JP3963592B2 - 棒材のずれ防止構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、棒材の外周にずれ止め部材をフランジ状に組み付けて固定部材と干渉させるようにすることで該棒材の軸線方向への移動を規制するための棒材のずれ防止構造に関し、特に車両用懸架装置のスタビライザに用いるのに適した棒材のずれ防止構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、車両に用いられる所謂アンチロールバーのようなスタビライザにあっては、両端が湾曲してU字状をなす棒材(スタビライザ)の中央部分の両湾曲部寄りを車体に支持し、湾曲部の先端を懸架アームに保持するものがある。上記車体への支持は、スタビライザに巻装したゴムブシュをU字状をなすステイで包み込み、このステイをボルト等で車体に固定するのが一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、車両走行中に於て車両の横方向、即ちスタビライザの中央部分に於ける軸線方向の力が該スタビライザに入力されると、その大きさによってはゴムブシュ及びステイでは抑えることができず、ゴムブシュの変形量が大きくなって他部品と干渉して異音を発生したり、スタビライザの両湾曲部先端のリンクに損傷を与えることが懸念されるのみでなく、スタビライザ自体の耐久性や信頼性あるいは乗り心地にも影響する。
【0004】
そこで、例えばスタビライザの上記ゴムブシュに隣接する位置に、金属ワッシャを環装してかしめ、ゴムブシュの軸線方向への変形を抑制するスタビライザの横ずれ防止構造が提案されているが、スタビライザ端部からワッシャを挿入する必要があり、組み付け作業性が悪いと共にかしめ部の表面には塗装が付かないことから耐食性に問題がある。
【0005】
また、金属ワッシャに代えて両端にフランジを有する別のゴムブシュを装着し、この別のゴムブシュにクリップバンドを嵌装して締め付け、固定し、ゴムブシュの軸線方向への変形を抑制するものも提案されているが、上記別のゴムブシュやクリップバンドを手作業で組み付けなければならず、組み付け作業性が悪いばかりでなく、横方向の荷重を受けたとき、横ずれに耐え得る少なくとも2キロニュートン(KN)の強度が必ずしも得られず、上記別のゴムブシュも変形し、ずれが発生してストッパとして機能が得難いという問題があった。
【0006】
更に、実開平4−133907号公報には、その端部同士を互いに結合させた状態でスタビライザの外周に圧接する環状をなすような2つの半環状部を有し、スタビライザの外周に環溝を形成し、この溝に入り込むように半環状部を合わせ、これをゴムブシュにて覆ったものが開示されている。
【0007】
この構造によれば、ゴムブシュの横ずれは防止できるもののスタビライザの外周に環溝を形成することで、該環溝部分に応力が集中し、スタビライザの捻り強度が低下するばかりでなく、トーションバーとしての作用が損なわれることが考えられる。云うまでもなくスタビライザを太くしても必ずしも所望のばね作用が得られるものではなく、逆に重量化・大型化することが懸念される。
【0008】
尚、上記した問題はスタビライザに限らず、軸線方向へのずれを防止することが望まれる棒材の支持構造に云えるものである。
【0009】
本発明は上記した従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、簡単な構造にて棒材の横ずれを確実に防止でき、自動組立も容易であり、しかも十分な耐久性、強度を有する棒材のずれ防止構造を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記した目的は、本発明によれば、棒材の外周に、その端部同士を互いに結合させた状態で圧接するずれ止め部材をフランジ状に組み付けて固定部材と干渉させるようにすることで該棒材の軸線方向への移動を規制するための棒材のずれ防止構造であって、前記棒材(スタビライザ1)の外周面及び/または前記ずれ止め部材20の内周面の略全面に亘り多数の滑り止め用凹凸12が形成され、前記ずれ止め部材が、前記棒材を囲繞せずに前記端部同士を互いに結合させると、その内周輪郭の形状が楕円、台形及び多角形のうちから選択される形状をなし、かつその円周方向中間部に径方向外向きに突出するU字状の遊び部20aが形成されており、前記棒材を囲繞して前記端部同士を互いに結合させて曲げ変形させると、その内周面が前記棒材の外周面に圧接するようになっていることを特徴とする棒材のずれ防止構造を提供することにより達成される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好適な一実施形態を添付の図を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明の適用対象の一例である自動車のスタビライザの構造を示す斜視図である。両端が湾曲してU字状をなすスタビライザ1の中央部分の両湾曲部寄りには、ゴムブシュ2、3が設けられ、このゴムブシュ2、3がU字状をなすステイ4、5により図示されない車体下部に支持されている。また、湾曲部の先端は懸架アーム7、8にゴムブシュ等を介して保持されている。また、スタビライザ1のゴムブシュ2、3に隣接する位置には、アルミニウム材からなり、フランジ状をなすずれ止め部材10、11が環着している。
【0013】
図1の要部を拡大して見た図2に示すように、ずれ止め部材10は、2つの半環状部材10a、10bを結合してなる。半環状部材10a、10bの対応する両端部には互いに嵌合する係合部13aと対応係合部13bとが形成されている。これら係合部13aは頭部と首部とを有し、対応係合部13bの凹部にこの頭部を嵌め込むことにより互いに係合して環状のずれ止め部材10をなし、この状態を維持するようになる。
【0014】
2つの半環状部材10a、10bは単に結合した状態ではスタビライザ1よりも小径であるが、図3(a)の状態から半環状部材10a、10bをスタビライザ1を挟むように整合させ、図3(b)の状態とし、更に外周から加圧する(かしめる)ことにより塑性変形させ、かつスタビライザ1の外周面に各半環状部材10a、10bの内周面を圧接させ、係合部13aと対応係合部13bとを嵌合させ、図2の状態に結合させる。
【0015】
ここで、図4に併せて示すように、各半環状部材10a、10bの内周面、即ちずれ止め部材10の内周面には、多数のV溝を形成することにより、滑り止め用凹凸12が予めその全面に亘り形成されている。この滑り止め用凹凸12が、スタビライザ1の外周面に圧接されることにより食い込み、両者が強固に固定される。尚、ずれ止め部材11の構造はについてはずれ止め部材10と同様であるのでその詳細な説明を省略する。
【0016】
これらずれ止め部材10、11により、スタビライザ1に横方向、即ちスタビライザ1の中央部の軸線方向への力が加わったとき、ゴムブシュ2やステイ3がこのずれ止め部材10、11に当接して横ずれが防止される。
【0017】
上記構成では滑り止め用凹凸12をずれ止め部材11の内周面に形成したが、スタビライザ1、即ち棒材の外周面に形成したり、ずれ止め部材の内周面及び棒材の外周面の両方に形成しても良い。
【0018】
図5は、本発明による棒材のずれ防止構造の一例を示すずれ止め部材20の側面図である。この構造では、組み付け前のずれ止め部材20は1部品からなり、略C字状をなしている。その中間部には、U字状の遊び部20aが形成されている。また、互いに対応する端部には上記同様な係合部と対応係合部とが形成されている。従って、ずれ止め部材20を1種類の板金加工により容易に得られるのみでなく、部品の管理も容易になる。
【0019】
このずれ止め部材20をスタビライザ1に環装し、上記同様に外周から加圧する(かしめる)ことにより、U字状の遊び部20aが伸び、係合部と対応係合部とが嵌合し、スタビライザ1にずれ止め部材20が固定される。それ以外の構造は、上記構成と同様であり、ずれ止め部材20の内周面の凹凸がスタビライザ1の外周面に食い込み、両者が強固に固定される点も同様である。
【0020】
尚、上記各実施形態では、棒材として自動車のスタビライザを挙げたがこれに限定されるものではなく、軸線方向へのずれを防止することが望まれる棒材の支持構造全てに適用可能であることは云うまでもない。例えば、棒材としては中実、中空の何れでも良く、その材料も鉄、非鉄金属、プラスチック等どのようなものでも良い。
【0021】
上記図2、3に示した形態では、組み付け前のずれ止め部材の端面形状が円形をなすものについて述べたが、本発明においては、棒材を囲繞せずに端部同士を互いに結合させると、その端面形状(内周輪郭)が楕円、台形及び多角形のうちから選択される形状をなすものとした。その際、上記図2、3に示した円形ものでは加圧する(かしめる)ことにより塑性変形させ、即ち材料の伸びにより、スタビライザの外周面にずれ止め部材の内周面を圧接させ、係合部と対応係合部とを嵌合させたが、材料の伸びに期待した変形は高い加圧力を必要とする。そこで本発明は、組み付け前のずれ止め部材の形状を楕円、台形、多角形などとし、その全長とスタビライザの外周長とを略一致させ、曲げ変形と凹凸がスタビライザの外周面及びずれ止め部材の内周面に食い込む変形とでスタビライザの外周面にずれ止め部材の内周面を圧接させ、係合部と対応係合部とを嵌合させるものとした。これにより、加圧力を低くすることが可能となる。
【0022】
更に、上記各実施形態では、ずれ止め部材の材料としてアルミニウム材を例に挙げたが、軟鋼等の所要のずれ荷重の得られる他の材料を用いても良い。例えば、軟鋼製のずれ止め部材を鉄製の棒材に取り付ける場合、ずれ止め部材に、鉄よりイオン化傾向の大きい亜鉛塗装をすることにより棒材の錆の発生を抑制することができる。
【0023】
【実施例】
スタビライザφ22の横ずれ防止構造として、JIS5052P−H34(プリネル硬さ(10/500):68、引張強さ260(N/mm2))のアルミニウム材からなる一対の半環状部材を結合するずれ止め部材を用いた。板厚3mm、幅12.5mmの板材を、中型寸法φ23の中型をもってU字曲げして半環状部材とした後、その内面に断続V溝押しツノ出しをプレス荷重8TONで行い、滑り止め用凹凸を形成した。そして、寸法φ27.2のかしめ型を用い、かしめ荷重15TONで塑性変形させてスタビライザバーに環装し、ずれ止め部材を形成した。
【0024】
上記のように形成したずれ止め部材は環装する位置により所要のずれ荷重よりも大きな2.5KN〜5KNのずれ荷重が得られた。
【0025】
尚、板厚、板幅、組み付け前の各半環状部材の寸法、滑り止め用凹凸等は横ずれ圧力、仕様を考慮して変えることができる。例えば滑り止め用凹凸は、アヤ目モジュール0.5のローレット目:JISB0951などとしても良い。
【0026】
本実施例ではずれ止め部材としてJIS5052P−H34のアルミニウム材を用いたが、それよりも硬い材料であれば良い。ただし、あまり硬い材料の場合、加工が困難になる。
【0027】
【発明の効果】
以上の説明により明らかなように、本発明の棒材のずれ防止構造によれば、棒材を囲繞するように端部同士を互いに結合させて棒材の外周に圧接させることにより環状のずれ止め部材とし、かつ棒材の外周面及び/またはずれ止め部材の内周面に滑り止め用凹凸を形成するという簡単な構造をもって、ずれ止め部材が強固に棒材に固定され、棒材の軸線方向へのずれを確実に防止でき、また充分な耐久性及び強度を得ることができ、しかも自動組立が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明が適用された自動車のスタビライザの構造を示す斜視図。
【図2】 図1の要部を拡大して見た図。
【図3】 (a)及び(b)はずれ止め部材の組み付け手順を説明する図。
【図4】 ずれ止め部材の内周面の形状を示す斜視図。
【図5】 本発明の棒材のずれ防止構造の一例を示すずれ止め部材の側面図。
Claims (2)
- 棒材の外周に、その端部同士を互いに結合させた状態で圧接するずれ止め部材をフランジ状に組み付けて固定部材と干渉させるようにすることで該棒材の軸線方向への移動を規制するための棒材のずれ防止構造であって、
前記棒材の外周面及び/または前記ずれ止め部材の内周面の略全面に亘り多数の滑り止め用凹凸が形成され、
前記ずれ止め部材が、前記棒材を囲繞せずに前記端部同士を互いに結合させると、その内周輪郭が楕円、台形及び多角形のうちから選択される形状をなし、かつその円周方向中間部に径方向外向きに突出するU字状の遊び部が形成されており、
前記棒材を囲繞して前記端部同士を互いに結合させて曲げ変形させると、その内周面が前記棒材の外周面に圧接するようになっていることを特徴とする棒材のずれ防止構造。 - 前記棒材が車両用懸架装置のスタビライザであることを特徴とする請求項1に記載の棒材のずれ防止構造。
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