JP3967783B2 - 顔料分散組成物及びそれを用いた着色感光性組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、分散性、流動性に優れ、かつ着色力に優れる顔料分散組成物、及びこれを含む感光性組成物に関する。本発明の顔料分散組成物及び着色感光性組成物は、塗料、印刷インキ、それらを用いたカラー表示板等に有用であり、また着色感光性組成物は、カラープルーフ等の基体上の多色の着色画像の形成、液晶カラーディスプレイ等に使用されるカラーフィルターの製造に有用である。
【0002】
【従来の技術】
一般に、鮮明な色調と高い着色力を示す実用上重要な顔料は微細な粒子からなっている。しかし、高い着色力を得るために顔料粒子をより微細化していくと、往々にして顔料分散液は高粘度を示すため、このような分散を工業的規模で行なった場合は、分散液の分散機からの取り出しが困難となったり、パイプラインによる輸送ができなくなるばかりでなく、貯蔵中にゲル化を起こして使用不能となることがある。
【0003】
このような顔料を含有した着色感光性組成物は、例えばカラープルーフやカラーフィルター等を作製するための画像形成材料として有用である。顔料には、前述のように鮮明な色調と高い着色力が求められる。
着色感光性組成物を用いて着色画像を形成するには、感光性組成物の層を基板上に形成し、露光、現像を行なう。この現像の際、現像液としては、環境上の問題から、有機溶剤よりアルカリ性水溶液を使用することが多く、着色感光性層はアルカリ性水溶液に可溶であることが要求される。
また、着色感光性組成物の塗布液の溶媒(即ち顔料の分散媒体)としては塗布後の乾燥の観点から、有機溶剤を使用するのが好ましい。従って、着色感光性組成物に使用される結合剤(バインダー)は、酸性基を有し、かつ適当な有機溶媒に溶けることが必要である。着色感光性組成物においては、通常、有機顔料はこのような酸性基を有するバインダー中に分散されている。
【0004】
一般に、このような着色感光性組成物により形成される層は極めて薄く、かつ薄い膜厚で高い着色濃度を示すことが要求されることから、有機溶媒に可溶の酸性基を有するバインダー中に、有機顔料を高度に微細化、分散させることが必要となる。
【0005】
例えば、着色感光性組成物(顔料分散組成物)は、前述したように液晶ディスプレー等に用いるカラーフィルターの形成材料として有用である。
カラーフィルターは、それぞれ赤、緑、青の3原色の画素を選択的に透過するように、着色剤を各画素部に配置することによって形成されている。着色剤を画素部に配置するには種々の方法が知られており、染色法、印刷法、電着法、顔料分散法等が実用化されている。これらの中では、得られるカラーフィルターの品質及び製造プロセスの安定性から、顔料分散法が優れている。
顔料分散法では、顔料分散組成物を含有する着色感光性組成物の溶液を透明基板上に塗布して着色感光性層を設け、パターン露光した後現像して第一色目の画素パターンを形成し、これを複数回繰り返すことで、基板上に複数色の画素パターンを形成する。着色材として顔料を用いるため、顔料の微細化が充分でない場合、顔料粒子により光が散乱、吸収され、光透過率が低下する。更に、顔料粒子による光の散乱、複屈折等で偏光軸が回転し、液晶表示装置のコントラストも低下する場合がある(1990年第7回色彩光学コンファレンス、512色表示10.4”サイズTFT−LCD用カラーフィルター、植木、小関、福永、山中)。このため、顔料粒子の高度に微細化することが求められている。
【0006】
上記問題を解決するため、即ち充分な流動性を有し、かつ微細化された顔料分散液を得るため、種々の分散剤を使用することが知られている。分散剤は、通常ポリマー系と、低分子化合物の二種に大きく分けることができる。
ポリマー系分散剤としては、ポリアクリル酸塩、マレイン酸ナトリウムオレフィン共重合体、末端カルボキシル基含有ポリエステル(特公昭54−34009号公報)、テトラキス(2−ヒドロキシアルキル)エチレンジアミンを出発物質とする酸性基及び/又は塩基性基を有するポリエステル(特開平2−245231号公報)等が知られており、また低分子化合物の分散剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルジアミン、アルカノールアミン誘導体(米国特許第3536510号)等が知られている。
【0007】
前記有機溶剤に可溶で酸性基を有するバインダーを用いて有機顔料を分散させる必要のあるカラーフィルター作成用、あるいはカラープルーフ作成用等の着色感光性組成物を製造する場合、従来からフッ素系界面活性剤等の使用の例は知られているが、分散剤にどのような化合物を使用すべきかについては提案されていない。
【0008】
充分な流動性を有し、かつ微細化された顔料分散液を得るために有効な分散剤を得るため、本発明者は検討を重ねた。本発明者の検討により、有機溶媒に可溶の酸性基を有するバインダー中に有機顔料を分散させた場合、その酸性基と有機顔料との間で分子間力が働いて、増粘する傾向があり、この増粘により分散安定性は向上するが、顔料の微粒化には好ましくなく、増粘せず分散を促進する分散剤が必要であることがわかった。それには、ポリマー系分散剤より、低分子化合物が好ましく、さらに公知の低分子化合物の分散剤の中ではアミン化合物等が比較的分散性向上に効果が大きかったが、このアミン化合物等は酸性基と塩を作り、後の現像に悪影響を与えるため好ましくない(感光性樹脂層が現像液に溶解し易くなる等)ことが明らかとなった。またアルカリ性の分散剤や水に溶け易い分散剤も、上記アミン化合物と同様な傾向があることも分かった。
本発明者は、上記知見に基づいて、種々の化合物を検討した結果、本発明のトリアジン化合物を発見するに至ったものである。本発明のトリアジン化合物のクマリニル(7)基を有するものは蛍光増白剤として知られている(特公昭48−37969号公報、特開昭49−17423号公報)が、顔料分散剤として使用できるとの記載はない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、分散安定性、流動性に優れ、かつ光透過性が高く、着色力に優れた顔料分散組成物を提供することにある。
更に本発明の目的は、アルカリ現像適性に優れ、かつ高い着色力を有する着色感光性組成物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、有機顔料が下記一般式(I)で表される化合物の存在下に分散されてなる顔料分散組成物:
【0011】
【化3】
【0012】
[但し、R1 は、下記一般式(II):
【0013】
【化4】
【0014】
(但し、R4 及びR5 は、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表わすか、又はR4 及びR5 が互いに連結して窒素原子とともにモルホリン環を形成し;Xは、炭素原子数2〜3のアルキレン基を表わし、そしてYは−NH−を表わす)で表わされる基を表わし;
R2 は、−NHR7 (但し、R7 は、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数7〜8のアラルキル基又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表わす)、上記一般式(II)(但し、R4 及びR5 は、それぞれ独立に低級アルキル基を表わし、Xは、炭素原子数2〜3のアルキレン基を表わし、Yは、−NH−を表わす)で表わされる基、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数7〜9のアラルキル基、アルコキシあるいはフェノキシで置換されても良い炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数6〜10のアリール基、又はハロゲン原子を表わし;そして
R3 は、−NHR8 (但し、R8 は、フェニルあるいはメチルで置換されていても良いクマリニル基を表わす)]にある。
【0015】
上記顔料分散組成物の好ましい態様は下記の通りである。
(1)更に、有機溶剤を含有する。
(2)更に、酸性基を有するバインダーポリマーを含有する。
(3)上記有機顔料が、黄色顔料である。
【0016】
本発明は、上記の顔料分散組成物、酸性基を有するバインダーポリマー、多官能性モノマー及び光重合開始剤とからなる着色感光性組成物にもある。
さらに上記感光性材料の層を支持体に設けることにより感光性転写材料として用いることもできる。
【0017】
上記感光性材料は、その有機溶剤溶液を基板に塗布、乾燥して感光性層を形成し、該層に画像様に露光し、次いで現像することからなる画像形成方法に有利に利用することができる。また、このような方法により、カラーフィルターやカラープルーフの作成にも好適に用いることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の顔料分散組成物は、有機顔料及び前記一般式(I)で表される化合物の分散剤を含んでいる。一般に有機溶剤、バインダー(酸性基を有することが好ましい)を更に含んでいる。
本発明の化合物の置換クマリニルは、一般に3又は4置換クマリニル(7)基である。
【0019】
本発明において顔料の分散剤として作用する、上記一般式(I)で表わされるトリアジン化合物の好ましい例として、下記の化合物を挙げることができる。
【0020】
【化5】
【0021】
【化6】
【0022】
【化7】
【0023】
【化8】
【0024】
【化9】
【0025】
【化10】
【0026】
【化11】
【0027】
【化12】
【0028】
本発明の一般式(I)で表わされる分散剤は単独で使用できるが、一般に知られている分散剤と混合して使用してもよい。混合比率は、一般式(I)の分散剤:他の分散剤の比が、重量で、99:1〜10:90の範囲が好ましく、特に99:1〜30:70の範囲が好ましい。公知の分散剤の具体例としては、ノナノアミド、デカンアミド、ドデカンアミド、N−ドデシルヘキサデカンアミド、N−オクタデシルプロピオアミド、N,N−ジメチルドデカンアミド及びN,N−ジヘキシルアセトアミド等のアミド化合物、ジエチルアミン、ジヘプチルアミン、ジブチルヘキサデシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルメタンアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン及びトリオクチルアミン等のアミン化合物、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N,N’,N’−(テトラヒドロキシエチル)−1,2−ジアミノエタン、N,N,N’−トリ(ヒドロキシエチル)−1,2−ジアミノエタン、N,N,N’,N’−テトラ(ヒドロキシエチルポリオキシエチレン)−1、2−ジアミノエタン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン及び1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン等のヒドロキシ基を有するアミン等を挙げることができ、その他にニペコタミド、イソニペコタミド、ニコチン酸アミド等の化合物を挙げることができる。
【0029】
また本発明の一般式(I)で表わされる分散剤は、下記の一般式(V)または(VI)で表わされるアミン化合物と併用することも好ましい。
【0030】
【化13】
【0031】
式中、R21、R22は各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアラルキル基を表わし、R21、R22は、互いに結合して窒素原子を含んだ5ないし6の飽和環を形成してもよい。この環は更に酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれる1〜3個の原子を含んでもよい。R23は、アルキレン基又はエーテル結合を含むアルキレン基を表わす。X2 は、−CON(Y21)(Y22),−OCON(Y21)(Y22),−N(Y23)CO(Y24)又は−N(Y23)CON(Y21)(Y22)で表せる基を表す。Y21、Y22、Y23、Y24は、各々独立に、水素原子又は置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表わす。
【0032】
【化14】
【0033】
式中、R21、R22、R26、R27は各々独立に水素原子、置換基を有していても良いアルキル基又は置換基を有していてもよいアラルキル基を表わし、R21、R22、R26、R27は各々独立に、互いに結合して窒素原子を含んだ5ないし6の飽和環を形成してもよい。この環は更に酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれる1〜3個の原子を含んでもよい。R24、R25は、アルキレン基又はエーテル結合を含むアルキレン基を表す。Zは、−CON(Y21)−,−OCON(Y21)−又は−N(Y22)CON(Y23)−で表せる基を表す。Y21、Y22、Y23は一般式(V)におけるY21、Y22、Y23と同じ意味を表す。
上記化合物として、例えばビス(2−(1−モルホリノ)エチル)テレフタルアミドを挙げることができる。
【0034】
また、各種界面活性剤の使用が分散安定性の向上に有効である。例えば、アルキルナフタレンスルホン酸塩、燐酸エステル塩に代表されるアニオン系界面活性剤、アミン塩に代表されるカチオン系界面活性剤、アミノカルボン酸、ベタイン型に代表される両性界面活性剤を挙げることができる。
【0035】
顔料分散組成物中に於ける分散剤の比率は、顔料100重量部に対して0.1〜200重量部が一般的であり、1〜50重量部が好ましい。
顔料を分散する際には、一般に有機溶剤を用いるが、有機溶剤は、顔料100重量部に対して10〜1000重量部が一般的であり、20〜500重量部が好ましい。
また、この分散液中の顔料含有率は、5〜80重量%の範囲が一般的であり、10〜70重量%の範囲が好ましい。
【0036】
本願発明で使用することができる有機顔料の例を以下に示す。
黄色顔料として、C.I.ピグメントイエロー20、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー86、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー109 、C.I.ピグメントイエロー110 、C.I.ピグメントイエロー117 、C.I.ピグメントイエロー125 、C.I.ピグメントイエロー137 、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139 、C.I.ピグメントイエロー185 、C.I.ピグメントイエロー147 、C.I.ピグメントイエロー148 、C.I.ピグメントイエロー153 、C.I.ピグメントイエロー154 、C.I.ピグメントイエロー166 、C.I.ピグメントイエロー168 等を;
【0037】
オレンジ顔料として、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントオレンジ55 、C.I.ピグメントオレンジ59、C.I.ピグメントオレンジ61 等を;
【0038】
赤色顔料として、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド97、C.I.ピグメントレッド122 、C.I.ピグメントレッド123 、C.I.ピグメントレッド149 、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド177 、C.I.ピグメントレッド180 、C.I.ピグメントレッド192 、C.I.ピグメントレッド215 、C.I.ピグメントレッド216 、C.I.ピグメントレッド217 、C.I.ピグメントレッド220 、C.I.ピグメントレッド223 、C.I.ピグメントレッド224 、C.I.ピグメントレッド226 、C.I.ピグメントレッド227 、C.I.ピグメントレッド228 、C.I.ピグメントレッド240 、C.I.ピグメントレッド48:1等を;
【0039】
バイオレット顔料としてC.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット29、C.I.ピグメントバイオレット30、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントバイオレット40、C.I.ピグメントバイオレット50等を;
【0040】
青色顔料としてC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー22、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー64等を;
緑色顔料としてC.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36等を;
ブラウン顔料としてC.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントブラウン26等を;
黒色顔料としてC.I.ピグメントブラック7 等を挙げることができる。
【0041】
これらの中で、ピグメントイエロー139 、ピグメントイエロー185 、ピグメントイエロー83が好ましく、特にピグメントイエロー139 である。
【0042】
本発明の顔料分散組成物は、上記顔料分散剤を用いて、例えば次のようにして作製することができる。
1)有機顔料と顔料分散剤を予め混合して得られる顔料組成物を、ビヒクルに添加して分散させる。
2)ビヒクルに顔料と顔料分散剤を別々に添加して分散させる。
3)顔料と顔料分散剤を予め別々にビヒクルに分散し、得られた分散体を混合する。この場合、顔料分散剤を溶媒のみで分散してもよい。
4)ビヒクルに顔料を分散した後、得られた分散体に顔料分散剤を添加する。
【0043】
上記ビヒクルとは、塗料が液体状態にあるときに顔料を分散させている媒質の部分をいい、液状であって顔料を結合して塗膜を固める成分(バインダー)と、これを溶解希釈する成分(有機溶剤)とで構成されている。
【0044】
上記顔料を分散させる際使用する分散機としては、ニーダー、ロールミル、アトライター、スーパーミル、ディゾルバー、ホモミキサー、サンドミル等を挙げることができる。
【0045】
上記顔料分散組成物を用いて着色画像を形成する方法としては、例えば、支持体上に顔料分散組成物を含む塗布液を、塗布、乾燥して組成物の層を形成し、あるいは仮支持体上に形成されたこの組成物の層を支持体上に転写し、その上に公知のポジ型あるいはネガ型の感光性樹脂組成物の層を設けて露光、現像し、次いで未露光の感光性樹脂組成物と共に同じ領域の顔料分散組成物を除去する方法を挙げることができる。
【0046】
上記顔料分散組成物を用いて着色感光性組成物を得ることができ、これを用いて上記の着色画像の形成を行なうことができる。
着色感光性組成物は、顔料分散組成物と感光性組成物を混合して得られる。本発明において使用できる感光性組成物の材料としては、公知の、例えば特開平3−282404号公報に記載されている感光性組成物をすべて使用することができる。例えば、ネガ型ジアゾ樹脂とバインダーからなる感光性組成物、光重合性組成物、アジド化合物とバインダーとからなる感光性組成物、桂皮酸型感光性組成物等を挙げることができる。
【0047】
これらの中で特に好ましいのは、光重合性組成物である。その光重合性組成物は光重合開始剤、多官能モノマーおよびバインダーを主成分とする。また感光性組成物としては、アルカリ水溶液により現像可能なものと、有機溶剤により現像可能なものが知られているが、公害防止、労働安定性の確保の観点からアルカリ水溶液現像可能なものが好ましい。
【0048】
着色感光性組成物において用いられるバインダーとしては、顔料の分散性と感光性組成物として使用するためにアルカリ現像性を付与するための両方の性質を有することが要求される。このようなバインダーは、以下のポリマーの中から適宜選択して、好ましくは組み合わせて、用いることができる。このようなポリマーとしては、顔料分散性が良く、また、多官能モノマー、光重合開始剤との相溶性が良く、アルカリ現像液溶解性、有機溶剤溶解性、強度、軟化温度等が適当であるものが好ましい。
【0049】
上記ポリマーの例として、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、及びスチレン/無水マレイン酸共重合体とアルコール類との反応物等を挙げることができる。(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体が好ましい。その重量平均分子量としては、5000〜200000が好ましい。着色感光性組成物中のバインダーの好ましい量は、全固形分に対して20から80重量%の範囲である。
【0050】
着色感光性組成物に好適に用いられる有機溶剤の例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルおよびこれらの酢酸エステル類;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のアルコール類などを挙げることができる。特に、アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、およびその酢酸エステル類、酢酸エステル類、メチルエチルケトンが好ましい。上記溶剤は、全固形分に対して、50から2000重量%で使用することが好ましい。
上記有機溶剤は、顔料分散用の溶剤として、即ち顔料分散組成物の作製にも好ましく使用することができる。
【0051】
着色感光性組成物に用いられる多官能モノマーとしては、特開昭60−258539号公報に記載されているような公知の(メタ)アクリル酸エステル、ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アミド、アリル化合物、ビニルエステル等を挙げることができる。(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。モノマーは、着色感光性組成物の固形分の10〜60重量%の量で使用することが好ましい。
【0052】
着色感光性組成物に用いられる光重合開始剤としては、約300〜500nmの範囲に少なくとも約50の分子吸光係数を有する化合物を、少なくとも1種使用することが好ましい。このような化合物としては、例えば、特開平2−48664号公報、特開平1−152449号公報及び特開平2−153353号公報に記載されているような、芳香族ケトン類、ロフィン2量体、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類、ポリハロゲン類を挙げることができ、さらにこれらを2種以上組み合わせて使用することもできる。4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンと2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体の組み合わせ、及び4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン]が好ましい。光重合開始剤の含有量は、着色感光性組成物の固形分に対し、0.2〜10重量%の範囲が好ましい。
【0053】
本発明の着色感光性組成物を用いて着色画像の作成は、基本的に下記(1)〜(3)の工程により行なうことができる。
【0054】
(1)一般式(I)の分散剤、有機顔料、アルカリ可溶性バインダー及び有機溶剤を混合して充分混練し、顔料分散液を得た後、モノマー、光重合開始剤、および必要に応じて希釈溶剤を添加して着色感光性組成物(塗布液)を調製する工程、
(2)得られた着色感光性組成物を基板上に塗布乾燥して、又は別の仮支持体上に塗布して形成した層を基板上に転写して、着色感光性層を形成する工程、
(3)基板上に形成された着色感光性組成物層を露光、現像し、パターンを形成する工程。
【0055】
液晶ディスプレー等に用いるカラーフィルターの場合には、(2)、(3)の工程を繰り返し行い、2色目以降のパターンを組み合わせて作成する。転写法によりカラーフィルターを作成する方法については、例えば特開平4−208940号公報、特開平5−72724号公報、特開平5−80503号公報、特開平5−173320号公報等に記載されている。
【0056】
基板としては、ガラス板や透明プラスティック板等の透明な材料が一般に用いられる。基板と着色感光性組成物との密着力を向上させるために、市販の各種シランカップリング剤等を組成物に添加するか、あるいはあらかじめ基板に処理しておいても良い。
【0057】
着色感光性組成物の塗布液の基板への塗布は、スピンナー、ロールコーター、バーコーター、カーテンコーター等の塗布機用いて行なわれる。
【0058】
仮支持体上に形成された組成物の層を、基板上に転写する方法としては、常圧または減圧下にヒートロールラミネーターを用いる方法が好ましい。
【0059】
現像時に使用される現像液の例としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物または炭酸塩、炭酸水素塩、アンモニア水、4級アンモニウム塩の水溶液等を挙げることができる。特に炭酸ナトリウム水溶液が好ましい。
【0060】
以下に本発明の実施例を記載するが、本願はこれによって限定されるものではない。
【0061】
【実施例】
[合成例1] 化合物(1)の合成
特開昭49−17423号公報の例2に従って2−クロロ−4−メトキシ−6−[(3−フェニル−7−クマリニル)アミノ]−1,3,5−トリアジンを合成し、この化合物10gとN,N−ジエチルアミノプロピルアミン3.8gをテトラヒドロフラン中で還流下で3時間反応させ、得られた反応液を水中に投入して析出した結晶を濾取した。融点が187℃の化合物(1)の結晶9.2gを得た。
【0062】
[合成例2(比較化合物の合成例)] 化合物(2)の合成
800gの砕氷中に、塩化シアヌル36.9をアセトン320mLに溶解した溶液を、攪拌しながら滴下して分散させる。この分散液に、アニリン18.6gを分散液を5℃以下に保ちながら、滴下する。アニリンの滴下と同時に且つ等速度で5%炭酸ナトリウム水溶液210mLを滴下して、結晶を析出させ、2,4−ジクロロ−6−フェニルアミノ−1,3,5−トリアジンを得た。
得られた化合物24.1gをテトラヒドロフラン250mLに溶解し、氷冷下で25%ナトリウムメチラートメタノール溶液19.3gをゆっくり滴下し、3時間反応させ、得られた反応液を水中に投入して析出した結晶を濾取し、2−クロロ−4−メトキシ−6−フェニルアミノ−1,3,5−トリアジンを得た。更に、この化合物10gとN,N−ジエチルアミノプロピルアミン6.0gとテトラヒドロフラン中で還流下で反応させ、得られた反応液を水中に投入し、ついで酢酸エチルで抽出して油状の化合物(2)8.9gを得た。
H1 NMR (300MHz、CDCl3 )
1.00〜1.10ppm 6H,t
1.65〜1.80ppm 2H,m
2.45〜2.55ppm 6H,m
3.45〜3.55ppm 2H,q
3.85〜3.95ppm 3H,w
6.55〜6.70ppm 1H,m
7.00〜7.10ppm 1H,m
7.20〜7.35ppm 3H,m
7.55〜7.65ppm 2H,m
【0063】
【化15】
【0064】
[合成例3] 化合物(4)の合成
特公昭48−37969号公報の実施例14に従って2−クロロ−4−ジエチルアミノ−6−[(3−フェニル−7−クマリニル)アミノ]−1,3,5−トリアジンを合成し、この化合物10gとN,N−ジエチルアミノプロピルアミン3.4gをテトラヒドロフラン中で還流下で4時間反応させ、得られた反応液を水中に投入して析出した結晶を濾取した。融点が146℃の化合物(4)の結晶9.2gを得た。
【0065】
[合成例4(比較化合物の合成例)] 化合物(8)の合成
合成例2と同様にして2,4−ジクロロ−6−フェニルアミノ−1,3,5−トリアジンを得た。
得られた化合物10gをテトラヒドロフラン220mLに溶解し、氷冷下でアニリン12.7g及びトリエチルアミン13.8gをテトラヒドロフラン65mLに溶解した溶液をゆっくり滴下し、3時間反応させ、得られた反応液を水中に投入して析出した結晶を濾取し、2−クロロ−4,6−ジフェニルアミノ−1,3,5−トリアジンを得た。更に、この化合物10gとN,N−ジエチルアミノプロピルアミン4.8gとテトラヒドロフラン中で還流下で反応させ、得られた反応液を水中に投入して析出した結晶を濾取し、融点が87℃の化合物(8)10.5gを得た。
H1 NMR (300MHz、CDCl3 )
1.00〜1.10ppm 6H,t
1.70〜1.80ppm 2H,m
2.45〜2.55ppm 6H,m
3.45〜3.55ppm 2H,q
6.20〜6.30ppm 1H,m
6.95〜7.05ppm 4H,m
7.25〜7.35ppm 4H,m
7.55〜7.65ppm 4H,m
【0066】
【化16】
【0067】
[実施例1]
下記組成の黄色顔料分散液を調製した。
C.I.ピグメントイエロー139 13.66g
前記(1)の化合物 1.37g
メタクリル酸/メタクリル酸ベンジル共重合体 11.38g
(モル比:28/72、重量平均分子量:3万)
1−メトキシ−2−プロピルアセテート 53.60g
【0068】
上記組成の材料を、モーターミルM50(アイガー社製)で、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで9時間分散し、顔料分散液を作製した。
【0069】
[比較例1]
実施例1において前記(1)の化合物の代わりに前記(2)の化合物を使用した以外は実施例1と同様にして黄色顔料分散液を調製した。
【0070】
[実施例2]
実施例1において前記(1)の化合物の代わりに前記(4)の化合物を使用した以外は実施例1と同様にして黄色顔料分散液を調製した。
【0071】
[比較例2]
実施例1において前記(1)の化合物の代わりに前記(8)の化合物を使用した以外は実施例1と同様にして黄色顔料分散液を調製した。
【0072】
[実施例3]
実施例1において黄色顔料分散液の代わりに下記の赤色顔料分散液を使用した以外は実施例1と同様にして赤色顔料分散液を調製した。
下記組成の赤色顔料分散液を調製した。
C.I.ピグメントレッド177 11.38g
C.I.ピグメントイエロー139 2.78g
前記(1)の化合物 1.37g
メタクリル酸/メタクリル酸ベンジル共重合体 11.38g
(モル比:28/72、重量平均分子量:3万)
1−メトキシ−2−プロピルアセテート 53.60g
【0073】
[比較例3]
実施例1において前記(1)の化合物を使用しなかった以外は実施例1と同様にして黄色顔料分散液を調製した。
【0074】
得られた顔料分散液を下記の方法にしたがって評価した。
(1)粘度測定:
得られた顔料分散液を、E型粘度計を用いて粘度を測定、増粘の程度を評価した。
【0075】
(2)コントラスト測定:
得られた顔料分散液をガラス基板上に膜厚6μmに塗布し、サンプルを作製した。2枚の偏光板の間にこのサンプルを置き、偏光軸が平行のときと垂直のときとの透過光量を測定し、その比をコントラストとした(「1990年第7回色彩光学コンファレンス、512色表示10.4”サイズTFT−LCD用カラーフィルター、植木、小関、福永、山中」を参考にした)。
【0076】
[実施例4]
<カラーフィルター作成用赤色感光性組成物の調製>
(光重合性感光性組成物の調製)
メタクリル酸/メタクリル酸ベンジル共重合体 30g
(モル比:28/72、重量平均分子量:3万)
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 7.7g
4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル) 0.3g
−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン]
ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.01g
1−メトキシ−2−プロピルアセテート 62g
【0077】
上記の感光性組成物に、赤の顔料として、C.I.ピグメントレッド177をアクリル系樹脂に分散した粉末加工顔料(カラーテックスレッド U3BN、山陽色素株式会社製)を1−メトキシ−2−プロピルアセテートに分散させた液(固形分含有量33%)45gと、色補正のため、実施例1で調製した黄色顔料分散液を9g混合して、カラーフィルター作成用赤色感光性組成物を調製した。
【0078】
[比較例4]
実施例4において実施例1で調製した黄色顔料分散液の代わりに比較例1で調製した黄色顔料分散液を使用した以外は実施例4と同様にしてカラーフィルター作成用赤色感光性組成物を調製した。
【0079】
[実施例5]
実施例4において実施例1で調製した黄色顔料分散液の代わりに実施例2で調製した黄色顔料分散液を使用した以外は実施例4と同様にしてカラーフィルター作成用赤色感光性組成物を調製した。
【0080】
[比較例5]
実施例4において実施例1で調製した黄色顔料分散液の代わりに比較例2で調製した黄色顔料分散液を使用した以外は実施例4と同様にしてカラーフィルター作成用赤色感光性組成物を調製した。
【0081】
[実施例6]
実施例4において実施例1で調製した黄色顔料分散液と粉末加工顔料の分散液の代わりに実施例3で調製した赤色顔料分散液を54g使用した以外は実施例4と同様にしてカラーフィルター作成用赤色感光性組成物を調製した。
【0082】
[比較例6]
実施例4において実施例1で調製した黄色顔料分散液の代わりに比較例3で調製した黄色顔料分散液を使用した以外は実施例4と同様にしてカラーフィルター作成用赤色感光性組成物を調製した。
【0083】
得られたカラーフィルター作成用赤色感光性組成物について、上記と同様にして粘度を測定し、下記のようにしてカラーフィルターを作成し、上記と同様にそのコントラストを測定した。
ガラス基板上にカラーフィルター作成用赤色感光性組成物をスピナーで塗布し、100℃で2分間乾燥させて、約2μmの膜を形成した。次いで窒素気流下、超高圧水銀灯で露光した後、1%炭酸ナトリウム水溶液で現像した。得られたカラーフィルターのコントラストを、測定した。
【0084】
実施例と比較例で得られた顔料分散液及び赤色感光性組成物の評価結果を表1に示す。
【0085】
表1
────────────────────────────────────
粘度(cp) コントラスト
顔料分散液膜 感光性組成物膜
────────────────────────────────────
実施例1 40 200 −
実施例2 70 185 −
────────────────────────────────────
比較例1 80 180 −
比較例2 50 170 −
比較例3 1200以上 10 −
────────────────────────────────────
実施例3 70 1700 −
────────────────────────────────────
実施例4 70 − 1850
実施例5 70 − 1825
────────────────────────────────────
比較例4 70 − 1785
比較例5 70 − 1750
比較例6 70 − 150
────────────────────────────────────
実施例6 70 − 1700
────────────────────────────────────
【0086】
これから、本発明の分散剤を用いた顔料分散液は、粘度が低く、カラーフィルターを作成した場合に高いコントラストが得られることが分かる。
【0087】
【発明の効果】
本発明の顔料分散組成物は、流動性、分散安定性に優れ、かつ顔料粒子が微細化されていて着色力に優れている。また、顔料分散組成物及びこれを含む着色感光性組成物を用いて、アルカリ性水溶液で現像して画像を形成した場合、良好な現像適性を示し、かつ高い着色力を有する着色画像を形成することができる。
Claims (5)
- 有機顔料が下記一般式(I)で表される化合物の存在下に分散されてなる顔料分散組成物。
R2 は、−NHR7 (但し、R7 は、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数7〜8のアラルキル基又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表わす)、上記一般式(II)(但し、R4 及びR5 は、それぞれ独立に低級アルキル基を表わし、Xは、炭素原子数2〜3のアルキレン基を表わし、Yは、−NH−を表わす)で表わされる基、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数7〜9のアラルキル基、アルコキシあるいはフェノキシで置換されても良い炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数6〜10のアリール基、又はハロゲン原子を表わし;そして
R3 は、−NHR8 (但し、R8 は、フェニルあるいはメチルで置換されていても良いクマリニル基を表わす)]。 - さらに、酸性基を有するバインダーポリマーを含有する請求項1に記載の顔料分散組成物。
- さらに、有機溶剤を含有する請求項1に記載の顔料分散組成物。
- 該有機顔料が、黄色顔料である請求項1に記載の顔料分散組成物。
- 請求項1に記載の顔料分散組成物、酸性基を有するバインダーポリマー、多官能モノマー及び光重合開始剤とからなる着色感光性組成物。
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