JP3963267B2 - 自動車用内装部品 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ドアトリム、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、トランクトリム、リヤサイドトリム等の自動車用内装部品に係り、特に、軽量化が図れ、廉価に製作できるとともに、付属部品取付部分の見栄えを向上させた自動車用内装部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、自動車用内装部品の構成をドアトリムを例示して図16,図17を基に説明する。ドアトリム1は、保形性及び車体パネルへの取付剛性を備えた樹脂芯材2の表面に、表面外観に優れた表皮3を積層一体化して構成されている。
【0003】
上記樹脂芯材2としては、タルクを混入したポリプロピレン系樹脂を素材としており、また、表皮3は、それ自体保形性を備えておらず、塩ビシート等の合成樹脂シート裏面にポリエチレンフォーム等のクッション材が積層された積層シート材料が使用され、最近では、環境面やリサイクル面を考慮して、TPO(サーモプラスチックオレフィン)シート等のエラストマーシートが多用される傾向にある。
【0004】
次に、上記ドアトリム1の成形方法における従来例について図18を基に説明する。まず、ドアトリム1を成形する成形金型4は、所定ストローク上下動可能な成形上型5と、成形上型5と対をなす固定側の成形下型6と、成形下型6と接続される射出機7とから大略構成されている。
【0005】
そして、成形上下型5,6を型締めした際、ドアトリム1の製品形状を形造るために成形上型5にはキャビティ部5aが形成され、成形下型6にはコア部6aが設けられている。上記、成形上型5を所定ストローク上下動作させるために、昇降シリンダ5bが連結され、成形下型6には射出機7からの溶融樹脂の通路となるマニホールド6b、ゲート6cが設けられている。
【0006】
また、上下動作する成形上型5は、適正姿勢を維持させるために、成形下型6の4隅部にガイドポスト6dが設けられ、このガイドポスト6dに対応して成形上型5にはガイドブッシュ5cが設けられている。
【0007】
従って、成形上下型5,6が型開き状態にあるとき、表皮3を金型内にセットし、その後、成形上下型5,6を型締めする直前か、または型締めした後のいずれかのタイミングで両金型間の製品キャビティ内に射出機7からマニホールド6b、ゲート6cを通じて溶融樹脂Mを射出充填することにより、樹脂芯材2を所要の曲面形状に成形するとともに、樹脂芯材2の表面に表皮3を一体成形している(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
尚、図18では、説明の便宜上、コア部6aの型面にオープン状態で溶融樹脂Mが供給されているが、上述したように、溶融樹脂Mは成形上下型5,6の型締め後にキャビティ内に射出充填されても良い。
【0009】
更に、ドアトリム1にインサイドハンドルエスカッション等の付属部品を取り付けるには、まず、図19に示すように、ピアスカット刃8により取付部分における樹脂芯材2及び表皮3にピアス加工を施し、図20に示すように、所定寸法の開口9aを開設する。その後、図21に示すように、この開口9aにインサイドハンドルエスカッション9を嵌着することでドアトリム1に各種付属部品を取り付けている。
【0010】
【特許文献1】
特開平10−138268号公報 (第2頁、図3、図4)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のドアトリム1においては、樹脂芯材2の投影面積が大きいため、材料コストが高く、かつ製品が重量化するという問題点が指摘されている。
【0012】
また、樹脂芯材2の投影面積が大きいことから、成形時における射出圧を高く設定せざるを得ず、高い射出圧に耐え得る金型構造が必要となり、金型の作製費用も嵩み、しかも、大量の溶融樹脂を冷却固化させるため、成形サイクルが長期化し、生産性を低下させる大きな要因となっている。
【0013】
更に、ドアトリム1に取り付けるインサイドハンドルエスカッション9等の付属部品は、開口9a内に嵌着固定されるため、開口9aの開口縁部に沿って切断木口(図中符合aで示す)が外部に目立ち、意匠性を低下させるという欠点が指摘されている。
【0014】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、軽量化を促進でき、高剛性でコストダウンを図れる自動車用内装部品を提供でき、加えて、インサイドハンドルエスカッション等の取付部分の見栄えを高めた自動車用内装部品を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究の結果、従来から表皮として使用していた発泡樹脂シートに保形性を付与することで、芯材としての機能をもたせ、より以上に剛性が必要な箇所、すなわち製品の周縁部分やパネル、あるいは部品取付箇所並びに荷重がかかる部位には、剛性に優れた樹脂リブを配置することで対応するとともに、特に、インサイドハンドルエスカッション等の付属部品取付箇所については、裏面側に向く凹部を設定し、かつ開口周縁部が薄肉となるように圧縮偏平状にすることで開口縁部の端末処理を美麗に達成できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本願発明に係る自動車用内装部品は、発泡樹脂シートを圧縮加工してなり、軽量で、かつ保形性を有する発泡樹脂基材と、この発泡樹脂基材の裏面に積層一体化される投影面積が低減化された所定パターンに沿う樹脂リブとを備えた内装トリム本体に付属部品を装着してなる自動車用内装部品において、前記発泡樹脂基材には、上記付属部品のうち少なくとも一つの部品を取り付けるための開口が開設されており、この開口は、発泡樹脂シートの圧縮加工時に開口予定部分が裏面側に向けて凹部状でかつ薄肉偏平状に成形され、発泡樹脂基材の薄肉偏平部分をカット加工処理することで開口縁部を圧縮偏平化することにより、開口縁部における切断木口が外部に露出することを規制したことを特徴とする。
【0017】
ここで、自動車用内装部品としては、ドアトリム、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、ラゲージトリム、トランクトリム、リヤサイドトリム等に適用できる。
【0018】
保形性を有する発泡樹脂基材は、フラット形状に近い場合は、加熱軟化工程を省略して、成形型により所望形状に成形するが、三次元形状の製品に適用する場合は、発泡樹脂シートを加熱軟化処理した後、成形金型内で所望の曲面形状に成形することで、その形状を保持する。また、製品形状が高展開率を含む場合には、発泡樹脂シートを加熱軟化処理した後、成形金型に真空吸引機構を配設して成形金型の内面に沿って発泡樹脂シートに真空吸引力を作用させるようにしても良い。
【0019】
上記発泡樹脂シートとしては、熱可塑性樹脂に発泡剤を添加した素材を使用する。尚、熱可塑性樹脂は、1種類の熱可塑性樹脂でも2種類以上の熱可塑性樹脂からなっても良い。好ましくは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂などが使用できる。
【0020】
また、発泡剤としては、アゾ化合物、スルホヒドラジド化合物、ニトロソ化合物、アジド化合物等の有機発泡剤、あるいは重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤の使用が可能である。
【0021】
上記発泡樹脂シートを加熱軟化処理後、所要形状に成形して得た発泡樹脂基材は、製品の重量と強度とのバランスを考慮した場合、2〜10倍の発泡倍率が好ましい。そのときの発泡樹脂基材のセル径は、0.1μm〜2.0mmの範囲であることが好ましく、厚みは0.5〜30mm、好ましくは1〜10mmのものが良い。
【0022】
一方、樹脂リブとして使用する熱可塑性樹脂材料は、広範な熱可塑性樹脂から適宜選択することができる。通常好ましく使用できるものとして、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アイオノマー系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂等が使用できる。
【0023】
また、これら熱可塑性樹脂中に各種充填剤を混入しても良い。使用できる充填剤としては、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維、タルク、クレイ、シリカ、炭酸カルシウム等の無機粒子などがある。また、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、低収縮剤等の各種の添加剤が配合されても良い。
【0024】
また、外観意匠性を高めるために、発泡樹脂基材の表面に表皮を積層一体化しても良い。上記表皮としては、織布、不織布、編布、シート、フィルム、発泡体、網状物などが使用できる。これら表皮を構成する材料は特に限定されないが、織布、不織布、編布等、通気性を有する素材を使用したほうが、発泡樹脂基材の室内騒音を吸音対象とした吸音性能を生かす上で好ましい。
【0025】
更に、内装トリム本体に装着される付属部品としては、インサイドハンドルエスカッション、プルハンドル、パワーウインドウスイッチフィニッシャー、ポケットエスカッション、スピーカグリル等が挙げられる。
【0026】
そして、上記付属部品を取り付けるために、発泡樹脂基材には開口が開設され、この開口が設けられる外周部分は、裏面側に向けて凹部状に形成されるとともに、開口縁部の切断木口を目立たなくさせるために圧縮偏平状に形成されている。
【0027】
従って、成形金型で発泡樹脂基材を成形した後、別のピアス金型で開口を開設しても良いが、成形金型にピアス機構を付設して、成形と同時に開口を設けるようにしても良い。
【0028】
そして、本願発明に係る自動車用内装部品によれば、保形性を有する発泡樹脂基材の裏面側に剛性を補強する意味で樹脂リブが積層一体化されるという構成であるため、従来の樹脂芯材を廃止することができる。従って、従来の投影面積の非常に広い樹脂芯材を廃止することで、製品の軽量化を図ることができ、しかも、樹脂材料を節約できることから、材料コストの低減化も同時に達成できる。
【0029】
更に、インサイドハンドルエスカッション等の付属部品を取り付ける開口が開設される外周部分は、裏面側に向けて凹部状に形成されるとともに、この開口縁部が薄肉となるように偏平状に圧縮加工されている。従って、開口縁部の切断木口の厚みが殆どないため、切断木口が外部に目立たないことから、良好な意匠性を確保できる。
【0030】
また、発泡樹脂基材の多孔質吸音機能により、車外騒音及び車内騒音を有効に吸音できる吸音性能に優れた積層構造体が得られるとともに、発泡樹脂基材及び樹脂リブの素材として、ポリオレフィン系樹脂を使用した場合、オールオレフィン系樹脂に統一されるため、分離工程が廃止でき、リサイクル作業を簡素化できる。
【0031】
更に、樹脂リブのリブ厚みは、例えば製品に外力が大きく加わる部位などはリブ厚みを厚く設定し、比較的外力が加わりにくい部位はリブ厚みを薄肉にするなど、リブ厚みを適宜可変させることができる。従って、必要最小限度の樹脂材料を使用すれば足り、製品の軽量化やコストダウンに寄与できる。また、樹脂リブにクリップ座、あるいは各種エスカッション部品を取り付けるための取付座や取付用ボスを一体に形成することもできる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る自動車用内装部品の好適な実施の形態について、自動車用ドアトリムを例示して説明する。
【0033】
図1乃至図10は本発明の第1実施形態を示し、図1は自動車用ドアトリムを示す正面図、図2は同自動車用ドアトリムの構成を示す断面図、図3は同自動車用ドアトリムにおける樹脂リブの形状を示す説明図、図4は同自動車用ドアトリムにおけるインサイドハンドルエスカッション取付部の構成を示す断面図、図5は同自動車用ドアトリムにおけるインサイドハンドルエスカッション取付部の構成の変形態様を示す断面図、図6は同自動車用ドアトリムの成形工程における発泡樹脂シートのセット工程を示す説明図、図7は同自動車用ドアトリムの成形工程を示す説明図、図8はインサイドハンドルエスカッション部分の成形状態を示す説明図、図9はインサイドハンドルエスカッション取付部分のピアス加工部分を示す説明図、図10はインサイドハンドルエスカッションの取付構造を示す説明図である。
【0034】
また、図11乃至図15は本発明の第2実施形態を示し、図11はインサイドハンドルエスカッション取付部分の構成を示す断面図、図12は発泡樹脂シート及び樹脂リブの成形工程の説明図、図13はピアス加工工程の説明図、図14はインサイドハンドルエスカッションの取付状態を示す説明図、図15は成形と同時にピアスカット処理を可能にした金型構成を示す説明図である。
【0035】
まず、図1乃至図3において、自動車用ドアトリム10の構成について説明する。
【0036】
本実施形態による自動車用ドアトリム10は、所望の曲面形状に成形されたドアトリム本体11に対して、インサイドハンドルエスカッション12を始めとして、ドアトリム本体11のアームレスト部13にパワーウインドウスイッチフィニッシャー14並びにプルハンドル15の付属部品が装着され、アームレスト部13の下側にポケット開口が開設され、このポケット開口16廻りにポケットエスカッション17が嵌め込み固定され、そのフロント側にスピーカグリル18が取り付けられている。
【0037】
更に詳しくは、図2に示すように、ドアトリム本体11は、所望の曲面形状に成形され、保形性を有する発泡樹脂基材20と、この発泡樹脂基材20の裏面側に積層一体化される樹脂リブ30と、発泡樹脂基材20の表面側に積層一体化される加飾機能をもつ表皮21とから大略構成されている。
【0038】
また、上記発泡樹脂基材20は、保形性を備えるように発泡樹脂シートを加熱軟化処理後、所要形状に熱成形、例えば、所望の型面を有する成形金型でコールドプレス成形されるが、更に高展開率部分については、真空成形により発泡樹脂基材20を賦形しても良い。尚、ジャッキリッド等のリッド部品のようなフラット形状の部品においては、発泡樹脂シートに加熱軟化処理を行なわずにフラット形状に成形することができる。
【0039】
上記発泡樹脂シートは、汎用の熱可塑性樹脂に発泡剤を添加した構成であり、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等が使用でき、発泡剤としては、アゾジカルボンアミド等の有機発泡剤や重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤が使用できる。この実施形態では、ポリプロピレン系樹脂に発泡剤として重炭酸ナトリウムを適宜添加した発泡樹脂シートを使用している。また、この発泡樹脂基材20の発泡倍率は、2〜10倍に設定され、厚みは0.5〜30mm、特に1〜10mmの範囲に設定されている。
【0040】
次いで、樹脂リブ30は、発泡樹脂基材20の裏面側に配設され、特に、図3に示すように、縦横方向に延びる格子状パターンに設定されている。この樹脂リブ30は、汎用の合成樹脂成形体からなり、通常好ましく使用できる合成樹脂として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アイオノマー系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂等から適宜選択されて良く、本実施形態では、環境面、リサイクル面を考慮してポリプロピレン系樹脂が使用されている。
【0041】
また、この樹脂リブ30には、上記熱可塑性樹脂中に適宜フィラー、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維や、タルク、クレイ、シリカ、炭酸カルシウム等の無機粒子等の充填剤が混入されていても良い。
【0042】
更に、本実施形態においては、ドアトリム本体11の剛性強化部分には、樹脂リブ30の本数を多く設定するという構成を採用しているが、ドアトリム本体11の外周縁に沿って外周リブを設定し、この外周リブ同士を橋渡しリブで連接するという樹脂リブ30の構成を採用しても良い。そして、外周リブを設けた場合には、ドアトリム本体11の形状保持性を良好に維持できるとともに、車体パネルや相手部品との合わせ管理を精度良く行なえる。
【0043】
このように、ドアトリム本体11は、保形性を有する発泡樹脂基材20と、発泡樹脂基材20の裏面に積層一体化される樹脂リブ30と、加飾性を有する表皮21とから構成されているため、従来のように製品の全面に亘り占有していた樹脂芯材を廃止でき、かつ軽量な発泡樹脂基材20を使用する関係で、製品の重量について、従来例に比し40%以上の軽量化を図ることができるとともに、樹脂材料も大幅に節約でき、コストダウンにも貢献できる。
【0044】
更に、発泡樹脂基材20は、多孔質構造であるため、ドアトリム本体11は、吸音性能に優れ、車室内外の騒音を低減することができる。また、発泡樹脂基材20の特に車室内騒音を対象とした吸音性能を高めるために、発泡樹脂基材20の表面に積層一体化される表皮21は、織布、不織布、編布等の通気性を備えたシート材料が好ましい。尚、表皮21は、織布、不織布、編布等の通気性シート以外にも塩ビシートやTPOシート等の合成樹脂シート、合成樹脂フィルム、発泡体、網状体等を使用することができる。尚、TPOシートを使用すれば、使用材料をポリオレフィン系樹脂で統一できるため、リサイクルが容易に行なえる。
【0045】
次にドアトリム本体11に取り付けられるインサイドハンドルエスカッション12の取付構造について、図4を基に説明する。上記ドアトリム本体11は、インサイドハンドルエスカッション12を取り付けた際、ドアトリム本体11の製品表面と、インサイドハンドルエスカッション12の表面とがほぼ面一状となるように、インサイドハンドルエスカッション12の厚み寸法に相当する凹部がドアトリム本体11に形成されており、更に、インサイドハンドルエスカッション12を嵌着するための開口22が発泡樹脂基材20及び表皮21に開設されている。
【0046】
そして、この開口22の開口縁部22aが薄肉状となるように圧縮加工されている。すなわち、開口22の縁部に沿う切断木口は、図中符号dで示す厚み寸法を備えた薄肉状に圧縮加工されているため、外部からこの切断木口が見えることがないため、インサイドハンドルエスカッション12周縁部の体裁が良好に保たれている。また、切断木口とインサイドハンドルエスカッション12の間隔(図中符号cで示す)を狭くすることで切断木口を見えなくしているため、より体裁を良いものにしている。
【0047】
更に、図5に示すように、開口22の外周部に沿う開口縁部22aを薄肉状に圧縮加工する際、発泡樹脂基材20の裏面はフラット面を維持して製品表面側だけを窪ませるように図中符合dで示す薄肉部を開口縁部22aに沿って設けるようにしても良い。
【0048】
次いで、図6乃至図10に沿って、上記ドアトリム10の製造方法の概要について、順を追って説明する。図6において、ドアトリム10の成形に使用する成形金型40は、所定ストローク上下動可能な成形上型41と、成形上型41と対をなす固定側の成形下型42と、成形下型42に接続される射出機43とから大略構成されている。
【0049】
更に詳しくは、成形上型41は、製品形状に合致したキャビティ部411が形成されており、成形上型41の上面に連結された昇降シリンダ412により所定ストローク上下駆動される。また、成形上型41の4隅部には、ガイド機構となるガイドブッシュ413が設けられている。
【0050】
一方、成形下型42には、成形上型41のキャビティ部411に対応するコア部421が設けられている。また、このコア部421の型面に溶融樹脂を供給するために、マニホールド422、ゲート423が設けられており、このマニホールド422、ゲート423の樹脂通路を経て射出機43から供給される溶融樹脂Mがコア部421上面の溝部424に供給される。
【0051】
また、成形下型42の4隅部には、ガイド機構となるガイドポスト425が突設され、このガイドポスト425は、成形上下型41,42が型締めされる際、ガイドブッシュ413内に案内されることで成形上型41のプレス姿勢を適正に維持できる。
【0052】
まず、加熱軟化処理した発泡樹脂シートS(表皮21をラミネートしている)を成形金型40内にセットする。この実施形態では、発泡樹脂シートSとして、ポリプロピレン製発泡シート(住化プラステック製、商品名:スミセラー発泡PPシート、発泡倍率=3倍、厚み2mm)が使用され、図示しないヒーター装置により、発泡樹脂シートSが130℃に加熱軟化処理された状態で成形上下型41,42内に供給される。
【0053】
そして、発泡樹脂シートSをセットした後、成形上型41の昇降シリンダ412が動作して、図7に示すように、成形上型41が所定ストローク下降して、成形上下型41,42が型締めされて、発泡樹脂シートSが所望の型面形状に沿って賦形され、発泡樹脂基材20が成形されるとともに、射出機43からマニホールド422、ゲート423を通じて成形下型42におけるコア部421に設けた溝部424に溶融樹脂Mが射出充填され、樹脂リブ30が発泡樹脂基材20の内面側に一体成形される。この溶融樹脂Mとしては、住友ノーブレンAX568(住友化学工業製ポリプロピレン、メルトインデックス=65g/10分)でタルクが適宜割り合いで混入されている。尚、溶融樹脂Mの射出のタイミングを成形上下型41,42の型締め前に設定しても良い。
【0054】
このとき、ドアトリム本体11におけるインサイドハンドルエスカッション12取付部位の成形状態を図8(a)に示すように、成形上型41には凸部50、成形下型42には凹部51が形成され、凹部51の深さ寸法に対して凸部50の突出寸法が大きく設定されている関係で、図8(b)に示すように、発泡樹脂基材20及び表皮21を成形上下型41,42で絞り成形した際、孔開け加工される開口予定部分は、図中符号dで示す薄肉偏平状に圧縮加工されることになる。
【0055】
そして、図9に示すように、ピアスカット刃60により、開口の外形寸法に応じたピアスカット処理が行なわれ、発泡樹脂基材20及び表皮21に開口22が開設される。
【0056】
更に、図10に示すように、発泡樹脂基材20の裏面側からインサイドハンドルエスカッション12を開口22内に嵌め込んで取り付ければ良いため、インサイドハンドルエスカッション12取付部分が凹部状に成形され、かつ開口22の縁部22aに沿う切断木口が偏平状に設定されているため、切断木口が外部に目立たず、インサイドハンドルエスカッション12廻りの意匠性を良好に維持できる。また、切断木口とインサイドハンドルエスカッション12の間隔(図4中符合cで示す)を狭くすることで、切断木口をより見えなくできる。
【0057】
次いで、図11乃至図15は、本発明の第2実施形態を示すもので、この第2実施形態についてもドアトリム10を適用し、特に、インサイドハンドルエスカッション12取付部分の構成について説明する。第2実施形態においては、図11に示すように、インサイドハンドルエスカッション12取付部分(開口22開設部位)における発泡樹脂基材20は凹部状に成形され、かつ開口22の縁部22aは偏平状に圧縮加工されていることは第1実施形態と同一構成であるが、この第2実施形態においては、発泡樹脂基材20の裏面側に積層一体化される補強機能をもつ樹脂リブ30にインサイドハンドルエスカッション12の取付機能を併用させたことが特徴である。
【0058】
すなわち、開口22のやや外側に沿って複数の取付用ボス31を樹脂リブ30と一体に立設し、この取付用ボス31にインサイドハンドルエスカッション12の取付孔12aを挿入させた後、取付用ボス31の先端を溶着加工によりカシメることで、インサイドハンドルエスカッション12の取り付けを完了している。尚、取付用ボス31の溶着固定に代えて、ビスによりインサイドハンドルエスカッション12を取り付けるようにしても良い。
【0059】
従って、この第2実施形態においては、インサイドハンドルエスカッション12廻りの発泡樹脂基材20が偏平状に圧縮加工されているため、切断木口が目立たず、体裁が良いとともに、補強機能をもつ樹脂リブ30に取付用ボス31を介してインサイドハンドルエスカッション12を支持固定するため、インサイドハンドルエスカッション12の支持強度を高めることができるという効果がある。
【0060】
次に、図11に示すインサイドハンドルエスカッション12の取付構造の作業手順について、順を追って図12乃至図14を基に説明する。図12は、第2実施形態におけるドアトリムの成形工程を示すもので、溶融樹脂Mの充填前の状態を示している。すなわち、インサイドハンドルエスカッション12取付部分における成形金型40には、成形上型41に凸部50が形成され、これと対応する成形下型42には凹部51が形成され、凹部51の深さ寸法に対して凸部50の突出寸法を大きく設定することで、開口22の開設予定部分が偏平状に圧縮加工されることは第1実施形態と同一である。
【0061】
更に、これに加えて、ゲート423から樹脂リブ30の溶融樹脂Mが供給されるが、樹脂リブ30のパターンに対応する溝部424と連接するピン孔426が開口22予定箇所の外周に沿って複数箇所に所定ピッチ間隔で設けられている。
【0062】
従って、ゲート423を通じて溝部424内に供給される溶融樹脂は、一部がピン孔426内に注入されることで、樹脂リブ30と一体に取付用ボス31が形成されることになる。
【0063】
その後、図13に示すように、ピアスカット刃60によりインサイドハンドルエスカッション12を取り付ける開口22を形成するようにピアスカット処理がなされ、その後、図14に示すように、インサイドハンドルエスカッション12を開口22内に発泡樹脂基材20の背面側から嵌め込み、更にインサイドハンドルエスカッション12の取付孔12aに取付用ボス31を挿入し、取付用ボス31の先端31aに熱溶着カシメ加工を施すことでドアトリム本体11にインサイドハンドルエスカッション12を確実かつ簡単に取り付けることができる。
【0064】
従って、この第2実施形態においては、インサイドハンドルエスカッション12周縁部分の見栄えが向上するとともに、樹脂リブ30に一体化した取付用ボス31を利用することでインサイドハンドルエスカッション12を強固に支持することができ、頻繁に操作を繰り返してもガタツクことがなく、機能性を高めることができるという利点がある。
【0065】
次いで、図15は、第2実施形態の変形例を示すもので、成形金型40における成形上型41にカット刃60を付設した構成である。すなわち、成形上型41における凸部50にピアスカット刃60が付設されており、成形下型42には、ピアスカット刃60対応位置にパット61が埋設されている。従って、カット機構を付設した成形金型40を使用することで加工工数が低減でき、製品歩留まりを向上させることができるという利点がある。
【0066】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明に係る自動車用内装部品は、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材と、この発泡樹脂基材の裏面でかつ製品の外周縁など剛性が要求される部位に積層一体化される樹脂リブとから構成されるため、従来の重量の嵩む樹脂芯材を廃止できることから、軽量で低コスト、しかも、多孔質素材であるため、吸音性能に優れた自動車用内装部品を提供できるという作用効果を有する。
【0067】
更に、成形金型のキャビティ形状に沿って、発泡樹脂基材を所要形状に成形すると同時に発泡樹脂基材の裏面側に樹脂リブを成形するという工程を採用すれば、樹脂成形体である樹脂リブの投影面積が少ないため、従来の樹脂芯材に比べ、成形金型にかかる負荷も少なく、かつ冷却時間も短縮化でき、歩留まりを高めることができることから、作業能率を高めることができるとともに、大幅なコストダウンを招来できるという作用効果を有する。
【0068】
更に、本発明に係る自動車用内装部品は、インサイドハンドルエスカッション等の付属部品取付部位における開口の外周部は、裏面側に向く凹部状に形成されるとともに、偏平状に圧縮加工が施されているため、切断木口が外部に目立つことがなく、付属部品と周縁部の外観見栄えを高めることができるという作用効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る自動車用内装部品を適用した自動車用ドアトリムの第1実施形態を示す正面図である。
【図2】図1中II−II線断面図である。
【図3】図1に示すドアトリムにおける樹脂リブの配設パターンを示す説明図である。
【図4】図1中IV−IV線断面図であり、インサイドハンドルエスカッション取付部の構成を示す断面図である。
【図5】図1に示すドアトリムにおけるインサイドハンドルエスカッション取付部の変形態様を示す断面図である。
【図6】図1に示すドアトリムの製造方法における発泡樹脂シートのセット工程を示す説明図である。
【図7】図1に示すドアトリムの製造方法における発泡樹脂基材並びに樹脂リブの成形工程を示す説明図である。
【図8】図1に示すドアトリムにおけるインサイドハンドルエスカッション取付部の圧縮加工を示す説明図である。
【図9】図1に示すドアトリムにおけるインサイドハンドルエスカッション取付部におけるピアスカット工程を示す説明図である。
【図10】図1に示すドアトリムにおけるインサイドハンドルエスカッションの取付態様を示す説明図である。
【図11】本発明をドアトリムに適用した第2実施形態におけるインサイドハンドルエスカッション取付部の構成を示す説明図である。
【図12】図11に示すインサイドハンドルエスカッション取付部のドアトリム本体の構成を示す説明図である。
【図13】図11に示すインサイドハンドルエスカッション取付構造における開口のピアスカット工程を示す説明図である。
【図14】図11に示すインサイドハンドルエスカッションの取付構造における取付作業を示す説明図である。
【図15】図11に示すインサイドハンドルエスカッションの取付構造に採用する成形金型の変形例の構成を示す説明図である。
【図16】従来のドアトリムを示す正面図である。
【図17】図16中XVII −XVII 線断面図である。
【図18】従来のドアトリムのモールドプレス成形工法を示す説明図である。
【図19】従来のドアトリムにおけるピアスカット工程を示す説明図である。
【図20】従来のピアスカット工程においてドアトリム本体に開口を開設した状態を示す説明図である。
【図21】従来のドアトリムの開口にインサイドハンドルエスカッションを取り付けた状態を示す説明図である。
【符号の説明】
10 自動車用ドアトリム
11 ドアトリム本体
12 インサイドハンドルエスカッション
13 アームレスト部
14 パワーウインドウスイッチフィニッシャー
15 プルハンドル
16 ポケット開口
17 ポケットエスカッション
18 スピーカグリル
20 発泡樹脂基材
21 表皮
22 開口
30 樹脂リブ
31 取付用ボス
40 成形金型
41 成形上型
42 成形下型
43 射出機
50 凸部
51 凹部
60 ピアスカット刃
S 発泡樹脂シート
M 溶融樹脂
d 切断木口の厚み寸法
c 切断木口と取付部品との間隔

Claims (2)

  1. 発泡樹脂シート(S)を圧縮加工してなり、軽量で、かつ保形性を有する発泡樹脂基材(20)と、この発泡樹脂基材(20)の裏面に積層一体化される投影面積が低減化された所定パターンに沿う樹脂リブ(30)とを備えた内装トリム本体(11)に付属部品(12,14,15,17,18)を装着してなる自動車用内装部品(10)において、
    前記発泡樹脂基材(20)には、上記付属部品(12,14,15,17,18)のうち少なくとも一つの部品(12)を取り付けるための開口(22)が開設されており、この開口(22)は、発泡樹脂シート(S)の圧縮加工時に開口予定部分が裏面側に向けて凹部状でかつ薄肉偏平状に成形され、発泡樹脂基材(21)の薄肉偏平部分をカット加工処理することで開口縁部(22a)を圧縮偏平化することにより、開口縁部(22a)における切断木口が外部に露出することを規制したことを特徴とする自動車用内装部品。
  2. 前記発泡樹脂基材(20)に設けられる開口縁部(22a)の外周に沿う樹脂リブ(30)にボス(31)が立設され、このボス(31)に付属部品(12,14,15,17,18)のうち少なくとも一つの部品(12)が固定されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用内装部品。
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