JP3963268B2 - 自動車用内装部品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ドアトリム、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、トランクトリム、リヤサイドトリム等の自動車用内装部品に係り、特に、軽量化が図れ、廉価に製作できるとともに、付属部品取付用の開口を簡単に形成できる自動車用内装部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、自動車用内装部品の構成をドアトリムを例示して図11,図12を基に説明する。ドアトリム1は、保形性及び車体パネルへの取付剛性を備えた樹脂芯材2の表面に、表面外観に優れた表皮3を積層一体化して構成されている。
【0003】
上記樹脂芯材2としては、タルクを混入したポリプロピレン系樹脂を素材としており、また、表皮3は、それ自体保形性を備えておらず、塩ビシート等の合成樹脂シート裏面にポリエチレンフォーム等のクッション材が積層された積層シート材料が使用され、最近では、環境面やリサイクル面を考慮して、TPO(サーモプラスチックオレフィン)シート等のエラストマーシート裏面にポリエチレンフォーム等のクッション材が積層された積層シート材料が多用される傾向にある。
【0004】
次に、上記ドアトリム1の成形方法における従来例について図13を基に説明する。まず、ドアトリム1を成形する成形金型4は、所定ストローク上下動可能な成形上型5と、成形上型5と対をなす固定側の成形下型6と、成形下型6と接続される射出機7とから大略構成されている。
【0005】
そして、成形上下型5,6を型締めした際、ドアトリム1の製品形状を形造るために成形上型5にはキャビティ部5aが形成され、成形下型6にはコア部6aが設けられている。上記、成形上型5を所定ストローク上下動作させるために、昇降シリンダ5bが連結され、成形下型6には射出機7からの溶融樹脂の通路となるマニホールド6b、ゲート6cが設けられている。
【0006】
また、上下動作する成形上型5は、適正姿勢を維持させるために、成形下型6の4隅部にガイドポスト6dが設けられ、このガイドポスト6dに対応して成形上型5にはガイドブッシュ5cが設けられている。
【0007】
従って、成形上下型5,6が型開き状態にあるとき、表皮3を金型内にセットし、その後、成形上下型5,6を型締め直前か、または型締めした後のいずれかのタイミングで両金型間の製品キャビティ内に射出機7からマニホールド6b、ゲート6cを通じて溶融樹脂Mを射出充填することにより、樹脂芯材2を所要の曲面形状に成形するとともに、樹脂芯材2の表面に表皮3を一体成形している(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
尚、図13では、説明の便宜上、コア部6aの型面にオープン状態で溶融樹脂Mが供給されているが、上述したように、溶融樹脂Mを成形上下型5,6の型締め後にキャビティ内に射出充填しても良い。
【0009】
更に、ドアトリム1にインサイドハンドルエスカッション等の付属部品を取り付けるには、まず、図14に示すように、ピアスカット刃8により取付部分における樹脂芯材2及び表皮3にピアス加工を施し、図15に示すように、所定寸法の開口9aを開設する。その後、図16に示すように、この開口9aにインサイドハンドルエスカッション9を嵌着することでドアトリム1に各種付属部品を取り付けている。
【0010】
【特許文献1】
特開平10−138268号公報 (第2頁、図3、図4)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のドアトリム1においては、樹脂芯材2の投影面積が大きいため、材料コストが高く、かつ製品が重量化するという問題点が指摘されている。
【0012】
また、樹脂芯材2の投影面積が大きいことから、成形時における射出圧を高く設定せざるを得ず、高い射出圧に耐え得る金型構造が必要となり、金型の作製費用も嵩み、しかも、大量の溶融樹脂を冷却固化させるため、成形サイクルが長期化し、生産性を低下させる大きな要因となっている。
【0013】
更に、ドアトリム1に取り付けるインサイドハンドルエスカッション9等の付属部品を取り付けるための開口9a等、付属部品の取付箇所に複数の開口を開設する必要があり、成形金型の他にピアスカット加工装置を必要とし、設備費が嵩むとともに、ピアスカット工程も付加されるため、工数の長期化を招き、コストアップを招来するという不具合が指摘されている。
【0014】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、軽量化を促進でき、高剛性でコストダウンを図れる自動車用内装部品の製造方法を提供でき、加えて、インサイドハンドルエスカッション等の取付部分における開口を簡単かつ廉価に形成することで設備費を削減できるとともに、製造工程数を短縮化できる自動車用内装部品の製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究の結果、従来から表皮として使用していた発泡樹脂シートに保形性を付与することで、芯材としての機能をもたせ、より以上に剛性が必要な箇所、すなわち製品の周縁部分やパネル、あるいは部品取付箇所、並びに荷重がかかる部位には、剛性を強化した樹脂リブを配設することで対応するとともに、特に、インサイドハンドルエスカッション等の付属部品取付孔等については、内装トリムの成形と同時に開口を開設することで本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本願発明は、発泡樹脂シートを圧縮加工してなり、軽量で、かつ保形性を有する発泡樹脂基材と、この発泡樹脂基材の裏面に積層一体化される投影面積が低減化された樹脂リブとを備えた内装トリム本体に、付属部品を装着してなる自動車用内装部品の製造方法において、成形金型内に、発泡樹脂基材の素材である発泡樹脂シートをセットする発泡樹脂シートのセット工程と、前記成形金型同士を型締めして、成形金型のキャビティ形状に沿って発泡樹脂基材を所要形状に成形するとともに、成形金型の型締め前か、型締め後のいずれかのタイミングで、前記樹脂リブの配設パターンに沿って成形下型に形成されている溝部内に射出機から樹脂通路を通じて溶融樹脂を射出充填して、発泡樹脂基材の裏面に樹脂リブを積層一体化する発泡樹脂基材及び樹脂リブの成形工程と、前記成形下型に内装されているカット機構部のシリンダを駆動させて、カット刃を軟質材料からなる発泡樹脂基材内に侵入させることにより、前記付属部品のうち、少なくとも一つの部品を取り付けるための開口を小容量のシリンダ駆動で開設する開口のカット工程とからなることを特徴とする。
【0017】
ここで、本発明方法を適用する自動車用内装部品としては、ドアトリム、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、ラゲージトリム、トランクトリム、リヤサイドトリム等に適用できる。
【0018】
保形性を有する発泡樹脂基材は、フラット形状に近い場合は、加熱軟化工程を省略して、成形型により所望形状に成形するが、三次元形状の製品に適用する場合は、発泡樹脂シートを加熱軟化処理した後、成形金型内で所望の曲面形状に成形することで、その形状を保持する。また、製品形状が高展開率を含む場合には、発泡樹脂シートを加熱軟化処理した後、成形金型に真空吸引機構を配設して成形金型の内面に沿って発泡樹脂シートに真空吸引力を作用させるようにしても良い。
【0019】
上記発泡樹脂シートとしては、熱可塑性樹脂に発泡剤を添加した素材を使用する。尚、熱可塑性樹脂は、1種類の熱可塑性樹脂でも2種類以上の熱可塑性樹脂からなっても良い。好ましくは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂などが使用できる。
【0020】
また、発泡剤としては、アゾ化合物、スルホヒドラジド化合物、ニトロソ化合物、アジド化合物等の有機発泡剤、あるいは重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤の使用が可能である。
【0021】
上記発泡樹脂シートを加熱軟化処理後、所要形状に成形して得た発泡樹脂基材は、製品の重量と強度とのバランスを考慮した場合、2〜10倍の発泡倍率が好ましい。そのときの発泡樹脂基材のセル径は、0.1μm〜2.0mmの範囲であることが好ましく、厚みは0.5〜30mm、好ましくは1〜10mmのものが良い。
【0022】
一方、樹脂リブとして使用する熱可塑性樹脂材料は、広範な熱可塑性樹脂から適宜選択することができる。通常好ましく使用できるものとして、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アイオノマー系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂等が使用できる。また、これら熱可塑性樹脂中に各種充填剤を混入しても良い。使用できる充填剤としては、ガラス繊維,カーボン繊維等の無機繊維、タルク,クレイ,シリカ,炭酸カルシウム等の無機粒子などがある。また、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、低収縮剤等の各種の添加剤が配合されても良い。
【0023】
また、外観意匠性を高めるために、発泡樹脂基材の表面に表皮を積層一体化しても良い。上記表皮としては、織布、不織布、編布、シート、フィルム、発泡体、網状物などが使用できる。これら表皮を構成する材料は特に限定されないが、織布、不織布、編布等、通気性を有する素材を使用したほうが、発泡樹脂基材の吸音性能を生かす上で好ましい。
【0024】
更に、内装トリム本体に装着される付属部品としては、インサイドハンドルエスカッション、プルハンドル、パワーウインドウスイッチフィニッシャー、ポケットエスカッション、スピーカグリル等が挙げられ、内装トリム本体の所定箇所に開口が開設されている。
【0025】
次いで、これら内装部品を製造する際に使用する成形金型は、上下動可能な成形上型と、成形上型の下方側に位置する成形下型と、成形下型に連結される射出機から構成され、射出機から供給される溶融樹脂は、成形下型に設けられたマニホールド、ゲート等の樹脂通路を通じて成形下型の型面上に供給されるが、成形上型が下死点まで下降して、成形上下型を型締めする直前、または型締め後のいずれかのタイミングで溶融樹脂が所定の射出圧でキャビティ内に射出充填される。
【0026】
従って、成形上下型の型締めにより、発泡樹脂シートは、成形金型の型面形状に沿って成形されるとともに、溶融樹脂が成形下型の型面に穿設された溝部内に射出充填されることにより、樹脂リブが発泡樹脂基材の裏面側に積層一体化される。
【0027】
そして、製品形状が三次元形状に設定されている場合には、前工程でヒーター等により加熱軟化処理を行なった後、発泡樹脂シートを成形金型内にセットする。
【0028】
更に、成形金型内に加熱軟化状態の発泡樹脂シートを供給した後、成形金型を型締めすれば、発泡樹脂シートが所要形状に成形され、保形性を有する発泡樹脂基材が得られる。
【0029】
従って、保形性を有する軽量な発泡樹脂基材の裏面に樹脂リブを積層一体化できる。尚、最終製品形状が高展開状であれば、成形金型の型締めを複数回行ない、最終の型締め工程で溶融樹脂の射出を行なうと良い。
【0030】
更に、製品形状が高展開率部分を含む場合には、成形上型に真空吸引機構を配設し、成形上型の型面に沿って真空吸引力により発泡樹脂基材を所要形状に成形するようにしても良い。
【0031】
また、成形下型には、内装トリム本体に開設する開口予定箇所に対応して、カット機構が設けられている。例えば、シリンダのピストンロッド先端に型刃等を取り付けた簡易構成のカット機構部がインサイドハンドルエスカッション取付部やプルハンドル取付部、パワーウインドウスイッチフィニッシャー取付部、あるいは、スピーカグリル取付部分に対応して成形下型に内装されている。尚、型刃に替えて、サポートブロックの外周にカット刃を取り付けた構成でも良い。
【0032】
そして、このカット機構部の駆動タイミングとしては、発泡樹脂基材の成形工程及び樹脂リブの発泡樹脂基材裏面に一体化する工程の後工程で行なっても良く、また、樹脂リブの一体化工程と同時にシリンダ駆動によりカット処理を行なっても良い。
【0033】
従って、本発明方法によれば、従来の投影面積の広い樹脂芯材に比べ、樹脂リブだけを成形すれば良いため、成形金型の負荷が少なくて済むとともに、樹脂量も少なく、材料費を節約でき、しかも、従来樹脂芯材に比べ冷却時間も少ないため、製品の成形サイクルを大幅に短縮化できる。
【0034】
そして、発泡樹脂基材の多孔質吸音機能により、車室内外の騒音を有効に吸音できる吸音性能に優れた積層構造体が得られるとともに、発泡樹脂基材及び樹脂リブの素材として、ポリオレフィン系樹脂を使用した場合、オールオレフィン系樹脂に統一されるため、分離工程が廃止でき、リサイクル作業を簡素化できる。
【0035】
また、樹脂リブのリブ厚みは、例えば製品に外力が大きく加わる部位などはリブ厚みを厚く設定し、比較的外力が加わりにくい部位はリブ厚みを薄肉にするなど、リブ厚みを適宜可変させることができる。従って、必要最小限度の樹脂材料を使用すれば足り、製品の軽量化やコストダウンに寄与できる。また、樹脂リブにクリップ座、あるいは各種エスカッション部品を取り付けるための取付座や取付用ボスを一体に形成することもできる。
【0036】
更に、本発明方法によれば、内装トリム本体に形成する開口は、発泡樹脂基材と樹脂リブとから構成される内装トリムの成形金型にカット機構を付設することにより、別途ピアスカット装置を不要とでき、更に、成形工程と連続した一連の成形工程で行なうか、あるいは成形工程と同時にカット処理工程を行なうことにより、工数を大幅に短縮化できる。
【0037】
また、本発明方法に使用するカット機構は、発泡樹脂基材をカット処理するためのもので、従来のように硬質の樹脂芯材を切断カットするカット刃に比べ、ピアスカットを行なう際のシリンダ容量が少なくて済み、設備費も削減できる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る自動車用内装部品の製造方法における好適な実施の形態について、自動車用ドアトリムを例示して説明する。
【0039】
図1乃至図10は本発明方法を適用した自動車用ドアトリムの製造方法の一実施形態を示し、図1は本発明方法により製作した自動車用ドアトリムを示す正面図、図2は同自動車用ドアトリムの構成を示す断面図、図3は同自動車用ドアトリムにおける樹脂リブの形状を示す正面図、図4は同ドアトリムにおけるインサイドハンドルエスカッション取付部分を示す断面図である。また、図5,図6は本発明方法を実施する上で使用する成形金型を示すもので、図5は全体図、図6は同成形金型におけるカット機構部の配置構成を示す説明図、図7乃至図10はドアトリムの製造方法を示し、図7は発泡樹脂シートの予熱工程、図8は発泡樹脂シートのセット工程、図9はドアトリムの成形工程、図10は開口のカット工程をそれぞれ示す説明図である。
【0040】
まず、本発明方法を適用して製作された自動車用ドアトリム10の構成について、図1乃至図4を基に説明する。図1,図2において、自動車用ドアトリム10は、所望の曲面形状に成形されたドアトリム本体11に対して、インサイドハンドルエスカッション12を始めとして、ドアトリム本体11のアームレスト部13にパワーウインドウスイッチフィニッシャー14並びにプルハンドル15の付属部品が装着され、アームレスト部13の下側にポケット開口16が開設され、このポケット開口16廻りにポケットエスカッション17が嵌め込み固定され、そのフロント側にスピーカグリル18が取り付けられている。
【0041】
更に詳しくは、図2に示すように、ドアトリム本体11は、所望の曲面形状に成形され、保形性を有する発泡樹脂基材20と、この発泡樹脂基材20の裏面側に積層一体化される樹脂リブ30と、発泡樹脂基材20の表面側に積層一体化される加飾機能をもつ表皮21とから大略構成されている。
【0042】
また、上記発泡樹脂基材20は、保形性を備えるように発泡樹脂シートを加熱軟化処理後、所要形状に熱成形、例えば、所望の型面を有する成形金型でコールドプレス成形されるが、更に高展開率部分については、真空成形により発泡樹脂基材20を賦形しても良い。尚、ジャッキリッド等のリッド部品のようなフラット形状の部品においては、発泡樹脂シートに加熱軟化処理を行なわずにフラット形状に成形することができる。
【0043】
上記発泡樹脂シートは、汎用の熱可塑性樹脂に発泡剤を添加した構成であり、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等が使用でき、発泡剤としては、アゾジカルボンアミド等の有機発泡剤や重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤が使用できる。この実施形態では、ポリプロピレン系樹脂に発泡剤として重炭酸ナトリウムを適宜添加した発泡樹脂シートを使用している。また、この発泡樹脂基材20の発泡倍率は、2〜10倍に設定され、厚みは0.5〜30mm、特に1〜10mmの範囲に設定されている。
【0044】
次いで、樹脂リブ30は、発泡樹脂基材20の裏面側に配設され、特に、図3に示すように、縦横方向に延びる格子状パターンに設定されている。この樹脂リブ30は、汎用の合成樹脂成形体からなり、通常好ましく使用できる合成樹脂として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アイオノマー系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂等から適宜選択されて良く、本実施形態では、環境面、リサイクル面を考慮してポリプロピレン系樹脂が使用されている。
【0045】
また、この樹脂リブ30には、上記熱可塑性樹脂中に適宜フィラー、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維や、タルク、クレイ、シリカ、炭酸カルシウム等の無機粒子等の充填剤が混入されていても良い。
【0046】
更に、本実施形態においては、ドアトリム本体11の剛性強化部分には、樹脂リブ30の本数を多く設定するという構成を採用しているが、ドアトリム本体11の外周縁に沿って外周リブを設定し、この外周リブ同士を橋渡しリブで連接するという樹脂リブ30の構成を採用しても良い。そして、外周リブを設けた場合には、ドアトリム本体11の形状保持性を良好に維持できるとともに、車体パネルや相手部品との合わせ管理を精度良く行なえる。
【0047】
このように、ドアトリム本体11は、保形性を有する発泡樹脂基材20と、発泡樹脂基材20の裏面に積層一体化される樹脂リブ30と、加飾性を有する表皮21とから構成されているため、従来のように製品の全面に亘り占有していた樹脂芯材を廃止でき、かつ軽量な発泡樹脂基材20を使用する関係で、製品の重量について、従来例に比し40%以上の軽量化を図ることができるとともに、樹脂材料も大幅に節約でき、コストダウンにも貢献できる。
【0048】
更に、発泡樹脂基材20は、多孔質構造であるため、ドアトリム本体11は、吸音性能に優れ、車室内外の騒音を低減することができる。また、発泡樹脂基材20の車室内の騒音を対象とした吸音性能を高めるために、発泡樹脂基材20の表面に積層一体化される表皮21は、織布、不織布、編布等の通気性を備えたシート材料が好ましい。尚、表皮21は、織布、不織布、編布等の通気性シート以外にも塩ビシートやTPOシート等の合成樹脂シート、またはこの種合成樹脂シート裏面にポリエチレンフォーム等のクッション材を積層した積層シート材料、合成樹脂フィルム、発泡体、網状体等を使用することができる。また、TPOシートを使用した場合、オールオレフィン系樹脂で統一できるため、リサイクルにおける分離工程が廃止でき、リサイクル作業が容易なものとなる。
【0049】
次に、ドアトリム本体11には、インサイドハンドルエスカッション12を始めとして、インサイドハンドルエスカッション12、パワーウインドウスイッチフィニッシャー14、プルハンドル15、ポケットエスカッション17、スピーカグリル18等の各種付属部品が取り付けられている。
【0050】
例えば、インサイドハンドルエスカッション12については、図4に示すように、このインサイドハンドルエスカッションを嵌着するための開口22が開設されており、この開口22内にインサイドハンドルエスカッション12をドアトリム本体11の裏面側から嵌め込む。
【0051】
そして、開口22周囲には、樹脂リブ30と一体に取付用ボス31が立設されており、この取付用ボス31をインサイドハンドルエスカッション12のフランジ12aに開設した取付孔12b内に挿入した後、取付用ボス31の先端部分を熱カシメ、あるいは超音波溶着カシメ等によりカシメ加工を施して、インサイドハンドルエスカッション12をドアトリム本体11に取り付けている。
【0052】
次いで、上記ドアトリム10の製造方法について説明する。まず、図5,図6でドアトリム10の製造方法に使用する成形金型40の全体構成並びに成形金型40におけるカット機構部の構成について説明する。
【0053】
図5において、ドアトリム10の成形に使用する成形金型40は、所定ストローク上下動可能な成形上型41と、成形上型41と対をなす固定側の成形下型42と、成形下型42に接続される射出機43とから大略構成されている。
【0054】
更に詳しくは、成形上型41は、製品形状に合致したキャビティ部411が形成されており、成形上型41の上面に連結された昇降シリンダ412により所定ストローク上下駆動される。また、成形上型41の4隅部には、ガイド機構となるガイドブッシュ413が設けられている。
【0055】
一方、成形下型42には、成形上型41のキャビティ部411に対応するコア部421が設けられている。また、このコア部421の型面に溶融樹脂を供給するために、マニホールド422、ゲート423が設けられており、このマニホールド422、ゲート423の樹脂通路を経て射出機43から供給される溶融樹脂Mがコア部421上面の溝部424に供給される。
【0056】
また、成形下型42の4隅部には、ガイド機構となるガイドポスト425が突設され、このガイドポスト425は、成形上下型41,42が型締めされる際、ガイドブッシュ413内に案内されることで成形上型41のプレス姿勢を適正に維持できる。
【0057】
次いで、図6に示すように、ドアトリム本体11に複数の開口22を開設するためのカット機構部50が成形下型42に付設されている。尚、図6においては、インサイドハンドルエスカッション12及びプルハンドル15、スピーカグリル18にそれぞれ対応する3箇所の開口22を開設するためのカット機構部50(インサイドハンドルエスカッション用カット機構部50a、プルハンドル用カット機構部50b、スピーカグリル用カット機構部50c)として示すが、この他にパワーウインドウスイッチフィニッシャー14やポケット開口16用のカット機構部が図示はしないが設けられている。
【0058】
そして、各カット機構部50a,50b,50cの構成は同一であるため、説明の便宜上、インサイドハンドルエスカッション12用のカット機構部50aの構成について説明する。まず、カット機構部50aは、エアシリンダ等のシリンダ51aのピストンロッド52aの先端に型刃53aが取り付けられ、型刃53aの外周縁部にエッジ状の刃先がシリンダ51aの伸長方向に延在している。尚、型刃53aの刃先と対応する成形上型41には、受け用パット54aが埋設されている。尚、プルハンドル用のカット機構部50b及びスピーカグリル用カット機構部50cについても、寸法やシリンダ方向は相違するが、同一の構成が採用されている。
【0059】
次に、上記ドアトリム10の製造方法の各工程について説明する。まず、図7に示すように、ヒーター装置60内に発泡樹脂シートS(表皮21をラミネートしている)を投入し、加熱軟化処理を施す。この発泡樹脂シートSとしては、ポリプロピレン製発泡シート(住化プラステック製、商品名:スミセラー発泡PPシート、発泡倍率=3倍、厚み2mm)が使用されている。
【0060】
更に、図8に示すように、加熱軟化処理した発泡樹脂シートSを成形金型40内にセットする。このとき、成形下型42に内装されているカット機構部50a,50b,50cについては、対応するシリンダ51a,51b,51cが収縮状態に保たれている。そして、発泡樹脂シートSをセットした後、成形上型41の昇降シリンダ412が動作して、図9に示すように、成形上型41が所定ストローク下降して、成形上下型41,42が型締めされて、発泡樹脂シートSが所望の型面形状に沿って賦形され、表面側に表皮21を積層した状態で発泡樹脂基材20がキャビティ形状に沿って成形されるとともに、成形上下型41,42の型締め直前か、または型締め後のいずれかのタイミングで射出機43からマニホールド422、ゲート423を通じて成形下型42におけるコア部421に設けた溝部424内に溶融樹脂Mが射出充填され、所定パターン形状の樹脂リブ30が発泡樹脂基材20の内面側に一体成形される。この溶融樹脂Mとしては、住友ノーブレンAX568(住友化学工業製ポリプロピレン、メルトインデックス=65g/10分)を使用している。
【0061】
次いで、発泡樹脂基材20の内面に樹脂リブ30が一体成形された後、図10に示すように、成形下型42に内装されているカット機構部50a,50b,50cの各シリンダ51a,51b,51cが動作して、型刃53a,53b,53cが上昇動作及びスライド動作を行ない、所要形状に成形されている発泡樹脂基材20及び表皮21は型刃53a,53b,53cによりカット処理され、ドアトリム本体11における発泡樹脂基材20及び表皮21にインサイドハンドルエスカッション12、プルハンドル15、スピーカグリル18を取り付けるための所定寸法の開口22が形成される。
【0062】
従って、従来のように別途トリムカット装置を使用することなく、同一の成形金型40内でカット処理が行なわれるため、設備費用を削減できるとともに、工数的にも短縮化できる。また、カット機構部50a,50b,50cの駆動タイミングを樹脂リブ30の成形工程と同時に設定すれば、成形サイクルをより短縮化することができ、生産性を更に高めることができる。
【0063】
更に、本発明方法は、成形金型40における成形下型42にカット機構部50a,50b,50cを設け、発泡樹脂基材20及び表皮21の開口予定部分をカット処理するというものであり、従来の硬質の樹脂芯材に比べ、発泡樹脂基材20が軟質材料であるため、型刃53a,53b,53cにかかる負荷も少なく、カット機構部50a,50b,50cにおける寿命の長期化が図れるとともに、シリンダ51a,51b,51cの容量も小さくて済み、実用性に富むという有利さもある。
【0064】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明に係る自動車用内装部品の製造方法は、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材と、この発泡樹脂基材の裏面で剛性が要求される部位に積層一体化される樹脂リブとから構成され、成形と同時、あるいは成形工程後に成形金型内に設けたカット機構部により付属部品取付用の開口を開設するというものであるから、樹脂成形体である樹脂リブの投影面積が少ないため、従来の樹脂芯材に比べ、成形金型にかかる負荷が少なく、かつ冷却時間も短縮化でき、歩留まりを高めることができることから、作業性を高めることができ、大幅なコストダウンを招来できるという効果を有する。
【0065】
更に、本発明に係る自動車用内装部品の製造方法は、樹脂リブの成形と同時か、あるいは樹脂リブの成形工程後、同一の成形金型内で付属部品取付用の開口を形成するというものであるから、別途カット装置を廃止することができ、設備費にかかる費用を抑えることができるとともに、同一金型内で成形工程と連続する一連の工程、あるいは成形工程と同時工程でトリム本体の所定箇所に開口を開設することができるため、トータルの工程数を短縮化できるという効果を有する。
【0066】
また、本発明に係る自動車用内装部品の製造方法は、硬質の樹脂芯材をトリムカット処理するのではなく、軟質の発泡樹脂基材や表皮を成形金型内に設けたカット機構部によりカット処理するというものであるから、カット機構部のシリンダが小容量で済むとともに、型刃に加わる負荷も少なくて済み、カット機構部の耐久性を高め、寿命を長期化できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法を適用して製作した自動車用ドアトリムを示す正面図である。
【図2】図1中II−II線断面図である。
【図3】図1に示す自動車用ドアトリムにおける樹脂リブの形状を示す正面図である。
【図4】図1中IV−IV線断面図であり、インサイドハンドルエスカッション取付箇所を示す断面図である。
【図5】図1に示すドアトリムの製造方法に使用する成形金型を示す全体図である。
【図6】図5に示す成形金型に付設されるカット機構部の配置例を示す構成説明図である。
【図7】図1に示すドアトリムの製造方法における発泡樹脂シートの予熱工程を示す説明図である。
【図8】図1に示すドアトリムの製造方法における発泡樹脂シートの金型内へのセット工程を示す説明図である。
【図9】図1に示すドアトリムにおける発泡樹脂基材の成形工程及び樹脂リブの成形工程を示す説明図である。
【図10】図1に示すドアトリムにおける開口のカット工程を示す説明図である。
【図11】従来のドアトリムを示す正面図である。
【図12】図11中XII −XII 線断面図である。
【図13】従来のドアトリムのモールドプレス成形工法を示す説明図である。
【図14】従来のドアトリムにおけるピアスカット工程を示す説明図である。
【図15】従来のピアスカット工程においてドアトリム本体に開口を開設した状態を示す説明図である。
【図16】従来のドアトリムの開口にインサイドハンドルエスカッションを取り付けた状態を示す説明図である。
【符号の説明】
10 自動車用ドアトリム
11 ドアトリム本体
12 インサイドハンドルエスカッション
13 アームレスト部
14 パワーウインドウスイッチフィニッシャー
15 プルハンドル
16 ポケット開口
17 ポケットエスカッション
18 スピーカグリル
20 発泡樹脂基材
21 表皮
22 開口
30 樹脂リブ
31 取付用ボス
40 成形金型
41 成形上型
42 成形下型
43 射出機
50(50a,50b,50c) カット機構部
51(51a,51b,51c) シリンダ
52(52a,52b,52c) ピストンロッド
53(53a,53b,53c) 型刃
54(54a,54b,54c) 受け用パット
60 ヒーター装置
S 発泡樹脂シート
M 溶融樹脂
Claims (1)
- 発泡樹脂シート(S)を圧縮加工してなり、軽量で、かつ保形性を有する発泡樹脂基材(20)と、この発泡樹脂基材(20)の裏面に積層一体化される投影面積が低減化された樹脂リブ(30)とを備えた内装トリム本体(11)に、付属部品(12,14,15,17,18)を装着してなる自動車用内装部品(10)の製造方法において、
成形金型(41,42)内に、発泡樹脂基材(20)の素材である発泡樹脂シート(S)をセットする発泡樹脂シート(S)のセット工程と、
前記成形金型(41,42)同士を型締めして、成形金型(41,42)のキャビティ形状に沿って発泡樹脂基材(20)を所要形状に成形するとともに、成形金型(41,42)の型締め前か、型締め後のいずれかのタイミングで、前記樹脂リブ(30)の配設パターンに沿って成形下型(42)に形成されている溝部(424)内に射出機(43)から樹脂通路(422,423)を通じて溶融樹脂(M)を射出充填して、発泡樹脂基材(20)の裏面に樹脂リブ(30)を積層一体化する発泡樹脂基材及び樹脂リブの成形工程と、
前記成形下型(42)に内装されているカット機構部(50)のシリンダ(51)を駆動させて、カット刃(53)を軟質材料からなる発泡樹脂基材(20)内に侵入させることにより、前記付属部品(12,14,15,17,18)のうち、少なくとも一つの部品(12)を取り付けるための開口(22)を小容量のシリンダ(51)駆動で開設する開口(22)のカット工程と、
からなることを特徴とする自動車用内装部品の製造方法。
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