JP2004014038A - 磁気記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】非磁性支持体の一方の面に下層の非磁性層と上層の磁性層とを有する磁気記録媒体において、磁性層に用いる磁性粉の数平均粒子径を10〜80μmとする。あわせて、磁性層には、数平均粒子径が50〜150nmで、かつ顕微鏡法で測定した粒度分布の標準偏差が10nm以下であるアルミナを含有させる。その場合に、磁性層の表面を走査型電子顕微鏡により観察した視野像から求められる、アルミナの面積占有率が0.3〜1.0%で、かつその空間分布の標準偏差が3以下となるように設定する。磁性層を塗布形成するにあたっては、二軸連続式混錬装置を使用して製造した磁性塗料を用いる。本発明は、磁気抵抗効果型素子を利用した再生ヘッドによって磁気記録信号が再生される磁気記録媒体に特に好適に用いられる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非磁性支持体上に非磁性層塗膜および磁性層塗膜を形成することにより得られる塗布型の磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術、および発明が解決しようとする課題】
磁気記録媒体の一つである磁気テープには、オーディオテープ、ビデオテープ、コンピユータのデータバックアップ用テープなどの種々の用途のものがあるが、特にデータバックアップ用テープの分野ではバックアップ対象となるハードディスクの大容量化に伴い、1巻当たり数10GB〜100GBの記録容量のものが商品化されている。さらに、100GBを超える大容量バックアップテープが提案されており、その高記録密度化が望まれている。このような高記録密度・大容量の磁気テープにおいては、アクセス速度、転送速度を大きくするために、テープの送り速度やテープ/ヘッド間の相対速度を高めることも必要となる。
【0003】
また、磁気記録媒体の高容量化のために、記録波長をより短くすることが行われており、このような短波長記録に対応するために、使用される磁性粉の粒子径も小さくなってきている。その結果、磁性層の耐久性は逆に低下し、ヘッドとの摺動等のダメージに対し十分な信頼性を確保するのが難しくなってきている。
【0004】
一方、高容量化に対応する磁性塗膜の薄膜化とトラック幅の狭幅化により磁気記録媒体からの漏れ磁束が小さくなるため、再生ヘッドに微小磁束でも高い出力が得られる磁気抵抗効果型素子(MR素子)を使用した再生ヘッド(MRヘッド)を使用することが多くなってきた。ところが、MRヘッドは、従来用いられてきた磁気誘導型のヘッドが比較的硬い材料で構成されていたのに対し、軟らかい材料で構成され、しかも薄膜状であるので磨耗に弱い。このため、磁気記録信号がMRヘッドによって読み取られる磁気記録媒体にあっては、ヘッド磨耗の抑制ないし低減といった点も考慮する必要がある。
【0005】
また、MRヘッドによって磁気記録信号が読み取られる磁気記録媒体の場合、MR素子によって検出される漏れ磁束を、当該MR素子に対応した適切な範囲のものとする必要がある。磁気記録媒体の磁束は、磁性層の残留磁束密度(Mr)と磁性層厚さ(t)との積の値(いわゆるMrt値)によって判断することができるが、この値が適切な範囲を越えるとMR素子の飽和が起こり、出力はほとんど増加しないのにも拘らず、バックグラウンドとして存在するノイズの増加分の方が大きくなる。このため実際の信号再生時に検出されるC/Nの値は小さくなってしまい、良好な電磁変換特性が得られなくなる(たとえば特許3046579号公報、特開平10−134306号公報参照)。
【0006】
MRヘッド対応の磁気記録媒体としては、例えば特開平11−238225号公報、特開平2000−40217号公報、特開平2000−40218号公報に記載されたものがある。これらの従来技術では、先に述べたMrt値を特定の値に制御してMRヘッドの出力の歪を防止したり、磁性層表面のへこみを特定の値以下にしてMRヘッドのサーマル・アスペリティを低減したりしている。
【0007】
さらに、磁気記録媒体にあっては、通常、磁性層の耐久性を向上させるために、磁性層中に無機粉体、特にモース硬度の高いアルミナ等を添加することが行われている。しかし、磁性層にアルミナを添加することにより磁性層の耐久性は向上するものの、ヘッド磨耗が大きくなるという問題がある。アルミナ添加に関しては、特許第3240672号公報、特開2001−155324号公報、特許第3046580号公報等に記載されている。これらにおいては、アルミナのpH、粒子径と潤滑剤量、アルミナの粒子径と磁性層の表面粗さ等について検討し、ヘッド磨耗の低減と磁性層の耐久性向上の両立を図ろうとしているが、未だ十分とは言いがたい。
【0008】
本発明は、主として、磁気記録媒体における上記のような問題に対処するもので、その目的は、高容量化に対応した高記録密度特性を有しながら、ヘッドの磨耗を抑えることができ、しかも優れたC/N特性および耐久性を併せもった磁気記録媒体を提供することにある。言い換えれば、本発明は、ヘッド磨耗に関する特性、電磁変換特性、テープ(磁性層)の耐久性といった諸特性をバランス良く備えた磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、磁性層に添加する磁性粉として粒子径が特定の範囲にある磁性粉を使用するとともに、このような磁性粉を含む磁性層中に特定のアルミナを効率よく分散させた状態で含有させることによって、C/Nと耐久性とヘッド摩耗といった点に関して良好なバランスが得られることを見いだした。
【0010】
本発明は、このような知見に基づいて完成されたもので、非磁性支持体の一方の面に、非磁性粉と結合剤とを含む非磁性塗料を塗布することにより形成された非磁性層と、この非磁性層上に磁性粉と結合剤とを含む磁性塗料を塗布することにより形成された磁性層とを有する磁気記録媒体において、次のように構成したものである。
【0011】
すなわち、磁性層に、数平均粒子径が10〜80μmである磁性粉と、数平均粒子径が50〜150nmで、かつ顕微鏡法で測定した粒度分布の標準偏差が10nm以下であるアルミナとを含有させる。そして、これらの磁性粉およびアルミナを含む磁性層の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した視野像から求められる、前記アルミナの面積占有率が0.3〜1.0%で、かつその空間分布の標準偏差が3以下である構成とする。
【0012】
本願の請求項2に係る発明は、上記の構成を備えた磁気記録媒体を、磁気抵抗効果型素子を利用した再生ヘッドによって磁気記録信号が再生される磁気記録媒体に限定したものである。
【0013】
また、本願の請求項3に係る発明は、上記の磁性層を形成するに当たり二軸連続式混錬装置を使用して製造された磁性塗料を用いることによって、磁性層中のアルミナが良好な分散状態となるようにしたものである。
【0014】
なお、上記磁性粉およびアルミナの数平均粒子径、アルミナ粒度分布の標準偏差、磁性層表面におけるアルミナ(表面アルミナ)の面積占有率、その空間分布の標準偏差とは、それぞれ、以下のようにして求められる量をいう。
【0015】
〈磁性粉・アルミナの数平均粒子径、粒度分布の標準偏差〉
試料粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、さしわたしが最も長い距離をその粒子径とする。粒子200個のヒストグラム(ここでは、横軸方向に粒子径(10nm区間毎)をとり、縦軸方向に各粒子径の個数をとったもの)を作り、このヒストグラムから求められる粒子の平均値および標準偏差を、それぞれ数平均粒子径(以下、単に「平均粒子径」もしくは「平均粒径」ともいう)および粒度分布の標準偏差とする。
【0016】
〈表面アルミナの面積占有率〉
磁性層塗膜の表面をSEM(倍率3万倍)で観察する。得られた画像を処理し、一定領域における白色領域の面積を計測して、これをアルミナ占有領域の面積とする。そして、「アルミナ占有領域の面積/一定領域の全面積」を算出し、その値×100(%)を磁性層表面におけるアルミナの面積占有率とする。
【0017】
〈表面アルミナの空間分布の標準偏差〉
磁性層塗膜の表面をSEMにて撮影し(倍率3万倍)、この塗膜表面のSEM写真(視野像)を図1に示すように1μm×1μmの枡目に区切る。各枡目の中にあるアルミナaの個数を数える。枡目1200個についてアルミナ個数のヒストグラム(ここでは、横軸方向に枡目の中にあるアルミナの個数をとり、縦軸方向に各個数を持つ枡目の数をとったもの)を作る。このヒストグラムから求められる標準偏差を、本発明でいう表面アルミナの空間分布の標準偏差とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明は、主としてデジタル記録用の磁気記録媒体に適用される。本発明の磁気記録媒体においては、非磁性支持体の少なくとも一方の面に非磁性層が設けられており、その上に磁性層が設けられている。特に高い走行信頼性を必要とする場合には、非磁性支持体の他方の面(非磁性層と磁性層とを含む表層塗布層の形成されている面)とは反対側の面に、バックコート層を設けることができる。以下、本発明の磁気記録媒体についてさらに具体的に説明する。
【0019】
〈非磁性支持体〉
本発明においては、テープ状の非磁性支持体を使用する。使用する非磁性支持体は、その長手方向のヤング率が5.9GPa(600kg/mm2)以上で、且つ幅方向のヤング率が3.9GPa(400kg/mm2)以上であることが好ましく、さらに長手方向のヤング率が9.9GPa(1000kg/mm2)以上、且つ幅方向のヤング率が7.9GPa(800kg/mm2)以上がより好ましい。非磁性支持体の長手方向のヤング率が5.9GPa(600kg/mm2)以上がよいのは、長手方向のヤング率が5.9GPa(600kg/mm2)未満では、テープ走行が不安定になるためである。非磁性支持体の幅方向のヤング率が3.9GPa(400kg/mm2)以上がよいのは、幅方向のヤング率が3.9GPa(400kg/mm2)未満では、テープのエッジダメージが発生しやすくなるためである。
【0020】
このような特性を満足する非磁性支持体としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、二軸延伸の芳香族ポリアミドベースフィルム、芳香族ポリイミドフィルム等がある。なお、非磁性支持体の厚さは、用途によって異なるが、通常2〜7μmのものが使用される。より好ましくは2.5〜4.5μmである。非磁性支持体の厚さが2μm未満では製膜が難しく、またテープ強度が小さくなり、7μmを越えるとテープ全厚が厚くなり、テープ1巻当りの記憶容量が小さくなるためである。また、非磁性支持体の前記一方の面(すなわち非磁性層および磁性層が形成される面。以下、「磁性層形成面」ともいう)の表面中心線平均粗さ(Ra)は2.5nm以上20nm以下が好ましい。20nm以下であれば、非磁性層を薄くしても非磁性層表面および磁性層表面の凹凸が小さくなるためである。Raが2.5nm未満のものは製造が困難で、コストが高くつく。
【0021】
〈非磁性層〉
非磁性層には、強度を高める目的で非磁性の無機質粉末を含有させる。この無機質粉末としては、金属酸化物、アルカリ土類金属塩等が好ましい。具体的には例えば酸化鉄が好ましく、その粒径は50〜400nmがより好ましく、添加量は、全無機質粉体の重量を基準にして35〜83重量%が好ましい。この範囲の粒径が好ましいのは、粒径50nm未満では均一分散が難しく、400nmを越えると非磁性層とその直上の磁性層との界面の凹凸が増加するためである。また、前記範囲の添加量が好ましいのは、35重量%未満では塗膜強度向上効果が小さく、83重量%を越えると反って塗膜強度が低下するためである。
【0022】
加えて、非磁性層にはアルミナ、特にコランダム相を主体とするアルミナを添加することが好ましい。アルミナの添加量は、全非磁性粉体の重量を基準にして2〜30重量%がより好ましく、8〜20重量%がさらに好ましく、11〜20重量%が一層好ましい。アルミナの添加量が2重量%未満では塗料流動性が不充分となり、30重量%を越えると非磁性層とその直上の磁性層との界面の凹凸が大きくなるためである。添加するアルミナの粒径は、100nm以下が好ましく、10〜100nmのアルミナ添加がより好ましく、30〜90nmがさらに好ましく、50〜90nmが一層好ましい。100nm以下のアルミナが良いのは、磁性層形成面の表面粗さ(Ra)が2.5nm以上の非磁性支持体を使用し、かつ非磁性層の厚さを1500nm以下と薄くしたような場合に、アルミナの粒径が100nmを越えると、非磁性層表面の平滑効果が不充分になるためである。また、前記コランダム相を主体とするアルミナ(α化率:30%以上)が特に良いのは、σアルミナ、θアルミナ、γアルミナ等を使用した場合に比べて少量で下層非磁性層のヤング率が高くなり、テープ強度が増すためである。また、テープ強度も高くなることで、テープエッジの波打ち(エッジウイーブ)による出力のばらつきも改善される。
【0023】
なお、上記粒径のアルミナと共に、全無機質粉体の重量を基準にして3重量%未満の100〜800nmのαアルミナを添加することを排除するものではない。
【0024】
非磁性層には、導電性向上を目的にカーボンブラック(CB)を添加することができる。添加するカーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等を使用できる。通常は粒径が5〜200nmのものが使用されるが、粒径10〜100nmのものが好ましい。この範囲が好ましいのは、カーボンブラックがストラクチャーを持っているため、粒径が10nm以下になるとカーボンブラックの分散が難しく、100nm以上では平滑性が悪くなるからである。カーボンブラックの添加量は、カーボンブラックの粒径によって異なるが、非磁性層中の全非磁性粉末に対して15〜40重量%が好ましい。この範囲が好ましいのは、15重量%未満では導電性向上効果が乏しく、40重量%を越えると効果が飽和するためである。粒径15〜80nmのカーボンブラックを15〜35重量%使用するのがより好ましく、粒径20〜50nmのカーボンブラックを20〜30重量%使用するのがさらに好ましい。このような粒径・量のカーボンブラックを添加することにより電気抵抗が低減され、静電ノイズの発生やテープ走行むらが小さくなる。
【0025】
非磁性層の厚みは、通常、300〜3000nmに設定するのが好ましく、より好ましくは500〜2000nmである。厚みが300nm未満の非磁性層は塗布により形成することが難しく、生産性が悪いためであり、厚みが3000nmを越えるとテープ全厚が厚くなり、テープ1巻当りの記憶容量が小さくなるためである。また、非磁性支持体と非磁性層との間には密着性向上のために公知の下塗層を設けてもかまわない。その場合の下塗層の厚みは、10〜2000nmとするのが良く、より好ましくは50〜500nmである。
【0026】
〈磁性層〉
磁性層に添加する磁性粉としては、強磁性鉄系金属粉が使用される。保磁力は、135kA/m〜280kA/m(1700〜3500Oe)が好ましく、飽和磁化量は、90〜200A・m2/kg(90〜200emu/g)が好ましく、100〜180A・m2/kg(100〜180emu/g)がより好ましい。なお、この磁性層の磁気特性と、強磁性鉄系金属粉の磁気特性は、いずれも試料振動形磁束計で外部磁場1.28MA/m(16kOe)での測定値をいうものである。
【0027】
前記強磁性鉄系金属粉の平均長軸長としては、100nm以下が好ましく、20〜60nmがより好ましい。この範囲が好ましいのは、100nmより大きいと粒子の大きさに基づく粒子ノイズが大きくなり、C/N特性を向上させることが困難になるからである。また、平均長軸長が10nm未満であると、保磁力が低下し、同時に磁性粉の凝集力が増大するため塗料中への分散が困難になる。なお、上記の平均長軸長は、透過型電子顕微鏡(TEM)にて撮影した写真から粒子サイズを実測し、200個あたりの平均値により求めたものである。また、この強磁性鉄系金属粉のBET比表面積は、35〜85m2/gが好ましく、40〜80m2/gがより好ましく、50〜70m2/gが最も好ましい。
【0028】
磁性層の厚みは1nm以上100nm以下が好ましく、10nm以上90nm以下がより好ましい。1nm以上100nm以下が好ましいのは、磁性層が1nm未満では、これからの漏れ磁界が小さいためにヘッド出力が小さくなり、100nmを越えると、厚み損失によりヘッド出力が小さくなるためである。また磁性層の中心線平均粗さ(Ra)は1〜6nmが好ましく、2〜4nmがより好ましい。この範囲が好ましいのは、1nm以下ではこの平滑性を得るのが難しく、また磁性層表面とヘッド材料あるいはガイドロールとの接触による摩擦係数の上昇によりテープの走行が不安定になるためである。
【0029】
磁性層の磁気記録媒体としての保磁力は、ヘッド走行方向で135kA/m〜280kA/m(1700〜3500Oe)、残留磁束密度はテープ長手方向で0.30T(3000G)以上が好ましい。保磁力について前記の範囲が好ましいのは、保磁力が135kA/m未満では、反磁界によって出力が減少し、280kA/mを越えるとヘッドによる書き込みが困難になるためである。残留磁束密度が0.30T(3000G)以上が好ましいのは、0.30T未満では出力が低下するためである。保磁力が160kA/m〜240kA/m(2000〜3000Oe)、残留磁束密度が0.35T〜0.5T(3500〜5000G)のものはより好ましい。
【0030】
MRヘッドを再生ヘッドとして用いるシステムに本発明の磁気記録媒体を供する場合には、磁性層の長手方向の残留磁束密度と磁性層膜厚との積であるMrt値が72nTm(5.7memu/cm2)以下であり、角形比が0.85以上であることが好ましい。Mrt値が72nTm以下が好ましいのは、72nTm以上では、ほとんどのMRヘッドで検出される出力が大きくなりすぎてMRヘッドを飽和させてしまうからである。また、角形比が0.85以上であることが好ましいのは、0.85以下であると熱擾乱による記録減磁が起こるからである。Mrt値は2〜36nTm(0.19〜3.4memu/cm2)の範囲がより好ましく、角形比は0.90〜0.97の範囲がより好ましい。
【0031】
磁性層には、研磨材として、数平均粒子径が50〜150nm、粒度分布の標準偏差が10nm以下のアルミナを添加する。ここで粒子径が150nm以下のアルミナがよいのは、粒子径が150nmを超えるアルミナが磁性層に存在するとC/N特性が下がるためである。また、粒子径50nm以上のアルミナがよいのは、磁性層に存在するアルミナの粒子径が50nmよりも小さくなると耐久性、クリーニング性が低下するためである。さらに、粒度分布が標準偏差で10nm以下がよいのは、10nmより広い分布のアルミナを使用した場合、磁性層の大粒径アルミナが存在する部分ではC/N特性が悪くなり、小粒径アルミナが存在する部分では耐久性・クリーニング性が悪くなってしまう。加えて、アルミナの粒度分布が大きいと、粒径の大きい部分は欠陥となってしまい、ドロップアウト特性が悪化する。このように部分的な劣化が発生すると、特性にバラツキが生じ、最終的には十分な性能を出すことができなくなるためである。
【0032】
前記アルミナとしては、主としてモース硬度6以上のα−アルミナ、β−アルミナを単独でまたは組み合わせて使用することができる。これらの中でもコランダム型のアルミナ(α化率:30%以上)が特に好ましい。理由は、σアルミナ、θアルミナ、γアルミナ等を使用した場合に比べて高硬度で、少量の添加量でヘッドクリーニング効果に優れるためである。
【0033】
前記アルミナの添加量は、磁性層中の強磁性鉄系金属粉100重量部に対して5〜20重量部が好ましい。より好ましくは8〜18重量部である。アルミナ添加量が5重量部以上が好ましいのは、5重量部に満たない場合、磁性層の塗膜強度が落ちて耐久性が劣化するためである。また塗膜によるヘッドのクリーニング性も極端に悪くなるので、ヘッドに付着した汚れをかき落とせなくなるからである。また20重量部がよいのは、20重量部を超えてしまうとC/N特性が下がるためである。
【0034】
磁性層には、導電性向上と表面潤滑性向上を目的に従来公知のカーボンブラック(CB)を添加することができる。このカーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等を使用できる。通常は粒径が5〜200nmのカーボンブラックを使用するが、粒径10〜100nmのものが好ましい。この範囲が好ましいのは、粒径が10nm未満になるとカーボンブラックの分散が難しく、100nmを超えると多量のカーボンブラックを添加することが必要になり、何れの場合も表面が粗くなり、出力低下の原因になるためである。カーボンブラックの添加量は強磁性鉄系金属粉100重量部に対して0.2〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜4重量部である。
【0035】
〈潤滑剤〉
通常は、非磁性層と磁性層とに、役割の異なる潤滑剤を使用する。非磁性層に、これに含まれる全無機質粉体に対して0.5〜4.0重量%の高級脂肪酸を含有させ、0.2〜3.0重量%の高級脂肪酸のエステルを含有させると、テープと回転シリンダまたはヘッドアイランドとの摩擦係数が小さくなるので好ましい。この範囲の高級脂肪酸添加が好ましいのは、0.5重量%未満では、摩擦係数低減効果が小さく、4.0重量%を越えると非磁性層が可塑化してしまい強靭性が失われるからである。また、前記範囲の高級脂肪酸のエステル添加が好ましいのは、0.2重量%未満では、摩擦係数低減効果が小さく、3.0重量%を越えると磁性層への移入量が多すぎるため、テープと回転シリンダまたはヘッドアイランドが貼り付く等の副作用があるからである。
【0036】
磁性層には強磁性鉄系金属粉に対して0.5〜3.0重量%の脂肪酸アミドを含有させ、0.2〜3.0重量%の高級脂肪酸のエステルを含有させると、テープと回転シリンダとの摩擦係数が小さくなるので好ましい。この範囲の脂肪酸アミドが好ましいのは、0.5重量%未満ではヘッド/磁性層界面での直接接触が起りやすく焼付き防止効果が小さく、3.0重量%を越えるとブリードアウトしてしまいドロップアウトなどの欠陥が発生するからである。脂肪酸アミドとしてはパルミチン酸、ステアリン酸等のアミドが使用可能である。また、上記範囲の高級脂肪酸のエステル添加が好ましいのは、0.2重量%未満では摩擦係数低減効果が小さく、3.0重量%を越えるとテープと回転シリンダが貼り付く等の副作用があるためである。なお、磁性層の潤滑剤と下層非磁性層の潤滑剤の相互移動を排除するものではない。
【0037】
〈結合剤、有機溶媒〉
非磁性層と磁性層とにそれぞれ使用する結合剤としては、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合体、ニトロセルロースなどの中から選ばれる少なくとも1種と、ポリウレタン樹脂との組み合わせをあげることができる。中でも、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合体とポリウレタン樹脂を併用するのが好ましい。ポリウレタン樹脂には、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタンなどがある。これらの結合剤は、磁性層では前記強磁性鉄系金属粉100重量部に対して、また非磁性層では非磁性層中の全非磁性粉末100重量部に対して、それぞれ、7〜50重量部、好ましくは10〜35重量部の範囲で用いることができる。特に、結合剤として、塩化ビニル系樹脂5〜30重量部と、ポリウレタン樹脂2〜20重量部とを、複合して用いるのが最も好ましい。
【0038】
官能基として−COOH、−SO3M、−OSO3M、−P=O(OM)3、−O−P=O(OM)2[これらの式中、Mは水素原子、アルカリ金属塩基又はアミン塩を示す]、−OH、−NR1R2、−N+R3R4R5[これらの式中、R1、R2、R3、R4、R5は水素または炭化水素基を示す]、エポキシ基を有する、高分子からなる結合剤が使用される。このような結合剤を使用するのは、上述のように磁性粉等の分散性が向上するためである。2種以上の樹脂を併用する場合には、官能基の極性を一致させるのが好ましく、中でも−SO3M基同士の組み合わせが好ましい。
【0039】
これらの結合剤とともに、結合剤中に含まれる官能基などと結合させて架橋する熱硬化性の架橋剤を併用するのが望ましい。この架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどや、これらのイソシアネート類とトリメチロールプロパンなどの水酸基を複数個有するものとの反応生成物、上記イソシアネート類の縮合生成物などの各種のポリイソシアネートが好ましい。これらの架橋剤は、結合剤100重量部に対して、通常10〜50重量部の割合で用いられる。より好ましくは15〜35重量部である。
【0040】
非磁性層および磁性層の両層に用いられる有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサンなどのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等をあげることができる。これらの有機溶媒は、単独で、もしくは任意の比率で混合して使用できる。
【0041】
〈バックコート層〉
非磁性支持体の他方の面(表層塗布層形成面とは反対側の面)には、走行性向上や帯電防止等を目的としてバックコート層を設けることができる。バックコート層の厚さは、0.2〜0.8μmが好ましい。この範囲が良いのは、0.2μm未満では、走行性向上効果が不充分で、0.8μmを越えるとテープ全厚が厚くなり、1巻当たりの記憶容量が小さくなるためである。またバックコート層の塗布には、従来公知のグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、ダイ塗布装置などで行うことができる。
【0042】
バックコート層には、走行性向上や帯電防止等を目的に通常はカーボンブラック(CB)を添加する。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等を使用できる。通常、小粒径カーボンブラックと大粒径カーボンブラックを使用する。小粒径カーボンブラックとしては、粒径が5〜200nmのものが使用されるが、粒径10〜100nmのものがより好ましい。この範囲がより好ましいのは、粒径が10nm未満になるとカーボンブラックの分散が難しく、粒径が100nmを超えると多量のカーボンブラックを添加することが必要になり、何れの場合も表面が粗くなり、磁性層への裏移り(エンボス)原因になるためである。小粒径カーボンブラックの5〜15重量%の割合で、粒径300〜400nmの大粒径カーボンを併用すると、表面も粗くならず、走行性向上効果も大きくなる。小粒径カーボンブラックと大粒径カーボンブラックの合計添加量は、バックコート層中の無機粉体重量を基準にして60〜98重量%が好ましく、70〜95重量%がより好ましい。バックコート層表面の中心線平均粗さRaは3〜15nmが好ましく、4〜10nmがより好ましい。
【0043】
また、バックコート層には、強度向上を目的に酸化鉄を添加するのが好ましい。添加する酸化鉄の粒径は100〜600nmが好ましく、200〜500nmがより好ましい。酸化鉄の添加量は、無機粉体重量を基準にして2〜40重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましい。あるいはバックコート層に非磁性粉体、例えばアルミナや酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ゲータイト、酸化クロムを添加することでも強度の向上が可能である。この場合、これらの非磁性粉体の粒径は10〜400nmが好ましく、50〜300nmがより好ましい。
【0044】
〈製造方法等〉
非磁性層および磁性層は、非磁性支持体上に非磁性層用塗料および磁性塗料((磁性層用塗料)を塗布することによって形成される。その場合、非磁性層が湿潤状態にあるうちに磁性塗料を重畳塗布して磁性層を形成する、いわゆるウェットオンウェット同時重層塗布方式を用いることによって、磁性層を、平均乾燥厚みが1〜100nmの範囲において任意の厚みで精度良く、かつ生産性良く塗布形成することができる。塗布するに当たっては、塗布液通液スリットを二つ内蔵する一つのダイ塗布ヘッドにより、非磁性層と磁性層とをほぼ同時に塗布する。塗布の安定性をあげるために、非磁性層に用いる溶媒の表面張力が、磁性層に用いる溶媒の表面張力より高いことが好ましい。表面張力の高い溶媒としてはシクロヘキサノン、ジオキサンなどがある。
【0045】
磁性塗料の主な製造方法としては、次に示す方法が挙げられる。すなわち、まずニーダー、二軸連続式混練装置(エクストルーダ)等のごとき強力な混練機を用いて、磁性粉と少量の結合剤樹脂とを混練し、さらに溶剤を加えて固形分濃度35〜45%(重量基準、以下同じ)にて撹拌してペースト状のミルベースを得る。次いで、サンドミル等により分散操作を行って、固形分の分散状態を向上させる。上記混練工程において使用される二軸連続式混練機は、その混練部(バレル)に加熱・冷却可能な装置を装備し、該混練部の温度を20〜50℃、好ましくは25〜35℃に制御することにより調整される。ここで、上記混練部の温度が20℃未満であると、混練物への濡れ性アップが図れず、分散性向上も狙うことができず、また50℃を超えると、混練物の粘性が低下し、所望の剪断力を作用させることができなくなる。また、上記混練工程において混練する際の混練条件は、混練時間が2〜5分であるのが好ましく、混練物の供給速度が5〜15kg/hであるのが好ましい。
【0046】
表層塗布層を塗布した後に、金属ロール同士でカレンダー処理することで、非磁性層と磁性層との界面における厚み変動の抑制、磁性層厚みのバラツキの抑制といった効果を高めることができる。また、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチック製のロールをカレンダーロールとして使用することもできる。カレンダー時の処理温度は、好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上である。またカレンダー時の線圧力は好ましくは147N/mm(150kgf/cm)、さらに好ましくは196N/mm(200kgf/cm)以上、その速度は20m/分〜700m/分の範囲である。80℃以上の温度で196N/mm(200kgf/cm)以上の線圧とすることにより、先に述べた効果を一層高めることができる。
【0047】
バックコート層は、表層塗布層の塗布とカレンダー処理の前後または間のいずれかの工程で塗布形成することができる。また表層塗布層とバックコート層の塗布、及びカレンダー処理の後、表層塗布層、バックコート層の硬化を促進するために、40℃〜80℃のエージング処理を施してもかまわない。
【0048】
非磁性層と磁性層とを有してなる表層塗布層のヤング率は、非磁性支持体の長手方向と幅方向のヤング率の平均値の50〜200%とするのが好ましい。表層塗布層のヤング率を前記の範囲に設定すると、テープの耐久性が向上するとともに、テープ/ヘッド間のタッチがよくなる。前記表層塗布層のヤング率の比率は70〜180%の範囲がより好ましく、80〜160%の範囲がさらに好ましい。前記の範囲が好ましいのは50%未満では塗布膜の耐久性が小さくなり、200%を越えるとテープ−ヘッド間のタッチが悪くなるためである。なお、本発明では表層塗布層のヤング率を制御する方法の一つとしてカレンダー条件による制御法を用いた。
【0049】
非磁性層のヤング率は、磁性層のヤング率の80〜99%が好ましい。非磁性層のヤング率が磁性層のそれより低いほうがよいのは、非磁性層がカレンダー処理時に一種のクッションの作用をするためである。
【0050】
前記表層塗布層およびその反対側のバックコート層の各表面のスチンレス鋼に対する摩擦係数は、それぞれ、0.5以下、さらに0.3以下が好ましい。表層塗布層の表面固有抵抗(JISでいう表面抵抗率、以下同様)は104〜1011オーム/sq(JIS表示では104〜1011Ω)、バックコート層の表面固有抵抗は103〜109オーム/sq(JIS表示では103〜109Ω)が好ましい。前記の要領で作製した磁気記録媒体をテープカートリッジ(カセットともいう)に組み込んだ磁気テープカートリッジ(カセットテープ)は、1巻当たりの記憶容量が大きく、信頼性も高く、コンピュータ等のデータバックアップ用テープとして、特に優れている。
【0051】
【実施例】
以下、本発明の実施例および比較例について説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものではないことは勿論である。なお、実施例、比較例の部は重量部を示す。
【0052】
実施例1:
《磁性層用塗料成分》
(1)
・強磁性鉄系金属粉 100部
(Co/Fe:30at%、
Y/(Fe+Co):8at%、
Al/(Fe+Co):5wt%、
σs:155A・m2/kg、
Hc:188kA/m、
pH:9.5、
平均長軸長:60nm)
・塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体 10部
(含有−SO3Na基:0.7×10−4当量/g)
・ポリエステルポリウレタン樹脂 4部
(含有−SO3Na基:1.0×10−4当量/g)
・α−アルミナ 15部
(α化率:50%、平均粒径:80nm、粒度分布10nm)
・カーボンブラック 2部
(平均粒径:75nm、DBP吸油量:72cc/100g)
・メチルアシッドホスフェート 2部
・パルミチン酸アミド 1.5部
・ステアリン酸n−ブチル 1.0部
・テトラヒドロフラン 65部
・メチルエチルケトン 245部
・トルエン 85部
(2)
・ポリイソシアネート 4部
・シクロヘキサノン 167部
【0053】
《非磁性層用塗料成分》
(1)
・酸化鉄粉末(平均粒径:0.11×0.02μm) 68部
・アルミナ(α化率:50%、平均粒径:70nm) 8部
・カーボンブラック(平均粒径:25nm) 24部
・ステアリン酸 2部
・塩化ビニル共重合体 10部
(含有−SO3Na基:0.7×10−4当量/g)
・ポリエステルポリウレタン樹脂 4.5部
(Tg:40℃、含有−SO3Na基:1×10−4当量/g)
・シクロヘキサノン 25部
・メチルエチルケトン 40部
・トルエン 10部
(2)
・ステアリン酸ブチル 1部
・シクロヘキサノン 70部
・メチルエチルケトン 50部
・トルエン 20部
(3)
・ポリイソシアネート 4.5部
・シクロヘキサノン 10部
・メチルエチルケトン 15部
・トルエン 10部
【0054】
上記の磁性層用塗料成分(1)をニーダで混練したのち、サンドミルでビーズ径0.5mmのジルコニアビーズを用いて滞留時間を45分として分散し、これに磁性層用塗料成分(2)を加え攪拌・濾過後、磁性層用塗料(磁性塗料)とした。これとは別に、上記の非磁性層用塗料成分において(1)をニーダで混練したのち、(2)を加えて攪拌の後サンドミルで滞留時間を60分として分散処理を行い、これに(3)を加え攪拌・濾過した後、非磁性層用塗料とした。
【0055】
ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ6μm、長手方向のヤング率MD=5.9GPa、幅方向のヤング率TD=3.9GPa、東レ社製)からなる非磁性支持体上に、乾燥・カレンダー後の厚さが1100nmとなるように上記の非磁性層用塗料と、その上に磁場配向処理・乾燥・カレンダー処理後の厚さが40nmとなるように磁性層用塗料とを同時重層塗布し、磁場配向処理後、乾燥することにより、非磁性支持体上に非磁性層と磁性層とがこの順に設けられてなる磁気シートを得た。なお、磁場配向処理は、ドライヤ前にN−N対抗磁石(0.5T)を設置し、ドライヤ内で塗膜の指蝕乾燥位置の手前側75cmからN−N対抗磁石(0.5T)を2基50cm間隔で設置して行った。塗布速度は100m/分とした。
【0056】
《バックコート層用塗料成分》
・カーボンブラック(平均粒径:25nm) 80部
・カーボンブラック(平均粒径:370nm) 10部
・酸化鉄(平均粒径:400nm) 10部
・ニトロセルロース 45部
・ポリウレタン樹脂(SO3Na基含有) 30部
・シクロヘキサノン 260部
・トルエン 260部
・メチルエチルケトン 525部
【0057】
上記バックコート層用塗料成分をサンドミルで滞留時間45分として分散した後、ポリイソシアネート15部を加えてバックコート層用塗料を調整し濾過後、上記で作製した磁気シートの非磁性層および磁性層が形成されている面とは反対側の面に、乾燥、カレンダー後の厚みが500nmとなるように塗布し、乾燥した。このようにして得られた磁気シートを金属ロールからなる7段カレンダーで、温度100℃、線圧147N/mm(150kgf/cm)の条件でカレンダー処理し、磁気シートをコアに巻いた状態で70℃で72時間エージングしたのち、1/2インチ幅に裁断し、これを200m/分で走行させながら磁性層表面をラッピングテープ研磨、ブレード研磨そして表面拭き取りの後処理を行い、磁気テープを作製した。この時、ラッピングテープにはK10000、ブレードには超硬刃、表面拭き取りにはトレシーを用い、走行テンション0.29N(30gf)で処理を行った。上記のようにして得られた磁気テープを単リール型のカートリッジに組み込み、コンピュータ用の磁気テープカートリッジ(以下、単にコンピュータ用テープともいう)を作製した。
【0058】
実施例2:
磁性層用塗料を作製するに当たり、二軸連続式混錬装置を用いて混練を行った点を除き、実施例1と同様にして実施例2のコンピュータ用テープを作製した。
【0059】
比較例1〜7:
一部条件を表1の条件に変更したことを除き、実施例1と同様にしてコンピュータ用テープを作成した。
【0060】
各実施例および比較例で得られたコンピュータ用テープについて、以下のような測定を行って特性を評価した。
【0061】
〈アルミナの面積占有率〉
各コンピュータ用テープにおける磁性層の表面を走査顕微鏡(SEM)で倍率3万倍で観察し、その写真撮影を行った。その後、得られた画像を処理し、一定領域における白色領域の面積を計測して、これをアルミナ占有領域の面積としたした。そして、「アルミナ占有領域の面積/一定領域の全面積」を算出し、その値×100(%)を磁性層表面におけるアルミナの面積占有率とした。
【0062】
〈アルミナの空間分布の標準偏差〉
各コンピュータ用テープにおける磁性層の表面をSEMにて倍率3万倍で観察し、その写真撮影を行った。その後、得られた画像を処理し、図1に示すように1μm×1μmの枡目を作って、各枡目の中にあるアルミナaの個数を数えた。枡目1200個についてアルミナ個数のヒストグラムを作り、このヒストグラムから求めた標準偏差をアルミナの空間分布の標準偏差とした。
【0063】
〈電磁変換特性(C/N特性)〉
磁気テープの電磁変換特性測定には、ドラムテスターを用いた。ドラムテスターには電磁誘導型ヘッド(トラック幅25μm、ギャップ0.2ミクロン)とMRヘッド(トラック幅8μm)とを装着し、誘導型ヘッドで記録し、MRヘッドで再生を行った。両ヘッドは回転ドラムに対して異なる場所に設置されており、両ヘッドを上下方向に操作することで、トラッキングを合わせることができる。磁気テープはカートリッジに巻き込んだ状態から適切な量を引き出して廃棄し、更に60cmを切り出し、更に4mm幅に加工して回転ドラムの外周に巻き付けた。
【0064】
出力及びノイズは、ファンクションジェネレータにより波長0.2μmの矩形波を書き込み、MRヘッドの出力をスペクトラムアナライザーに読み込んだ。0.2μmのキャリア値を媒体出力Cとした。また0.2μmの矩形波を書き込んだときに、記録波長0.2μm以上に相当するスペクトルの成分から、出力及びシステムノイズを差し引いた値の積分値をノイズ値Nとして用いた。更に両者の比をとってC/Nとし、C、C/Nともに比較例1のコンピュータ用テープの値との相対値を求めた。
【0065】
〈MRヘッドの磨耗量〉
MRヘッドの摩耗量は、ヘッド走行100時間後におけるMR素子の抵抗上昇率から算出した。MRヘッドの摩耗量はAFM測定によって実測した。摩耗量とMR素子抵抗との相関を確認して、これの検量線から摩耗量を同定した。
【0066】
〈テープの耐久性〉
テープの耐久性を調べるために、温度40℃、相対湿度5%RHの環境下で、テープを72時間連続走行させた。この72時間連続走行の直前と直後に、先に述べた方法で媒体出力Cを測定し、その出力の劣化率、すなわち72時間連続走行の直前および直後の出力をそれぞれC1およびC2としたときの〔(C2−C1)/C1〕×100(%)をテープの耐久性の指標とした。なお、条件を高温低湿下としたのは、アルミナの研磨能が発現しやすいからである。
【0067】
上記の各実施例および比較例において、磁性層にそれぞれ使用した磁性粉の数平均粒子径と、アルミナの数平均粒子径および粒度分布は、以下のようにして求めた。
【0068】
〈磁性粉・アルミナの数平均粒子径、粒度分布の標準偏差〉
試料粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、さしわたしが最も長い距離をその粒子径とした。粒子200個のヒストグラムを作り、このヒストグラムから求められた粒子の平均値および標準偏差を、それぞれ数平均粒子径および粒度分布の標準偏差とした。
【0069】
表1に、以上の実施例および比較例で採用した条件、および得られたテープについての評価結果をまとめて示す。なお、表1中の項目名は以下の意味で使用した。これらの具体的な測定方法は上述した通りである。
【0070】
・「磁性粉粒子径」:磁性層に含ませた磁性粉(強磁性鉄系金属粉)の数平均粒子径。
・「アルミナ粒子径」:磁性層に含ませたアルミナの数平均粒子径。
・「粒度分布」:磁性層に含ませたアルミナの粒度分布の標準偏差。
・「アルミナ部数」:磁性層中のアルミナ含有量(重量部て表示)。
・「混練機」:磁性塗料を調整するに当たって使用した混練装置。「バッチ」はバッチ式混練装置を示し、「二軸」は二軸連続式混練装置を示す。
・「アルミナ占有面積」:磁性層表面におけるアルミナの面積占有率。
・「アルミナ空間分布」:磁性層表面におけるアルミナの空間分布の標準偏差。・「磨耗」:MRヘッドの磨耗量。
・「耐久性」:テープの耐久性。
・「C/N」:C/N特性。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1・2の磁気テープ(本発明品)は、比較例1・2・4・6・7の磁気テープに比して摩耗性が低く、また比較例3・7の磁気テープに比して高い耐久性を示している。同時に、比較例1・2および比較例4〜7の磁気テープに比べて高いC/N特性を示しており、特に二軸連続式混練機を用いた実施例2の磁気テープでは、C/Nが更に高くなっている。これらの点から、本発明実施例の磁気テープは、総合的に見て、MRヘッドの磨耗量が少ないという特性、電磁変換特性(C/N特性)、テープ(磁性層)の耐久性といった諸特性をバランス良く備えていることがわかる。
【0073】
これに対して、磁性粉について本発明で特定した範囲よりも大きな粒子径(110nm)のものを使用した比較例5の磁気テープは、C/N特性が悪い。また、磁性層表面におけるアルミナの面積占有率が本発明で特定した範囲よりも高い、つまり磁性層表面にアルミナが比較的多く存在する比較例1・2・4・6・7の磁気テープは、ヘッド磨耗量が大きい。特に、磁性層表面におけるアルミナの面積占有率と空間分布の標準偏差とが本発明で特定した範囲をいずれも超えている、言い換えれば磁性層表面にアルミナが比較的多く存在し、かつその分散状態も悪い比較例1・2・6・7の磁気テープでは、ヘッドに対する磨耗性が高いだけでなく、C/N特性も良くないことが分かる。
【0074】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、高容量化に対応した高記録密度特性を有しながら耐久性、ヘッド磨耗性、C/N特性といった諸特性をバランス良く備えた磁気記録媒体を得ることができる。とくに、本願請求項3に係る発明によれば、高いC/N比を示す記録密度特性に優れた磁気記録媒体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁性層表面をSEM観察した視野像からアルミナの空間分布の標準偏差を求める方法を説明する際に使用したもので、磁性層表面のSEM写真を枡目状に区切った状態を示す模式図である。
Claims (3)
- 非磁性支持体の一方の面に、非磁性粉と結合剤とを含む非磁性塗料を塗布することにより形成された非磁性層と、この非磁性層上に磁性粉と結合剤とを含む磁性塗料を塗布することにより形成された磁性層とを有する磁気記録媒体であって、
前記磁性粉の数平均粒子径が10〜80μmであり、
前記磁性層に、数平均粒子径が50〜150nmで、かつ顕微鏡法で測定した粒度分布の標準偏差が10nm以下であるアルミナが含まれており、
前記磁性層の表面を走査型電子顕微鏡により観察した視野像から求められる、前記アルミナの面積占有率が0.3〜1.0%で、かつその空間分布の標準偏差が3以下であることを特徴とする磁気記録媒体。 - 磁気抵抗効果型素子を利用した再生ヘッドによって磁気記録信号が再生される、請求項1記載の磁気記録媒体。
- 前記磁性塗料は二軸連続式混錬装置を使用して製造される、請求項1または2記載の磁気記録媒体。
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WO2007119628A1 (ja) * | 2006-03-31 | 2007-10-25 | Fujifilm Corporation | 磁気記録媒体、磁気信号再生システムおよび磁気信号再生方法 |
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-
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- 2002-06-07 JP JP2002167131A patent/JP2004014038A/ja active Pending
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