JP2007217517A - 回転式塗膜形成機器用回転体およびその製造方法 - Google Patents

回転式塗膜形成機器用回転体およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】フラーレンを主成分とする膜を擦り付けによって形成するための回転式塗膜形成機器用回転体を提供する。
【解決手段】気孔を有し、かつフラーレンを10〜80体積%含有する樹脂成型体に潤滑剤が含有されてなることを特徴とする回転式塗膜形成機器用回転体とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、フラーレンを主成分とする塗膜を物体表面に形成する技術に関する。より具体的には、該塗膜形成に使用される回転式機器の部品である回転体およびその製造方法に関する。
フラーレンは、球状またはラグビーボール状の形状をした、分子1個が1nm程度の炭素のみでできた分子性結晶であり、20個の正六角形と12個の正五角形からなるサッカーボール形の構造として有名なC60をはじめとして、C70やC84など数多くの種類の構造が知られている。フラーレンは、その特異な構造と物性から、新たな炭素材料として注目されており、フラーレンあるいはその誘導体を高濃度で含有する膜は、潤滑機能に優れていることが知られている。
従来、フラーレンの膜を形成する方法としては、真空蒸着法が一般的に知られているが、かかる方法は真空機器を必要とするため手軽な方法とはいえない。また、一般的な膜の形成方法としては、スピンコート法が広く知られているが、フラーレンについては高濃度で溶解させるための適当な溶媒が存在しないために現時点では適用困難である。したがって、フラーレンを含有する膜は、潤滑機能が期待されていながらも、その形成が困難であるため、工業的規模で使用されていないのが現状である。
ところで、膜を金属等の表面に形成する方法として、膜の材料となる物質を含有する成型体を表面に擦り付ける方法がある。例えば、鉛筆によって描かれる線画は紙面に鉛筆の芯を擦り付けることによって形成されるが、これは広義には芯材料の膜であると考えられる。この鉛筆芯に関し、無機体質剤を用いる高温熱処理型鉛筆芯において、フラーレンを添加してなる焼成鉛筆芯が提案されている(例えば特許文献1参照)。
特許第3373302号公報
しかしながら、上記の提案におけるフラーレンの添加は、フラーレンの添加によって焼成鉛筆芯の滑らかさが向上するという知見に基づくものであり、フラーレンの特性を膜(線画)に付与するためのものではなかった。そのため、フラーレンの添加量は、焼成鉛筆芯全体のわずか0.1質量%以下にすぎず、この鉛筆芯を擦り付けて得られる膜は実質的にフラーレンの膜とはいえなかった。
そこで本発明は、擦り付けによってフラーレンを主成分とする膜を形成するための、回転式塗膜形成機器用回転体およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、フラーレンを高濃度で含む特定の組成の樹脂成型体を用いて回転体を作成し、これを回転させながら基材表面に擦り付けると、基材への密着性が良好なフラーレン膜が作製できることを見出した。
かくして本発明の第一の態様は、気孔を有し、かつフラーレンを10〜80体積%含有する樹脂成型体に潤滑剤が含有されてなることを特徴とする回転式塗膜形成機器用回転体を提供して前記課題を解決するものである。ここで、フラーレンの体積%とは、樹脂成型体に形成されている気孔部も含む、樹脂成型体の全体の体積を100体積%とした場合の割合をいう。
この発明によれば、フラーレンを主成分とする膜を形成するための回転式塗膜形成機器用回転体を提供することができる。
この態様において、前記潤滑剤が、天然系ワックスまたは合成系ワックスから選択される少なくとも1種のワックスを含むことが好ましい。
このようにすることによって、擦り付け耐久性に優れた回転式塗膜形成機器用回転体とすることができる。
また、この態様において、樹脂成型体の樹脂は熱硬化性樹脂であることが好ましく、更に、熱硬化性樹脂がアルカリ性フェノール樹脂であり、その硬化剤として有機エステル化合物が用いられていることがより好ましい。
このようにすることによって、耐熱性、耐久性に優れた回転式塗膜形成機器用回転体とすることができる。
更に、この態様において、前記回転式塗膜形成機器用回転体は、軸を有していることが好ましい。
このようにすることによって、作業性、塗布性に優れた回転式塗膜形成機器用回転体とすることができる。
本発明の第二の態様は、樹脂溶液中にフラーレンを分散した後に硬化剤を添加して均一な流動性混合物とする工程、前記流動性混合物を型に入れて硬化させることにより硬化体とする工程、前記硬化体から溶媒分を除去乾燥して樹脂成型体とする工程、前記樹脂成型体に潤滑剤を含浸させる工程、からなることを特徴とする回転式塗膜形成機器用回転体の製造方法を提供して前記課題を解決するものである。
本発明の第三の態様は、樹脂水溶液中に発泡剤、水およびフラーレンを分散した後に硬化剤を添加して均一な流動性混合物とする工程、前記流動性混合物を型に入れて硬化させることにより硬化体とする工程、前記硬化体から水分を除去乾燥して樹脂成型体とする工程、前記樹脂成型体に潤滑剤を含浸させる工程、からなることを特徴とする回転式塗膜形成機器用回転体の製造方法であって、前記硬化体から水分を除去乾燥させて樹脂成型体とする工程の際に前記流動性混合物中に添加された前記発泡剤の化学反応によって気泡が形成されることにより前記樹脂成型体に気孔が形成されることを特徴とする回転式塗膜形成機器用回転体の製造方法を提供して前記課題を解決するものである。
第二および第三の態様の発明によれば、フラーレンを主成分とする膜を形成するための回転式塗膜形成機器用回転体の製造方法を提供することができる。
前記第二および第三の態様において、前記混合物は界面活性剤を含んでいることが好ましい。
この発明によれば、より気孔の体積が大きく、より多くの潤滑剤が含浸された回転式塗膜形成機器用回転体とすることができる。
本発明によれば、フラーレンを主成分とする膜を擦り付けによって形成するための、回転式塗膜形成機器用回転体が提供される。この回転式塗膜形成機器用回転体は、基材表面への高速回転での擦り付けに耐え得る十分な強度を有しており、耐久性に優れている。また、この回転体によって基材表面に形成される膜も、基材への密着性、ひいては耐久性に優れた膜である。形成された膜はフラーレンを高濃度に含むため、潤滑・離型・表面保護等のフラーレン由来の諸機能を有し、様々な用途に有用である。
本発明のこのような作用および利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
本発明の回転式塗膜形成機器用回転体(以下単に回転体ともいう)は、基本的にはフラーレンを含有する樹脂成型体に潤滑剤が含浸されてなり、高速で回転させながら金属等の基材表面に擦り付けることによって、基材表面に回転体の成分であるフラーレンの膜を形成させるためのものである。樹脂成型体は、フラーレンと樹脂を主原料とし、必要に応じて、発泡剤や界面活性剤等の気孔形成促進のための気孔形成剤、硬化剤、その他任意の添加剤を原料として製造される。以下、回転体の原料およびその製造方法について詳細に説明する。
1)回転式塗膜形成機器用回転体の原料
<フラーレン>
樹脂成型体の一つ目の主原料であるフラーレンは、炭素原子が中空状の閉殻構造をなす炭素クラスタであり、当該閉殻構造を形成する炭素数は、通常、60〜130の偶数である。フラーレンの具体例としては、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94、C96のほか、これらよりも多くの炭素を有する高次の炭素クラスタ等を挙げることができる。本発明では、これらの各フラーレン、および、フラーレンの混合品を適宜使用可能であり、その炭素数は特に限定されるものではないが、容易に製造が可能である等の観点から、フラーレンの混合品、またはC60を用いることが好ましい。
<樹脂および硬化剤>
樹脂成型体の二つ目の主原料である樹脂としては、その種類に特に制限がないが、塗膜形成時の摩擦による発熱を考慮すると、耐熱性の熱硬化性樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。硬化方法としては、高温硬化、紫外線による硬化に加え、硬化剤を用いる常温での硬化も行うことができ、用いる樹脂の種類によっては、樹脂とともに硬化剤も回転体の原料として添加される。熱硬化性樹脂の中でも特に好ましい樹脂は、アルカリ性フェノール樹脂である。
アルカリ性フェノール樹脂は、具体的には塩基触媒の存在下でフェノール類とアルデヒド類とを常圧において水中で縮合させて水溶液として調製されるものである。フェノール樹脂はアルカリ性に調整された水溶液を使用するが、場合によっては中性のフェノール樹脂を使用してもよい。この場合は塩基触媒をあわせて添加する。
アルカリ性フェノール樹脂の原料として使用することができるフェノール類としては、フェノールの他、例えば、クレゾール、3,5−キシレノール、ノニルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、イソプロペニルフェノール、フェニルフェノール等のアルキルフェノールや、レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、フロログリシン等の多価フェノールが挙げられる。また、カシューナッツ殻液、リグニン、タンニンのようなフェノール系化合物の混合物よりなるものも、フェノール類として使用することができる。これら各種のフェノール類は単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
アルカリ性フェノール樹脂の原料として使用することができるアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール、グリオキザール等が挙げられ、それらを単独で、または2種以上を混合して使用することができる。アルデヒド類は、フェノール類に対して1.0〜5倍モルの濃度であればよく、好ましくは、1.0〜3.0倍モルの濃度であり、より好ましくは、1.5〜2.5倍モルの濃度である。アルデヒド類の濃度がフェノール類に対して1.0倍モル未満では架橋後に十分な強度を発現せず、逆に5.0倍モルを越えると未反応アルデヒドによる作業環境の悪化などが懸念され、不都合である。
アルカリ性フェノール樹脂の合成に使用することができる塩基触媒としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ性水酸化物が挙げられ、単独で、または2種以上を混合して使用することができる。塩基触媒は、フェノール類に対して0.01〜2倍モルの濃度であればよく、好ましくは、0.02〜1.2倍モルの濃度であり、より好ましくは、0.5〜1.0倍モルの濃度である。塩基触媒の濃度がフェノール類に対して0.01倍モル未満では樹脂の製造に多大な時間がかかるため不十分であり、逆に2.0倍モルを越えると後述する硬化剤が大量に必要となり、また、作業環境上好ましくなく、不都合である。このようにして得られるフェノール樹脂は水溶性であり、その重量平均分子量Mは500〜8000である。フェノール樹脂水溶液は、フェノール樹脂成分が30〜75質量%であるように調製される。
フェノール樹脂の硬化反応機構としては、酸硬化、熱硬化、およびエステル硬化反応があるが、本発明においてはエステル硬化反応を用いることが望ましい。エステル硬化反応においては硬化剤として有機エステル化合物を使用する。有機エステル化合物としては、公知であるアルカリ性フェノール樹脂水溶液の硬化剤として用いられているものを使用することができ、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸エチル、乳酸エチル、セバシン酸メチル、エチレングリコールジアセテート、ジアセチン、トリアセチン等の炭素数1〜10の一価もしくは多価アルコールと炭素数1〜10の有機カルボン酸とから誘導されるカルボン酸エステル類、またはγ−ブチロラクトン、γ−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類、またはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、4−エチルジオキソロン、4−ブチルジオキソロン、4,4−ジメチルジオキソロン、4,5−ジメチルジオキソロン等の環状アルキレンカーボネート類等が挙げられる。なかでも、臭気や引火性の問題を解決する目的で、γ−ブチロラクトン、γ−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類を特に好ましく使用することができる。上記フェノール樹脂に硬化剤として有機エステル化合物を使用する場合、硬化温度は常温〜60℃である。フェノール樹脂と硬化剤としての有機エステル化合物の組み合わせは、他の樹脂と比較して簡易に樹脂成型体が得られるほか、溶媒として主には水を使用するので有機系溶媒と比較して廃液処理および作業の安全性に優れるという利点を有しており、本発明に特に好ましく用いられる。
<発泡剤>
樹脂成型体の製造時には、必要に応じて気孔形成剤として発泡剤が添加される。発泡剤を添加すると、化学反応によって樹脂成型体原料である流動性混合物中に気泡が形成され、この気泡が樹脂の硬化後に樹脂成型体中の気孔となる。
発泡剤としては、液状発泡剤および粉末発泡剤のどちらも使用することもできる。液状発泡剤の例としては、一般式ROOC−N=N−COOR(式中、Rは、直鎖でも分岐鎖でもよい炭素数1〜4の低級アルキル基を示す。)で表されるジアルキルアゾジカルボキシレートが挙げられる。好ましいジアルキルアゾジカルボキシレートは、ジイソプロピルアゾジカルボキシレートである。また、本発明に使用できる他のジアルキルアゾジカルボキシレートには、ジメチルアゾジカルボキシレート、ジエチルアゾジカルボキシレート、ジプロピルアゾジカルボキシレート、ジ−tert−ブチルアゾジカルボキシレート、およびそれらの混合物が含まれる。
粉末発泡剤の例としては、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタンメチレンテトラミン、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジドなどのヒドラジド化合物などが挙げられる。
これらの発泡剤は、目的に応じて、単独で、または2種以上を併用してもよい。また、本発明の趣旨を逸脱しない限り、例示した以外の物質も発泡剤として使用することができる。
<界面活性剤>
気孔形成剤として、発泡剤と伴に、または単独で、界面活性剤を使用することも好ましく行われる。界面活性剤は、樹脂成型体原料である流動性混合物を攪拌混合する際に気泡を発生させる。この気泡が巻き込まれたまま流動性混合物中に残留することによって、樹脂の硬化後に樹脂成型体中の気孔となる。
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤(ノニオン界面活性剤)等が挙げられるが、好ましくは、アニオン界面活性剤、または非イオン性界面活性剤である。
アニオン界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩、高級アルコールリン酸モノエステルジナトリウム塩、アルキルリン酸ナトリウム塩、ジアルキルジチオリン酸亜鉛等のリン酸エステル塩が挙げられる。
カチオン界面活性剤としては、ラウリルアミンクロライド、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の高級アルキルアミン塩、トリエタノールアミンモノステアレートの蛾酸塩、ステアラミドエチルジエチルアミンの酢酸塩、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリンなどの高級脂肪酸のアミン塩、セチルピリジニウムクロライドなどの高級アルキルハライドのアミン塩、ステアラミドメチルピリジニウムクロライドなどの高級脂肪族アミドのアミン塩といったアンモニウム塩や、これらに類するスルホニウム塩またはホスホニウム塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、N−アルキルトリグリシン、ジメチルアルキルベタイン、N−アルキルオキシメチル−N,N−ジエチルベタイン、アルキルベタイン、N−アルキル−β−アミノプロピオン酸塩、アルキルジ(アミノエチル)グリシン塩酸塩、N−アルキルタウリン塩、アミノエチルイミダゾリン有機酸塩等が挙げられる。
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアビエチルアルコール、ポリオキシエチレンアルキルチオエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコオール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコオールエチレンジアミン、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンジ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリ脂肪酸エステル等のポリオキシエチレン型界面活性剤、エチレングリコールモノ脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノ脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ペンタエリスリット脂肪酸エステル、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ソルビタンセスキ脂肪酸エステル、ソルビタントリ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸モノイソプロパノールアミド等の多価アルコール型およびアルキロールアミド型界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアミン、N−アルキルプロピレンジアミン、N−アルキルポリエチレンポリアミン、N−アルキルポリエチレンポリアミンジメチル硫酸塩、アルキルビグアニド、長鎖アミンオキシド等のアミン型界面活性剤が挙げられる。
これらの界面活性剤も、目的に応じて、単独で、または2種以上を併用してもよい。
<潤滑剤>
樹脂成型体に含浸される潤滑剤は、回転体の強度と、回転体の基材への擦り付けによって得られる膜の密着性を向上させる役割を有する。本発明に使用される潤滑剤としては一般的な潤滑剤が使用できるが、回転体の強度を上げるために、常温で固体のワックス状のものが好ましく、特にカルナバワックス、蜜ろう、木ろう等の天然系ワックス群、ポリエチレンワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、ジンクステアリルケトン、マイクロクリスタリンワックス等の合成系ワックス群が用いられる。特に好ましい潤滑剤はカルナバワックスである。
2)回転式塗膜形成機器用回転体の製造
回転体の製造方法としては特に制限はないが、通常、まずフラーレン、樹脂、および気孔部からなる樹脂成型体を作製し、その後樹脂成型体に潤滑剤を含浸させる方法が好ましく用いられる。
熱硬化性樹脂を用いる場合の製造方法を例にとると、まず、フラーレン、樹脂、および必要に応じて添加される気泡形成剤等の任意の添加剤を水等の溶媒に分散後、硬化剤を添加、混合して均一な流動性混合物を得る。
流動性混合物は、樹脂成型体におけるフラーレンの含量が通常10体積%以上、好ましくは20体積%以上、上限が80体積%以下となるように調製される。フラーレンの含量が少な過ぎると、回転体によって形成される膜中のフラーレン含量も低くなり、フラーレンの性能が十分に発揮されない。一方、フラーレン含量が80体積%を超えると、十分な強度を有する回転体が得られにくいため好ましくない。また、樹脂についても、樹脂成型体における樹脂の含量が下限は通常10体積%以上、好ましくは20体積%以上、上限は80体積%以下となるように調製される。樹脂の含量が少な過ぎると、バインダー力が弱く成型できないため好ましくない。なお、ここでいう樹脂成型体におけるフラーレンおよび樹脂の体積%は、樹脂成型体に形成される気孔部も含む、樹脂成型体の全体の体積を100体積%とした場合の、それぞれの体積の占める割合である。フラーレンや樹脂の体積は、樹脂成型体の原料とされたフラーレンや樹脂の重さを、それぞれの比重で割ることによって求めることができる。
調製された流動性混合物は、所定の型に流し込まれ、そのまま硬化させることによって所望の形状の硬化体となる。樹脂の硬化反応により、流動性混合物は、通常、型に流し込んでから約5分後にはほぼ硬化するが、硬化体は十分に硬化させるため、好ましくは、1〜24時間放置される。放置時間は、原材料の種類および成型寸法を考慮して適宜決定することができる。
硬化体は、その後、溶剤を除去乾燥することによって樹脂成型体とされる。その際の乾燥温度は、例えば溶媒が水の場合、60〜80℃の間で実施される。溶媒の乾燥の後、更に任意の工程として加熱して硬化を進めてもよい。加熱により樹脂の硬化を進めることができ、樹脂のフラーレン保持力を高めることができる。加熱温度は、例えばフェノール樹脂の場合、120〜170℃である。
乾燥工程により、硬化体内部組織中に液体として同伴された溶媒分は気化して硬化体の外部に除去される。その結果、硬化体に乾燥流路が形成され、または溶媒分が残存している箇所が空間となり、小さい連続気孔が形成された樹脂成型体となる。
流動性混合物に発泡剤や界面活性剤などの気泡形成剤が添加されている場合には、樹脂成型体により大きな体積の気孔が形成される。樹脂成型体に潤滑剤をより多く含浸させる観点から気孔の存在は重要であるため、本発明においては気孔形成剤を用いることが好ましく行われる。樹脂成型体の気孔率は、通常10体積%以上、好ましくは20体積%以上であるが、上限は90体積%以下である。気孔率は、気孔形成剤の添加の有無や、添加する気孔形成剤の組み合わせによって調整される。気孔率が10体積%を下回る場合は、塗膜形成中に生じる切削粉による目詰まりを起こしやすくなり、塗膜形成効率が低下するという不都合が生じるため好ましくない。逆に90体積%を上回る場合は、樹脂成型体の強度が不十分で成型できないという不都合が生じるため好ましくない。なお、気孔率は、樹脂成型体の体積と樹脂成型体の質量より各材料の比重を考慮して計算で求めることができる。簡単には、上述のように求めたフラーレンと樹脂の体積%の合計を100体積%から差し引いた値を気孔率とすることができる。また、気孔内に液状物質を含浸させてその含浸質量より求めることもできる。
形成された樹脂成型体は、その後、潤滑剤中に浸漬されることによって気孔内部に潤滑剤が含浸され、回転体となる。潤滑剤が常温で固体であるワックスの場合には、融点または軟化点以上の温度に加熱して液状にしてから用いる。浸漬時、雰囲気を減圧にすると潤滑剤の含浸が促進されるため好ましい。得られる回転体におけるフラーレンの含量を増やすために、潤滑剤に予めフラーレンを分散させておいたものに樹脂成型体を浸漬してもよい。
3)回転式塗膜形成機器用回転体
回転体の形状は、それ自身が高速で回転可能であれば特に制限はないが、均質な膜を作成するという観点からは、回転軸に垂直な断面形状は真円であることが好ましく、外形の好ましい例としては、円柱形や円錐形、および、これら形状を組み合わせた形状等が挙げられる。これらの場合、回転軸に垂直な方向の断面直径は、取り扱い易さの点からは好ましくは1mm以上100mm以下、より好ましくは2mm以上50mm以下である。また回転軸方向の好ましい長さは通常1〜500mmである。
また、回転体は、回転させ易く、取り扱いが容易なように、回転中心に軸を有することが好ましい。具体的な好ましい形状を図1に例示する。図1の回転体10は、円柱形状の基体1の上面中心から垂直に突出した軸2を有しており、この軸2を固定して回転させることで、回転体10全体が回転する形状になっている。
軸2の材質は、本発明の効果を奏する限り特に制限はないが、通常は金属、プラスチック、セラミックス等の素材が用いられる。好ましくは十分な強度を得るために金属が用いられる。軸2の直径は1mm以上50mm以下、好ましくは2mm以上20mm以下である。またその長さは通常10〜500mmである。
軸2の固定は、樹脂成型体に潤滑剤を含浸させる工程の前後のどちらに行ってもよいが、含浸が完了した後に行うことが好ましい。固定は接着剤を使用して固定する。接着剤としては、特に制限がないが、エポキシ樹脂が好ましい。
4)回転式塗膜形成機器用回転体による膜の形成
本発明の回転体による膜の形成は、回転体本体を回転させ、またはハンドグラインダーやドリルなどの軸を固定して回転させる機械に取り付けて回転させ、フラーレン膜を形成したい基材の表面に擦り付けることによって行われる。このときの回転数は、通常10rpm〜65000rpm、好ましくは、100rpm〜10000rpmである。基材に回転体が擦り付けられることによって、基材表面に回転体の成分である樹脂やフラーレンが付着し、フラーレンを含有する膜が形成される。この回転体を用いることで、金属・セラミックス・プラスチック・ガラス等の様々な基材表面に簡易にフラーレンの膜を形成することができる。形成された膜は潤滑・離型・表面保護等のフラーレン由来の諸機能を有し、様々な用途に有用である。
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
フラーレン(フロンティアカーボン社製、品名:ナノムミックス(C60:60質量%、C70:22質量%、それ以外の分子量の高いフラーレン:18質量%のフラーレン混合品))43g、レゾール型フェノール樹脂(旭有機材工業株式会社製、品名:HPR830)25g、発泡剤(大塚化学株式会社製、品名:ユニフォーム(登録商標)AZ90)0.9g、水25g、および界面活性剤(信越化学工業株式会社製、品名:F−258)1.5gを混合機に投入して均一に混合し、次いで硬化剤としてγ−ブチロラクトン(三菱化学株式会社製)6.0gを投入して更に均一に混合した。
得られた流動性混合物を外径15mm×厚さ22mm×穴径3mmの寸法の型に流し込み、室温で1時間放置して、発泡させながら硬化させた。この硬化体を60℃で12時間加熱して水分を乾燥させることによって樹脂成型体を得た。樹脂成型体の組成は、フラーレン体積率=23%、樹脂体積率=18%、気孔体積率=59%であった。この樹脂成型体に潤滑剤としてカルナバワックス(東亜化成株式会社製、品名:TOWAX(登録商標)−1PF)を50hPa下、130℃で含浸させた後、樹脂成型体の穴部に直径3mmの軸を取り付けることによって、直径10mm、厚さ20mmの円柱形の回転体を作製した。
この回転体を市販のハンドグライダーに取り付けて5000rpmで回転させ、♯1500のサンドペーパーで表面を研磨した厚さ2mmのステンレス鋼板(SUS304)上に擦り付けたところ、ステンレス鋼板表面が黒くなり、極めて良好なフラーレン膜が形成されたことが確認された。ステンレス鋼板厚の増加を測定することによってフラーレン膜の厚さを求めたところ、41μmであった。また、テープ(3M株式会社製、品名:スコッチ(登録商標)・メンディングテープ810)を用いてテープ剥離試験を行ったところ、剥離試験後の膜厚は33μmであり、若干の膜厚の減少はあるものの密着強度が高い膜であることが確認された。
(実施例2)
発泡剤を加えないこと以外は実施例1と同様の方法で回転体を作製した。潤滑剤を含浸させる前の樹脂成型体の組成は、フラーレン体積率=38%、樹脂体積率=31%、気孔体積率=31%であった。
潤滑剤を含浸させることによって得られた回転体を実施例1と同様にステンレス鋼板上に擦り付けたところ、表面は黒くなり、極めて良好なフラーレン膜が形成されることが確認できた。膜厚は38μm、テープ剥離後の膜厚は31μmであった。
(比較例1)
実施例1において使用されているレゾール型フェノール樹脂の代わりに、無機接着剤(常盤電気株式会社製、品名:FJ−521)である無機バインダーを用いた以外は実施例1と同様の条件で、原料の混合流し込みによって成型体を作製し、60℃で乾燥した。すると、成型体にひびの発生が見られ、十分な強度の成型体は得られなかった。
(比較例2)
実施例1において得られる樹脂成型体に潤滑剤を含浸させないこと以外は実施例1と同様の方法で回転体を作製し、ステンレス鋼板表面に擦り付けた。その結果、回転トルクによって樹脂成型体が粉状に飛散してしまい、ステンレス鋼板表面はわずかに黒くなるものの、膜厚の増加は確認できなかった。また、テープ剥離試験を行ったところ、表面の黒い粉は剥がれてしまうことが確認された。
以上、現時点において、最も実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う回転式塗膜形成機器用回転体およびその製造方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
回転式塗膜形成機器用回転体の好ましい形状の一例である。
符号の説明
1 基体
2 軸
10 回転式塗膜形成機器用回転体

Claims (8)

  1. 気孔を有し、かつフラーレンを10〜80体積%含有する樹脂成型体に潤滑剤が含有されてなることを特徴とする回転式塗膜形成機器用回転体。
  2. 前記潤滑剤が、天然系ワックスまたは合成系ワックスから選択される少なくとも1種のワックスを含むことを特徴とする請求項1に記載の回転式塗膜形成機器用回転体。
  3. 前記樹脂成型体の樹脂が熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の回転式塗膜形成機器用回転体。
  4. 前記熱硬化性樹脂がアルカリ性フェノール樹脂であり、前記アルカリ性フェノールの樹脂の硬化剤として有機エステル化合物が用いられていることを特徴とする請求項3に記載の回転式塗膜形成機器用回転体。
  5. 軸を有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転式塗膜形成機器用回転体。
  6. 樹脂溶液中にフラーレンを分散した後に硬化剤を添加して均一な流動性混合物とする工程、前記流動性混合物を型に入れて硬化させることにより硬化体とする工程、前記硬化体から溶媒分を除去乾燥して樹脂成型体とする工程、前記樹脂成型体に潤滑剤を含浸させる工程、からなることを特徴とする回転式塗膜形成機器用回転体の製造方法。
  7. 樹脂水溶液中に発泡剤、水およびフラーレンを分散した後に硬化剤を添加して均一な流動性混合物とする工程、前記流動性混合物を型に入れて硬化させることにより硬化体とする工程、前記硬化体から水分を除去乾燥して樹脂成型体とする工程、前記樹脂成型体に潤滑剤を含浸させる工程、からなることを特徴とする回転式塗膜形成機器用回転体の製造方法であって、前記硬化体から水分を除去乾燥させて樹脂成型体とする工程の際に前記流動性混合物中に添加された前記発泡剤の化学反応によって気泡が形成されることにより前記樹脂成型体に気孔が形成されることを特徴とする回転式塗膜形成機器用回転体の製造方法。
  8. 前記流動性混合物が界面活性剤を含んでいることを特徴とする請求項6または7に記載の回転式塗膜形成機器用回転体の製造方法。
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