JP3957329B2 - アクリルポリマーコーティングを有する高安定性放出制御型薬剤及びその製法 - Google Patents

アクリルポリマーコーティングを有する高安定性放出制御型薬剤及びその製法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の利用分野】
本発明はアクリルポリマー水性懸濁液から形成したコーティングを有する高安定性の固形放出制御型薬剤(固形放出制御型製剤とも称される)、特に固形投与薬剤(固形投与製剤または固形剤形とも称される)に関する。
【0002】
【発明の背景】
あらゆる形態の少用量の投与剤にとって重要なのはその安定性である。投与薬剤の安定性は特定の容器及び環境内に貯蔵される時にその物理的、化学的、微生物学的、治療学的及び毒物学的性質を維持できるかどうかに係わる。安定性測定の必要条件は例えば物品製造要項(GMPs‐Good Manufacturing Practices)、米国薬局方(U.S.P.)、新薬使用法(NDAs‐New Drug Applications )及び研究用新薬使用法(INDs‐Investigational New Drug Applications )に記載されている。
【0003】
持続的放出性の投与薬剤に使用される成分は貯蔵中の物理的安定性に関して特殊な問題を伴なうことが多い。例えば、従来この型の投与薬剤に使用されているワックスは長期にわたって貯蔵されると物理的に変性することが知られており、製造時に安定させたり、変化を防止する配慮がなされている。脂肪やワックスを精製した状態で使用すると不安定な形に結晶し、製造時の安定性試験中又は以後の貯蔵中にその有効性に予期できない変動が現われることも知られている。
【0004】
製品に組込む前に個々の成分が安定な形になり、処理を施してもこの状態が変化しないようにしたり、添加剤を組込むことで不安定化を遅らせたり、投与薬剤の個々の成分を最終製品が完成する前に安定状態に達するように誘導するなど、種々の方法を用いて高安定性の放出制御型投与薬剤を実現できる場合が多い。
【0005】
製品中の水分が製品の安定性に影響するおそれがあることも公知である。例えばエチルセルロースのようなポリマーフィルムの水和レベルの変化が透水率及び薬効を変化させる可能性がある。さらにまた、アラビアゴムのような結合剤が水分と熱の作用に置かれると溶解し難くなることも知られている。ただし、製品の水分は加工工程の制御と製品の適切な包装によってかなり適切に制御することができる。
【0006】
放出制御型投与薬剤を開発するため、公知技術ではある種のセルロース誘導体,ゼイン,アクリル樹脂,ワックス,高級脂肪アルコール,乳酸重合体,グリコール酸重合体のような疎水性ポリマーが使用されている。錠剤,カプセル,坐薬,丸薬,ビーズ又は微小球剤のような放出制御型投与薬剤を開発するためにこれらのポリマーを使用する方法として、個々の投薬単位をこれらの疎水性ポリマーでコーティングする。このような疎水性コーティングを溶液、懸濁液又は乾燥状態材料から形成することは公知である。これらのポリマーの多くは低水溶性であるから、ポリマーを有機溶媒に溶かし、この溶液を(ビーズや錠剤のような)個々の薬剤にスプレーし、溶媒を蒸発させることによりコーティングするのが普通である。
【0007】
公知技術では例えば錠剤やビーズを被覆するフィルムのように外観上の理由から、あるいは味付けマスクするために疎水性ポリマーの水性懸濁液が使用されている。ただし、このような投与薬剤はこれに含有されている活性薬を即時放出投与するために使用されるものである。
【0008】
疎水性ポリマー水性懸濁液を使用して安定した放出制御型の薬剤を製造する試みは安定性の問題が解決されないため未だ成果を上げていない。
従って、疎水性ポリマーの水性懸濁液から放出制御型の薬剤を製造することが望ましい。しかし、疎水性ポリマーの水性懸濁液を使用して安定した放出制御型の薬剤を製造することは安定性の問題を克服できないため今日まで成功していない。具体的には、数時間以上にわたる所期の活性薬放出プロフィルを得るため水性ポリマー懸濁液を使用してこれらの薬剤をコーティングした場合、エイジングに伴なって溶解放出プロフィルが変化することは既に公知である
【0009】
このことはPEGを含むエチルセルロース(配合比2:1;コーティング総量=3%w/w);ユードラジット(Eudragit )( 登録商標 )を含むエチルセルロース(配合比2:1;コーティング総量=3%w/w);及びユードラジットRL(コーティング量=1.5 w/w)でフィルムコートしたテオフィリンミニタブレットを温度及び相対湿度を変えて貯蔵した結果が薬物の放出速度に及ぼした影響を報告したマンディ(Munday)等の最近のリポート(Drug Devel.and Indus.Phar.,17(15)2135-2146 (1991)で明らかにされた。相対湿度(RH)を55〜60%の範囲に維持し、28℃,35℃及び45℃でサンプルを等温貯蔵し、その際、貯蔵条件を周期的に変え、先ず24時間にわたり45℃,55%RH、続く24時間は28℃,20%RH、次の24時間は5℃,10%RHとし、さらにこのサイクルを繰返えし、以後24時間ごとに貯蔵条件を交互に45℃,55%RHと28℃,0%RHとに設定した。上記ストレス条件下の貯蔵によって生じたエイジング現象がポリマーフィルムの性質に関係なく溶解を防げた。上記リポートによれば、コーティング後最初の21日目(等温貯蔵)に放出速度の低下が最大となる。
【0010】
有機溶媒溶液からポリマーを塗布すればこのような不安定の問題が起こらないことは公知であるが、ポリマーコーティングの調製に有機溶媒を使用することは、投与薬剤は可燃性,発癌性,環境汚染及び安全性という点で問題をはらむことになるので好ましくない。
【0011】
有機コーティングを使用して放出制御型の薬剤を製造する試みは安定性を欠き、貯蔵中に薬物放出速度が変化することでも成功していない。
例えば、ローム ファーマ(Rohm Pharma )社から市販されているユードラジット(Eudragit )のような水性アクリルポリマー懸濁液から形成された抑制(遅延)コーティングを利用する放出制御型薬剤の製造が望ましいとされて来た。しかし、貯蔵条件下で安定な放出制御型薬剤を得ることは今もって不可能である。
即ち、メーカーが設定した45℃で2時間という硬化条件に従って硬化した場合、ユードラジットから成る放出制御コーティングが不安定であることは既に公知である。
【0012】
【発明の概要】
従って、本発明の目的は種々の貯蔵条件下にあっても薬剤のほぼ安定した溶解プロフィルが得られるように水性アクリルポリマー懸濁液から形成された放出制御コーティングを有する経口投与用の放出制御型投与薬剤を提供することにある。
本発明の他の目的は、長期にわたる高温及び高湿度のような苛酷な条件下で安定なアクリル樹脂の水性懸濁液でコーティングした放出制御型投与薬剤を提供することにある。
上記及びその他の目的は、含有する治療活性剤をほぼ安定したパターンで放出する水性アクリル樹脂懸濁液から形成した放出制御コーティングを有する固形投与薬剤に係わる。
【0013】
本発明はコーティングを施した薬剤を高い又は“苛酷な”温度及び湿度条件下にある程度の時間を置けば治療活性剤の放出速度が広範囲の温度及び/又は湿度条件下におけるエイジングにもかかわらずほとんど変化しない所期の終点が得られるという驚くべき所見にも係わる。この驚くべき所見によれば、本発明の放出制御コーティングを種々の投与形態に応用することにより安定した放出制御型の薬剤を製造することができる。
【0014】
本発明は治療活性剤から成るコアと、例えば胃液のような水溶液中で治療活性剤を制御下に放出できるのに充分な量のアクリル樹脂の水性懸濁液で形成したコーティングとで構成された固形の投与薬剤にも係わる。この固形投与薬剤は治療活性剤の放出が高温及び/又は高湿度下にあってもほとんど影響されないように、すなわち周囲の条件よりも高温及び/又は高湿度に曝露してもほとんど変化しないようにコーティングを施してから硬化させる。
【0015】
本発明は又、治療活性剤でコーティングした複数の製薬用不活性ビーズと、水溶液中で前記治療活性剤を制御下に放出するのに好適な厚さのアクリル樹脂オーバコートから成る安定した放出制御型の固形経口投与薬剤に係わる。コーティングされたビーズを可塑化アクリルポリマーのガラス転移温度よりも高い温度で長時間にわたって硬化させることにより、高温及び/又は高湿度の貯蔵条件下でもほとんど影響されない溶解プロフィルを有する最終製品を得る。
【0016】
さらにまた、本発明は治療活性剤を可塑化アクリルポリマーでコーティングし、これを高温及び/又は高相対湿度の貯蔵条件下でもほとんど影響されない薬剤溶解プロフィルを可能にする時間にわたって可塑化アクリルポリマーのガラス転移温度以上の有効温度で硬化させた高安定性の固形放出制御型投与薬剤に係わる。
【0017】
本発明は又、アクリルポリマーの水性懸濁液で支持体をコーティングした高安定性放出制御型の薬剤を得る方法において、可塑化アクリルポリマーの水性懸濁液を調製し、治療活性剤を含む固形支持体を調製し、前記支持体が水溶液中に露出すると前記治療活性剤の所定の放出制御を達成するのに充分な量の前記可塑化アクリルポリマー水性懸濁液で前記支持体をコーティングし、前記コーティングされた支持体を可塑化アクリルポリマー水性懸濁液のガラス転移温度よりも高い温度で加熱することによって硬化させ、前記支持体が高温及び/又は高湿の貯蔵条件下に置かれてもほとんど影響されない溶解プロフィルが得られる終点に達するまで硬化を続けるステップから成ることを特徴とする方法に係わる
【0018】
他の実施態様では上記方法が特定の薬剤に上述した段階的硬化処理を施し、薬剤の溶解プロフィルがほぼ安定化するまで薬剤の溶解プロフィルを観察することによってこの特定薬剤の終点を求めるステップをも含む。必要なら前記終点に基づいて薬剤に変更を加えることにより、治療活性剤の所期の溶解プロフィルを得る。
【0019】
本発明の好ましい実施例では、放出制御コーティングを形成するアクリルポリマー1種類又は2種類以上のアンモニオメタクリレート共重合体から成る。アンモニオメタクリレート共重合体は公知であり、「NF XVII」には第4アンモニウム基含有量の低いアクリル及びメタクリル酸エステルの完全重合化共重合体であると記載されている。
【0020】
放出制御型薬剤を得るためには、治療活性剤を含む支持体を、約5〜15%の重量増加レベルを得るのに充分な量のアクリルポリマー水性懸濁液でコーティングすることを必要とするのが普通であるが、治療活性剤の物理的性質、所期の放出速度、水性アクリルポリマー懸濁液中の可塑化剤添加量、及び添加態様によってはコーティングの重量増加レベルが上記値以下でも以上でもよい。
【0021】
本発明の適当な放出制御型薬剤の一例では、37℃、900ml水性緩衝液(pH1.6 〜7.2 )中、100rpm という条件下で投与薬剤の試験管内溶液速度を米国薬局方パドル(Paddle)法に従って測定した結果、1時間後に治療活性剤の12.5〜42.5(重量)%が放出され、2時間後に25〜55(重量)%が放出され、4時間後に45〜75(重量)%が放出され、6時間後に55〜85(重量)%が放出される。この例が本発明を制限するものでないことはいうまでもない。
【0022】
詳しく上述したような所与の治療活性剤に関して所期の溶解プロフィルを得るためには、物理的性質の異なる2種類以上のアンモニオメタクリレート共重合体を組込まねばならない場合がある。例えば、中性(メタ)アクリルエステルに対する第4アンモニウム基のモル比を変化させることにより、形成されるコーティングの透過性を変え得ることは公知である。
【0023】
本発明の好ましい実施例では、ローム ファーマ社から商品名ユードラジット(Eudragit )RL30D及びユードラジット(Eudragit )RS30Dでそれぞれ市販されている。2種類の、水性懸濁液の形で使用されるアクリル樹脂ラッカーの混合物からアクリルコーティングを形成する。ユードラジットRL30D及びユードラジットRS30Dは第4アンモニウム基含有量の低いアクリルエステル及びメタクリルエステルの共重合体であり、アンモニウム基と残りの中性 (メタ)アクリルエステルのモル比はユードラジットRL30Dの場合には1:20、ユードラジットRS30Dの場合には1:40である。平均分子量は約150,000 である。参照記号RL(高透過性)及びRS(低透過性)はそれぞれの透過性を表わす。ユードラジットRL/RS混合物は水及び消化液に溶けないが、この混合物から形成されたコーティングは膨潤可能であり、水溶液及び消化液を透過させる。
【0024】
所期の溶解プロフィルを有する放出制御型薬剤を得るには本発明のユードラジットRL/RS懸濁液を所要の比率で混合すればよい。100%ユードラジットRL、50%ユードラジットRLと50%ユードラジットRSと、及び10%ユードラジットRLと90%ユードラジットRSで抑制コーティングを形成することによってそれぞれ所要の放出制御型調合剤を得ることができる。
それぞれのアクリル樹脂ラッカーの相対量を変えることによって溶解プロフィルを変化させるだけでなく、例えば、抑制コーティングの厚さを増減することによって最終製品の溶解プロフィルを変化させることができる。
【0025】
本発明においてコーティングとして使用するアクリルポリマー水性懸濁液を錠剤、丸薬(又はビーズ)、微小球剤、種子状剤、ペレット、イオン交換、ビーズ及びその他の多粒系と併用することにより治療活性剤の放出を所期の態様で制御することができる。本発明の製法で調製された顆粒、丸薬、ペレットなどはカプセルなど適当な投与形態で提供することができる。
【0026】
本発明のコーティング組成物は平滑かつ美麗で、色素などのようなコーティング添加物を支持することができ、毒性がなく、不活性で、粘つかない強靭な、連続的なフィルムを形成できるものでなければならない。
可塑化剤を組込むことでフィルムの物理的性質が一段と改善されるとの所見に照らして、本発明に使用されるアクリルコーティングは有効量の適当な可塑化剤を含むことが好ましい。例えば、可塑化剤を使用することによりフィルムの弾性を高め、懸濁液のフィルム形成温度を低下させることができる。アクリル樹脂の可塑化はいわゆる“内部可塑化”又は“外部可塑化”によって達成できる。
【0027】
内部可塑化とはポリマーの分子構造を例えば共重合によって直接変化させるものであり、その手段として作用の変更及び/又は置換、側鎖数の制御、ポリマー長さの制御などが採用される。コーティング溶液の調合者は通常この方法を採用しない。
外部可塑化は乾燥フィルムのフィルム性質に必要な変化が起こるようにフィルム溶液に適当な物質を添加する方法である。
適切な可塑化剤であるかどうかはポリマーに対する新和力又は溶媒和力及びポリマー間付着防止能力によって判断される。このような作用は分子の剛度をやわらげることによって所要の可撓性を与える。
【0028】
一般に、コーティング溶液に含まれる可塑化剤の量はフィルム形成物の濃度を基準として設定され、多くの場合、フィルム形成物に対して約1〜50重量%である。ただし、可塑化剤の濃度は特定のコーティング溶液及び塗布方法について慎重に実験したのち初めて正しく測定することができる。
最も好ましい量としては、約20%の可塑化剤がアクリルポリマー水性懸濁液に含まれるようにする。
【0029】
特定のポリマーに好適な可塑化剤を決定する際に重要なパラメータとなるのはそのポリマーのガラス転移温度(Tg)と関連するパラメータである。ガラス転移温度はポリマーの物理的性質に根本的な変化が現われる温度又は温度範囲と関連する。この変化は状態変化を反映せず、ポリマーの高分子移動度の変化を反映する。Tg以下の温度では、ポリマー鎖の移動度がきびしく制約される。従って、所与のポリマーについて、もしそのTgが室温以上なら、ポリマーはガラスとして挙動し、硬く、非可撓性であり、どちらかといえば脆く、このような性質はコーティングを施された投与薬剤がある程度の外部的応力を受けることを考慮すればフィルムコーティングに好適ではない。
【0030】
ポリマーマトリックスに適当な可塑化剤を組込むことによってTgが効果的に低下させる結果となり、周囲条件下でフィルムが比較的柔軟に、比較的可撓的になり、多くの場合比較的強靭になるから、機械的応力に対する抵抗力が増大する。
【0031】
好適な可塑化剤であることのその他の条件としてエチルセルロースのためのすぐれた“膨潤剤”として作用できること、水に溶けないことなどが挙げられる。本発明のアクリルポリマーに好適な可塑化剤の例としてはクエン酸トリエチルNF XVI 、クエン酸トリブチルのようなクエン酸エステルのほか、フタル酸ジブチル、1,2‐プロピレングリコールなどがある。本発明のエチルセルロース水性懸濁液にはクエン酸トリエチルが特に好ましい可塑化剤である。
少量のタルクを添加することによって水性懸濁液が処理中に粘着する傾向が軽減され、タルクが研磨剤として作用することも明らかになっている。
【0032】
本発明の高安定性放出制御型薬剤は例えば経口摂取されて胃液と接触すると治療活性剤をゆっくりと放出する。本発明による薬剤の放出プロフィルは例えばコーティングの量を加減したり、可塑化剤添加態様を変えたり、アクリル樹脂に対する可塑化剤の量を加減したり、添加物又は賦形剤を加えたり、製法を変えるなどによって変えることができる。
【0033】
本発明と併用できる治療活性剤は多様である。本発明の組成物中に使用できる(例えば医薬のような)治療活性剤としては水溶性のものもあれば非水溶性のものもある。このような治療活性剤の例を挙げると、(例えばジメンヒドリネート,マレイン酸ジフェンヒドラミン,マレイン酸クロルフェニラミン及びα−マレイン酸クロルフェニラミンのような)抗ヒスタミン剤,(例えばアスピリン,コデイン,モルヒネ,ジヒドロモルホン,オキシコドンなどのような)鎮痛剤,(例えばナプロキシン,シクロフェン,インドメタシン,イブプロフェン,アセタミノフェン,アスピリン,スリンダックのような)抗炎剤,(例えばメトクロプラミドのような)胃腸薬及び抗嘔吐剤,(例えばフェニトイン,メプロバメイト,ニトラゼパムのような)抗てんかん剤,(例えばニフェジピン,パパベリン,ジルチアゼム及びニカルジリンのような)血管拡張剤,(例えばリン酸コデインのような)鎮咳剤及び去痰剤,(例えばテオフィリンのような)抗喘息剤,(例えばアトロピン,スコポラミンのような)抗痙れん剤,(例えばインシュリン,レパリンのような)ホルモン,(例えばδ−アクリル酸,ベンドロフルアザイドのような)利尿剤,(例えばプロプラノロール,クロニジンのような)抗低血圧剤,(例えばアルブテロールのような)気管支拡張剤,(例えばヒドロコルチゾン,トリアムシノロン,プレドニゾンのような)抗炎ステロイド,(例えばテトラサイクリンのような)抗生物質,抗痔核剤,催眠剤,向精神薬,下痢止め剤,粘液溶解剤,鎮静剤,うっ血除去剤,緩下剤,制酸剤,ビタミン,興奮剤(フェニルプロパノラミンのような食欲抑制剤を含む)などがある。ただし以上に挙げた例がすべてではない。
【0034】
好ましい実施例では治療活性剤がヒドロモルホン,オキシコドン,ジヒドロコデイン,コデイン,ジヒドロモルフィン,モルヒネ,ブプレモルフィン、これらの塩又はこれらの混合物などから成る。他の好ましい実施例では、治療活性剤がテオフィリンから成る。
【0035】
例えばニューパリエル18/20ビーズのような製薬用不活性ビーズをアクリル樹脂懸濁液でコーティングする場合、コーティングされた複数の高安定性放出制御型のビーズを、摂取されて胃液と接触すると有効な放出制御が達成されるのに充分な量だけゼラチンカプセルに封入すればよい。この実施例では、例えば、治療活性剤を水に溶かし、この溶液を支持体、例えばニューパリエル18/20ビーズの表面にウルステルインサートを使用してスプレーすることにより治療活性剤でコーティングされたビーズを調製する。ビーズに対するヒドロモルホンの結合促進及び/又は溶液の着色などを必要とする場合にはビーズをコーティングする前に必要成分を添加する。例えば、着色剤を添加した、又は添加しないヒドロキシプロピル・メチルセルロースを含む添加剤を溶液に添加し、これを溶液と(例えば約1時間にわたって)混合してからビーズに塗布すればよい。コーティングされた支持体、即ちこの実施例ではビーズを必要に応じてバリヤー剤でコーティングすることにより治療活性剤をアクリルコーティングから分離することも可能である。好適なバリヤー剤の1例としてヒドロキシプロピル・メチルセルロースが挙げられる。ただし、その他の公知フィルム形成物を使用してもよい。バリヤー剤は最終製品の溶解速度に影響しないことが好ましい。
【0036】
ヒドロモルホンでコーティングし、(必要に応じて)さらにヒドロキシプロピル・メチルセルロースで保護したビーズをアクリルポリマーでコーティングする。アクリルポリマー懸濁液は有効量の可塑化剤、例えばクエン酸トリエチルをも含むことが好ましい。既製のアクリル樹脂懸濁液としてユードラジットRS30DやユードラジットRL30Dなど一連のユードラジットシリーズが市販されている。
【0037】
本発明のコーティング溶液はフィルム形成物のほかに、可塑化剤、溶媒系(即ち、水)、及び外観を美しくすると共に製品を目立たせるための着色剤をも含むことが好ましい。治療活性剤の溶液に着色剤を添加するか、即ち、コーティングと共に着色を行うようにしてもよい。薬剤を着色するのに好適な成分は二酸化チタンやカラー顔料、例えば酸化鉄顔料などである。ただし、顔料を組込むとコーティングの抑制効果が増大することがある。以上に述べた方法以外の適当な方法で本発明の薬剤に着色することも可能である。
【0038】
公知の適当なスプレー装置を使用してスプレーすることにより治療活性剤から成る支持体にアクリルポリマーの可塑化コーティングを施せばよい。好ましい方法としては、ウルステル流動層システムを利用し、アクリルポリマーコーティングをスプレーしながら下方からの空気噴流によってコア材料を流動させ、乾燥させる。治療活性剤の物理的性質や可塑化剤の組込み態様などを考慮して前記コーティングされた支持体が水溶液、例えば胃液と接触すると所定の制御下に治療活性剤を放出するに充分な量のコーティングを塗布することが好ましい。
アクリル樹脂でコーティングしたのち、必要に応じて別のフィルム形成物、例えばオパドリー(Opadry )のオーバーコートをビーズに塗布する。このオーバーコートの目的はビーズの集塊現象を極力防止することにある。
【0039】
次に治療活性剤の安定した放出速度を得るためコーティングされたビーズを硬化させる。
従来、硬化は例えばユードラジットでコーティングされた薬剤の場合なら塗布後2時間にわたって45℃の流動層を介して行われている。ローム ファーマ社は20%固形物レベルのクエン酸トリエチルで可塑化されたユードラジットRS30Dのガラス転移温度(Tg)以上であることからこの標準的硬化方法を推奨している。しかし、この方法では後述の実験例によって立証されるように、貯蔵後、薬剤の溶解プロフィルが不安定になる。
【0040】
本発明の方法における硬化ステップはコーティングを施された支持体、例えばビーズをコーティング剤のTgよりも高い温度で加熱し、高温及び/又は高湿度の貯蔵条件下でもほとんど影響されない溶解プロフィルが得られる終点に達するまで硬化処理を続けることによって達成される。一般に、硬化時間は約24時間以上であり、硬化温度は例えば約45℃でよい。本発明では、コーティングを施された支持体を周囲条件以上の湿度環境に置かれなくても安定した最終製品を得られることも明らかになった。
【0041】
標準的な方法で硬化させた公知製品における溶解プロフィル変化のメカニズムとしては、貯蔵の過程で硬化がさらに続行し、溶解プロフィルがほぼ一定となる安定した終点に到達できないためとも考えられる。これに対して本発明の方法で硬化させた製品では、治療活性剤の放出速度が貯蔵中の温度及び湿度の上昇にほとんど影響されない。
【0042】
本発明の好ましい実施例では、コーティングを施された支持体を所要の時間にわたって可塑化アクリルポリマーのTgよりも高い温度でオーブン硬化させることによって安定した製品が得られ、硬化に要する温度及び時間は個々の薬剤ごとに実験に基づいて決定される。
【0043】
本発明のいくつかの実施例では、約24〜48時間にわたる約45℃の温度でのオーブン硬化によって安定した製品を得る。従って、実施態様によっては製品を例えば36時間にわたって硬化させることが好ましい場合もあり、いくつかの好ましい実施例では製品を約40時間にわたって硬化させる。本発明の放出制御コーティングを施した製品を、その製品によっては48時間以上、例えば60時間またはそれ以上硬化させねばならない場合もあり得る。
【0044】
本発明の放出制御コーティングを錠剤に塗布する場合には、錠剤のコア(例えば支持体)は治療活性剤のほかに例えばスクロース,デクストロース,ラクトース,微晶セルロース,キシリトール,フラクトース,ソルビトール、これらの混合物などのような不活性製薬用充填剤(希釈剤)を含むことができる。カルシウム又はマグネシウムソープのような適量の製薬用潤滑剤を、錠剤コア成分を圧縮する前に上記賦形剤成分に添加してもよい。最も好ましくは固形投与薬剤に対して約0.5 〜3重量%のステアリン酸マグネシウムを添加する。
【0045】
本発明の放出制御を達成するのに充分な量のアクリル樹脂コーティングを施した錠剤はビーズの調製に関して上述したのと同様の態様で調合し、硬化すればよい。当業者には明らかなように、特定の高温、高湿において必要な硬化条件、及び安定した製品を得るのに必要な時間範囲は個々の薬剤に応じて異なる。
【0046】
以下に挙げる実験例で本発明の内容がさらに明らかになるであろう。ただし、これらの実験例が特許請求の範囲を制限するものではない。
【0047】
【実施例の説明】
例 1
ヒドロモルホンビーズの調製
ヒドロモルホンHCl を水に溶かし、20%w/wのオパドリー(Opadry )Y-5-1442 ライトピンク(ペンシンバニア州 ウエストポイント市のカロロン (Coloron)社から市販され、ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,二酸化チタン,ポリエチレングリコール及びD&C Red No.30 Aluminium Lake を含有する)を添加し、約1時間にわたって混合し、ウルステルインサートを使用してニューパリエル18/20ビーズにスプレーすることによってヒドロモルホンビーズを調製した。得られた製品の組成は表1の通りであった。
【0048】
【表1】
Figure 0003957329
【0049】

例2では例1の方法で調製されたヒドロモルホンビーズを表2に示すように重量増加が5%となるようにユードラジットRS30Dでコーティングした。最終乾燥処理は行わなかった。
【0050】
【表2】
Figure 0003957329
【0051】
ヒドロモルホンビーズをその初期溶解をテストし、次いで37℃/80°RH(RH=相対湿度)の促進条件下で1カ月間貯蔵した。1カ月後、ビーズに集塊現象が認められた。
溶解テストは米国薬局方バスケット法に従って37℃、100rpm の条件下に初めの1時間はpH1.2 の胃液700mlで、次いでpH7.5 、900mlに変えて実施した。適量のビーズが入っている開口カプセルを容器内に置くことによって溶解させた。結果を表3に示す。
【0052】
【表3】
Figure 0003957329
【0053】
この結果から明らかなように、ビーズを促進貯蔵条件下に置くとコーティングされたビーズからのヒドロモルホンHCl の溶解が著しくスローダウンした。
【0054】
例 3
溶解抑制コーティングの保護
例2のヒドロモルホンビーズの溶解減速がヒドロモルホンと抑制コーティングとの間の安定性の問題に起因するかどうかを確めるため、例3では例1の手順に従ってニューパリエル(Nu Pariel )ヒドロモルホンビーズを調製し、HPMCでコーティングし、抑制層なしでテストした。溶解テストは貯蔵前と、37℃乾燥状態及び37℃/80%RHでの貯蔵後に実施した。結果を表4に示す。
【0055】
【表4】
Figure 0003957329
【0056】
例3の結果から明らかなように、抑制層を含まない被覆ビーズは安定であった。
オーブン内での“乾燥状態”下での相対湿度を測定するため、60℃オーブン内に配置した水を満たした除湿器内の相対湿度を次のように測定した。先ず、約500gの精製水をプラスチック製の除湿器に注入し、メタルガードを挿入した。湿度計/温度インジケータをガードの上に置き、除湿器に蓋をして24時間にわたり60℃オーブン内に置いた。24時間後、除湿器内の相対湿度は85%、温度は60℃であった。湿度計だけを60℃オーブンに24時間置いた場合、相対湿度は60℃において9%であった。
【0057】

先行技術による硬化
例4では、例3の方法で調製したヒドロモルホンビーズを重量増加が5%となるようにユードラジットRSでコーティングした。コーティングを施したのち、流動層ドライヤーで2時間にわたり45℃でビーズを乾燥(硬化)させた。この温度は固形物レベル20%のクエン酸トリエチルで可塑化したユードラジットRS30DのTgよりも高い温度である。貯蔵前と貯蔵後に溶解テストを実施し、貯蔵後のテストは37℃乾燥状態と37℃/80%RHでの貯蔵後に実施した。結果を表5に示す。
【0058】
【表5】
Figure 0003957329
【0059】
この結果から明らかなように、ビーズからのヒドロモルホンの溶解は貯蔵で著しく変化し、例4において採用される短い硬化ステップでは安定性/硬化の問題が解決されなかった。
【0060】
例5−6
抑制層の保護
例5では例4の方法で調製したユードラジットコーティングを施したビーズをさらに5%HPMCでコーティングすることにより抑制層を環境から保護した。貯蔵前と貯蔵後に溶解テストを実施し、貯蔵後のテストは37℃乾燥状態と37℃/80%RHでの貯蔵後に実施した。結果を表6に示す。
【0061】
【表6】
Figure 0003957329
【0062】
例6では例4の方法で調製したユードラジットコーティングを施したビーズを未硬化のまま5%HPMCでさらにコーティングすることにより抑制層を環境から保護した。溶解テストは貯蔵前と、37℃乾燥状態及び37℃/80%RHでの貯蔵後に実施した。結果を表7に示す。
【0063】
【表7】
Figure 0003957329
【0064】
表6及び表7に示した結果から明らかなように、(特にユードラジットコーティングを施した球状体のような)球状体を促進的貯蔵条件下における集塊現象から保護すること以外、最終HPMCコーティングには例5及び6の製品を安定化させる効果はなかった。ただし、上記結果に照らして、促進条件下に溶解プロフィルは変化するものの37℃乾燥状態又は37℃/80%RHでの貯蔵中に硬化終点に達し得るものと考えられる。
【0065】
例7−9
抑制コーティングの硬化及び成分の最適化
例2−6から得られた結果は抑制層でコーティングしたビーズの溶解がある点まではスローダウンするがそれ以上はスローダウンしないことを示唆した。しかし、終点に達するのが遅過ぎた。
【0066】
薬剤中のヒドロモルホンは環境から保護されているから、促進貯蔵条件(例えば37℃/80%RH)下に置かれることで抑制層が一段と“硬化”したと考えられる。そこで、製造過程において製品を終点溶解まで硬化させるのに必要な処理条件を確定するためのテストをも実施した。
【0067】
好適な溶解プロフィルを有する薬剤を得るため、コーティングを重量増加5%以下にするのではなく、比較的可溶性の高いユードラジットRL(メタクリルエステル対第4アンモニウム基の比が1:20)を抑制層に含有させた。
【0068】
例7−9では例5の方法でヒドロモルホンビーズを調製した。例7の場合、抑制層は100%ユードラジットRLで形成し、例8では50%ユードラジットRL及び50%ユードラジットRSで形成し、例9では10%ユードラジットRL及び90%ユードラジットRSで形成した。例7−9のいずれにおいてもコーティングによる総重量増加は5%であった。
【0069】
例7−9のHPMC保護コーティングをそれぞれ45℃乾燥状態で1,2,6,8,12及び21日間にわたって硬化させ、例2に述べたような溶解テストを実施した。
【0070】
例7及び8の製品の溶解を検討した結果、即時放出性の製品であることが判明した。即ち、調合薬剤を硬化させた後でも、使用された抑制コーティングの量/タイプが薬物の即時放出を抑制するには不充分であった(即ち、薬物の100%近くが1時間後に放出された)。下記のような促進条件下で貯蔵することにより例9の製品をテストした。21日間硬化させてから、例9のサンプルを37℃/80%RHオーブンに入れ、7日及び30日後に例2に示した溶解テストを実施した。
【0071】
例9だけが所要の放出プロフィルを示し、僅か1日で硬化が完了した。代表的な溶解プロフィル(3つのサンプルに関する平均結果及び標準偏差)を表8に示す。
【0072】
【表8】
Figure 0003957329
【0073】
表8に示す結果から明らかなように、促進条件下にテストされたサンプルについても1カ月溶解プロフィルは初期硬化サンプルと比較してスローダウンを全く示していない。即ち、45℃で24時間硬化させた段階で、メタクリレート放出制御フィルムコーティングは実質的に安定化された。
【0075】
例10−12
抑制コーティングの厚さの最適化
例10−12では、所期の放出プロフィルを得るのに最適のメタクリレートポリマー重量を求めると共に45℃乾燥状態における48時間の硬化ステップの再現性及び有効性を確認するための実験を行なった。メタクリレートの添加量レベルを変えて3バッチを製造し、45℃乾燥状態オーブン内で硬化させた。
例10では、例3の方法で表9に示すようにヒドロモルホンビーズを調製した。
【0076】
【表9】
Figure 0003957329
【0077】
ヒドロホルモンビーズにさらに例5と同様の処理を施した。例10の場合、抑制コーティングに90:10の比率でユードラジットRS及びユードラジットRLを組込んだ(5%w/wコーティング)。例10における組成を表10に示す。
【0078】
【表10】
Figure 0003957329
【0079】
例11及び12は例10と同様に調製した。ただし例11では抑制コーティングに90:10の比率でユードラジットRS及びユードラジットRLを組込んだ(8%w/wコーティング)。例12でも抑制コーティングに90:10の比率でユードラジットRS及びユードラジット(12%w/wコーティング)。例11及び12の組成を表11及び表12にそれぞれ示す。
【0080】
【表11】
Figure 0003957329
【0081】
【表12】
Figure 0003957329
【0082】
【表13】
Figure 0003957329
【0083】
例10で得られた溶解結果から明らかなように、24時間硬化後のサンプルの溶解プロフィルは求めなかったが、2日間硬化後に得られた結果は例9の24時間及び48時間硬化に関して得られた結果とほぼ同様であった。従って、例10の製品も24時間硬化で安定状態に達するものと考えられる。
【0084】
2日間硬化後、例11のサンプルをその溶解プロフィルについてテストし、その際、例11のサンプルを1カ月にわたり37℃/80%RHの促進条件下に置いた。例11のサンプルの代表的な初期溶解プロフィル(3つのサンプルの平均結果)を下記表14に示す。
【0085】
【表14】
Figure 0003957329
【0086】
例11に関して得られた上記溶解結果から明らかなように、2日間硬化後に得られた結果は37℃/80%RHの促進貯蔵条件下で得られた結果とほぼ同様であり、2日間硬化後の例11サンプルが安定化されていることを示唆している。また、例11の製品で得られた溶解結果は抑制コーティングを厚く形成した場合に予想されるようなヒドロモルホン放出速度の減速を示した。
【0087】
2日間硬化後、例12のサンプルを溶解テストし、その際、例12のサンプルを室温で1カ月、及び37℃/80%RH、37℃乾燥状態及び50℃乾燥状態の促進条件下でそれぞれ貯蔵した後にテストした。例12の代表的な溶解プロフィル(3つのサンプルの平均結果)を下記表15に示す。
【0088】
【表15】
Figure 0003957329
【0089】
例12に関して得られた上記溶解結果から明らかなように、例12で得た溶解結果は予期した通り例10及び11の比較的薄い抑制コーティングと比較してヒドロモルホンの放出速度が低下することを示唆した。2日間硬化後に得られた綜合的な結果は8時間及び12時間の時点で溶解した薬剤%を除けば37℃/80%RHの促進貯蔵条件下で得られた結果とほぼ同様である。このような結果から判断して、抑制コーティング量が多い場合には、安定な調合薬剤を得るためにコーティングの硬化時間を長くする必要があるかもしれない。
【0090】
13
コーティングされた硫酸モルヒネビーズ
例13では本発明の硬化処理を薬剤として硫酸モルヒネを代用する調合薬剤に応用した。
硫酸モルヒネ及びHPMC(Opadry Clear Y-5-7095 )の懸濁液をウルスター(Wurster)インサートを含む入口温度60℃の流動層ドライヤ中の18/20メッシュニューパリエルビーズに加えた。薬剤を装入した後、5%重量増加の保護コートとしてオパドリー ラベンダー(Opadry Lavender )YS-1-4729 HPMC Base フィルムコーティング懸濁液を塗布した。
【0091】
オーバコーティング処理が完了したら、次いでRS対RLが90:10、増加レベルが5重量%となるように混合したユードラジットRS30DとユードラジットRL30Dの混合物から成る抑制コーティングで硫酸モルヒネビーズをオーバコートした。ユードラジットRS30D及びユードラジットRL30Dのこの混合物を(粘着防止剤としての)タルク及び(可塑化剤としての)トリエチルシトレートと共に入口温度35℃でウルスターインサート内で塗布した。
抑制オーバコーティングが完了したら、増加レベルが5重量%となるようにオパドリー ラベンダーYS-1-4729 の仕上げオーバコーティングを硫酸モルヒネに施した。
【0092】
最終フィルムコーティングが完了したら、45℃乾燥オーブン内に置いたペーパ裏張りトレイ上で硫酸モルヒネビーズを2日間にわたって硬化させた。硬化後、硫酸モルヒネ分が30mgとなるようにゼラチンカプセルにビーズを充填した。最終組成を下記表16に示す。
【0093】
【表16】
Figure 0003957329
【0094】
室温,37℃/80%RH、37℃乾燥状態、及び50℃乾燥状態の貯蔵条件で上記硬化処理を施し、1カ月後及び2カ月後に例13の製品について溶解安定性をテストした。結果を下記表17に示す。
【0095】
【表17】
Figure 0003957329
【0096】
表17に示す結果から明らかなように、硬化処理は硫酸モルヒネの溶解プロフィルを終点溶解速度に安定化し、促進貯蔵条件下に貯蔵されたサンプルにおいてもこの終点溶解速度は一定に維持された。

Claims (13)

  1. アクリルポリマーの水性懸濁液でコーティングされた支持体を含む高安定性放出制御型薬剤を得る方法であって、
    アクリル及びメタクリル酸エステル共重合体である可塑化された1または2種以上のアンモニオメタクリレート共重合体から本質的になる水性懸濁液を調製し、
    治療活性剤を含む固形支持体を調製し、
    コーティングされた支持体を水溶液に曝露したときに前記治療活性剤の所定の放出制御を達成するのに充分な量の前記可塑化アンモニオメタクリレート共重合体の水性懸濁液で前記支持体をオーバーコーティングし、
    前記コーティングされた支持体を前記可塑化アンモニオメタクリレート共重合体のガラス転移温度よりも高い温度にあてることによって前記コーティングされた支持体を硬化させ、該硬化を、前記支持体が安定した溶解プロフィルを示す終点に達するまで少なくとも24時間にわたり続け、その際、前記終点を、硬化直後の薬剤の溶解プロフィルと、温度37℃及び相対湿度80%で1ヶ月間の促進条件に曝露した後の薬剤の溶解プロフィルとを比較することによって決定する、各ステップを含むことを特徴とし、前記溶解プロフィルは、米国薬局方バスケット法に従って37℃、100 rpm の条件下で初めの1時間はpH 1.2 の胃液700 ml で、次いでpH 7.5 の胃液900 ml に変えて測定され得る、前記方法。
  2. 未硬化の薬剤を促進貯蔵条件に曝露し、薬剤の溶解プロフィルが実質的に安定化するまで薬剤の溶解プロフィルを観察することによって該薬剤の終点を決定するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 前記治療活性剤の所望の溶解プロフィルが得られるように、前記終点に基づいて前記薬剤に変更を加えるステップをさらに含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
  4. 前記治療活性剤を製剤学的に許容され得るビーズの表面にコーティングすることにより経口投与用の前記支持体を調製するステップ、及び充分量の硬化させたコーティングビーズをカプセルに封入することにより経口投与薬剤を調製するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
  5. アンモニウム基と(メタ)アクリル酸エステルのモル比が1:20のアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの第1共重合体を、アンモニウム基と(メタ)アクリル酸エステルのモル比が1:40のアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの第2共重合体並びに適当な可塑化剤と混合することによって、前記可塑化アンモニオメタクリレート共重合体を調製することを特徴とする請求項1記載の方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法に従って調製された高安定性放出制御型薬剤。
  7. 治療活性剤を含む支持体を含む高安定性放出制御型固形投与薬剤であって、
    前記支持体が、アクリル及びメタクリル酸エステル共重合体である可塑化された1または2種以上のアンモニオメタクリレート共重合体から本質的になる水性懸濁液でオーバーコーティングされたものであって、かつ、コーティングされた支持体が安定した溶解プロフィルを獲得するように、前記可塑化アンモニオメタクリレート共重合体のガラス転移温度よりも高い温度で、コーティングされた支持体が安定した溶解プロフィルを示す終点に達するまで少なくとも24時間硬化させたものであり、ここで、前記終点は、硬化直後の薬剤の溶解プロフィルを、温度37℃及び相対湿度80%で1ヶ月間の促進条件に曝露した後の薬剤の溶解プロフィルと比較することによって決定され、前記溶解プロフィルは、米国薬局方バスケット法に従って37℃、100 rpm の条件下で初めの1時間はpH 1.2 の胃液700 ml で、次いでpH 7.5 の胃液900 ml に変えて測定され得るものである、高安定性放出制御型固形投与薬剤。
  8. 前記治療活性剤を前記可塑化アンモニオメタクリレート共重合体の水性懸濁液で5〜15%の重量増加レベルまでオーバーコーティングすることを特徴とする請求項7記載の高安定性放出制御型固形投与薬剤。
  9. 前記アンモニオメタクリレート共重合体コーティングが、アンモニウム基と(メタ)アクリル酸エステルのモル比が1:20のアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの第1共重合体を、アンモニウム基と(メタ)アクリル酸エステルのモル比が1:40のアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの第2共重合体並びに適当な可塑剤と混合することによって調製された可塑化アンモニオメタクリレート共重合体であることを特徴とする請求項7または8記載の高安定性放出制御型固形投与薬剤。
  10. 前記支持体が、製剤学的に許容され得る不活性ビーズを含み、該ビーズ上に前記治療活性剤がコーティングされていることを特徴とする請求項7記載の高安定性放出制御型固形投与薬剤。
  11. 24〜48時間にわたって硬化させた請求項7記載の高安定性放出制御型固形投与薬剤。
  12. 前記治療活性剤が、抗ヒスタミン剤、鎮痛剤、抗炎症剤、胃腸薬、抗嘔吐剤、抗てんかん剤、血管拡張剤、鎮咳剤、去痰剤、抗喘息剤、抗痙れん剤、ホルモン、利尿剤、抗低血圧剤、気管支拡張剤、抗炎ステロイド、抗生物質、抗痔核剤、催眠剤、向精紳薬、下痢止め剤、粘液溶解剤、鎮静剤、うっ血除去剤、緩下剤、制酸剤、ビタミン、及び興奮剤から成る群から選択されることを特徴とする請求項7記載の高安定性放出制御型固形投与薬剤。
  13. 前記治療活性剤が、ヒドロモルホン、オキシコドン、ジヒドロコデイン、コデイン、ジヒドロモルフィン、モルヒネ、ブプレノルフィン、これらの塩及びこれらの混合物から成る群から選択されることを特徴とする請求項7記載の高安定性放出制御型固形投与薬剤。
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