、落錘高さ50cmの条件にて塗装鋼板の塗面の衝撃を与えた。ついで衝撃を加えた部分にセロハン粘着テープを貼着し、瞬時にテープを剥がしたときの塗膜の剥がれ程度を下記基準で評価した。
【0060】
○:塗面に剥がれが認められない
△:塗面にわずかの剥がれが認められる
×:塗面にかなりの剥がれが認められる。
【0061】
折曲げ加工性:20℃及び0℃の室内において、塗面を外側にして塗装鋼板を180°折り曲げて、折曲げ部分にワレが発生しなくなるT数を目視にて評価し表示した。T数とは、折り曲げ部分の内側に何もはさまずに180°折り曲げを行った場合を0T、試験板と同じ厚さの板を1枚はさんで折り曲げた場合を1T、2枚の場合を2T、……(以下、同様)……、6枚の場合を6Tとした。
【0062】
動摩擦係数:表面性測定機「HEIDON−14D」(新東科学(株)製)を用い、20℃で、ボール圧子の荷重1kgの条件にて、塗装鋼板の塗膜表面の動摩擦係数を測定した。
【0063】
リコート付着性:塗装鋼板の塗面上に、マジクロンNo.1000 白(関西ペイント(株)製、アクリル−メラミン樹脂系白色塗料)を、乾燥膜厚が20μmとなるように塗装し、160℃で20分間焼付けた。この塗装板の塗膜面に、JIS K−5400 8.5.2(1990)碁盤目−テ−プ法に準じて、カッターナイフで素地に到達するように、直交する縦横11本ずつの平行な直線を1mm間隔で引いて、1mm×1mmのマス目を100個作成した。その表面にセロハン粘着テ−プを密着させ、テ−プを急激に剥離した際のマス目の剥れ程度を観察し下記基準で評価した。
【0064】
○:塗膜の剥離が全く認められない
△:リコートした塗膜の残存マス目数は30〜99個である
×:リコートした塗膜が塗装鋼板の塗膜表面との間で層間剥離し、リコートした塗膜の残存マス目数は30個未満であった。
【0065】
【発明の効果】
本発明塗料組成物は、変性シリコーンオイルとパラフィンワックス及び脂肪酸エステルワックスから選ばれる少なくとも1種のワックスとの両者を所定量併用することによって、塗膜にハジキなどの塗膜外観不良を起すことなく、またリコート付着性を劣化させることなく、塗膜表面の動摩擦係数を低下、すなわち滑り性を向上させることができたものである。本発明塗料組成物は、硬度、加工性が良好であって、塗膜表面のスベリ性に優れ、塗膜欠陥がなく、かつリコート付着性に問題のない塗膜を形成することができる。
【0066】
したがって、本発明塗料組成物の塗膜を形成した塗装鋼板は、器物加工用や建材用などのプレコート塗装鋼板として好適に使用できる。
Claims (4)
- (A)水酸基含有ポリエステル樹脂60〜95重量部及び
(B)メラミン樹脂及びブロック化ポリイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤5〜40重量部、
からなる皮膜形成性樹脂成分の固形分合計量100重量部に対して、
(C)変性シリコーンオイル0.01〜1重量部と、パラフィンワックス及び脂肪酸エステルワックスから選ばれる少なくとも1種のワックス0.5〜10重量部、とからなる潤滑剤成分、
を含有することを特徴とする塗料組成物。 - ポリエステル樹脂(A)が、数平均分子量1,000〜35,000、ガラス転移温度−10℃〜80℃、水酸基価3〜160mgKOH/gを有するポリエステル樹脂である請求項1記載の塗料組成物。
- 潤滑剤成分(C)において、シリコーンオイルがポリエーテル変性シリコーンオイルであり、ワックスがマイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス及びラノリンワックスから選ばれる少なくとも1種のワックスである請求項1又は2記載の塗料組成物。
- 金属板上に、直接に、又はポリエステル系プライマー塗膜もしくはエポキシ系プライマ塗膜を介して、請求項1記載の塗料組成物の上塗硬化塗膜が形成されてなることを特徴とする塗装金属板。
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