図16は、上下二分割構造の自動車用ドアトリム1を示す正面図であり、図17は、同自動車用ドアトリム1の構成を示す断面図である。図面において、自動車用ドアトリム1は、ドアトリムアッパー2とドアトリムロア3とから構成されている。そして、ドアトリムアッパー2は、所望の曲面形状に成形された樹脂芯材2aの表面に表皮2bを貼着した積層構造体からなり、モールドプレス成形工法、あるいはコールドプレス成形工法等により、樹脂芯材2aと表皮2bとが一体成形されている。
また、ドアトリムロア3は、ドアトリム1のフロント側及びリア側に沿って上方に向けて延びるフロントエンド部3a,リヤエンド部3bが一体化された合成樹脂の射出成形体から構成され、ドアトリムアッパー2とドアトリムロア3との接合構造については、図17に示すように、ドアトリムアッパー2における樹脂芯材2aに取付用ボス2cを立設し、この取付用ボス2cをドアトリムロア3に設けた取付孔3c内に挿入して、取付用ボス2cの先端を超音波溶着カシメ等で溶着固定することにより、両者の一体化が達成される。
上記ドアトリムアッパー2の成形方法について、図18を基に説明する。まず、ドアトリムアッパー2を成形する成形金型4は、所定ストローク上下動可能な成形上型5と、成形上型5と対をなす固定側の成形下型6と、成形下型6と接続される射出機7とから大略構成されている。
そして、成形上下型5,6を型締めした際、ドアトリムアッパー2の製品形状を形造るために成形上型5にはキャビティ部5aが形成され、成形下型6にはコア部6aが設けられている。上記成形上型5を所定ストローク上下動作させるために、昇降シリンダ5bが連結され、成形下型6には射出機7からの溶融樹脂の通路となるマニホールド6b、ゲート6cが設けられている。また、上下動作する成形上型5は、適正姿勢を維持させるために、成形下型6の4隅部にガイドポスト6dが設けられ、このガイドポスト6dに対応して成形上型5にはガイドブッシュ5cが設けられている。
従って、成形上下型5,6が型開き状態にあるとき、表皮2bを成形金型4内にセットし、その後、成形上下型5,6を型締めする直前か、又は型締めした後のいずれかのタイミングで両金型間の製品キャビティ内に射出機7からマニホールド6b、ゲート6cを通じて溶融樹脂Mを射出充填することにより、樹脂芯材2aを所要の曲面形状に成形するとともに、樹脂芯材2aの表面に表皮2bを一体成形している(例えば、特許文献1参照。)。
尚、図18では、説明の便宜上、コア部6aの型面にオープン状態で溶融樹脂Mが供給されているが、実際は、溶融樹脂Mは成形上下型5,6の型締め後にキャビティ内に射出充填されても良い。
特開平10−138268号公報 (第2頁、図3、図4)
このように、従来の自動車用ドアトリム1にあっては、ドアトリムアッパー2における樹脂芯材2aの投影面積が大きいため、材料コストが高く、かつ製品が重量化するという問題点が指摘されている。
また、樹脂芯材2aの投影面積が大きいことから、成形時における射出圧を高く設定せざるを得ず、高い射出圧に耐え得る金型構造が必要となり、金型の製作費用も嵩み、しかも、大量の溶融樹脂を冷却固化させるため、成形サイクルが長期化することから、生産性を低下させる大きな要因となっている。
更に、図19に示すように、ドアトリムアッパー2にインサイドハンドルエスカッション等の付属部品を取り付けるための取付孔を開設するピアス工程で、ピアス用治具8aにドアトリムアッパー2をセットして、カット刃8によりピアスカット加工を施す際、ドアトリムアッパー2における樹脂芯材2aには、取付用ボス2cが立設されているため、ピアス用治具8aに取付用ボス2cを逃げるための逃げ孔8bを設ける必要があり、ピアス用治具8aの加工が面倒であり、トータル面での製作コストを高騰化させるという問題点が指摘されている。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、積層構造体と樹脂成形体とを接合してなる自動車用内装部品であって、軽量で、かつ合わせ部分の剛性を強化することができるとともに、合わせ部分の見栄えを高め、しかも、低コストで製作できる自動車用内装部品を提供することを目的とする。
上記課題を達成するために、本発明は、所要形状に成形され、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材の裏面に所定パターン形状の樹脂リブを積層一体化してなる積層構造体と、所要形状に成形された樹脂成形体とを接合してなる自動車用内装部品であって、前記積層構造体と樹脂成形体の接合部に沿って、積層構造体の周縁部に上記樹脂リブと連接する補強プレートが配設され、この補強プレート上に樹脂成形体の端縁部が重合支持され、補強プレートに沿って設定された少なくとも一箇所の固定ポイントで上記積層構造体と樹脂成形体とが接合固定されていることを特徴とする。
ここで、自動車用内装部品としては、積層構造体と樹脂成形体とを接合してなる2色成形品であればその用途は問わず、例えば、ドアトリム、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、ラゲージトリム、トランクトリム、リヤサイドトリム等に適用できる。
更に、積層構造体は、所望の曲面形状に成形され、軽量で保形性を有する発泡樹脂基材と、この発泡樹脂基材の裏面に積層一体化される所定パターン形状の樹脂リブとから構成されているが、上記発泡樹脂基材は、フラット形状に近い場合は、加熱軟化工程を省略して、成形型により所望形状に成形するが、三次元形状の製品に適用する場合は、発泡樹脂シートを加熱軟化処理した後、成形金型内で所要の曲面形状に成形することで、その形状を保持する。尚、ここでいう「保形性」とは、リブ等の補強材がなくても、成形後脱型したとき、その形状を保持する程度の剛性を備えていることである。また、製品形状が高展開率部分を含む場合には、発泡樹脂シートを加熱軟化処理した後、成形金型に真空吸引機構を配設して成形金型の内面に沿って発泡樹脂シートに真空吸引力を作用させるようにしても良い。
上記発泡樹脂シートとしては、熱可塑性樹脂に発泡剤を添加した素材を使用する。尚、熱可塑性樹脂は、1種類の熱可塑性樹脂でも2種類以上の熱可塑性樹脂からなっても良い。好ましくは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が使用できる。
また、発泡剤としては、アゾジカルボンアミド等のアゾ化合物の他に、スルホヒドラジド化合物、ニトロソ化合物、アジド化合物等の有機発泡剤、あるいは重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤の使用が可能である。上記発泡樹脂シートを加熱軟化処理後、所要形状に成形して得た発泡樹脂基材は、製品の重量と強度とのバランスを考慮した場合、2〜10倍の発泡倍率が好ましい。そのときの発泡樹脂基材のセル径は、0.1μm〜2.0mmの範囲であることが好ましく、厚みは0.5〜30mm、好ましくは1〜10mmのものが良い。
一方、樹脂リブとして使用する熱可塑性樹脂材料は、広範な熱可塑性樹脂から適宜選択することができる。通常好ましく使用できるものとして、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が使用できる。
また、これら熱可塑性樹脂中に各種充填剤を混入しても良い。使用できる充填剤としては、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維、タルク、クレイ、シリカ、炭酸カルシウム等の無機粒子などがある。また、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、低収縮剤等の各種の添加剤が配合されても良い。
そして、外観意匠性を高めるために、発泡樹脂基材の表面に加飾材を積層しても良い。この加飾材としては、織布、不織布、編布、シート、フィルム、発泡体、網状物などが使用できる。これら加飾材を構成する材料は特に限定されないが、織布、不織布、編布等、通気性を有する素材を使用したほうが、発泡樹脂基材の吸音性能を生かす上で好ましい。また、加飾材としてTPO(サーモプラスチックオレフィン)シート、あるいはポリオレフィン系樹脂フォームを裏打ちしたTPOシートを使用し、かつ発泡樹脂基材及び樹脂リブの素材としてオレフィン系樹脂を使用すれば、材料をオレフィン系樹脂に統一できることから、リサイクル作業を円滑に行なえる。
次いで、樹脂成形体としての材料は、積層構造体における樹脂リブ同様、広範な熱可塑性樹脂から適宜選択することができる。また、樹脂成形体は、合成樹脂単体品を使用する場合は、製品表面として現われるため、適切な顔料が混入され、かつ製品表面に絞模様等を刻設するのが好ましいが、樹脂成形体の表面に手触り感の良好な加飾材を適宜貼付することもできる。
そして、積層構造体と樹脂成形体との接合部については、両者の接合部に沿って積層構造体における樹脂リブと連接するように、補強プレートが設定され、この補強プレートの上面に樹脂成形体の接合端縁部が重ね合わされて、両者が固定される。すなわち、補強プレートに積層構造体と樹脂成形体との固定ポイントが設定されていることになる。
従って、本発明に係る自動車用内装部品によれば、積層構造体の構成として、軽量な発泡樹脂基材とその裏面側に所定パターン形状の樹脂リブを配設するという構造であるため、従来の重量の嵩む樹脂芯材を廃止することで軽量化並びに材料の節約が可能となる。
更に、積層構造体と樹脂成形体との接合部の構造としては、積層構造体の縁部に沿って樹脂リブと連接する補強プレートが一体化されており、この補強プレート上に樹脂成形体の接合端縁部が重ね合わされて固定されるため、接合部の剛性が強化され、外部から応力が加わったり、また、環境温度の変動による熱収縮等によっても変形したりすることがない。
次いで、本発明に係る自動車用内装部品の好ましい実施の態様としては、前記積層構造体の補強プレートに取付孔が開設されるとともに、樹脂成形体の接合縁部の裏面には、取付用ボスが立設され、上記取付用ボスの先端を補強プレートの取付孔内に挿入固定することで、積層構造体と、樹脂成形体とが接合されていることを特徴とする。
そして、この実施の態様によれば、積層構造体にピアスカット加工を施す際、取付孔を同時に開設でき、ピアスカット加工における作業性に優れるとともに、取付用ボス等が形成されないため、ピアスカット時におけるピアス用治具の構造を簡素化できる。
加えて、本発明に係る自動車用内装部品の好ましい実施の態様は、前記自動車用内装部品は、車両の側壁パネルに内装されるとともに、前記積層構造体に設定される補強プレートは、乗員からの荷重が加わり易いウエスト部、あるいはアームレスト部の少なくとも一方側に設けられていることを特徴とする。
従って、この実施の態様によれば、補強プレートとして乗員からの荷重が加わり易いウエスト部、あるいはアームレスト部等に設定したから、これらウエスト部、あるいはアームレスト部に乗員から下向き荷重を加えても、変形することがない。
以上説明した通り、本発明に係る自動車用内装部品は、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材の裏面に所定パターン形状の樹脂リブを一体化してなる積層構造体と、所要形状に成形された樹脂成形体とを接合してなる自動車用内装部品において、積層構造体の軽量化を図ることで、トータル面での製品の軽量化が図れ、車体への取付作業性並びに燃費効率を向上させることができるという効果を有する。
更に、本発明に係る自動車用内装部品は、発泡樹脂基材と樹脂リブとからなる積層構造体と樹脂成形体との接合部に沿って、積層構造体における樹脂リブと一体化する補強プレートを延設し、この補強プレート上に樹脂成形体の接合端縁部を重ね合わせて、補強プレートに沿って少なくとも一箇所の固定ポイントを設定するという構成であるため、接合部分における剛性を強化でき、変形を可及的に防止できることから、初期形状を長期に亘り維持できるという効果を有する。
また、本発明に係る自動車用内装部品において、積層構造体の周縁部に設けた補強プレートに取付孔を開設し、樹脂成形体側にこの取付孔に挿入固定する取付用ボスを設定するという構成を採用すれば、積層構造体にピアスカット加工を施す際、上記取付孔を一般の開口と同時に開設でき、ピアスカット加工における作業性に優れるとともに、ピアス用治具に従来の取付用ボスを逃げるための逃げ孔等を加工する必要がなく、ピアス用治具の構造を簡素化でき、低コストに製作できるという効果を有する。
図1乃至図8は本発明の第1実施例を示すもので、図1は本発明に係る自動車用内装部品を自動車用ドアトリムに適用した正面図、図2は同自動車用ドアトリムの構成を示す断面図、図3は同ドアトリムにおける発泡樹脂基材を省略して樹脂リブと補強プレートのパターンを示す正面図、図4は同ドアトリムにおけるドアトリムアッパーとドアトリムロアの接合部分の構成を示す断面図である。また、図5は同ドアトリムにおけるドアトリムアッパーを成形する際に使用する成形金型の全体図、図6はドアトリムアッパーのピアスカット加工工程を示す説明図、図7はドアトリムアッパーとドアトリムロアとの接合作業要領を示す説明図、図8は第1実施例の変形例を示すドアトリムの正面図である。
図1乃至図3において、ツートンタイプの自動車用ドアトリム10は、積層構造体からなるドアトリムアッパー20と樹脂単体品からなるドアトリムロア30との二分割体から構成されている。上記ドアトリム10に装着される機能部品としては、ドアトリムアッパー20にインサイドハンドルエスカッション11が取り付けられており、ドアトリムロア30には、ドアトリムアッパー20とドアトリムロア30との接合部の下方に室内側に膨出するアームレスト部12が形成され、更に、このアームレスト部12の下方にドアポケット13が設けられ、その前方側にスピーカグリル14が一体、あるいは別体に設けられている。尚、ドアトリムロア30は、ドアトリムアッパー20の両側縁に沿って上方に延びるフロントエンド部31及びリヤエンド部32が一体に設けられている。
ところで、本発明に係る自動車用ドアトリム10は、積層構造体であるドアトリムアッパー20の軽量化を図るとともに、ドアトリムアッパー20とドアトリムロア30との接合部の見栄えや合わせ精度を高め、かつ工数の短縮化並びに金型設備の簡素化を推し進めることが特徴である。
すなわち、ドアトリムアッパー20は、図2に示すように、所望の曲面形状に成形され、保形性を有する発泡樹脂基材21と、この発泡樹脂基材21の裏面側に積層一体化される樹脂リブ22と、発泡樹脂基材21の表面側に積層一体化される加飾機能をもつ加飾材23とから大略構成されている。また、上記発泡樹脂基材21は、保形性を備えるように発泡樹脂シートを加熱軟化処理後、所要形状に熱成形、例えば、所望の型面を有する成形金型でコールドプレス成形されるが、更に高展開率部分については、真空成形により発泡樹脂基材21を賦形しても良い。
上記発泡樹脂シートは、汎用の熱可塑性樹脂に発泡剤を添加した構成であり、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が使用でき、発泡剤としては、アゾジカルボンアミド等の有機発泡剤や重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤が使用できる。この第1実施例では、ポリプロピレン系樹脂に発泡剤として重炭酸ナトリウムを適宜添加した発泡樹脂シートを使用している。また、この発泡樹脂基材21の発泡倍率は、2〜10倍に設定され、厚みは0.5〜30mm、特に1〜10mmの範囲に設定されている。
次いで、樹脂リブ22は、発泡樹脂基材21の裏面側に配設され、特に、図4に示すように、交差状に延びる所定パターン形状に設定されている。尚、このパターンは、縦横方向、斜め方向、あるいはその組み合わせ等、交差状であれば任意のパターンが選択されて良い。この樹脂リブ22は、汎用の合成樹脂成形体からなり、通常好ましく使用できる合成樹脂として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート系樹脂等から適宜選択されて良く、第1実施例では、環境面、リサイクル面を考慮してポリプロピレン系樹脂が使用されている。
また、この樹脂リブ22には、上記熱可塑性樹脂中に適宜フィラー、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維や、タルク、クレイ、シリカ、炭酸カルシウム等の無機粒子などの充填剤が混入されていても良い。更に、樹脂リブ22は、骨状であり、荷重の加わる部位、例えばクリップ座、ウエスト部上面、アームレスト部上面等を除いた部位は、肉抜き構造となっている。
このように、図1乃至図4に示すドアトリム10は、積層構造体からなるドアトリムアッパー20と、樹脂単体品のドアトリムロア30とから構成され、外観上のアクセント効果により、優れた外観意匠性を備えていることに加えて、ドアトリムアッパー20は、保形性を有する発泡樹脂基材21と、発泡樹脂基材21の裏面に積層一体化される樹脂リブ22と、加飾性を有する加飾材23とから構成されているため、従来のように製品の全面に亘り占有していた樹脂芯材を廃止でき、かつ軽量な発泡樹脂基材21を使用する関係で、製品の重量について、従来例に比し軽量化を図ることができるとともに、樹脂材料も節約でき、コストダウンにも貢献できる。
更に、発泡樹脂基材21は、多孔質構造であるため、ドアトリムアッパー20は、吸音性能に優れ、車室内の騒音を低減することができる。また、発泡樹脂基材21の吸音性を維持するために、発泡樹脂基材21の表面に予めラミネートされるか、又は成形時に一体化される加飾材23は、織布、不織布、編布等の通気性を備えたシート材料が好ましい。尚、加飾材23は、織布、不織布、編布等の通気性シート以外にも塩ビシートやTPOシート等の合成樹脂シート、合成樹脂フィルム、発泡体、網状体を使用することができる。尚、TPOシート、あるいはポリエチレンフォーム等のポリオレフィン系樹脂フォームを裏打ちしたTPOシートを使用した場合、発泡樹脂基材21、樹脂リブ22としてポリオレフィン系樹脂を使用すれば、オレフィン系樹脂材料で統一できるため、リサイクル面で有利である。
一方、樹脂単体品からなるドアトリムロア30は、汎用の合成樹脂の成形体であり、上記樹脂リブ22と同一素材、あるいは異なる樹脂素材が使用できるが、成形効率を考慮すれば、同一素材を使用することが好ましい。
次に、本発明に係るドアトリム10におけるドアトリムアッパー20とドアトリムロア30との接合部Aにおける構造を図3,図4を基に説明する。この接合部Aについては、ドアトリムアッパー20とドアトリムロア30のそれぞれ裏面に跨るように補強プレート24が樹脂リブ22と連接形成され、この補強プレート24は、ドアトリムアッパー20の周縁形状を良好に維持するとともに、その上面に重ね合わされるドアトリムロア30の端縁部を強固に支持できるように、補強プレート24に沿って複数の固定ポイントPが設定されている。
また、この第1実施例においては、ドアトリムアッパー20とドアトリムロア30との接合構造は、補強プレート24に取付孔25が開設され、この取付孔25内にドアトリムロア30の裏面から下方に向けて突設する取付用ボス33を挿入して、取付用ボス33の先端33aを超音波溶着カシメすることにより、図4に示すように両者は固定されている。
従って、剛性に富む補強プレート24に取付用ボス33を超音波溶着加工を施すことにより固定するという構造を採用したため、取付用ボス33の抜け方向に外力が加わっても、取付孔25が拡開変形したり、引裂したりすることがないことから、ドアトリムアッパー20とドアトリムロア30とを強固に接合固定できる。
この補強プレート24は、ドアトリム10のアームレスト部12とその端末から上方向に延びるように設定されているため、特に、アームレスト部12に肘を掛けて荷重を加えても補強プレート24の剛性により撓み変形することがなく、変形防止にも役立っている。更に、図2から明らかなように、アームレスト部12に配設した補強プレート24を車体パネル15のブラケット16で支持する構造を採用すれば、ドアトリム10における下向きの撓み変形をより有効に防止できる。
加えて、ドアトリムアッパー20に取付孔25を開設する際は、インサイドハンドルエスカッション11の取付用開口と同時に開設することができ、特に、従来の取付用ボスを逃げるための逃げ孔をピアス用治具に設定する必要はなく、ピアス用治具の構造を簡素化できる。
このように、上記ドアトリム10の構造上の特徴は、ドアトリムアッパー20の構成として、従来の重量の嵩む樹脂芯材を廃止して、軽量な発泡樹脂基材21に芯材機能をもたせ、かつ剛性が必要な部位に所定パターン形状の樹脂リブ22を配置したため、ドアトリムアッパー20の軽量化が図れ、燃費効率の向上並びにパネルへの取付作業性を高めることができるという利点がある。
更に、ドアトリムアッパー20とドアトリムロア30との接合部Aに沿って、両者を跨ぐように裏面側に補強プレート24が設けられており、この補強プレート24は、ドアトリムアッパー20の周縁形状を良好に維持する機能と、ドアトリムロア30の接合端縁部を強固に支持する機能をもつため、接合部Aにおいて破断や変形が生じることがなく、初期形状を良好に維持できるという効果がある。
次に、図5乃至図7に基づいて、ドアトリムアッパー20の製作工程、ドアトリムアッパー20とドアトリムロア30の組付工程について説明する。まず、図5に示すように、ドアトリム10の成形に使用する成形金型40は、所定ストローク上下動可能な成形上型41と、成形上型41と対をなす固定側の成形下型42と、成形下型42に接続される射出機43とから大略構成されている。
更に詳しくは、成形上型41は、製品形状に合致したキャビティ部411が形成されており、成形上型41の上面に連結された昇降シリンダ412により、所定ストローク上下駆動される。また、成形上型41の4隅部には、ガイド機構となるガイドブッシュ413が設けられている。
一方、成形下型42には、成形上型41のキャビティ部411に対応するコア部421が設けられている。また、このコア部421の型面に溶融樹脂Mを供給するために、マニホールド422、ゲート423が設けられており、このマニホールド422、ゲート423の樹脂通路を経て、射出機43から供給される溶融樹脂Mがコア部421の上面に形成された溝部424,425内に供給される。尚、一方側の溝部424の形状は、樹脂リブ22と対応するとともに、他方側の溝部425の形状は補強プレート24の形状に対応するように設定されている。更に、成形下型42の4隅部には、ガイド機構となるガイドポスト426が立設され、このガイドポスト426は、成形上下型41,42が型締めされる際、ガイドブッシュ413内に案内されることで成形上型41のプレス姿勢を適正に維持できる。
そして、この成形上下型41,42が型開き状態にあるとき、図5に示すように、発泡樹脂基材21の原反シートSとその一面に加飾材23をラミネートした素材を図示しないヒーター装置により加熱軟化処理した状態で型内に投入する。
更に、成形上下型41,42を型締めすることで、原反シートSを所要形状に成形し、発泡樹脂基材21を所要形状に成形するとともに、型締め後、射出機43から溶融樹脂Mを射出充填して、発泡樹脂基材21の裏面に所定パターン形状の樹脂リブ22を一体化するとともに、この樹脂リブ22と連接するように周縁の一部に沿って補強プレート24を一体化する。尚、上述した工程は、発泡樹脂基材21の成形と樹脂リブ22の一体化とを同一の成形金型40を使用して同時に行なったが、発泡樹脂基材21と樹脂リブ22とを別型で個別に成形しておき、圧着金型で一体化することも可能である。しかし、コスト、作業能率等を考慮すれば、発泡樹脂基材21と樹脂リブ22とを同時成形する工程を採用するのが好ましい。
次に、ドアトリムアッパー20の成形が完了すれば、成形上下型41,42を型開きした後、図6に示すように、ピアス用治具50上にドアトリムアッパー20をセットし、カット刃(ドアトリムロアの取付孔25を開設するためのカット刃51とインサイドハンドルエスカッション取付用開口をカットするためのカット刃52)が図示しないシリンダ駆動により下降してドアトリムアッパー20の所定箇所に所定寸法の取付孔25が開設される。
このように、本発明に係るドアトリム10にあっては、ドアトリムアッパー20にドアトリムロア30接合用の取付孔25と付属部品取付用開口を同時にピアスカット加工できるため、作業性に優れるとともに、ピアス用治具50には、ボスを逃げるための逃げ孔を開設する必要がなく、ピアス用治具50の構造も簡素化でき、経済的である。
次いで、図7に示すように、ドアトリムロア30の取付用ボス33をドアトリムアッパー20における補強プレート24に設けた取付孔25内に挿入して、先端33aを超音波溶着カシメ加工することで、図4に示すように、簡単かつ確実にドアトリムアッパー20とドアトリムロア30とを接合固定することができる。尚、超音波溶着カシメ加工の他に、取付用ボス33に対してビス止め固定することもできる。
図8は上述した第1実施例の変形例であり、ドアトリム10は、ドアトリムセンター20Aとその前後側に位置する合成樹脂成形体からなるフロントエンド部31とリヤエンド部32とから構成されている。そして、この場合においても、ドアトリムセンター20Aとフロントエンド部31、リヤエンド部32の接合部Aについては、第1実施例同様、補強プレート24が両者間に跨って設定されており、ドアトリムセンター20Aとフロントエンド部31、リヤエンド部32とを接合する固定ポイントPは、上述実施例同様、補強プレート24に沿って設けられているため、接合部Aの剛性が強化されている。
次に、図9乃至図15は、本発明をラゲージサイドトリムに適用した第2実施例を示すもので、図9は第2実施例におけるラゲージサイドトリムの正面図、図10,図11は同ラゲージサイドトリムの構成を示す各断面図、図12,図13は第2実施例におけるラゲージサイドトリムの変形例を示す正面図並びに断面図、図14,図15は更に別の変形例を示す正面図並びに断面図である。
まず、図9乃至図11において、ラゲージサイドトリム100は、ラゲージサイドトリムアッパー110とラゲージサイドトリムロア120との上下二分割体から構成されている。ラゲージサイドトリムアッパー110は、ウインドウ部111の周囲を囲むように枠状に形成された合成樹脂成形体から構成されており、ラゲージサイドトリムロア120は、積層構造体からなるセンター部130とその両側及び下辺に隣接するアウター部140との接合体から構成されている。
そして、このラゲージサイドトリム100においては、ラゲージサイドトリムロア120におけるセンター部130は、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材21の裏面に所定パターン形状の樹脂リブ22が配設されるとともに、その表面側に加飾材23がラミネートされ、センター部130の周囲4辺に沿って補強プレート24が樹脂リブ22と一体化されている。
上記ラゲージサイドトリムロア120におけるセンター部130とアウター部140との接合部Bについては、図10に示すように、補強プレート24に開設した取付孔25内にアウター部140の裏面に立設した取付用ボス33を挿入してカシメ固定することにより取り付けられている。
更に、ラゲージサイドトリムアッパー110とラゲージサイドトリムロア120との間の接合部Cについても、図11に示すように、ラゲージサイドトリムロア120におけるセンター部130の補強プレート24に設けた取付孔25内にラゲージサイドトリムアッパー110の裏面から突設した取付用ボス33を挿入した後、先端をカシメ加工することにより取り付けられている。
従って、この第2実施例においても、部品用途はドアトリム10に替えてラゲージサイドトリム100に適用されているものの、ラゲージサイドトリム100のラゲージサイドトリムロア120におけるセンター部130とアウター部140との間の接合部Bにおいて、剛性が強化されるとともに、ピアスカット加工及びピアスカット加工用設備の簡素化等、第1実施例同様の作用効果がある。また、ラゲージサイドトリムアッパー110とラゲージサイドトリムロア120との接合部Cについても同様の構成が適用されることで、剛性が強化され、合わせ部分の良好な外観が得られる。
また、この第2実施例についても、ラゲージサイドトリム100に対して乗員からの荷重が加わり易い部位であるウエスト部やアームレスト部に補強プレート24を設定することで、ラゲージサイドトリム100の初期形状を長期に亘り良好に維持できる。
次に、図12,図13は第2実施例の変形例を示すもので、この変形例においては、ラゲージサイドトリム100は、ラゲージサイドトリムアッパー110とラゲージサイドトリムロア120との上下二分割体から構成されているが、ラゲージサイドトリムアッパー110は、上述した実施例同様、合成樹脂成形体から構成されているが、ラゲージサイドトリムロア120については、全体が積層構造体から構成されている。すなわち、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材21の裏面に所定パターン形状の樹脂リブ22が配設されるとともに、その表面側に加飾材23がラミネートされ、ラゲージサイドトリムロア120の周囲4辺に沿って補強プレート24が樹脂リブ22と一体化されている。
更に、ラゲージサイドトリムアッパー110とラゲージサイドトリムロア120との接合部Cについては、図13に示すように、剛性の強化された補強プレート24により、ラゲージサイドトリムアッパー110の接合端縁部を支持するという構成であるため、接合部Cの剛性が強固に維持でき、変形等の不良が生じることがない。
また、図14,図15に示すように、ラゲージサイドトリム100におけるラゲージサイドトリムアッパー110について、積層構造体と樹脂成形体との分割構成を採用することもできる。すなわち、ラゲージサイドトリム100は、ラゲージサイドトリムアッパー110とラゲージサイドトリムロア120との上下二分割体から構成されるとともに、特に、ラゲージサイドトリムアッパー110については、ウエスト部150とピラー部160とに分割構成され、ウエスト部150については、発泡樹脂基材21の裏面に所定パターン形状の樹脂リブ22及び補強プレート24が積層され、発泡樹脂基材21の表面に加飾材23がラミネートされている。尚、ピラー部160は、合成樹脂成形体単体から構成されている。
一方、ラゲージサイドトリムロア120は、合成樹脂の単体品から構成されており、両者間の接合部Cについては、図15に示すように、ラゲージサイドトリムアッパー110におけるウエスト部150に設けた補強プレート24の取付孔25内にラゲージサイドトリムロア120の裏面に突設した取付用ボス33を挿入して先端33aを超音波カシメ加工することで両者の接合部を強固に固定している。このように、本発明の第2実施例であるラゲージサイドトリム100は、積層構造体と樹脂成形体との突き合わせ構造であれば、その組み合わせを適宜変更させることもできる。