JP3976598B2 - レジスト・パターン形成方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レジスト・パターン形成方法に関し、さらに言えば、半導体装置の製造時にその微細形状を形成するのに使用されるリソグラフィ・プロセスにおいて、リフロー現象を利用したレジスト・パターンの変形量を好適に制御し、もって変形レジスト・パターンを精度良く形成可能とするレジスト・パターン形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体装置の高集積化、高性能化が急速に進展してきており、それに伴って増大する製造コストをいかに抑制するかが重要課題となっている。そこで、半導体装置の製造工程を短縮して製造コストを低減する手法として、あるレジスト・パターンをマスクとして1回目のエッチングを行った後、そのレジスト・パターンをリフロー現象により変形させ、得られた変形レジスト・パターンをマスクとして2回目のエッチングを行う、という方法が提案されている。この方法は「レジスト・リフロー法」と呼ばれている。この方法によれば、2回のエッチング工程を実質的に1個のレジスト・パターンを用いて実施できるため、製造工程数を減少させることができる。
【0003】
図3は、従来のレジスト・リフロー法の原理を説明するための概念図であり、図3(a)にはリフロー前の模式断面図を、図3(b)にはリフロー後の模式断面図を示してある。
【0004】
まず、図3(a)に示すように、公知の方法により、基体102上に所定形状を持つレジスト・パターン101を形成する。このレジスト・パターン101は、エッチング工程のマスクとして利用される。
【0005】
次に、レジスト・パターン101が可溶な溶剤の蒸気に暴露する等して、表面からレジスト・パターン101の内部に溶剤を浸透させる。この時、溶剤の浸透によって粘度の低下したレジスト・パターン101は、その表面張力、溶剤の再揮発、および下地(つまり基板102の表面)の濡れ性の影響を受けながら、エネルギー的に最も安定な形を取りながらリフロー現象が進行する。レジスト・パターン101が所望の形状になると、上記の溶剤蒸気への暴露処理の停止、乾燥処理等によってレジスト・パターン101の変形を停止させる。こうして、レジスト・パターン101のリフローが完了する。その結果、図3(b)に示すように、変形レジスト・パターン101aが基体102上に形成される。この変形レジスト・パターン101aも、エッチングのマスクとして使用される。
【0006】
図3(b)では、変形レジスト・パターン101aの形状が、レジスト・パターン101の形状とはかなり異なっているが、リフロー条件を調整することにより、この形状変形の度合いは必要とする形状に応じて任意に変更できる。
【0007】
図4は、従来のレジスト・リフロー法を電界効果トランジスタの製造工程に適用した例を示す。図4(a)は1回目のエッチング後、リフロー前の模式断面図、図4(b)はリフロー後の模式断面図、図4(c)は2回目のエッチング後の模式断面図である。
【0008】
図4(a)において、基体110の上にはシリコン膜112が形成されており、そのシリコン膜112の上にソース電極114aとドレイン電極114bが所定間隔をあけて形成されている。ソース電極114aとドレイン電極114bは、クロム(Cr)膜をパターン化して形成されている。
【0009】
ソース電極114aとドレイン電極114bの上には、レジスト・パターン111が形成されている。このレジスト・パターン111は、ソース電極114aとドレイン電極114bを形成するのに用いた元のレジスト・パターン(図示せず)の幅を、公知の方法により狭くしたものである。
【0010】
図4(a)の状態から、レジスト・パターン111のリフローを行う。このリフロー工程は、レジスト・パターン111が可溶な溶剤の蒸気に当該レジスト・パターン111を暴露する等により、その溶剤を当該レジスト・パターン111の表面から内部に浸透させて行う。
【0011】
この時、溶剤の浸透によって粘度の低下したレジスト・パターン111は、その表面張力、溶剤の再揮発および下地(つまり、シリコン膜112、ソース電極114aおよびドレイン電極114bの表面)の濡れ性の影響を受けつつ、エネルギー的に最も安定な形を取りながら徐々に変形し、横方向に広がる。レジスト・パターン111が目的の形状になった時に、蒸気暴露処理の停止、乾燥処理等によってレジスト・パターン111の変形を停止させる。こうしてレジスト・パターン111のリフローが完了し、図4(b)に示すように、変形レジスト・パターン111aが得られる。
【0012】
次に、変形レジスト・パターン111aをマスクとしてシリコン膜112を選択的にエッチングする。こうして、基材110上に、変形レジスト・パターン111aの形状に対応する形状を持つシリコン・アイランド112aが形成される。この時の状態は、図4(c)に示すようになる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のレジスト・パターン形成方法にあっては、リフロー工程において、レジスト・パターン111の表面が溶剤を吸収して軟化し続ける。また、リフローが進むにつれて、レジスト・パターン111の下地に付着する溶剤の蒸気が増加し、レジスト・パターン111との濡れ性が向上していく。このため、リフローが進めば進むほどリフロー速度が加速度的に増加する。その結果、所望の形状を持つ変形レジスト・パターン111aを精度よく形成することが困難となると共に、面内の材質均一性も低下する、という難点がある。
【0014】
よって、変形レジスト・パターン111aの精度および均一性を上げるには、レジスト・パターン111の変形があまり大きくならない範囲でリフローを終了しなくてはならないが、これはリフロー前のレジスト・パターン111を大きく変形させて、かけ離れた形状の変形レジスト・パターン111aとすることができないことを意味する。また、リフローの初期段階では、レジスト・パターン111の表面部分のみが溶解するので、変形レジスト・パターン111aの拡張部分は膜厚が薄くなり、またドライエッチングに対する耐性も弱くなってしまう。
【0015】
変形レジスト・パターン111aの精度を上げる別の手法として、リフローで溶解したレジスト・パターン111aが余計に拡張しないように、下地のパターニング時に予め「堤防」を作っておくことも考えられる。しかし、この方法では、下地のパターン形状が制限を受けることになるから、好ましくない。
【0016】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、リフローによるレジスト・パターンの変形態様と変形量を効果的に制御することができるレジスト・パターン形成方法を提供することを目的とする。
【0017】
本発明の他の目的は、レジスト・パターンの変形量を大きくしてもリフロー後のレジスト・パターンを精度よく形成し得るレジスト・パターン形成方法を提供することにある。
【0018】
本発明のさらに他の目的は、リフロー後のレジスト・パターンのドライエッチングに対する耐性の劣化を回避できるレジスト・パターン形成方法を提供することである。
【0019】
本発明のさらに他の目的は、リフロー後のレジスト・パターンの下地に影響を与えることのないレジスト・パターン形成方法を提供することである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
(1)上記課題を解決するために、本発明のパターン形成方法は、
(a) 第1膜の上に第2膜を形成する工程と、
(b) 前記第2膜の上に第1レジスト・パターンを形成する工程と、
(c) 前記第1レジスト・パターンを用いて前記第2膜を選択的にエッチングする工程と、
(d) 前記第2膜または前記第1膜の前記第1レジスト・パターンより露出した露出部の少なくとも一部について、濡れ性を調整する工程と、
(e) 有機溶剤を用いて前記第1レジスト・パターンをリフローさせることにより、前記第1レジスト・パターンを前記露出部の濡れ性を調整した部分にまで延在させ、もって前記第1膜あるいは前記第2膜を選択的にエッチングするための第2レジスト・パターンを形成する工程とを備えている。
【0021】
(2) 半導体装置の製造時にその微細形状を形成するのに使用されるフォトリソグラフィ・プロセスにおいて、レジスト・パターンのリフロー現象を利用する場合、リフロー後のレジスト・パターン(変形レジスト・パターン)はリフロー前のレジスト・パターン(つまりレジスト膜)の溶け方によって決定される。このため、所望の変形レジスト・パターンを形成するには、リフロー現象の進行する速度を効果的に制御することが不可欠である。
【0022】
本発明のパターン形成方法では、工程(d)において、前記第2膜または前記第1膜の前記第1レジスト・パターンより露出した露出部の少なくとも一部について濡れ性を調整することにより、リフロー現象の速度を効果的に制御するものである。
【0023】
このような「濡れ性調整」により、リフローによる前記第1レジスト・パターンの変形態様と変形量を効果的に制御することができる。その結果、リフロー前の前記第1レジスト・パターンの変形量を大きくしても、リフロー後の前記第2レジスト・パターンを精度よく形成することができる。
【0024】
また、リフロー速度の異常上昇を防止できるので、前記有機溶剤により前記第1レジスト・パターンの内部まで十分に溶解させて、リフロー後の前記第2レジスト・パターンの膜厚の薄い部分をなくすことができる。つまり、前記第2レジスト・パターンの膜厚均一性を維持することができる。その結果、前記第2レジスト・パターンのドライエッチングに対する耐性の劣化を回避することができる。
【0025】
さらに、ドライエッチングに対する耐性の劣化の回避により、リフロー後の前記第2レジスト・パターンの下地に与える影響を防止することができる。
【0026】
(3) 本発明のパターン形成方法の好ましい例では、前記工程(d)で濡れ性が調整された前記露出部の少なくとも一部が、濡れ性を向上させた第1領域と、濡れ性を低下させた第2領域とを含む。この例では、前記第1領域の濡れ性の向上と前記第2領域の濡れ性の低下が、それら第1領域と第2領域の下地の差異に応じて生成されるのが好ましい。また、前記第1領域が、前記第1レジスト・パターンの変形を相対的に大きくしたい箇所に配置され、前記第2領域が、前記第1レジスト・パターンの変形を相対的に小さくしたい箇所に配置されるのがより好ましい。これらの場合、必要に応じて、所望の形状の前記第2レジスト・パターンが容易に得られるという利点がある。
【0027】
本発明のパターン形成方法の他の好ましい例では、前記露出部の少なくとも一部について濡れ性を調整する工程(d)が、所のガスを用いたプラズマ処理により行われる。この例では、本発明のパターン形成方法を容易に実行できる利点がある。この場合、好ましくは、前記プラズマ処理において、濡れ性調整用のガスとしてCHF3とO2の混合ガスが使用される。あるいは、前記プラズマ処理が、第1ステップと第2ステップで実行され、前記第1ステップでは濡れ性調整用のガスとしてCHF3が使用され、前記第2ステップでは濡れ性調整用のガスとしてOが使用される。
【0028】
本発明のパターン形成方法のさらに他の好ましい例では、前記第1レジスト・パターンをリフローさせる前記工程(e)において、前記第1レジスト・パターンを前記有機溶剤の蒸気中に暴露させ、もってその有機溶剤を前記第1レジストパターン中に浸透させる。あるいは、前記第1レジスト・パターンを前記有機溶剤中に浸漬させ、もってその有機溶剤を前記第1レジスト・パターン中に浸透させる。
【0029】
前記有機溶剤としては、アルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類およびグリコールエーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1つを使用するのが好ましい。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のパターン形成方法の好適な実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態に係るレジスト・パターン形成方法の原理を説明するための概念図であり、図1(a)にはリフロー前の模式断面図を、図1(b)にはリフロー後の模式断面図を示してある。
【0031】
まず、図1(a)に示すように、公知の方法により、基体2上に所定形状を持つレジスト・パターン1(これは第1レジスト・パターンに対応する)を形成する。このレジスト・パターン1は、エッチング工程のマスクとして利用される。
【0032】
次に、下地となる基体2の表面の「濡れ性」を調整するための表面処理を行う。こうして、基体2の表面3の濡れ性が調整される。つまり、表面3の濡れ性がその処理前のレベルより低下あるいは向上せしめられる。この時の状態は図1(a)に示す通りである。
【0033】
表面の「濡れ性」の良し悪しの評価は、「接触角」を用いて行われる。ここに「接触角」とは、固体表面と液滴との接触点において、これに引いた接線と固体表面とのなす角である。「接触角」が小さいと濡れ性が良いとされ、その表面上を材料がよく流れると共に、接着強度も向上する。現在では、ほとんどの材料に対して種々の条件に適した表面処理方法が開発されており、「濡れ性」を向上させるための表面処理方法も種々提案されている。
【0034】
例えば、ドライで且つ簡便な表面処理方法としては、プラズマを利用した方法がある。この方法では、真空または大気圧下においてプラズマを発生させ、そのプラズマあるいはプラズマによって活性となった気体に被処理物(すなわち基体2の表面)を曝す方法である。ウエットな表面処理方法としては、界面活性剤を含む液に被処理物を曝す、いわゆる「ウエット洗浄」がある。しかし、この方法では、洗浄や乾燥等を必要として工数が増えると共に、処理に時間を要することから、ドライな表面処理方法の方が望ましい。
【0035】
なお、「濡れ性」を低下させるには、表面処理が施してある被処理物を、例えば湿度や温度、雰囲気や塵埃等の状態を管理した一定環境条件下に所定時間、放置することにより行うことができる。
【0036】
下地となる基体2の表面の「濡れ性」を調整するための表面処理を行った後、レジスト・パターン1が可溶な適当な溶剤の蒸気に当該レジスト・パターン1を暴露する等して、その溶剤をレジスト・パターン1の表面から内部に浸透させ、レジスト・パターン1にリフロー現象を惹起させる。そして、レジスト・パターン1が所望の形状になった時に、蒸気暴露処理の停止、乾燥処理等によってレジスト・パターンの変形を停止させる。こうして、リフロー処理が完了する。この時の状態は、図1(b)に示すようになる。同図より明らかなように、レジスト・パターン1のリフローにより幅の広がった変形レジスト・パターン1aが、基体2の表面に形成されている。
【0037】
リフロー処理の条件としては、例えば、レジスト・パターン1をノボラック系の樹脂で形成した場合、処理溶剤をNMP(N−メチル−2−ピロリドン)とし、処理圧力を−80[kPa]〜+10[kPa]とし、処理時間を3〜10[分]として行うのが好ましい。
【0038】
溶剤であるNMPを吸収して粘度の低下したレジスト・パターン1は、その表面張力、NMPの再揮発、および下地である基体2の表面3の濡れ性の影響を受けつつ、エネルギー的に最も安定な形を取りながらリフロー現象が進行する。このような微小なスケールでの物理現象では、体積や重量よりも表面積に関連する物性が支配的になるので、表面3の濡れ性がレジスト・パターン1と溶剤に対して良いと、リフロー速度が向上し、その濡れ性が低いと、リフロー速度は遅くなる。本実施形態では、リフローの制御性が良くなるように、上述した表面処理によって表面3の濡れ性が最適化される。
【0039】
レジスト・パターン1のリフローに影響を与える第1の要因は、リフローの処理条件、即ち溶剤の種類、濃度、温度等であり、第2の要因は、リフローを行うレジスト・パターン1の種類、当該パターン1の下地の表面(つまり基板2の表面)の濡れ性および断面形状である。
【0040】
以上述べたように、本実施形態のレジスト・パターン形成方法では、レジスト・パターン1より露出した基体2の表面について「濡れ性」を調整することにより、リフロー現象の速度を効果的に制御している。このため、リフローによるレジスト・パターン1の変形態様と変形量を効果的に制御することができ、その結果、リフロー前のレジスト・パターン1の変形量を大きくしても、リフロー後の変形レジスト・パターン1aを精度よく形成することができる。
【0041】
また、リフロー速度の異常上昇を防止できるので、上記の有機溶剤によりレジスト・パターン1の内部まで十分に溶解させて、リフロー後の変形レジスト・パターン1aの膜厚の薄い部分をなくすことができる。つまり、変形レジスト・パターン1aの膜厚均一性を維持することができる。その結果、変形レジスト・パターン1aのドライエッチングに対する耐性の劣化を回避することができる。
【0042】
さらに、ドライエッチングに対する耐性の劣化の回避により、リフロー後の変形レジスト・パターン1aの下地に与える影響を防止することができる。
〔第2実施形態〕
図2は、本発明の第2実施形態に係るレジスト・パターン形成方法を示す説明図であり、図2(a)にはリフロー前の模式断面図を、図2(b)にはリフロー後の模式断面図を、図2(c)は2回目のエッチング後の模式断面図を示す。本実施形態は、より具体的に電界効果トランジスタの製造工程に本発明を適用したものである。
【0043】
図2(a)において、基体10の上にシリコン(Si)膜12が形成され、そのシリコン膜12の上にソース電極14aとドレイン電極14bが所定間隔をあけて形成されている。ソース電極14aとドレイン電極14bは、クロム(Cr)膜をパターン化して形成されている。
【0044】
ソース電極14aとドレイン電極14bの上には、レジスト・パターン11が形成されている。このレジスト・パターン11は、ソース電極14aとドレイン電極14bを形成するのに用いた元のレジスト・パターン(図示せず)の幅を、公知の方法により狭くしたものである。
【0045】
次に、下地となるシリコン膜2とソース電極14aとドレイン電極14bの表面の「濡れ性」を調整するための表面処理を行う。ここでは、表面処理により、Cr膜よりなるソース電極14aとドレイン電極14bの表面領域17の濡れ性を低下させ、それと同時に、ソース電極14aとドレイン電極14bの間に露出したシリコン膜12の表面領域18の濡れ性を向上させている。こうして、レジスト・パターン11の下地の表面の濡れ性が調整される。この時の状態は図2(a)に示す通りである。
【0046】
ここで使用する「濡れ性」調整用の表面処理方法としては、所定のガスを用いるプラズマ処理が有効である。例えば、(i)CHF3とO2の混合ガスを用いて行うプラズマ処理や、(ii)第1ステップでCHF3を用い、第2ステップでO2を用いて行う2段階プラズマ処理、などが有効である。
【0047】
より具体的に言えば、RFパワーを100〜300[W]とし、ガス流量を100〜300[sccm]とし、放電時間を10〜60[秒]としたプラズマ処理が望ましい。この条件下では、溶剤(NMP)に対する濡れ性の目安となる接触角がシリコン膜12の表面領域18で1〜10[度]、ソース電極14aとドレイン電極14b(クロム膜)の表面領域17で30〜50[度]になる。つまり、1回の表面処理により、表面領域17の濡れ性を低下させると同時に、表面領域18の濡れ性を向上させることができるのである。
【0048】
なお、当該表面処理の具体的条件は、処理に用いるガス種、プラズマ条件と下地の膜の溶剤に対する接触角、およびレジスト・パターン11への影響等を予め調査しておき、必要に応じて使い分けるのがよい。つまり、下地の膜の種類に応じて接触角に差が生じ、且つレジスト・パターン11への影響が少ない条件が望ましい。
【0049】
次に、図2(a)の状態から、レジスト・パターン11のリフローを行う。このリフロー工程は、レジスト・パターン11が可溶な溶剤の蒸気に当該レジスト・パターン11を暴露する等により、その溶剤を当該レジスト・パターン11の表面から内部に浸透させて行う。リフローの条件としては、例えば、レジスト・パターン11をノボラック系の樹脂としたとき、溶剤をNMPとし、処理圧力を−80[kPa]〜+10[kPa]とし、処理時間を3〜10[分]として処理する。
【0050】
リフローは、溶剤を吸収して粘度の低下したレジスト・パターン11がその表面張力、溶剤の再揮発およびシリコン膜12の表面領域18およびクロム膜(すなわちソース電極14aとドレイン電極14b)の表面領域17の濡れ性の影響を受けつつ、エネルギー的に最も安定な形を取りながら進行していくが、上述のように、下地の種類に応じて下地表面の領域17、18の濡れ性に差が付けられているので、濡れ性を低下させた表面領域17へのリフローは抑えられる一方、濡れ性を向上させた表面領域18へは選択的にリフローが促進されることになる。
【0051】
次に、レジスト・パターン11が目的の形状になった時に、蒸気暴露処理の停止、乾燥処理等によってレジスト・パターン11が変形するのを停止させる。こうしてレジスト・パターン11のリフローが完了し、図2(b)に示すように、変形レジスト・パターン11aが得られる。
【0052】
この変形レジスト・パターン11aは、図2(b)に示すように、下地のシリコン膜12の全表面のうち、ソース電極14aとドレイン電極14bの間の表面領域18を選択的に覆っている。
【0053】
その後、こうして形成された変形レジスト・パターン11aとソース電極14aおよびドレイン電極14bをマスクとして、シリコン膜12を選択的にエッチングする。その結果、基体10上に、トランジスタのシリコン・アイランド12aが形成される。
【0054】
第2実施形態のレジスト・パターン形成方法では、レジスト・パターン11のリフロー前の濡れ性調整工程において、レジスト・パターン11の下地となるシリコン膜12の表面領域18の濡れ性を向上させると共に、Cr膜(ソース電極14aとドレイン電極14b)の表面領域17の濡れ性を低下させている。換言すれば、表面領域17と18の下地の種類に応じて濡れ性に差を付けているので、レジスト・パターン11のリフローにより生成される変形レジスト・パターン11aの形状をより効果的に制御して、精度よく形成することができる。
〔変形例〕
上記第1および第2の実施形態では、リフローの溶剤としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)を用いたが、溶剤は、アルコール類(R−OH)、エーテル類(R−O-R,Ar−O−R,Ar−O−Ar)、エステル類、ケトン類またはグリコールエーテル類の少なくとも1つを含む有機溶剤であれば良く、具体的に、以下に列挙するようなものが含まれる。(ここで、Rはアルキル基または置換アルキル基、Arはフェニル基またはフェニル基以外の芳香基を示す。)
有機溶剤の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
【0055】
CH3OH,C25OH,CH3(CH2)XOH、IPA(イソプロピルアルコール)、長鎖アルキルエステル、アセトン、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、MEK(メチルエチルケトン)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、ブチルカルビトール、nBA(n−ブチルアセテート)、ガンマ−ブチロラクトン、ECA(エチルセロソルブアセテート)、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、MAK(2−ヘプタノン)、3−メトキシブチルアセテート、MMP(メチル−3−メトキシプロピオネート)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、PGP(プロピレングリコールモノプロピルエーテル)、PGEE(プロピレングリコールモノエチルエーテル)、FEP(エチル−3−エトキシプロピオネート)、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)。
【0056】
また、上記第1および第2の実施形態では、本発明を電界効果トランジスタの製造工程に適用しているが、本発明はこれに限定されず、電界効果トランジスタの製造工程以外の任意の工程にも適用可能であることは言うまでもない。
【0057】
本発明は、フォトレジスト、電子線レジスト等の任意のレジストのパターン形成に適用可能である。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のレジスト・パターン形成方法によれば、リフローによるレジスト・パターンの変形態様と変形量を効果的に制御することができる。その結果、レジスト・パターンの変形量を大きくしてもリフロー後のレジスト・パターンを精度よく形成することができる。また、リフロー後のレジスト・パターンのドライエッチングに対する耐性の劣化を回避できる。さらに、リフロー後のレジスト・パターンの下地に影響を与えることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るレジスト・パターン形成方法を説明する図であり、図1(a)はリフロー前の模式断面図、図1(b)はリフロー後の模式断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るレジスト・パターン形成方法を説明する図であり、図2(a)はリフロー前の模式断面図、図2(b)はリフロー後の模式断面図、図2(c)は2回目のエッチング後の模式断面図である。
【図3】従来のレジスト・リフロー法の原理を説明するための図であり、図3(a)はリフロー前の模式断面図、図3(b)はリフロー後の模式断面図である。
【図4】従来のレジスト・パターン形成方法を説明する図であり、図4(a)はリフロー前の模式断面図、図4(b)はリフロー後の模式断面図、図4(c)は2回目のエッチング後の模式断面図である。
【符号の説明】
1 レジスト・パターン
1a 変形レジスト・パターン
2 基体
3 濡れ性を調整した基体の表面
10 基体
11 レジスト・パターン
11a 変形レジスト・パターン
12 シリコン膜
12a シリコン・アイランド
14a ソース電極
14b ドレイン電極
17 濡れ性を悪化させた表面領域
18 濡れ性を向上させた表面領域

Claims (10)

  1. (a) 第1膜の上に第2膜を形成する工程と、
    (b) 前記第2膜の上に第1レジスト・パターンを形成する工程と、
    (c) 前記第1レジスト・パターンを用いて前記第2膜を選択的にエッチングする工程と、
    (d) 前記第2膜または前記第1膜の前記第1レジスト・パターンより露出した露出部の少なくとも一部について、濡れ性を調整する工程と、
    (e) 有機溶剤を用いて前記第1レジスト・パターンをリフローさせることにより、前記第1レジスト・パターンを前記露出部の濡れ性を調整した部分にまで延在させ、もって前記第1膜あるいは前記第2膜を選択的にエッチングするための第2レジスト・パターンを形成する工程と
    を備えてなるレジスト・パターン形成方法。
  2. 前記工程(d)で濡れ性が調整された前記露出部の少なくとも一部が、濡れ性を向上させた第1領域と、濡れ性を低下させた第2領域とを含む請求項1に記載のレジスト・パターン形成方法。
  3. 前記第1領域の濡れ性の向上と前記第2領域の濡れ性の低下が、それら第1領域と第2領域の下地の差異に応じて生成される請求項2に記載のレジスト・パターン形成方法。
  4. 前記第1領域が、前記第1レジスト・パターンの変形を相対的に大きくしたい箇所に配置され、前記第2領域が、前記第1レジスト・パターンの変形を相対的に小さくしたい箇所に配置される請求項2または3に記載のレジスト・パターン形成方法。
  5. 前記露出部の少なくとも一部について濡れ性を調整する工程(d)が、所定のガスを用いたプラズマ処理により行われる請求項1〜4のいずれか1項に記載のレジスト・パターン形成方法。
  6. 前記プラズマ処理において、濡れ性調整用のガスとしてCHF3とO2の混合ガスが使用される請求項5に記載のレジスト・パターン形成方法。
  7. 前記プラズマ処理が、第1ステップと第2ステップで実行され、前記第1ステップでは濡れ性調整用のガスとしてCHF3が使用され、前記第2ステップでは濡れ性調整用のガスとしてOが使用される請求項5に記載のレジスト・パターン形成方法。
  8. 前記第1レジスト・パターンをリフローさせる前記工程(e)では、前記第1レジスト・パターンを前記有機溶剤の蒸気中に暴露させ、もってその有機溶剤を前記第1レジストパターン中に浸透させる請求項1〜7のいずれか1項に記載のレジスト・パターン形成方法。
  9. 前記第1レジスト・パターンをリフローさせる前記工程(e)では、前記第1レジスト・パターンを前記有機溶剤中に浸漬させ、もってその有機溶剤を前記第1レジスト・パターン中に浸透させる請求項1〜7のいずれか1項に記載のレジスト・パターン形成方法。
  10. 前記有機溶剤として、アルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類およびグリコールエーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1つを使用する請求項1〜9のいずれか1項に記載のレジスト・パターン形成方法。
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