JP5423108B2 - 燃料電池 - Google Patents
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Description
電解質膜と、
前記電解質膜の表面に設けられた電極触媒層と、
前記電極触媒層に重ねられたガス拡散層と、
前記電極触媒層と前記ガス拡散層の間に介在し、導電性と粘着性とを備えた樹脂層が表面に設けられた導電性微粒子が、集合することにより形成された微粒子層と、
を備えることを特徴とする。
[実施の形態1の構成]
図1〜3は、本発明の実施の形態1にかかる燃料電池の構成を説明するための図である。本発明の燃料電池は、例えば車両等の移動体用の燃料電池スタックに用いることができる。実施の形態1の燃料電池は、プロトン導電性の固体高分子電解質膜10を備える。電解質膜10の両面には、電極触媒層12、14が設けられている。電極触媒層12、14は、それぞれ、白金粒子を担持したカーボン粒子を含有している。電極触媒層12、14には、それぞれ、ガス拡散層20、22が重ねられる。ガス拡散層20、22は、電気伝導性およびガス拡散性を有する基材から形成されたシートである。この基材としては、具体的には、カーボン繊維から成るカーボンシート、あるいはカーボン不織布などを用いることができる。なお、図示しないが、図1の積層体をガス拡散層20、22の外側から挟み込むようにセパレータが位置することにより、いわゆる単セルが形成される。電極触媒層12、14に反応ガス(水素ガスと、空気等の酸化ガス)が供給されることにより、電気化学的反応による発電が生ずる。
先ず、接合強度が弱く、アイオノマーの種類によっては接合しないこともある。これは、アイオノマーの拡散、絡み合いの発生密度が不十分になる場合があるからである。例えばF系アイオノマーとHC系アイオノマーでは表面張力が不一致のため混合し難く、拡散しにくい。また、主鎖が剛直な高分子の場合にはたとえ拡散したとしても絡み合い点を形成しにくい。これに対し、実施の形態1によれば、粘着剤36の粘着性により、触媒層を形成するアイオノマーの種類に大きな影響を受けずに、電極触媒層とガス拡散層との間の接合を実現することができる。
また、アイオノマーのガラス転位温度が120℃以上程度の高温である。水の沸点よりも高いため、水分が気化してしまい電解質膜が乾燥により変形するおそれがある。これに対し、実施の形態1では、粘着性樹脂の粘着力を利用するので、このような加熱時の弊害を避けることができる。
また、圧力をかけて接合する際、触媒層中の細孔を潰してしまい、ガス拡散性が低下する問題がある。接合する面の平滑性が低いため、ある程度の圧力がないとアイオノマー同士を十分に密着させることができない。ガラス転位温度以上になったとしても高分子の拡散速度は遅く、高分子同士が十分に密着していないと絡み合い点を形成するまでには至らない。これに対し、実施の形態1では、粘着性樹脂の粘着力を利用するので、接合時に加えるべき圧力は小さくて済む。よって、ガス拡散性の低下を避けることができる。
以下、実施の形態1にかかる燃料電池の製造方法を説明する。ここでは、実施の形態1の方法を述べ、その後、実施の形態1に対する比較例を挙げて効果を述べる。
実施の形態1では、上述した微粒子層30、32の材料(以下、「粘着導電ペースト」とも呼称する)を予め作成しておく。粘着導電ペーストは、例えば、次の手順で作製する。先ず、導電性樹脂と接着性樹脂とをアルコール溶媒とともに予め混合しておく。さらに、この混合物を導電性カーボン微粒子と混合して吸着・分散させることにより、粘着導電ペーストを作成することができる。この粘着導電ペーストを用いて、下記の製造工程により燃料電池を製造する。
図9は、比較例の製造方法を行うための製造設備である。図9の構成は、特開2003−303599号公報に開示されているものと同じであるため、説明は簡潔にする。図9の設備は、ローラ414、ヒータとしての紫外線ランプ415、剥離ローラ416を備えている。ローラ414の間に、電解質膜411、触媒層413、転写用支持体412が送られる。
(a)実施の形態1と比較例とでは、S102とS302の工程が相違する。比較例では電極側と触媒層側に触媒層を塗布する必要があった。しかしながら、実施の形態1では、粘着剤を使用することにより、ガス拡散層側にのみ塗布することが可能となり、触媒層塗布工程を簡略化できかつ触媒塗布量の管理が簡単になる。
(b)実施の形態1では粘着剤を用いているので、常温にて接合を実現可能である。つまり、実施の形態1では、比較例のステップS307の加熱工程が必要ではない。これにより、加熱に起因する弊害を回避できる。具体的には、例えば、加熱による水分蒸発により電解質膜が収縮変形するおそれがある。加熱工程を備える製造方法では、この収縮変形を防止する対策が必要になる。実施の形態1では、加熱工程を省くことができるので、そのような対策が必須ではない。
(c)実施の形態1と比較例とでは、S108とS308の工程が相違する。実施の形態1では粘着剤を用いているので、触媒層強度以下の圧力で押し当てることにより接合が可能である。上述したように、実施の形態1は、比較例に比して小さな加圧で接合が可能である(P2>P1)。本願発明者は、0.01*P2>P1すなわち押付け圧力を100分の1以下にまで小さく出来ると考えている。これにより、例えば、ガス拡散層のケバ(表面繊維突起)が電解質膜に突き刺さることによるクロスリーク増大といった初期不良を抑制することができる。また、加えるべき圧力が小さいので、製造設備自体も簡略化でき、また、メインテナンス性も向上する。また、実施の形態1では、加圧時間を比較例と比べて10分の1以下程度まで短くすることができる。
図6は、実施の形態1にかかる粘着導電ペーストの具体例として示す粘着導電ペースト1および粘着導電ペースト2の配合比を示す。これらのペーストを、導電性樹脂と接着性樹脂とをアルコール溶媒とともに予め混合しておき、さらに、この混合物を導電性カーボン微粒子と混合して吸着・分散させることにより、作製した。なお、導電性樹脂は、エノコートBP105(ケミトレック社製)、接着性樹脂は、M−300(東亞合成社製)、導電性カーボン微粒子は、ケッチェンブラックEC−600JD(ケッチェン・ブラック・インターナショナル製)をそれぞれ用いた。
(第1実験結果)
以下、実施の形態1に関して本願発明者が行った第1の実験の結果を説明する。評価サンプルは、ガス拡散層(SGLカーボン社製、MPL層あり)を、11.5×11.5mmの四角サイズにカットしたものを準備した。カットしたガス拡散層のMPL塗布側の面に粘着導電ペースト1、2を少量(0.02ml)塗り延ばし、80℃で1時間乾燥した。塗布および乾燥させたガス拡散層に、塗布無しのブランクのガス拡散層を、MPL層が向かい合うように張り合わせ、約1kgfの荷重を10秒間加えた。粘着導電ペースト1、2をそれぞれ用いて作製したサンプルをそれぞれ実施例1、実施例2と呼称する。従来品の模擬用に、ガス拡散層に薄くNafion溶液を塗布して、同条件で接合させたものも準備した。
図8は、実施の形態1に関して本願発明者が行った第2の実験の結果を示す。第2の実験は、発電性能への阻害性評価を目的とし、実施の形態1にかかる微粒子層がガス拡散性を阻害しないことを目的とした実験である。この実験のサンプルは、電解質膜として炭化水素電解質膜を用い、触媒層としてSA50BK(エヌイーケムキャット製)、N/C=0.6、目付けつまり単位面積当たりの触媒量はアノード/カソード=0.2/0.4(Mg/cm2)とした。3枚の膜電極接合体(MEA)を準備し、比較例として拡散層寄り添わせMEGAを作製し、実施例1として粘着導電ペースト1を用いてガス拡散層と触媒層を接合してMEGAを作製し、実施例2として粘着導電ペースト2を用いてガス拡散層と触媒層を接合してMEGAを作製した。これらの3種類のサンプルに対して、発電温度80℃のフル加湿で、I−V特性を計測した。図8では見やすくするため数個の点のみをプロットしているが、図8のI−Vカーブは実際には多数の点を測定して求めたものである。図8からわかるように、実施例1,2ともに、比較例と同等のI−Vカーブが示されている。この結果から、実施例1,2ともに、ガス拡散性に問題ないことが確認されたと本願発明者は考えている。
12、14 電極触媒層
20、22 ガス拡散層
30、32 微粒子層
34 カーボン微粒子
36 粘着剤
Claims (1)
- 電解質膜と、
前記電解質膜の表面に設けられた電極触媒層と、
前記電極触媒層に重ねられたガス拡散層と、
前記電極触媒層と前記ガス拡散層の間に介在し、導電性と粘着性とを備えた樹脂層が表面に設けられた導電性微粒子が、集合することにより形成された微粒子層と、
を備えることを特徴とする燃料電池。
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