JP3975002B2 - 熱可塑性エラストマー樹脂組成物 - Google Patents

熱可塑性エラストマー樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、機械的強度、表面外観、成形加工性に優れる、熱可塑性エラストマー樹脂組成物およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性エラストマーは、加硫工程を必要としないゴム的な材料で、自動車部品、家電部品、電線被覆、履物、雑貨などの分野で注目されている。
【0003】
このような熱可塑性エラストマーには、現在ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリスチレン系、ポリ塩化ビニル系などの種々の形式のポリマーが開発され、市販されている。
【0004】
これらのうちで、スチレン・ブタジエン−ブロックコポリマー(SBS)やスチレン・イソプレンブロックコポリマー(SIS)などのポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、柔軟性に富み、常温で良好なゴム弾性を有している。また耐熱性、耐候性を改良するため水素を添加した熱可塑性エラストマーを主成分とした樹脂組成物についてはいくつか提案されている。例えば、特開昭50−14742号公報、特開昭52−26551号公報などを挙げることができる。
【0005】
しかしながら、これらの水素添加ブロック共重合体を含めたポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、耐熱変形性や耐油性や加工性(加工時の溶融強度)に問題があった。
【0006】
耐熱変形性、耐油性については、熱可塑性エラストマーにポリオレフィン樹脂、非芳香族系ゴム用軟化材、シリコーン、シリコーンオイルを添加することにより改良される。例えば、特開平09−278979号公報などを挙げることができる。しかし加工性については、まだ問題が解決されていない。
【0007】
また特開平4−080036号公報にはABS樹脂に改質剤としてポリテトラフルオロエチレンを配合することにより、加工時に高度な弾性を示し加工性が改良されることも提示されている。
【0008】
しかしながら、ポリテトラフルオロエチレンは一般に熱可塑性樹脂に対して分散性が不良であり、特開平5−214184号公報や特開平6−306212号公報に記載されているように単純にブレンドするだけでは均一に分散せずに、成形体の表面外観が著しく低下するといった欠点を有している。
【0009】
また、特開平7−324147号公報の方法によってもせん断力ですべてのポリテトラフルオロエチレンを繊維化するのは困難であり、繊維化したポリテトラフルオロエチレンもマトリックス樹脂中で凝集してしまい均一な組成物は得られない。
【0010】
すなわち、これらの方法ではいずれもポリテトラフルオロエチレンのマトリックス樹脂中での分散性に問題があり、上記の有用な性質を発現するためには多量のポリテトラフルオロエチレンを必要とする上に、成形体の表面外観を損なうという欠点があった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的はポリテトラフルオロエチレンの樹脂中での分散性を高め、成形体の表面外観を損なうことなく成形加工性が改良された熱可塑性エラストマー樹脂組成物を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(A)とポリオレフィン樹脂(B−1)およびポリエステル系熱可塑性エラストマー(B−2)から選ばれる少なくとも1種以上(B)との混合物にポリテトラフルオロエチレン(I)および炭素数5〜30のアルキル(メタ)アクリレート系ポリマー(II)からなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体(C)が配合された熱可塑性エラストマー樹脂組成物にある。
【0013】
【発明の実施の形態】
(A)ポリスチレン系熱可塑性エラストマー
本発明に使用されるポリスチレン系熱可塑性エラストマー(A)は、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAの少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体またはこれを水素添加して得られるもの、あるいはこれらの混合物であり、例えば、A−B−A、B−A−B−A、A−B−A−B−Aなどの構造を有するビニル芳香族化合物‐共役ジエン化合物ブロック共重合体あるいは、これらの水素添加されたもの等を挙げることができる。上記(水添)ブロック共重合体(以下、(水添)ブロック共重合体とは、ブロック共重合体および/または水添ブロック共重合体を意味する)は、ビニル芳香族化合物を5〜60重量%、好ましくは、20〜50重量%含む。ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAは好ましくは、ビニル芳香族化合物のみから成るか、またはビニル芳香族化合物50重量%超、好ましくは70重量%以上と(水素添加された)共役ジエン化合物(以下、(水素添加された)共役ジエン化合物とは、共役ジエン化合物および/または水素添加された共役ジエン化合物を意味する)との共重合体ブロックである。(水素添加された)共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBは好ましくは、(水素添加された)共役ジエン化合物のみから成るか、または(水素添加された)共役ジエン化合物50重量%超、好ましくは70重量%以上とビニル芳香族化合物との共重合体ブロックである。これらのビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックA、(水素添加された)共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBのそれぞれにおいて、分子鎖中のビニル化合物または(水素添加された)共役ジエン化合物の分布がランダム、テーパード(分子鎖に沿ってモノマー成分が増加または減少するもの)、一部ブロック状またはこれらの任意の組合せでなっていてもよい。ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックA或いは(水素添加された)共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBが2個以上ある場合には、それぞれが同一構造であっても異なる構造であってもよい。
【0014】
(水添)ブロック共重合体を構成するビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α‐メチルスチレン、ビニルトルエン、p‐第3ブチルスチレンなどのうちから1種または2種以上が選択でき、中でもスチレンが好ましい。また共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどのうちから1種または2種以上が選ばれ、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組合せが好ましい。
【0015】
共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBにおけるミクロ構造は任意に選ぶことができる。ブタジエンブロックにおいては、1,2−ミクロ構造が20〜50重量%、特に25〜45重量%が好ましい。ポリイソプレンブロックにおいては、該イソプレン化合物の70〜100重量%が1,4−ミクロ構造を有し、かつ該イソプレン化合物に基づく脂肪族二重結合の少なくとも90重量%が水素添加されたものが好ましい。
【0016】
上記した構造を有する(水添)ブロック共重合体の重量平均分子量は好ましくは5,000〜1,500,000であり、より好ましくは10,000〜550,000、さらに好ましくは100,000〜550,000の範囲である。分子量分布(重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn))は好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下、より好ましくは、2以下である。
【0017】
(水添)ブロック共重合体の分子構造は、直鎖上、分岐状、放射状あるいはこれらの任意の組合せのいずれであってもよい。
【0018】
これらのブロック共重合体の製造方法としては数多くの方法が提案されているが、代表的な方法としては、例えば特公昭40−23798号明細書に記載された方法により、リチウム触媒またはチーグラー型触媒を用い、不活性溶媒中にてブロック重合させて得ることができる。上記方法により得られたブロック共重合体に、不活性溶媒中で水素添加触媒の存在下にて水素添加することにより水添ブロック共重合体が得られる。
【0019】
上記(水添)ブロック共重合体の具体例としては、SBS、SIS、SEBS、SEPS等を挙げることができる。本発明において、特に好ましい(水添)ブロック共重合体は、スチレンを主体とする重合体ブロックAと、イソプレンを主体としかつイソプレンの70〜100重量%が1,4−ミクロ構造を有し、かつ該イソプレンに基づく脂肪族二重結合の少なくとも90重量%が水素添加されたところの重合体ブロックBとからなる重量平均分子量が50,000〜550,000の水添ブロック共重合体である。さらに好ましくは、イソプレンの90〜100重量%が1,4−ミクロ構造を有する上記水添ブロック共重合体である。
【0020】
(B−1)ポリオレフィン系樹脂
本発明に使用されるポリオレフィン系樹脂(B−1)としては、例えばラジカル重合、イオン重合等で得られるオレフィン系単量体の単独重合体または共重合体、優位量のオレフィン系単量体と劣位量のビニル系単量体との共重合体、オレフィン系単量体とジエン系単量体との共重合体等を主成分とするものが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0021】
パーオキサイドの存在下で加熱処理することによって主として架橋反応を起こすもの(パーオキサイド架橋型オレフィン系樹脂)と分解反応を起こすもの(パーオキサイド分解型オレフィン樹脂)が好ましい。
【0022】
例えば、パーオキサイド架橋型オレフィン系樹脂は高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンの如く、ポリマー密度が0.88〜0.94g/cm3の範囲内にあるポリエチレン、あるいはエチレン・プロピレン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム等の、オレフィンを主成分とする無定ランダム共重合体の弾性体である。このうちポリエチレンあるいはエチレン・プロピレン共重合体ゴムが好ましく、中でも、直鎖状低密度ポリエチレンは適度な架橋構造が得られる点で特に好ましい。
【0023】
例えば、パーオキサイド分解型オレフィン樹脂は、高分子量のホモ型のポリプロピレン、例えばアイソタクチックポリプロピレンやプロピレンと他の少量のα−オレフィン例えばエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等との共重合体が好ましい。
【0024】
成分(B−1)の配合量は、成分(A)100重量部に対して、20〜200重量部、好ましくは、30〜100重量部である。30重量部未満の場合は、エラストマー組成物の機械的特性が低下し、100重量部を超える場合は、柔軟性が低下する。
【0025】
(B−2)ポリエステル系熱可塑性エラストマー
本発明に使用されるポリエステル系熱可塑性エラストマー(B−2)としてはポリブチレンテレフタレートを主たるハードセグメントとし、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとするポリエーテルエステルブロック共重合体、またはポリブチレンテレフタレートを主たるハードセグメントとし、ポリ‐ε‐カプロラクトンをソフトセグメントとするポリエステルエステルブロック共重合体などの、パーオキサイドの存在下で加熱処理を行なっても架橋せず、流動性が低下しないものを用いることができる。成分(B−2)の配合量は、成分(A)100重量部に対して1〜30重量部、好ましくは3〜20重量部である。30重量部を超えると、得られるエラストマー組成物の柔軟性が低下し成形加工性も悪化する。
【0026】
なお、成分(B−1)と成分(B−2)は併用することが好ましい。
【0027】
(C)ポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体
本発明で使用するポリテトラフルオロエチレン含有混合体(C)は、ポリテトラフルオロエチレン(I)と炭素数5〜30のアルキル(メタ)アクリレート系ポリマー(II)とを含むものである。
【0028】
本発明で使用するポリテトラフルオロエチレン含有混合体(C)中のポリテトラフルオロエチレンの量は、0.05〜40重量%であることが好ましい。0.05重量%未満では充分な溶融張力を得るための添加量が多くなりすぎ熱可塑性エラストマー樹脂の剛性、耐熱性等を損なう恐れがある。また40重量%を超えるとポリテトラフルオロエチレンの分散性が低下する恐れがある。
【0029】
ポリテトラフルオロエチレン(I)とは特に制限がなく、テトラフルオロエチレンを主成分とする単量体を公知の方法で重合させることのより得られるものである。ポリテトラフルオロエチレンの特性を損なわない範囲で、共重合成分としてヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フルオロアルキルエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル等の含フッ素オレフィンや、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート等の含フッ素アルキル(メタ)アクリレートを含むことができる。共重合成分の含量は、テトラフルオロエチレンに対して10重量%以下であることが好ましい。
【0030】
本発明で使用するポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体(C)において、炭素数5〜30のアルキル(メタ)アクリレート系ポリマー(II)とは、炭素数5〜30のアルキル(メタ)アクリレートを含む単量体をラジカル重合あるいはイオン重合等により重合せしめることにより得られるものである。炭素数5〜30のアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの単量体は単独であるいは2種以上混合して用いることができる。特に炭素数12〜30のアルキル(メタ)アクリレート例えばドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0031】
炭素数5〜30のアルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な単量体としては、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−クロルスチレン、o−クロルスチレン、p−メトキシスチレン,o−メトキシスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜4のアルキル(メタ)アクリレート系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系単量体;ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン等のジエン系単量体等を挙げることができる。炭素数5〜30のアルキル(メタ)アクリレートとこれら共重合可能な単量体との分率は炭素数5〜30のアルキル(メタ)アクリレー/共重合可能な単量体=1以上、あくまで炭素数5〜30のアルキル(メタ)アクリレートが主成分であることが好ましい。
【0032】
本発明のポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体(C)は、粒子径0.05〜1.0μmのポリテトラフルオロエチレン粒子水性分散液と炭素数5〜30のアルキル(メタ)アクリレート系ポリマー粒子水性分散液とを混合して凝固またはスプレードライする第一の製法により粉体として得られる。また、粒子径0.05〜1.0μmのポリテトラフルオロエチレン粒子水性分散液と炭素数5〜30のアルキル(メタ)アクリレート系ポリマー粒子水性分散液とを混合した分散液中でさらにエチレン性不飽和結合を有する単量体を重合した後に凝固またはスプレードライする第二の製法によっても粉体として得られる。
【0033】
本発明で使用するポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体(C)を製造するために用いるポリテトラフルオロエチレン粒子水性分散液は、テトラフルオロエチレンを主成分とする単量体を乳化重合せしめることにより得ることができる。
【0034】
ポリテトラフルオロエチレン粒子分散液の市販原料としては、旭ICIフロロポリマー社製のフルオンAD−1,AD−936、ダイキン工業社製のポリフロンD−1,D−2、三井デュポンフロロケミカル社製のテフロン30J等を代表例として挙げることができる。
【0035】
本発明で使用するポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体(C)を製造するために用いる炭素数5〜30のアルキル(メタ)アクリレート系ポリマー粒子水性分散液は、上記炭素数5〜30のアルキル(メタ)アクリレートを含む単量体を公知の乳化重合法、あるいはミニエマルション重合法などにより重合させることにより得ることができる。
【0036】
本発明で使用するポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体(C)の第二の製法における粒子径0.05〜1.0μmのポリテトラフルオロエチレン粒子水性分散液と炭素数5〜30のアルキル(メタ)アクリレート系ポリマー粒子水性分散液とを混合した分散液中でさらに重合させる共重合可能な単量体としては特に制限はなく、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−クロルスチレン、o−クロルスチレン、p−メトキシスチレン,o−メトキシスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2ーヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン単量体;ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン等のジエン系単量体等を挙げることができる。これらの単量体は、単独であるいは2種以上混合して用いることができる。
【0037】
成分(C)の配合量は、成分(A)100重量部に対して、0.01〜20重量部、好ましくは、0.1〜5重量部である。
【0038】
(D)非芳香族系ゴム用軟化剤
本発明に使用される非芳香族系ゴム用軟化剤(D)としては、非芳香族系の鉱物油または液状もしくは低分子量の合成軟化剤を用いることができる。ゴム用として用いられる鉱物油軟化剤は、芳香族環、ナフテン環およびパラフィン鎖の三者の組み合わさった混合物であって、パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものをパラフィン系とよび、ナフテン環炭素数が30〜40%のものはナフテン系、芳香族炭素数が30%以上のものは芳香族系と呼ばれて区別されている。
【0039】
本発明の成分(D)として用いられる鉱物油系ゴム用軟化剤は上記区分でパラフィン系およびナフテン系のものである。芳香族系の軟化剤は、その使用により成分(A)が可溶となり、架橋反応を阻害し、得られる組成物の物性の向上が図れないので好ましくない。成分(D)としては、パラフィン系のものが好ましく、さらにパラフィン系の中でも芳香族環成分の少ないものが特に好ましい。
【0040】
これらの非芳香族系ゴム用軟化剤の性状は、37.8℃における動的粘度が20〜500cSt、流動点が−10〜−15℃、引火点(COC)が170〜300℃を示す。
【0041】
成分(D)の配合量は、成分(A)100重量部に対して、20〜300重量部、好ましくは、40〜150重量部である。300重量部を超える配合は、軟化剤のブリードアウトを生じやすく、最終製品に粘着性を与えるおそれがあり、機械的性質も低下せしめる。また、配合量が20重量部未満では、得られる組成物の成形性が失われることになる。成分(D)の一部を、パーオキサイド存在下での熱処理の後に配合することもできるが、ブリードアウトを生じる要因となるので好ましくない。成分(D)は、重量平均分子量が100〜2,000のものが好ましい。
【0042】
(E)シリコーンまたはパーフルオロアルキル基含有化合物
本発明に使用されるシリコーンは、重量平均分子量が70,000以上、好ましくは100,000以上であるシリコーンである。分子量の上限は特に限定されないが、好ましくは100万であるジメチル系、メチルフェニル系、メチルハイドロジェン系、あるいは変性シリコーンのいずれでもよく、これらに限定されない。上記シリコーンは、組成物の成形性および成形作業性を改善すると共に、成形品の表面潤滑性、表面光沢性を良くする。取扱いの容易性のために、熱可塑性樹脂たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンとの高濃度(たとえば30〜70重量%)コンパウンドとされたものを用いることができる。特に、ポリエチレンとのコンパウンドが効果の点で優れている。
【0043】
該シリコーンは、成分(A)100重量部に対して0.5〜10重量部、好ましくは1.5〜5重量部配合される。10重量部を超えて配合しても、さらなる改善は少なく、ベトツキが発生する。
【0044】
パーフルオロアルキル基含有化合物としては、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基含有オレフィン系オリゴマーが挙げられ、さらに好ましくはパーフルオロアルキル基含有オレフィン系オリゴマーである。ポリマーまたはオリゴマーの場合、好ましくは2,000〜20,000、より好ましくは5,000〜10,000の重量平均分子量を有する。パーフルオロアルキル基含有化合物は、0.1〜3重量部、好ましくは0.1〜2.0重量部の量で配合される。上記シリコーンとパーフルオロアルキル基含有化合物を併用してもよい。
【0045】
(F)ストレートシリコーンオイル
本発明に使用されるストレートシリコーンオイルは、シリコーンに比べて低分子量であり、重量平均分子量が5,000〜50,000好ましくは10,000〜20,000である。ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、あるいは他の有機基を含む変性シリコーンオイルを用いることができる。分子量が5,000未満ではブリードアウトが顕著になる。粘度で言えば、100〜1,000cStの物が適切である。ストレートシリコーンオイルは、成形品の表面滑性を改善する。
【0046】
該ストレートシリコーンオイルは、成分(A)100重量部に対して1〜20重量部、好ましくは3〜10重量部配合される。20重量部を超えて配合しても、特にさらなる改善は少なく、ブリードが顕著になる。
【0047】
本発明において、下記の添加剤も必要に応じて加えることができる。
【0048】
水添石油樹脂
水素化石油樹脂、例えば水素化脂肪族系石油樹脂、水素化芳香族系石油樹脂、水素化共重合系石油樹脂および水素化脂環族系石油樹脂、および水素化テルペン系樹脂が挙げられる。上記水素化石油樹脂は、慣用の方法で製造される石油樹脂を慣用の方法によって水素化することにより得られる。前記石油樹脂とは、石油精製工業、石油化学工業の各種工程で得られる樹脂状物、または、それらの工程、特にはナフサの分解工程にて得られる不飽和炭化水素を原料として共重合して得られる樹脂のことを指し称する。例えば、C5留分を主原料とする芳香族系石油樹脂、C9留分を主原料とする芳香族石油樹脂、それらの共重合石油樹脂、および脂環族系石油樹脂等を挙げることができる。好ましい水添加石油樹脂は、水素化樹脂族系石油樹脂であり、その中でも、シクロペンタジエン系化合物とビニル芳香族系化合物とを共重合して、水素添加したものが特に好ましい。本発明で用いる水添石油樹脂は、完全水素添加されたものが好ましい。部分的に水素添加されたものは、熱安定性と耐候性の点で劣る傾向にある。
【0049】
無機充填剤
必要に応じて、無機充填剤を配合することができる。無機充填剤は成形品の圧縮永久歪みなど一部の物性を改良する効果のほかに、増量による経済上の利点を有する。慣用の無機充填剤を満足に用いることができるが、例えば、炭酸カルシウム、タルク、水酸化マグネシウム、マイカ、クレー、硫酸バリウム、天然けい酸、合成けい酸(ホワイトカーボン)、酸化チタン、カーボンブラックなどがある。これらのうち、炭酸カルシウムあるいはタルクが特に好ましい。
【0050】
電子供与体
必要に応じて電子供与体を配合することができる。電子供与体とは、電子を相手に与え易い原子、イオンまたは分子を構造中に有するものを言う。例えば、ベンゼン、ナフタリンなどの芳香族炭化水素およびそれらの置換体、各種アミン、カルボン酸類、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル類、アルコール類、エーテル類、ケトン類、アルデヒド類、アルコレート類などが挙げられる。電子供与原子、イオンとして、塩素イオン、フッ素イオン、ヨウ素イオンなどが挙げられる。電子供与基として、アミノ基、イミノ基、水酸基、ハロゲン基、アルキル基、アリル基などが挙げられる。電子供与性単量体として、エチレンイミンが挙げられる。
【0051】
芳香族炭化水素の具体例として、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、ヘミマリチン、プソイドクメン、プレニテン、イソジュレン、ジュレン、ペンタメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、エチルベンゼン、プロピルベンセン、スチレン、クメン、メシチレン、シメン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、インデン、フェナントレン、インダン、p−テルフェニル、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ビベンジル、スチルベン、テトラリンなどが挙げられる。
【0052】
カルボン酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプオン酸、ビバリン酸、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸等の脂肪族モノカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンモノカルボン酸、シクロヘキセンモノカルボン酸、シス−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、シス−4−メチルシクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸等の脂環式カルボン酸、安息香酸、トルイル酸、アニス酸、p−第三級ブチル安息香酸、ナフトエ酸、ケイ皮酸等の芳香族モノカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタル酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、メリット酸等の芳香族多価カルボン酸等が挙げられる。
【0053】
カルボン酸無水物としては、上記のカルボン酸類の酸無水物を使用できる。
【0054】
カルボン酸エステルとしては、上記カルボン酸類のモノまたは多価エステルが使用することができ、その具体例として、ギ酸ブチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソ酪酸イソブチル、ビバリン酸プロピル、ビバリン酸イソブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソブチル、コハク酸ジブチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジエチル、グルタル酸ジブチル、グルタル酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソブチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジイソブチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、マレイン酸モノメチル、酒石酸ジエチル、酒石酸ジブチル、酒石酸ジイソブチル、シクロヘキサンカルボン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、p−トルイル酸メチル、p−第三級ブチル安息香酸エチル、p−アニス酸エチル、α−ナフトエ酸エチル、α−ナフトエ酸イソブチル、ケイ皮酸エチル、フタル酸モノメチル、フタル酸モノブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ2−エチルヘキシル、フタル酸ジアリル、フタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジブチル、テレフタル酸ジブチル、ナフタル酸ジエチル、ナフタル酸ジブチル、トリメリット酸トリエチル、トリメリット酸ブチル、ピロメリット酸テトラメチル、ピロリット酸テトラエチル、ピロメリット酸テトラブチル、等が挙げられる。
【0055】
カルボン酸ハロゲン化物としては、上記のカルボン酸類の酸ハロゲン化物を使用することができ、その具体例として、酢酸グロリド、酢酸ブロミド、酢酸アイオダイド、プロピオン酸クロリド、酪酸クロリド、酪酸ブロミド、酪酸アイオダイド、ビバリン酸クロリド、ビバリン酸ブロミド、アクリル酸クロリド、アクリル酸ブロミド、アクリル酸アイオダイド、メタクリル酸アイオダイド、クロトン酸クロリド、マロン酸クロリド、コハク酸ブロミド、グルタル酸クロリド、グルタル酸ブロミド、アジピン酸クロリド、アジピン酸ブロミド、セバシン酸クロリド、セバシン酸ブロミド、マレイン酸クロリド、マレイン酸ブロミド、フマル酸クロリド、フマル酸ブロミド、酒石酸クロリド、シクロヘキサンカルボン酸クロリド、1−シクロヘキセンカルボン酸クロリド、シス−4−メチルシクロヘキセンカルボン酸クロリド、シス−4−メチルシクロヘキセンカルボン酸ブロミド、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、p−トルイル酸クロリド、p−トルイル酸ブロミド、p−アニス酸クロリド、p−アニス酸ブロミド、α−ナフトエ酸クロリド、ケイ皮酸クロリド、ケイ皮酸ブロミド、イソフタル酸ジクロリド、フタル酸ジブロミド、イソフタル酸ジクロリド、イソフタル酸ジブロミド、テレフタル酸ジクロド、ナフタル酸ジクロリドなどが挙げられる。また、アジピン酸モノメチルクロリド、マレイン酸モノエチルクロリド、マレイン酸モノメチルクロリド、フタル酸ブチルクロリドの様なジカルボン酸のモノアルキルハロゲン物も使用できる。
【0056】
アルコール類は一般式ROHで表される。式においてRは炭素数1〜12個のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルアルキル等である。具体例として、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、アリルアルコール、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、p−ターシャリーブチルフェノール、n−オクチルフェノール等を挙げることができる。
【0057】
エーテル類は、一般式ROR’で表される。式においてR、R’は炭素数1〜12個のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルアルキル等である。R、R’は同じでも異なってもよく、また一緒になって環を形成しても良い。具体例として、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジ−2−エチルヘキシルエーテル、ジアリルエーテル、エチルアリルエーテル、ジアリルエーテル、ジフェニルエーテル、アニソール、エチルフェニルエーテル等を挙げることができる。テトラヒドロフラン、ピラン、ジオキサンなどの環状エーテル類、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルなどの鎖状エーテル類、2,3−ジヒドロフラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン等の環状のビニルエーテル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、2,5−ジヒドロフラン、5,6−ジヒドロ−2H−ピランなどの環状のアリルエーテル類、トリエチルアミン、トリエチレンジアミンなどの脂肪族アミン類、ピリジン、ピコリンなどの芳香族アミン類、2−オキサゾリン、6H−1,2,4−オキサジアジンなどの複素環式化合物等が挙げられる。
【0058】
本発明において、電子供与体として好ましいものは、トルエン、メタノールであり、特に好ましいものはトルエンである。
【0059】
本発明において、電子供与体を用いることにより、製造された熱可塑性エラストマー樹脂組成物中の架橋ゲルの生成が減少するという効果を生じる。即ち、本発明において電子供与体を用いることにより、架橋速度の緩和が起こり上記効果を生じると考えられる。
【0060】
有機パーオキサイド
本発明で用いられる有機パーオキサイドとしては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイドなどを挙げることができる。
【0061】
これらのうち、臭気性、着色性、スコーチ安定性の点で、2,5−ジメチル2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3が最も好ましい。
【0062】
架橋助剤
本発明の熱可塑性エラストマー樹脂組成物の製造方法においては、有機パーオキサイドによる部分架橋処理に際し、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレートのような多官能性ビニルモノマー、またはエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマーを架橋助剤として配合することができる。このような化合物により、均一かつ効率的な架橋反応が期待できる。
【0063】
抗酸化剤
また、場合により用いられる抗酸化剤としては、2,6−ジ−tert−pブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル、トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタンなどのフェノール系抗酸化剤、ホスファイト系抗酸化剤およびチオエーテル系抗酸化剤などがある。中でも、フェノール系抗酸化剤とホスファイト系抗酸化剤が好ましい。
【0064】
電子供与体、架橋助剤の配合割合は、特に得られる熱可塑性エラストマー組成物の品質に影響する架橋度を考慮して任意に決定される。
【0065】
ポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体を添加した熱可塑性エラストマー樹脂組成物を用いて得られる有用な成形体としては、シート、フィルム、真空成形体、圧空体、中空成形体、発泡体、射出成型品、繊維などを挙げることができる。
【0066】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
【実施例】
各記載中、「部」は重量部を、また「%」は重量%を示す。
【0068】
参考例、実施例および比較例に記載の諸物性の測定は下記の方法による。
【0069】
(1)固形分濃度:粒子分散液を170℃で30分乾燥して求めた。
【0070】
(2)粒子径分布、重量平均粒子径:粒子分散液を水で希釈したものを試料液として、動的光散乱法(大塚電子(株)製ELS800、温度25℃、散乱角90度)により測定した。
【0071】
(3)ゼータ電位:粒子分散液を0.01mol/lのNaCl水溶液で希釈したものを試料液として、電気泳動法(大塚電子(株)製ELS800、温度25℃、散乱角10度)により測定した。
【0072】
(4)メルトテンション:熱可塑性エラストマー樹脂組成物のペレットを降下式フローテスター(東洋精機社製キャピログラフ)を用い、一定押出量(降下速度10mm/分)で押し出し、ストランドを一定速度(4m/分)で引き取り、溶融張力を測定した。ダイスのL/Dは10.0mm/Φ2.0mm、測定温度は200℃とした。
【0073】
(5)ダイスウェル: 熱可塑性エラストマー樹脂組成物のペレットを降下式フローテスター(東洋精機社製キャピログラフ)を用い、一定押出量(降下速度1.5mm/min)で押し出し、ノズルの下5mmの位置でのストランドの径(D)を測定し、下式により算出した。ダイスのL/Dは10.0mm/Φ2.0mm、測定温度は200℃とした。
【0074】
ダイスウェル=D(mm)/2.0×100
(6)引張強度、引張伸度:熱可塑性エラストマー樹脂組成物のペレットを射出成形して試験片を得て、JIS K 6301に準拠して1mm厚みプレスシートをダンベル3号型に打ち抜いて使用した。引張速度は500mm/分とした。
【0075】
(7)ロールシート外観:熱可塑性エラストマー樹脂組成物のペレットを用いて、ロール混連時のロールシート外観を目視にて判定した。
【0076】
○:表面に凹凸がなく光沢が優れる
△:表面に少し凹凸があり光沢が少し劣る
×:表面に凹凸が著しく光沢が劣る
(8)ドローダウン:熱可塑性エラストマー樹脂組成物のペレットを用いて押し出したシートを、開口部76mm角のクランプで固定し、200℃のオーブン中、30分間後にシートのドローダウンした長さ(200℃、30分後のシートの長さ−0分後のシートの長さ)を測定した。
【0077】
(9)発泡成形品の評価:熱可塑性エラストマー樹脂組成物のペレット100重量部に対して、アゾジカルボンアミド(発泡剤)1.0部を配合して、押出成形を行い、発泡シート成形品を作成し、その断面セルの状態を目視により判定した。
【0078】
○:微細で均一
△:やや不均一
×:不均一
(参考例1)
メタクリレート系ポリマー粒子分散液II−1の製造:
ドデシルメタクリレート/メチルメタクリレートの割合が重量比で1/1である単量体混合液100部に、アゾビスジメチルバレロニトリル0.1部を溶解させた。これにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0部と蒸留水300部を添加し、ホモミキサーにて10000rpmで2分間撹拌した後、ホモジナイザーに300kg/cm2の圧力で2回通し、安定な予備分散液を得た。これを、撹拌翼、コンデンサー、熱伝対、窒素導入口を備えたセパラブルフラスコに仕込み、窒素気流下で内温を80℃に昇温し3時間撹拌してラジカル重合を行い、メタクリレート系ポリマー粒子分散液II−1を得た。
【0079】
このポリマー粒子分散液II−1の固形分濃度は25.1%で、粒子径分布は単一のピークを示し、重量平均粒子径は191nm、表面電位は−58mVであった。
【0080】
(参考例2)
メタクリレート系ポリマー粒子分散液II−2の製造:
参考例1において、単量体混合液として、ドデシルメタクリレート/メチルメタクリレートの割合が重量比で5/1である単量体混合液100部を用いる以外は、参考例1と同様にしてメタクリレート系ポリマー粒子分散液II−2を得た。
【0081】
このポリマー粒子分散液B−2の固形分濃度は25.2%で、粒子径分布は単一のピークを示し、重量平均粒子径は189nm、表面電位は−59mVであった。
【0082】
(参考例3)
メタクリレート系ポリマー粒子分散液II−3の製造:
参考例1において、単量体混合液として、ドデシルメタクリレート/メチルメタクリレートの割合が重量比で6/1である単量体混合液100部を用いる以外は、参考例1と同様にしてメタクリレート系ポリマー粒子分散液II−3を得た。
このポリマー粒子分散液II−3の固形分濃度は25.1%で、粒子径分布は単一のピークを示し、重量平均粒子径は190nm、表面電位は−58mVであった。
【0083】
(参考例4)
メタクリレート系ポリマー粒子分散液II−4の製造:
参考例1において、単量体混合液としてドデシルメタクリレート/スチレンの割合が重量比で1/1である単量体混合液を用いる以外は、参考例1と同様にしてメタクリレート系ポリマー粒子分散液II−4を得た。
【0084】
このポリマー粒子分散液II−4の固形分濃度は25.2%で、粒子径分布は単一のピークを示し、重量平均粒子径は178nm、表面電位は−61mVであった。
【0085】
(参考例5)
メタクリレート系ポリマー粒子分散液II−5の製造:
参考例3において、単量体混合液としてドデシルメタクリレート/スチレンの割合が重量比で6/1である単量体混合液を用いる以外は、参考例3と同様にしてメタクリレート系ポリマー粒子分散液II−5とを得た。
【0086】
このポリマー粒子分散液B−5の固形分濃度は25.2%で、粒子径分布は単一のピークを示し、重量平均粒子径は178nm、表面電位は−61mVであった。
【0087】
(参考例6)
ポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体C−1の製造:
ポリテトラフルオロエチレン系粒子分散液として、旭ICIフロロポリマーズ社製フルオンAD−936を用いてポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体C−1の製造を行った。なお、このフルオンAD−936は固形分濃度が63.0%であり、ポリテトラフルオロエチレンに対して5%のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルを含み、粒子径分布は単一とピークを示し、重量平均粒子径は290nm、表面電位は−20mVであった。
【0088】
上記のポリテトラフルオロエチレン径粒子分散液フルオンAD−936 83.3部に蒸留水116.7部を添加し、25%のポリテトラフルオロエチレン粒子と1.2%のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルを含有する固形分濃度26.2%のポリテトラフルオロエチレン粒子分散液I−1を得た。
【0089】
このポリテトラフルオロエチレン粒子分散液I−1 120部(ポリテトラフルオロエチレン含有量30部)と参考例1のメタクリレート系ポリマー粒子分子分散液II−1 199.2部(コポリマー含有量50部)とを撹拌翼、コンデンサー、熱伝対、窒素導入口を備えたセパラブルフラスコに仕込み、窒素気流下に室温で1時間撹拌した。その後系内を80℃に昇温し、1時間保持した後、硫酸鉄(II)0.001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.003部、ロンガリット塩0.24部、蒸留水60.8部の混合液を加え、さらにメチルメタクリレート(以下、MMAと略記する。)20部とターシャリーブチルパーオキサイド0.4部の混合液を1時間かけて滴下し、滴下終了後内温を80℃で1時間保持してラジカル重合を完了させた。一連の操作を通じて固形物の分離は見られず、均一な粒子分散液を得た。この粒子分散液を塩化カルシウム5部を含む90℃の熱水400部に投入し、固形物を分離させ、濾過、乾燥してポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体C−1の粉体98部を得た。
【0090】
(参考例7)
ポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体C−2の製造:
参考例6において、ポリテトラフルオロエチレン粒子分散液I−1を80部(ポリテトラフルオロエチレン含有量20部)、メタクリレート系ポリマー粒子分散液II−2を239.0(コポリマー含有量60部)および滴下させるMMAを20部とした以外は、参考例6と同様にしてポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体C−2を得た。
【0091】
(参考例8)
ポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体C−3の製造:
実施例6において、ポリテトラフルオロエチレン粒子分散液I−1を40部(ポリテトラフルオロエチレン含有量10部)、メタクリレート系ポリマー粒子分散液II−3を278.9部(コポリマー含有量70部)および滴下させるMMAの量を20部とした以外は、参考例6と同様にしてにポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体C−3を得た。
【0092】
(参考例9)
ポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体C−4の製造:
参考例6において、用いるメタクリレート系ポリマー粒子分散液II−1を参考例4で得られたメタクリレート系ポリマー粒子分散液II−4 198.4部(コポリマー含有量50部)に変更する以外は、参考例6と同様にしてポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体C−4を得た。
【0093】
(参考例10)
ポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体C−5の製造:
参考例6のポリテトラフルオロエチレン系粒子分散液I−1 120部(ポリテトラフルオロエチレン含有量30部)と参考例5のメタクリレート系ポリマー粒子分散液II−5 277.8部(コポリマー含有量70部)とを撹拌翼、コンデンサー、熱伝対、窒素導入口を備えたセパラブルフラスコに仕込み、窒素気流下に室温で1時間撹拌した。その後系内を80℃に昇温し1時間保持した。一連の操作を通じて固形物の分離は見られず、均一な粒子分散液を得た。
【0094】
この粒子分散液を塩化カルシウム5部を含む90℃の熱水400部に投入し、固形物を分離させ、濾過、乾燥してポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体C−5の粉体99部を得た。
【0095】
(参考例11)
ポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体のマスターペレット(M−1)の製造ポリスチレン系熱可塑性エラストマー75部に対して参考例6で得たテトラフルオロエチレン含有混合粉体G−1を25部配合してハンドブレンドした後、二軸押出機(WERNER&PFLEIDERER社製、ZSK30)を用いて、バレル温度200℃、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練しペレット状に賦形し、ポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体のマスターペレット(以下M−1と称する)を得た。
【0096】
以上の参考例6〜11により、得られたポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体C−1〜C−5およびマスターペレットM−1の組成を表1に示した。
【0097】
【表1】
Figure 0003975002
【0098】
(実施例1〜8、比較例1)
熱可塑性エラストマー樹脂配合物TPE−1の成分としては以下のものを用いた。
【0099】
Figure 0003975002
熱可塑性エラストマーTPE−1の組成比は、ポリスチレン系エラストマー樹脂35.8部、パーオキサイド架橋型オレフィン樹脂1.5部、パーオキサイド分解型オレフィン樹脂13.3部、非芳香族ゴム軟化剤43.0部、ポリエステル系エラストマー樹脂3.0部、シリコーン0.7部、シリコーンオイル1.8部、パーオキサイド0.9部である。
【0100】
熱可塑性エラストマー樹脂配合物TPE−1と参考例6〜10で得られたポリテトラフルオロエチレン含有粉体C−1〜C−5を表2に示す割合でハンドブレンド後、二軸押出機(WERNER&PFLEIDERER社製、ZSK30)を用いて、バレル温度200℃、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練しペレット状に賦形した。次いで、得られたペレットを用いて諸物性を測定した。結果を表2に示した。
【0101】
(比較例2〜4)
熱可塑性エラストマーTPE−1と粉末状ポリテトラフルオロエチレン(旭ICIフロロポリマー社製、フルオンCD−123、粒子径0.2〜0.3μmのポリテトラフルオロエチレン一次粒子が凝集して100μmの凝集体となっているもの)を表2に示す割合で配合し、ヘンシェルミキサーにより室温で高速撹拌し、混合した後、実施例1と同様の条件で押出し、ペレット化して実施例1と同様にして諸物性を評価した。その結果を表2に示した。
【0102】
【表2】
Figure 0003975002
【0103】
以上の実施例および比較例の結果から明らかなように、本発明のポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体を配合した熱可塑性エラストマー樹脂組成物(実施例1〜8)は、比較例の熱可塑性エラストマー樹脂組成物(比較例2〜4)に比べて、カレンダー加工時の引き取り性、熱成形性、ブロー成形性、発泡成形性などの指標であるメルトテンション、ダイスウェルの値が著しく大きく、良好な成形加工性を有し、押出成形性も良好であることが判る。さらに本発明の熱可塑性エラストマー樹脂組成物は、ロールシートの外観、耐ドローダウン性、発泡成形性も極めて優れていることが判る。
【0104】
【発明の効果】
本発明で使用されるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体は、熱可塑性エラストマー樹脂への分散性が極めて良好であり、これを配合した本発明の熱可塑性エラストマー樹脂組成物は、溶融時の張力が大きく、カレンダー加工時の引き取り性、熱成形性、ブロー成形性、発泡成形性などの優れた成形加工性を有する。また、ポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体を配合した本発明の熱可塑性エラストマー樹脂組成物を用いることにより、シートおよびフィルムなどの押出成形体の表面状態が改良されて良好な押出成形品を得ることができる。

Claims (7)

  1. ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(A)とポリオレフィン樹脂(B−1)およびポリエステル系熱可塑性エラストマー(B−2)から選ばれる少なくとも1種以上(B)との混合物にポリテトラフルオロエチレン(I)および炭素数5〜30のアルキル(メタ)アクリレート系ポリマー(II)からなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体(C)が配合された熱可塑性エラストマー樹脂組成物。
  2. 請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物に、さらに非芳香族系ゴム用軟化剤(D)が配合された熱可塑性エラストマー樹脂組成物。
  3. 請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物に、さらにシリコーンおよび/またはパーフルオロアルキル基含有化合物(E)が配合された熱可塑性エラストマー樹脂組成物。
  4. 請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物に、さらにストレートシリコーンオイル(F)が配合された熱可塑性エラストマー樹脂組成物。
  5. 請求項2記載の熱可塑性エラストマー樹脂組成物に、さらにシリコーンおよび/またはパーフルオロアルキル基含有化合物(E)が配合された熱可塑性エラストマー樹脂組成物。
  6. 請求項2記載の熱可塑性エラストマー組成物に、さらにシリコーンおよび/またはパーフルオロアルキル基含有化合物(E)とストレートシリコーンオイル(F)が配合された熱可塑性エラストマー樹脂組成物。
  7. ポリテトラフルオロエチレン(I)および炭素数5〜30のアルキル(メタ)アクリレート系ポリマー(II)からなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体(C)を熱可塑性樹脂と溶融混練してマスターペレット化し、このマスターペレットを必須成分のポリスチレン系熱可塑性エラストマー(A)、ポリオレフィン樹脂(B−1)およびポリエステル系熱可塑性エラストマー(B−2)から選ばれる少なくとも2種以上の混合物と溶融混練した熱可塑性エラストマー樹脂組成物。
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