JP4348155B2 - 固体高分子型燃料電池用触媒膜、その製造方法及びそれを用いた燃料電池 - Google Patents
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Description
これらの中で、固体高分子型燃料電池は、一般に、固体高分子電解質として作用する隔膜の両面に、触媒が担持されたガス拡散電極を接合した単セルを有し、一方のガス拡散電極が存在する側の室(燃料室)に燃料である水素を、他方のガス拡散電極が存在する側の室(酸化剤室)に酸化剤である酸素や空気等の酸素含有ガスをそれぞれ供給し、両ガス拡散電極間に外部負荷回路を接続することにより、燃料電池として作用するよう構成される。また、該固体高分子型燃料電池に用いられる燃料は水素の他、メタノールやエタノールなどのアルコールを直接燃料として用いる場合もある。
燃料極側のセパレータにおけるガス流路を通ってガス拡散電極面に導かれた水素は、ガス拡散電極にて均一に拡散され、燃料極側の触媒層に導かれ、白金などの触媒によって、水素は水素イオンと電荷に分離され、水素イオンは電解質膜を通って、電解質を挟んで反対側の酸素極側の触媒層に導かれる。
一方、燃料極側にて発生した電荷は、負荷を有する回路を通って、酸素極側のガス拡散電極に導かれ、更には酸素極側の触媒層に導かれる。これと同時に、酸素極側のセパレータから導かれた酸素は、酸素極側のガス拡散電極を通って、酸素極側の触媒層に到達した上記の電荷及び水素イオンの存在下、水を生成し発電サイクルを完結する。
このような燃料電池サイクルにおいて、燃料極側及び酸素極側ともに、いずれの触媒層とも、電荷及びイオンの分離、結合といった電気化学的な反応を行いつつ、生成水の排水等の物理的な特性をも兼ね備える必要があり、燃料電池単セル構造中において、極めて重要な機能を有する部分となっている。
そこで、塗液をガス拡散電極上に塗工する方法も考えられている(例えば、特許文献2参照)。ここで、塗液は、通常、触媒担持カーボン、イオン伝導性樹脂(例えば、デュポン社製の商品名「ナフィオン」)及び溶媒からなり、イオン伝導性樹脂を触媒粒子の結着剤として用いるのが一般的である。
また、多孔質体であるガス拡散電極上に塗液を塗工する場合、多孔質体である電極に触媒粒子が浸入しやすく、均一な触媒層を得ることが難しい。
さらに、上記のような、触媒担持カーボンとイオン伝導性樹脂からなる塗液を用いると、触媒を担持するカーボン自体が長期使用において親水性が次第に強くなることと、イオン伝導性樹脂で結着された触媒担持カーボンが多孔質構造をとるものの、その孔径が1μ以下と小さいことから、生成水や供給水が凝縮して孔が閉塞することで、発電効率の低下をきたす問題があった。また、触媒粒子の電解質膜やガス拡散電極への固定化が困難であり、単セルを組みあげるまでの工程において、触媒粒子が脱落するなどの不具合を生じる場合があった。
また、イオン伝導性樹脂をバインダーとする触媒層では、該イオン伝導性樹脂が個々の触媒担持カーボン粒子を結着しても、該イオン伝導性樹脂の触媒担持カーボンあるいは、周辺部材である電解質膜やガス拡散電極との接着性が不十分であるため、セルのアセンブリング工程までのハンドリング性に問題があった。
更には、耐熱性が低いために作動温度が上げられない等の問題を生じる場合がある他、従来用いられているイオン伝導性樹脂は、親水性であるために、燃料電池として作動させた場合に、膨潤して触媒粒子を保持しきれない場合があった。
前記多孔質基材を被覆する被覆用樹脂を、該被覆用樹脂を溶解する良溶媒に溶解させて被覆用樹脂スラリーと成す第1工程と、前記被覆用樹脂スラリーに、前記被覆用樹脂を溶解せず前記良溶媒よりも沸点の高い貧溶媒を添加する第1−1工程と、前記被覆用樹脂スラリーに、触媒粒子及びイオン伝導性樹脂を添加して塗液と成す第2工程と、前記塗液を、多孔質基材に塗工して塗工フィルムと成す第3工程と、前記塗工フィルムを乾燥する第4工程とを有する製造方法により得られるものであることを特徴とする。
前記多孔質体が電極側面と電解質側面とを有し、イオン伝導性樹脂層が該多孔質体の孔内壁に沿って前記電極側面から前記電解質側面へ連続していることが好ましい。
ここで、前記多孔質基材は、樹脂化合物、セラミックス、防錆性の金属からなる群より選ばれる1種以上からなることが好ましい。
セラミックスとしては、ガラス又は炭素材料を用いることがさらに好ましい。防錆性の金属としては、ステンレス鋼を用いることがさらに好ましい。
多孔質基材は、繊維体からなるシートであることがさらに好ましい。
多孔質基材は、平滑化処理が施されていることがさらに好ましい。
また、前記被覆層は、フッ素系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる1種若しくは2種以上からなる重合体若しくは共重合体、又は2種以上からなる混合物を含むことが好ましい。
さらに、前記フッ素系樹脂は、フッ化ビニリデン系樹脂を含有することが好ましい。
被覆層は、質量平均分子量が10万〜120万の樹脂からなることが好ましい。
ここで、前記多孔質基材が、樹脂化合物、セラミックス、防錆性の金属からなる群より選ばれる1種以上からなると、平滑性を特に良好に維持し、耐酸性、耐熱性、電気化学的な安定性に特に優れる触媒膜を提供することができる。
更に、セラミックスとしてガラス又は炭素材料を用いると、多孔質性を安定的に保持することができ、防錆性の金属としてステンレス鋼を用いると、機械的強度に優れる触媒膜を構成することができる。
多孔質基材として繊維体からなるシートを用いると、さらに平滑性に優れ、燃料の供給効率あるいは生成水の排出効率に優れた触媒膜を提供できる。
多孔質基材に、平滑化処理が施されていると、さらに平滑性に優れた触媒膜を提供することができ、さらに安定して長い発電寿命を発揮する燃料電池を可能ならしめることができる。
前記被覆層においてフッ素系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる1種若しくは2種以上からなる重合体若しくは共重合体、又は2種以上からなる混合物を用いると、さらに燃料電池の作動時における酸性雰囲気に強く、耐熱性が高く、電気化学的にも安定な触媒膜を提供することができる。
前記被覆層においてフッ化ビニリデン系樹脂を用いると、燃料流体の供給性および生成水の排出においてさらに高い性能を有し、触媒粒子や周辺部材(ガス拡散電極や電解質膜)との密着性が良好であり集電性にさらに優れた触媒膜を提供することができる。
本発明の、固体高分子型燃料電池用触媒膜の第二の製造方法によれば、触媒の部分劣化が抑えられ、触媒の利用効率が高く、集電性に優れ、発電寿命が長い燃料電池を実現するような固体高分子型燃料電池用触媒膜を提供することができる。
本発明の固体高分子型燃料電池は、触媒の部分劣化が抑えられ、発電寿命が長い。
<固体高分子型燃料電池用触媒膜>
図1に、本発明の固体高分子型燃料電池用触媒膜(以下、「触媒膜」と称する)の例を示す。
図1に示す触媒膜10は、多孔質基材11及び該多孔質基材11を被覆する被覆層12からなり電極側面13と電解質側面14とを有する多孔質体16と、該多孔質体16の孔内壁17に沿って電極側面13から電解質側面14へ連続したイオン伝導性樹脂層18と、該イオン伝導性樹脂層18の表面に保持された触媒粒子20とを有する。
なお、電極側面13とは、電解質層の外側に本発明の触媒膜を設け、その外側に電極を設けて固体高分子型燃料電池を構成した場合に、該電極と接する面である。電解質側面14とは、同様に固体高分子型燃料電池を構成した場合に、電解質層と接する面である。
具体的には、固体高分子型燃料電池においては耐酸性、耐熱性、電気化学的な安定性が要求されるため、多孔質基材11に使用できる原材料は、これらの点で燃料電池における使用に耐えるものであればいずれも使用することが可能である。
なお、触媒膜10においては、多孔質基材11は被覆層12に被覆されているので、被覆層12に被覆された条件下で損傷を受けない程度の耐酸性、耐熱性及び電気化学的な安定性を示すものであればよい。
例えば、金属材料は、燃料電池内における酸性雰囲気下で腐食されやすいが、本発明においては、上述のように多孔質基材11が被覆層12により被覆されるために、腐食が防止されるので、用いることが可能である。
さらに、材料として、炭素や金属材料といった導電性の高いものを用いると、さらに集電性能に優れた触媒膜を提供することができる。
ここでいうセラミックスとは、主構成物質が無機非金属である材料をいい、例えばカーボン等の炭素材料、ガラス等が挙げられる。また、防錆性の金属とは、防錆性を示す金属であってもよいし、表面に防錆処理を施された金属であってもよい。防錆処理としては、例えば、金属素材に予め酸化皮膜を設けることや、金属表面を耐酸性の高い樹脂や貴金属でコーティングする等の表面処理が挙げられる。
樹脂化合物としては、燃料電池の作動時における酸性雰囲気に強く、また耐熱性が高いものが望ましく、更には、電気化学的にも安定であるものが望ましいことから、例えばフッ素系樹脂、フッ素繊維、ポリスルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる1種若しくは2種以上からなる重合体若しくは共重合体、又は2種以上からなる混合物がさらに好ましい。
ガラスとしては、例えば、ガラス繊維等が挙げられる。炭素材料としては、例えば、カーボン繊維等が挙げられる。
繊維体からなるシートとしては、例えば不織布、織布、及び市販のメッシュ等が挙げられる。
不織布の例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化エチレンポリプロピレンコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー(PFA)などの樹脂化合物からなる繊維、ガラス繊維、耐酸性のあるステンレス繊維、酸化皮膜などで予め防錆処理を施した金属繊維などからなる不織布が挙げられる。
また必ずしも、不織布の範疇に分類されるものではないが、カーボンナノチューブ等の炭素繊維からなる炭素繊維を固めた板状のもの、たとえばカーボンペーパーなども好適に用いることが可能である。
メッシュの材質は、耐酸性、耐熱性、電気化学的な安定性が充分なものであれば、いずれも利用が可能である。たとえば、エクスパンドメタルに防錆処理を施したものや、スクリーン印刷に用いられる各種のメッシュ、あるいはカーボンクロスなどが好適に利用されうる。
被覆層12は、燃料電池の作動時における酸性雰囲気に強く、また耐熱性が高いものが好ましく、更には、電気化学的にも安定であるものが好ましいことから、フッ素系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる1種若しくは2種以上からなる重合体若しくは共重合体、又は2種以上からなる混合物を含むことが好ましい。
前記フッ素系樹脂としては、溶媒可溶性のフッ素系樹脂化合物であればいずれも好適に用いられ、例えば、デュポン社製 商品名:テフロン(登録商標)AF等が挙げられる。
ポリスルホン系樹脂としては、例えばデュポン社製の商品名:ナフィオン等が挙げられ、ポリイミド系樹脂としては含フッ素ポリイミド樹脂等が挙げられる。アクリル系樹脂としては、旭化成社製の商品名:デルペット等が挙げられる。スチレン系樹脂としては、JSR社製の商品名:DYNARON等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、東洋紡社製の商品名:ペルプレン等が挙げられる。エポキシ系樹脂としては、住友化学社製の商品名:スミエポキシ等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、日本ポリオレフィン社製の商品名:アドックス等が挙げられる。シクロオレフィン系樹脂としては、日本ゼオン社製の商品名:ZERONEX等が挙げられる。
フッ化ビニリデン系樹脂は、耐熱性に優れ、電気化学的に安定で耐酸性が極めて優れているため、燃料電池内部に置かれても、長期安定性において優れている。しかも比較的安価であることから、本発明では特に好適に用いることが可能である。
また、フッ化ビニリデン系樹脂を含む被覆層12はゴム性状を有し弾力性に富むことから、触媒膜と隣接するガス拡散電極との電気的な接続性や、電解質膜表面との密着性にさらに優れる触媒膜を提供することができる。
さらに、フッ化ビニリデン系樹脂を含む被覆層12は適度に疎水性を示すので、触媒膜が燃料電池の酸素極用触媒膜として用いられた場合に、排出水の通過が良好であり、水による多孔質体16の孔の閉塞を防ぐことができる。
また、多孔質体16における燃料ガスの供給効率あるいは排出ガスの排出効率を妨げないので好ましい。
このような触媒膜を用いて構成された固体高分子型燃料電池は、電池寿命がさらに改善される。
フッ化ビニリデン系樹脂の中でも、ポリフッ化ビニリデンは耐熱性が高く、機械的強度が良好であるため特に好ましい。
上記のようなフッ化ビニリデン系樹脂は、フッ化ビニリデンを含むモノマーの付加重合反応により得られ、その重合方法としては、公知の技術を用いることができる。すなわちラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、光・放射線重合などにより得ることができる。
ここで、被覆層12は、質量平均分子量が10万〜120万の樹脂からなることが好ましい。質量平均分子量が10万未満の場合は、被覆層12の強度が低くなる場合がある。一方、120万を超すと、溶媒への溶解性が劣ることから、塗料化が困難となったり、塗料の粘度ムラが生じて最終的な触媒膜の厚さ精度が低下し、触媒膜と電解質膜およびガス拡散電極との密着性が不均一となったりする場合がある。
なお、ここでいう質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)測定法により求めることができる。樹脂の溶解する溶媒、例えばフッ化ビニリデン系樹脂であれば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン等の溶媒に溶解させ試料とし、分子量既知の標準ポリスチレン混合溶液を標準試料として用いて較正曲線を作成した後、前記試料を測定し、ポリスチレンに対する相対分子量(ポリスチレン換算分子量)により求めることができる。
さらに、この孔径を5μmよりも大きくすると、燃料流体の触媒膜への供給効率をさらに高くすることができる。
イオン伝導性樹脂層18は、イオン伝導性樹脂からなる。イオン伝導性樹脂としては、プロトン(水素イオン)交換基を有するものが用いられる。プロトン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、などが好適に用いられる。中でも、フルオロアルキルエーテル側鎖とフルオロアルキル主鎖から構成されるプロトン交換基を有する樹脂、例えば、デュポン社製 商品名:ナフィオン等がより好ましく用いられる。
触媒粒子20は、触媒のみからなる粒子であってもよく、触媒を担持した炭素材料であってもよいが、触媒を担持した炭素材料を用いると、触媒をさらに高い効率で利用できるため好ましい。
触媒としては、例えば、白金触媒や、白金とルテニウムからなる合金触媒等を主に用いることができる。触媒膜10を用いて燃料電池を構成するときに、触媒膜10を燃料電池の燃料極と電解質層との間に設ける場合には、水素イオンを生成できる触媒であれば、いずれも好適に用いることが可能である。触媒膜10を燃料電池の酸素極と電解質層との間に設ける場合には、酸素イオンを生成できる触媒であれば、いずれも好適に用いることが可能である。
水素イオンを生成できる触媒としては、例えば、白金とルテニウムからなる合金触媒等が挙げられる。
酸素イオンを生成できる触媒としては、例えば、白金触媒等が挙げられる。
例えば、「ファーネスブラック」や「チャネルブラック」等に代表されるいわゆるカーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックとしては、比表面積や粒子径の大きさによらずいずれのグレードのものも使用可能であるが、比表面積が大きく、かつ二次凝集粒子の大きさが比較的大きい高ストラクチャーのものが、性能と生産性の両立から好適に利用できる。例えば、ライオンアクゾ社製「ケッチンEC」やキャボット社製「VulcanXC72R」は、導電性グレードのカーボンブラックの中でも、塗液での高分散性と触媒膜に用いた場合の抵抗の低さから特に好適に用いられる。
また、カーボンブラック以外では、アセチレンブラック、黒鉛のほか、カーボン繊維、カーボンナノチューブ等の炭素繊維、フラーレンなども、カーボンブラックと同様に好適に用いられる。
イオン伝導性樹脂の含有量は、特に限定されないが、良好にイオンを伝導させるために、被覆層を成す樹脂10質量部に対して1〜10質量部であることが好ましい。
また、本発明の触媒膜においては、イオン伝導性樹脂層が、電極側面13から電解質側面14へ連続していない部位が存在してもよく、多孔質体16の孔をイオン伝導性樹脂が塞いでいる部位が一部に存在しても構わない。
本発明の触媒膜の空隙率は10〜90%の範囲内が好適であり、より好適には50〜90%であり、さらに好適には70〜90%である。10%未満では、本発明の触媒膜を燃料電池の燃料極側に適用した場合には、触媒膜の孔に流入する燃料流体量が少なくなり、燃料電池の酸素極側に適用した場合には、水蒸気の透過流路が狭まる等の問題が生ずる。90%を超える場合には触媒膜の機械的強度の低下が著しく、燃料電池セルに組み上げるまでの工程で破損しやすく不都合を生じる場合がある。透気度は1〜1000sec/100ml、密度は0.15〜1.3g/cm3が同様の理由で好適となる。
なお、ここでいう空隙率は、(多孔質基材の比重)×(触媒膜における多孔質基材の質量含有率)=a、(被覆層の比重)×(触媒膜における被覆層の質量含有率)=b、(イオン伝導性樹脂層の比重)×(触媒膜におけるイオン伝導性樹脂層の質量含有率)=c、(触媒粒子の比重)×(触媒膜における触媒粒子の質量含有率)=d、および触媒膜の密度を、下記の式に代入することにより求めることができる。
空隙率(%)=[{(a+b+c+d)−(触媒膜の密度)}/(a+b+c+d)]×100
透気度は、JIS P 8117に基くガーレー試験法により測定される。
密度は、JIS P 8118に基く「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」により測定される。
なお、ここでいう触媒膜10の厚さとは、図1に示す電極側面13と電解質側面14との間の距離をいう。
多孔質基材11の厚さは、触媒膜10の厚さと同程度かそれ以下が望ましく、3〜400μm、より好ましくは、15〜350μm、更により好ましくは15〜100μmである。3μ以下では、多孔質基材そのものの機械的強度が低下し、セル組み付けまでのハンドリングが困難になる。400μmを超えると、燃料通過のための多孔質内の流路が長くなり、高負荷時の出力電圧が低下する他、特に酸素極側では生成水により触媒膜内の流路が閉塞しやすくなる場合がある。
さらに、触媒膜10においては、触媒粒子20が、多孔質体16の孔内壁17に沿ったイオン伝導性樹脂層18の表面に保持されていることにより、孔を流れる燃料流体である水素やアルコール系燃料と触媒粒子20とが効率よく接触するので、燃料流体が効率よくイオン化される。
また、触媒粒子20を保持したイオン伝導性樹脂層18が、多孔質体16の電極側面13から電解質側面14へ連続していることにより、触媒粒子20によって燃料流体から生成されたイオンが、イオン伝導性樹脂層18によって電極側面13から電解質側面14へ効率よく伝送されるので、触媒膜10は高い集電性を発現するので、さらに触媒の利用効率が高く、集電性に優れた燃料電池を提供することができる。
さらに、被覆層12においてフッ化ビニリデン系樹脂を用いると、燃料流体の供給性および生成水の排出においてさらに高い性能を有し、触媒粒子や周辺部材(ガス拡散電極や電解質膜)との密着性が良好であり集電性にさらに優れた触媒膜を提供することができる。
例えば、被覆層において、フッ化ビニリデン系樹脂からなるフッ素系樹脂を用いると、上記のような高空隙率の触媒膜を容易に得ることができる。
本発明の、固体高分子型燃料電池用触媒膜の第一の製造方法(以下、「第一の製造方法」という)は、多孔質基材を被覆する被覆用樹脂を、該被覆用樹脂を溶解する良溶媒に溶解させて被覆用樹脂スラリーと成す第1工程と、前記被覆用樹脂スラリーに、前記被覆用樹脂を溶解せず前記良溶媒よりも沸点の高い貧溶媒を添加する第1−1工程と、前記被覆用樹脂スラリーに、触媒粒子及びイオン伝導性樹脂を添加して塗液と成す第2工程と、前記塗液を、多孔質基材に塗工して塗工フィルムと成す第3工程と、前記塗工フィルムを乾燥する第4工程とを有する。
まず、多孔質基材を被覆する被覆用樹脂を、該被覆用樹脂を溶解する良溶媒に溶解させて被覆用樹脂スラリーと成す第1工程を行う。
被覆用樹脂としては、フッ素系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる1種若しくは2種以上からなる重合体若しくは共重合体、又は2種以上からなる混合物を含むと、触媒膜が燃料電池の作動時における酸性雰囲気に強く、また耐熱性が高く、更には、電気化学的にも安定となることから好ましい。
被覆用樹脂として、フッ化ビニリデン系樹脂を用いると、得られる被覆用樹脂スラリーに、後述のように触媒粒子及びイオン伝導性樹脂を添加した場合に、触媒粒子及びイオン伝導性樹脂を、フッ化ビニリデン樹脂が形成する被覆層の系外に露出させやすいことからさらに好ましい。
フッ化ビニリデン系樹脂としては、上記と同様のものを例示することができる。
被覆用樹脂の質量平均分子量は、10万〜120万であることが好ましい。質量平均分子量が10万未満の場合は、被覆用樹脂からなる被覆層の強度が低くなる場合がある。一方、120万を超すと、溶媒への溶解性が劣ることから、塗料化が困難となったり、塗料の粘度ムラが生じて最終的な触媒膜の厚さ精度が低下する場合がある。
例えば、被覆用樹脂としてフッ化ビニリデン系樹脂を用いる場合、良溶媒としては、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系、ジメチルスルホキシドなどのスルホン系、2−ブタノン、シクロヘキサノンなどのケトン系、テトラヒドロフランなどのエーテル系などが例示でき、これらのうち2種類以上を混合して用いることもできる。
前記第一工程において、被覆用樹脂を良溶媒に溶解させる方法としては、市販の攪拌機を使用して良い。ここで、良溶媒として、室温で容易に被覆用樹脂を溶解する溶媒を用い、室温で被覆用樹脂を溶解させることが好ましいが、必要に応じて加熱しても良い。
前記被覆用樹脂スラリーの濃度は、得るべき特性、例えば機械強度、塗工のしやすさ等を考慮に入れ適宜変更することができ、例えば薄膜を得たい場合は低濃度で、厚膜を得たい場合は高濃度で調製することができる。
本発明に用いられる貧溶媒は、前記良溶媒よりも沸点の高いものであり、用いる被覆用樹脂に応じて適宜選択される。貧溶媒としては、2種類以上を混合して用いることもできる。
例えば、被覆用樹脂としてフッ化ビニリデン樹脂化合物を用いる場合は、良溶媒よりも沸点の高い貧溶媒として、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチルなどのフタル酸エステル系、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどのグリコール系、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール等が挙げられる。
前記良溶媒よりも沸点の高い貧溶媒を用いることで、後述のように、被覆用樹脂スラリーに、触媒粒子及びイオン伝導性樹脂を添加して得られた塗液をコーティングした後、乾燥を行うと、良溶媒が貧溶媒より先に蒸発し、溶解度の低下した被覆用樹脂が析出を開始し、多孔質基材とともに多孔質体を形成する。
触媒粒子、イオン伝導性樹脂としては、具体的には、上述の触媒粒子、イオン伝導性樹脂と同様のものを用いることができる。
第1−1工程で貧溶媒を添加された被覆用樹脂スラリーに、触媒粒子及びイオン伝導性樹脂をさらに添加する方法としては、触媒粒子を溶媒に分散させた分散液とイオン伝導性樹脂を溶媒に分散させた分散液を別々に調製し、これらの分散液を順不同で順に、若しくは同時に、この被覆用樹脂スラリーに添加してもよいし、予め触媒粒子及びイオン伝導性樹脂を同一の溶媒に分散させて混合した混合スラリーを調製して、この混合スラリーを被覆用樹脂スラリーに加えてもよい。
ここで、触媒粒子あるいはイオン伝導性樹脂の分散に用いる溶媒は、被覆用樹脂を溶解する良溶媒と同種であることが好ましい。
分散には、市販のミキサーを用いることができ、例えば特殊機化社製の「ホモミキサー」、キーエンス社製の「ハイブリッドミキサー」等が好適に用いられる。
なお、本発明では、触媒粒子の添加量が少ない場合に、触媒を担持していないカーボンブラックや炭素繊維等の炭素材料を、触媒を担持した炭素材料と混合して用いることが、触媒膜全体の抵抗率を低く調整できるため好適な手段である。
なお、塗工フィルムとは、前記塗液を塗工することで得られるシート状の被覆物を示す。
前記第3工程及び第4工程を行うことで、塗液に含まれる良溶媒が貧溶媒より先に蒸発し、溶解度の低下した被覆用樹脂が析出を開始し、貧溶媒の存在体積相当の空隙率を有する多孔質構造の被覆層が形成される。
このようにして得られた触媒膜は、多孔質基材及び該多孔質基材を被覆する被覆層を含み、電極側面と電解質側面とを有する多孔質体と、該多孔質体の孔内壁に沿って前記電極側面から前記電解質側面へ連続したイオン伝導性樹脂層と、該イオン伝導性樹脂層の表面に保持された触媒粒子とを有するものとなる。
前記第3工程において、多孔質基材は、平滑性を得るためにベースフィルムに設置されていてもよい。ここで用いられる基板としては、塗工フィルムを乾燥させたときに塗工フィルムから剥離できるものであればよく、例えば、PET樹脂、ポリ四フッ化エチレン、ポリイミド等からなるベースフィルムを用いることができる。このようなベースフィルムとして樹脂フィルムを用いる場合は、離型処理、易接着処理などの表面処理を施したものでもよく、塗布方法により適宜選択すれば良い。
第3工程における塗工方法は、特に限定されるものではなく、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、グラビアコート法、スクリーン印刷法等を用いることができる。塗工方法によってそれぞれ好適な塗液の粘度範囲が存在するが、それぞれの塗工方法にあった粘度に調整するためには、上記の良溶媒を塗液に添加し、その添加量を変えることで容易に調整が可能である。
第一の製造方法によれば、得られる触媒膜は、被覆層で被覆された多孔質基材を有することにより、平滑性が良好となるので、触媒膜と周辺部材との接触圧力が均一に保たれて、触媒膜の面方向での押圧が均一となり、触媒の部分劣化の少ないものとなる。したがって、燃料電池の高寿命化が実現できる。
さらに、得られる触媒膜は、イオン伝導性樹脂および触媒粒子が、被覆用樹脂の孔の表面に均一に露出する構造をとることにより、触媒と燃料流体との接触効率が上がるとともに、燃料流体から触媒の作用で生成したイオンが、効率よく伝送されるので、高い集電性機能を示す。
さらに、塗工法なので、多孔質基材の厚みあるいは塗液の塗工量を調整することで、膜厚を容易に制御して触媒膜を制御することができる。
さらに、乾燥法で多孔質を形成させるので、このような触媒膜を生産性良く、安価で大型化でき、空隙率の制御がしやすいというメリットをもって得ることができる。
また、フッ化ビニリデン系樹脂が適度な疎水性を有するために、生成水の排出においてさらに高い性能を有し、水による孔の閉塞現象がおこらず、安定した発電特性を長期にわたって維持することを可能とする触媒膜を提供することができる。
フッ化ビニリデン系樹脂が適度な弾性を有するので、得られた触媒膜をガス拡散電極および電解質膜と組み合わせて燃料電池セルと成すときに、セル組み付けの加圧により触媒粒子どうし、触媒粒子とイオン伝導性樹脂、あるいはイオン伝導性樹脂と周辺部材との接触が良好となり、すなわち触媒膜と触媒粒子や周辺部材(ガス拡散電極や電解質膜)との密着性が良好となり、電気的な接触抵抗が低減されることで、集電性にさらに優れた触媒膜を提供することができる。
また、触媒粒子や周辺部材との接着性が良好であるから、イオン伝導性樹脂が個々の触媒粒子に濡れ広がっても、得られた触媒膜をガス拡散電極および電解質膜と組み合わせて燃料電池セルと成した場合に、イオン伝導性樹脂と、触媒粒子あるいは電解質膜やガス拡散電極との接着性が不十分であることによるセルのアセンブリング工程までのハンドリング性の問題を生じない。
なお、被覆用樹脂としてフッ化ビニリデン系樹脂のみを用いると、触媒膜の空隙率および構造を容易に制御できることから特に好ましい。
本発明の、固体高分子型燃料電池用触媒膜の第二の製造方法(以下、「第二の製造方法」という)は、多孔質基材を被覆する被覆用樹脂を、該被覆用樹脂を溶解する良溶媒に溶解させて被覆用樹脂スラリーと成す第1工程と、前記被覆用樹脂スラリーに、触媒粒子及びイオン伝導性樹脂を添加して塗液と成す第2工程と、前記塗液を多孔質基材に塗工して塗工フィルムと成す第3工程と、前記塗工フィルムを、前記被覆用樹脂を溶解しない貧溶媒に含浸する第3−1工程と、前記塗工フィルムを乾燥する第4工程とを有する。
抽出法を用いる場合は、第3工程において得られた塗工フィルムを貧溶媒中に含浸する第3−1工程を行うことで、樹脂化合物中の良溶媒が抽出されて貧溶媒と置換され、さらに乾燥する第4工程を行うことで、触媒粒子の分散した自立性のある多孔質の触媒膜を得ることができる。
さらに、抽出法で多孔質を形成させるので、このような触媒膜を生産性良く、安価で大型化でき、空隙率の制御がしやすいというメリットをもって得ることができる。
本発明の固体高分子型燃料電池は、上述した本発明の固体高分子型燃料電池用触媒膜を備えることを特徴とする。
例えば、イオン伝導性のある固体高分子電解質膜からなる電解質層の両外側に本発明の触媒膜を設置し、該触媒膜の外側にガス拡散電極を配して一方を燃料極、他方を酸素極とし、該ガス拡散電極の外側にセパレータを配することで、本発明の固体高分子型燃料電池を構成することができる。
ここで、燃料極側又は酸素極側のいずれか一方のみの外側に本発明の触媒膜を設置することもでき、両極に設置することもできる。例えば、燃料極側に設置すれば、メタノール、水素等の液体燃料を用いる場合に好適となり、酸素極側に設置すれば、生成した水の排出効率に優れるものとなる。より高い触媒利用率を実現するためには、両極側に設けることが好ましい。
一方、燃料極側にて発生した電荷は、負荷を有する回路を通って、酸素極側のガス拡散電極に導かれ、更には酸素極側の触媒膜に導かれる。これと同時に、酸素極側のセパレータから導かれた酸素は、酸素極側のガス拡散電極を通って、酸素極側の触媒膜に到達した上記の電荷及び水素イオンの存在下、水を生成し発電サイクルを完結する。
本発明の触媒膜を、電解質層の燃料極側および酸素極側の何れにも配備した固体高分子型燃料電池を作製した。
[燃料極用触媒膜の製造]
(第1工程)
まず、質量平均分子量12万のフッ化ビニリデンホモポリマーからなる被覆用樹脂10量部を、1−メチル−2−ピロリドンからなる良溶媒85質量部に溶解し、被覆用樹脂スラリーと成した。
(第1−1工程)
次に、上記被覆用樹脂スラリーに、フタル酸ジブチルからなる貧溶媒5質量部を添加し、得られた溶液を溶液1とした。
(第2工程)
続いて、触媒担持カーボン(触媒として白金20質量%をカーボンブラック80質量%に担持した粒子;田中貴金属社製)らなる触媒粒子15質量部と、水−アルコール溶液(10質量%の「ナフィオン」溶液)からなるイオン伝導性樹脂溶液85質量部とを、メディア式撹拌機を用いて混合し、分散液1とした。溶液1(100質量部)と分散液1(100質量部)とを混合した後に、ホモミキサーにて9000rpm/5分の条件で攪拌し、塗液1−1を得た。
(第3工程)
PET製のベースフィルムに、多孔質基材として厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート繊維シートを積層して貼りあわせた一体シートを作製した。この一体シート上に、得られた塗液1−1を、アプリケータを用いて塗工し、塗工フィルムを得た。
(第4工程)
塗工フィルムを乾燥させて、触媒膜を得た。触媒膜の厚さは30μmであった。また、空隙率、透気度、密度について測定した結果を表1に示す。得られた触媒膜を、燃料電池における燃料極用の触媒膜とした。
[酸素極用触媒膜の製造]
また、白金とルテニウムを用いた触媒担持カーボン(カーボンと触媒の質量比は燃料極用と同じ)からなる触媒粒子を用いたほかは、上記と同様にして、塗液1−2を調整し、得られた塗液を、上記と同様の条件でフィルムに塗工し、乾燥して、触媒膜を得た。触媒膜の厚さは、32μmであった。また、空隙率、透気度、密度について測定した結果を表1に示す。得られた触媒膜を、燃料電池における酸素極用の触媒膜とした。
[触媒膜の観察]
上記で得られた燃料極用および酸素極用の触媒膜の断面について、その細部構造を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、多孔質基材及び該多孔質基材を被覆する被覆層からなる多孔質体と、該多孔質体の孔内壁に沿って前記電極側面から前記電解質側面へ連続したイオン伝導性樹脂層と、該イオン伝導性樹脂層の表面に保持された触媒粒子とを有する構造が確認された。
多孔質基材として、厚さ40μmのポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維からなる不織布(東洋紡績社製 商品名:ザイロン)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、燃料極用の触媒膜(厚さ45μm)および酸素極用の触媒膜(厚さ48μm)を得た。また、空隙率、透気度、密度について測定した結果を表1に示す。触媒膜断面の観察結果は実施例1と同様であった。
<実施例3>
被覆用樹脂として、質量平均分子量110万のフッ化ビニリデンホモポリマーを用いた他は、実施例1と同様にして燃料極用の塗液3−1及び酸素極用の塗液3−2を作製した。これらの塗液を用い、実施例1と同様にして、燃料極用の触媒膜(厚さ112μm)および酸素極用の触媒膜(厚さ114μm)を得た。また、空隙率、透気度、密度について測定した結果を表1に示す。触媒膜断面の観察結果は実施例1と同様であった。
<実施例4>
多孔質基材として、カレンダー処理を施した厚さ15μmのポリエチレンテレフタレート繊維シートを用いた以外は、実施例1と同様に行い、燃料極用の触媒膜(厚さ22μm)および酸素極用の触媒膜(厚さ23μm)を得た。また、空隙率、透気度、密度について測定した結果を表1に示す。触媒膜断面の観察結果は実施例1と同様であった。
<実施例5>
多孔質基材として、炭化タングステンからなるウィスカー状繊維と、ポリエステル繊維とを混抄した厚さ50μmの多孔質繊維シートを用いた以外は、実施例3と同様に行い、燃料極用の触媒膜(厚さ55μm)および酸素極用の触媒膜(厚さ58μm)を得た。また、空隙率、透気度、密度について測定した結果を表1に示す。触媒膜断面の観察結果は実施例1と同様であった。
<実施例6>
多孔質基材として、厚さ40μmのメッシュ状のステンレス製エクスパンドメタルを用いた以外は、実施例1と同様に行い、燃料極用の触媒膜(厚さ46μm)および酸素極用の触媒膜(厚さ47μm)を得た。また、空隙率、透気度、密度について測定した結果を表1に示す。触媒膜断面の観察結果は実施例1と同様であった。
<実施例7>
多孔質基材として、ポリプロピレンからなる多孔質膜(厚さ30μm)(出光ユニテック社製 商品名:ストラテックPP)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、燃料極用の触媒膜(厚さ32μm)および酸素極用の触媒膜(厚さ32μm)を得た。また、空隙率、透気度、密度について測定した結果を表1に示す。触媒膜断面の観察結果は実施例1と同様であった。
<実施例8>
多孔質基材として、厚さ90μmのカーボンペーパー(東レ製 商品名:TGD−H−090)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、燃料極用の触媒膜(厚さ300μm)および酸素極用の触媒膜(厚さ300μm)を得た。また、空隙率、透気度、密度について測定した結果を表1に示す。触媒膜断面の観察結果は実施例1と同様であった。
<実施例9>
多孔質基材として、厚さ50μmのカーボンクロス(E−TEX製)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、燃料極用の触媒膜(厚さ400μm)および酸素極用の触媒膜(厚さ400μm)を得た。また、空隙率、透気度、密度について測定した結果を表1に示す。触媒膜断面の観察結果は実施例1と同様であった。
<実施例10>
多孔質基材として、フッ素繊維からなる厚さ50μmの不織布(巴川製紙所製 商品名:トミーファイレックF)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、燃料極用の触媒膜(厚さ58μm)および酸素極用の触媒膜(厚さ56μm)を得た。また、空隙率、透気度、密度について測定した結果を表1に示す。触媒膜断面の観察結果は実施例1と同様であった。
カーボンブラック80質量%に白金20質量%を担持した、実施例1と同様の燃料極用の触媒粒子、およびカーボンブラック80質量%に白金・ルテニウム合金20質量%を担持した酸素極用の触媒粒子を用意し、それぞれ10質量部を酢酸ブチル90質量部に混合し、超音波洗浄機にて10分間分散して、燃料極用触媒分散液及び酸素極用触媒分散液を各々100質量部ずつ得た。
その後、各分散液100質量部に対して、更に水及びエタノールの混合溶媒(水:エタノール=20:80)195質量部に「ナフィオン」(デュポン社製)からなるイオン伝導性樹脂5質量部を溶解した溶液200質量部をそれぞれ混合し、更に超音波洗浄機で30分間分散したものを触媒インクとした。該触媒インクを電解質膜である「ナフィオン117」(デュポン社製)の表と裏の両面にアプリケータを用いて塗工し、乾燥させて、燃料極用、酸素極用の触媒層を、それぞれ電解質膜の両面に作成した。燃料極側の触媒層の厚さは28μmであり、酸素極側の触媒層の厚さは30μmであった。触媒膜断面を観察したところ、触媒膜は多孔質を有していなかった。
次に、実施例及び比較例に示した触媒膜を用いて作成した燃料電池の発電特性を評価した結果を表1に示す。燃料電池作成において、実施例1〜10で作成した燃料極用、酸素極用の触媒膜を、イオン交換膜(デュポン社製「ナフィオン117」)からなる電解質層の両面に接触するように配し、熱圧プレス(120℃)にて接合して電極と膜の接合体(MEA)を作製した。
比較例1に関してはそのまま、上記と同様の条件にて熱圧プレスしてMEAとした。
以上で得られたMEAの両面にガス拡散電極としてカーボンペーパーをその両面に配して単セルに組み込んで、評価用のセルとした。
各セルへの供給ガスは水素及び酸素を用いた。供給ガスはいずれもバブリングにて加湿し2.5気圧の供給圧とした上で、単セルにかかる温度を70℃に保持した状態で運転した。電流密度が1A/cm2における電圧を調べた結果を表1に示す。
しかし、触媒粒子とイオン伝導性樹脂のみを含む塗液を直接電解質膜に塗工した比較例1では、5時間の連続運転で大幅な電圧低下が認められた。このことは、塗工する際に、電解質膜に若干のうねりが生じたことと、塗工面の厚さムラや触媒粒子の凝集などが原因となって、触媒膜の一部に集中して触媒の劣化が生じ、発電性能に悪影響を及ぼしたためと推定される。
11 多孔質基材
12 被覆層
13 電極側面
14 電解質側面
16 多孔質体
18 イオン伝導性樹脂層
20 触媒粒子
Claims (13)
- 多孔質基材及び該多孔質基材を被覆する被覆層を含む多孔質体と、イオン伝導性樹脂層と、該イオン伝導性樹脂層の表面に保持された触媒粒子とを有し、
前記多孔質基材を被覆する被覆用樹脂を、該被覆用樹脂を溶解する良溶媒に溶解させて被覆用樹脂スラリーと成す第1工程と、前記被覆用樹脂スラリーに、前記被覆用樹脂を溶解せず前記良溶媒よりも沸点の高い貧溶媒を添加する第1−1工程と、前記被覆用樹脂スラリーに、触媒粒子及びイオン伝導性樹脂を添加して塗液と成す第2工程と、前記塗液を、多孔質基材に塗工して塗工フィルムと成す第3工程と、前記塗工フィルムを乾燥する第4工程とを有する製造方法により得られるものであることを特徴とする固体高分子型燃料電池用触媒膜。 - 前記多孔質体が電極側面と電解質側面とを有し、イオン伝導性樹脂層が該多孔質体の孔内壁に沿って前記電極側面から前記電解質側面へ連続していることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用触媒膜。
- 前記多孔質基材は、樹脂化合物、セラミックス、防錆性の金属からなる群より選ばれる1種以上からなることを特徴とする請求項1または2に記載の固体高分子型燃料電池用触媒膜。
- 前記セラミックスは、ガラス又は炭素材料であることを特徴とする請求項3に記載の固体高分子型燃料電池用触媒膜。
- 前記金属は、ステンレス鋼であることを特徴とする請求項3に記載の固体高分子型燃料電池用触媒膜。
- 前記多孔質基材は、繊維体からなるシートであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池用触媒膜。
- 前記多孔質基材は、平滑化処理が施されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池用触媒膜。
- 前記被覆層は、フッ素系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる1種若しくは2種以上からなる重合体若しくは共重合体、又は2種以上からなる混合物を含むことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池用触媒膜。
- 前記被覆層は、フッ化ビニリデン系樹脂を含有することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池用触媒膜。
- 前記被覆層は、質量平均分子量が10万〜120万の樹脂からなることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池用触媒膜。
- 多孔質基材を被覆する被覆用樹脂を、該被覆用樹脂を溶解する良溶媒に溶解させて被覆用樹脂スラリーと成す第1工程と、
前記被覆用樹脂スラリーに、前記被覆用樹脂を溶解せず前記良溶媒よりも沸点の高い貧溶媒を添加する第1−1工程と、
前記被覆用樹脂スラリーに、触媒粒子及びイオン伝導性樹脂を添加して塗液と成す第2工程と、
前記塗液を、多孔質基材に塗工して塗工フィルムと成す第3工程と、
前記塗工フィルムを乾燥する第4工程とを有することを特徴とする固体高分子型燃料電池用触媒膜の製造方法。 - 前記被覆用樹脂は、フッ化ビニリデン系樹脂であることを特徴とする請求項11に記載の固体高分子型燃料電池用触媒膜の製造方法。
- 請求項1ないし10のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池用触媒膜を備えることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
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