JP4184561B2 - 塗料組成物及びこの組成物からの塗膜を有する塗装金属板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐食性、密着性、耐沸騰水性及び耐湿性に優れた非クロム系塗料組成物、及び該塗料組成物の塗膜が形成されてなる塗装金属板に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、コイルコーティングなどによって塗装されたプレコート鋼板などのプレコート金属板は、建築物の屋根、壁、シャッター、ガレージなどの建築資材、各種家電製品、配電盤、冷凍ショーケース、鋼製家具及び厨房器具などの住宅関連商品として幅広く使用されている。
【0003】
プレコート鋼板からこれらの住宅関連商品を製造するには、通常、プレコート鋼板を切断しプレス成型し接合される。したがって、これらの住宅関連商品には、切断面である金属露出部やプレス加工によるワレ発生部が存在することが多い。上記金属露出部やワレ発生部は、他の部分に比べて耐食性が低下しやすいので耐食性の向上のため、プレコート鋼板の下塗塗膜中にクロム系の防錆顔料を含ませることが一般的に行われている。
【0004】
しかしながら、クロム系の防錆顔料は、防錆性に優れた6価クロムを含有していたり生成したりするが、この6価クロムは人体に悪影響を与えるので環境保護の観点から問題となっている。
【0005】
これまで、非クロム系の防錆顔料としては、燐酸亜鉛、トリポリ燐酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛など数多くのものが市場に出ているが、クロム系の防錆顔料に比べて防錆性が大きく劣り、また多量に使用すると耐沸騰水性、耐湿性が劣ることが多いので、プレコート鋼板製造においてクロム系の防錆顔料を代替えするまでには至っていない。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、非クロム系であって、耐食性、密着性、耐沸騰水性及び耐湿性などに優れた塗膜を形成できる塗料を得るために鋭意研究を行った結果、特定範囲の吸油量と細孔容積とを有するシリカ微粒子とマグネシウム塩とを顔料分として含有する塗料により上記目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、(A)水酸基含有ポリエステル樹脂及びエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の、水酸基又はエポキシ基を含有する有機樹脂(a)40〜95重量部と、アミノ樹脂、ブロック化ポリイソシアネート化合物及びポリ酸硬化剤から選ばれる少なくとも1種の硬化剤(b)5〜60重量部との混合物である塗膜形成性樹脂100重量部に基き、(B)平均粒子径が0.5〜15μmであり、吸油量が30〜200ml/100gの範囲内にあり且つ細孔容積が0.05〜1.2ml/gの範囲内にあるシリカ微粒子8〜130重量部及び(C)リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、トリポリリン酸マグネシウム、ホスホン酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、モリブデン酸マグネシウム、バナジン酸マグネシウム及び蓚酸マグネシウムから選ばれるマグネシウム塩5〜70重量部を含有し、さらに有機溶剤を含有することを特徴とする非クロム系塗料組成物を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、化成処理されていてもよい金属板上に、上記塗料組成物の塗膜が形成されてなることを特徴とする塗装金属板を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の塗料組成物について詳細に説明する。
【0010】
塗膜形成性樹脂(A)
本発明組成物において、(A)成分である塗膜形成性樹脂としては、塗膜形成能を有する樹脂である限り特に限定されることなく使用することができ、代表例として、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂などの1種又は2種以上の混合樹脂;及びこれらの樹脂と硬化剤との混合物などを挙げることができる。
【0011】
塗膜形成性樹脂(A)としては、なかでも、上記樹脂のうち、水酸基又はエポキシ基を含有する有機樹脂(a)と硬化剤(b)との混合物を好適に使用することができる。上記水酸基又はエポキシ基を含有する有機樹脂(a)としては、特に水酸基含有ポリエステル樹脂及びエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂が好適である。上記有機樹脂(a)は、通常、樹脂酸価が50mgKOH/g未満である。
【0012】
上記有機樹脂(a)として好適な水酸基含有ポリエステル樹脂としては、オイルフリーポリエステル樹脂、油変性アルキド樹脂、また、これらの樹脂の変性物、例えばウレタン変性ポリエステル樹脂、ウレタン変性アルキド樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂などが包含される。上記水酸基含有ポリエステル樹脂は、数平均分子量1,500〜35,000、好ましくは2,000〜25,000、ガラス転移温度(Tg点)-30〜100℃、好ましくは-25℃〜80℃、水酸基価2〜150mgKOH/g、好ましくは5〜120mgKOH/gの範囲内にあることが好適である。本発明において、樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査型熱分析(DSC)によるものであり、また数平均分子量はゲル透過クロマトグラフィ(GPC)によって、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定したものである。
【0013】
上記オイルフリーポリエステル樹脂は、多塩基酸成分と多価アルコール成分とのエステル化物からなるものである。多塩基酸成分としては、例えば無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸などから選ばれる1種以上の二塩基酸及びこれらの酸の低級アルキルエステル化物が主として用いられ、必要に応じて安息香酸、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸などの一塩基酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸などの3価以上の多塩基酸などが併用される。多価アルコール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの二価アルコールが主に用いられ、さらに必要に応じてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールを併用することができる。これらの多価アルコールは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。両成分のエステル化又はエステル交換反応は、それ自体既知の方法によって行うことができる。酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、及びこれらの酸の低級アルキルエステル化物が特に好ましい。
【0014】
アルキド樹脂は、上記オイルフリーポリエステル樹脂の酸成分及びアルコール成分に加えて、油脂肪酸をそれ自体既知の方法で反応せしめたものであって、油脂肪酸としては、例えばヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、キリ油脂肪酸などを挙げることができる。アルキド樹脂の油長は30%以下、特に5〜20%程度のものが好ましい。
【0015】
ウレタン変性ポリエステル樹脂としては、上記オイルフリーポリエステル樹脂、又は上記オイルフリーポリエステル樹脂の製造の際に用いられる酸成分及びアルコール成分を反応させて得られる低分子量のオイルフリーポリエステル樹脂を、ポリイソシアネート化合物とそれ自体既知の方法で反応せしめたものが挙げられる。また、ウレタン変性アルキド樹脂は、上記アルキド樹脂、又は上記アルキド樹脂製造の際に用いられる各成分を反応させて得られる低分子量のアルキド樹脂を、ポリイソシアネート化合物とそれ自体既知の方法で反応せしめたものが包含される。ウレタン変性ポリエステル樹脂及びウレタン変性アルキド樹脂を製造する際に使用しうるポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどが挙げられる。上記のウレタン変性樹脂は、一般に、ウレタン変性樹脂を形成するポリイソシアネート化合物の量がウレタン変性樹脂に対して30重量%以下の量となる変性度合のものを好適に使用することができる。
【0016】
エポキシ変性ポリエステル樹脂としては、上記ポリエステル樹脂の製造に使用する各成分から製造したポリエステル樹脂を用い、この樹脂のカルボキシル基とエポキシ基含有樹脂との反応生成物や、ポリエステル樹脂中の水酸基とエポキシ樹脂中の水酸基とをポリイソシアネート化合物を介して結合した生成物などの、ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂との付加、縮合、グラフトなどの反応による反応生成物を挙げることができる。かかるエポキシ変性ポリエステル樹脂における変性の度合は、一般に、エポキシ樹脂の量がエポキシ変性ポリエステル樹脂に対して、0.1〜30重量%となる量であることが好適である。
【0017】
アクリル変性ポリエステル樹脂としては、上記ポリエステル樹脂の製造に使用する各成分から製造したポリエステル樹脂を用い、この樹脂のカルボキシル基又は水酸基にこれらの基と反応性を有する基、例えばカルボキシル基、水酸基又はエポキシ基を含有するアクリル樹脂との反応生成物や、ポリエステル樹脂に(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステルなどをパーオキサイド系重合開始剤を使用してグラフト重合してなる反応生成物を挙げることができる。かかるアクリル変性ポリエステル樹脂における変性の度合は、一般に、アクリル樹脂の量がアクリル変性ポリエステル樹脂に対して、0.1〜50重量%となる量であることが好適である。
【0018】
以上に述べたポリエステル樹脂のうち、なかでもオイルフリーポリエステル樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂が、加工性、耐食性などのバランスの点から好適である。
【0019】
前記有機樹脂(a)として好適なエポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂;これらのエポキシ樹脂中のエポキシ基又は水酸基に各種変性剤が反応せしめられた変性エポキシ樹脂を挙げることができる。変性エポキシ樹脂の製造において、その変性剤による変性時期は、特に限定されるものではなく、エポキシ樹脂製造の途中段階に変性してもエポキシ樹脂製造の最終段階に変性してもよい。
【0020】
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂は、例えばエピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒などの触媒の存在下に高分子量まで縮合させてなる樹脂、エピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒などの触媒の存在下に、縮合させて低分子量のエポキシ樹脂とし、この低分子量エポキシ樹脂とビスフェノールとを重付加反応させることにより得られた樹脂のいずれであってもよい。
【0021】
上記ビスフェノールとしては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン[ビスフェノールB]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、p−(4−ヒドロキシフェニル)フェノール、オキシビス(4−ヒドロキシフェニル)、スルホニルビス(4−ヒドロキシフェニル)、4,4´−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタンなどを挙げることができ、なかでもビスフェノールA、ビスフェノールFが好適に使用される。上記ビスフェノール類は、1種で又は2種以上の混合物として使用することができる。
ビスフェノール型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、油化シェルエポキシ(株)製の、エピコート828、同812、同815、同820、同834、同1001、同1004、同1007、同1009、同1010;旭チバ社製の、アラルダイトAER6099;及び三井化学(株)製の、エポミックR−309などを挙げることができる。
【0022】
また、エポキシ樹脂として使用できるノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、分子内に多数のエポキシ基を有するフェノールグリオキザール型エポキシ樹脂など、各種のノボラック型エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0023】
前記変性エポキシ樹脂としては、上記ビスフェノール型エポキシ樹脂又はノボラック型エポキシ樹脂に、例えば、乾性油脂肪酸を反応させたエポキシエステル樹脂;アクリル酸又はメタクリル酸などを含有する重合性不飽和モノマー成分を反応させたエポキシアクリレート樹脂;イソシアネート化合物を反応させたウレタン変性エポキシ樹脂;上記ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂又は上記各種変性エポキシ樹脂中のエポキシ基にアミン化合物を反応させて、アミノ基又は4級アンモニウム塩を導入してなるアミン変性エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0024】
前記硬化剤(b)としては、加熱により上記水酸基又はエポキシ基を含有する有機樹脂(a)と反応して硬化させることができるものであり、代表例として、アミノ樹脂、ブロック化ポリイソシアネート化合物、ポリ酸硬化剤を挙げることができる。
【0025】
上記アミノ樹脂としては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグラナミン、ステログタナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂が挙げられる。上記反応に用いられるアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等が挙げられる。また、上記メチロール化アミノ樹脂を適当なアルコールによってエーテル化したものもアミノ樹脂として使用できる。エーテル化に用いられるアルコールの例としてはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノールなどが挙げられる。
【0026】
上記硬化剤(b)として使用できるブロック化ポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物のフリーのイソシアネート基をブロック化剤によってブロック化してなる化合物である。
【0027】
上記ブロック化する前のポリイソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネートもしくはトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの如き脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネートもしくはイソホロンジイソシアネートの如き環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネートもしくは4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートの如き芳香族ジイソシアネート類の如き有機ジイソシアネートそれ自体、またはこれらの各有機ジイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した如き各有機ジイソシアネート同志の環化重合体、更にはイソシアネート・ビウレット体等が挙げられる。
【0028】
イソシアネート基をブロックするブロック化剤としては、例えばフェノール、クレゾール、キシレノールなどのフェノール系;ε−カプロラクタム;δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどラクタム系;メタノール、エタノール、n−又はi−プロピルアルコール、n−,i−又はt−ブチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコールなどのアルコール系;ホルムアミドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系などのブロック化剤を好適に使用することができる。上記ポリイソシアネート化合物と上記ブロック化剤とを混合することによって容易に上記ポリイソシアネート化合物のフリーのイソシアネート基をブロックすることができる。
【0029】
ポリ酸硬化剤は、有機樹脂(a)がエポキシ樹脂を含有する場合に、加熱によりエポキシ基や水酸基と反応して硬化に寄与することができる硬化剤であり、1分子中に2個以上のカルボキシル基又は1個以上のカルボン酸無水基を有するものであり、全酸価が50〜500mgKOH/g、好ましくは80〜300mgKOH/gの範囲内にあることが好適であり、代表例として、カルボキシル基又は酸無水基を含有するビニル系重合体、カルボキシル基又は酸無水基を含有するポリエステル化合物を挙げることができる。
【0030】
上記カルボキシル基又は酸無水基を含有するビニル系重合体は、カルボキシル基又は酸無水基を有するビニルモノマーとその他のビニルモノマーとの共重合体を挙げることができる。上記カルボキシル基又は酸無水基を有するビニルモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸など;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水基を有するビニルモノマーの酸無水基を脂肪族モノアルコールなどによりハーフエステル化してなる基(ハーフエステル基)を有するビニルモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などを挙げることができる。また、カルボキシル基を有するビニル系重合体としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水基を有するビニルモノマーとその他のビニルモノマーとの共重合体における酸無水基をハーフエステル化してなる共重合体も挙げることができる。
【0031】
上記ポリ酸硬化剤として用いることができるカルボキシル基含有ポリエステル化合物の代表例としては、ポリオールと1,2−酸無水物との付加反応により生成する数平均分子量1000未満、好ましくは400〜900の低分子量ハーフエステルを挙げることができる。この低分子量ハーフエステルは、ポリオールと1,2−酸無水物とを、通常、不活性ガス雰囲気下、溶剤の存在下にて、酸無水物の開環反応が起こるが、実質上、生成したカルボキシル基によるポリエステル化反応が起こらない条件下、例えば、反応温度70〜150℃、好ましくは90〜120℃で10分〜24時間程度反応させることによって得ることができる。
【0032】
上記低分子量ハーフエステルの製造に用いられる1,2−酸無水物としては、例えば、コハク酸無水物、メチルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、クロレンド酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、マレイン酸無水物などを挙げることができる。
【0033】
上記低分子量ハーフエステルの製造に用いられるポリオールとしては、炭素数2〜20、好ましくは2〜10のジオール類、トリ以上のポリオール類を1種で又は2種以上の混合物として使用することができる。上記ジオール類としては、例えば、エチレングリコール、1,2−又は1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ジメチロールシクロヘキサンなどを挙げることができ、上記トリ以上のポリオール類としては、例えば、グリセリン、1,2,3−ブタントリオール、1,1,1−トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどを挙げることができる。
【0034】
硬化剤(b)は、1種の硬化剤からなっていてもよいし、2種以上の硬化剤の混合物であってもよい。
【0035】
前記有機樹脂(a)と上記硬化剤(b)とを塗膜形成性樹脂(A)として使用する場合の両者の配合割合は、特に限定されるものではないが、通常、両者の固形分合計100重量部に基づいて、樹脂(a)が40〜95重量部、特に60〜90重量部の範囲内であり、固形分量で、硬化剤(b)が5〜60重量部、特に10〜40重量部の範囲内であることが好適である。
【0036】
シリカ微粒子(B)
本発明組成物において、(B)成分であるシリカ微粒子は、吸油量が30〜200ml/100g、好ましくは60〜180ml/100gの範囲内であり、且つ細孔容積が0.05〜1.2ml/g、好ましくは0.2〜1.0ml/gの範囲内である。吸油量及び細孔容積が上記範囲内であることによって、耐食性、耐沸騰水性の良好な塗膜を形成することができる。また、シリカ微粒子(B)は、通常、平均粒子径0.5〜15μm、好ましくは1〜10μmを有する。
【0037】
本発明において、上記吸油量は、JIS K5101 21(1991)に準じて測定した値であり、上記細孔容積は、JIS K1150 5.2.3(1994)に規定の窒素吸着等温線による方法に基づいて求めた値であり、上記平均粒子径は、コールター社製、ナノナイザーN−4を用いてコールターカウンター法により測定して求めた値である。
【0038】
本発明組成物において、シリカ微粒子(B)の配合量は、特に限定されるものではないが、通常、塗膜形成性樹脂(A)の固形分100重量部に基づいて、8〜130重量部、好ましくは15〜80重量部の範囲内にあることが、得られる塗膜の耐食性、耐沸騰水性、加工性などの点から好適である。
【0039】
マグネシウム塩(C)
本発明組成物において、(C)成分であるマグネシウム塩は、リン酸、珪酸、モリブデン酸、バナジン酸、ホスホン酸などの無機酸;蓚酸などの有機酸などの酸のマグネシウム塩であり、具体例として、例えば、リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、トリポリリン酸マグネシウム、ホスホン酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、モリブデン酸マグネシウム、バナジン酸マグネシウム、蓚酸マグネシウムなどを挙げることができる。
【0040】
本発明組成物において、マグネシウム塩(C)は、本発明組成物から得られる塗膜の耐湿性の向上、特に加工部における錆の発生を抑制する効果を有する。マグネシウム塩(C)の配合量は特に限定されるものではないが、通常、塗膜形成性樹脂(A)の固形分100重量部に基づいて、5〜70重量部、好ましくは、10〜50重量部の範囲内にあることが、得られる塗膜の耐湿性、耐沸騰水性、加工性などの点から好適である。
【0041】
本発明の塗料組成物は、塗膜形成性樹脂(A)、シリカ微粒子(B)及びマグネシウム塩(C)から実質的になることができるが、通常、有機溶剤が配合され、さらに必要に応じて、硬化触媒、顔料類;塗料用としてそれ自体既知の消泡剤、塗面調整剤、沈降防止剤、顔料分散剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0042】
上記有機溶剤は、本発明組成物の塗装性の改善などのために必要に応じて配合されるものであり、塗膜形成性樹脂(A)を溶解ないし分散できるものが使用でき、具体的には、例えば、トルエン、キシレン、高沸点石油系炭化水素などの炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテルアルコール系溶剤などを挙げることができ、これらは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0043】
前記硬化触媒は、塗膜形成性樹脂(A)の硬化反応を促進するために必要に応じて配合されるものであり、塗膜形成性樹脂(A)の一部として水酸基含有有機樹脂(a)と組合せて用いることができる硬化剤(b)の種類などに応じて適宜選択して使用される。
【0044】
硬化剤(b)がアミノ樹脂、特に低分子量の、メチルエーテル化またはメチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化メラミン樹脂を含有する場合には、硬化触媒としてスルホン酸化合物又はスルホン酸化合物のアミン中和物が好適に用いられる。スルホン酸化合物の代表例としては、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸などを挙げることができる。スルホン酸化合物のアミン中和物におけるアミンとしては、1級アミン、2級アミン、3級アミンのいずれであってもよい。これらのうち、塗料の安定性、反応促進効果、得られる塗膜の物性などの点から、p−トルエンスルホン酸のアミン中和物及び/又はドデシルベンゼンスルホン酸のアミン中和物が好適である。
【0045】
硬化剤(b)がブロック化ポリイソシアネート化合物である場合には、硬化剤であるブロック化ポリイソシアネート化合物のブロック剤の解離を促進する硬化触媒が好適であり、好適な硬化触媒として、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、2−エチルヘキサン酸鉛などの有機金属触媒などを挙げることができる。
【0046】
硬化剤(b)がポリ酸硬化剤である場合には、硬化触媒としてテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルフォスホニウムブロマイドなどの4級塩触媒;トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアミン類を挙げることができる。
【0047】
これらの硬化触媒を配合する場合、硬化触媒の配合量は、通常、塗膜形成性樹脂(A)100重量部に対して、通常、0.1〜2.0重量部の範囲内であることが好適である。上記硬化触媒量は、硬化触媒がスルホン酸化合物又はスルホン酸化合物のアミン中和物である場合には、スルホン酸量を意味し、硬化触媒が有機金属触媒の場合には固形分量を意味するものとする。
【0048】
本発明組成物中に必要に応じて配合できる顔料類としては、チタン白などの着色顔料;クレー、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの体質顔料;リン酸亜鉛、トリポリ燐酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛などの防錆顔料などを挙げることができる。
【0049】
本発明組成物は、耐食性、密着性、耐沸騰水性及び耐湿性に優れた塗膜を形成することができ、例えば金属板用の下塗塗料ならびに裏面用塗料として好適に使用することができる。
【0050】
次に、本発明組成物を用いた塗装金属板について説明する。
本発明の塗装金属板は、被塗物である金属板上に上記本発明の塗料組成物による塗膜が形成されてなるものである。
【0051】
上記被塗物である金属板としては、冷延鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金(亜鉛−鉄、亜鉛−アルミニウム、亜鉛−ニッケルなどの合金)メッキ鋼板、アルミニウムメッキ鋼板、ステンレス鋼板、銅メッキ鋼板、錫メッキ鋼板、アルミニウム板、銅板など;及びこれらの金属板に燐酸塩処理やクロム酸塩処理などの化成処理を施した金属板を挙げることができる。なかでも化成処理されていてもよい、亜鉛メッキ鋼板(溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板のいずれも包含する)、亜鉛合金メッキ鋼板、アルミニウムメッキ鋼板及びアルミニウム板が得られる塗装金属板の耐食性、加工性などの点から好ましい。
【0052】
上記金属板上に、ロールコート法、スプレー塗装法、刷毛塗り法、静電塗装法、浸漬法、電着塗装法、カーテン塗装法、ローラー塗装法などの公知の方法により本発明組成物を塗装し、乾燥させることにより本発明の塗料組成物の塗膜を形成することができる。本発明組成物による塗膜の膜厚は、特に限定されるものではないが、通常2〜10μm、好ましくは3〜7μmの範囲で使用される。塗膜の乾燥は、使用する樹脂の種類などに応じて適宜設定すればよいが、コイルコーティング法などによって塗装したものを連続的に焼付ける場合には、通常、素材到達最高温度が160〜250℃、好ましくは180〜230℃となる条件で15〜60秒間焼付けられる。バッチ式で焼付ける場合には、例えば、雰囲気温度80〜140℃で10〜30分間焼付けることによっても行うことができる。
【0053】
本発明塗装金属板は、金属板上に上記本発明の塗料組成物による塗膜のみが形成されてなるものであることができるが、金属板上に形成された上記本発明の塗料組成物による塗膜の上に上塗塗膜が形成されていてもよい。上塗塗膜は、ガラス転移温度(Tg)が、20〜80℃、好ましくは30〜70℃を有することが塗膜硬度、加工性などの塗膜物性、耐薬品性などの点から好適であり、上塗塗膜の膜厚は、通常、8〜50μm、好ましくは10〜25μmであることが適当である。
【0054】
上記上塗塗膜を形成する上塗塗料としては、例えばプレコート金属板用として公知の、ポリエステル樹脂系、アルキド樹脂系、シリコン変性ポリエステル樹脂系、シリコン変性アクリル樹脂系、フッ素樹脂系などの上塗塗料を挙げることができる。加工性が特に重視される場合には高度加工用のポリエステル系上塗塗料などの加工性の優れた上塗塗料を使用することによって加工性の特に優れた塗装金属板を得ることができる。上記上塗塗料は、ロールコート法、カーテン塗装法、スプレー塗装法、刷毛塗り法、静電塗装法、浸漬法、ローラー塗装法などの公知の方法により塗装することができ、焼付けることによって上塗塗膜を好適に形成することができる。
【0055】
本発明の、上記上塗塗膜を形成した塗装金属板は、耐食性、密着性、耐沸騰水性及び耐湿性などに優れた塗膜性能を示すことができる。
本発明の塗装金属板は、例えば、住宅の屋根、壁、シャッター、ガレージなどの建築材料;家電製品、自動車、鋼製家具、厨房器具などに好適に使用することができる。
【0056】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも重量基準によるものとする。
【0057】
製造例1 多価カルボン酸硬化剤の製造
撹拌機、温度計、冷却管を装備した5リットルのフラスコに、3−メチル−1,5−ペンタンジオール236部、トリメチロールプロパン134部、ヘキサヒドロ無水フタル酸1078部及びキシレン780部を仕込み、窒素雰囲気下で120℃に昇温し反応させた。反応混合物をこの温度に4時間保った後に冷却し、固形分65%、ガードナー粘度(25℃)R、酸価271mgKOH/gのハーフエステルである多価カルボン酸硬化剤(a−1)の溶液を得た。
【0058】
実施例1
ベッコライトM−6159−60(大日本インキ(株)製、固形分60%のポリエステル樹脂溶液、樹脂の数平均分子量は約2,600)を125部(固形分量で75部)、チタン白30部、サイリシア740(富士シリシア化学(株)製、吸油量95ml/100g、細孔容積0.44ml/g、平均粒子径約3.5μmを有するシリカ微粒子)30部、リン酸マグネシウム30部及び混合溶剤[ソルベッソ150(エッソ石油社製、芳香族炭化水素系溶剤)とシクロヘキサノンとの1/1(重量基準)混合溶剤]の適当量を混合し、ツブ(顔料粗粒子の粒子径)が20ミクロン以下となるまで分散を行った。次いで、この分散物にメラン28(日立化成工業(株)製、固形分60%のブチルエーテル化メラミン樹脂)を41.7部(固形分量で25部)を加えて均一に混合し、さらに上記混合溶剤を加えて粘度約80秒(フォードカップ#4/25℃)に調整して塗料組成物を得た。
【0059】
実施例2〜18及び比較例1〜6
実施例1と同様に硬化剤以外の皮膜形成性樹脂成分及び混合溶剤を用いて顔料分を分散し、また塗料配合組成を後記表1に示す組成とする以外は実施例1と同様にして塗料組成物を得た。表1中における配合量は重量部(ネイキュア5225は有効成分量、このもの以外は固形分量)にて表示する。
【0060】
表1における(註)は下記のとおりである。
(注1)エポキー820−40CX:三井化学(株)製、固形分40%のウレタン変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂溶液、樹脂の数平均分子量は約6,000、ガラス転移温度は約64℃。
(注2)バイロン96CS:東洋紡績(株)製、固形分40%のエポキシ変性ポリエステル樹脂溶液、樹脂の数平均分子量は約14,000、ガラス転移温度は約70℃。
(注3)スミマールM−55:住友化学(株)製、固形分70%のメチル化メチロールメラミン。
(注4)デスモデュールBL−3175:住友バイエルウレタン(株)製、メチルエチルケトオキシムでブロック化したHDIイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物溶液、固形分濃度75%。
【0061】
(注5)ネイキュア5225:米国キング・インダストリイズ社製、ドデシルベンゼンスルホン酸のアミン塩、有効成分25%。
(注6)タケネートTK−1:武田薬品(株)製、有機錫系ブロック剤解離触媒、固形分約10%。
(注7)TEABr:テトラエチルアンモニウムブロマイド。
【0062】
(注8)ミズカシルP766:水澤化学工業(株)製、吸油量90ml/100g、細孔容積0.45ml/g、平均粒子径約6.5μmを有するシリカ微粒子。
(注9)サイリシア530:富士シリシア化学(株)製、吸油量170ml/100g、細孔容積0.80ml/g、平均粒子径約1.9μmを有するシリカ微粒子。
(注10)サイリシア445:富士シリシア化学(株)製、吸油量210ml/100g、細孔容積1.25ml/g、平均粒子径約3.5μmを有するシリカ微粒子。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
実施例19
クロメート処理してなる厚さ0.35mmの溶融亜鉛メッキ鋼板(Z25,亜鉛目付量(両面)250g/m2 )に、前記実施例1で得た塗料組成物を乾燥膜厚が6ミクロンとなるようにバーコータにて塗装し、素材到達最高温度が220℃となるように30秒間焼付けて下塗塗装板を得た。次いでこれらの各下塗塗膜上に、KPカラー1510ブルー[関西ペイント(株)製、ポリエステル樹脂系上塗塗料、青色、硬化塗膜のガラス転移温度は約50℃]をバーコータにて膜厚が約15ミクロンとなるように塗装し、素材到達最高温度が225℃となる条件にて50秒間焼付けて上塗塗装板を得た。
【0066】
実施例20〜36及び比較例7〜12
実施例19において、下塗塗料として前記実施例1の塗料組成物のかわりに後記表2に示す塗料組成物を使用する以外は実施例19と同様に行い下塗塗装板及び上塗塗装板を得た。
【0067】
実施例37〜40
下塗塗料として実施例1の塗料を用い、素材として、クロメート処理してなる厚さ0.35mmの溶融亜鉛メッキ鋼板のかわりに、それぞれ下記の素材を使用する以外は、実施例19の場合と同様に塗装板を作成をした。
【0068】
実施例37〜40で使用した素材種は、以下のとおりである。実施例37においては厚さ0.35mmのクロメート処理された亜鉛−アルミニウム合金メッキ(メッキ中のアルミニウム含有量約5%)鋼板[表1中において「Zn−5%Al」と略記する]、実施例38においては厚さ0.35mmのクロメート処理された亜鉛−アルミニウム合金メッキ(メッキ中のアルミニウム含有量約55%)鋼板[表1中において「Zn−55%Al」と略記する]、実施例39においては厚さ0.5mmのクロメート処理されたアルミニウムメッキ鋼板[表1中において「Al鋼板」と略記する]、実施例40においては厚さ0.5mmのクロメート処理されたアルミニウム板[表1中において「Al板」と略記する]をそれぞれ使用した。
【0069】
上記実施例19〜40及び比較例7〜12で得られた各上塗塗装板について、下記試験方法により塗膜性能の評価を行った。また下塗塗装板については、下記耐食性の試験を行った。これらの試験結果を後記表2に示す。
【0070】
試験方法
耐食性:下塗塗装板の平面部の耐食性及び上塗塗装板の耐食性の試験を下記方法に従って行った。各塗装板を70×150mmの大きさに切断した後、裏面及び切断面を防錆塗料にてシールした。下塗塗装板については、シールした塗装板の端から約1cmの箇所に3T折り曲げ加工(塗装板の表面を外側にして折曲げ、その内側に塗装板と同じ厚さの板を3枚挟み、上記塗装板を万力にて180度折曲する加工)を行ったものを塩水噴霧試験に供した。上塗塗装板については、シールした塗装板のほぼ中央部に素地に到達するクロスカットを入れ、塗装板の端から約1cmの箇所に3T折り曲げ加工を行ったものを塩水噴霧試験に供した。塩水噴霧試験は、JIS Z−2371に準じて行い塩水噴霧試験時間を500時間とし、下塗塗装板及び上塗塗装板について平面部、加工部の錆の発生程度及びクロスカット部の平均のフクレ幅を、それぞれ目視にて下記基準により評価した。
【0071】
下塗塗装板における平面部の錆の発生程度
◎:平面部に錆の発生が認められない
○:錆の発生が認められるが、錆の発生程度が平面部の5%未満である
△:錆の発生程度が平面部の5%以上、30%未満である
×:錆の発生程度が平面部の30%以上である。
下塗塗装板及び上塗塗装板における加工部の錆の発生程度
◎:加工部に錆の発生が認められない
○:錆の発生程度が加工部の長さの10%未満であるが認められる
△:錆の発生程度が加工部の長さの10%以上、30%未満である
×:錆の発生程度が加工部の長さの30%以上である。
上塗塗装板におけるクロスカット部の平均のフクレ幅
◎:クロスカット部にフクレが認められない
○:カット傷からの片側の平均フクレ幅が1mm未満である
△:カット傷からの片側の平均フクレ幅が1mm以上で5mm未満である
×:カット傷からの片側の平均フクレ幅が5mm以上である。
【0072】
密着性:JIS K5400 8.5.2(1990)碁盤目−テープ法に準じて、上塗塗装板の塗膜面に素地に達するようにナイフを使用して約1mmの間隔で縦、横それぞれ11本の切目を入れてゴバン目を形成し、その表面にセロハン粘着テープを貼着し、テープを急激に剥離した後のゴバン目塗面を下記基準にて評価した。
◎:塗膜の剥離が全く認められない
○:ナイフ傷の角の塗膜の一部にわずかに剥離が認められる
△:100個のゴバン目のうち少なくとも上塗塗膜の全てが剥離したものが1個〜20個である
×:100個のゴバン目のうち少なくとも上塗塗膜の全てが剥離したものが21個以上である。
【0073】
耐沸騰水性:上塗塗装板を約100℃の沸騰水中に5時間浸漬した後、引上げて塗膜表面の外観を評価した。
◎:塗膜にフクレの発生などの異常が認められない
○:塗膜にわずかなフクレの発生が認められる
△:塗膜にかなりのフクレの発生が認められる
×:塗膜に著しいフクレの発生が認められる。
【0074】
耐湿性:下塗塗装板の平面部の耐食性及び上塗塗装板の耐湿性の試験を下記方法に従って行った。各塗装板を70×150mmの大きさに切断した後、裏面及び切断面を防錆塗料にてシールした。下塗塗装板については、シールした塗装板の端から約1cmの箇所に3T折り曲げ加工(塗装板の表面を外側にして折曲げ、その内側に塗装板と同じ厚さの板を3枚挟み、上記塗装板を万力にて180度折曲する加工)を行ったものを耐湿試験に供した。上塗塗装板については、シールした塗装板のほぼ中央部に素地に到達するクロスカットを入れ、塗装板の端から約1cmの箇所に3T折り曲げ加工を行ったものを耐湿試験に供した。耐湿性試験はJIS Z−2246に準じて行い試験時間を500時間とし、下塗塗装板及び上塗塗装板について平面部、加工部の錆の発生程度及びクロスカット部の平均フクレ幅を、それぞれ耐食性試験と同様の基準により目視にて評価した。
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
【発明の効果】
本発明塗料組成物によって、耐食性、密着性、耐沸騰水性及び耐湿性に優れた塗膜を形成できるので下塗塗料組成物として好適に使用できる。本発明の塗料組成物は、防錆顔料としてクロメート系顔料を使用しなくてもよいので、6価クロムによる問題を解決でき安全衛生上有利である。
【0078】
本発明塗料組成物からの下塗塗膜上に上塗塗膜を形成した塗装金属板は、耐食性、密着性及び耐沸騰水性に優れたものであることができる。本発明塗料組成物は、なかでもプレコート塗装金属板用の下塗塗料として好適に使用できる。
Claims (3)
- (A)水酸基含有ポリエステル樹脂及びエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の、水酸基又はエポキシ基を含有する有機樹脂(a)40〜95重量部と、アミノ樹脂、ブロック化ポリイソシアネート化合物及びポリ酸硬化剤から選ばれる少なくとも1種の硬化剤(b)5〜60重量部との混合物である塗膜形成性樹脂100重量部に基き、(B)平均粒子径が0.5〜15μmであり、吸油量が30〜200ml/100gの範囲内にあり且つ細孔容積が0.05〜1.2ml/gの範囲内にあるシリカ微粒子8〜130重量部及び(C)リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、トリポリリン酸マグネシウム、ホスホン酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、モリブデン酸マグネシウム、バナジン酸マグネシウム及び蓚酸マグネシウムから選ばれるマグネシウム塩5〜70重量部を含有し、さらに有機溶剤を含有することを特徴とする非クロム系塗料組成物。
- 化成処理されていてもよい金属板上に、上記請求項1に記載の塗料組成物の塗膜が形成されてなることを特徴とする塗装金属板。
- 化成処理されていてもよい、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板、アルミニウムメッキ鋼板又はアルミニウム板上に形成された上記請求項1記載の塗料組成物の塗膜上に、ガラス転移温度20〜80℃の上塗塗膜が形成されてなることを特徴とする請求項2記載の塗装金属板。
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