JP3963327B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents

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Description

本発明は、高密度磁気記録に適した塗布型の磁気記録媒体に関する。
磁気記録媒体の一つである磁気テープは、オーディオテープ、ビデオテープ、コンピュータ用テープなど種々の用途があるが、特にデータバックアップ用磁気テープ(バックアップテープ)の分野では、バックアップ対象となるハードディスクの大容量化に伴い、1巻当たり数100GB以上の記録容量を有するものが商品化されており、今後もハードディスクのさらなる大容量化に対応するため、その高容量化・高記録密度化は不可欠である。
このような磁気記録媒体の高記録密度化を実現するためには、記録波長を短くするとともに、トラック幅を小さくする必要がある。この両者が相まって高記録密度化が実現できるのであるが、バックアップテープのようなデジタル記録再生方式の磁気テープにおいて記録波長の短波長化すなわち短波長記録を実現するためには、記録した信号が1ビットずつ分離して再生されるよう、記録媒体の再生分解能を上げなければならない。一般にデジタル磁気記録再生方式では媒体に記録された磁化が反転する点で再生出力が得られるわけであるが、この反転領域は再生方向に対して有限の幅を持つので、再生波形は鈍ったものになる。ビット間隔が広い長波長記録では、ある程度再生波形の幅が大きくても再生に殆ど影響しないが、短波長記録になるに従って隣り合う再生波形同士が干渉しだし、再生出力が小さくなる。最後にはビットの分離ができなくなり、記録再生不可能の状態に陥る。
一方、媒体に記録される波長は一定になるとは限らず、ビット間隔が短いときもあれば広いときもある。この場合、前述した理由によりビット間隔が広いときは再生出力が大きいが、ビット間隔が狭くなると隣り合う再生波形同士の干渉が生じて再生出力が小さくなる。一般に電気回路で1ビットのデジタル信号を再現する場合、記録波長にかかわらず出力が同じである必要があることから、前述のように再生出力が記録波長に依存する場合には再生波形を電気回路的に等化し(イコライゼーション)、その後ビット読み出しを行っている。このとき、一般的には長波長側の出力を抑制し、短波長側の出力を増幅するのであるが、短波長側の出力の増幅によりノイズ出力も高くなってしまう。このため再生のSN比(SNR)が低下し、ビット誤り率(エラーレート)が悪化する。
SNRを低下させずに再生波形を等化する技術として、もともとの記録時に等化を行うライトイコライゼーションという方法がある(例えば非特許文献1参照)。これは、前述の再生波形の干渉を逆に利用した方法で、次のようなものである。すなわち、ライト時には最短記録波長の1/10〜1/2程度の記録信号を媒体に書き込む。リード時にこの信号を再生すると波形干渉がおきて、再生信号の波形はもとの孤立波の出力ピーク位置からずれていく。しかし、記録パターンを適切に選ぶと、種々の長波長ビットのものに相当する再生波形が得られ、かつその出力を波長間でそろえることができる。ライトイコライゼーションは、このようにして再生波形を補正するもので、これにより再生のイコライゼーションを小さくしたり、あるいは全く不要化したりすることができる。この方法によると、電気回路的な等化の寄与が小さいので、SNRを良好なまま保つことができ、短波長記録再生において低いエラーレートを実現することができる。
これらの技術に加えて、再生波形の干渉を前提とした読み出し方法として、パーシャルレスポンス法(PR法)がある。前述の通常の再生方法(ピークディテクト法)では、ビット位置で再生波形が有るか無いかを判断し、それぞれをデジタルの「1」、「0」に対応させている。PR法では、まず各ビット時刻における再生出力を読み込む。これは複数のビット再生波形が干渉して出現している再生波形であるので、ピークディテクト法のように再生波のピークが有る・無いといった単純なものではなく、複数の出力レベルが出現する。ここで波形干渉をした場合の出力値をシミューレートし、逆計算により元のビットが「1」であったか、「0」であったかを判定している。
このような記録再生方式に適合するためには、従来の磁気記録媒体における磁気特性では不十分な場合がある。従来の磁気記録媒体では、出力をなるべく大きくするために、磁性層の記録再生方向における角型比を大きくすることが行われてきたが、従来においては最適値とされていた角型比であっても短波長記録再生方法を用いる磁気記録記録媒体では最適値であるとは限らないため、上述したような短波長記録再生方法において記録再生分解能を上げようとした場合、新たに最適な角型比を求める必要がある。
このような点に関し、例えば特許文献1では、高域での出力特性の改善とエラーレートの低減を図るため、垂直方向の角型比(Sq⊥)と長手方向の角型比(Sq‖)との比(Sq⊥/Sq‖)を0.4以下に設定することが提案されている。しかし、長手方向の角型比が0.9を超えることが適しているとされている点などを併せ考えると、出力を上げる意味では適しているが、高分解能を必要とする記録再生系にとっては不十分である。
また、特許文献2では、長手方向の角型比を0.50〜0.80とし、厚み方向の角型比を0.20〜0.70とすることが提案されている。しかし、これも厚み方向の角型比が0.2より大きいことから、最適な再生分解能を得るには不十分である。加えて、従来のいわゆる無配向磁気記録媒体を用いた場合、やはり厚み方向の角型比が0.2を超えてしまい、この場合も十分な再生分解能を得るのは難しい。
IBM J. Res. Develop.VOL.29,NO.6,563−568(NOVEMBER 1995) 特開平11−161936号公報 特開平8−63737号公報
コンピュータ用テープ等の磁気記録媒体において短波長記録を実現するためには分解能低下の問題を避けて通ることはできず、この点を先のライトイコライゼーション技術等によってこれまでは解決してきた。しかし、今後さらなる短波長化を図ろうとした場合、ライトイコライゼーションは限界に来ている。ライトイコライゼーションでは短波長波形を干渉させて長波長信号を作り出しているのだが、最短記録波長が0.2μmを下回るようになると、その1/2の波長の記録信号を媒体に書き込んだ場合にどのようなパターンを持ってきても、逆に十分な出力の信号を得ることができなくなってしまう。金属薄膜型の磁気記録媒体に比べて分解能的に厳しい塗布型の磁気記録媒体においては、この状況は更に厳しいものがあり、本質的な改善を必要としている。
本発明は、このような課題に対処するもので、高密度記録に適した磁気記録媒体として、短波長記録再生に際して十分な分解能が得られる磁気記録媒体、すなわちライトイコライゼーションを使用することなく短波長記録を実現できる磁気記録媒体を提供することを目的とする。
磁気記録媒体において短波長記録を行うに当たり十分な分解能が得られるようにするためには、短波長出力を高く保ちつつ、長波長出力を小さく押さえる必要があるとの観点から、本発明者らは、上記の課題を解決する手段として、形状としてはほぼ等方的な微粒子磁性粉を用いて、記録再生方向及び媒体厚み方向の角型比を小さくすることが有効であるとの知見を得た。
このような知見に基づいて、本発明は、可撓性支持体上に少なくとも強磁性磁性粉と結合剤樹脂とを含む磁性層を有する磁気記録媒体において、前記強磁性磁性粉が実質的に球状で、その平均粒子径が2〜30nmであり、かつ当該磁気記録媒体における記録再生方向の角型比SRmが0.4〜0.7、媒体厚み方向の角型比SRtが0.01〜0.2である構成としたものである。
ここで、再生分解能の劣化防止、走行耐久性の確保等の観点から、磁性層の表面粗さ(中心線平均粗さ)Raは、原子間力顕微鏡(AFM)を用いた測定値で、0.2〜3.0nmとするのが好ましい(この点については後述する)。
本発明によれば、短波長記録再生において十分高いSNRを得ることができ、エラーレートの低い磁気記録媒体を実現することができる。言い換えれば、ライトイコライゼーションを使用することなく短波長記録が可能な磁気記録媒体を実現できる。
本発明の磁気記録媒体は、可撓性支持体上に少なくとも強磁性磁性粉と結合剤樹脂とを含む磁性層を有する。このような磁気記録媒体において、特に高密度記録を実現する上で好ましい構成として、可撓性支持体と前記磁性層(以下、上層磁性層ともいう)との間に非磁性の下塗層(以下、下層非磁性層ともいう)を設けることができる。また、本発明は、特に高い走行信頼性が必要な磁気記録媒体である磁気テープに好ましく適用されるものであるが、このような磁気テープにおいては、可撓性支持体の裏面、つまり可撓性支持体において非磁性層と上層磁性層(以下、これらの層をまとめて表層塗布層ともいう)とが設けられている面とは反対側の面に、走行信頼性の確保等を目的としてバックコート層を設けることができる。以下では、このような磁気テープを例にとり、本発明を実施するための最良の形態について詳しく説明する。
〈可撓性支持体〉
本発明に用いる可撓性支持体は、その長手方向のヤング率が5.9GPa(600kg/mm2 )以上で、且つ幅方向のヤング率が3.9GPa(400kg/mm2 )以上であることが好ましく、さらには長手方向のヤング率が9.9GPa(1000kg/mm2 )以上、且つ幅方向のヤング率が7.9GPa(800kg/mm2 )以上がより好ましい。可撓性支持体の長手方向のヤング率が5.9GPa(600kg/mm2 )以上がよいのは、これを下回るとテープ走行が不安定になるためである。可撓性支持体の幅方向のヤング率が3.9GPa(400kg/mm2 )以上がよいのは、これを下回るとテープのエッジダメージが発生しやすくなるためである。
このような特性を満足する可撓性支持体には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、二軸延伸の芳香族ポリアミドフィルム、芳香族ポリイミドフィルム等がある。可撓性支持体の厚さは、用途によって異なるが、通常1〜7μmのものが好ましい。より好ましくは2.5〜4.5μmである。可撓性支持体の厚さが1μm未満では製膜が難しく、またテープ強度が小さくなり、厚さが7μmを越えるとテープ全厚が厚くなり、テープ1巻当りの記録容量が小さくなるためである。可撓性支持体の磁性層形成面側の表面中心線平均粗さ(Ra)は2.5nm以上20nm以下がより好ましい。このRaが20nm以下であれば、下層非磁性層を薄くしても下層非磁性層表面及び磁性層表面の凹凸が小さくなるためである。ただし、このRaが2.5nmを下回ると、塗布工程におけるフィルム搬送が極端になり、製造歩留り低下などの問題を引き起こすので、上述のようにRaは2.5nm以上とするのが好ましい。
〈上層磁性層〉
上層磁性層に添加する磁性粉には、実質的に球状の強磁性磁性粉を使用する。このような磁性粉としては特に強磁性鉄系金属粉が好ましい。強磁性磁性粉の保磁力は、135kA/m〜360kA/m(1700〜4500Oe)が好ましく、175kA/m〜290kA/m(2200〜3600Oe)がより好ましい。飽和磁化量は、70〜200A・m2 /kg(70〜200emu/g)が好ましく、90〜180A・m2 /kg(90〜180emu/g)がより好ましい。なお、これらの磁気特性を示す値は、いずれも試料振動形磁束計を用いて外部磁場1.28MA/m(16kOe)の条件で測定したものである。
上記の実質的に球状の強磁性磁性粉(強磁性鉄系金属粉を含む)の平均径(磁性粉粒子の平均径)は、30nm以下が好ましく、2〜25nmがより好ましく、3〜20nmが更に好ましい。平均径が30nmより大きいと磁性粉粒子の大きさに基づく粒子ノイズが大きくなり、C/N特性を向上させることが困難になる。また、平均径が2nm未満では保磁力が低下し、同時に磁性粉の凝集力が増大するため塗料中への分散が困難になる。なお、上記の平均径は、以下のようにして実測した長軸長及び短軸長の平均値として求めたものである。すなわち、まず走査型電子顕微鏡(SEM)にて100000倍で撮影した粒子写真を画像処理し、磁性粉の粒子形状を2次元の図として描画した。次いで、着目する1つの磁性粉において、差し渡しの最も大きい長さをもって長軸長とし、さらにこの長軸長の中心点を通る磁性粉の差し渡しで、最も短いものを短軸長とした。この両者の平均値を着目した磁性粉の径とし、磁性粉100個あたりの径の平均値を平均径とした。各磁性粉は実質的に球状である「長軸長/短軸長」=1〜1.3が好ましく、完全に球状(「長軸長/短軸長」=1)が最も好ましい。
磁性粉の粒子形状が実質的に球状であるのが好ましいのは、以下の理由からである。本発明の磁気記録媒体を得るための製造工程においては、後述するように、磁性層を塗布した後、配向・乾燥機を用いて所定の角型比が得られるように磁性粉を回転させる。例えば長手方向の角型比SRmを0.7以下にするような場合、磁性粉の長軸長と短軸長が大きく異なると、磁性層厚み方向につきだしてしまったりして、磁性層表面の平滑性が悪くなる。このため磁気的スペーシングが大きくなり、記録再生特性を悪化させる。実質的に球状の磁性粉を用いると、たとえ磁場配向・乾燥工程によって磁性粉が回転しても表面平滑性を損なうことはなく、従ってより高い記録再生特性を得ることができる。
上記球状強磁性鉄系金属粉のBET比表面積は、35〜85m2 /gが好ましく、40〜80m2 /gがより好ましく、50〜70m2 /gが最も好ましい。
磁性層の厚みは5nm以上200nm以下が好ましく、10nm以上90nm以下がより好ましい。この範囲が好ましいのは、磁性層が1nm未満では、これからの漏れ磁界が小さいためにヘッド出力が小さくなり、200nmを越えると、厚み損失によりヘッド出力が小さくなるためである。
上層磁性層の磁気記録媒体としての保磁力は、記録再生方向で135kA/m〜360kA/m(1700〜4500Oe)、残留磁束密度はヘッド走行方向で0.25T(2500G)以上が好ましい。この範囲が好ましいのは、保磁力が135kA/m未満では、反磁界によって出力が減少し、360kA/mを越えるとヘッドによる書き込みが困難になるためである。残留磁束密度が0.25T(2500G)以上が好ましいのは、0.35T未満では出力が低下するためである。保磁力が175kA/m〜290kA/m(2200〜3600Oe)、残留磁束密度が0.3T〜0.5T(3000〜5000G)のものはより好ましい。
MRヘッドを再生ヘッドとして用いるシステムに供する場合、上層磁性層の長手方向の残留磁束密度と磁性層膜厚との積であるMrt値が72Tnm(6.0memu/cm2 )以下であることが好ましい。Mrtが72Tnm以下が好ましいのは、72Tnm以上ではほとんどのMRヘッドを飽和させてしまうからである。Mrtは2〜24Tnm(0.2〜2.00memu/cm2 )の範囲がより好ましい。
最短再生波長が0.2μm以下の高密度磁気記録システムに供する場合には、上層磁性層の再生方向の角型比SRmを0.4〜0.7の範囲に設定し、かつ媒体厚み方向の角型比SRtを0.01〜0.2の範囲に設定するのが有効である。SRmが0.7を超えると低域の出力が相対的に大きくなりすぎて、ビット分解能が実質的に低下してしまい、SRmが0.4を下回ると熱擾乱による記録減磁が起こりやすくなる。これまでSRmは0.7を上回る程度大きい方が磁気記録媒体に適応していると考えられてきた。しかし再生波の最短記録波長が0.2μm以下という極端に高密度化される状況においては、長波長から短波長にかけて再生波の出力が相対的に等しい方が、特にライトイコライゼーションを用いない場合には有利であることが分かり、このためにはSRmが0.7以下であることが有効である。一方、SRtが0.2を上回るとヘッド対向方向の磁界強度が過度に増幅され、いわゆる垂直記録成分が発生してビット再生波形が長手記録のものと異なってくる。波形が異なると再生回路による等化がうまく出来ないようになり、エラーレートの増加をまねく。なお、現状ではSRtが0.01を下回る磁気記録媒体を実現するのは技術的に困難であり、実現できたとしてもコストが高くつくと思われる。上記のSRmは0.4〜0.6の範囲がより好ましく、SRtは0.01〜0.1の範囲がより好ましい。
上層磁性層の中心線平均粗さRaは0.2〜3.0nmの範囲にあるのが好ましく、0.3〜2.0nmの範囲にあることがより好ましい。Raが3.0nm以下が好ましいのは、3.0nmを超えると出力の短波長成分が急激に低下し、再生分解能が劣化するからである。またRaが0.2nmを下回るとヘッドや走行ガイドとの摩擦が上昇し、耐久性が劣化すること、またこの範囲のRaを得るには製造が困難で、工程コストが掛かりすぎるためである。なおこの表面平滑性は原子間力顕微鏡(AFM)を用いて5μm×5μmの視野を512×512ピクセルで測定、各点の平均線からの絶対値の算術平均したときの値である。
上記のような角型比の組み合わせと表面平滑性を有する磁気記録媒体を得るためには、後述する表層塗布工程とカレンダー工程との間に、磁場配向工程、溶剤乾燥工程を設けて、これらを適宜組み合わせて製造する。このうち磁場配向工程では主として図1に例示するような永久磁石を用いる。図1のギャップ間隔d、ブロック間隔mと端部の曲率Rを適宜変更することにより、磁場方向と強度を変更することができる。このように記録再生方向と異なる方向に配向させる場合、使用している磁性粉粒子が例えば針状粒子のような形状異方性を有する粒子であると平滑な表面を得ることができない。ところが、本発明におけるように実質的に球状である磁性粉を用いれば、適切な配向性と良好な表面平滑性を両立させることができる。
溶剤乾燥工程では、ロールバックアップ式の乾燥路を使用するのが好適である。乾燥ゾーンは2つ以上設けて、各ゾーンにおいて風量と温度を適宜調整することにより、適切な配向と表面性を得ることができる。
〈下層非磁性層(下塗層)〉
下層非磁性層には、強度を高める目的で非磁性の無機質粉体を含有させる。この無機質粉体は、金属酸化物、アルカリ土類金属塩等であることが好ましい。更に下層非磁性層に添加する無機質粉体としては、酸化鉄が好ましく、その粒径は50〜400nmが好ましく、添加量は当該下層非磁性装置中の全無機質粉体の重量を基準にして35〜83重量%が好ましい。前記の粒径が好ましいのは、粒径50nm未満では均一分散が難しく、400nmを越えると下層非磁性層とその直上の層との界面の凹凸が増加するためである。また、前記の添加量が好ましいのは、35重量%未満では塗膜強度向上効果が小さく、83重量%を越えると反って塗膜強度が低下するためである。
下層非磁性層にはアルミナを添加することが好ましい。アルミナの添加量は、全非磁性粉体の重量を基準にして2〜30重量%が好ましく、8〜20重量%がさらに好ましく、11〜20重量%が一層好ましい。添加するアルミナの粒径は100nm以下が好ましく、10〜100nmがより好ましく、30〜90nmがさらに好ましく、50〜90nmが一層好ましい。下層非磁性層のアルミナはコランダム相を主体とするアルミナが特に好ましい。上記範囲のアルミナ添加量が好ましいのは、2重量%未満では塗料流動性が不充分となり、30重量%を越えると下層非磁性層とその直上の層との凹凸が大きくなるためである。また、100nm以下のアルミナが良いのは、磁性層形成面の表面粗さが2.5nm以上の平滑度が低い可撓性支持体を使用し、下層非磁性層が1.5μm以下と薄い場合に、アルミナの粒径が100nmを越えると、下層非磁性層表面の平滑効果が不充分になるためである。コランダム相を主体とするアルミナ(α化率:30%以上)が特に良いのは、σ、θやγ−アルミナ等を使用した場合に比べて少量で下層非磁性層のヤング率が高くなり、テープ強度が増すためである。加えてテープ強度も高くなることで、テープエッジの波打ち(エッジウィーブ)による出力のばらつきも改善される。
なお、上記粒径のアルミナと共に、全無機質粉体の重量を基準にして3重量%未満の100〜800nmのα−アルミナを添加することを排除するものではない。
下層非磁性層には、導電性向上を目的にカーボンブラック(CB)を添加する。添加するCBとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等を使用できる。粒径が5nm〜200nmのものを使用できるが、粒径10〜100nmのものが好ましい。この範囲が好ましいのは、CBがストラクチャーを持っているため、粒径が10nm以下になるとCBの分散が難しく、100nm以上では平滑性が悪くなるおそれがあるからである。CB添加量は、CBの粒径によって異なるが、全非磁性粉体に対して15〜40重量%が好ましい。この添加量が15重量%未満では導電性向上効果が乏しく、40重量%を越えると効果が飽和するためである。粒径15nm〜80nmのCBを15〜35重量%使用するのがより好ましく、粒径20nm〜50nmのCBを20〜30重量%用いるのがさらに好ましい。このような粒径・量のCBを添加することにより電気抵抗が低減され、静電ノイズの発生やテープ走行むらが小さくなる。
下層非磁性層の厚みは、通常0.5〜3μmのものが使用される。より好ましくは1〜2μmである。この範囲の厚さの下層非磁性層が使用されるのは、0.5μm未満では塗布が難しく、生産性が悪いためであり、3μmを越えるとテープ全厚が厚くなり、テープ1巻当りの記憶容量が小さくなるためである。また、可撓性支持体と下層非磁性層との間に密着性向上のために、公知の下塗り層を設けてもかまわない。この厚みは0.01〜2μm、好ましくは0.05〜0.5μmである。
下層非磁性層のヤング率は、上層磁性層のヤング率の80〜99%が好ましい。下層非磁性層のヤング率が磁性層のそれより低い方がよいのは、下層非磁性層が、カレンダー処理時に一種のクッションの作用をするためである。
下層非磁性層と上層磁性層とからなる表層塗布層のヤング率は、可撓性支持体の長手方向と幅方向のヤング率の平均値の40〜100%であることが好ましい。この範囲に塗布層のヤング率がすると、テープの耐久性が大きく、且つテープ−ヘッド間のタッチがよくなる。50〜100%の範囲がより好ましく、60〜90%の範囲がさらに好ましい。この範囲が好ましいのは40%未満では塗布膜の耐久性が小さくなり、100%を越えるとテープ−ヘッド間のタッチが悪くなるためである。なお、本発明では下層非磁性層と上層磁性層からなる塗布層のヤング率を制御する方法の一つとしてカレンダー条件による制御法を用いた。
〈研磨材〉
上層磁性層には、ヘッドクリーニング等の目的で研磨材を添加する。添加する研磨材としては、平均粒径(数平均粒径)が5〜150nm、粒度分布が標準偏差で10nm以下であり、主としてモース硬度6以上のα−アルミナ、β−アルミナを単独でまたは組み合わせて使用するのが好ましい。これらの中でもコランダム型のアルミナ(α化率:30%以上)が特に良い。これは、σ、θやγ−アルミナ等を使用した場合に比べて高硬度で、少量の添加量でヘッドクリーニング効果に優れるためである。さらにCVD法で作成した単結晶アルミナは粒度分布が狭く、かつ焼結がないので特に好ましい。アルミナ研磨材の粒径としては、磁性層厚さにもよるが、通常平均粒径で20〜100nmとすることがより好ましく、粒径30〜90nmがさらに好ましい。添加量は強磁性鉄系金属粉100重量部に対して5〜20重量部が好ましい。より好ましくは8〜18重量部である。
ここで平均粒径が150nm以下のアルミナがよいのは、平均粒径150nmを超えるアルミナが磁性層に存在するとヘッド摩耗性が上がるためである。また平均粒径5nm以上のアルミナがよいのは、磁性層に存在するアルミナの粒径が5nm未満になると、耐久性・クリーニング性が悪くなるからである。更に粒度分布が標準偏差で10nm以下がよいのは、10nmより広い分布のアルミナを使用した場合、磁性層の大粒径アルミナが存在する部分的ではヘッド摩耗が高くなり、小粒径アルミナが存在する部分では耐久性・クリーニング性が劣化するおそれがある。このように部分的な劣化が発生すると、特性にバラツキが生じ、最終的には十分な性能を出すことが出来なくなってしまう。
アルミナ添加量が5重量部以上が好ましいのは、これを下回ると磁性層の塗膜強度が落ちて耐久性が劣化するおそれがあるためである。加えて、塗膜によるヘッドのクリーニング性も極端に悪くなるので、ヘッドに付着した汚れをかき落とせなくなるおそれがある。また20重量部以下がよいのは、20重量部を超えてしまうとC/N特性が下がるためである。
〈カーボンブラック〉
上層磁性層には導電性向上と表面潤滑性向上を目的に従来公知のカーボンブラック(CB)を添加することができる。添加するCBとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等を使用できる。粒径が5〜200nmのものが使用されるが、粒径10〜100nmのものが好ましい。この粒径が10nm以下になるとCBの分散が難しくなる一方、100nm以上では多量のCBを添加することが必要になり、何れの場合も表面が粗くなり、出力低下の原因になる。添加量は強磁性鉄系金属粉100重量部に対して0.2〜5重量部が好ましい。より好ましくは0.5〜4重量部である。
〈潤滑剤〉
下層非磁性層と上層磁性層には、役割の異なる潤滑剤を添加することができる。下層非磁性層に、全無機質粉体に対して0.5〜4.0重量%の高級脂肪酸を含有させ、0.2〜3.0重量%の高級脂肪酸のエステルを含有させると、テープと回転シリンダまたはヘッドアイランドとの摩擦係数が小さくなるので好ましい。上記範囲の高級脂肪酸添加が好ましいのは、0.5重量%未満では、摩擦係数低減効果が小さく、4.0重量%を越えると下塗層が可塑化してしまい強靭性が失われるおそれがあるからである。また、上記範囲の高級脂肪酸のエステル添加が好ましいのは、0.5重量%未満では、摩擦係数低減効果が小さく、3.0重量%を越えると磁性層への移入量が多すぎるため、テープと回転シリンダまたはヘッドアイランドが貼り付く等の副作用が生じるおそれがあるためである。
上層磁性層には強磁性鉄系金属粉に対して0.5〜3.0重量%の脂肪酸アミドを含有させ、0.2〜3.0重量%の高級脂肪酸のエステルを含有させると、テープと回転シリンダとの摩擦係数が小さくなるので好ましい。脂肪酸アミドの添加量が0.2重量%未満では、ヘッド/磁性層界面での直接接触が起りやすく焼付き防止効果が小さく、3.0重量%を越えるとブリードアウトしてしまいドロップアウトなどの欠陥が発生しやすくなる。脂肪酸アミドとしてはパルミチン酸、ステアリン酸等のアミドが使用可能である。また、上記高級脂肪酸のエステル添加量が0.2重量%未満では摩擦係数低減効果が小さく、3.0重量%を越えるとテープと回転シリンダが貼り付く等の副作用が生じるおそれがある。なお、磁性層の潤滑剤と下層非磁性層の潤滑剤の相互移動を排除するものではない。
〈結合剤〉
下層非磁性層および上層磁性層に用いる結合剤としては、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合体樹脂、ニトロセルロースなどの中から選ばれる少なくとも1種と、ポリウレタン樹脂との組み合わせを挙げることができる。中でも、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合体樹脂とポリウレタン樹脂とを併用するのが好ましい。ポリウレタン樹脂には、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタンなどがある。これらの結合剤は、磁性層では強磁性鉄系金属粉、下層非磁性層では全非磁性粉体100重量部に対して、7〜50重量部、好ましくは10〜35重量部の範囲で用いられる。特に、結合剤として、塩化ビニル系樹脂5〜30重量部と、ポリウレタン樹脂2〜20重量部とを、複合して用いるのが最も好ましい。
官能基として−COOH、−SO3 M、−OSO3 M、−P=O(OM)3 、−O−P=O(OM)2 [これらの式中、Mは水素原子、アルカリ金属塩基又はアミン塩を示す]、−OH、−NR1R2、−N+ R3R4R5[これらの式中、R1、R2、R3、R4、R5は水素または炭化水素基を示す]、エポキシ基を有する高分子からなる塩化ビニル系樹脂やウレタン樹脂等の結合剤樹脂が使用される。このような結合剤樹脂を使用するのは、上述のように磁性粉末などの分散性が向上するためである。2種以上の樹脂を併用する場合には、官能基の極性を一致させるのが好ましく、中でも−SO3 M基同士の組み合わせが好ましい。
〈架橋剤〉
上述の結合剤とともに、結合剤中に含まれる官能基などと結合させて架橋する熱硬化性の架橋剤を併用するのが望ましい。この架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどや、これらのイソシアネート類とトリメチロールプロパンなどの水酸基を複数個有するものとの反応生成物、上記イソシアネート類の縮合生成物などの各種のポリイソシアネートが好ましい。これらの架橋剤は、結合剤100重量部に対して、通常10〜50重量部の割合で用いられる。より好ましくは15〜35重量部である。
〈溶媒〉
上層磁性層形成用の塗料(磁性塗料)や下層非磁性層形成用の塗料、さらには後述するバックコート層形成用の塗料で使用する有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサンなどのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等を挙げることができる。これらは、単独で又は任意の比率で混合して使用できる。
〈バックコート層〉
可撓性支持体の裏面には、走行性向上のためバックコート層を設けるのが好ましい。バックコート層の厚さは、0.2〜0.8μmが好ましい。この範囲が良いのは、0.2μm未満では、走行性向上効果が不充分で、0.8μmを越えるとテープ全厚が厚くなり、1巻当たりの記憶容量が小さくなるためである。バックコート層の塗布形成は、従来公知のグラビア塗布装置、ロール塗布装置、ブレード塗布装置、ダイ塗布装置などを使用して行うことができる。
バックコート層には、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック(CB)を添加することができる。通常、小粒径カーボンブラックと大粒径カーボンブラックを使用する。小粒径カーボンブラックには、粒径が5〜200nmのものが使用されるが、粒径10nm〜100nmのものがより好ましい。この範囲がより好ましいのは、粒径が10nm以下になるとCBの分散が難しく、粒径が100nm以上では多量のCBを添加することが必要になり、何れの場合も表面が粗くなり、磁性層への裏移り(エンボス)原因になるためである。大粒径カーボンブラックとして、小粒径カーボンブラックの5〜15重量%、粒径300〜400nmの大粒径カーボンブラックを使用すると、表面も粗くならず、走行性向上効果も大きくなる。小粒径カーボンブラックと大粒径カーボンブラック合計の添加量は無機粉体重量を基準にして60〜98重量%が好ましく、70〜95重量%がより好ましい。表面粗さRaは3〜8nmが好ましく、4〜7nmがより好ましい。
バックコート層には、強度向上を目的に酸化鉄を添加するのが好ましい。添加する酸化鉄の粒径は100nm〜600nmが好ましく、200nm〜500nmがより好ましい。添加量は無機粉体重量を基準にして2〜40重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましい。
〈製造方法〉
磁性塗料の主な製造方法としては、次に示すような方法が挙げられる。すなわち、先ずニーダー、二軸連続式混練装置(エクストルーダ)等のごとき強力な混練機を用いて、磁性粉と少量の結合剤樹脂とを混練し、更に溶剤を加えて固形分濃度35〜45%(重量基準、以下同じ)にて攪拌してペースト状のミルベースを得る。上記混練工程において使用される二軸連続式混練機は、その混練部(バレル)に加熱・冷却可能な装置を装備し、該混練部の温度を、20〜50℃、好ましくは25〜35℃に制御することにより調整される。ここで、上記混練部の温度が20℃未満であると、混練物へのぬれ性アップが図れず、分散性向上もねらうことができず、また50℃を越えると、混練物の粘性が低下し、所望の剪断力を作用させることができなくなる。上記混練工程において混練する際の混練条件は、混練時間が2〜5分であるのが好ましく、混練物の供給速度が5〜15kg/hであるのが好ましい。次いで、サンドミル等により分散操作を行って、固形分の分散状態を向上させる。
上層磁性層の平均乾燥厚みを1nm〜100nmの任意の厚みで精度良く生産性良く塗布形成するには、上下層非磁性層が湿潤状態にある間にその直上に上層磁性層を重畳して塗布するウェット・オン・ウェット同時重層塗布方式を用いるのが好ましい。この場合、塗布液通液スリットを二つ内蔵する一つのダイ塗布ヘッドにより、下層非磁性層と上層磁性層をほぼ同時に塗布する。塗布の安定性をあげるために、下層非磁性層に用いる溶媒の表面張力が、上層磁性層に用いる溶媒の表面張力より高いことが好ましい。表面張力の高い溶媒としてはシクロヘキサノン、ジオキサンなどがある。
表層塗布層を塗布した後に、金属ロール同士でカレンダー処理することで、本発明の効果を引き上げることができる。また、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロールをカレンダーロールとして使用することもできる。処理温度は、好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上である。線圧力は好ましくは200×9.8N/cm、さらに好ましくは300×9.8N/cm以上、その速度は20m/分〜700m/分の範囲である。カレンダー処理を、80℃以上の温度、300×9.8N/cm以上の線圧で行うことで、本発明の効果を一層高めることができる。
バックコート層は、表層塗布層の塗布とカレンダー処理の前後又は間のいずれかの工程で塗布する。また表層塗布層およびバックコート層を塗布形成し且つカレンダー処理を施した後、表層塗布層およびバックコート層の硬化を促進するために、40℃〜80℃のエージング処理を施してもかまわない。
[実施例]
以下、本発明の実施例について説明する。なお、下記成分中の「部」は重量部を示す。
《磁性層用塗料成分》
(1)
・球状強磁性鉄系金属粉 100部
(N/Fe:12.5at%、Y/Fe:8at%、
Al/Fe:5wt%、σs:100A・m2/kg、
Hc:280kA/m、pH:9.5、平均粒径:15nm)
・塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体 10部
(含有−SO3 Na基:0.7×10-4当量/g)
・ポリエステルポリウレタン樹脂 4部
(含有−SO3 Na基:1.0×10-4当量/g)
・α−アルミナ 15部
(平均粒径:100nm)
・カーボンブラック 2部
(平均粒径:75nm、DBP吸油量:72cc/100g)
・メチルアシッドホスフェート 2部
・パルミチン酸アミド 1.5部
・ステアリン酸n−ブチル 1.0部
・テトラヒドロフラン 65部
・メチルエチルケトン 245部
・トルエン 85部
(2)
・ポリイソシアネート 4部
・シクロヘキサノン 167部
《下層非磁性層用塗料成分》
(1)
・酸化鉄粉体(平均粒径:0.11×0.02μm) 68部
・アルミナ(α化率:50%、平均粒径:70nm) 8部
・カーボンブラック(平均粒径:25nm) 24部
・ステアリン酸 2部
・塩化ビニル共重合体 10部
(含有−SO3 Na基:0.7×10-4当量/g)
・ポリエステルポリウレタン樹脂 4.5部
(Tg:40℃、含有−SO3 Na基:1.0×10-4当量/g)
・シクロヘキサノン 25部
・メチルエチルケトン 40部
・トルエン 10部
(2)
・ステアリン酸ブチル 1部
・シクロヘキサノン 70部
・メチルエチルケトン 50部
・トルエン 20部
(3)
・ポリイソシアネート 4.5部
・クロヘキサノン 10部
・メチルエチルケトン 15部
・トルエン 10部
上記の磁性層用塗料成分(1)をニーダーで混練したのち、サンドミルでビーズ径0.5mmのジルコニアビーズを用いて滞留時間を45分として分散し、これに磁性層用塗料成分(2)を加え攪拌・濾過後、磁性層用塗料とした。これとは別に、上記の下層非磁性層用塗料成分において(1)をニーダーで混練したのち、(2)を加えて攪拌の後サンドミルで滞留時間を60分として分散処理を行い、これに(3)を加え攪拌・濾過した後、下層非磁性層用塗料とした。上記の下層非磁性層用塗料を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ6μm、長手方向ヤング率MD=5.9GPa、幅方向ヤング率TD=3.9GPa、東レ社製)からなる可撓性支持体上に、乾燥、カレンダー後の厚さが1.1μmとなるように塗布し、この下層非磁性層が湿潤状態の間に、さらに磁場配向処理、乾燥、カレンダー処理後の磁性層の厚さが40nmとなるように、上記の磁性層用塗料と下層非磁性層を同時重層塗布し、磁場配向処理後、乾燥し、磁気シートを得た。
この場合において、磁場配向処理は、前記乾燥前に図1に例示するようなブロックギャップ型N−N対向磁石(0.5T)21・21を2基50cm間隔で設置して行った(図1に示した上下一対の磁石21・21で「1基」とカウントする)。この時、磁石間隔dを1cm、ブロック曲率半径Rを2cm、ブロック間隔mを20cmとした。乾燥は、図2に示すように、磁石配置前のゾーン1、磁石配置ゾーン2、磁石配置後方ゾーン3の3ゾーンで行い、それぞれの温度を10℃、40℃、80℃とした。塗布速度は100m/分とした。
《バックコート層用塗料成分》
・カーボンブラック(平均粒径:25nm) 80部
・カーボンブラック(平均粒径:370nm) 10部
・酸化鉄(平均粒径:400nm) 10部
・ニトロセルロース 45部
・ポリウレタン樹脂(−SO3 Na基含有) 30部
・シクロヘキサノン 260部
・トルエン 260部
・メチルエチルケトン 525部
上記バックコート層用塗料成分をサンドミルで滞留時間45分として分散した後、ポリイソシアネート15部を加えてバックコート層用塗料を調整し濾過後、上記で作製した磁気シートの磁性層形成面とは反対側の面(裏面)に、乾燥、カレンダー後の厚みが0.5μmとなるように塗布し、乾燥した。このようにして得られた磁気シートを金属ロールからなる7段カレンダーで、温度100℃、線圧150×9.8N/cmの条件でカレンダー処理し、磁気シートをコアに巻いた状態で70℃で72時間エージングしたのち、1/2インチ(12.7mm)幅に裁断し、これを200m/分で走行させながら磁性層表面をラッピングテープ研磨、ブレード研磨そして表面拭き取りの後処理を行い、磁気テープを作製した。この時、ラッピングテープにはK10000、ブレードには超硬刃、表面拭き取りには東レ社製トレシー(商品名)を用い、走行テンション30g(0.03×9.8N)で処理を行った。上記のようにして得られた磁気テープをカートリッジに組み込み、コンピュータ用テープを作製した。
磁場配向、乾燥工程におけるブロック曲率半径Rを4cmに変更したことを除き、実施例1と同様にしてコンピュータ用テープを作製した。
磁場配向、乾燥工程におけるブロック曲率半径Rを3cmに、ブロック間隔mを25cmに変更したことを除き、実施例1と同様にしてコンピュータ用テープを作製した。
磁場配向、乾燥工程におけるブロック曲率半径Rを3cmに、ブロック間隔mを15cmに変更したことを除き、実施例1と同様にしてコンピュータ用テープを作製した。
磁場配向、乾燥工程における乾燥温度を5℃、20℃、80℃に変更したことを除き、実施例1と同様にしてコンピュータ用テープを作製した。
磁場配向、乾燥工程における乾燥温度を0℃、15℃、80℃に変更したことを除き、実施例1と同様にしてコンピュータ用テープを作製した。
使用した強磁性磁性粉を平均粒子径8nmの球状鉄系金属粉に変更したことを除き、実施例1と同様にしてコンピュータ用テープを作製した。
使用した強磁性磁性粉を平均粒子径25nmの球状鉄系金属粉に変更したことを除き、実施例1と同様にしてコンピュータ用テープを作製した。
[比較例1]
磁場配向、乾燥工程におけるブロック曲率半径Rを5cmに変更したことを除き、実施例1と同様にしてコンピュータ用テープを作製した。
[比較例2]
磁場配向、乾燥工程におけるブロック曲率半径Rを1.5cmに変更したことを除き、実施例1と同様にしてコンピュータ用テープを作製した。
[比較例3]
磁場配向、乾燥工程におけるブロック間隔mを30cmに変更したことを除き、実施例2と同様にしてコンピュータ用テープを作製した。
[比較例4]
磁場配向、乾燥工程におけるブロック間隔mを10cmに変更したことを除き、実施例2と同様にしてコンピュータ用テープを作製した。
[比較例5]
使用した強磁性磁性粉を平均粒子径35nmの球状鉄系金属粉に変更したことを除き、実施例1と同様にしてコンピュータ用テープを作製した。
[比較例6]
使用した強磁性磁性粉を、粒子の平均長軸長が30nmの針状鉄系金属粉に変更したことを除き、実施例1と同様にしてコンピュータ用テープを作製した。
[比較例7]
磁場配向、乾燥工程におけるブロック曲率半径Rを1.5cmに変更したことを除き、比較例6と同様にしてコンピュータ用テープを作製した。
〈評価方法〉
上記のようにして作製した各コンピュータ用テープについて、以下のような測定を行って磁気特性および表面平滑性をそれぞれ評価した。
『角型比:SRm, SRt』
試料振動形磁束計を使用し、外部磁場1.28MA/m(16kOe)の下で、記録再生方向の角型比(SRm)と媒体厚み方向の角型比(SRt)を測定した。
『磁性層表面の中心線平均粗さ:Ra』
磁性層表面の中心線平均粗さRaは、Digital Instruments社製の原子間力顕微鏡(AFM)Dimension 3000を用いて測定した。測定条件はタッピングモードで行い、5μm×5μmの視野を512×512ピクセルで測定、各点の平均線からの絶対値の算術平均したときの値を中心線平均粗さRaとした。
『出力およびノイズ:Ch, ClおよびSNR』
各テープの出力およびノイズの測定にはドラムテスターを用いた。ドラムテスターには電磁誘導型ヘッド(トラック幅25μm、ギャップ長0.2μm)とMRヘッド(トラック幅5.5μm、シールド間隔0.17μm)とを装着し、誘導型ヘッドで記録、MRヘッドで再生を行った。両ヘッドは回転ドラムに対して異なる場所に設置されており、両ヘッドを上下方向に操作することで、トラッキングを合わせることができる。磁気テープはカートリッジに巻き込んだ状態から適切な量を引き出して廃棄し、更に60cmを切り出して回転ドラムの外周に巻き付けた。
ファンクションジェネレータにより矩形波を記録電流発生アンプに入力制御し、波長0.17μmおよび20μmの信号を磁気テープに書き込み、MRヘッドの出力をプリアンプで増幅後、スペクトラムアナライザーに読み込んだ。波長0.17μmのキャリア値を高域出力Ch、波長20μmのキャリア値を低域出力Clとした。また波長0.34μmの信号を磁気テープに記録し、再生出力をスペクトラムアナライザーで読み込み、このときのキャリア出力をS、スペクトル成分のうち40μm〜0.17μmに対応し、キャリア成分を除いた範囲の周波数帯域で積分した値Nをノイズとして、両者の比(S/N)をもってSNRとした。
『エラーレート:BER』
エラーレートの測定にも、前記ドラムテスターを用いた。前記と同様の記録ヘッド(電磁誘導型ヘッド)および再生ヘッド(MRヘッド)を用いて、磁気テープも同様にセッティングする。任意波形発生ファンクションジェネレータを記録電流発生アンプに接続して、入力制御を行った。
ライトイコライゼーションを施さない場合(NWE)、入力する信号は最短記録波長1T:0.17μmのランダム信号であり、8−9変調、ランレングスは(0、4)RLLである。MRヘッドの再生出力をプリアンプで増幅後、解析機能付きデジタルオシロスコープ(DSO、LeCroy社製DDA−260)に取り込んだ。取り込んだ信号をDSOの機能を用いてソフトウェア的にPR4に等化、ビタビ複合を行ったのち、これもソフトウェアで算出されるエラーマージンの数値から換算した値をビットエラーレート(BER)とした。なお、このエラーマージン値は、ハードウェア的に算出したビットエラーレートの値と良い相関を示す。
ライトイコライゼーションを行った場合(WE)も、最短再生波長は0.17μmとした。記録信号は再生ビット長の1/5を単位として、LTO1のテーブルに従って各ビットを変換し、この変換後のビットパターンを任意波形発生ファンクションジェネレータで生成し、記録アンプを制御した。読み出しとデータ処理は同様にDSOを用いて行い、BERを得た。
〈評価結果〉
表1に上記の測定結果を示す。表1には、各実施例および比較例で使用した磁性粉(磁性層成分)の平均粒径D(単位:nm)と粒子形状も併記した。なお、表中のBER欄における「E」の右側の数値は、10を底とするベキ乗の指数を示す(例:「3.2E−06」=「3.2 ×10-6」)。
Figure 0003963327
表1に示す結果から明らかなように、本発明の各実施例で得られた磁気テープはいずれも比較例の磁気テープに比べてSNRが大きく、記録分解能が高いことがわかる。また、その結果として、ライトイコライゼーションを施した場合(WE)と施さない場合(NWE)のいずれにおいても、本発明実施例に係る各磁気テープは、比較例に係る各磁気テープに比べて遥かにブロックエラーレート(BER)が小さく、良好なエラーレート特性(低エラーレート性)を有するものとなっていることも確認できる。こうして、本発明の実施例によれば、短波長記録再生に際して十分な分解能が得られるコンピュータ用テープつまり磁気テープを実現することができ、したがってライトイコライゼーションを使用しなくても短波長記録が可能な磁気テープを実現することができる。
なお、比較例4に係る磁気テープについては、特性を比較するうえで意味のある出力、ノイズ、ブロックエラーレート等の測定値を得ることはできなかった。これは、次のように考えられる。すなわち、比較例4では、磁場配向処理で使用したN−N対向磁石においてブロック間隔mを10cmと比較的狭く設定した。そのため、対向磁石間の反発力が大きくなり、磁性粉を配向させるための磁場も強くなった。結果、磁性層に含まれている磁性粉同士が磁石となって互いに引きつけ合い、いわゆる「磁場あれ」が生じて磁性層表面の平滑性が極めて悪化した(粗くなった)。このような磁性層表面の極めて粗い磁気テープは、もはや磁気記録媒体に最低限求められる電磁変換特性すら示すことができなくなる。これが、先の測定値が得られなった、つまり技術的に意味のある測定を行えなかった理由であると思われる。
本発明実施例および比較例に係る磁気テープを製造するにあたり磁場配向処理で用いたブロックギャップ型N−N対向磁石を模式的に示す斜視図である。 本発明実施例および比較例に係る磁気テープを製造するにあたり磁石配置ゾーンの前後のゾーンで乾燥を行うことを説明するために使用した各ゾーンの配置関係を示す説明図である。
符号の説明
2 磁石配置ゾーン
21 ブロックギャップ型N−N対向磁石

Claims (2)

  1. 可撓性支持体上に少なくとも強磁性磁性粉と結合剤樹脂とを含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、
    前記強磁性磁性粉は、実質的に球状でその平均粒子径が2〜30nmであり、
    当該磁気記録媒体における記録再生方向の角型比SRmが0.4〜0.7、媒体厚み方向の角型比SRtが0.01〜0.2であることを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 磁性層表面の中心線平均粗さRaが0.2〜3.0nmである、請求項1記載の磁気記録媒体。
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