JP5055567B2 - 触媒電極層、膜電極複合体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の触媒電極層は固体高分子電解質型燃料電池に用いられるものであり、通常、後述する固体電解質膜の両側に配置され、膜電極複合体を構成する部材である。本発明の触媒電極層は、その特徴により以下の2態様に大別することができる。すなわち、プロトン伝導性を有さない結着性樹脂を含有し、かつPETフィルムに対する粘着強度が0.001N/cm以上である態様、および所定の結着性樹脂を含有する態様である。本発明においては前者を第1態様、後者を第2態様とする。
以下、本発明の第1態様、および第2態様について説明する。
本態様の触媒電極層は、固体高分子電解質型燃料電池に用いられる触媒電極層であって、プロトン伝導性を有さない結着性樹脂を含有し、かつPETフィルムに対する粘着強度が0.001N/cm以上であることを特徴とするものである。
以下、このような触媒電極層の各構成について説明する。
本態様に用いられる結着性樹脂は、触媒電極層に粘着性を付与するものであり、プロトン伝導性を有さないことを特徴とするものである。本態様において、「プロトン伝導性を有さない」とは、触媒電極層中で発生したプロトンを固体電解質膜に伝導する能力、および固体電化質膜から供給されるプロトンを触媒電極層に伝導する能力を、実質的に有さないことを意味するものである。具体的には、スルホ基、カルボキシル基、ホスファイト基、ホスホン酸基、ヒドロキシル基等のプロトン伝導基を有さない樹脂、ないしは上記プロトン伝導基を含有する場合であっても、樹脂の構造上、実質的なプロトン伝導性を有さない樹脂をいうものである。本態様の触媒電極層は、プロトン伝導の役割を担う電解質材料を別途含有していることから、様々な種類の結着性樹脂を選択して用いることができる。
上記固体電解質膜用結着性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、固体電解質膜を構成する成分が、パーフルオロスルホン酸ポリマー等のフッ素系ポリマー、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリパラフェニレン(PPBP)、ポリイミド(PI)、ポリベンズイミダゾール(PBI)等の芳香族系ポリマー、ヘテロポリ酸、リン酸ガラス、リン酸ジルコニウム等の無機系物質である場合、アクリル酸系樹脂、ジカルボン酸系樹脂等を挙げることができる。また、上記ガス拡散層用結着性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ガス拡散層を構成する成分がカーボン繊維である場合、アクリル酸系樹脂、メタクリル酸系樹脂等を挙げることができる。
本態様に用いられる電解質材料は、主にプロトン伝導に寄与するものである。このような電解質材料としては、一般的な燃料電池の触媒電極層に用いられる電解質材料を使用することができ、例えば、Nafion(商品名、デュポン株式会社製)に代表されるパーフルオロスルホン酸系ポリマー等のフッ素系樹脂、あるいはスルホ基、カルボキシル基、ホスファイト基、ホスホン酸基、ヒドロキシル基等のプロトン伝導基を有するポリイミド等の炭化水素系樹脂等を挙げることができる。また、本態様においては、上記電解質材料として、ヘテロポリ酸、リン酸ジルコニウム、リン酸ガラス、リン酸ホウ素、硫酸水素セシウム等の無機電解質粉末を使用することができる。上記無機電解質粉末の粒径としては、特に限定されるものではないが、ガス透過性向上の観点から10nm〜1μmの範囲内であることが好ましい。
本態様に用いられる、触媒を担持した導電性材料は、一般的な燃料電池の触媒電極層に用いられるものを使用することができ、例えば、白金等の触媒を、カーボンブラック等の多孔質材料に担持させたもの等を挙げることができる。
本態様の触媒電極層においては、上記材料の他に、必要に応じて架橋剤を含有していても良い。架橋剤を用いることで、上記材料の混合物をゲル化することができるからである。このような架橋剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、イソシアネート、シリコーン樹脂等を挙げることができる。また、このような架橋剤の添加量は、使用する材料にあわせて適宜選択することが好ましい。
次に、本態様の触媒電極層について説明する。本態様の触媒電極層は、上述した結着性樹脂、電解質材料、および触媒を担持した導電性材料等を有するものであって、PETフィルムに対する粘着強度が0.001N/cm以上であることを特徴とするものである。本態様においては、中でも粘着強度が、中でも0.002N/cm以上であることが好ましい。
本態様の触媒電極層は、固体高分子電解質型燃料電池に用いられる触媒電極層であって、結着性樹脂として、アクリル酸系樹脂、メタクリル酸系樹脂、アクリルアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、スチレン系樹脂、シリコン系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、ビニルピリジン系樹脂、アミノフェノール系樹脂、サイクロサーム樹脂、スネークケージ樹脂、N−メチロール系樹脂、ジカルボン酸系樹脂、2−オキサゾリン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含有することを特徴とするものである。本態様においては、上記結着性樹脂の中でもアクリル酸系樹脂、メタクリル酸系樹脂、N−メチロール系樹脂、ジカルボン酸系樹脂を使用することが好ましい。
次に、本発明の膜電極複合体について説明する。本発明の膜電極複合体は、固体電解質膜が、上記触媒電極層に挟持されてなるものである。
本発明の膜電極複合体に用いられる固体電解質膜としては、一般的な固体高分子電解質型燃料電池の固体電解質膜に用いられる電解質材料を用いることができ、例えば、Nafion(商品名、デュポン株式会社製)に代表されるパーフルオロスルホン酸系ポリマー等のフッ素系膜、あるいはスルホ基、カルボキシル基、ホスファイト基、ホスホン酸基、ヒドロキシル基等のプロトン伝導基を有するポリイミド等の炭化水素系樹脂、ヘテロポリ酸、リン酸ジルコニウム、リン酸ガラス、リン酸ホウ素、硫酸水素セシウム等の無機電解質粉末等を挙げることができる。中でも、本発明においては、上記炭化水素系樹脂および上記無機系電解質を用いることが好ましい。これらの材料は、一般的にガラス転移点が高く、従来の熱転写法等による結着が困難であったが、本発明の触媒電極層を用いることによって、簡便な方法で結着することが可能となるからである。
本発明の膜電極複合体に用いられる触媒電極層は、「A.触媒電極層」と同様であるので、ここでの説明は省略する。
本発明の膜電極複合体の製造方法については、上述した触媒電極層を備えた膜電極複合体を製造することができる方法であれば、特に限定されるものではないが、例えば、後述する「D.膜電極複合体の製造方法」に記載した方法等を挙げることができる。
次に、本発明の固体高分子型電解質燃料電池について説明する。本発明の固体高分子型電解質燃料電池は、上述した膜電極複合体を用いたものである。本発明の固体高分子型電解質燃料電池は、通常上記膜電極複合体の両側にガス拡散層が設置され、さらに、その外側にはガス流路を備えたセパレータが設置されてなるものである。
本発明の固体高分子型電解質燃料電池に用いられる膜電極複合体は、「B.膜電極複合体」と同様であるので、ここでの説明は省略する。
本発明の固体高分子型電解質燃料電池に用いられるガス拡散層は、一般的な燃料電池に用いられるものを使用することができる。通常は、カーボン繊維等を成形したガス拡散層が好適に用いられる。
本発明の固体高分子型電解質燃料電池に用いられるセパレータは、上記ガス拡散層を介して膜電極複合体の触媒電極層へと供給される燃料ガスおよび酸化剤ガスを流通させるとともに、発電により得られた電流を外部に伝える働きを有するものである。このようなセパレータとしては、一般的な燃料電池に用いられるものを使用することができ、例えば、カーボンタイプのもの、金属タイプのもの等を用いることができる。
本発明の膜電極複合体の製造方法は、プロトン伝導性を有さない結着性樹脂を含有する触媒電極層形成用材料を用いて基材上に触媒電極層を設ける触媒電極層形成工程と、上記触媒電極層を固体電解質膜に貼着する貼着工程と、を有することを特徴とするものである。
以下、本発明の膜電極複合体の製造方法について、各工程毎に説明する。
本発明の膜電極複合体の製造方法における触媒電極層形成工程は、プロトン伝導性を有さない結着性樹脂と、電解質材料と、触媒を担持した導電性材料と、を含有する触媒電極層形成用材料を用いて基材上に触媒電極層を設ける工程である。
本工程で用いられる触媒電極層形成用材料は、結着性樹脂と、電解質材料と、触媒を担持した導電性材料とを含有するものである。これらの材料は「A.触媒電極層」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。さらに、本工程で用いられる触媒電極層は、上述した架橋剤を有していても良い。
本工程で用いられる基材は、上記触媒電極層形成用材料を用いて、基材上に触媒電極層を設けることができるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、上記ガス拡散層、金属板、PTFE、ETFE等のフッ素系樹脂、PET、PEEK、PES等の炭化水素系樹脂等を挙げることができ、中でも、上記基材がガス拡散層であることが好ましい。より簡便な方法で燃料電池を作製することができるからである。また、上記基材は、触媒電極層の剥離を容易にする剥離層を備えたものであっても良い
本発明における触媒電極層形成工程は、上述した触媒電極層形成用材料を用いて基材上に触媒電極層を得ることができる工程であれば、特に限定されるものではなく、例えば、上記触媒電極層形成用材料を塗布することにより触媒電極層を形成する方法等を挙げることができる。具体的には、ドクターブレード法、スプレー法、スクリーン印刷法等を挙げることができ、中でも、本工程においては、ドクターブレード法を用いることが好ましい。
次に、本発明の膜電極複合体の製造方法における貼着工程について説明する。本発明における貼着方法は、上述した触媒電極層形成工程によって形成された触媒電極層を、上述した固体電解質膜に貼着することにより、膜電極複合体を得る工程である。
このような固体電解質膜を用いた場合の貼着工程としては、特に限定されるものではないが、例えば、上述した固体電解質膜用結着性樹脂を含有する対向触媒電極層と、上述したガス拡散層用結着性樹脂を含有する触媒電極層とを貼着する方法を挙げることができる。例えば図9に示すように、固体電解質膜用結着性樹脂6を含有する対向触媒電極層を備えた固体電解質膜4と、上記貼着工程によって得られた、ガス拡散層用結着性樹脂7を含有する触媒電極層を備えたガス拡散層5とを接合する方法を挙げることができる。また、例えば、上記対向触媒電極層上または上記触媒電極層上に、優れた発電効率を有する層を設けることによって、発電効率および結着性に優れた3層構造の触媒電極層を有した膜電極複合体を得ることができる。
[実施例]
結着性樹脂としてオレフィン系エラストマーゲル、電解質材料としてNafion(商品名、デュポン株式会社製)、導電性材料としてPt担持カーボンを、溶媒中に分散させ、その後、溶媒を除去することにより触媒電極層形成用材料を得た。
上記触媒電極層形成用材料を、ガス拡散層上にドクターブレード法で塗布することにより、ガス拡散層上に触媒電極層を形成し、触媒電極層付ガス拡散層を得た。
次に、固体電解質膜としてNafion(商品名、デュポン株式会社製)を用意し、この固体電解質膜と、上記触媒電極層付ガス拡散層の触媒電極層と、を5kgw/cm2の圧力で貼着し、固体電解質膜、触媒電極層およびガス拡散層が積層された積層体を得た。
この積層体における固体電解質膜と触媒電極層との剥離強度を、常温常圧で測定した結果、1.45MPaであった。
結着性樹脂としてオレフィン系エラストマーゲルを用いなかったこと以外は、実施例と同様にして積層体を得た。しかしながら、この積層体の固体電解質膜と触媒電極層とは容易に剥離し、接着しなかった。
2 … 電解質材料
3 … 触媒を担持した導電性材料
4 … 固体電解質膜
5 … ガス拡散層
6 … 固体電解質膜用結着性樹脂
7 … ガス拡散層用結着性樹脂
8 … 基板
Claims (1)
- 結着性樹脂として、オレフィン系エラストマーゲルを含有する触媒電極層形成用材料を用いて基材上に触媒電極層を設ける触媒電極層形成工程と、
0.05〜10MPaの範囲内の圧力で、温度をかけることなく前記触媒電極層を固体電解質膜に貼着する貼着工程と、を有することを特徴とする膜電極複合体の製造方法。
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