JP3966627B2 - 走行減速機の軸受組立構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として油圧ショベルなど履帯走行装置を備える車輌の駆動用走行減速機の組立構造に係るものであって、詳しくはモータケースに装着されるハブを支持する分離型のベアリングの取付作業が合理的に行える構成とされた走行減速機の軸受組立構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば油圧ショベルのような履帯走行装置を備える車輌の走行減速機としては、油圧モータによって駆動される遊星歯車減速機が車体フレームに組み込まれ、その遊星歯車減速機の最終段減速歯車機構からの出力を履帯に噛み合うスプロケットに直接的に伝達して駆動するように構成されている。
【0003】
このような走行減速機としては、例えば図3によって示されるような構成のものがある。この図に示される走行減速機100では、油圧モータ101を内設されたモータケース102の外周部に2個のベアリング103,103′を介してハブ104が同軸芯で支持され、このハブ104に履帯駆動用のスプロケット105が取付けられている。そして、前記ハブ104は、油圧モータ101の出力軸に直結される回転軸106先端に設けられる太陽歯車107から第1段目の遊星歯車減速機構108を経て第2段目の遊星歯車減速機構109により、同軸芯で直結されるリングギア110を介して減速された駆動力が伝達されるものである。この種の減速機では、全体をコンパクトにまとめるために、モータケース102の一部にスプロケット105を装着するハブ104を支持させる構造にされ、そのハブ104を回転自在に支持させる構造上、重荷重に耐えられるベアリング103が組み込まれる。そして、そのベアリング103,103′にはアンギュラーコンタクト型、あるいはテーパーローラ型のものが用いられている。それらベアリングは、構造上外輪と内輪とに分離された構造になっている。また、そのベアリング103の支持部の外側に面する個所にはフローティングシール115が保持部材116によって保持されて取付けられて外部からの異物の侵入を阻止する構造とされている。このほかに、実公平3−24924号公報によって知られるようなものがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような走行減速機は、組立工程で、その部品構成上、通常モータケースを上向きにした状態で組立てられている。前記図3で示されるような走行減速機100にあっては、まずハブ104に一方のベアリング103を挿入して組み込み、このようにされたものを吊り上げてモータケース102の支持部に組み付ける場合、ベアリングが分離型(アンギュラーコンタクト型やテーパーローラ型)であると内輪が脱落してしまう。そこで、ベアリングの内輪のみを先にモータケース102に組み付けておくようにすると、フローティングシール115の内径を前記ベアリング103の内輪に取付くローラ部の外径より大きくしておく必要がある。その一例として前記実公平3−24924号公報に記載の図面では、フローティングシールの径をベアリングの内輪に取付くローラ部外径より大きくされているのが示されている。
【0005】
一般にフローティングシールは、その直径を小さくして接触するリップ部分での周速を遅くして耐久性を高めるようにすることが望ましい。そのようなことから、このフローティングシールの径を大きくしなければならないことは、それだけ耐久性が低下することになり不都合である、という問題がある。
【0006】
このようなことからベアリングの内輪を脱落させないで組立てるには、ベアリングの外輪を組み込んだハブを下にした状態でモータケースを吊上げて組み付け、その後にモータケースとハブが組合わされた状態のものを反転させる作業が必要になる。当然、作業工数が多くなって作業性が低下し、かつ重量物を反転操作するには、組立ラインに過剰な設備が要求されて、コストアップになるのが避けられない。
【0007】
本発明は、このような問題点を解消するためになされたもので、減速機の組立操作を複雑化することなく、組立作業の容易性が得られる構造とされた走行減速機の軸受組立構造を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段および作用・効果】
前述された目的を達成するためになされた、本発明による走行減速機の軸受組立構造は、
遊星歯車減速機構の最終段出力部に直結される走行起動輪のハブを回転源のケースの回転支持部上で回転自在に支持する軸受部に内外輪分離型の転がり軸受を用いる走行減速機において、
当該走行減速機は、前記回転支持部を上向きにして配置した状態で、前記転がり軸受を組み込んだ前記ハブを、前記回転支持部に対して嵌め合わせて組み立てられるように構成され、
前記転がり軸受の外輪は、前記ハブの軸受装着部に圧入固定され、
前記軸受装着部の外側面には、前記転がり軸受の内輪を組立時のみ受止める保持部を備えたカバーが取付けられ、
前記回転支持部の基部側には、前記転がり軸受の内輪を受止める支持端面が設けられる
ことを特徴とするものである。
【0009】
このように構成される本発明によれば、走行起動輪のハブ内に内外輪分離型の転がり軸受を組み込んで回転源のケース上に組み付ける作業を行う際、前記回転源を上向きに倒した状態にして、ハブ内に軸受を組み付けた走行起動輪を吊上げて、組み付けるようにしてもその吊上げられた走行起動輪のハブ内に組込まれている転がり軸受の内輪は保持部を備えたカバーによって脱落を防止され、組み込みを容易にすることができ、組立作業の能率向上を促進できるという効果を奏するのである。また、反転させるような作業を必要とせず余分な組立設備を必要としないので経済性も向上する。なお、組立状態で前記カバーの保持部は、軸受の内輪との接触が断たれ、回転には支障をきたすことはない。
【0010】
また、転がり軸受の内輪を組立時のみ受止める保持部を備えた前記カバーはフローティングシールのハウジングを兼ねる構成であるのがよい。こうすると、そのカバーによって軸受の内輪部を組立時に走行起動輪のハブに組み込んだままで吊上げて、回転源(モータケース)の回転支持部に組み付けることができるので、フローティングシールの径を許容最小限に小さくしても組立に支障なく、しかも組立時ハブ側にフローティングシールの回転側を同時に組み込んで組立できることになり、フローティングシールの小型化による耐久性の向上を合わせ得られることになるという効果を奏するのである。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明による走行減速機の軸受組立構造の具体的な実施の形態につき、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1に本発明に係る軸受組立構造を備える走行減速機の実施例断面図が示されている。
【0013】
この走行減速機1は、油圧ショベルなど履帯走行装置を備える車輌における車体のフレーム(図示せず)に取付けられて、図示されない油圧モータにより駆動されるものであり、走行起動輪2(履帯駆動用のスプロケット3と、このスプロケット3を取付けたハブ4とでなる)は、その油圧モータを組み付けて前記フレームに締着固定されるモータケース5の回転支持部5aに転がり軸受6,6′によって回転自在に支持され、前記油圧モ−タの駆動軸に繋がる回転軸7の先端に設けられた太陽歯車8から第1段目の遊星歯車減速機構9を経て第2段目の遊星歯車減速機構10を介し、第3段目の遊星歯車減速機構11により同軸芯で直結される内歯車を備えたリングギア12を介して減速された駆動力が伝達されるように構成されている。
【0014】
前記モータケース5の外周部に回転軸心を油圧モ−タの駆動軸芯と合致させて形成される回転支持部5aには、転がり軸受6,6′として2個のテーパーローラベアリングが配されて、これら転がり軸受6,6′を介してハブ4が回転自在に支持されている。なお、モータケース5の回転支持部5aに配設される転がり軸受6,6′は、バブ4に形成された軸受装着孔部4aで所要の間隔を保って外輪が左右両側からそれぞれ圧入固定されている。
【0015】
モータケース5の基部側に配される転がり軸受6のローラを保持した内輪6aは、そのモータケース5の回転支持部における支持端面5bにて側面を受止められ、この転がり軸受6と反対の側の転がり軸受6′における内輪6aは回転支持部5aの先端部外周に設けられたねじ部に螺合する固定リング14によって抜け出さないように保持されている。
【0016】
モータケース5の基部側に位置する転がり軸受6の外側には、カバー15がハブ4のボス4bにボルト16にて取付けられている。このカバー15は、図2に要部の詳細断面図として示されるように、前記転がり軸受6の内輪6aを組立時保持できるように、その内輪保持部15aを内径側に形成されている。なお、その内輪保持部15aの内面は、組立状態で軸受の内輪6a端面との間に僅かな間隙tが形成されて、運転時回転に支障を来さないように構成されている。また、このカバー15の外向き先端部に、固定状態に保たれているモータケース5との間に設けられるフローティングシール17の可動側が嵌設されて、外部からの異物の侵入を防止するようにされるフローティングシール17のハウジングを兼ねている。
【0017】
走行減速機1はこのように構成されているので、その組立作業に際しては、図示されない駆動用の油圧モータを装着されたモータケース5が、その回転支持部5aを上向きにして配置された状態に対して、別途組立てられた走行起動輪2におけるハブ4の軸受装着孔部4aに転がり軸受6,6′を内外輪ともに組込んで、そのまま吊上げて前記回転支持部5aに対して軸受を嵌め合わせ、組立てることができる。
【0018】
すなわち、組立時吊上げられて水平状態になった走行起動輪2の下側になる転がり軸受6は、その外側にカバー15がハブ4のボス4bに取付けられて、そのカバー15の内輪保持部15aによって内輪6a側端面を受止められるので、分離型の軸受であってもローラを備える内輪6a側が軸受装着孔部4aに圧入されて固定状態にある外輪から離れた状態になるが脱落することがない。したがって、軸受を組み込んでそのままモータケース5の回転支持部5aに前記転がり軸受6の内輪6aの内径を合わせて外嵌させることができる。
【0019】
モータケース5の回転支持部5aに、ハブ4に組み込みの転がり軸受6の内輪6aを嵌め合わされて挿入されたならば、次の固定リング14を正規の位置に締め込むまでは、フローティングシール17の接触による弾性力で、その転がり軸受6の内輪6a側端が回転支持部5の支持端面5bから僅かに離れた状態に収まっている。
【0020】
以後は、固定リング14を回転支持部5a先端部のねじ部に螺合させて締め付け、他方の転がり軸受6′を固定すると、回転支持部5の支持端面5bと僅かに離れた状態にあった軸受の内輪6a側端がその支持端面5bに当接され、カバー15の内輪保持部15aのみが僅かに下がって隙間tが内輪保持部15aの内面と軸受の内輪6a側端との間に形成され、カバー15は転がり軸受6との接触を断ち回転に支障のない状態になる。したがって、その後は、上向きになったモータケース5の端面上に所定の順序で遊星歯車減速機構の歯車とそのキャリアを組立て、端部のケースカバーを取付けることにより組立を完了させることができる。
【0021】
このように、本発明の構成によれば、組立途中において油圧モータが組み込まれたモータケースを反転させて走行起動輪と組合わせ、かつその中間組立品を再び反転させて次の歯車組立を行うというような重量物の反転作業を行うことなく手際よく作業ができる効果を奏するのである。もちろん、分解するときも、前述の操作の逆手順によって無理なく分解することができる。
【0022】
また、前述のようにモータケースの反転操作を必要としない組立構造とすることにより、走行起動輪1の軸受部の外側に位置するフローティングシール17を先に組み込むことが可能となるので、その内径寸法を許容最小限の寸法まで小さくすることができ、その分小型化できることにより接触部の回転周速が遅くなり、摩耗損失を低減できて耐久性を高め得るとともに、小型化によるコストダウンを図ることができて経済性を高め合理化が図れるのである。
【0023】
以上の説明では、転がり軸受としてテーパーローラベアリングを使用したものについて記載したが、アンギュラーコンタクト型のベアリングの場合であっても、同じ要領で構成でき、また、同様の効果を得ることができる。
【0024】
上述の実施例における油圧モータは本発明における回転源に、軸受装着孔部4aは軸受装着部に、内輪保持部15aは保持部に、それぞれ対応する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る軸受組立構造を備える走行減速機の実施例断面図である。
【図2】図2は、要部の詳細断面図である。
【図3】図3は、従来の走行減速機における減速歯車機構の断面図である。
【符号の説明】
1 走行減速機
2 走行起動輪
3 スプロケット
4 ハブ
4a 軸受装着孔部
5 モータケース
5a 回転支持部
5b 軸受内輪の支持端面
6,6′ 転がり軸受
6a 軸受の内輪
7 回転軸
9 第1段目の減速歯車機構
10 第2段目の減速歯車機構
11 第3段目の減速歯車機構
12 リングギア
14 固定リング
15 カバー
15a 内輪保持部
17 フローティングシール
Claims (2)
- 遊星歯車減速機構の最終段出力部に直結される走行起動輪のハブを回転源のケースの回転支持部上で回転自在に支持する軸受部に内外輪分離型の転がり軸受を用いる走行減速機において、
当該走行減速機は、前記回転支持部を上向きにして配置した状態で、前記転がり軸受を組み込んだ前記ハブを、前記回転支持部に対して嵌め合わせて組み立てられるように構成され、
前記転がり軸受の外輪は、前記ハブの軸受装着部に圧入固定され、
前記軸受装着部の外側面には、前記転がり軸受の内輪を組立時のみ受止める保持部を備えたカバーが取付けられ、
前記回転支持部の基部側には、前記転がり軸受の内輪を受止める支持端面が設けられる
ことを特徴とする走行減速機の軸受組立構造。 - 前記カバーはフローティングシールのハウジングを兼ねる構成である請求項1に記載の走行減速機の軸受組立構造。
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