JP3983685B2 - 脂肪族共役ジエンゴム系グラフト共重合体の製造方法 - Google Patents

脂肪族共役ジエンゴム系グラフト共重合体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、脂肪族共役ジエン系ゴム重合体およびそれを用いたグラフト共重合体の新規な製造方法に関するものである
【0002】
【従来の技術】
ブタジエンを主成分とするゴム(以下、ブタジエンゴムと略する)にメチルメタクリレ−ト、スチレン、アクリルニトリル等をグラフト重合して得られるブタジエンゴム系グラフト共重合体、いわゆるMBS樹脂は、塩化ビニル系樹脂等に樹脂の透明性を損わずに衝撃強度を向上させる目的で用いられることが知られている。一般に、ブタジエンゴム系グラフト共重合体は、乳化重合法により製造されている。
【0003】
ブタジエンゴム系グラフト共重合体の透明性および耐衝撃性の両者を改良するために、ブタジエンゴムを、ブタジエン/スチレン系共重合体であり、スチレン含有量が共重合組成の平均含有量よりも多い最内層を含む多層構造を有するゴムとした、ブタジエンゴム系グラフト共重合体を製造する方法(特許文献1)が提案されている。その際、そのブタジエンゴムラテックスの平均粒子径は0.08μmであり、その重合時間は19時間を要していた。
【0004】
一般に、ブタジエン系グラフト共重合体は、そのゴムラテックスの粒子径が大きいほど、耐衝撃性が優れていることも知られている。しかしながら、乳化重合法により大粒径のゴムラテックスを製造する場合、重合系内で生成される凝析物が増大すること、および重合時間が増大して重合生産性が低下することが知られている。
【0005】
大粒径のゴムラテックスを短時間で得る方法として、重合開始前に少量の乳化剤とシアン化ビニル単量体を使用する、あるいは少量の乳化剤とアセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリルなどの有機溶媒を重合転化率20重量%以下時に使用することにより、重合反応を加速させ、さらに、重合転化率が10〜70重量%に達した時点から乳化剤を連続的に添加して、大粒径ゴムラテックスを得る技術(特許文献2および特許文献3)がある。この技術は粒子の生長に伴い乳化剤による粒子表面の被覆率が低下し、ゴムラテックスが不安定となることにより、粒子同士が融着合一する現象を利用し、乳化剤の連続的な添加により粒径肥大化を調節する方法である。しかしながら、これらのゴムラテックスを製造する技術でも、粒径が0.3μm程度のゴムラテックスを得るためには、30時間程度の長い時間がかかり、重合生産性は低く、凝析物も多い。
【0006】
重合反応途中に電解質を添加し、粒径を肥大化し、大粒径のゴムラテックスを6〜14時間で重合する技術(特許文献4および特許文献5)がある。しかし、該技術においても、重合凝析物が多く、凝析物を除去する必要があるため、重合生産性が低い。
【0007】
【特許文献1】
特開昭59−12910号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平5−17508号公報
【0009】
【特許文献3】
特開平8−27227号公報
【0010】
【特許文献4】
特開2000−319329号公報
【0011】
【特許文献5】
特開平−8−225623号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
重合反応途中に電解質を添加し、短時間で大粒径のゴムラテックスを製造する方法において、重合開始時に添加される(水/単量体)比を小さくした場合、重合の進行に伴い、ブタジエンゴムのラテックス粘度が増大するため、不安定となり凝析物が多く生成する。従って、大粒径の共役ジエン系ゴムのラテックスを短時間で安定に製造する方法が求められている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、芳香族ビニル系化合物5〜35重量%、脂肪族共役ジエン95〜65重量%、およびこれらと共重合可能な他の単量体0〜20重量%からなる単量体混合物(A)から得られる脂肪族共役ジエン系ゴム重合体であり、その製造に当たって、単量体混合物(A)を少なくとも2段以上に分割して添加し、1段目として、(A)の芳香族ビニル系化合物含有率より高い芳香族ビニル系化合物含有率を有し、かつ脂肪族共役ジエンを55重量%以上含有する単量体混合物(A−1)を、単量体混合物(A)の5〜95重量%の割合で重合後、2段目として、(A)の脂肪族共役ジエン含有率より高い脂肪族共役ジエン含有率を有する単量体混合物(A−2)を、(A)の95〜5重量%の割合で重合させ、得られた脂肪族共役ジエン系ゴム重合体(A)40〜80重量部(固形分)の存在下に、芳香族ビニル系化合物20〜80重量%、メタクリル酸エステル80〜20重量%、およびこれらと共重合可能な他のビニル単量体0〜20重量%からなる単量体混合物(B)60〜20重量部[(A)と(B)を合わせて100重量部]を重合することを特徴とする脂肪族共役ジエンゴム系グラフト共重合体の製造方法であって、
1)(A)100重量部に対し、重合開始時に添加する水を70〜130重量部とし、
2)1段目の単量体混合物(A−1)の重合において、(A−1)を100重量%とした場合の重合転化率が25〜45重量%の期間に乳化剤を添加し、次いで電解質を添加する、
ことを特徴とするジエンゴム系グラフト共重合体の製造方法である。
上記(A)中の芳香族ビニル系化合物がスチレンであり、かつ、脂肪族共役ジエンがブタジエンであるのが好ましい。
また、1段目の単量体混合物(A−1)を100重量%とした場合の重合転化率が25〜45重量%の期間に添加する乳化剤量は、(A)100重量部に対して0.1〜2重量部が好ましい。
あるいは、1段目の単量体混合物(A−1)を100重量%とした場合の重合転化率が25〜45重量%の期間に添加する電解質量が、(A)100重量部に対して0.1〜5重量部であることもできる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の脂肪族共役ジエンゴム系グラフト共重合体中の脂肪族共役ジエン系ゴム重合体(以下、脂肪族共役ジエンゴムと略す)は、5〜35重量%、好ましくは15〜30重量%の芳香族ビニル系化合物、95〜65重量%、好ましくは85〜70重量%の脂肪族共役ジエン、0〜20重量%のこれらと共重合可能な他のビニル単量体からなる単量体混合物(A)を重合することにより得られる。
【0015】
本発明で使用される芳香族ビニル系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレンなど、あるいは、ビニルトルエン、クロルスチレンなどの芳香族ビニル系化合物の核置換誘導体があげられるが、屈折率の調整による透明性の面でスチレンが好ましい。脂肪族共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどが挙げられるが、特に1,3−ブタジエンが、ガラス転移温度が低いポリマーが得られ、衝撃強度の面で好ましい。これらと共重合可能な他のビニル単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル、、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのメタクリル酸エステル、シアン化ビニル、およびアリル化ビニル、ジビニルベンゼン、エチレングリコ−ルジメタクリレ−トなどの架橋剤、などが挙げられる。
【0016】
本発明の脂肪族共役ジエンゴムの製造においては、単量体混合物(A)を少なくとも2段階以上に分割して添加する。1段目の単量体混合物として、単量体混合物(A)の芳香族ビニル系化合物含有率より高い芳香族ビニル系化合物含有率を有し、かつ脂肪族共役ジエンを55重量%以上含有する単量体混合物(A−1)を、単量体混合物(A)の5〜95重量%、好ましくは50〜90重量%の割合で重合を行う。その後、1段目の単量体混合物(A−1)を100重量%とした場合の重合転化率が80〜100重量%、好ましくは90重量%以上に達するまで重合した後に、2段目以降の単量体混合物(A−2)を、単量体混合物(A)の5〜95重量%、好ましくは10〜50重量%の比率でを重合させる。2段目以降の単量体混合物(A−2)は、単量体混合物(A)の脂肪族共役ジエン含有率より高い脂肪族共役ジエン含有率を有する単量体混合物であり、脂肪族共役ジエン単体でも良い。なお、この重合は、乳化重合法により重合することが好ましく、単量体混合物の添加方法は断続添加、連続添加等のいずれでもよい。
【0017】
本発明で使用される乳化剤は、通常の乳化重合に使用されるものであり、オレイン酸ナトリウムなどの脂肪酸アルカリ塩、不均化ロジン酸カリウムなどの樹脂酸アルカリ塩、ラウリル硫酸ナトリウムやドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられるが、オレイン酸ナトリウムおよび不均化ロジン酸カリウムが好ましい。
【0018】
脂肪族共役ジエンゴム(A)の重合開始前に添加する乳化剤量は、脂肪族共役ジエンゴム系グラフト重合体の全単量体混合物(A)+(B)を100重量部とした時、0.5〜4重量部が好ましい。
【0019】
本発明の脂肪族共役ジエンゴムの製造においては、脂肪族共役ジエンゴムの1段目単量体(A−1)の重合中にゴムラテックス粒子を肥大することが好ましい。1段目単量体(A−1)の重合中にゴムラテックス粒子の肥大化を行わない場合、重合系の(水/単量体)比が小さい系では、ラテックス粘度が高くなり、伝熱係数が変化し、重合熱を除熱する際に支障をきたすため好ましくない。
【0020】
脂肪族共役ジエンゴムの1段目単量体(A−1)の重合中でのゴムラテックス粒子の肥大化では、乳化剤および電解質のそれぞれの添加時期および添加量が重要である。
【0021】
脂肪族共役ジエン系ゴムの1段目単量体混合物(A−1)の重合における乳化剤の添加時期は、1段目単量体混合物(A−1)を100重量%とした時の重合転化率が25〜50重量%であり、好ましくは30〜45重量%である。乳化剤の添加時期が、重合転化率25重量%未満では、粒子生成の時期に相当し少量の電解質の添加でも凝析物の生成が増加するため好ましくなく、重合転化率45重量%を超えると、重合系中のモノマー油滴が消失し粒子同士の合一が発生しやすい時期に相当し凝析物の生成が増加するため好ましくない。
【0022】
脂肪族共役ジエンゴムの1段目単量体混合物(A−1)の重合における乳化剤の添加量は、単量体混合物(A)100重量部に対し、0.1〜2重量部であり、0.5〜1.5重量部である。乳化剤の添加量が、0.1重量部未満では、安定化効果が低く、凝析物の生成が増加するため好ましくなく、2重量部を超えると、ラテックスの気液海面で気泡が発生しそれに起点して凝析物の生成が増加するため好ましくない。
【0023】
本発明で使用される電解質としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、しゅう酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸などのカルボキシル基を含む炭素数が6以下の酸またはその塩、または硫酸ナトリウムなどを単独あるいは2種以上組み合わせた混合物である。なかでも、凝析物を発生させずに、ゴム粒子を肥大できる点から、硫酸ナトリウムが好ましい。
【0024】
脂肪族共役ジエンゴムの1段目単量体(A−1)の重合における電解質の添加時期は、前記乳化剤添加開始から30分間以内であり、好ましくは5〜30分間である。電解質の添加時期が、乳化剤添加開始から5分未満では、重合系中に乳化剤が均等に拡散されず、析出物の生成が増加するため好ましくなく、乳化剤添加開始から30分を超えると、重合速度の増大により温度制御ができなくなるため好ましくない。
【0025】
脂肪族共役ジエンゴムの1段目単量体混合物(A−1)の重合における電解質の添加量は、1段目単量体混合物(A−1)を100重量部とした場合0.1〜5重量%であり、好ましくは0.3〜4重量%である。硫酸ナトリウムの添加量が、0.1重量%未満では、肥大化効果が少なくなるため好ましくなく、5重量%を超えると、ゴム粒子径は大きくなるが、凝析物の生成が増加するため好ましくない。
【0026】
単量体混合物(A)の重合後期に重合温度の昇温を行い、さらに、ナッシュポンプ等を使用して減圧下で未反応単量体、特に未反応ブタジエンの除去を行うことは、最終的に得られる脂肪族共役ジエンゴム系グラフト共重合体を塩化ビニル系樹脂に配合した際の透明性や耐衝撃性を改善する点で好ましい。
【0027】
脂肪族共役ジエンゴムの単量体混合物(A)の重合における昇温開始時期は、単量体混合物(A)を100重量%とした時の重合転化率が70%以上に到達した時期(以降、重合後期と称する)であり、重合転化率を97重量%以上になるまで重合を進行させる。この時の重合温度は(重合後期以前の重合温度+5℃)〜80℃であり、昇温方法は段階的に、あるいは一挙に昇温する方法でも良い。
【0028】
多層ブタジエンゴムの単量体混合物(A)の重合における未反応単量体の減圧下での除去を開始する時期は、単量体混合物(A)を100重量%とした時の重合転化率が97重量%以上に到達した時点であり、ナッシュポンプ等のポンプを用いて強制回収を行う。強制回収開始時期が、重合転化率97重量%未満では、透明性や耐衝撃性が低下するため好ましくない。
【0029】
本発明では、未反応ブタジエン単量体が単量体混合物(A)から得られる重合体の固形分濃度に対して2.0重量%以下、望ましくは1.0重量%以下になるまで、強制回収を継続する。未反応ブタジエン単量体量が、単量体混合物(A)から得られる重合体のの固形分濃度に対して2.0重量%を超えると、透明性や耐衝撃性が低下するため好ましくない。
【0030】
本発明の脂肪族共役ジエンゴム系グラフト共重合体のグラフト重合は、上記の脂肪族共役ジエンゴム(A)ラテックスの固形分として40〜80重量部、好ましくは50〜75重量部の存在下に、単量体混合物(B)60〜20重量部、好ましくは50〜25重量部[(A)と(B)合わせて100重量部]を添加して、乳化重合法によりグラフト重合を行う。前記単量体混合物(B)は、20〜80重量%、好ましくは40〜60重量%の芳香族ビニル系化合物、80〜20重量%、好ましくは60〜40重量%のメタクリル酸エステル、および0〜20重量%のこれらと共重合可能な他のビニル単量体からなる単量体混合物である。芳香族ビニル系化合物、メタクリル酸エステル、およびこれらと共重合可能な他のビニル単量体からなる単量体としては、脂肪族共役ジエンゴムの重合で例示したものと同様のものが使用できる。特に、芳香族ビニル系化合物としてはスチレン、アルキルメタクリレ−トとしてはメタクリル酸メチルが好ましい。
【0031】
脂肪族共役ジエンゴム(A)の存在下で重合する際の単量体混合物(B)の添加方法としては、多段添加、一括添加、連続追加法等のいずれの方法でも良く、それらの組合せでも良い。単量体混合物(B)としては、メタクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物(B−1)と芳香族ビニル系化合物を主成分とする単量体混合物(B−2)に分割して添加して重合するのが好ましい。特に、メタクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物(B−1)を先に添加することはラテックスの安定性の面から好ましい。
【0032】
また、グラフト重合するにあたっては通常のグラフト重合でもよいが、グラフト重合中に、さらに、電解質を添加してラテックス粒子を凝集肥大する方法等を採用しても良い。最も好ましい例は、重量平均粒子径が0.1mμ以上の脂肪族共役ジエンゴムラテックスに、まず電解質を添加し、次いでメタクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物(B−1)を添加しグラフト重合を行った後、芳香族ビニル系化合物を主成分とする単量体混合物(B−2)を添加しグラフト重合させるものである。
【0033】
なお、脂肪族共役ジエンゴム及び脂肪族共役ジエンゴム系グラフト共重合体の単量体組成は、脂肪族共役ジエンゴム系グラフト共重合体が塩化ビニル系樹脂等と混合した際に、必要に応じて透明性を損なわないになるよう考慮しても良い。すなわち、脂肪族共役ジエンゴム系グラフト共重合体の屈折率を、塩化ビニル系樹脂等の屈折率に近づけるよう考慮しても良い。
【0034】
本発明に用いる重合開始剤としては、過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパ−オキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイドなどの過酸化物、エチレンジアミンテトラ酢酸・2Na塩/硫酸第一鉄及びソジウムホルムアルデヒドスルハキシレ−トからなるレドックス系開始剤を用いることができる。
【0035】
本発明で得られる多層ブタジエンゴム系グラフト共重合体は、通常の電解質または酸の添加による塩析、凝析したのち固液分離したものを乾燥させたり、熱風中に噴霧して乾燥させることにより、粉体として得られる。
【0036】
【実施例】
以下、実施例に基づき、本発明を説明する。なお、本発明は実施例に記載されたものに限られるものではない。以下、「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を示す。
【0037】
(重合転化率の測定)
重合転化率は次の(式1)を用いて、算出した。
【0038】
【式1】
Figure 0003983685
【0039】
なお、式2の中、PWは重合機に添加した純水の重量部、Rawは添加した副原料の重量部、Bdはブタジエン単量体の重量部、およびStはスチレン単量体の重量部である。また、SCはラテックスの固形分濃度であり、下記の方法により測定した。
【0040】
(ラテックスの固形分濃度の測定)
重合機から、ラテックス約1gをあらかじめ秤量した軟膏缶(重量:A)にサンプリングする。常温、常圧下でラテックスが発泡しなくなるまで放置し、軟膏缶とラテックスを秤量する(重量:B)。130℃に保った熱風乾燥機に入れ、1時間乾燥後、秤量する(重量:C)。ラテックス固形分濃度の値は、(式2)によって求められる。
【0041】
【式2】
Figure 0003983685
【0042】
(平均粒子径の測定)
多層ブタジエン系ゴムラテックス及びグラフト重合体ラテックスの体積平均粒子径は、マイクロトラック粒度分析計(日機装(株)製、Model9260UPA)を用いて測定した。
【0043】
(ラテックス粘度)
ラテックス粘度は、B型粘度計(東京計器製、DVL−B)を用いて、測定した。
【0044】
(未反応ブタジエン量)
未反応ブタジエン量は、多層ブタジエン系ゴムラテックスをテトラヒドロフランに溶解させ、シクロヘキサンを内部標準として、ガスクロマトグラフ(島津製作所(株)製、GC−14)を用いて測定した。
【0045】
(凝析物の割合の測定)
凝析物は、重合機中の内壁やペラ等への付着物およびラテックス中の浮遊物を採取、秤量して仕込み単量体全量に対する比率を算出した。
【0046】
(IZOD衝撃試験)
実施例1で作製したIZOD衝撃テスト用ピ−ス(12.7mm×63.5mm×厚さ6mm)を用いて、JIS K−7110に準拠し、0℃にてノッチ有りIZOD衝撃強度を測定した。
【0047】
(光線透過率および濁度の測定)
実施例1で作製した透明板ピ−ス(30mm×40mm×厚さ5mm)の光線透過率および濁度は、JIS K−6714に準拠して測定した。
【0048】
(実施例1)
水110部、オレイン酸ナトリウム1.5部、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)0.0001部、エチレンジアミンテトラ酢酸・2Na塩0.0014部、リン酸3カリ0.4部、ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ナトリウム0.017部、スチレン23部、ブタジエン46.5部、ジビニルベンゼン1.0部、p−メンタンハイドロパ−オキサイド0.04部を脱酸素された攪拌機付き100L耐圧重合機に仕込み、50℃で重合反応を開始した。
重合開始後3時間目(1段目単量体を100重量%にした時の重合転化率:32.1%)に、乳化剤であるオレイン酸ナトリウム0.8部を添加し、その10分後に電解質である硫酸ナトリウム0.3部を添加し、レドックス開始剤の一部を逐次添加し、重合開始から9時間重合した。
【0049】
その後、ブタジエン30部、p−メンタンハイドロパ−オキサイド0.01部を添加し、2段目の重合としてブタジエンの重合を開始し、ブタジエンを添加した2時間後に重合温度を60℃に昇温し、更に3時間重合した。得られた多層ブタジエンゴムラテックスの重量平均粒子径は0.110μmであり、ラテックス粘度は73cpsであり、多層ブタジエン系ゴム重合体の全単量体に対して重合転化率が97.2%であった。凝析物の割合は、0.2重量%であった。
得られた多層ブタジエンゴムラテックスに対して、重合機の内温を60℃のままで、ナッシュポンプを用いて未反応ブタジエン単量体の除去を行い、重合機内圧が244mmHgに到達するまで継続した。減圧下での未反応ブタジエン単量体の除去操作の終了後、多層ブタジエンゴムラテックス中の未反応ブタジエン量は、多層ブタジエン系ゴム重合体の全単量体を100重量%とした場合0.7重量%であった。
【0050】
グラフト重合は、60℃において、未反応ブタジエン単量体の除去操作を行った多層ブタジエンゴムラテックス159部(固形分75部)に水15部、硫酸第一鉄(FeSO・7HO)0.0001部、エチレンジアミンテトラ酢酸・2Na塩0.0012部、ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ナトリウム0.06部、電解質である硫酸ナトリウム0.63部を添加して、スチレン1.09部、メタクリル酸メチル12.46部とクメンハイドロパ−オキサイド0.1部の混合物を2時間にわたって連続添加し、更に1時間重合を続けた。次いで、スチレン11.45部とクメンハイドロパ−オキサイド0.1部の混合物を2時間にわたって連続添加し、更に1時間重合を続け重合を終了させ、多層ブタジエンゴム系グラフト重合体ラテックスを得た。多層ブタジエンゴム系グラフト重合体ラテックスの固形分濃度は48.1%であり、重量平均粒子径が0.149μmである、。重合後の凝析物は、全単量体100重量%に対して0.15重量%であった。
【0051】
得られた多層ブタジエンゴム系グラフト重合体ラテックス100重量部に、10%塩酸1部を添加して酸析し、固液分離した後、乾燥して白色粉末を得た。
得られた多層ブタジエンゴム系グラフト重合体粉末10部を、オクチル錫メルカプト安定剤1部、グリセリンリシノレ−ト0.8部、モンタン酸エステル0.2部を含む塩化ビニル樹脂(平均重合度700)93部に混合し、2本ロール(日本ロール製、8インチミキシングロール)を用いて160℃にて8分間混練りしてシートを作製した。その後、熱プレス機(神籐金属工業所製、37トンプレス)を用いて、190℃にて100kgf/cmで15分間加圧して、IZOD衝撃テスト用ピ−ス(12.7mm×63.5mm×厚さ6mm)および透明板ピ−ス(30mm×40mm×厚さ5mm)を作製した。
【0052】
(実施例2)
多層ブタジエン系ゴム重合体の一段目単量体混合物の添加時期を重合開始4時間30分目(1段目単量体を100重量%にした時の重合転化率:41.0%)とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、多層ブタジエンゴム系グラフト共重合体ラテックスを得た。多層ブタジエンゴムラテックスの重量平均粒子径は0.115μmであり、そのラテックス粘度は53cpsであり、多層ブタジエン系ゴム重合体の全単量体を100重量%とした場合96.8%であった。また、凝析物の割合は、0.2重量%であった。また、減圧下での未反応単量体の除去操作後の未反応ブタジエン量は、多層ブタジエン系ゴム重合体の全単量体を100重量%とした場合0.7重量%であった。
グラフト重合後の多層ブタジエンゴム系グラフト重合体ラテックスの固形分濃度は47.9重量%であり、ラテックス重量平均粒子径が0.158μmであった。グラフト重合後の重合凝析物は、全単量体に対し0.20重量%であった。
【0053】
(実施例3)
水110部、オレイン酸ナトリウム1.5部、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)0.0001部、エチレンジアミンテトラ酢酸・2Na塩0.0014部、リン酸3カリ0.4部、ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ナトリウム0.017部、スチレン23部、ブタジエン46.5部、ジビニルベンゼン1.0部、p−メンタンハイドロパ−オキサイド0.04部を脱酸素された攪拌機付き3L耐圧重合機に仕込み、50℃で重合反応を開始した。重合開始後4時間30分目(1段目単量体を100重量%にした時の重合転化率:41.5%)に、乳化剤であるオレイン酸ナトリウム0.8部を添加し、その10分後に肥大化剤である硫酸ナトリウム0.3部を添加し、レドックス開始剤の一部を逐次添加し、重合開始から9時間重合した。
【0054】
その後、ブタジエン30部、p−メンタンハイドロパ−オキサイド0.01部を添加し、2段目の重合としてブタジエンの重合を開始し、ブタジエンを添加した2時間後に重合温度を60℃に昇温し、更に3時間重合させることにより、多層ブタジエン系ゴム重合体の全単量体に対して重合転化率が97.2%で、重量平均粒子径が0.118μmのゴムラテックスを得た。そのラテックス粘度は44cpsであり、多層ブタジエン系ゴム重合体の重合終了後の凝析物は、多層ブタジエン系ゴム単量体100重量%に対して0.10重量%であった。
【0055】
(比較例1)
水200部(水/単量体比=200/100)、オレイン酸ナトリウム1.5部、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)0.0001部、エチレンジアミンテトラ酢酸・2Na塩0.0014部、リン酸3カリ0.4部、ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ナトリウム0.017部、スチレン23部、ブタジエン46.5部、ジビニルベンゼン1.0部、p−メンタンハイドロパ−オキサイド0.04部を脱酸素された攪拌機付き3L耐圧重合機に仕込み、50℃で重合反応を開始し、12時間重合した。
【0056】
その後、ブタジエン30部、p−メンタンハイドロパ−オキサイド0.01部を添加し、更に7時間重合させることにより、多層ブタジエン系ゴム重合体の全単量体に対して重合転化率が98.2%で、重量平均粒子径が0.076μmのゴムラテックスを得た。そのラテックス粘度は13cpsであり、多層ブタジエン系ゴム重合体ラテックスの重合後の凝析物量は多層ブタジエン系ゴム重合体の単量体を100重量%として0.08重量%であった。
【0057】
(比較例2)
比較例1の水部数を130部(水/単量体比=130/100)に変更した以外は、比較例1と同様の操作により、多層ブタジエン系ゴム重合体の重合を行った。多層ブタジエン系ゴム重合体の全単量体に対して重合転化率が92.2%で、重量平均粒子径が0.073μmの多層ブタジエン系ゴム重合体ラテックスを得た。そのラテックス粘度は525cpsであり、多層ブタジエン系ゴム重合体ラテックスの重合後の凝析物量は多層ゴム単量体を100重量%として1.40重量%であった。
【0058】
(比較例3)
比較例1の水部数を110部(水/単量体比=110/100)に変更した以外は、比較例1と同様の操作により、多層ブタジエン系ゴム重合体の重合を行った。多層ブタジエン系ゴム重合体の全単量体に対して重合転化率が93.2%で、重量平均粒子径が0.080μmの多層ブタジエン系ゴム重合体ラテックスを得た。そのラテックス粘度は723cpsであり、多層ブタジエン系ゴム重合体ラテックスの重合後の凝析物は多層ゴム単量体を100重量%として4.0重量%であった。
【0059】
(比較例4)
水200部(水/単量体比=200/100)、オレイン酸ナトリウム1.5部、硫酸第一鉄(FeSO・7HO)0.0001部、エチレンジアミンテトラ酢酸・2Na塩0.0014部、リン酸3カリ0.4部、ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ナトリウム0.017部、スチレン23部、ブタジエン46.5部、ジビニルベンゼン1.0部、p−メンタンハイドロパ−オキサイド0.04部を脱酸素された攪拌機付き100L耐圧重合機に仕込み、50℃で重合反応を開始し、12時間重合した。
【0060】
その後、2段目の重合として、ブタジエン30部、p−メンタンハイドロパ−オキサイド0.01部を添加し、更に7時間重合させることにより、多層ブタジエン系ゴム重合体ラテックスを得た。得られた多層ブタジエン系ゴム重合体ラテックスの重量平均粒子径は0.072μmであり、ラテックス粘度は18cpsであった。凝析物の割合は、0.4重量%であった。未反応ブタジエン量は、、多層ブタジエン系ゴム重合体の全単量体を100重量%とした場合1.0重量%であった。
得られた多層ブタジエン系ゴム重合体ラテックス210部(固形分75部)に、60℃のままで、水60部、硫酸第一鉄、(FeSO4・7H2O)0.0001部、エチレンジアミンテトラ酢酸・2Na塩0.0012部、ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ナトリウム0.06部、肥大化剤である硫酸ナトリウム1.3部を添加した後、スチレン1.09部、メチルメタクリレート12.46部とクメンハイドロパ−オキサイド0.1部の混合物を2時間にわたって連続添加し、更に1時間重合を続けた。次いで、スチレン11.45部とクメンハイドロパ−オキサイド0.1部の混合物を2時間にわたって連続添加し、更に1時間重合を続け重合を終了させ、多層ブタジエンゴム系グラフト重合体ラテックスを得た。多層ブタジエンゴム系グラフト重合体ラテックスの固形分濃度は32.2%でああり、重量平均粒子径が0.157μmであった。多層ブタジエン系ゴム重合体の全単量体に対して重合転化率が98.4%であり、重合後の凝析物は全単量体100重量%に対して0.18重量%であった。
多層ブタジエン系ゴムの重合およびそれへのグラフト重合の全重合時間は、25時間であった。
【0061】
(比較例5)
実施例1の乳化剤添加時期を、重合開始後2時間20分目(1段目単量体を100重量%にした時の重合転化率:18.0%)にした以外は、実施例1と同様の操作により、多層ブタジエン系ゴム重合体の重合を行った。得られた多層ブタジエンゴムラテックスの重量平均粒子径が0.11μmであり、ラテックス粘度は50cpsであった。凝析物の割合は、0.4重量%であった。
【0062】
(比較例6)
実施例1の乳化剤添加時期を、重合開始後5時間40分目(1段目単量体を100重量%にした時の重合転化率:55.0%)にした以外は、実施例1と同様の操作により、多層ブタジエン系ゴム重合体の重合を行った。得られた多層ブタジエン系ゴム重合体の重量平均粒子径は0.11μmであり、ラテックス粘度は60cpsであった。凝析物の割合は、0.4重量%であった。
【0063】
(比較例7)
多層ブタジエンゴムの重合において重合後期の重合温度を昇温せずに50℃に維持したこと以外は、実施例1と同様の操作により、多層ブタジエン系ゴムの重合を行った。実施例1と同様の操作により、多層ブタジエン系ゴム重合体の重合を行った。多層ブタジエン系ゴム重合体の全単量体に対して重合転化率が88.0%であり、多層ブタジエン系ゴム重合体ラテックスの重量平均粒子径は0.10μmであり、ラテックス粘度は50cpsであった。未反応ブタジエン量は多層ブタジエン系ゴム重合体の全単量体を100重量%とした場合0.2重量%であった。
【0064】
(比較例8)
多層ブタジエンゴムの重合において減圧下での未反応単量体の除去操作を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の操作により、多層ブタジエン系ゴムの重合を行った。実施例1と同様の操作により、多層ブタジエン系ゴム重合体の重合を行った。多層ブタジエン系ゴム重合体の全単量体に対して重合転化率が94.0%であり、多層ブタジエン系ゴム重合体ラテックスの重量平均粒子径が0.10μmであり、ラテックス粘度は80cpsであった。未反応ブタジエン量は多層ブタジエン系ゴム重合体の全単量体を100重量%とした場合0.2重量%であった。
【0065】
(比較例9)
多層ブタジエンゴムの重合において重合後期の重合温度を昇温せずに50℃に維持したおよび減圧下での未反応単量体の除去操作を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の操作により、多層ブタジエンゴムの重合およびグラフト重合を実施して、多層ブタジエンゴム系グラフト共重合体ラテックスを得た。多層ブタジエンゴムの重合終了時の重合転化率は89.1重量%であり、多層ブタジエン系ゴム重合体ラテックスの重量平均粒子径は0.115μmであり、ラテックス粘度は48cpsであった。未反応ブタジエン量は3.2重量%であった。
多層ブタジエンゴム系グラフト共重合体ラテックスの固形分濃度は47.3重量%であり、その重量平均粒子径は0.153μmであった。グラフト重合終了後の凝斥物の割合は0.22重量%であった。
【0066】
多層ブタジエンゴムラテックスの物性、多層ブタジエンゴム系グラフト共重合体ラテックスの物性、および多層ブタジエンゴム系グラフト共重合体を配合した塩化ビニル樹脂組成物の物性に関する一覧表を、表1に示した。
【0067】
【表1】
Figure 0003983685
【0068】
【発明の効果】
以上のように、本発明によると、重合時の(水/単量体)比を小さくしても、多層ゴムラテックス粘度を高めることなく、重合後の凝析物が少ない脂肪族共役ジエンゴムラテックスを短時間で安定に製造でき、塩化ビニル樹脂に配合した際の耐衝撃性および透明性が改善される。

Claims (4)

  1. 芳香族ビニル系化合物5〜35重量%、脂肪族共役ジエン95〜65重量%、およびこれらと共重合可能な他の単量体0〜20重量%からなる単量体混合物(A)から得られるジエン系ゴム重合体であり、その製造に当たって、単量体混合物(A)を少なくとも2段以上に分割して添加し、1段目として、(A)の芳香族ビニル系化合物含有率より高い芳香族ビニル系化合物含有率を有し、かつ脂肪族共役ジエンを55重量%以上含有する単量体混合物(A−1)を、単量体混合物(A)の5〜95重量%の割合で重合後、2段目として、(A)の脂肪族共役ジエン含有率より高い脂肪族共役ジエン含有率を有する単量体混合物(A−2)を、(A)の95〜5重量%の割合で重合させ、得られた脂肪族共役ジエン系ゴム重合体(A)40〜80重量部(固形分)の存在下に、芳香族ビニル系化合物20〜80重量%、メタクリル酸エステル80〜20重量%、およびこれらと共重合可能な他のビニル単量体0〜20重量%からなる単量体混合物(B)60〜20重量部[(A)と(B)を合わせて100重量部]を乳化重合することを特徴とするジエンゴム系グラフト共重合体の製造方法であって、1)(A)100重量部に対し、重合開始時に添加する水を70〜130重量部とし、
    2)1段目の単量体混合物(A−1)の重合において、(A−1)を100重量%とした場合の重合転化率が25〜45重量%の期間に乳化剤を添加し、次いで電解質を添加する、
    ことを特徴とするジエンゴム系グラフト共重合体の製造方法。
  2. (A)中の芳香族ビニル系化合物がスチレンであり、かつ、脂肪族共役ジエンがブタジエンである、請求項1に記載のジエンゴム系グラフト共重合体の製造方法。
  3. 1段目の単量体混合物(A−1)を100重量%とした場合の重合転化率が25〜45重量%の期間に添加する乳化剤量が、(A)100重量部に対して0.1〜2重量部である、請求項1または2に記載のジエンゴム系グラフト共重合体の製造方法。
  4. 1段目の単量体混合物(A−1)を100重量%とした場合の重合転化率が25〜45重量%の期間に添加する電解質量が、(A)100重量部に対して0.1〜5重量部である、請求項1〜3のいずれかに記載のジエン系ゴム系グラフト共重合体の製造方法。
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