JP3958041B2 - フェノール樹脂多孔質砥石の製造方法 - Google Patents

フェノール樹脂多孔質砥石の製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂結合剤としてフェノール樹脂を用いた多孔質レジノイド砥石すなわちフェノール樹脂多孔質砥石およびその製造方法に関し、特に、組織中の気孔率を増加させたフェノール樹脂多孔質砥石に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、砥粒を相互に結合させる結合剤としてフェノール樹脂を用いた砥石は、粉末状のフェノール樹脂を砥粒にコーティングし、それを乾粉状態で所定の型に装填しプレス成形する方法により製造されている。
【0003】
一方、より研削時の切れ味すなわち研削性を向上させるため、砥石の多孔質化が求められている。研削加工中に発生した切り粉は砥石の気孔内に捕捉されることから、気孔の割合が大きくされていると接触面積が大きい場合や難削材の研削加工のように目詰まりが生じ易い研削加工においてもその目詰まりが好適に防止されるため、研削性が向上するのである。しかしながら、上記のようにプレス成形により製造できるフェノール樹脂多孔質砥石は気孔率50%程度が限界であり、それ以上の気孔率を有するフェノール樹脂多孔質砥石を製造しようとすると、熟成変形が大きく形状を維持できないなどの問題があった。
【0004】
また、気孔率を高くする目的で、研削の邪魔をしにくい軟質のフィラー(たとえば合成マイカなど)を砥石中に混入することがある。そのようにフィラーを混入した砥石では、フィラーが研削ポイントにおいて後退性を持つことによりその部分が気孔の機能を果たすため、高い研削性が得られるが、軟質のフィラーであっても若干の抵抗があり、そのフィラーがワーク表面に傷をつけてしまうことがあるという問題があった。
【0005】
これに対し、本発明者等は、先の出願(特願2000−137083号、平成12年5月10日出願)において、砥粒がフェノール樹脂結合剤によって相互に結合されてなる組織中に多数の気孔を有するフェノール樹脂多孔質砥石の製造方法を提案した。すなわち、(a) 砥粒、フェノール樹脂水溶液、硬化剤、および界面活性剤を混合した流動性混合物を攪拌することにより、その砥粒、そのフェノール樹脂水溶液、その硬化剤およびその界面活性剤を均一に混合するとともに、その流動性混合物中に多数の気泡を創成させる混合攪拌工程と、(b) その流動性混合物を所定の型内に流し込む流し込み工程と、(c) その所定の型内で前記流動性混合物に硬化剤を混合することによりその流動性混合物を硬化させる硬化工程と、(d) その硬化工程で硬化させて得られた硬化成形体を乾燥させて、その硬化成形体から水分を除去する乾燥工程とを、含むフェノール樹脂多孔質砥石の製造方法を提案した。これによれば、混合攪拌工程において、砥粒、フェノール樹脂水溶液、硬化剤、および界面活性剤が混合された流動性混合物が攪拌されることによって、砥粒、フェノール樹脂水溶液、硬化剤、および界面活性剤が均一に混合されるとともに、流動性混合物の内部に多数の気泡が巻き込まれ、流動性混合物に含まれる界面活性剤の起泡作用および整泡作用によって、均一な気泡が発生し且つその状態が長時間に亘って維持されるため、流し込み工程において型内に流し込まれ、更に硬化工程において硬化させられる過程においても、その創成された気泡の殆どが維持される。そのため、硬化工程においてフェノール樹脂が硬化させられ、更に乾燥工程において硬化成形体中の水分が除去されて得られたフェノール樹脂多孔質砥石には、たとえば0.3乃至30μmφ程度の微小連通気孔に加えて、その微小連通気孔よりも十分に大径のたとえば50μmφ以上の多数の独立気孔が形成される。このような砥粒を結合させるフェノール樹脂結合剤は気孔率が高く、研削面において砥粒の突き出しが得られやすいので、高い研削性能が得られる。また、砥粒よりも小径の微小連通気孔を有するフェノール樹脂結合剤により砥粒が保持されるので、砥粒は比較的弱い力で脱落するので、研削加工面を傷つけ難い。しかも多数の大径の独立気孔がチップポケットとしても機能するので、一層高い研削性能が得られる。
【0006】
【発明が解決すべき課題】
しかしながら、上記の製造方法により製造されたフェノール樹脂多孔質砥石では、それに含まれる気孔のうち微小連通気孔の大きさを制御しがたいので、フェノール樹脂多孔質砥石として適切な大きさの微小連通気孔を設けることができない場合があった。
【0007】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、フェノール樹脂多孔質砥石として適切な大きさの微小連通気孔を設けることができる製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の要旨とするところは、砥粒がフェノール樹脂結合剤によって相互に結合されてなる組織中に多数の気孔を有するフェノール樹脂多孔質砥石の製造方法であって、(a) 砥粒、フェノール樹脂水溶液、硬化剤、相分離調整剤、および界面活性剤を混合した流動性混合物を攪拌することにより、該砥粒、該フェノール樹脂水溶液、該硬化剤、該相分離調整剤および該界面活性剤を均一に混合するとともに、該流動性混合物中に多数の気泡を創成させる混合攪拌工程と、(b) その流動性混合物を所定の型内に流し込む流し込み工程と、(c) その所定の型内で前記流動性混合物を硬化させる硬化工程と、(d) その硬化工程で硬化させて得られた硬化成形体を乾燥させて、該硬化成形体から水分を除去する乾燥工程とを、含み、 (e) 前記フェノール樹脂結合剤を、前記砥粒よりも小径の微小連通気孔とその砥粒よりも大径の独立気孔とを多数有した三次元網目構造としたものである。
【0009】
【発明の効果】
硬化工程では、流し込み工程において所定の型内に流し込まれた流動性混合物中の水に溶解しているフェノール樹脂が三次元的に架橋することにより硬化成形体となって水から相分離するとともに、その硬化させられたフェノール樹脂が結合剤として砥粒を相互に結合するが、上記流動性混合物は、混合攪拌工程において砥粒、フェノール樹脂水溶液、相分離調整剤および界面活性剤が均一に混合させられているので、硬化成形体には、硬化させられたフェノール樹脂結合剤中に砥粒および水が均一に分散し、そのフェノール樹脂結合剤は、前記砥粒よりも小径の微小連通気孔とその砥粒よりも大径の独立気孔とを多数有した三次元網目構造とされる。このようにして製造されたフェノール樹脂多孔質砥石は、フェノール樹脂結合剤が三次元網目構造を有することにより、砥粒よりも小径の微小連通気孔が無数に構成されるとともに、砥粒より大きな独立気孔を備える構造を有する。このように製造されたフェノール樹脂多孔質砥石は、砥粒を相互に結合させるフェノール樹脂結合剤が三次元網目構造を有することから、その気孔率が高く、加えて、砥石の研削面において砥粒の突出しが得られ易いので、高い研削性が得られる。さらに、砥粒がその砥粒よりも小径の微小連通気孔を無数に構成する三次元網目構造のフェノール樹脂結合剤により砥石中に保持されていることから、砥粒は比較的弱い力で脱落するので、被削材の表面を傷つけにくい。また、上記の製造方法により製造されたフェノール樹脂多孔質砥石は、攪拌工程において、相分離調整剤により上記の微小連通気孔の大きさが好適に制御できるので、フェノール樹脂多孔質砥石として適切な大きさの微小連通気孔を設けることができる。しかも、多数の独立気孔には、研削中に発生した切り粉が捕捉されるので、一層高い研削性が得られる。
【0010】
たとえば、流動性混合物は、攪拌工程において攪拌されることによって空気が巻き込まれて内部に多数の気泡が創生されるが、その流動性混合物には界面活性剤が含まれていることから、通常はその起泡作用および整泡作用によって微小且つ均一な起泡が液状樹脂内で一様に発生し、しかも、その状態が長時間に亙って維持されるため、流し込み工程において型内に流し込まれ、さらに硬化工程において硬化させられる過程においても、その創生された起泡の殆どが維持される。これによって比較的大きめの空隙が形成される。また、硬化過程では、樹脂が高分子化することにより、その水溶性が低下し、固相−液相分離を生じるが、界面活性剤の作用により微細且つ均一なミセル(表面活性剤溶液中にある濃度以上で生成される表面活性分子)状の相分離形態となり、その後、ミセルの溶媒を除去することにより微細な空隙が形成される。このため、多孔質のレジノイド砥石中には、上記比較的大きめの空隙に対応する比較的大きな大径気孔と、上記微細な空隙に対応する比較的小さな微小連通気孔とが形成される。ここで、上記攪拌工程において、前記相分離調整剤を用いて微細且つ均一なミセル状の相分離形態の大きさが調整されるので、所望の大きさの微細且つ均一な微小連通気孔が形成される。上記大きな大径気孔は独立気泡として形成されることから、相互に独立し且つ均一に分布する。また、微小連通気孔もミセルに由来することから、樹脂マトリックス中に均一に分散したものとなる。このようにして得られた多孔質レジノイド砥石は、2種類の気孔形態を有し、且つ高い気孔率を有することになる。2種類の気孔を有することにより高い気孔率を有し、研削加工中に発生した切り粉が独立した大径気孔内にも捕捉され、微小連通気孔により砥石としての強度を十分に保ちながら砥粒を保持する保持力が弱くなりすぎることがなく、研削過程で結合剤が抵抗なる適度に磨耗していくことが可能となるので、高い研削性が得られる。
【0011】
【発明の他の態様】
ここで、上記のフェノール樹脂多孔質砥石は、50%以上の気孔率を備え、且つ50μm以上の気孔径を有する大径気孔と、0.3乃至30μmの気孔径を有する小径気孔とを備えたものである。このようにすれば、十分な容積の気孔と、チップポケットして機能するような比較的大径の50μm以上の気孔径を有する大径気孔と、フェノール樹脂を好適に脱落させるためにたとえば砥粒よりも小径の0.3乃至30μmの気孔径を有する小径連通気孔とが備えられる。
【0012】
また、前記アルカリ性のフェノール樹脂水溶液は、樹脂の重量平均分子量が500乃至8000、固形分が30〜75重量%、フェノールに対するホルムアルデヒドのモル比が1.0から3.0、フェノールに対する水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物のモル比が0.3乃至1.5であるものを用いることができる。
【0013】
また、前記アルカリ性のフェノール樹脂水溶液は、有機エステル化合物で硬化可能アルカリ性フェノール樹脂であり、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等のアルカリ性触媒の存在下でフェノール類とアルデヒド類とを縮合させて得られるものである。
【0014】
また、前記水溶性フェノール樹脂を得る際に用いられる上記のフェノール類としては、フェノールの他、クレゾール、3,5−キシレノール、ノニルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、イソプロペニルフェノール、フェニルフェノール等のアルキルフェノールや、レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、フロログリシン等の多価フェノールが挙げられる。また、カシューナッツ穀液、リグニン、タンニンのようなフェノール系化合物の混合物よりなるものも、フェノール類として使用されことができる。これら各種のフェノール類を単独で、或いは2種以上の混合状態で使用されてもよい。
【0015】
上記アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール、グリオキザール等が単独で、または2種以上混合して用いられる。
【0016】
上記フェノール類とアルデヒド類とを縮合させる際に使用する触媒としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、等のアルカリ金属水酸化物が単独で、または2種以上の混合して用いられる。水溶性フェノール樹脂は常圧により、フェノール類とアルデヒド類とをアルカリ金属水酸化物の存在下で水中で反応させて得られるが、アルカリ金属水酸化物はフェノール類に対して0.7乃至5.0倍モルの範囲が良く、特に1.0乃至3.0倍モルが望ましい。アルカリ金属水酸化物がフェノール類に対して0.7倍モル未満では強度および樹脂の保存安定性の面から不十分であり、逆に5.0倍モルを超えると作業環境上好ましくはない。
【0017】
上記アルデヒド類はフェノール類に対して1.0乃至5.0倍モルの範囲が良く、特に1.5乃至3.0倍モルが好ましい。アルデヒド類がフェノール類に対して1.0倍モル未満では十分な強度を発現せず、逆に5.0倍モルを超えると未反応アルデヒドによる作業環境の悪化などが懸念される。粘結剤組成物中にはその他の添加剤として、従来より公知であるシランカップリング剤を使用することもできる。たとえば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランやγ−アミノプロピルトリエトキシシランなどが好ましい。なお、このシランカップリング剤は粘結剤組成物中に添加配合してもよいが、攪拌工程で直接添加して配合してもよい。
【0018】
次に、前記界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)等を使用することができる。好ましくは、アニオン界面活性剤或いは非イオン性界面活性剤が用いられる。アニオン性或いは非イオン性界面活性剤を用いると、それらアニオン性或いは非イオン性界面活性剤は起泡効果が高いので、一層気孔率の高い砥石が得られる利点がある。上記アニオン界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩、高級アルコールリン酸モノエステルジナトリウム塩、アルキルリン酸ナトリウム塩、ジアルキルジチオリン酸亜鉛等のリン酸エステル塩を使用することができる。
【0019】
前記非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、、ポリオキシエチレンアビニエチルアルコール、ポリオキシエチレンアルキルチオエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールエチレンジアミン、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリ脂肪酸エステル等のポリオキシエチレン型界面活性剤、エチレングリコールモノ脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノ脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ペンタエリスリット脂肪酸エステル、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ソルビタンセスキ脂肪酸エステル、ソルビタントリ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸モノイソプロパノールアミド等の多価アルコール型及びアルキロールアミド型界面活性剤、ポロオキシエチレンアルキルアミン、N−アルキルプロピレンジアミン、N−アルキルポリエチレンポリアミン、N−アルキルポリエチレンポリポリアミンジメチル硫酸塩、アルキルビグアニド、長鎖アミンオキシド等のアミン型界面活性剤を使用することができる。
【0020】
本発明でフェノール樹脂水溶液を硬化させるために用いられる硬化剤としては、有機エステル硬化剤が好適に用いられる。この有機エステル硬化剤としては、従来より水溶性フェノール樹脂の硬化剤として使用されているものを使用することができ、たとえば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸エチル、乳酸エチル、セバシン酸メチル、エチレングリコールジアセテート、ジアセチン、トリアセチン等の炭素数1〜10の一価もしくは多価アルコールと炭素数1〜10の有機カルボン酸とから誘導されるカルボン酸エステル類、又はγ−ブチロラクトン、γ−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類、又はエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、4−エチルジオキソロン、4−ブチルオキソロン、4,4−ジメチルジオキソロン、4,5−ジメチルジオキソロン等の環状シルキレンカーボネート類(有機炭酸エステル類)等が挙げられる。中でも、臭気や引火性の問題を解決する目的で、γ−ブチロラクトン、γ−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類が特に好ましく用いられる。
【0021】
微細且つ均一なミセル状の相分離形態の大きさが調整されるように、すなわち所望の大きさの微細且つ均一な微小連通気孔が形成されように、本発明の攪拌工程において混合される前記相分離調整剤としては、たとえばポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルローズ、アルギン酸などのヒドロキシル基を持つ水溶性高分子化合物が、好適に用いられる。
【0022】
本発明のフェノール樹脂多孔質砥石のフェノール樹脂結合剤にミクロ的な気孔である前記微小連通気孔が微細且つ均一に形成されるメカニズムは、たとえば以下のように考察される。すなわち、樹脂が硬化してゆく過程において、換言すれば高分子鎖の三次元的架橋反応において、アルカリ性フェノール樹脂・エステル硬化剤反応系では、樹脂の流動性がなくなった時点(ゲル化点)でも、樹脂相が可溶化しており、溶媒をブリードアウト(滲出或いは浸出)していない。そして、さらに反応が進行すると分子鎖の凝集力が作用し、樹脂相と溶媒相に相分離する特徴がある。本発明における多孔質樹脂においてブリードアウトする溶媒相は主に水であり、このブリードアウトする樹脂相と溶媒相の界面状態に対応して、硬化後におけるミクロ的な気孔が生成されてその形状や分散形態が決定されるものと考えられる。上記相分離過程における界面状態は前記界面活性剤を用いて制御される。また、上記相分離過程を制御するために相分離調整剤が用いられる。この相分離調整剤は、樹脂の硬化に伴ってブリードアウトした水を保持することができ、この保持効果で樹脂が硬化した段階での体積収縮を抑制し、相分離調整剤の水保持量に対応した大きさの気孔寸法に制御ができるものと考えられる。したがって、攪拌等による空気を内包させたことによる気泡をもたない場合でも、或いは真空攪拌機などを用いて機械的に取り込んだ空気による気泡を除去した場合でも、本発明によれば、微小連通気孔がフェノール樹脂結合剤内に微細且つ均一に形成されたフェノール樹脂多孔質砥石を得ることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明のフェノール樹脂多孔質砥石10の表面を拡大して示す図である。図1に示すように、砥粒12が、網目構造のフェノール樹脂結合剤14により相互に結合させられている。なお、フェノール樹脂多孔質砥石10の内部においてもフェノール樹脂結合剤14は網目構造であるので、三次元網目構造となっている。そのフェノール樹脂結合剤14の網と網との間に形成される空間が微小連通気孔16であり、フェノール樹脂結合剤14の網目構造が三次元的に広がっていることから、この微小連通気孔16も三次元的に相互に連通させられている。また、独立気孔18は、上記微小連通気孔16よりも十分に大きく、且つ相互に互いに独立して組織中に略均一に分散して存在している。
【0025】
上記フェノール樹脂多孔質砥石10は、たとえば、図2に示す各工程を経て製造される。混合攪拌工程1で用いるフェノール樹脂水溶液は、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等のアルカリ性触媒の存在下で、フェノール類とアルデヒド類とを常圧において水中で縮合させて得られるものであり、必要な場合には更に上記アルカリ性触媒が追加される。このようにして得られたフェノール樹脂水溶液中に含まれるフェノール樹脂は水溶性であり、その重量平均分子量Mwは500 〜8000である。
【0026】
上記フェノール類には、フェノールの他、たとえば、クレゾール、3,5-キシレノール、ノニルフェノール、p-tert−ブチルフェノール、イソプロペニルフェノール、フェニルフェノール等のアルキルフェノールや、レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、フロログリシン等の多価フェノールでもよい。また、カシューナッツ殻液、リグニン、タンニンのようなフェノール系化合物の混合物よりなるものも、フェノール類として使用することができる。これら各種のフェノール類を単独で、または2種以上を混合して使用することもできる。上記アルデヒド類としては、たとえば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール、グリオキザール等が用いられ、それらを単独で、または2種以上混合して使用することもできる。このアルデヒド類は、フェノール類に対して1.0 〜5 倍モルの範囲であれば良く、特に1.0 〜3.0 倍の範囲が良く、さらに、1.5 〜2.5 倍モルがより好ましい。アルデヒド類がフェノール類に対して1.0 倍モル未満では架橋後に十分な強度を発現せず、逆に5.0 倍モルを越えると未反応アルデヒドによる作業環境の悪化などが懸念されるからである。
【0027】
上記アルカリ性触媒としては、たとえば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が単独で、または2種以上混合して使用される。このアルカリ性触媒はフェノール類に対してたとえば0.01〜2 倍モルの範囲が良く、特に0.02〜1.2 倍の範囲が良く、さらに、0.5 〜1.0 倍モルの範囲が好ましい。アルカリ性触媒がフェノール類に対して0.01倍モル未満では樹脂の製造に多大な時間がかかるため不十分であり、逆に2.0 倍モルを越えると硬化剤が大量に必要となり、また、作業環境上好ましくないからである。
【0028】
上記フェノール樹脂水溶液は、フェノール樹脂成分がたとえば30〜75質量%に調製される。なお、このフェノール樹脂水溶液には、その他の添加剤として、砥粒の接着性向上のために、従来より公知であるシランカップリング剤を添加してもよい。このシランカップリング剤としては、たとえば、エポキシ系シランやアミノシランなどが好ましい。また、このシランカップリング剤は、混合攪拌工程1において添加してもよい。
【0029】
上記フェノール樹脂水溶液を硬化させるために混合攪拌工程1で用いる硬化剤には、有機エステル硬化剤、酸硬化剤等を用いることができる。有機エステル硬化剤としては、従来よりアルカリ性フェノール樹脂水溶液の硬化剤として用いられているものを使用することができ、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸エチル、乳酸エチル、セバシン酸メチル、エチレングリコールジアセテート、ジアセチン、トリアセチン等の炭素数1〜10の一価もしくは多価アルコールと炭素数1〜10の有機カルボン酸とから誘導されるカルボン酸エステル類、又はγ−ブチロラクトン、γ−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類、又はエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、4−エチルジオキソロン、4−ブチルジオキソロン、4,4-ジメチルジオキソロン、4,5-ジメチルジオキソロン等の環状アルキレンカーボネート類等が挙げられる。中でも、臭気や引火性の問題を解決する目的で γ−ブチロラクトン、γ−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類を特に好ましく使用することができる。また、酸硬化剤としては、たとえば、硫酸、リン酸などの無機酸、フェノールスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸などの有機酸、および、これらの混合物が挙げられる。
【0030】
微細且つ均一なミセル状の相分離形態の大きさが調整されるように、すなわち所望の大きさの微細且つ均一な微小連通気孔が形成されように、上記の混合攪拌工程1において混合される前記相分離調整剤としては、たとえばポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルローズ、アルギン酸などのヒドロキシル基を持つ水溶性高分子化合物が、好適に用いられる。
【0031】
混合攪拌工程1では、上記砥粒、フェノール樹脂水溶液、その硬化剤、および相分離調整剤を攪拌混合機中に投入し、必要な場合には界面活性剤もその攪拌混合機中に投入し、所定時間攪拌・混合する。界面活性剤も混合する場合には、フェノール樹脂水溶液に対して、砥粒、硬化剤および界面活性剤を順次或いは同時に混合するが、それらを順次混合する場合は、その混合順序は何れが先でもよい。ただし、硬化剤は、反応を制御する上で混合攪拌工程1の最後に添加し、その後、所定時間攪拌することが望ましい。また、この混合攪拌工程1により、フェノール樹脂水溶液、砥粒、硬化剤および必要な場合には界面活性剤が混合された流動性混合物が得られればよいので、フェノール樹脂水溶液を予め調製せず、この混合攪拌工程1において、水溶性フェノール樹脂、水、アルカリ金属水酸化物、砥粒、硬化剤、および必要な場合は界面活性剤を任意の順番で混合することにより流動性混合物を調製してもよい。さらに、ヘキサミン等の樹脂強度向上剤、アジピン酸ジヒドラジド(AADH)等の安定化剤、アエロジル等の粘度調節剤等を適宜混合してもよい。
【0032】
上記攪拌は、流動性混合物中に界面活性剤が混合されていない場合には、フェノール樹脂水溶液中に砥粒12を均一に分散させるのに十分な攪拌強度および時間であればよいが、界面活性剤は流動性混合物内に均一な気泡を一様に発生させるために混合されているので、流動性混合物中に界面活性剤が混合されている場合には、砥粒12が均一に分散し、且つ所望量の気泡を発生させるのに十分な攪拌強度および時間に設定される。なお、ここで発生させられる独立気泡の平均気孔径は50μm 以上となる。
【0033】
上記界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)等が使用できるが、好ましくはアニオン或いは非イオン界面活性剤を用いる。アニオン界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩、高級アルコールリン酸モノエステルジナトリウム塩、アルキルリン酸ナトリウム塩、ジアルキルジチオリン酸亜鉛等のリン酸エステル塩が使用できる。カチオン界面活性剤としては、ラウリルアミンクロライド、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の高級アルキルアミン塩、トリエタノールアミンモノステアレートの蛾酸塩、ステアラミドエチルジエチルアミンの酢酸塩、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリンなどの高級脂肪酸のアミン塩、セチルピリジニウムクロライドなどの高級アルキルハライドのアミン塩、ステアラミドメチルピリジニウムクロライドなどの高級脂肪族アミドのアミン塩といったアンモニウム塩や、これらに類するスルホニウム塩又はホスホニウム塩等が使用できる。両性界面活性剤としては、N-アルキルトリグリシン、ジメチルアルキルベタイン、N-アルキルオキシメチル-N,N- ジエチルベタイン、アルキルベタイン、N-アルキル- β- アミノプロピオン酸塩、アルキルジ(アミノエチル)グリシン塩酸塩、N-アルキルタウリン塩、アミノエチルイミダゾリン有機酸塩等が使用できる。非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアビエチルアルコール、ポリオキシエチレンアルキルチオエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコオール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコオールエチレンジアミン、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンジ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリ脂肪酸エステル等のポリオキシエチレン型界面活性剤、エチレングリコールモノ脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノ脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ペンタエリスリット脂肪酸エステル、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ソルビタンセスキ脂肪酸エステル、ソルビタントリ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸モノイソプロパノールアミド等の多価アルコール型及びアルキロールアミド型界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアミン、N-アルキルプロピレンジアミン、N-アルキルポリエチレンポリアミン、N-アルキルポリエチレンポリアミンジメチル硫酸塩、アルキルビグアニド、長鎖アミンオキシド等のアミン型界面活性剤が使用できる。
【0034】
続く流込み工程2においては、前記フェノール樹脂多孔質砥石10の形状に対応する内面形状を備えた型内に、前記混合攪拌工程1で十分に混合・攪拌された流動性混合物を流し込む。
【0035】
続く硬化工程3においては、流込み工程2において型内に流し込んだ流動性混合物を所定時間放置することにより、或いは、型内に流し込んだ流動性混合物を所定の温度に加熱することにより、流動性混合物中のフェノール樹脂を硬化すなわち架橋させる。
【0036】
流動性混合物中のフェノール樹脂が硬化させられると、流動性混合物は上記型の内形を有する硬化成形体となる。このとき、フェノール樹脂は三次元網目形状に硬化し、この硬化したフェノール樹脂が結合剤14として働き、砥粒12を相互に結合する。このようにフェノール樹脂が三次元網目形状に架橋していくメカニズムは必ずしも明らかではないが、以下のように考察できる。なお、本発明はこのメカニズムに拘束されるものではない。
【0037】
すなわち、硬化剤の添加等によりフェノール樹脂が硬化していく過程において、水に溶けている水溶性フェノール樹脂は、まず、水と相分離しない状態で流動性が消失する(ゲル化)。この状態では樹脂相は可溶化していて外観上は透明であり、溶媒は浸出していない。さらに三次元架橋反応が進行すると、分子鎖の凝集力が働き、樹脂相(固相)と水相(溶媒相)に分離して樹脂が三次元網目形状となると考えられる。この状態では外観が不透明になり、ブリードアウト(滲出或いは浸出)した溶媒を空気と置換すれば、三次元網目形状の網目形状の微小連通気孔16となる。この微小連通気孔16の大きさ或いは容積比は、水溶性フェノール樹脂と水との比を変えることにより変化し、水溶性フェノール樹脂に対して水が多いほど網目の大きさ或いは容積比が大きくなる。また、このときの溶媒相は主に水であり、ブリードアウト樹脂相と溶媒相との界面状態を界面活性剤を用いて制御することにより、ミクロ的に生成される微小連通気孔16の形状や分散形態が調節される。たとえば界面活性作用により微小連通気孔16の気孔径が均一化した状態となる。さらに、上記相分離過程を制御する目的で前記相分離調整剤が混入されている。この相分離調整剤は、樹脂硬化に伴ってブリードアウトした水を保持することにより、この水保持効果により樹脂が硬化した段階でも体積収縮を抑制することが可能となり、微小連通気孔16の気孔径を大きく形成することに寄与する。このようにして水溶性フェノール樹脂と水との比、界面活性剤の混合率、相分離調整剤の混合率を変えることにより、微小連通気孔16の大きさをたとえば30μm 以下、好ましくは5μm 以下の範囲で変化させることができるが、微小連通気孔16の大きさは砥粒12よりも小径である必要がある。砥粒12よりも微小連通気孔16が大径の場合にはフェノール樹脂結合剤14は砥粒12を支持することができないからである。また、界面活性剤の働きにより、微小連通気孔の気孔径が一層均一化される。
【0038】
また、前記界面活性剤は独立気孔18を制御する機能をも有している。すなわち、混合攪拌工程1において起泡させられた流動性混合物は、界面活性剤を含んでいることから、流し込みおよび硬化の過程においても気泡が消失せず、攪拌終了時の発泡状態を保っている。そのため、硬化終了時において、その硬化成形体中には、図1に示す、気泡に由来する互いに独立した多数の独立気孔18が形成されるので、多孔質成形体が得られる。これら多数の独立気孔18は、流動性混合物およびそれが硬化させられた硬化成形体に何ら圧力が加えられていないことから、上記の混合攪拌工程1において発生させられた気泡そのままの形状に形成されている。なお、これら独立気孔18のないフェノール樹脂多孔質砥石を製造するため、前記流動性混合物中に界面活性剤を混合しない場合でも、攪拌の機械的作用によりに若干の気泡が混入するが、それら若干の独立気孔18は研削性能に悪影響を与えない限りあえて除去する必要はない。
【0039】
続く乾燥工程4では、上記硬化成形体を乾燥させ、その硬化成形体中の水分を除去する。硬化成形体から水分が除去されると、三次元網目構造間を満たしていた水が空気に置換されて無数の微小連通気孔16が形成され、この微小連通気孔16によっても多孔質化される。上記乾燥工程4によりフェノール樹脂多孔質砥石10が製造されるが、強度を向上させるため、熱処理工程を設け、そのフェノール樹脂多孔質砥石10をさらに加熱処理してもよい。
【0040】
(実験例)
次に、フェノール樹脂多孔質砥石10の製造方法の実験例を説明する。なお、フェノール樹脂多孔質砥石10の寸法は、φ300 ×20 ×φ127 とした。
【0041】
まず、混合攪拌工程1では、アルカリ性フェノール樹脂水溶液(旭有機材工業株式会社製HP8300L(固形分48質量%、平均分子量2000))を40質量%、相分離調整剤としてポリビニルアルコール水溶液(固形分20質量%)を5質量%、アニオン界面活性剤を5質量%、砥粒として炭化ケイ素#3000 を43質量%、ラクトン系エステル硬化剤を8質量%使用し、それらを混合器に以下の順で順次投入して混合・攪拌した。混合器には、特殊機械化工業株式会社製のTKホモミキサーを使用し、攪拌羽根には、同社のエッジタービンを使用し、攪拌の回転速度は500 〜1500r.p.m.とした。投入順序は、まず前記アルカリ性フェノール樹脂水溶液と親水性ポリマー(ポリビニルアルコール水溶液)と界面活性剤との混合物を5分間攪拌して気泡を発生させ、続いて、ヘキサミンを所定量添加して2分間混合攪拌し、続いて安定化剤(AADH)を所定量添加して1分間混合攪拌し、続いてアエロジルを所定量添加して1分間混合攪拌し、続いて、砥粒を投入して4分間混合攪拌し、最後に上記ラクトン系エステル硬化剤を所定量投入してさらに1.5 分間混合攪拌した。これにより、気泡が均一に分散した流動性混合物を得た。
【0042】
続く流込み工程2では、工程1で得た流動性混合物を、φ300 ×20×φ127 のフェノール樹脂多孔質砥石10を得るための所定の形状のポリプロピレン製の容器に流し込み、続く硬化工程3では、その容器内に流し込んだ流動性混合物を常温にて12時間放置して硬化成形体を得た。
【0043】
続く乾燥工程4では、上記硬化工程3で得た硬化成形体を60℃で48時間で乾燥し、次いで、硬化成形体をキュアー容器内に収容した状態で6時間後に150 ℃となるように室温或いは60℃から連続的に昇温し、150 ℃を1〜2時間保持し、キュアー容器ごと徐々に冷却した。室温に戻った後にキュアー容器からフェノール樹脂多孔質砥石10を取り出して気孔率73%のフェノール樹脂多孔質砥石10を得た。
【0044】
(比較例)
比較例1として、従来からのプレス成形方法によって、砥粒、粉末フェノール樹脂(樹脂ボンド)のみで砥石を製造しようとしたが、気孔率50%が限界であり、それを越えると150 ℃での熱処理時に収縮率が大きくなってしまい、結局、気孔率が50%以下となり、また、形状の維持もできなかった。
【0045】
比較例2として、上記実験例のフェノール樹脂多孔質砥石10と同様の調合でφ300 ×20×φ127 のフェノール樹脂砥石を作成し、その研削試験を行った。このフェノール樹脂砥石には、フィラーを使用することにより比較的気孔率を高くした。なお、フィラー材には研削の邪魔をしにくいとされる合成マイカを使用した。
【0046】
表1は、上記実験例のフェノール樹脂多孔質砥石10と比較例2の砥石との砥石構造を対比して示している。表3は、表2に示す研削条件下で実行し研削試験結果を対比して示している。
Figure 0003958041
(表2) 研削条件
研削盤 両頭平面研削盤(キャリヤ板径5インチ)
ワーク材質 アルミハードディスク板
加工時間 10分
加工圧力 100 g/cm2
砥石回転速度 (上砥石) 15 r.p.m. (下砥石) 45 r.p.m.
研削液 カネボウ株式会社製 ベルクーラント#3001 50倍希釈
Figure 0003958041
【0047】
上述のように、本実施例によれば、硬化工程3では、流し込み工程2において所定の型内に流し込まれた流動性混合物中の水に溶解しているフェノール樹脂が三次元的に架橋することにより硬化成形体となって水から相分離するとともに、その硬化させられたフェノール樹脂が結合剤14として砥粒12を相互に結合するが、上記流動性混合物は、混合攪拌工程1において砥粒12およびアルカリ性フェノール樹脂水溶液が均一に混合させられているので、硬化成形体には、硬化させられたフェノール樹脂結合剤14中に砥粒12および水が均一に分散している。そして、乾燥工程4において、その硬化成形体から水分が除去されて、その部分が微小連通気孔16となるので、このようにして製造されたフェノール樹脂多孔質砥石10は、フェノール樹脂結合剤14が三次元網目構造を有することにより、砥粒12よりも小径の微小連通気孔16が無数に構成された構造を有する。
【0048】
すなわち、本実施例のフェノール樹脂多孔質砥石10は、砥粒12を相互に結合させるフェノール樹脂結合剤14が三次元網目構造を有することから、その気孔率が高く、加えて、砥石10の研削面において砥粒12の突出しが得られ易いので、高い研削性が得られる。さらに、砥粒12がその砥粒12よりも小径の微小連通気孔16を無数に構成する三次元網目構造のフェノール樹脂結合剤14により砥石10中に保持されていることから、砥粒12は比較的弱い力で脱落するので、アルミハードディスク板の表面を傷つけにくい。
【0049】
また、本実施例によれば、混合攪拌工程1において、砥粒12、アルカリ性フェノール樹脂水溶液、ラクトン系エステル硬化剤に加えて、アニオン界面活性剤が混合された流動性混合物が攪拌されることによって、砥粒12、アルカリ性フェノール樹脂水溶液、ラクトン系エステル硬化剤およびアニオン界面活性剤が均一に混合されるとともに、流動性混合物の内部に多数の気泡が巻き込まれ、流動性混合物に含まれるアニオン界面活性剤の起泡作用および整泡作用によって、均一な気泡が発生し且つその状態が、流し込み工程2や硬化工程3を経てもその創成された気泡の殆どが維持される。そのため、硬化工程3においてフェノール樹脂が硬化させられ、更に、乾燥工程4において硬化成形体中の水分が除去されて得られたフェノール樹脂多孔質砥石10には、均一な微小連通気孔16に加えて、その微小連通気孔16よりも十分に大径の多数の独立気孔18を有する。これにより、本実施例のフェノール樹脂多孔質砥石10は、微小連通気孔16よりも十分に大径の独立気孔18をも多数有することから一層高い気孔率を有し、研削加工中に発生した切り粉がその独立気孔18内にも捕捉されることから、一層高い研削性が得られる。
【0050】
また、本実施例によれば、混合攪拌工程1において、砥粒12、アルカリ性フェノール樹脂水溶液、ラクトン系エステル硬化剤、アニオン界面活性剤に加えて、相分離調整剤が混合された流動性混合物が攪拌されることによって、砥粒12、アルカリ性フェノール樹脂水溶液、ラクトン系エステル硬化剤、アニオン界面活性剤、および相分離調整剤が均一に混合される。この相分離調整剤は、硬化工程3においてフェノール樹脂が硬化させられるとき、そのフェノール樹脂からブリードアウトする水を保持することにより、硬化時の収縮を抑制して微小連通気孔16の径寸法を制御する。これにより、所望の大きさの微小連通気孔16を有し或いは所望の高い気孔率のフェノール樹脂多孔質砥石10が得られる。
【0051】
また、本実施例によれば、フェノール樹脂水溶液はアルカリ性水溶液であり、硬化剤はラクトン系エステル硬化剤であることから、そのラクトン系エステル硬化剤により、流動性混合物中のフェノール樹脂が常温で迅速に硬化させられる利点がある。
【0052】
また、本実施例では界面活性剤としてアニオン性界面活性剤を用いていることから、そのアニオン性界面活性剤の高い起泡作用により一層気孔率の高い砥石が得られる利点がある。
【0053】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は上記実施例とは別の態様においても実施できる。
【0054】
たとえば、前述の実施例では硬化時間を12時間としたが、硬化時間は常温で20分程度でもよい。前記流動性混合物が一定の形態を維持する程度の硬さまで硬化させるには、その程度でも十分なのである。また、短時間でより確実に硬化させるために前記流動性混合物を加温してもよい。たとえば、60℃で1時間加温することにより硬化させてもよい。
【0055】
以上に説明したものはあくまでも本発明の一実施例であり、本発明はその主旨を逸脱しない範囲において種々変更が加えられ得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の本発明のフェノール樹脂多孔質砥石の表面を拡大して示す図である。
【図2】図1のフェノール樹脂多孔質砥石の製造工程を示す工程図である。
【符号の説明】
10:フェノール樹脂多孔質砥石
12:砥粒
14:フェノール樹脂結合剤
16:微小連通気孔
18:独立気孔

Claims (6)

  1. 砥粒がフェノール樹脂結合剤によって相互に結合されてなる組織中に多数の気孔を有するフェノール樹脂多孔質砥石の製造方法であって、
    砥粒、フェノール樹脂水溶液、硬化剤、相分離調整剤、および界面活性剤を混合した流動性混合物を攪拌することにより、該砥粒、該フェノール樹脂水溶液、該硬化剤、該相分離調整剤および該界面活性剤を均一に混合するとともに、該流動性混合物中に多数の気泡を創成させる混合攪拌工程と、
    該流動性混合物を所定の型内に流し込む流し込み工程と、
    該所定の型内で前記流動性混合物を硬化させる硬化工程と、
    該硬化工程で硬化させて得られた硬化成形体を乾燥させて、該硬化成形体から水分を除去する乾燥工程と
    を、含み、前記フェノール樹脂結合剤を、前記砥粒よりも小径の微小連通気孔と該砥粒よりも大径の独立気孔とを多数有した三次元網目構造としたことを特徴とするフェノール樹脂多孔質砥石の製造方法。
  2. 前記フェノール樹脂多孔質砥石は、50%以上の気孔率を備え、且つ50μm以上の気孔径を有する大径気孔と、0.3乃至30μmの気孔径を有する小径気孔とを備えたものである請求項1記載のフェノール樹脂多孔質砥石の製造方法。
  3. 前記フェノール樹脂水溶液はアルカリ性水溶液であり、且つ、前記硬化剤が有機エステル硬化剤である請求項1記載のフェノール樹脂多孔質砥石の製造方法。
  4. 前記界面活性剤がアニオン性界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤のいずれかである請求項1記載のフェノール樹脂多孔質砥石の製造方法。
  5. 前記相分離調整剤がヒドロキシル基を持つ水溶性高分子化合物である請求項1記載のフェノール樹脂多孔質砥石の製造方法。
  6. 前記相分離調整剤がポリビニルアルコールである請求項1記載のフェノール樹脂多孔質砥石の製造方法。
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