JP3986313B2 - カルボチオ酸の新規な合成方法及び新規な精製方法を使用するフルチカゾン及び近縁の17β−カルボチオ酸エステルの製造方法 - Google Patents
カルボチオ酸の新規な合成方法及び新規な精製方法を使用するフルチカゾン及び近縁の17β−カルボチオ酸エステルの製造方法 Download PDFInfo
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Description
(技術的分野)
本発明はカルボン酸をカルボチオ酸に変換するための新規な方法、並びに、該方法を使用するアンドロスタン17β−カルボチオ酸の製造方法及びプロピオン酸フルチカゾンの製造方法に関する。
【0002】
(発明の背景)
プロピオン酸フルチカゾンは、抗炎症薬として当業界で公知のアンドロスタン17β−カルボチオ酸エステルの1つのクラスに所属する。これらの化合物は治療有効性を有しており、従って、一般的にアンドロスタン17β−カルボチオ酸エステル、特にプロピオン酸フルチカゾンの合成方法を改良することは極めて重要であると考えられている。
【0003】
米国特許4,188,385、4,198,403、4,335,121及び4,578,221、英国特許2,088,877及び2,137,206、公開されたイスラエル特許出願IL109,656−A1のような先行技術は、商用銘柄のフルメタゾンからプロピオン酸フルチカゾンを合成することを教示している。これらの合成は、中間体のクロマトグラフィー処理、効率の低い複数の処理段階、高圧クロロフルオロメタンの添加、などの難しい要素を含む。
【0004】
商用銘柄のフルメタゾン((6α,11β,16α)−6,9−ジフルオロ−11,17,21−トリヒドロキシ−16−メチルプレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン)は典型的には、約0.5%−2%の割合の(6α,11β,16α)−6−クロロ−9−フルオロ−11,17,21−トリヒドロキシ−16−メチルプレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオンを不純物(以後、Cl不純物と呼ぶ)として含有しており、この不純物を除去するためにカラムクロマトグラフィー処理を要する。このため、方法を大規模製造に応用することができない。
【0005】
また、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−(プロピオニルオキシ)アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボン酸の17β−カルボン酸をカルボチオ酸に変換する処理にも問題がある。カルボン酸をカルボチオ酸に変換する一般的方法では、活性化したカルボン酸とスルフィド源との反応を使用し(Advanced Organic Chemistry.Reactions,Mechanisms,and,Structure,4th ed,.John Wiley & Sons,New York,1992;及び米国特許4,578,221)、また、チオカーバメート加水分解化学をチオカルバミル無水物に応用している(Bull.Chem.Soc.Jpn.,1977,50(11),3071;J.Ind.Chem.Soc.,1977,52,150;J.Org.Chem.,1966,31,3980;Org.Syn.,1988,Collective Volume VI,824;J.Am.Chem.Soc.1947,69,2682;及びSynlett.,1996,11,1054)。しかしながら、これらの方法をプロピオン酸フルチカゾンの合成に使用すると、反応条件が分子の別の基に適合しないので極めて低い効率しか得られない(J.Med.Chem.,1994,37(22)3717及びJ.Org.Chem.1986,51(12)2315)。
【0006】
アンドロスタン17β−カルボチオ酸のカルボチオ酸基をカルボチオール酸エステルに直接変換するためには、カルボチオ酸とクロロフルオロメタンと塩基とを高圧で反応させる。この方法もまた大規模製造に応用できない。
【0007】
従って製薬業界では、アンドロスタン17β−カルボン酸を一般的にアンドロスタン17β−カルボチオ酸エステル、特にプロピオン酸フルチカゾンに変換する大規模方法に応用できるような効率でカルボン酸をカルボチオ酸エステルに変換する方法が絶えず要望されている。
【0008】
(発明の概要)
本発明の1つの実施態様では、
(a)カルボキシル基を有する化合物と第一塩基とヨウ化物塩と式(4):
【0009】
【化16】
〔式中、R7及びR8は独立にC1−C6アルキルを表すか、または、R7とR8とが一緒にC1−C6アルキレンを表す〕
の化合物とを反応させる段階と、
(b)段階(a)の生成物と加水分解剤とを反応させる段階と、
(c)段階(b)の生成物と酸とを反応させる段階と、
から成るカルボン酸基をカルボチオ酸基に変換する方法が開示されている。
【0010】
前文節に上述した方法の好ましい実施態様では、
(a)カルボン酸基を有する化合物と第一塩基とヨウ化物塩とN,N−ジメチルチオカルバモイルクロリドとを、有機成分とを水とを含んでおりこの水がカルボン酸基を有している化合物の約0.25重量%〜約10重量%の量で存在している溶媒系中で、約10℃から約30℃の範囲の温度で反応させる段階と、
(b)段階(a)の生成物とアルコキシド塩、チオアルコキシド塩、場合によっては水和したスルフィド塩またはそれらの混合物とを約−40℃から約35℃の範囲の温度で反応させる段階と、
(c)段階(b)の生成物と酸とを反応させる段階と、
から成るカルボン酸基をカルボチオ酸基に変換する方法が開示されている。
【0011】
本発明の別の実施態様では、4−ハロ−2,3−不飽和カルボニル基を有する化合物とパラジウム触媒と添加剤とを場合によっては還元剤の存在下で反応させる処理から成る4−ハロ−2,3−不飽和カルボニル基の脱ハロゲン方法が開示されている。
【0012】
本発明の別の実施態様では、式(7):
【0013】
【化17】
〔式中、- - - の記号は単結合または二重結合を表し、R1またはR2の一方が水素を表し他方が場合によっては保護されたヒドロキシルを表すか、または、R1とR2とが一緒にオキソを表し、R3及びR4は独立に水素またはハロゲン化物を表し、R5及びR6は独立にC1−C6アルキルを表す〕
の化合物の製造方法が開示されている。該方法は、
(a)式(1):
【0014】
【化18】
の化合物と過ヨウ素酸とを反応させて式(2):
【0015】
【化19】
の化合物を得る段階と、
(b)段階(a)の生成物とアルカノイルハライドと第一塩基とを反応させて式(3):
【0016】
【化20】
の化合物を得る段階と、
(c) 段階(b)の生成物と第一塩基とヨウ化物塩と式(4)の化合物とを反応させて式(5):
【0017】
【化21】
の化合物を得る段階と、
(d)段階(c)の生成物と加水分解剤とを反応させて式(6):
【0018】
【化22】
〔式中、MはLi、NaまたはKである〕
の化合物を得る段階と、
(e)場合によっては段階(d)の生成物と酸とを反応させる段階と、
(f)段階(e)の生成物とクロロフルオロメタンとを場合によっては第二塩基の存在下で反応させる段階と、
(g)場合によっては段階(f)の生成物を脱保護する段階と、
から成る。
【0019】
前文節に上述した方法の好ましい実施態様においては、
式(1)の化合物が商用銘柄のフルメタゾンであり、
式(2)の化合物が6α,9α−ジフルオロ−11β,17α−ジヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボン酸であり、
式(3)の化合物が6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−(プロピオニルオキシ)アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボン酸であり、
式(5)の化合物が17β−(N,N−(ジメチルカルバモイル)チオ)カルボニル−6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−17α−プロピオニルオキシ−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエンであり、
式(7)の化合物が6α,9α−ジフルオロ−17α−(((フルオロメチル)スルファニル)−カルボニル)−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17α−イルプロピオネートである。
【0020】
本発明の別の実施態様では、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−(プロピオニルオキシ)アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボン酸を再結晶化によって精製する方法が開示されている。
【0021】
本発明の別の実施態様では、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−(プロピオニルオキシ)アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボン酸を再結晶化の反復によって精製する方法が開示されている。
【0022】
本発明の別の実施態様では、式(1)の化合物、式(2)の化合物、式(3)の化合物、式(5)の化合物または式(7)の化合物を、場合によっては還元剤の存在下でパラジウム触媒及び添加剤で処理する精製方法が開示されている。
【0023】
本発明の別の実施態様では、カラムクロマトグラフィーの使用が削除され大規模製造に応用できるように改良された6α,9α−ジフルオロ−17β−(((フルオロメチル)スルファニル)カルボニル)−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17α−イルプロピオネート(プロピオン酸フルチカゾン)の製造方法が開示されている。
【0024】
本発明の別の実施態様では、パラジウム触媒及び添加剤を場合によっては還元剤の存在下で使用するプロピオン酸フルチカゾンの合成中にCl不純物を除去する方法が開示されている。
【0025】
本発明の別の実施態様では、パラジウム触媒及び添加剤を場合によっては還元剤の存在下で使用する商用銘柄のフルメタゾンからCl不純物を除去する方法が開示されている。
【0026】
(詳細な説明)
本発明は、カラムクロマトグラフィーを要せずにカルボン酸をカルボチオ酸に変換する新規な方法、及び、該方法を応用したプロピオン酸フルチカゾンのようなアンドロスタンカルボチオレートの製造方法を開示している。
【0027】
用語の定義
本文中で使用された“酸”という用語は、化学反応の進行中にプロトンを供与し得る試薬を意味する。酸の例は、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸などのような有機酸;パラ−トルエンスルホン酸、パラ−ブロモスルホン酸、パラ−ニトロスルホン酸などのようなスルホン酸である。特定の変換に使用する酸は、出発物質、反応を行わせるために使用される1種または複数の溶媒、反応温度、などに基づいて選択される。
【0028】
本文中で使用された“添加剤”という用語は、式P(RC)3(ホスフィン)及びP(ORD)3(ホスファイト)のようなリン含有単座配位子を意味する。式中のRCの各々は独立に、水素;C1−C6アルキル例えばメチル、エチル及びtert−ブチル;シクロアルキル、例えばシクロプロピル及びシクロヘキシル;置換または未置換のアリール、例えばフェニル、ナフチル及びオルト−トリル;置換または未置換のヘテロアリール、例えばフリル及びピリジル;を表し、RDの各々は独立に、C1−C6アルキル例えばメチル、エチル及びtert−ブチル;シクロアルキル、例えばシクロプロピル及びシクロヘキシル;置換または未置換のアリール、例えばフェニル、ナフチル及びオルト−トリル;置換または未置換のヘテロアリール、例えばフリル及びピリジル;を表す。これらの添加剤の特定例は、トリ(アルキル)ホスフィン類、例えばトリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィンなど;トリ(シクロアルキル)ホスフィン類、例えばトリシクロプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンなど;トリ(アリール)ホスフィン類、例えばトリフェニルホスフィン、トリナフチルホスフィンなど;トリ(ヘテロアリール)ホスフィン類、例えばトリ(フリル−2−イル)ホスフィン、トリ(ピリド−3−イル)ホスフィンなど;トリ(アルキル)ホスファイト類、例えばトリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイトなど;トリ(シクロアルキル)ホスファイト類、例えばトリシクロプロピルホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイトなど;トリ(アリール)ホスファイト類、例えばトリフェニルホスファイト、トリナフチルホスファイトなど;トリ(ヘテロアリール)ホスファイト類、例えばトリ(フリル−2−イル)ホスファイト、トリ(ピリド−3−イル)ホスファイトなど;である。本文中で使用された“添加剤”という用語はまた、二座配位子ホスフィン、例えば1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(dppb)、1,2−ビス(ジフェニル−ホスフィノ)エタン(dppe)、1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン(dppm)、1,2−ビス(ジメチル−ホスフィノ)エタン(dmpe)、1,1′−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)、などを意味する。
【0029】
本文中で使用された“アルカリ金属ヨウ化物”という用語は、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウムなどを意味する。
【0030】
本文中で使用された“アルカリ土類金属ヨウ化物”という用語は、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化バリウムなどを意味する。
【0031】
本文中で使用された“アルカノイルハライド”という用語は、式RAC(O)Xを意味しており、この式中のRAはC1−C6アルキルを表し、Xは塩化物または臭化物を表す。
【0032】
本文中で使用された“C2−C6アルケニル”という用語は、2−6個の炭素原子と少なくとも1個の炭素−炭素結合とを有している直鎖状または分枝状の炭化水素ラジカルを表す。
【0033】
本文中で使用された“アルコキシド塩”という用語は、式[M]+[ORA]−を意味しており、この式中のMはLi、NaまたはKを表し、RAはC1−C6アルキルを表す。
【0034】
本文中で使用された“アルコキシ”という用語は、酸素原子を介して親分子基に結合したアルキル基を意味する。
【0035】
本文中で使用された“C1−C6アルキル”という用語は、1−6個の炭素を有している直鎖状または分枝状の飽和炭化水素ラジカルを意味する。
【0036】
本文中で使用された“C1−C6アルキレン”という用語は、1−6個の炭素を有している直鎖状または分枝状の飽和炭化水素ジラジカルを意味する。
【0037】
本文中で使用された“アミノ”という用語は、−NH2を表すか、または、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキルまたはアリールアルキル基によってその水素原子の1個が置換されるかもしくは2個の水素原子が独立に置換されることによって形成された−NH2の誘導体を意味する。
【0038】
本文中で使用された“アリール”という用語は、フェニルのような環状の1個の芳香族炭素環を意味するかまたはナフチルのような融合した2個の芳香族炭素環を意味する。本発明のアリール基は独立に、1、2または3個のアリール、アミノ、ハロ及びニトロ置換基で置換されていてもよい。本発明のアリール基は独立に、1、2または3個のアルキル、アミノ、ハロ及びニトロ置換基で置換されていてもよい。本発明のアリール基は独立に、1、2、3、4または5個のC1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、ハロ、カルボキシル、カルボキシアルデヒド、アルコキシカルボニル、C1−C6ペルフルオロアルキルまたはニトロ置換基で置換されていてもよい。
【0039】
本文中で使用された“アリールアルキル”という用語は、アルキル基を介して親分子基に結合したアリール基を意味する。
【0040】
本文中で使用された“ボラン”という用語は、少なくとも1個のホウ素−水素結合を含む化合物を意味しており、その例は、ジボラン、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(9−BBN)、ジロンギホイルボラン、テキシルボラン、カテコールボラン、ホウ水素化ナトリウム、テトラブチルアンモニウムボロヒドリド、ボラン−4−メチルモルホリン錯体、ボラン−4−エチルモルホリン錯体、ボラン−ジメチルスルフィド錯体、ボラン−トリエチルアミン錯体、ボラン−ピリジン錯体、ボラン−2,6−ルチジン錯体、などである。
【0041】
本文中で使用された“炭酸塩”という用語は、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウムなどを意味する。
【0042】
本文中で使用された“カルボチオ酸”という用語は−C(O)SHを意味する。
【0043】
本文中で使用された“カルボン酸”及び“カルボキシル”という用語は−C(O)OHを意味する。
【0044】
本文中で使用された“カルボキシアルデヒド”という用語は、−CHOを意味する。
【0045】
本文中で使用された“商用銘柄のフルメタゾン”という用語は、2%以下の(6α,11β,16α)−6−クロロ−9−フルオロ−11,17,21−トリヒドロキシ−16−メチルプレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオンを不純物として含有する(6α,11β,16α)−6,9−ジフルオロ−11,17,21−トリヒドロキシ−16−メチルプレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオンを意味する。
【0046】
本文中で使用された“シクロアルキル”という用語は3−6個の炭素原子を有している飽和環状炭化水素基を意味する。
【0047】
本文中で使用された“シクロアルキルアルキル”という用語は、アルキル基を介して親分子基に結合したシクロアルキル基を意味する。
【0048】
本文中で使用された“脱ハロゲン”という用語は、4−ハロ−2,3−不飽和カルボニル基の塩化物、臭化物またはヨウ化物ラジカルを意味する。
【0049】
本文中で使用された“第一塩基”及び“第二塩基”という用語は、化学反応の進行中にプロトンを受容し得る試薬を意味する。第一塩基及び第二塩基の例は、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウムなどの炭酸塩類;リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウムなどのリン酸塩類;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、などのトリアルキルアミン類;イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンなどの複素環アミン類;DBN、DBUなどの二環アミン類である。特定の変換に使用する塩基は、出発物質の種類、反応を行わせるために使用される1種または複数の溶媒、反応温度、などに基づいて選択する。
【0050】
本文中で使用された“ハロゲン化物”及び“ハロ”という用語は、F、Cl、Br及びIを意味する。
【0051】
本文中で使用された“4−ハロ−2,3−不飽和カルボニル”という用語は、少なくとも4個の炭素原子を有しており、そのうちの炭素−1がオキソで置換され、炭素−2及び炭素−3が炭素−炭素二重結合によって結合され、炭素−4が塩化物、臭化物またはヨウ化物置換基を有している内因性または外因性の基を意味する。
【0052】
本文中で使用された“ヘテロアリール”という用語は、5個または6個の原子を有しており、そのうちの少なくとも1個の原子が窒素、酸素またはイオウであり、残りが炭素であるような芳香環を意味する。五員環は2つの二重結合を有しており、六員環は3つの二重結合を有している。本発明のヘテロアリールは環の炭素原子を介してリン原子に結合されている。本発明のヘテロアリール基は独立に、1、2または3個のC1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、ハロ、カルボキシル、カルボキシアルデヒド、アルコキシカルボニル、C1−C6ペルフルオロアルキルまたはニトロ置換基によって置換されていてもよい。
【0053】
本文中で使用された“ヒドロキシル”という用語は−OHを意味する。
【0054】
本文中で使用された“ヒドロキシル保護基”という用語は、合成手順中に望ましくない副反応からヒドロキシル基を保護するために選択的に導入及び除去できる基を意味する。ヒドロキシル保護基の例は、ベンジルオキシカルボニル、4−ニトロベンジルオキシカルボニル、4−ブロモベンジルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、3,4−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、1,1−ジメチルプロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、イソブチルオキシカルボニル、ジフェニルメトキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル、2,2,2−トリブロモエトキシカルボニル、2−(トリメチルシリル)エトキシカルボニル、2−(フェニルスルホニル)エトキシカルボニル、2−(トリフェニルホスホニオ)エトキシカルボニル、2−フルフリルオキシカルボニル、1−アダマンチルオキシカルボニル、ビニルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、S−ベンジルチオカルボニル、4−エトキシ−1−ナフチルオキシカルボニル、8−キノリルオキシカルボニル、アセチル、ホルミル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、トリフルオロアセチル、メトキシアセチル、フェノキシアセチル、ピバロイル、ベンゾイル、メチル、tert−ブチル、2,2,2−トリクロロエチル、2−トリメチルシリルエチル、1,1−ジメチル−2−プロペニル、3−メチル−3−ブテニル、アリル、ベンジル、パラ−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、メトキシメチル、メチルチオメチル、ベンジルオキシメチル、2−メトキシエトキシメチル、2,2,2−トリクロロエトキシメチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル、1−エトキシエチル;アルキルスルホニル、メタンスルホニル、パラ−トルエンスルホニル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、ジエチルイソプロピルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル及びtert−ブチルメトキシフェニルシリルである。
【0055】
本文中で使用された“ニトロ”という用語は−NO2を意味する。
【0056】
本文中で使用された“有機成分”という用語は、出発物質と反応性でなく、出発物質を少なくとも部分的に溶解させる溶媒を意味する。有機成分の例は、C2−C5アルキルアミド類、例えばホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど;C4−C6ジアルコキシアルキル類、例えばDME、1,2−ジエトキシエタンなど;C1−C4アルコール類、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソ−プロパノール、ブタノール、イソ−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールなど;C3−C10ケトン類、例えばアセトン、2−ブタノン、3−ペンタノン、2−ブタノン、2−ペンタノン、2,5−ヘプタンジオンなど;C5−C7炭化水素類、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタンなど;置換または未置換の芳香族炭化水素類、例えばベンゼン、トルエン、1,4−ジクロロベンゼン、ニトロベンゼンなど;エーテル類、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなど:エステル類、例えば酢酸エチル、酢酸イソプロピルなどである。
【0057】
本文中で使用された“オキソ”という用語は、同一炭素原子上の2個の水素原子が1個の酸素原子で置換されることによって形成された基を意味する。
【0058】
本文中で使用された“パラジウム触媒”という用語は、場合によっては支持されたパラジウム、例えば金属パラジウム、炭素に支持された金属パラジウム、酸性、塩基性もしくは中性のアルミナに支持された金属パラジウム;パラジウム(0)錯体、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0);パラジウム塩、例えば酢酸パラジウム(II)または塩化パラジウム(II);パラジウム(II)錯体、例えばアリルパラジウム(II)クロリドダイマー、(1,1′−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)−ジクロロパラジウム(II)、ビス(アセタト)ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)及びビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)を意味する。
【0059】
本文中で使用された“C1−C6ペルフルオロアルキル”という用語は、全部の水素ラジカルがフッ化物ラジカルによって置換されたC1−C6アルキル基を意味する。
【0060】
本文中で使用された“保護ヒドロキシル”という用語は、ヒドロキシル保護基が結合したヒドロキシルを意味する。
【0061】
本文中で使用された“還元剤”という用語は、ボラン、シラン及びスタンナンを意味する。
【0062】
本文中で使用された“シラン”という用語は、Si(RE)(RF)3で表され、REが水素を表し、RFの各々が独立に水素、C1−C20アルキル、C2−C20アルケニル、アリールまたはヘテロアリールを表す物質を意味する。シランの特定例は、ジエチルシラン、ジメチルイソプロピルシラン、トリブチルシラン、シクロヘキシルジメチルシラン、ジイソプロピルオクチルシラン、トリイソプロピルシラン、ジメチルエチルシラン、ジメチルオクタデシルシラン、トリエチルシランなどである。
【0063】
本文中で使用された“スタンナン”という用語は、Sn(RE)(RF)3で表され、REが水素を表し、RFの各々が独立に水素、C1−C20アルキル、C2−C20アルケニル、アリールまたはヘテロアリールを表す物質を意味する。スタンナンの特定例は、ジエチルスタンナン、ジメチルイソプロピルスタンナン、トリブチルスタンナン、シクロヘキシルジメチルスタンナン、ジイソプロピルオクチルスタンナン、トリイソプロピルスタンナン、ジメチルエチルスタンナン、ジメチルオクタデシルスタンナン、トリエチルスタンナンなどである。
【0064】
本文中で使用された“スルフィド塩”という用語は、リチウムスルフィド、リチウムヒドロスルフィド、ナトリウムスルフィド、ナトリウムヒドロスルフィド、カリウムスルフィド、カリウムヒドロスルフィドなどを意味する。本発明のスルフィド塩は場合によっては水和していてもよい。
【0065】
本文中で使用された“加水分解剤”という用語は、アルコキシド塩、チオアルコキシド塩、場合によっては水和したスルフィド塩、及び、それらの混合物を意味する。
【0066】
本文中で使用された“ヨウ化物塩”という用語は、アルカリ金属ヨウ化物、アルカリ土類金属ヨウ化物及びヨウ化テトラアルキルアンモニウムを意味する。
【0067】
本文中で使用された“ヨウ化テトラアルキルアンモニウム”という用語は、式[(RB)4N]+[I]−で表され、RBがC1−C20アルキルを表す化合物を意味する。
【0068】
本文中で使用された“チオアルコキシド塩”という用語は、[M]+[SRA]−で表され、MがLi、NaまたはKを表し、RAがC1−C6アルキルを表す物質を意味する。
【0069】
本発明化合物には非対称中心が存在する。本発明は立体異性体及びそれらの混合物を包含する。化合物の個々の立体異性体は、キラル中心を含む出発物質から合成することもでき、または、鏡像異性体の混合物を製造し、次いで、例えばジアステレオマー混合物に変換してから分離もしくは再結晶化、クロマトグラフィー技術で分割してもよく、または、鏡像異性体をキラルクロマトグラフィーカラムで直接分割してもよい。特定の立体化学を有している出発化合物は市販物質でもよく、または、本文中に記載の方法で製造し当業界で公知の技術で分割してもよい。
【0070】
モル%及びCl不純物%のようなパーセンテージは出発物質及び生成物のHPLC分析によって得られた。数値をピーク領域から計算した。
【0071】
すべての本発明方法が連続法として行うことができる。本文中に使用した“連続法”という用語は、反応中に中間体が形成され、該中間体を単離することなく場合によってはin situで後続反応に使用するような反応の進行を意味する。本文中で使用された“in situ”という用語は、溶媒中で形成された中間体が、該溶媒を除去することなく使用されることを意味する。
【0072】
略号
以下の略号を使用した:DBNは1,5−ジアゾビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン;DBUは1,8−ジアゾビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン;DBAはジベンジリデンアセトン;DMAはN,N−ジメチルアセトアミド;DMEはジメトキシエタン;DMFはN,N−ジメチルホルムアミド;HPLCは高圧液体クロマトグラフィー;及びTHFはテトラヒドロフランを表す。
【0073】
合成方法
本発明の実施態様を表す以下の合成スキームによって本発明方法がより十分に理解されよう。以下に示した合成スキーム中の試薬及び成分を適宜選択することによって本発明化合物を製造できることは当業者に明らかであろう。また、段階の順序を変更できることも当業者に明らかであろう。
【0074】
【化23】
【0075】
1つの実施態様、即ち、スキーム1において、式(1)の化合物から式(2)の化合物への変換は、式(1)の化合物と酸化剤である酸とを、C1−C4アルコール、THF、ジオキサン、それらの混合物及びこれらの溶媒と水との混合物のような溶媒中で反応させることによって行う。反応は一般に室温で進行させるが、必要な場合には室温よりも低温または高温で進行させてもよい。反応時間は一般に約1時間−約18時間であり、出発物質の種類及び反応温度に基づいて選択できる。好ましい実施態様では、この変換は、式(1)の化合物をTHF/水の混合物中、約0℃−約5℃で過ヨウ素酸と約3時間反応させることによって得られる。
【0076】
式(2)の化合物から式(3)の化合物への変換は、式(2)の化合物とアルカノイルハライドとをピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、THF、ジオキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、C2−C5アルキルアミド、C3−C20ケトンまたはそれらの混合物のような溶媒中で反応させることによって行う。反応の進行に伴って酸が遊離するので、少なくとも化学量論的量の塩基例えばジイソプロピルエチルアミン、ピリジンまたはトリエチルアミンと共に反応を進行させるのが好ましい。反応は一般に室温よりも低温で進行させるが、必要ならば室温で反応させてもよい。反応時間は一般に約30分−約5時間であり、出発物質の種類及び反応温度に依存して選択できる。好ましい実施態様では、この変換は、アセトン及びトリエチルアミン中の式(3)の化合物を約−10℃から約0℃の範囲の温度でアルカノイルクロリドと約30分間反応させることによって得られる。
【0077】
式(3)の化合物から式(5)の化合物への変換は、式(3)の化合物と式(4)の化合物とヨウ化物塩、例えばアルカリ金属ヨウ化物、アルカリ土類金属ヨウ化物またはヨウ化テトラアルキルアンモニウムとを、水、C2−C5アルキルアミド、C4−C6ジアルコキシアルキル、C1−C4アルコール、C1−C4ハロアルキル、C3−C10ケトンまたはそれらの混合物のような溶媒中で反応させることによって行う。反応の進行に伴って酸が遊離するので、少なくとも化学量論的量の塩基例えばジイソプロピルエチルアミン、ピリジンまたはトリエチルアミンと共に反応を進行させるのが好ましい。式(4)の化合物は市販化合物でもよくまたは当業界で公知の手段によって製造してもよい(Tetrahedron,1980,36(4),539;Chem.Ber.1980,113(5),1898;及びJustus Liebigs Ann.Chem.,1954,590,123)。一般に約0℃−約30℃で、反応温度及び反応体の種類に依存して約1時間−約48時間反応させる。好ましい実施態様では、この変換は、式(3)の化合物と式(4)の化合物とトリエチルアミンとヨウ化ナトリウムとを、2−ブタノンと式(3)の化合物の約0.25重量%〜約10重量%の量で存在する水との中で約24時間反応させることによって得られる。
【0078】
式(5)の化合物から式(6)の化合物への変換は、式(5)の化合物と加水分解剤、例えばアルコキシド塩、チオアルコキシド塩、場合によっては水和したスルフィド塩またはそれらの混合物とを、水、C2−C5アルキルアミド、C4−C6ジアルコキシアルキル、C3−C10ケトンまたはそれらの混合物のような溶媒中で反応させることによって行う。一般に約−40℃から約35℃の範囲の温度で、反応温度及び反応体の種類に依存して約1時間−約12時間反応させる。好ましい実施態様では、この変換は、式(5)の化合物とナトリウムヒドロスルフィド水和物とをDMA中で約0℃−約5℃で約2時間、次いで室温で約2時間反応させることによって得られる。このように形成されたカルボチオ酸塩を塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルホン酸、リン酸またはトリフルオロ酢酸のような酸で酸性化してもよく、または酸性化しないで直接に次段階で使用してもよい。
【0079】
式(6)の化合物から式(7)の化合物への変換は、式(6)の化合物とクロロフルオロメタンとをC2−C5アルキルアミド溶媒例えばDMFまたはDMA中で反応させることによって行う。一般に約−20℃から約30℃の範囲の温度で、反応温度及び反応体の種類に依存して約1時間−約12時間反応させる。カルボチオ酸塩が酸性化されているとき、変換の進行中に酸が遊離されるので、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムのような第二塩基の存在下で反応を進行させる。カルボチオ酸塩が酸性化されていないとき、式(6)の化合物を単離または精製しないでクロロフルオロメタンと反応させることができる。好ましい実施態様では、この変換は、式(6)の化合物とクロロフルオロメタンとをDMA溶液の形態で約0℃で約3時間、次いで室温及び大気圧で約12時間in situ反応させる連続法として行うことができる。
【0080】
スキーム1の1つの実施態様では、式(1)の化合物は商用銘柄のフルメタゾンであり、式(2)の化合物は6α,9α−ジフルオロ−11β,17α−ジヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボン酸であり、式(3)の化合物は6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−(プロピオニルオキシ)アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボン酸であり、式(5)の化合物は17β−(N,N−ジメチルカルバモイル)チオ)カルボニル−6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−17α−プロピオニルオキシ−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエンであり、式(7)の化合物は6α,9α−ジフルオロ−17α−(((フルオロメチル)スルファニル)−カルボニル)−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17α−イルプロピオネートである。これらの化合物のいずれかをパラジウム触媒及び添加剤と、場合によっては還元剤の存在下で、C2−C5アルキルアミド、C4−C6ジアルコキシアルキル、置換または未置換の芳香族炭化水素、C1−C4ハロアルキル、C3−C10ケトンまたはそれらの混合物のような溶媒中で反応させると、商用銘柄のフルメタゾンによって導入されるCl不純物が容易に除去され得る。パラジウム触媒としては、パラジウム金属、炭素に付着させたパラジウム金属、酸性、塩基性もしくは中性アルミナに付着させたパラジウム金属のような場合によっては支持されたパラジウム;テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)のようなパラジウム(0)錯体;酢酸パラジウム(II)または塩化パラジウム(II)のようなパラジウム塩;アリルパラジウム(II)クロリドダイマー、(1,1′−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)−ジクロロパラジウム(II)、ビス(アセタト)ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)及びビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)のようなパラジウム(II)錯体がある。この反応に有用な添加剤は、トリ(アルキル)ホスフィン類、例えばトリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィンなど;トリ(シクロアルキル)ホスフィン類、例えばトリシクロプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンなど;トリ(アリール)ホスフィン類、例えばトリフェニルホスフィン、トリナフチルホスフィンなど;トリ(ヘテロアリール)ホスフィン類、例えばトリ(フリル−2−イル)ホスフィン、トリ(ピリド−3−イル)ホスフィンなど;トリ(アルキル)ホスファイト類、例えばトリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイトなど;トリ(シクロアルキル)−ホスファイト類、例えばトリシクロプロピルホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイトなど;トリ(アリール)ホスファイト類、例えばトリフェニルホスファイト、トリナフチルホスファイトなど;トリ(ヘテロアリール)ホスファイト類、例えばトリ(フリル−2−イル)ホスファイト、トリ(ピリド−3−イル)ホスファイトなどである。この反応に有用な別の添加剤は、二座配位子ホスフィン、例えば1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(dppb)、1,2−ビス(ジフェニル−ホスフィノ)エタン(dppe)、1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン(dppm)、1,2−ビス(ジメチル−ホスフィノ)エタン(dmpe)、1,1′−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)などである。この反応に有用な還元剤は、ジボラン、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(9−BBN)、ジロンギホイルボラン、テキシルボラン、カテコールボラン、ホウ水素化ナトリウム、テトラブチルアンモニウムボロヒドリド、ボラン−4−メチルモルホリン錯体、ボラン−4−エチルモルホリン錯体、ボラン−ジメチルスルフィド錯体、ボラン−トリエチルアミン錯体、ボラン−ピリジン錯体、ボラン−2,6−ルチジン錯体などのボラン類;ジエチルシラン、ジメチルイソプロピルシラン、トリブチルシラン、シクロヘキシルジメチルシラン、ジイソプロピルオクチルシラン、トリイソプロピルシラン、ジメチルエチルシラン、ジメチルオクタデシルシラン、トリエチルシランなどのシラン類;ジエチルスタンナン、ジメチルイソプロピルスタンナン、トリブチルスタンナン、シクロヘキシルジメチルスタンナン、ジイソプロピルオクチルスタンナン、トリイソプロピルスタンナン、ジメチルエチルスタンナン、ジメチルオクタデシルスタンナン、トリエチルスタンナンなどのスタンナン類である。反応は一般に約0℃−約100℃で、反応温度及び還元剤の有無に依存して約10分−約12時間進行させる。
【0081】
フルメタゾンからCl不純物を除去するために有用な反応条件を表1、表2及び表3にまとめる。表1、表2及び表3に記載の各反応に使用された商用銘柄のフルメタゾン中のCl不純物の初期%(モル%(処理前))は約0.7であった。次いで還元剤の存在下で触媒及び添加剤によって処理した後の商用銘柄のフルメタゾン中のCl不純物のモル%(処理後)を測定した。0.7モル%のCl不純物を含有する商用銘柄のフルメタゾンのモル数を基準として触媒、添加剤及び還元剤のモルパーセンテージ(モル%)を計算した。例えば、1モル%のパラジウム触媒という表現は100モルの商用銘柄フルメタゾンあたり1モルのパラジウム触媒が存在することを意味し、2モル%の添加剤という表現は100モルの商用銘柄フルメタゾンあたり2モルの添加剤が存在することを意味し、20モル%の還元剤という表現は100モルの商用銘柄フルメタゾンあたり20モルの還元剤が存在することを意味する。
【0082】
【表1】
【0083】
11モル%の酢酸パラジウム(II)と2モル%の単座配位子添加剤または1モル%の二座配位子添加剤と26モル%のトリエチルシランとを使用し、DMF中、22℃で反応させた。
21モル%の塩化パラジウム(II)と2モル%の単座配位子添加剤または1モル%の二座配位子添加剤と26モル%のトリエチルシランとを使用し、DMF中、22℃で反応させた。
【0084】
【表2】
【0085】
DMF中、22℃で反応させた。
【0086】
【表3】
【0087】
DMF中、22℃で反応させた。
*Cl不純物と未知の不純物とのオーバーラップから算定した値
【0088】
本発明の好ましい実施態様において、パラジウム触媒は商用銘柄フルメタゾンの約0.3モル%−約5モル%で存在し、添加剤は商用銘柄フルメタゾンの約0.8モル%−約15モル%で存在し、還元剤は商用銘柄フルメタゾンの約1モル%−約30モル%で存在する。
【0089】
本発明の特に好ましい実施態様においては、酢酸パラジウム(II)が商用銘柄フルメタゾンの約1モル%で存在し、トリフェニルホスフィンが商用銘柄フルメタゾンの約2モル%で存在し、トリエチルシランが商用銘柄フルメタゾンの約13モル%で存在する。
【0090】
スキーム1の特に好ましい別の実施態様に基づいて本発明を以下に説明する。これらの実施態様は本発明の範囲を限定するものではない。逆に、本発明は特許請求の範囲に包含されるすべての代替、変更及び等価の概念を包含する。従って、以下の実施例は本発明が特に好ましく実行された例である。実施例の目的はいくつかの好ましい実施態様を示すことであり、実施例の記載は本発明の手順及び着想を理解するために最も有効であることが理解されよう。
【0091】
【化24】
【0092】
実施例1
6α,9α−ジフルオロ−11β,17α−ジヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボン酸
DMA(500mL)中の商用銘柄のフルメタゾン(100g,243.6mmol)、酢酸パラジウム(II)(0.552g,2.46mmol)及びトリフェニルホスフィン(1.284g,4.89mmol)の混合物を60℃で30分間撹拌し、15℃に冷却し、水(2.0L)で1時間処理し、0℃に冷却し、2時間撹拌し、濾過すると、固体が得られた。この固体を冷水(2×200mL)で洗浄し、THF(500mL)に溶解した。この溶液を0℃に冷却し、水(250mL)中の工業銘柄(約98%)の過ヨウ素酸(83.3g,365.4mmol)で処理し、3時間撹拌し、水(3.75L)で処理し、室温に加温し、30分間撹拌し、濾過すると、固体が得られた。この固体を洗液のpHが5を上回る値になるまで水(500mL)で洗浄し、真空下に60℃で窒素パージを使用して乾燥させると、96.6g(98%)の所望生成物が得られた。
【0093】
実施例2
6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−(プロピオニルオキシ)アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボン酸
アセトン(1.45L)中の実施例1(95.2g,240mmol)及びトリエチルアミン(55.9g,552mmol)の−15℃溶液を、予め蒸留したプロピオニルクロリド(51.1g,552mmol)で処理し、1時間撹拌し、ジエチルアミン(52.7g,720mmol)で処理し、1時間撹拌し、1MのHCl(1.90L)で処理し、0℃に加温し、1時間撹拌し、濾過した。固体を水(475mL)で洗浄し、真空下に60℃で窒素パージを使用して12時間乾燥させ、3−ペンタノン(459mL)、2−ブタノン(51mL)及び水(5.1mL)を順次に用いて処理した。この混合物を還流まで1時間加熱し、2時間で室温に放冷し、18時間撹拌し、濾過すると、固体が得られた。この固体を3−ペンタノン(100mL)で洗浄し、真空下に60℃で窒素パージを使用して18時間乾燥させると、86.7g(79.8%)の所望生成物が得られた。
【0094】
実施例3
17β−(N,N−(ジメチルカルバモイル)チオ)カルボニル−6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−17α−プロピオニルオキシ−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン
2−ブタノン(2.17L)中の実施例2(86.7g,192mmol)及びN,N−ジメチルチオカルバモイルクロリド(47.5g,384mmol)の室温溶液を、トリエチルアミン(42.7g,422mmol)、無水ヨウ化ナトリウム(28.8g,192mmol)及び水(8.67mL,実施例2の生成物に対して10重量%)を順次に用いて処理し、2時間撹拌し、DMA(694mL)及び水(4.34L)を順次に用いて処理し、0℃に冷却し、2時間撹拌し、濾過すると、固体が得られた。固体を水(500mL)で洗浄し、真空下に60℃で窒素パージを使用して乾燥させると、96.4g(93%)の所望生成物が得られた。
【0095】
実施例4
6α,9α−ジフルオロ−17α−(((フルオロメチル)スルファニル)カルボニル)−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17α−イルプロピオネート(プロピオン酸フルチカゾン)
ジメチルアセトアミド(386mL)中の実施例3(96.4g,179mmol)及びナトリウムヒドロスルフィド水和物(45.3g,808mmol)の0℃溶液を、2時間撹拌し、室温に加温し、2時間撹拌し、−5℃に冷却し、ジメチルアセトアミド(313mL)中のクロロフルオロメタン(92.7g,1.354mol)の溶液でゆっくりと処理し、4時間撹拌し、室温に加温し、18時間撹拌し、炭酸水素ナトリウム(29.9g)の水溶液(1.45L)でゆっくりと処理し、−5℃に冷却し、2時間撹拌し、濾過すると、固体が得られた。固体を水(145mL)及び1−ブタノール(145mL)で順次洗浄し、酢酸エチル(540mL)及び1−ブタノール(2.16L)で処理すると混合物が得られた。混合物を還流まで40分間加熱し、高温のうちに(洗浄しないで)1ミクロン未満のフィルターで濾過した。濾液を室温に放冷しながら撹拌し、8時間撹拌し、濾過すると固体が得られた。この固体を1−ブタノール(145mL)で洗浄し、1−ブタノール(2.70L)から再結晶させ、真空下に60℃で窒素パージを使用して乾燥させると、62.7g(70%)の所望生成物が得られた。
【0096】
実施例5
17β−(N,N−(ジメチルカルバモイル)チオ)カルボニル−6α,9α −ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−17α−アセチルオキシ−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン
2−ブタノン(122mL)中の6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−(アセチルオキシ)アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボン酸(4.85g,11.1mmol)及びN,N−ジメチルチオカルバモイルクロリド(2.73g,22.2mmol)の室温溶液を、トリエチルアミン(3.4mL,24.4mmol)、無水ヨウ化ナトリウム(1.67g,11.1mmol)及び水(0.5mL,カルボン酸に対して10重量%)で順次処理し、12時間撹拌し、DMA(40mL)及び水(242mL)で順次処理し、0℃に冷却し、1時間撹拌し、濾過すると、固体が得られた。固体を水洗し、真空下に60℃で窒素パージを使用して乾燥させると、5.81g(90%)の所望生成物が得られた。
【0097】
実施例6
6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−17α−(アセチルオキシ)−16α−メチル−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−チオカルボン酸
DMA(50mL)中の実施例5(5.0g,9.51mmol)の−15℃溶液にナトリウムチオメトキシド(0.73g,10.46mmol)を一度に加えて処理し、4.5時間撹拌し、0℃に加温し、低温の1MのHCl(100mL)で処理し、1時間撹拌し、濾過した。固体を洗液のpHが6以上の値になるまで水洗し、真空下に60℃で窒素パージを使用して乾燥させると、4.32g(93%)の所望生成物が得られた。
【0098】
実施例7
17β−((N,N−ジメチルカルバモイル)チオカルボニル)−9α−フルオロ−11β−ヒドロキシ−17α−(プロピオニルオキシ)−16α−メチルアンドロスタ−1,4−ジエン−3−オン
ジクロロメタン(130mL)中の9α−フルオロ−11β−ヒドロキシ−17α−(プロピオニルオキシ)−16α−メチル−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボン酸(10.0g,23.04mmol)及びN,N−ジメチルチオカルバモイルクロリド(5.67g,46.08mmol)の室温溶液を、トリエチルアミン(6.5mL,46.08mmol)及び無水ヨウ化ナトリウム(3.45g,23.04mmol)を順次に用いて処理し、12時間撹拌し、ジクロロメタン(25mL)と共にケイソウ土(セライトRTM)で濾過した。濾液を減圧下で濃縮した。濃縮物をDMA(150mL)及び水(190mL)で順次処理し、0℃に冷却し、1時間撹拌した。得られた固体を濾過によって収集し、水洗し、真空下に60℃で窒素パージを使用して乾燥させると、10.2g(85%)の所望生成物が得られた。
【0099】
実施例8
9α−フルオロ−11β−ヒドロキシ−17α−(プロピオニルオキシ)−16α−メチル−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−チオカルボン酸
DMA(50mL)中の実施例7(5.0g,9.58mmol)の−15℃溶液にナトリウムチオメトキシド(0.74g,10.54mmol)を一度に加えて処理し、2時間撹拌し、0℃に加温し、低温の1MのHCl(100mL)で処理し、0℃で1時間撹拌し、濾過した。得られた固体を洗液のpHが6以上の値になるまで水洗し、真空下に60℃で窒素パージを使用して乾燥させると、4.10g(95%)の所望生成物が得られた。
【0100】
本発明が上記実施例に限定されないこと、本発明がその本質的特徴から逸脱することなく別の特定形態で実施できることは当業者に明らかであろう。従って、実施例は特許請求の範囲に基づく非限定的代表例であること、また、特許請求の範囲に記載の本発明の要旨及び範囲に等価であると見做されるすべての変更は本発明の範囲に包含されることを理解されたい。
Claims (7)
- 式(7):
の化合物の製造方法であって、
(a)式(3):
の化合物とを、2−ブタノン及び水とを含んでおり、該水が式(3)の化合物の約0.25重量%〜約10重量%の量で存在している溶媒中で反応させて式(5):
(b)段階(a)の生成物とNaSHとを反応させて式(6):
(c)段階(b)の生成物と酸とを反応させる段階と、
(d)段階(c)の生成物とクロロフルオロメタンとを場合によっては第二塩基の存在下で反応させる段階と、
(e)場合によっては段階(d)の生成物を脱保護する段階と、
から成る方法。 - 第一塩基が炭酸塩、アミンまたはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- ヨウ化物塩が、アルカリ金属ヨウ化物、アルカリ土類金属ヨウ化物またはヨウ化テトラアルキルアンモニウムであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 第二塩基が炭酸塩であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 式(7):
の化合物の製造方法であって、
(a)式(2):
(b)式(3):
の化合物とを、2−ブタノン及び水とを含んでおり、該水が式(3)の化合物の約0.25重量%〜約10重量%の量で存在している溶媒中で反応させて式(5):
(c)段階(b)の生成物とNaSHとを反応させて式(6):
(d)段階(c)の生成物と酸とを反応させる段階と、
(e)段階(d)の生成物とクロロフルオロメタンとを場合によっては第二塩基の存在下で反応させる段階と、
(f)場合によっては段階(e)の生成物を脱保護する段階と、
から成る方法。 - 式(7):
の化合物の製造方法であって、
(a)式(3):
の化合物とを、2−ブタノン及び水とを含んでおり、該水が式(3)の化合物の約0.25重量%〜約10重量%の量で存在している溶媒中で反応させて式(5):
(b)段階(a)の生成物とNaSHとを反応させて式(6):
(c)段階(b)の生成物とクロロフルオロメタンとを反応させる段階と、
(d)場合によっては段階(c)を脱保護する段階と、
から成る方法。 - 式(7):
の化合物の製造方法であって、
(a)式(2):
(b)式(3):
の化合物とを、2−ブタノン及び水とを含んでおり、該水が式(3)の化合物の約0.25重量%〜約10重量%の量で存在している溶媒中で反応させて式(5):
(c)段階(b)の生成物とNaSHとを反応させて式(6):
(d)段階(c)の生成物とクロロフルオロメタンとを反応させる段階と、
(e)場合によっては段階(d)の生成物を脱保護する段階と、
から成る方法。
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