JP3959602B2 - ビフェニル類の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、反応液中にパラジウム塩と、銅塩と、分子内に窒素原子と酸素原子とを有しパラジウム塩と錯体形成をする二座配位子化合物との存在下に、且つ、分子状酸素の存在する雰囲気中高温で酸化カップリングさせて、ビフェニル類を製造する方法に関する。特に、フタル酸ジエステルのような置換基を有する芳香族化合物を、パラジウム塩と、銅塩と、分子内に窒素原子と酸素原子とを有しパラジウム塩と錯体形成をする二座配位子化合物との存在下に、且つ、分子状酸素の存在する雰囲気中高温で酸化カップリングさせ、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラエステル(以下、a−BPTTと略記することもある。)のような非対称置換ビフェニル類を選択的に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開昭55−141417号公報には、反応液中に有機パラジウム塩と有機銅塩とを存在させて、分子状酸素雰囲気中で、ベンゼン系の芳香族化合物を酸化カップリング反応させて、ビフェニル類を製造する方法が提案されている。この方法でフタル酸ジエステルを酸化カップリングすると、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラエステル(以下、s−BPTTと略記することもある。)とa−BPTTとを生成し、その生成比はs−BPTTが高かった。
特開昭61−106541号公報には、フタル酸ジエステルのような置換基を有する芳香族化合物を酸化カップリング反応して、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルのような非対称置換ビフェニル類の選択性を向上させる方法が提案されている。しかし、この方法では、反応開始後の経過に従って、反応液中にβージケトン類を連続もしくは断続的に補給することが必要であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ベンゼン系の芳香族化合物を酸化カップリング反応させて、ビフェニル類を製造する新規な方法を提供することである。特に、フタル酸ジエステルのような置換基を有する芳香族化合物を酸化カップリング反応して、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルのような非対称置換ビフェニル類を選択的に製造することができる改良されたビフェニル類の製造方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、化学式(1)で示される芳香族化合物を、パラジウム塩と、銅塩と、窒素原子と酸素原子とによりパラジウム塩と錯体形成をする二座配位子化合物との存在下に、且つ、分子状酸素の存在する雰囲気中で、酸化カップリングさせることを特徴とするビフェニル類の製造方法に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の好ましい実施態様を列挙する。
1)化学式(1)で示される芳香族化合物を、パラジウム塩と、銅塩と、窒素原子と酸素原子とによりパラジウム塩と錯体形成をする二座配位子化合物との存在下に、且つ、分子状酸素の存在する雰囲気中で、酸化カップリングさせることを特徴とするビフェニル類の製造方法。
2)化学式(2)で示される置換基を有する芳香族化合物を、パラジウム塩と、銅塩と、窒素原子と酸素原子とによりパラジウム塩と錯体形成をする二座配位子化合物との存在下に、且つ、分子状酸素の存在する雰囲気中で、酸化カップリングさせて、非対称置換ビフェニル類を選択的に製造することを特徴とする前記ビフェニル類の製造方法。
3)フタル酸ジエステルを、パラジウム塩と、銅塩と、窒素原子と酸素原子とによりパラジウム塩と錯体形成をする二座配位子化合物との存在下に、且つ、分子状酸素の存在する雰囲気中で、酸化カップリングさせ、a−BPTTを選択的に製造することを特徴とする前記ビフェニル類の製造方法。
4)生成物中の非対称置換ビフェニル類の生成比、即ち、(非対称置換ビフェニル類)/(対称置換ビフェニル類+非対称置換ビフェニル類)が0.6〜0.99であることを特徴とする前記ビフェニル類の製造方法。
5)反応温度が50〜300℃であることを特徴とする前記ビフェニル類の製造方法。
6)前記窒素原子と酸素原子とによりパラジウム塩と錯体形成をする二座配位子化合物が化学式(3)で示される化合物であることを特徴とする前記ビフェニル類の製造方法。
6)前記窒素原子と酸素原子とによりパラジウム塩と錯体形成をする二座配位子化合物が化学式(4)で示される化合物であることを特徴とする前記ビフェニル類の製造方法。
7)前記窒素原子と酸素原子とによりパラジウム塩と錯体形成をする二座配位子化合物が化学式(5)で示される化合物であることを特徴とする前記ビフェニル類の製造方法。
8)実質的に無溶媒反応であることを特徴とする前記ビフェニル類の製造方法。
【0006】
本発明で使用する芳香族化合物は化学式(1)で示されるベンゼン系の芳香族化合物である。化学式(1)のRで示された置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜5のアルカノイルオキシ基、炭素数1〜5のアルカノイルオキシアルキル基、水素がアセチル基またはハロゲン基で置換された炭素数1〜5のアルキル基、ニトロ基、ハロゲンなどを挙げることができる。
化学式(1)で示されるベンゼン系の芳香族化合物の具体例としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレン、アニソール、安息香酸メチル、安息香酸ブチル、トルイル酸メチル、アセチルベンゼン、2,6−ジメチルベンジルアセテート、キシリレンジアセテート、ニトロベンゼン、オルトクロルメチルベンゼン、クロルベンゼン、フッ化ベンゼン、オルトクロルトルエン、トリフルオロトルエン、フタル酸ジエステル、イソフタル酸ジエステル、テレフタル酸ジエステルなどを挙げることができる。
尚、前記のフタル酸ジエステル、イソフタル酸ジエステル、及び、テレフタル酸ジエステルは、それらの酸、酸無水物、酸ハロゲン化物と、末端に水酸基を有する化合物、例えば、低級脂肪族アルコールや芳香族アルコールなどとを反応して得られたジエステル化合物である。
また、本発明において、化学式(2)で示される芳香族化合物は、前記化学式(1)で示される芳香族化合物のうちベンゼン環に1〜3個の置換基を有するものである。
【0007】
本発明で使用するパラジウム塩としては、例えば、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、水酸化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウムのような無機パラジウム塩や、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、トリフルオロメタンスルホン酸パラジウム、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)パラジウムなどの有機パラジウム塩を挙げることができる。特に、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム、水酸化パラジウムが好適である。パラジウム塩は、出発物質の前記ベンゼン系の芳香族化合物に対して5×10−5倍モル以上、より好ましくは2×10−4倍モル以上であり、0.01倍モル以下、より好ましくは0.005倍モル以下であることが好適である。5×10−5倍モル未満では反応が効率的でなくなり、0.01倍モルを越えると高価なパラジウムを多量に使用することになって経済的でなくなる。
【0008】
本発明で使用する窒素原子と酸素原子とによりパラジウム塩と錯体形成をする二座配位子化合物としては、分子内に窒素原子と酸素原子とからなる二座配位能を有しパラジウム塩と錯体形成をする化合物であって、化学式(3)、化学式(4)で示されるような置換基に酸素原子を持つ含窒素ヘテロ環化合物、および、化学式(5)で示されるような置換基に酸素原子を持つ脂肪鎖アミン類を挙げることができる。具体的には、ピリジンカルボン酸、ピリジンカルボン酸メチルエステル、ピリジンカルボン酸エチルエステル、ピラジンカルボン酸、ピラジンカルボン酸メチルエステル、ピラジンカルボン酸エチルエステル、キノリンカルボン酸、イソキノリンカルボン酸、ヒドロキシキノリン、2−ベンゾイルピリジン、2−ピリジルアミド、N,N−ジメチルグリシン、N,N−ジメチルアセトアミドなどを挙げることができる。特に、2−ピリジンカルボン酸、2−ピラジンカルボン酸が好適である。
窒素原子と酸素原子とによりパラジウム塩と錯体形成をする二座配位子化合物は、そのまま反応系に加えても構わないし、予めパラジウム塩と処理して窒素原子と酸素原子の二座配位子パラジウム錯体として使用することもできる。
窒素原子と酸素原子とによりパラジウム塩と錯体形成をする二座配位子化合物は、パラジウム塩に対して0.5〜4倍モル、好ましくは1〜2倍モルの量で好適に用いられる。
【0009】
本発明で使用する銅塩としては、炭素数1〜10の脂肪族カルボン酸の銅塩、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、吉草酸などの銅塩、または、芳香族カルボン酸の銅塩、例えば、安息香酸、フタル酸などの銅塩、または、βジケトン類の銅塩、例えば、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、トリフルオロアセチルアセトンなどの銅塩を挙げることができる。また、例えば塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅などのハロゲン化銅や、硝酸銅、硫酸銅、水酸化銅などの無機銅塩を挙げることができる。
本発明において,銅塩の使用量は、前述の窒素原子と酸素原子とによりパラジウム塩と錯体形成をする二座配位子化合物の使用量に対して、0.01〜10倍モル、好ましくは0.05〜3倍モルである。銅塩の使用量が0.01倍モル未満では十分な反応速度が得られないし、10倍モルを越えると反応が抑制されるため適当ではない。
【0010】
本発明において、反応温度は、50℃以上、より好ましくは100℃以上であり、且つ、300℃以下、より好ましくは250℃以下であることが好適である。反応温度が50℃未満では酸化カップリング反応が起りにくいので好ましくなく、又、反応温度が300℃を越えると目的とするビフェニル類の生成が少なくなるので好ましくない。
【0011】
本発明において、分子状酸素は純酸素ガスで供給してもよいが、爆発の危険性があるので、窒素ガスや炭酸ガスなどの不活性ガスで希釈した酸素含有ガス又は空気を使用するのが安全上好適である。
本発明において、反応圧は酸素分圧(封じ込めの場合は封入時の初圧)として、0.01気圧以上、好ましくは0.05気圧以上、より好ましくは0.1気圧以上であり、且つ、200気圧以下、好ましくは50気圧以下、より好ましくは30気圧以下であることが好適である。従来公知の酸化カップリング反応においては、酸素分圧が0.05気圧未満になると、触媒のパラジウム成分がパラジウム黒となって析出して触媒能がなくなるが、本発明においては、酸素分圧が0.05気圧未満でもパラジウム黒の析出は起らず効果的な触媒作用を保持できる。
反応系への酸素ガス又は酸素含有ガスの供給は、封じ込めでも流通でも良い。流通させる場合は、不活性ガスで希釈された酸素含有ガス(特に酸素含有量が約10〜40体積%が好ましい。)又は空気を、気体反応液100ミリリットル当たり約1〜2000ミリリットル/分、特に10〜1000ミリリットル/分の流量で反応液中にバブリングさせて供給することが好ましい。
【0012】
本発明において、反応溶媒は用いても用いなくても構わない。工業的には実質的に反応溶媒を用いないで反応させることが好ましい。反応溶媒を用いる場合は、例えば、エチレングリコールジアセテート、アジピン酸ジメチルなどの有機酸エステル、n−ブチルメチルケトン、メチルエチルケトン、イソプロピルエチルケトンなどのケトン化合物などを挙げることができる。その使用量は、例えば、出発物質のベンゼン系の芳香族化合物に対して、10000容量倍以下、好ましくは1000容量倍以下である。
【0013】
本発明の方法によって得られる生成物は、化学式(6)で示されるビフェニル類である。
【化6】
Figure 0003959602
[ここで、Rは置換基であり、lは0〜4の整数である。]
例えば、ベンゼンを出発物質とすればビフェニルが得られ、トルエンを出発物質とすればビトリルが得られ、キシレンを出発物質とすればテトラメチルビフェニルが得られ、フタル酸ジエステルを出発物質とすれば、ビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルが得られる。
【0014】
本発明の方法によって、置換基を有する芳香族化合物を酸化カップリングすると、対称置換ビフェニル類(2つのベンゼン環上の対称の位置に置換基を有するビフェニル類を意味する。以下、s−体と記載することもある。)と非対称置換ビフェニル類(2つのベンゼン環上の非対称の位置に置換基を有するビフェニル類を意味する。以下、a−体と記載することもある。)からなる異性体が得られる。本発明の方法は、非対称置換ビフェニル体(a−体)を選択的に製造できることを特徴としている。
例えば、出発物質がフタル酸ジエステルの場合には、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルはほとんど生成せず、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸テトラエステル(a−BPTT)と3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラエステル(s−BPTT)とが生成する。本発明の方法では、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルを主成分として選択的に得ることができる。
また、出発物質がオルトキシレンの場合には、2,2’,3,3’−テトラメチルビフェニルはほとんど生成せず、2,3,3’,4’−テトラメチルビフェニルと3,3’,4,4’−テトラメチルビフェニルとが生成する。本発明の方法では、2,3,3’,4’−テトラメチルビフェニルを主成分として選択的に得ることができる。
このような非対称置換ビフェニル類の選択性は、反応条件を選択することによって60〜99モル%、特に70〜95モル%と高くすることができる。
前記選択性とは、生成物中の非対称置換ビフェニル類の生成比、即ち、(非対称置換ビフェニル類)/(対称置換ビフェニル類+非対称置換ビフェニル類)を百分率で表したものである。
【0015】
生成したビフェニル類は、蒸留や晶析操作などの周知の手段によって分離・精製することができる。
生成したビフェニル類がa−BPTTの場合には、従来公知の方法、例えば高温、高圧で加水分解する方法、又は、酸、アルカリを添加して加水分解する方法によって加水分解して2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸とすることができる。更に、これを高温に加熱することによって無水化して、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を得ることができる。この二無水物は芳香族ポリイミド製造におけるモノマー原料のひとつとして有用なものである。
【0016】
【実施例】
以下に実施例を用いて、本発明を具体的に説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0017】
実施例において、転化率は仕込みのベンゼン系芳香族化合物を基準とする。又、カップリング収率は仕込みのベンゼン系芳香族化合物基準で算出した。仕込みのベンゼン系芳香族化合物の転化率、カップリング収率、及び、s−体/a−体生成比は、次の計算式に従ってモル基準で算出した。
▲1▼転化率(%)=(芳香族化合物消費量)/(芳香族化合物仕込量)×100
▲2▼カップリング収率(%)=2×(カップリング生成物量)/(芳香族化合物仕込量)×100
▲3▼s−体/a−体生成比=(s−体生成量)/(a−体生成量)
(但し、(s−体生成量)+(a−体生成量)=100として表示する。)
【0018】
(実施例1)
20mlの梨型フラスコに、フタル酸ジメチルエステル1.27g(6.5ミリモル)を秤取り、触媒として、トリフルオロ酢酸パラジウム(以下、Pd(OCOCFと示すこともある。)0.05ミリモル、酢酸銅一水和物(以下、Cu(OAc)・HOと示すこともある。)0.015ミリモル、2−ピリジンカルボン酸(化学式(7)で示される。以下、pycaと略記することもある。)0.05ミリモルとを秤取り、フタル酸ジメチルエステルに加えた。前記フラスコにリービッヒ冷却管を取り付け、常圧で露点が−80℃以下のAグレード空気で系内を置換したあと、前記空気風船下封じ込めた。リービッヒ冷却管には温度5℃の冷却水を循環させた。予め温度200℃に加熱したシリコンオイルバス中に前記フラスコを浸けて反応時間6時間保持した。攪拌はマグネチックスターラーを用いて回転速度600rpmでおこなった。反応後フラスコ部分を水冷し、封じ込めたガスをパージした後、内容物をアセトンで洗い出し、フタル酸ジメチルエステルの転化率とカップリング生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した。
その結果は表1のとおりであった。
【0019】
(比較例1)
pycaの代わりに、同じモル数の1,10−フェナントロリン(化学式(8)で示される。以下、1,10−phenと略記することもある。)を用いたほかは、実施例1と同様の操作をおこなった。
その結果は表1のとおりであった。
【0020】
(実施例2)
Pd(OCOCFの代わりに、同じモル数の酢酸パラジウム(以下、Pd(OAc)と示すこともある。)を用いたほかは、実施例1と同様の操作をおこなった。
その結果は表1のとおりであった。
【0021】
(比較例2)
pycaの代わりに、同じモル数の1,10−phenを用いたほかは、実施例1と同様の操作をおこなった。
その結果は表1のとおりであった。
【0022】
(実施例3)
ビス(アセチルアセトナト)パラジウム(以下、Pd(acac)と示すこともある。ここで、acacはアセチルアセトナト基を示す。)0.20ミリモルをアセトン10mlに溶解させた後、室温でpyca0.20ミリモルを加えた。反応液から溶媒をエバポレーターで除去し、粗錯体を得た。これを10mlのヘキサンで3回洗浄して残留するアセチルアセトンを洗浄・除去したあとで減圧下室温で乾燥した。このようにして得た錯体Pd(pyca)(acac)の0.05ミリモルを、Pd(OCOCFとpycaの代わりに用いたほかは実施例1と同様の操作をおこなった。
その結果は表1のとおりであった。
【0023】
(実施例4〜9)
pyacの代わりに、同じモル数の化学式(9)〜(14)で示される二座配位子化合物(9)〜(14)を用いたほかは、実施例1と同様の操作をおこなった。
その結果は表1のとおりであった。
【0024】
(実施例10)
50mlの3つ口フラスコに、フタル酸ジメチルエステル25.0g(129ミリモル)、Pd(OCOCF0.135ミリモル、pyac0.135ミリモル、及び、Cu(OAc)・HO0.041ミリモルとを秤取った。前記フラスコにリービッヒ冷却管、ガス供給管、及び、温度計とを取り付けた。リービッヒ冷却管には温度5℃の冷却水を循環させた。ガス供給管から、常圧で露点が−80℃以下のAグレード空気を50ml/minの流速で供給した。この反応器を、予め温度80℃に加熱したシリコンオイルバス中に浸けて、触媒を溶解させた。触媒の溶解後、反応層の温度が200℃となるように温度設定し、反応時間1時間反応をおこなった。その後、実施例と同様に生成物を分析した。
その結果は表1のとおりであった。
【0025】
【表1】
Figure 0003959602
【0026】
(実施例11)
50mlの耐圧SUS製オートクレーブ内に備えたガラス製内挿管に、オルトキシレン9.70g(91.51ミリモル)、Pd(OCOCF0.09ミリモル、Cu(OAc)・HO0.03ミリモル、pyca0.10ミリモルとを秤取った。オートクレーブに蓋をし、オートクレーブ内に酸素と窒素の混合ガス(O/N=50/50体積%)を50kg/cm(ゲージ圧)で圧入した。このオートクレーブを予め150℃に設定したオイルバス中に浸け反応を開始した。5時間後に、オートクレーブを取り出して室温まで冷却後、圧入ガスを排気し、得られた反応液をガスクロマトグラフィーを用いて分析した。
その結果は表2のとおりであった。
【0027】
(比較例3)
Pd(OCOCFとpycaの代わりに、同じモル数のPd(OAc)と1,10phenとを用いたほかは、実施例11と同様の操作をおこなった。
その結果は表2のとおりであった。
【0028】
【表2】
Figure 0003959602
【0029】
実施例及び比較例で用いた二座配位子化合物等の化学式を以下に示す。
【化7】
Figure 0003959602
【0030】
【発明の効果】
本発明は以上説明したようなものであるから、以下のような効果を奏する。
すなわち、本発明は、ベンゼン系の芳香族化合物を酸化カップリング反応させて、ビフェニル類を製造する新規な方法を提供する。特に、フタル酸ジエステルのような置換基を有する芳香族化合物を酸化カップリング反応して、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルのような非対称置換ビフェニル類を選択的に製造することができる改良された製造方法を提供する。

Claims (7)

  1. 化学式(1)で示される芳香族化合物を、パラジウム塩と、銅塩と、窒素原子と酸素原子とによりパラジウム塩と錯体形成をする二座配位子化合物との存在下に、且つ、分子状酸素の存在する雰囲気中で、酸化カップリングさせることを特徴とするビフェニル類の製造方法。
    Figure 0003959602
    [ここで、Rは置換基であり、lは0〜4の整数である。]
  2. 化学式(2)で示される芳香族化合物を、パラジウム塩と、銅塩と、窒素原子と酸素原子とによりパラジウム塩と錯体形成をする二座配位子化合物との存在下に、且つ、分子状酸素の存在する雰囲気中で、酸化カップリングさせて、非対称置換ビフェニル類を選択的に製造することを特徴とする前記請求項1に記載のビフェニル類の製造方法。
    Figure 0003959602
    [ここで、Rは置換基であり、mは1〜3の整数である。]
  3. フタル酸ジエステルを、パラジウム塩と、銅塩と、窒素原子と酸素原子とによりパラジウム塩と錯体形成をする二座配位子化合物との存在下に、且つ、分子状酸素の存在する雰囲気中で、酸化カップリングさせ、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルを選択的に製造することを特徴とする前記請求項1〜2のいずれかに記載のビフェニル類の製造方法。
  4. 反応温度が50℃〜300℃であることを特徴とする前記請求項1〜3のいずれかに記載のビフェニル類の製造方法。
  5. 窒素原子と酸素原子とによりパラジウム塩と錯体形成をする二座配位子化合物が、化学式(3)で示される酸素原子を置換基に持つ含窒素ヘテロ環化合物であることを特徴とする前記請求項1〜4のいずれかに記載のビフェニル類の製造方法。
    Figure 0003959602
    [ここで、Rはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基または水酸基のいずれかであり、LはCHまたはNのいずれかであり、nは0〜3の整数である。]
  6. 窒素原子と酸素原子とによりパラジウム塩と錯体形成をする二座配位子化合物が、化学式(4)で示される酸素原子を置換基に持つ含窒素ヘテロ環化合物であることを特徴とする前記請求項1〜4のいずれかに記載のビフェニル類の製造方法。
    Figure 0003959602
    [ここで、Rは水酸基またはCOR基からなるキノリン誘導体(Rはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基または水酸基のいずれかである。)である。]
  7. 窒素原子と酸素原子とによりパラジウム塩と錯体形成をする二座配位子化合物が、化学式(5)で示される脂肪族アミノ化合物であることを特徴とする前記請求項1〜4のいずれかに記載のビフェニル類の製造方法。
    Figure 0003959602
    [ここで、Rはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基または水酸基のいずれかであり、R、Rはそれぞれ独立に水素、アルキル基またはアリール基のいずれかであり、nは0〜3の整数である。]
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