JP3979642B2 - 燃料電池用電極 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池用電極およびその製造方法ならびにこの電極を用いた燃料電池に関する。特に、ダイレクトメタノール型燃料電池の構成要素として好適な燃料電池用電極およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車等の動力源や携帯電話などの携帯用電源として、ダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC;Direct Methanol Fuel Cell)が注目されている。DMFCは、燃料極でメタノールを直接酸化してプロトンを生成するため、改質器が不要であり、小型軽量化が容易であるという利点をもつ。
燃料電池に関する先行技術文献情報として以下のものが挙げられる。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−106831号公報
【特許文献2】
特開2001−123081号公報
【特許文献3】
特開2001−181519号公報
【特許文献4】
特開2001−261967号公報
【特許文献5】
特開2002−25571号公報
【特許文献6】
特開2002−8676号公報
【特許文献7】
特開2001−52721号公報
【特許文献8】
特開2001−325967号公報
【特許文献9】
特開2001−335695号公報
【特許文献10】
特開平11−92440号公報
【特許文献11】
特開2000−268828号公報
【特許文献12】
国際公開第WO00/54351号パンフレット(第7−8頁、第1図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
DMFCの典型的なセル構造を図4に示す。セル110の燃料室111に燃料極(負極)112が配置され、酸化剤ガス室115に空気極(正極)114が配置される。燃料極112と空気極114との間に電解質膜113が設けられている。燃料極112側では、メタノール(典型的には水溶液として供給される)が酸化されて二酸化炭素、プロトン(水素イオン)および電子が生成する。生成したプロトンは、電解質膜113を通って空気極114側に移動し、酸素および電子と結合して水を生成する。このようなプロトンの移動に伴って外部回路に電子が流れて電流が取り出される。
【0005】
かかるセル構造を備えた燃料電池に用いられる電極としては、ガス等の流体の拡散性(透過性)および導電性を有する導電性多孔質支持体(典型的にはカーボン多孔体)と触媒(典型的には白金または白金合金)とを備えるものがよく用いられる。この触媒は貴金属等からなり一般に高価であるので、その利用効率を高めるために、電極のうち電解質側に集中して触媒を存在させることが好ましい。例えば、導電性多孔質支持体(カーボン多孔体等)の表面に触媒層を設けた構成の燃料電池用電極が知られている。かかる触媒層としては、表面に触媒を担持させた導電性無機材料(カーボン粒子等)と、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフロライド(PVF)等のフッ素系熱可塑性樹脂とを主体とするものが提案されている(例えば、特許文献10および11を参照)。
【0006】
ところで、DMFCは、燃料としてのメタノールが燃料極112から電解質膜113を通過して空気極114で直接酸化されてしまうと(図4参照)、電極間の電位差が小さくなり出力低下を招く。このため、電解質膜113としては、燃料極112から空気極114側へメタノールを通しにくい性能(メタノール透過防止性)を有するものが好ましい。
【0007】
かかるメタノール透過防止性を備えた電解質膜として、特許文献12には、メタノールおよび水に対して実質的に膨潤しない多孔性基材とプロトン伝導性ポリマーとを組み合わせた構成の電解質膜が開示されている。また、この特許文献12の記載では、種々のガラスまたはセラミックス(シリカ、ジルコニア等)形成用のゾルを電極(導電性多孔質支持体)上に塗布し、塗布されたゾルを乾燥(所望により加温)して薄膜状の多孔性基材(多孔性無機基材)を作製し、この多孔性基材の細孔にプロトン伝導性ポリマーを充填することにより、多孔性無機基材を主体とする上記電解質膜を形成することができるとされている。
【0008】
しかしながら、上述のようにゾルの塗布・乾燥により多孔性無機基材を形成する手法(以下、ゾル−ゲル法ともいう。)を含む工程によって電極上に特許文献12に記載のような電解質膜を形成する方法は、導電性多孔質支持体の表面に触媒層(典型的には、カーボン粒子とフッ素系熱可塑性樹脂とを主体とする触媒層)を設けた構成の燃料電池用電極に対しては適用することが困難であった。例えば、触媒層に歪みや割れ等の変形が生じたり、導電性多孔質支持体から触媒層が剥離したりすることがあった。
【0009】
本発明は、このような現状に鑑みなされたものである。その目的とするところは、燃料電池用の電極であって、その表面に上述のような多孔性無機基材の層を一般的なゾル−ゲル法等によっても形成することが可能な燃料電池用電極およびその製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、前記燃料電池用電極と、多孔性無機基材の細孔にプロトン伝導性ポリマーが充填された電解質膜(以下、有機無機ハイブリッド電解質膜ということもある。)とを備えた燃料電池を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
本発明者らは、平均粒子径が所定範囲にあるカーボン粒子と熱硬化性樹脂とを含む液状組成物を用いて形成された表面層(多孔質被覆体)を備える電極によれば上記課題を解決し得ることを見出した。そして、このような電極の表面(すなわち多孔質被覆体の表面)に上記電解質層(有機無機ハイブリット電解質層)を形成することによって、電池性能(特にメタノール透過防止性)に優れた燃料電池を提供し得ることを見出した。
【0011】
前記課題を解決するための本発明の燃料電池用電極導電性多孔質支持体は導電性カーボン多孔体からなり、この導電性多孔質支持体の表面多孔質被覆体で被覆されている。その多孔質被覆体は、所定粒径のカーボン粒子と熱硬化性樹脂とを含む液状組成物を硬化させてなる。その液状組成物に含有されるカーボン粒子の好適な平均粒子径は200〜400nmである。また、その液状組成物を硬化させる際の好適な温度範囲は300℃以下である。
かかる構成を有することにより、本発明の電極に備えられた前記導電性多孔質支持体の多孔質被覆体は、上述した従来の触媒層等に比べて強度に優れたものとなり得る。このため、この多孔質被覆体上に例えばゾル−ゲル法によって多孔性無機基材(例えば、上述した有機無機ハイブリッド電解質膜に備えられるような多孔性無機基材)を形成する場合にも、多孔質被覆体の変形や導電性多孔質支持体からの剥離等を抑制することができる。したがって、本発明の電極の多孔質被覆体の表面に一般的なゾル−ゲル法等によって多孔性無機基材の層(例えば、シリカ、ジルコニア等の無機材料からなる層)を形成し、次いで、この多孔性無機基材の細孔にプロトン伝導性ポリマーを充填することにより、高品質の有機無機ハイブリッド電解質膜を簡単に形成することができる。
【0012】
また、本発明の燃料電池用電極の導電性多孔質支持体では、カーボン粒子と熱硬化性樹脂の配合比が、カーボン粒子10質量部に対して熱硬化性樹脂0.5〜1.5質量部(より好ましくは0.5〜1質量部)の範囲にあることが好ましい。熱硬化性樹脂の配合比が少なすぎるとカーボン粒子同士が結着しにくくなる。このため、連続した(膜状の)多孔質被覆体が形成されにくくなる傾向にある。一方、熱硬化性樹脂の配合比が多すぎると、得られる多孔質被覆体の気孔率(ひいてはガス等の流体の透過性)が低下しがちである。
【0013】
本発明の燃料電池用電極の導電性多孔質支持体の好ましい例では、(1).前記多孔質被覆体の平均細孔径が凡そ0.05〜0.2μmの範囲にある。表面の細孔径がこのような範囲にある電極(多孔質被覆体)は、その上にゾル−ゲル法によって多孔性無機基材の層(例えば、シリカ、ジルコニア等の無機材料からなる層)を形成する用途に適している。本発明の燃料電池用電極の他の好ましい例では、(2).その多孔質被覆体の気孔率が凡そ25〜50%の範囲にある。また(3).その多孔質被覆体の膜厚が凡そ40〜100μmの範囲にある。これら(1).〜(3).のうち少なくとも一つを満たす多孔質被覆体が好ましく、二つ以上を満たす多孔質被覆体がより好ましく、これらの全てを満たす多孔質被覆体がさらに好ましい。
【0014】
また、本発明の燃料電池用電極は、本明細書において開示されるいずれかの導電性多孔質支持体と該多孔質支持体表面の前記多孔質被覆体に担持される触媒(典型的には、白金または白金合金を含む触媒)とを備える。かかる触媒を担持させることにより電極反応が促進される。したがって、このような電極によれば高性能の燃料電池を構成し得る。また、上記構成によると、電極のうち多孔質被覆体(電解質に面する表面層)の部分に触媒を偏在させることができる。したがって、かかる燃料電池用電極を用いることにより触媒の利用効率の高い燃料電池を構成し得る。また、触媒(典型的には白金または白金合金)は一般に高価であるため、触媒利用効率を高めることは製造コストの低減の点からも有効である。
【0015】
また、本発明により提供される燃料電池用電極の導電性多孔質支持体であって、前記導電性多孔質支持体は導電性カーボン多孔体からなり、該導電性多孔質支持体の表面は多孔質被覆体で被覆されている燃料電池用電極の導電性多孔質支持体を製造する方法は、平均粒子径200〜400nmのカーボン粒子と熱硬化性樹脂とを含む液状組成物を用意する工程を備える。また、その液状組成物を導電性多孔質支持体に付着させる工程を備える。さらに、その付着した液状組成物を300℃以下の温度範囲で硬化させて前記導電性カーボン多孔体の表面を被覆する前記多孔質被覆体を形成する工程を備える。このことによって、導電性多孔質支持体の表面に多孔質被覆体を形成することができる。かかる製造方法は、前述した本発明のいずれかの燃料電池用電極の導電性多孔質支持体を製造する方法として好適である。
【0016】
本発明の燃料電池用電極の製造方法の好ましい一態様では、平均粒子径200〜400 nm のカーボン粒子と熱硬化性樹脂とを含む液状組成物を用意する工程と、その液状組成物を前記導電性カーボン多孔体に付着させる工程と、その付着された液状組成物を300℃以下の温度範囲で硬化させて前記導電性カーボン多孔体の表面を被覆する前記多孔質被覆体を形成する工程とを具備し、ここで、前記カーボン粒子として、表面に触媒粒子が担持された触媒担持カーボン粒子を用いる。このことによって、多孔質被覆体が触媒を担持している構成の燃料電池用電極を好適に製造することができる。
【0017】
本発明により提供される燃料電池は、本発明のいずれかの燃料電池用電極と、多孔性無機基材の細孔にプロトン導電性ポリマーが充填された構成の電解質膜とを備える。その電解質膜を構成する多孔性無機基材は前記多孔質被覆体の表面に形成されている。本発明の燃料電池は、ダイレクトメタノール型燃料電池として特に好適である。
上記構成の電解質膜はメタノール透過防止性に優れたものとなり得る。したがって、電極の表面にかかる電解質膜を備えることにより、電池性能の良好な燃料電池(典型的にはダイレクトメタノール型燃料電池)を実現することができる。本発明の電極を用いることにより、多孔質被覆体の表面に多孔性無機基材の層を形成する方法として、一般的なゾル−ゲル法を好ましく採用することができる。この場合(特に、多孔質被覆体に触媒が担持されている場合)には、多孔性無機基材を形成する際の焼成温度が300℃を超えないようにすることが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している内容以外の技術的事項であって本発明の実施に必要な事項は、従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている技術内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0019】
本発明の燃料電池用電極を構成する「導電性多孔質支持体」は、導電性を有するとともに、ガス等の流体の拡散性を有する基材である。この導電性多孔質支持体は、他の電池構成材料(電解液、電解質、電池反応の燃料および精製物等)による腐蝕を受けにくい材料から構成されることが好ましい。また、この電極材料を用いる電池(典型的には燃料電池)は、その反応効率を高める等の目的から高温で使用されることが多い。このため、導電性多孔質支持体の構成材料としては耐熱性の高いものが好ましい。
これらの要件を満たす導電性多孔質支持体として、導電性カーボン多孔体が好ましく用いられる。かかる導電性カーボン多孔体としては、カーボン繊維からなる織布または不織布、カーボン繊維とバインダとの混合物を焼成してなる多孔体、カーボン粒子とバインダとの混合物を焼成してなる多孔体、自己焼結性カーボン粒子を焼成してなる多孔体等を用いることができる。
【0020】
導電性多孔質支持体の平均細孔径は、0.3〜2μmであることが好ましく、より好ましくは0.3〜1μm、さらに好ましくは0.3〜0.6μmである。平均細孔径が小さすぎると流体の透過性が低くなる。一方、平均細孔径が大きすぎると、導電性多孔質支持体の表面に多孔質被覆体の被覆層を形成しにくくなったり、この被覆層の強度が低下したりする場合がある。
導電性多孔質支持体の気孔率は、20〜80%であること好ましく、より好ましくは25〜45%である。導電性多孔質支持体の気孔率が20%よりも低いと流体透過性が低下しやすく、80%よりも高いと導電性多孔質支持体の機械的強度が低下する場合がある。
【0021】
本発明において特に好ましく用いられる導電性多孔質支持体は、自己焼結性カーボン粒子を焼成してなる導電性カーボン多孔体である。この自己焼結性カーボン粒子の典型例としては、重質油等を加熱処理して得られるメソフェーズ小球体(メソカーボンマイクロビーズ)が挙げられる。このような自己焼結性カーボン粒子は、熱可塑性樹脂等のバインダを使用することなく、単独で成型して焼成することによって高強度の焼成品とすることができる。
【0022】
自己焼結性カーボン粒子から導電性カーボン多孔体を製造するには、例えば以下の方法によればよい。すなわち、自己焼結性カーボン粒子を所定の成型圧で加圧成型した後、徐圧し、次いでこの加圧成形品を焼成することにより導電性カーボン多孔体を製造する方法である。ここで、加圧成形品の焼成は、非酸化性雰囲気(典型的には窒素雰囲気)中において600〜1500℃の焼成温度(より好ましくは800〜1200℃)で行うことが好ましい。
かかる製造方法において、平均細孔径0.3〜0.6μmの導電性カーボン多孔体を得るための好ましい成型圧は5.9〜31.4MPa(60〜320kg/cm2)である。また、気孔率30〜45%の導電性カーボン多孔体を得るために好ましい成型圧は5.9〜31.4MPa(60〜320kg/cm2)である。
この範囲では、自己焼結性カーボン粒子の成型圧が高くなるにつれて、得られる導電性カーボン多孔体の平均細孔径は小さくなり、その気孔率は低くなる傾向になる。したがって、適当な成型圧を選択することにより、導電性カーボン多孔体の平均細孔径および/または気孔率を調整することができる。なお、ここで使用する自己焼結性カーボン粒子(典型的にはメソカーボンマイクロビーズ)としては平均粒径2〜20μmのものが好ましく、より好ましくは3〜10μmである。
【0023】
本発明の燃料電池用電極における「多孔質被覆体」の好ましい平均細孔径は0.05〜0.2μmであり、より好ましくは0.07〜0.15μmである。平均細孔径が小さすぎると多孔質被覆体の流体透過性(例えば、燃料や反応物を含む液体、ガス等の透過性)が低くなりやすい。一方、平均細孔径が大きすぎると、この多孔質被覆体の体積当たりの表面積(細孔表面を含む)が小さくなる。したがって、多孔質被覆体の表面と燃料を含む流体との接触面積が少なくなり、この多孔質被覆体に触媒が担持された燃料電池用電極において触媒反応の効率(ひいては電極反応の効率)が低くなりやすい。また、平均細孔径が大きすぎると触媒が多孔質被覆体の深部にまで浸透して担持され、この深部に担持された触媒を有効に利用できないことから触媒の利用効率が低下する(所望の触媒効率を得るために要する触媒量が増す)ことがある。
さらに、この多孔質被覆体上にゾルを塗布して多孔性無機基材の層を形成する場合、多孔質被覆体の平均細孔径が大きすぎると、塗布されたゾルが多孔質被覆体の内部に浸透しすぎることから無機層の強度が低下したり、細孔内に過剰に進入(浸透)して形成された無機層により多孔質被覆体の流体透過性が低下したりしやすい。
【0024】
平均細孔径が上記好ましい範囲になる多孔質被覆体を備える電極は、電極反応の効率が良好な燃料電池用電極となり得る。また、触媒の利用効率の良い燃料電池用電極となり得る。さらに、この多孔質被覆体上には、ゾルを付着させる工程を含む方法(典型的にはゾル−ゲル法)によって、上述の有機無機ハイブリッド電解質膜を構成するための多孔性無機層を容易に形成することができる。
【0025】
この多孔質被覆体の好ましい気孔率は25〜50%であり、より好ましくは30〜45%である。気孔率が低すぎると多孔質被覆体の流体透過性が低くなりやすい。また、多孔質被覆体の体積当たりの表面積が少なくなり、この多孔質被覆体に触媒が担持された燃料電池用電極において触媒反応(電極反応)の効率が低下しやすくなる。一方、多孔質被覆体の気孔率が高すぎると、この多孔質被覆体の機械的強度が低くなりすぎる場合がある。
【0026】
なお、導電性多孔質支持体および多孔質被覆体の平均細孔径は、水銀圧入法、バブルポイント法、電子顕微鏡による観察結果から算出する方法等の、従来公知の各種方法により測定することができる。典型的には水銀圧入法が用いられる。また、気孔率も従来公知の方法により測定することができ、典型的には水銀圧入法が用いられる。水銀圧入法による平均細孔径および/または気孔率の測定は、例えば株式会社島津製作所製の細孔分布測定装置である商標「ポアサイザー」等を用いて行うことができる。なお、本明細書において開示される好ましい平均細孔径および気孔率に関する数値範囲は水銀圧入法をベースとするものであり、他の測定方法においてこれら数値範囲が変動しうることは当業者には理解される。
【0027】
導電性多孔質支持体の表面に多孔質被覆体を被覆する方法としては、平均粒子径200〜400nmのカーボン粒子、熱硬化性樹脂、分散剤、および水系溶媒を混合して水系スラリー(液状組成物)を作製し、この水系スラリーを導電性多孔質支持体に付着させた(典型的には塗布した)ものを、空気中、300℃以下(典型的には30〜300℃)で硬化させて多孔質被覆体を形成する方法が挙げられる。
【0028】
本発明の多孔質被覆体を構成するカーボン粒子としては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラックが望ましく、これらの一種または二種以上が好ましく使用される。
かかるカーボン粒子の好ましい平均粒子径は200〜400nmの範囲であり、より好ましい平均粒子径は250〜350nmの範囲である。カーボン粒子の平均粒子径が小さすぎると、得られる多孔質被覆体の平均細孔径が小さくなりすぎて、流体の透過性等が低下しやすくなる場合がある。また、カーボン粒子の平均粒子径が大きすぎると、得られる多孔質被覆体の平均細孔径が大きくなりすぎて、その多孔質被覆体上にゾル−ゲル法によって上述の有機無機ハイブリッド電解質膜を形成するための多孔性無機層を作製することが困難となる場合がある。なお、カーボン粒子が複数の一次粒子から構成される二次粒子である場合には、一次粒子の平均粒子径を該カーボン粒子の平均粒子径とする。
また、カーボン粒子としては、ヨウ素吸着量が2〜150mg/gの範囲にあるものを用いることができる。このヨウ素吸着量が5〜50mg/gの範囲にあるカーボン粒子が好ましく、5〜25mg/gの範囲にあるものがさらに好ましい。
【0029】
本発明の多孔質被覆体を構成する熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等から選択される一種または二種以上を用いることができる。これらのうちフェノール樹脂(ノボラック系樹脂とレゾール系樹脂を包含する)を用いることが好ましい。フェノール樹脂のなかでも特にレゾール系樹脂を用いることが好ましい。
【0030】
これらカーボン粒子と熱硬化性樹脂との混合物は、典型的には液状組成物の形態で導電性多孔質支持体に付着される。例えば、有機溶媒または水系溶媒に熱硬化性樹脂を溶解させるとともにカーボン粒子を分散させた液状組成物、有機溶媒または水系溶媒に熱硬化性樹脂およびカーボン粒子を分散させた液状組成物、液状樹脂(例えば、レゾール系樹脂の未硬化物または部分硬化物)にカーボン粒子を分散させた液状組成物等を調製し、かかる液状組成物を導電性多孔質支持体に塗布すればよい。液状組成物を付着させるにあたっては、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、ドクターブレード塗布、ローラ塗布、刷毛塗り、転写塗布等の一般的な付着方法(塗布方法)を採用することができる。
【0031】
液状組成物を構成する溶媒としては水系溶媒が好ましい。ここで「水系溶媒」とは、水または水を主体とする混合溶媒(低級アルコール等)をいう。本発明において用いられる液状組成物の好適例は、熱硬化性樹脂とカーボン粒子とを水系溶媒(典型的には水)に溶解または分散させた水系スラリーである。特に、触媒を含む液状組成物(例えば、触媒粉末を担持したカーボン粒子を含む液状組成物)を硬化させることにより触媒を担持した多孔質被覆体を形成する場合には、この液状組成物を構成する溶媒として水系溶媒(特に好ましくは水)を選択することが好ましい。これにより、触媒と有機溶剤との反応を抑制することができる。
【0032】
この液状組成物は、カーボン粒子10質量部に対して熱硬化性樹脂0.5〜1.5質量部(好ましくは0.5〜1質量部)が含有されるように配合することができる。また、熱硬化性樹脂が溶液または分散液の形態(熱硬化性樹脂液)で提供される場合には、例えばこの熱硬化性樹脂液の不揮発分濃度(樹脂硬化物を構成する成分の割合)が30〜80質量%である場合、カーボン粒子10質量部に対して熱硬化性樹脂液を0.6〜5質量部(好ましくは0.7〜2質量部、より好ましくは0.8〜1.2質量部)の割合で配合することができる。
なお、この液状組成物は、本発明の目的を著しく損なわない限りにおいて、従来公知の各種添加剤(分散剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤等)を含有することができる。
【0033】
液状組成物(特にその組成物に含まれる熱硬化性樹脂)を硬化させる際の温度範囲は300℃以下(典型的には30〜300℃程度)とすることが適当であり、好ましい温度範囲は60〜200℃程度、さらに好ましい温度範囲は80〜120℃程度である。組成物を硬化させる温度範囲が低すぎると硬化に長時間を要するため製造効率が低下しやすくなる。一方、この温度範囲が高すぎると、後述するように、この組成物を構成するカーボン粒子に触媒(例えば白金または白金合金を含む触媒)の粒子が担持されている場合等に、その触媒の性能が低下しがちとなる。
なお、この液状組成物の硬化条件は特に限定されないが、空気中、大気圧下で行うことが簡便であり望ましい。
【0034】
本発明の燃料電池用電極は、多孔質被覆体に触媒が担持された構成であることが望ましい。ここで「触媒」としては、燃料電池(特に固体高分子型燃料電池)の分野において用いられる従来公知の酸化触媒類等を使用することができる。使用可能な触媒の例としては、貴金属(好ましくは白金族金属)、貴金属と他の貴金属との合金、これらと遷移金属等(銅、鉄、ニッケル、マンガン、パラジウム、セシウム、クロム、ルテニウム、コバルト等)との合金等からなるものが挙げられる。これらのうち、白金または白金を主体とする合金(例えば、白金と他の貴金属との合金)からなる触媒が好ましく用いられる。かかる触媒は、典型的には微粒子(例えば平均粒子径1〜20nmの微粒子)の状態で多孔質被覆体に担持させるとよい。
【0035】
触媒の担持された多孔質被覆体の主要な形成方法は、(1)あらかじめ形成された多孔質被覆体に触媒を担持させる方法と、(2)触媒の担持されたカーボン粒子を用いて多孔質被覆体を形成する方法とに大別することができる。
前記(1)の方法は、例えば次のようにして実施することができる。すなわち、触媒となる金属元素を含む化合物(以下、「触媒源」ともいう。)を含有する溶液を調整し、この溶液を多孔質被覆体に浸透させる。浸透した溶液から、加熱やpH調整等により触媒源またはその反応生成物(加水分解物等)を多孔質被覆体の表面(細孔表面を含む)に析出させる。その後、この析出物を還元する。このことによって触媒の担持された多孔質被覆体(すなわち触媒層)が得られる。前記触媒源としては、当該金属の塩(硝酸塩等)、ハロゲン化物、アルコキシド、錯体等から適当なものを選択すればよい。例えば、触媒が白金である場合には、触媒源としてヘキサヒドロキソ白金(IV)酸、ヘキサクロロ白金(IV)酸、硝酸白金等を用いることができる。特に限定するものではないが、多孔質被覆体への触媒の担持量は、この多孔質被覆体の表面積(細孔表面を含む)あたり、例えば0.01〜2mg/cm2とすることができる。
【0036】
また、前記(2)の方法は、例えば次のようにして実施することができる。すなわち、触媒源を含む溶液にカーボン粒子を懸濁させ、この溶液の加熱やpH調整等によりカーボン粒子上に触媒源またはその反応生成物を析出させ、その後この析出物を還元する。このことによって触媒が(典型的には平均粒子径1〜20nmの微粒子として)担持されたカーボン粒子を得る。特に限定するものではないが、カーボン粒子への触媒の担持量は、例えば0.01〜2wt%の範囲とすることができ、0.1〜1wt%の範囲とすることが好ましい。このようなカーボン粒子を用いて多孔質被覆体を形成する(例えば、このカーボン粒子と熱硬化性樹脂との混合物を導電性多孔質支持体に塗布して硬化させる)ことにより、触媒の担持された多孔質被覆体(すなわち触媒層)が得られる。触媒源としては、前記(1)の方法の説明において例示したものと同様のもの等を用いることができる。
【0037】
ここで、触媒(典型的には白金または白金合金)の微粒子を担持したカーボン粒子は、高温下(例えば400℃以上)に曝されると、触媒粒子同士が結着して粒子径が大きくなることがある。触媒粒子の粒子径の増大は、反応ガスと触媒との接触面積の縮小につながり、触媒能を低下させることになる。本発明の製造方法では、導電性多孔質支持体に付着させた液状組成物を比較的低温で硬化させることにより多孔質被覆体を形成する。このため、液状組成物に含まれる触媒粒子の加熱による結着が抑制される。これにより、上記(2)を採用した場合にも触媒の性能を高く維持することができる。
この燃料電池用電極における多孔質被覆体の厚さは、例えば10〜200μmとすることができ、好ましくは20〜150μm、より好ましくは50〜100μmである。また、導電性多孔質支持体の厚さは、例えば0.5〜3mmとすることができ、好ましくは1.5〜2.5mmである。
【0038】
本発明の燃料電池用電極は、正極および負極とこれら電極の間に挟まれた電解質とを備える構成の燃料電池において、その少なくとも一方の電極として好ましく用いられる。例えば、図3に模式的に示すような概略構成を有するダイレクトメタノール型燃料電池10の構成要素として好適である。この燃料電池10の燃料室11には燃料極(負極)12が配置され、酸化剤ガス室15には空気極(正極)14が配置される。これらの電極12,14は、それぞれ導電性多孔質支持体22と、その表面に設けられた多孔質被覆体24とを備える。多孔質被覆体24には図示しない触媒が担持されている。燃料極12と空気極14とは、多孔質被覆体24が設けられた側が対向するように配置されている。これらの電極12,14の間に電解質膜13が設けられている。この電解質膜13は、多孔性無機基材13aの細孔にプロトン導電性ポリマー13bが充填された構成を有する有機無機ハイブリッド電解質膜(膜状電解質)である。その多孔性無機基材13aは、多孔質被覆体24の表面に形成(好ましくはゾル−ゲル法により形成)されたものであることが好ましい。
【0039】
ここで「プロトン伝導性ポリマー」としては、イオン交換基(−SO3H基等)を有するモノマーの単独重合体または共重合体、イオン交換基を有するモノマーと該モノマーと共重合可能な他のモノマーとの共重合体等の、従来公知の材料を用いることができる。イオン交換基を有するモノマーの典型例としては、アクリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、パラトルエンスルホン酸ナトリウムおよびアクリル酸が挙げられる。また、加水分解等の後処理によりイオン交換基に転換し得る官能基(イオン交換基の前駆的官能基)を有するモノマーを用いてプロトン導電性ポリマーを作製することも可能である。
また、「多孔性無機基材」の好ましい組成としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、およびこれらの混合体や複合体等の、メタノール(好ましくはメタノールおよび水)に対して実質的に膨潤しない材料が挙げられる。
【0040】
かかる有機無機ハイブリッド電解質膜は、プロトン伝導性ポリマーが多孔性無機層によって支持されていることから耐熱性に優れる。したがって、このような電解質膜を備える燃料電池は比較的高温で使用することができ、これにより電極反応の効率が高い燃料電池となり得る。このような有機無機ハイブリッド電解質膜のうち、プロトン伝導性ポリマーを構成する重合体の一部(例えば一端)が多孔性無機基膜の表面(細孔表面を含む)と化学的に結合されているものは、特に耐熱性の高い電解質膜となり得るので好ましい。
また、かかる有機無機ハイブリッド電解質膜は、メタノールにより実質的に膨潤しない多孔性無機基材を備えることからメタノール透過防止性能に優れる。したがってダイレクトメタノール型燃料電池の構成要素として好適である。そして、本発明の燃料電池用電極は、このようなダイレクトメタノール型燃料電池の電極として特に好適である。
【0041】
このような有機無機ハイブリッド電解質膜を備える燃料電池は、導電性多孔質支持体の表面に多孔質被覆体を被覆した燃料電池用電極を準備する工程と、該多孔質被覆体上にゾル−ゲル法により多孔性無機基材の層を形成する工程と、この多孔性無機基材の細孔にプロトン伝導性ポリマーを充填する工程と、を包含する方法により好適に製造される。
ここで、多孔性無機基材の層は、例えば以下のようにして実施されるゾル−ゲル法によって形成することができる。すなわち、種々の金属(アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム等)アルコキシドおよびシリコンアルコキシドから選択される一種または二種以上を含むゾルを調整し、このゾルを多孔質被覆体上に付着させる。付着方法としては、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、ドクターブレード塗布、ローラ塗布、刷毛塗り、転写塗布等の一般的な付着方法(塗布方法)を採用することができる。その後、付着されたゾルを乾燥(所望により加温)させることにより多孔性無機基材の層が多孔質被覆体上に形成される。
【0042】
また、かかる多孔性無機基材の細孔にプロトン伝導性ポリマーを充填する方法としては、このプロトン伝導性ポリマーの共重合組成にほぼ対応した組成のモノマーを細孔内で重合させる方法が好ましい。例えば多孔性無機基材に活性エネルギー線(プラズマ、紫外線、電子線、ガンマ線等)を照射し、該多孔性無機基材を励起させて反応開始点を生成させる。この反応開始点にモノマーを接触させることにより、該多孔性無機基材の表面(細孔表面を含む)にグラフトされた重合体が生成する。例えば、モノマーを含む水溶液に反応開始点の生成している多孔性無機基材を浸漬することによって、反応開始点にモノマーを容易に接触させることができる。
かかる多孔性無機層形成方法およびプロトン伝導性ポリマー充填方法を適用することにより、図3に示すような、導電性多孔質支持体と多孔性被覆体からなる電極12、14(負極または正極)と有機無機ハイブリッド電解質膜(電解質膜)13とが直列した積層体が得られる。本発明の燃料電池は、このような積層体を用いて好適に構築される。
【0043】
【実施例】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0044】
<導電性多孔質支持体の作製>
自己焼結性カーボン粒子(大阪ガスケミカル株式会社製のメソカーボンマイクロビーズ、商標「MCMB10G」、平均粒子径10μm)を加圧成型し、これを焼成して、直径43mm、厚さ2mmの円盤状の導電性多孔質支持体(導電性カーボン多孔体)を作製した。バブルポイント法による測定結果(西華産業株式会社から入手可能な細孔径分布測定器、商標「パームポロメーター」(PPM)を使用した。)によれば、このカーボン多孔体の平均細孔径は約1.5μm、気孔率は約35%であった。
【0045】
<多孔質被覆体の被覆>
多孔質被覆体の製造に用いた材料を以下に示す。
[カーボン粒子]
カーボン粒子として、平均粒子径の異なる下記4種を用意した。
カーボン粒子1’:エンジニアドカーボン社製のカーボン粒子(商標「N990」、平均粒子径300nm、ヨウ素吸着量5〜15mg/g)を使用した。
カーボン粒子2:カナダのCANCARB LIMITED社製のカーボン粒子(商標「サーメストMT」、平均粒子径300nm、ヨウ素吸着量5〜15mg/g)を使用した。
カーボン粒子3:東海カーボン株式会社製のカーボン粒子(商標「トーカブラック#7550SB」、平均粒子径21nm、ヨウ素吸着量125mg/g)を使用した。
カーボン粒子4:東海カーボン株式会社製のカーボン粒子(商標「トーカブラック#7050」、平均粒子径66nm、ヨウ素吸着量26mg/g)を使用した。
これらのうちカーボン粒子1’に白金触媒を担持させて触媒担持カーボン粒子1を作製した。触媒の担持は、カーボン粒子1’を塩化白金酸(H2PtCl6・H2O)に浸漬し、水素雰囲気下400℃で4時間還元処理することにより行った。この触媒担持カーボン粒子1に担持された白金粒子の平均粒子は13nm(XRD測定結果)であり、白金担持量は0.44wt%であった。
【0046】
[熱硬化性樹脂]
レゾール系樹脂としては、住友ベークライト株式会社製のレゾール系樹脂(水系分散液、不揮発分64質量%)、商標「PR50781」を使用した。
[分散剤]
分散剤として、花王株式会社製の界面活性剤(商標「エマルゲンA60」)を使用した。
【0047】
<カーボン粒子およびレゾール系樹脂を含む液状組成物の調製>
表1に示す分量にしたがってカーボン粒子、レゾール系樹脂(有姿)、分散剤(有姿)および水を混合することにより、実験例1〜20の水系スラリーを調製した。混合は、まずカーボン粒子、レゾール系樹脂、分散剤および少量の水を練り合わせたのち、この混練物を残りの水および直径3mmのアルミナ製玉石30gとともに250mlポリ容器中で18時間混合することによって行った。なお、表1中の略号C1は触媒担持カーボン粒子1を示している。また、表1中の略号C2〜C4は、それぞれカーボン粒子2〜4を示している。
【0048】
【表1】
Figure 0003979642
【0049】
<液状組成物の塗布および硬化>
得られた各スラリーに、前述のようにして作製した導電性多孔質支持体(導電性カーボン多孔体)を一秒間浸すことにより(ディップコーティング法)、導電性多孔質支持体の片面に各スラリーを塗布した。塗布されたスラリーを空気中、80℃で24時間加熱し、樹脂成分を硬化させた。このようにして、導電性多孔質支持体の表面に多孔質被覆体が製膜された燃料電池用電極を作製した。
【0050】
<評価>
実験例1〜20について多孔質被覆体の製膜状況を評価した。また、多孔質被覆体が良好に製膜されたサンプルにつき、その多孔質被覆体の平均細孔径および平均気孔率を水銀圧入法により測定した。この測定には株式会社島津製作所製の細孔分布測定装置である商標「ポアサイザー」を用いた。測定結果を表2に示す。なお、表2中、製膜の評価結果を示す欄において、「○」はきわめて良好、「△」は良好、「×」は不良を意味する。
【0051】
【表2】
Figure 0003979642
【0052】
表2に示すように、触媒担持カーボン粒子1およびカーボン粒子2〜4を用いたスラリーは、いずれも導電性多孔質支持体の表面に多孔質被覆体を製膜することができた(実験例2,7,8,12,13,17〜19)。ただし、カーボン粒子3(平均粒子径21nm)およびカーボン粒子4(平均粒子径66nm)を使用した実験例12,13および実験例17〜19では、いずれも多孔質被覆体の平均細孔径が0.05μmよりも小さかった。また、これらの実験例により得られた多孔質被覆体は、いずれも気孔率が10μmよりも小さかった。
これに対して、平均粒子径300nmのカーボン粒子(触媒担持カーボン粒子1またはカーボン粒子2)を使用した実験例2,7および8によると、平均細細孔径が0.05〜0.2μmの範囲にある多孔質被覆体が形成された。また、これらの多孔質被覆体の気孔率はいずれも25%以上(さらには30%以上)であった。このような多孔質被覆体を備える燃料電池用電極は、ゾル−ゲル法による多孔性無機層(例えば厚さ約1〜5μmの多孔性無機層)の製膜に有効である。なお、これらの多孔質被覆体の膜厚は凡そ30〜70μmの範囲にあった。
【0053】
また、実験例1〜5および実験例6〜8の結果から判るように、レゾール系樹脂の配合量が不適当であると、多孔質被覆体の製膜が困難になる。すなわち、実験例2,7および8に示すように、カーボン粒子10質量部に対し、レゾール系樹脂(有姿)の配合量は0.75〜1.5質量部の範囲にあることが望ましい。特に、カーボン粒子10質量部に対してレゾール系樹脂(有姿)1質量部を配合した実験例2および7では、適度な平均細孔径をもつ良質な多孔質被覆体を製膜することができた。
なお、実験例2の組成において触媒担持カーボン粒子1に代えてカーボン粒子1’(すなわち、白金触媒を担持する前のもの)を用いて、実験例2と同様に液状組成物の調製、塗布および硬化を行ったところ、実験例2と同様に適度な平均細孔径をもつ良質な多孔質被覆体を製膜することができた。
【0054】
実験例2により作製された燃料電池用電極の透過型電子顕微鏡(SEM)写真を図1および図2に示す。
図1は電極表層部の断面写真である。図1に示す断面写真から判るように、下方に見える導電性多孔質支持体(カーボン基材)の表面に50μm程度の厚さの多孔質被覆体(カーボン膜)が形成されている。
また、図2は電極の表面写真であって、図2(a)は導電性多孔質支持体(カーボン基材)に多孔質被覆体(カーボン膜)を製膜する前、図2(b)は多孔質被覆体(カーボン膜)を製膜した後の表面写真である。図2(a)および(b)との比較から判るように、多孔質被覆体(カーボン膜)の平均細孔径は導電性多孔質支持体(カーボン基材)よりも明らかに小さい。また、多孔質被覆体(カーボン膜)を形成する粒子は導電性多孔質支持体(カーボン基材)を形成する粒子よりも明らかに小さい。そして、図2(b)から判るように、多孔質被覆体(カーボン膜)の表面状態は滑らかである。
【0055】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変形したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性をもつものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例による燃料電池用電極の表層付近のSEM断面写真である。
【図2】 本発明の実施例による燃料電池用電極のSEM写真であって、(a)は多孔質被覆体の製膜前の表面写真、(b)は製膜後の表面写真である。
【図3】 本発明に係る燃料電池の概略構成を例示する模式図である。
【図4】 ダイレクトメタノール型燃料電池の概略構成を示す模式図である。
【符号の説明】
10 :燃料電池
12 :燃料極(負極)
13 :電解質膜(有機無機ハイブリッド電解質膜)
13a:多孔性無機基材(多孔性無機層)
13b:プロトン導電性ポリマー
14 :空気極(正極)
22 :導電性多孔質支持体(カーボン多孔体)
24 :多孔質被覆体(触媒層)

Claims (7)

  1. 燃料電池用電極の導電性多孔質支持体であって、
    前記導電性多孔質支持体は導電性カーボン多孔体からなり、
    導電性多孔質支持体の表面多孔質被覆体で被覆されており
    前記多孔質被覆体は、平均粒子径200〜400nmのカーボン粒子と熱硬化性樹脂とを含む液状組成物を300℃以下の温度範囲で硬化させてなることを特徴とする燃料電池用電極の導電性多孔質支持体
  2. 前記カーボン粒子と前記熱硬化性樹脂の配合比が、前記カーボン粒子10質量部に対して前記熱硬化性樹脂0.5〜1.5質量部である請求項1記載の燃料電池用電極の導電性多孔質支持体
  3. 前記多孔質被覆体が以下の条件:
    (1).平均細孔径0.05〜0.2μm;
    (2).気孔率25〜50%;
    (3).膜厚40〜100μm;
    を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池用電極の導電性多孔質支持体
  4. 求項1,2または3に記載の燃料電池用電極の導電性多孔質支持体と、
    前記多孔質支持体表面の前記多孔質被覆体に担持される触媒とを備える、燃料電池用電極
  5. 燃料電池用電極の導電性多孔質支持体であって、前記導電性多孔質支持体は導電性カーボン多孔体からなり、該導電性多孔質支持体の表面は多孔質被覆体で被覆されている燃料電池用電極の導電性多孔質支持体を製造する方法であって、
    平均粒子径200〜400nmのカーボン粒子と熱硬化性樹脂とを含む液状組成物を用意する工程と、
    その液状組成物を前記導電性カーボン多孔体に付着させる工程と、
    その付着された液状組成物を300℃以下の温度範囲で硬化させて前記導電性カーボン多孔体の表面を被覆する前記多孔質被覆体を形成する工程とを具備する燃料電池用電極の導電性多孔質支持体製造方法。
  6. 請求項4に記載の燃料電池用電極を製造する方法であって、
    平均粒子径200〜400 nm のカーボン粒子と熱硬化性樹脂とを含む液状組成物を用意する工程と、
    その液状組成物を前記導電性カーボン多孔体に付着させる工程と、
    その付着された液状組成物を300℃以下の温度範囲で硬化させて前記導電性カーボン多孔体の表面を被覆する前記多孔質被覆体を形成する工程とを具備し、
    ここで、前記カーボン粒子として、表面に触媒粒子が担持された触媒担持カーボン粒子を用いることを特徴とする燃料電池用電極製造方法。
  7. 請求項4に記載の燃料電池用電極と、多孔性無機基材の細孔にプロトン導電性ポリマーが充填された構成の電解質膜とを備えた燃料電池であって、
    前記多孔質被覆体の表面に前記多孔性無機基材が形成されていることを特徴とする燃料電池。
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