JPH09177837A - 軸受一体型一方向クラッチを内蔵した動力伝動装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 一方向クラッチを組み込むための特別な加工
等を必要とせず、構造が簡単で軸受部をコンパクトに構
成することができる軸受一体型一方向クラッチを内蔵し
た動力伝動装置を提供する。 【解決手段】 内輪と外輪との間に複数の転動体と複数
のカムとが幅方向に並列して組み込まれている軸受一体
型一方向クラッチを動力伝動装置の回転軸または回転体
を支持するための軸受として用い、軸受と一方向クラッ
チの両方の機能を兼用させる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属するの技術分野】本発明は、内輪と外輪との
間に複数の転動体と複数のカムとが前記内輪と外輪の幅
方向に並列して組み込まれている軸受一体型一方向クラ
ッチを内蔵した動力伝動装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、モータや減速機等の動力伝動装置
内の回転軸の逆転を防止する場合や、一方向に空転させ
る必要がある場合には一方向クラッチが用いられてい
る。図６は、従来の一方向クラッチを内蔵するモータの
部分断面図であって、モータ５０の前側ブラケットの軸
受保持孔５２内に、モータ５０の回転軸５３を支持する
軸受５４と隣接して一方向クラッチ５５が組み込まれて
いる。

【０００３】前記一方向クラッチ５５は、詳細には図示
していないが、その外輪が前記軸受孔内周面に回転止め
され、また、内輪が回転軸５３にキー５６で固定されて
おり、前記回転軸５３に正転方向に駆動トルクが作用す
る場合には空転してその回転を許容するが、外部から逆
転方向の負荷トルクが回転軸５３に作用した場合にはそ
の回転を阻止するようになっている。

【０００４】また図７は、動力伝動装置の軸受ハウジン
グ６０の軸受保持孔６１内に軸受６２と隣り合わせに一
方向クラッチ６３を配置しているもので、その内輪６４
は回転軸６５の軸端に嵌挿されてキー６６によって回転
止めされ、また、外輪６７の一方の側面側が、ボルト６
８によって軸受ハウジング６０に締結されている軸受カ
バー６９の内周縁部と係合して前記外輪６７が回転止め
されている。

【０００５】図８は動力伝動装置の回転軸７０を支持し
ている軸受７１の軸受ハウジング７２の外側に、トルク
アーム７３を有する一方向クラッチ７４を配置している
もので、回転軸７０の軸端に一方向クラッチ７４の内輪
７５が固定されており、前記トルクアーム７３の先端側
に形成されている長孔７６に、軸受ハウジング７２を固
定している機枠７７に螺着したボルト７８を通して、前
記一方向クラッチ７４の外輪７９の回転を阻止するよう
にしている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】前述した図６及び図７
に示すような、動力伝動装置の軸受保持孔内に軸受と隣
接して一方向クラッチを組み込む構造のものでは、軸受
保持孔内に一方向クラッチを組み込むスペースを必要と
するため、軸受ハウジングのサイズが軸方向に長くなっ
て動力伝動装置が大型化する問題があり、特に、動力伝
動装置がモータである場合には、その軸受部に一方向ク
ラッチを組み込むと、全長が長くなる問題があった。

【０００７】また、図８に示すような、トルクアーム有
する一方向クラッチを用いている動力伝動装置では、機
枠側にトルクアームを支持するための加工を行う必要が
あり、部品点数が多くなるとともに、一方向クラッチを
組み付ける際の調整等が必要であるため、動力伝動装置
の製作コストが高くなる問題があった。

【０００８】そこで、本発明は前述したような従来技術
における問題点を解決し、一方向クラッチを組み込むた
めの特別な加工等を必要とせず、構造が簡単で軸受部を
コンパクトに構成することができる軸受一体型一方向ク
ラッチを内蔵した動力伝動装置を提供することを目的と
する。

【０００９】

【課題を解決するための手段】前記目的のため、本発明
の軸受一体型一方向クラッチを内蔵した動力伝動装置
は、内輪と外輪との間に複数の転動体と複数のカムとが
幅方向に並列して組み込まれている軸受一体型一方向ク
ラッチを回転軸または回転体を支持する軸受として用い
たものである。前記動力伝動装置がモータであり、前記
軸受一体型一方向クラッチをモータの回転軸を支持する
軸受として用いることが好ましい。

【００１０】

【作用】本発明の動力伝動装置では、軸受一体型一方向
クラッチによって回転軸または回転体を支持する軸受の
機能が兼用されている。前記回転軸または回転体は軸受
一体型一方向クラッチによって支持されて正転方向に回
転し、逆転方向のトルクが作用した場合にはその回転が
阻止される。

【００１１】

【実施例】以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明
する。図１は、本発明の動力伝動装置に用いる軸受一体
型一方向クラッチの外観を示す側面図、図２は図１のＡ
−Ａ線位置の断面図であって、軸受一体型一方向クラッ
チ１は、一般に使用されている転がり軸受と同様に、内
輪２、外輪３、及び両者の間に介在される複数の転動体
４、および、前記転動体４相互間の間隔を一定に保持し
ておく環状の転動体保持器５を備えている。本実施例に
おいては、軸受け部分は、転動体４として鋼球が用いら
れており、玉軸受として構成されている。

【００１２】前記転動体４とこれを保持している転動体
保持器５とは、内輪２及び外輪３の一方の側面側に偏っ
て配置されており、他方の側面側には、複数のカム６と
前記カム６を保持している環状のカム保持器７とが組み
込まれている。そして、内輪２は外輪３に対して一方向
には自由に回転でき、反対方向に回転力が加えられた場
合には、前記カム６の面が内輪２の外周面と外輪３の内
周面とに摩擦力で押し付けられ、その楔作用によって内
輪２の外輪３に対する回転を阻止するようになってい
る。なお、図中８はシール部材である。

【００１３】図３は、前述した軸受一体型一方向クラッ
チを内蔵した本発明の動力伝動装置の第１実施例を示す
断面図であって、本実施例では、動力伝動装置をモータ
９としたものである。前記モータ９の後部ブラケット１
０に形成されている軸受保持孔１１には、従来の軸受に
代えて、軸受一体型一方向クラッチ１が嵌装されてお
り、その外輪３は軸受保持孔１１の前後から軸受カバー
１２，１３によって狭持された状態で、ボルト１４によ
って後部ブラケット１０に固定され、また、内輪２には
モータ軸の回転軸１５が挿通されて、キー１６および留
め輪１７によって内輪２と回転軸１５とが一体に固定さ
れている。

【００１４】前述した構成において、モータ９が起動さ
れて回転軸１５が正転方向に回転される場合には、前記
軸受一体型一方向クラッチ１は空転し、回転軸１５は支
障なく回転駆動される。一方、回転軸１５に外部から逆
転方向のトルクが作用した場合には、軸受一体型一方向
クラッチ１によって回転軸１５の逆転が阻止される。

【００１５】図４は、本発明の動力伝動装置の第２実施
例を示すものであって、本実施例はモータ２０の前部ブ
ラケット２１の中心部に形成されている軸受保持孔２２
とモータ２０の回転軸２３との間に軸受一体型一方向ク
ラッチ１を配置して前記回転軸２３を支持するようにし
たものであり、軸受保持孔２２及び回転軸２３に対して
は、前述した図３に示す実施例のものと同様な取付構造
となっている。

【００１６】次に図５は、本発明の動力伝動装置の第３
実施例を示すものであって、この実施例は、動力伝動装
置をベルトコンベヤの駆動ドラムやローラコンベヤの駆
動ローラとして用いるモータプーリとしたものである。
同図において、モータプーリ３０は、回転ドラム３１の
両側に配置されているフレーム３２に固定されている支
持軸３３に軸受３４で回転自在に支持されている。前記
回転ドラム３１の内部にはモータ３５が配置され、その
フランジ３６に形成されている取付孔３７に前記支持軸
３３が嵌合されてキー３８で固定されていることによっ
て、フレーム３２と一体になっている。

【００１７】一方、モータ３５の回転軸３９の一端側
は、前記フランジ３６の中心部に形成されている軸受保
持孔４０に装着されている軸受一体型一方向クラッチ１
によって支持されている。また、回転軸３９は、支持軸
３３と軸線を一致させて配置されておりその軸端には駆
動ピニオン４１が形成されている。前記駆動ピニオン４
１には、フランジ３６に回転自在に軸受支持されている
中継軸４２の一端側に固定されている中継平歯車４３が
噛み合っており、また、前記中継軸４２の他端側には中
継ピニオン４４が形成され、前記中継ピニオン４４は、
さらに、回転ドラム３１の端部に固定されている端板４
５の内側に、軸受３４を包囲して取り付けられている環
状歯車４６と噛み合っている。

【００１８】前記の構成において、軸受一体型一方向ク
ラッチ１は、モータ３５の回転軸３９が正転方向に駆動
される場合に空転し、逆転方向のトルクが外部から加わ
った場合には、その回転を阻止するようになっており、
モータ３５が回転軸３９が正転方向に駆動されると、そ
の軸端に形成されている駆動ピニオン４１によって中継
平歯車４３が減速回転され、これに伴って中継軸４２が
回転される。そして、その回転は、中継軸４２に形成さ
れている中継ピニオン４４を介して回転ドラム３１側に
固定されている環状歯車４６に伝達され、回転ドラム３
１が支持軸３３回りに回転駆動される。

【００１９】一方、モータ３５の停止中に、回転ドラム
３１に外部から逆転方向の負荷トルクが作用した場合に
は、前記負荷トルクは、環状歯車４６、中継ピニオン４
４、中継平歯車４３を順次介してモータ３５の駆動ピニ
オン４１に伝達されるが、その際、これらの歯車列によ
って、負荷トルクの大きさは小さくなっており、前記軸
受一体型一方向クラッチ１によって回転軸３９の回転は
容易に阻止される。

【００２０】したがって、前記モータプーリ３１を、下
方から上方へ重量物を搬送する傾斜したベルトコンベヤ
等に用いることによって、傾斜した搬送面の途中でモー
タ３５が停止した場合に、重量物を落下させることなく
その場に停止させることができる。

【００２１】なお、前述したモータプーリ３０は、モー
タ３５の駆動力をフランジ３６に支持されている中継軸
４２を介して回転ドラム３１側に伝達しているが、例え
ば前記中継軸４２を回転ドラム３１側に固定されたキャ
リアに支持し、また、中継ピニオン４４を支持軸３３に
設けた固定太陽歯車に噛み合わせて、中継平歯車４３が
回転軸３９の回りを遊星運動を行うようにした遊星歯車
機構によって減速駆動するようにしてもよい。

【００２２】前述した各実施例においては、軸受一体型
一方向クラッチによってモータの回転軸を支持する構造
の動力伝動装置を例示したが、モータの回転軸以外の動
力伝動装置中の回転軸を軸受一体型一方向クラッチで支
持する構造としてもよい。その際、減速機構の入力側の
回転軸を前記軸受一体型一方向クラッチによって支持す
ることによって、小型の軸受一体型一方向クラッチで減
速機構の出力軸側に負荷される大きな逆転方向のトルク
を支えることができ、動力伝動装置全体をよりコンパク
トに構成することができる。

【００２３】また、前記各実施例においては、回転軸を
軸受一体型一方向クラッチによって支持する例を示した
が、逆に、固定されている軸に前記軸受一体型一方向ク
ラッチの内輪を嵌合固定し、外輪を歯車、プーリ、コン
ベヤローラ等の回転体に嵌合固定して、これらの回転体
を支持するように構成することもでき、回転体内の狭い
幅の中に軸受と一方向クラッチの両方の機能をコンパク
トに収容することができる。

【００２４】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の軸受一体
型一方向クラッチを内蔵した動力伝動装置によれば、軸
受と一体になった一方向クラッチを回転軸または回転体
を支持する軸受として用いているため、従来のように軸
受とは独立した部品として構成されている一方向クラッ
チを動力伝動装置に組み込む場合と比較して、一方向ク
ラッチの組込スペースが不要となり、動力伝動装置全体
を小型化することができるとともに、取付や調整の作業
が容易となる。

【００２５】また、従来のトルクアームを用いている一
方向クラッチを取り付けた動力伝動装置のように、機枠
側にトルクアームを支持するための加工を行う必要がな
く、独立した一方向クラッチを用いる場合と比較して動
力伝動装置の製造コストを下げることができる。

【００２６】特に軸受一体型一方向クラッチをモータの
回転軸を支持する軸受として用いて動力伝動装置が構成
されている場合には、独立した一方向クラッチを内蔵し
ている場合と比較して、モータの軸方向長さを短くでき
る。しかも、減速機の入力軸に前記モータの回転軸を連
結して使用することによって、減速機の出力軸側に大き
な逆転方向トルクが作用しても、回転軸に作用する逆転
方向のトルクは小さくなるため、モータに組み込む軸受
一体型一方向クラッチに小型のものを使用することが可
能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の動力伝動装置に用いられる軸受一体
型一方向クラッチの側面図である。

【図２】 図１のＡ−Ａ断面を示す断面図である。

【図３】 本発明の軸受一体型一方向クラッチを内蔵し
た動力伝動装置の第１実施例を示す部分断面図である。

【図４】 本発明の軸受一体型一方向クラッチを内蔵し
た動力伝動装置の第２実施例を示す一部切欠断面図であ
る。

【図５】 本発明の軸受一体型一方向クラッチを内蔵し
た動力伝動装置の第３実施例を示す部分断面図である。

【図６】 従来の一方向クラッチを用いた動力伝動装置
の一例を示す一部切欠断面図である。

【図７】 従来の一方向クラッチを用いた動力伝動装置
の別の例を示す部分断面図である。

【図８】 従来の一方向クラッチを用いた動力伝動装置
のさらに別の例を示す部分断面図である。

【符号の説明】

１ 軸受け一体型一方向クラッチ ２ 内輪 ３ 外輪 ９，２０，３５ モータ（動力伝動装置） １５，２３，３９ 回転軸 ３０ モータプーリ（動力伝動装置）

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 内輪と外輪との間に複数の転動体と複数
   のカムとが幅方向に並列して組み込まれている軸受一体
   型一方向クラッチを回転軸または回転体を支持する軸受
   として用いたことを特徴とする軸受一体型一方向クラッ
   チを内蔵した動力伝動装置。
2. 【請求項２】 前記動力伝動装置がモータであり、前記
   軸受一体型一方向クラッチをモータの回転軸を支持する
   軸受として用いたことを特徴とする請求項１記載の軸受
   一体型一方向クラッチを内蔵した動力伝動装置。