JP3954665B2 - プレコート紙を用いた化粧板の製造方法 - Google Patents

プレコート紙を用いた化粧板の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬化性樹脂が含浸された化粧紙の表面側に、耐摩耗性に優れたトップコート層が設けられ、該化粧紙の裏面側が基板に積層されてなり、床材や机表面等の耐摩耗性が要求される用途に利用可能な化粧板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、建築物の内装や家具、キャビネット等の表面の装飾用の材料として、メラミン化粧板、ダップ化粧板、ポリエステル化粧板等の各種の化粧板が用いられている。これらの化粧板は、表面に絵柄等の模様を設けた紙に硬化性の樹脂を含浸させ、その裏面側に接着剤等を介して化粧板の基材を積層し、全体を加熱、加圧して一体化して形成される。
【0003】
このような化粧板として例えば、特公平4−11385号公報に開示されているように、パネル(基板)の表面にフラットな表面を与えるのに充分な粘度をもつ湿潤電子線硬化型接着剤層を塗布し、その外表面に液体浸透性化粧層を積層し、その上面にトップコートとして、湿潤電子線硬化型低粘度液体ラッカーを塗布し、前記化粧層上のトップコートに充分な滞留時間を与えて、化粧層中にトップコートの液体ラッカーが浸透するようにした後で、電子線を照射して湿潤ラッカー及び湿潤接着剤とを同時に硬化させて、トップコート層、化粧層、接着剤層及びパネルを一体の永久構造物とする、化粧層の積層方法が公知である。
【0004】
上記の化粧板は、化粧紙(化粧層)やトップコート層を全部積層した後に、各層の樹脂を硬化させて基板と一体にするものであり、トップコート層は通常、化粧紙を基板に積層した後に塗工して形成されるため、アフコターコート化粧板とも呼ぶことができる。この化粧板は、全体を硬化性樹脂により構成することができるため、表面物性や層間強度等の点において優れている。しかしながら、このアフターコート化粧板は、合板等のパネルを用いることや、未硬化の樹脂を積層して一度に硬化させる必要があることから、枚葉式で製造しなければならず、製造工程が複雑になり生産性が良くないという欠点があった。
【0005】
一方、上記のアフターコート化粧板の生産性を改良したものとして、プレコート紙を化粧板の基板に積層してなる化粧板が公知である。化粧板は、樹脂含浸紙の表面にトップコート層を予め形成したプレコート紙を準備して、該化粧紙を基板に積層して一体化したものであり、予め作られたプレコート紙を基板に貼り付けるだけで容易に化粧板を製造することができるので、生産性に優れる。
【0006】
しかしながら、上記の硬化性樹脂が含浸硬化されてなる樹脂含浸紙の表面にトップコート層を形成した場合、トップコート層と含浸紙との間の層間強度が劣るという欠点があった。即ち、樹脂含浸紙の表面は既に硬化している樹脂で覆われた状態であり、トップコート層を形成する樹脂と含浸紙の樹脂との間で架橋反応が起こらないので、トップコート層が含浸紙の表面から剥離し易い。特にトップコート層を構成する樹脂として電離放射線硬化性樹脂を用いた場合には、電離放射線硬化性樹脂の表面が平滑に形成されやすいこと等ともあいまって、トップコート層と含浸紙との間の層間強度が低く、剥離し易く、耐摩耗性が不充分なものであった。
【0007】
化粧板に於ける、トップコート層と含浸紙との間の層間強度を改良する手段は、例えば特開昭60−75697号公報に開示されている。この方法は、浸透性良好な紙(あるいは印刷紙)に、分子中にエチレン性二重結合を有する電子線硬化性混合物を主成分とする含浸剤を含浸し、該含浸紙の表面に該含浸剤よりも高粘度の電子線硬化性混合物を主成分とする塗工剤を塗工し、しかる後に電子線を照射して含浸剤と塗工剤を同時に硬化させて、含浸紙の表面に電子線硬化性樹脂からなるトップコート層が形成されたプレコート紙を得るものである。
【0008】
上記の方法では、含浸樹脂とトップコート層の塗工物とを同時に硬化させるために、トップコート層と含浸樹脂との間の密着性に優れたものが得られ、電子線硬化型樹脂等のトップコート層が耐摩耗性に優れるといった特徴がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記(特開昭60−75697号公報)の方法は、含浸樹脂が未硬化の状態でトップコート層の塗工剤を含浸紙に塗工してから含浸樹脂をトップコートと同時に硬化させるため、含浸樹脂が浸透性良好な紙から垂れたり、浸透しすぎて流れてしまい、含浸量が変動したり、又、樹脂含浸から塗工剤を塗工して樹脂を硬化させるまでの間の化粧紙の製造ラインが含浸紙から垂れた樹脂により汚染されるという欠点があった。
【0010】
また、上記方法では、トップコート層の樹脂の粘度が高いため、含浸紙表面への均一な塗工が困難になり易く、塗工時の温度が変化した際の塗工剤の粘度変化が大きく、トップコート層の塗工物の含浸紙への浸透量が変化し易く、トップコート層塗工の際の温度管理等に非常に手間がかかるという問題があった。
【0011】
尚、同公報には塗工剤が高粘度で平滑性を得ることが困難な場合には、塗工後に離型性フィルムを塗工面に抱き合わせて電子線照射し、塗工剤が硬化した後で離型性フィルムを剥離する方法がよいといった記載があるが、塗工剤をフィルムで保持して硬化させる方法は、フィルムを使用することによりコストアップになってしまい、製造が複雑になるという問題があり、あまり実用的ではなかった。
【0012】
更に、上記のプレコート紙を接着剤層を介して合板に積層する場合に、接着剤層と含浸紙との間の層間強度の問題がある。例えば、接着剤に感熱接着剤を使用したのでは、トップコート層自体に耐摩耗性の優れた材料を使用しても、接着剤層と含浸紙の樹脂との間で剥離し易く、化粧板としては良好な耐摩耗性が得られなかった。
【0013】
又、上記のプレコート紙を硬化性樹脂からなる接着剤を用いて基板に積層した場合には、接着剤層と基板との間の層間強度は熱可塑性樹脂を用いた場合よりも向上する。しかし、既に硬化されている含浸樹脂に接着剤層が接触して硬化するため、接着剤層と含浸紙との間の層間強度が劣り、界面で剥離し易い。特に含浸樹脂として電離放射線硬化性樹脂を使用した場合には、上記のプレコート紙の含浸紙とトップコート層との間の層間強度と同様に、更に層間強度が低下し易いという問題があった。
【0014】
又、水平面等に使用される化粧板は、耐摩耗性が優れることが望まれる。上記の電子線硬化型樹脂からなるトップコート層を有する化粧板において、電子線硬化型樹脂を架橋密度等を上げてトップコート層を硬くして耐摩耗性を改良することは、従来から行われていた。
【0015】
しかしながら、プレコート紙を基板に積層して化粧板を製造する際、トップコート層の架橋密度を上げると化粧紙の柔軟性が低下して、ロールに巻き取る際等に該層が割れたり、又、化粧板とした場合の衝撃等で亀裂が発生する虞れが生じるため、樹脂の種類や架橋密度等を変えて化粧板の耐摩耗性を改良するには限界があり、ある程度の柔軟性を有し且つ表面の耐摩耗性も優れる化粧板が望まれている。
【0016】
本発明は上記従来技術の欠点を解決するためになされたものであり、プレコート紙を利用した化粧板において優れた耐摩耗性を有し、トップコート層と樹脂含浸紙との間及び樹脂含浸紙と基板との間の層間強度が高く、耐久性に優れ、しかも製造が容易でありコスト的にも安価である化粧板の製造方法を提供すること目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)化粧紙原紙に硬化性樹脂からなる含浸樹脂が含浸された樹脂含浸紙の表面に、電離放射線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂とからなる硬化性樹脂にて形成されるトップコート層が設けられたプレコート紙を、樹脂含浸紙の裏面接着剤層を介して基板に積層一体化して化粧板を製造する方法であって、上記含浸樹脂及び接着剤層の樹脂が互いに反応する反応基を有する硬化性樹脂であり、上記プレコート紙の含浸樹脂が完全に硬化しない状態であり、常温で非流動性且つ非粘着性に形成され、トップコート層の上記硬化性樹脂が完全に硬化しない状態であり、常温で非流動性且つ非粘着性に形成され、上記プレコート紙の含浸樹脂を未硬化の接着剤層と接触させた後、含浸樹脂、接着剤層及びトップコート層を完全に硬化せしめて、プレコート紙と基板とを積層一体化するものであることを特徴とするプレコート紙を用いた化粧板の製造方法、(2)トップコート層の上記硬化性樹脂が含浸樹脂と互いに反応する反応基を有するものである上記(1)記載のプレコート紙を用いた化粧板の製造方法、(3)トップコート層に該層の硬化性樹脂よりも高硬度の球状粒子が含有せしめられている上記(1)〜(2)のいずれか1に記載のプレコート紙を用いた化粧板の製造方法、(4)トップコート層の熱硬化性樹脂がメラミン樹脂である上記(1)〜(3)のいずれか1に記載のプレコート紙を用いた化粧板の製造方法、を要旨とするものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明を説明する。図1は本発明の化粧板の1例を示す縦断面図である。図1に示す本発明の化粧板1は、化粧紙原紙2に硬化性樹脂からなる含浸樹脂が含浸されてなる樹脂含浸紙5の表面に絵柄層4等が形成され、更に該絵柄層4の上から樹脂含浸紙5の表面に硬化性樹脂からなる塗工組成物が塗工されてトップコート層6が設けられたプレコート紙7が、樹脂含浸紙4の裏面に硬化性樹脂からなる接着剤層8を介して化粧板の基板9に積層されてなるものである。
【0019】
上記のプレコート紙7において、該プレコート紙7が化粧板の基板9に積層されるまでは、樹脂含浸紙5の含浸樹脂3は完全に硬化しない状態であり且つ非流動性且つ非粘着性の状態に形成されている。又、プレコート紙7のトップコート層6は、硬化した状態でも、または完全に硬化しない状態のいずれでもよいが、完全に硬化しない状態の場合は、含浸樹脂3と同様に非流動性であり且つ非粘着性の状態に形成されている。更に、上記のプレコート紙7の未硬化の状態にある含浸樹脂3は、化粧板の基板9に積層されて接着剤層8と接触した状態とした後に完全に硬化せしめられている。また、本発明において、含浸樹脂3と接着剤層8の樹脂は、互いに反応する反応基を有する樹脂が用いられる。
【0020】
化粧紙原紙2は含浸樹脂が浸透可能なものであればよく、具体的には薄葉紙、クラフト紙、チタン紙、リンター紙、板紙、石膏ボード紙、紙にポリ塩化ビニル樹脂をゾル塗工又はドライラミネートしたいわゆるビニル壁紙原反、上質紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙、和紙等が挙げられる。
【0021】
又、紙類似シートも含浸樹脂が浸透可能であれば化粧紙原紙2として用いることができる。上記の紙類似シートとは、硝子繊維、石綿、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭素繊維等の無機質繊維、ポリエステル、ビニロン等の有機樹脂等を用いた織布又は不織布等が挙げれる。化粧紙原紙2として特に好ましくは、酸化チタンなどの隠蔽性顔料を混抄した「チタン紙」と呼ばれる紙が、樹脂液の含浸適性、及びプレコート紙を貼り付ける化粧板基材(基板)の隠蔽性に優れる点等から最適である。化粧紙原紙2は坪量が20g/m2 〜120g/m2 が好ましい。
【0022】
又、絵柄層4は、化粧紙原紙2の表面側に上記樹脂含浸の前又は後のいずれに形成してもよいが、樹脂含浸前に形成するのが好ましい。絵柄層4は、公知の絵柄形成用印刷インキ等でグラビア印刷、オフセット印刷、又はシルクスクリーン印刷等の既知の印刷手段を用いて設ける。絵柄層4は、一部にパターン状(例えば木目、布目、図形、文字等の絵柄模様)に設けても、また全面に設けても良い。例えば絵柄を部分的に設けるのは、絵柄の一部(例えば木目柄の照り部分)を特に強調させたい場合等であり、全面的に設けるのはベタ状の絵柄模様において全体的にパール感や干渉的外観を現出させる場合等である。尚、特に図示しないが本発明では絵柄層4を形成せずに化粧紙原紙2自体に着色や絵柄が形成されたものを用いてもよい。
【0023】
含浸樹脂3は、未硬化又は半硬化等の完全に硬化しない状態に於いて、常温では固体であり、かつ熱可塑性、溶剤溶解性を有していながら、塗工後の乾燥又は冷却によって、見かけ上、又は手で触った時にも非流動性(指触乾燥性)であり、かつ非粘着性である塗膜を与える樹脂(以下、完全に硬化しない状態で常温で固体である樹脂という)を用いる。
【0024】
含浸樹脂3は例えば、無溶剤の組成物で、加熱により流動性を有し、冷却により常温で固体状となるような硬化性を有する樹脂組成物や、溶剤を含む組成物で、溶剤を含有した状態では流動性を有し溶剤を揮発させると固体状となる硬化性を有する樹脂等がある。
【0025】
化粧紙原紙2への含浸樹脂3の含浸量(化粧紙原紙に対する重量%)は、50%〜200%が好ましく、含浸量が50%未満では化粧紙原紙全体が樹脂により充分含浸されない虞れがあり、一方含浸量が200%を超えると過剰な含浸となる虞れがある。
【0026】
本発明において含浸樹脂3は、化粧紙原紙2の強度を向上させるために硬化性樹脂が用いられ、好ましい含浸樹脂3として、電離放射線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は該樹脂の硬化前の状態における分子量や分子構造等に基づいて融点や結晶性等を調節することで、完全に硬化しない状態に於いて常温で固体状の樹脂を得ることができる。含浸樹脂3として特に好ましいのは、固相反応型電離放射線硬化性樹脂であり、具体的には次の(イ)、(ロ)の2種類の樹脂が挙げられる。
【0027】
(イ)ガラス転移温度が0〜250℃のポリマー中にラジカル重合性不飽和基を有する樹脂。具体的には以下の▲1▼〜▲8▼を重合もしくは共重合させたものに対し、後述する(a)〜(d)の方法により、ラジカル共重合性不飽和基を導入したものである。
【0028】
▲1▼水酸基を有する単量体:N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等、▲2▼カルボキシル基を有する単量体:(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルオキシエチルモノサクシネート等、▲3▼エポキシ基を有する単量体:グリシジル(メタ)アクリレート等、▲4▼アジリジニル基を有する単量体:2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2−アジリジニルプロピオン酸アリル等、▲5▼アミノ基を有する単量体:(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等、▲6▼スルフォン基を有する単量体:2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸等、▲7▼イソシアネート基を有する単量体:2,4−トルエンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの1モル対1モル付加物等のジイソシアネートと活性水素を有するラジカル重合性単量体の付加物等、▲8▼更に、上記の共重合体のガラス転移点を調節したり、含浸紙全体の物性を調節したりするために、上記の化合物と、この化合物と共重合可能な以下のような単量体とを共重合させることができる。
【0029】
上記▲1▼〜▲7▼の化合物と共重合可能な単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる
【0030】
上述のようにして得られた重合体にラジカル重合性不飽和基を導入する方法は、(a)水酸基を有する単量体の重合体または共重合体の場合には、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有する単量体等を縮合反応させる、(b)カルボキシル基、スルフォン基を有する単量体の重合体または共重合体の場合には、前述の水酸基を有する単量体を縮合反応させる、(c)エポキシ基、イソシアネート基あるいはアジリジニル基を有する単量体の重合体または共重合体の場合には、前述の水酸基を有する単量体もしくはカルボキシル基を有する単量体を付加させる、(d)水酸基あるいはカルボキシル基を有する単量体の重合体または共重合体の場合には、エポキシ基を有する単量体あるいはアジリジニル基を有する単量体あるいはジイソシアネート化合物と水酸基含有アクリル酸エステル単量体の1対1モルの付加物を付加反応させる等の方法がある。
【0031】
(ロ)融点が常温(20℃)〜250℃であり、ラジカル重合性不飽和基を有する化合物。具体的にはステアリルアクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリアクリルイソシアヌレート、シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、スピログリコールジアクリレート、スピログリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0032】
また、前記(1)及び(2)の化合物を混合して用いることもでき、さらにそれらに対してラジカル重合性不飽和単量体を加えることもできる。このラジカル重合性不飽和単量体は電離放射線照射の際、架橋密度を向上させ、耐熱性を向上させるものであって、前述の単量体の他にエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラグリシジルエーテルテトラ(メタ)アクリレートなどを用いることができ、電離放射線線硬化性樹脂100重量部に対して、0.1〜100重量部で用いることが好ましい。
【0033】
更に上記の組成物に増感剤としてベンゾキノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル類、ハロゲン化アセトフェノン類、ビアセチル類などの紫外線照射によりラジカルを発生するものを添加して、組成物を紫外線硬化性にすることもできる。
【0034】
また、完全に硬化しない状態に於いて常温で固体の含浸樹脂としては、熱可塑性樹脂と反応性可塑剤を混合し溶剤等で希釈した組成物を硬化性樹脂として用いることもできる。
【0035】
また、未硬化の状態で常温で固体の含浸樹脂3として用いられる熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
【0036】
また、含浸樹脂3は上記したような未硬化の状態に於いて固体状の硬化性樹脂以外にも、未硬化の状態では流動性を有するが電離放射線の照射条件や加熱条件を調節して一部硬化させた半硬化の状態では見掛け状又は手で触ったときに非流動性であり非粘着性である塗膜を与える樹脂が使用できる。
【0037】
又、含浸樹脂3は、熱硬化性樹脂と電離放射線硬化性樹脂との混合樹脂を用いることができる。上記の混合樹脂は、加熱又は電離放射線を照射して一方の樹脂を硬化させることで、他の一方の樹脂が未硬化の状態となり、完全に硬化しない状態に於いて常温又は冷却した状態で固体状であり且つ硬化性を有する樹脂となるものである。
【0038】
トップコート層6は、電離放射線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂(常温硬化型樹脂、二液反応硬化型樹脂を含む)等の従来公知の化粧材のトップコート層に用いられる樹脂が利用できる。なかでも電離放射線硬化性樹脂が、耐摩耗性に優れ硬化速度も速く作業性が良好であり、しかも柔軟性等の樹脂の物性の調節も容易であることから、シート状のプレコート紙を効率良く連続生産可能であり好ましい。
【0039】
更に好ましいトップコート層6の硬化性樹脂は、含浸樹脂3の説明のところで例示した、完全に硬化しない状態に於いて常温で固体状の樹脂である。トップコート層の塗布量は5〜100g/m2 の範囲が好ましく、更に好ましくは10〜30g/m2 である。また、トップコート層には、再塗装性、耐汚染性、耐セロテープ性、耐擦傷性等の表面特性を付与することもできる。
【0040】
上記のトップコート層6の硬化性樹脂として用いられる電離放射線硬化性樹脂としては、例えば分子中に重合性不飽和結合または、エポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマー、及び/又はモノマーを適宜混合した、電離放射線により硬化可能な組成物が挙げられる。尚、本発明において電離放射線とは、電磁波または荷電粒子線のうち分子を重合或いは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線または電子線が用いられる。
【0041】
電離放射線硬化性樹脂としてのモノマーを選定する際、硬化物の可撓性が要求される場合は塗工適性上支障のない範囲でモノマーの量を少なめにしたり、1官能または2官能アクリレートモノマーを用い、比較的低架橋密度の構造とする。また、トップコート層に耐摩耗性、耐熱性、耐溶剤性等が要求される場合には、塗工適性上支障のない範囲でモノマーの量を多めにしたり、3官能以上のアクリレートモノマーを用いることで高架橋密度の構造とすることができる。尚、1、2官能モノマーと3官能以上のモノマーを混合し塗工適性と硬化物の物性とを調整することもできる。
【0042】
以上のような1官能性アクリレートモノマーとしては、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヘキシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等が挙げられる。又、2官能アクリレートとしてはエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等が、また3官能以上のアクリレートとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(テトラ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0043】
更に、上記の電離放射線硬化性樹脂には、硬化物の可撓性、表面硬度等の物性を調整するための電離放射線非硬化性樹脂を添加することができる。尚、該電離放射線非硬化性樹脂としてはウレタン系、繊維素系、ポリエステル系、アクリル系、ブチラール系、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等の熱可塑性樹脂が用いられ、特に繊維素系、ウレタン系、ブチラール系が可撓性の点から好ましい。
【0044】
又、以上の如き組成の電離放射線硬化性樹脂を硬化させるために紫外線を照射する場合には、光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミノキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン、又、光重合促進剤(増感剤)としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を、更に樹脂組成物中に混合して用いることができる。
【0045】
トップコート層6の熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等がある。
【0046】
上記の熱硬化性樹脂には、必要に応じて架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤等を添加することができる。上記の硬化剤として通常、イソシアネート又は有機スルホン酸塩が不飽和ポリエステル系樹脂やポリウレタン系樹脂に、アミンがエポキシ樹脂に、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物やアゾイソブチルニトリル等のラジカル開始剤が不飽和ポリエステル等によく使用される。上記のイソシアネートとしては、2価以上の脂肪族又は芳香族イソシアネートを使用できるが、熱変色防止、耐候性の点から脂肪族イソシアネートが望ましい。具体的なイソシアネートとしてトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0047】
本発明において、トップコート層6には、硬化性樹脂及び球状粒子以外に、染料や顔料等の着色剤、その他のCaCO3 、BaSO4 、ナイロン樹脂ビーズ等の公知の艶消調整剤や増量剤といった充填剤、その他の添加剤を適宜、含有せしめることができる。
【0048】
本発明の化粧板1に用いられる基板9は、従来公知の化粧板の基板として用いられるものが使用できる。基板9は例えば、木材単板、木材合板、パーチクルボード、MDF(中密度繊維板)等の木質板、石膏板、石膏スラグ板等の石膏系板、珪酸カルシウム板、石綿スレート板、軽量発泡コンクリート板、中空押出セメント板等のセメント板、パルプセメント板、石綿セメント板、木片セメント板等の繊維セメント板、陶器、磁気、せっ器、土器、硝子、琺瑯等のセラミックス板、鉄板、亜鉛メッキ鋼板、ポリ塩化ビニルゾル塗工鋼板、アルミニウム板、銅板等の金属板、ポリオレフィン樹脂板、アクリル樹脂板、ABS板、ポリカーボネート板等の熱可塑性樹脂板、フェノール樹脂板、尿素樹脂板、不飽和ポリエステル樹脂板、ポリウレタン樹脂板、エポキシ樹脂板、メラミン樹脂板等の熱硬化性樹脂板、フェノール樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の樹脂を、硝子繊維不織布、布帛、紙、その他の各種繊維質基材に含浸硬化して複合化したいわゆるFRP板等の樹脂板が挙げられる。また、基板9として、上記各種基板の2種以上を接着剤、熱融着等の公知の手段により積層した複合基板を用いてもよい。
【0049】
接着剤層8は、含浸樹脂3及び基板9の材料に応じて、樹脂含浸紙5及び基板9とを接着可能とする樹脂が適宜用いられる。接着剤層8の硬化性樹脂として、具体的にはトップコート層6や含浸樹脂3の説明で例示した樹脂が用いられる。接着剤層8の樹脂として好ましい樹脂は、含浸樹脂3と反応して架橋可能な樹脂である。接着剤層8の厚み(塗工量)は10〜60g/m2 が好ましい。
【0050】
図2(a)〜(c)は本発明の化粧板の製造方法の例を示す工程図である。以下、化粧板1の製造方法について説明する。まず図2(a)に示すように、含浸樹脂3を絵柄層4が設けられた化粧紙原紙2に含浸させて樹脂含浸紙5を製造する。尚、この時点では含浸樹脂3は完全に硬化しない状態であるが、見掛け上は含浸樹脂が硬化された含浸紙と同じように、常温で非流動性であり且つ非粘着性に形成されている。
【0051】
化粧紙原紙2に含浸樹脂3を含浸する手段としては、含浸樹脂3を溶剤等に溶解した含浸樹脂組成物や、加熱して溶融させた含浸樹脂組成物の中に化粧紙原紙2を浸漬した後、含浸樹脂3が硬化しない条件で溶剤を揮発させて乾燥したり、冷却する方法や、含浸樹脂3を溶剤等に溶解したり又は加熱する等して(樹脂が硬化しない範囲で)流動状態とした含浸樹脂組成物を化粧紙原紙2の表面に塗工して内部に浸透させた後、加熱(含浸樹脂が硬化しない範囲)して溶剤を乾燥もしくは冷却して固体状とする含浸方法等がある。特に好ましい含浸方法としては、含浸樹脂組成物を化粧紙原紙2の表面に塗工して含浸させる方法であり、生産性が高い点から最も好ましい。
【0052】
この含浸樹脂3を化粧紙原紙2の表面に塗工する場合は、含浸樹脂が固体状となる前に化粧紙原紙の裏面にまで含浸樹脂組成物が浸透しないように塗工するのが好ましい。そのためには、含浸樹脂組成物の粘度及び温度や、ラインの乾燥もしくは冷却スピード等を適宜調整することで、含浸量を調節しながら塗工することができる。
【0053】
図2(b)に示すプレコート紙7において、トップコート層6として完全に硬化しない状態に於いて流動性を有する樹脂を用いた場合には、トップコート層6を完全に硬化させて流動性のない状態とする。又、トップコート層6の樹脂として、含浸樹脂と同様に完全に硬化しない状態で常温で固体状の樹脂を用いた場合には、乾燥させただけで未硬化の状態であってもよいし、完全に硬化させてしまってもよい。但し、プレコート紙7において、トップコート層6の硬化の有無に係わらず、樹脂含浸紙5の含浸樹脂3は完全に硬化しない状態としておくことが必要である。
【0054】
化粧紙原紙2に含浸樹脂3の組成物を塗工して含浸する場合の塗工方法は、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、ナイフコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、又かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等が挙げられる。特に好ましい塗工方法は、塗工し易さの点からディップコートである。
【0055】
次に図2(b)に示すように、化粧紙原紙2に含浸樹脂3を含浸してなる樹脂含浸紙5の表面にトップコート層6を形成してプレコート紙7を得る。トップコート層6は化粧紙の絵柄等を保護し表面に耐摩耗性等の表面物性を付与する目的で形成される。図2(b)に示したプレコート紙7は、直ちに基板との積層工程に移し、化粧板としてもよいが、プレコート紙7の状態で一旦ロール状に巻取る等しておき、このロールを別の場所等に移してしかる後に基板9に積層接着して化粧板1を製造することもできる。
【0056】
トップコート層6は硬化性樹脂を主体として、該硬化性樹脂よりも高硬度の球状粒子11等の添加剤を添加してなる塗工組成物を、樹脂含浸紙5の表面に塗工して形成する。この塗工組成物を樹脂含浸紙表面へ塗工する手段としては、公知の塗工手段を用いることができ、例えば上記の含浸樹脂3を化粧紙原紙2へ塗工する手段が利用できる。
【0057】
更に、図2(c)に示すように、トップコート層6が表面に形成され含浸紙5の含浸樹脂3が完全に硬化していない状態のプレコート紙7を、該化粧紙7の裏面が接着剤層8と接するようにして、該接着材層8を介して基板9に積層して、含浸樹脂3が完全に硬化していない状態の樹脂含浸紙5と接着剤層8が接触する状態で、プレコート紙7の含浸樹脂3と硬化性樹脂からなる接着剤層8をともに硬化させてプレコート紙7と基板9とを一体化して、図1に示す如き化粧板1が得られる。
【0058】
尚、上記含浸樹脂3の硬化と接着剤層8の硬化は、両者が接触している状態であればいずれを先に硬化させてもよく、同時であってもよいし、又、含浸樹脂3を先に硬化させても、接着剤層8を先に硬化させても、いずれでもよい。又、トップコート層6が完全に硬化していない場合には、適当な時期に完全に硬化させる。この硬化時期は、接着剤層8の硬化と同時、その前、後、又は含浸樹脂3の硬化と同時その前、後のいずれの時期であってもよい。
【0059】
化粧板1において、更に層間強度を向上させるためには、下記の手段を用いるのか好ましい。(ア)含浸樹脂3とトップコート層6の樹脂どうし、(イ)含浸樹脂3と接着剤層8の樹脂どうし、(ウ)含浸樹脂3とトップコート層6の樹脂どうし、及び含浸樹脂3と接着剤層8の樹脂どうしが反応する樹脂を用い、各層の樹脂が硬化する際に架橋するように構成するのが好ましい。特に好ましいのは、上記(ウ)の構成であり、全体の層間強度がきわめて優れた化粧板が得られる。具体的には下記の表1に示す▲1▼〜▲3▼の手段を用いるのが好ましい。
【0060】
【表1】
Figure 0003954665
【0061】
▲1▼トップコート層6の樹脂として、含浸樹脂3同様に完全に硬化しない状態において常温で固体状の樹脂を使用して、含浸樹脂3、トップコート層6及び接着剤層8の樹脂が、同じ硬化手段によって硬化可能な反応性基を有する樹脂により構成する。そして、プレコート紙7を形成した時点ではトップコート層6の樹脂及び含浸樹脂7を共に完全に硬化しない状態とし、接着剤層8を介して上記プレコート紙7を基板9に積層した後に、含浸樹脂3、トップコート層6及び接着剤層8の樹脂を硬化させる。この場合の硬化性樹脂は電離放射線硬化性樹脂、及び熱硬化性樹脂の何れも使用できる。具体的には、表1▲1▼−aに示すように、硬化性樹脂として例えば電離放射線硬化性樹脂(RC)を用いる場合や、同表▲1▼−bに示すように熱硬化性樹脂(HC)を用いる場合がある。
【0062】
▲2▼含浸樹脂3として電離放射線硬化性(RC)及び熱硬化性(HC)の両方の反応性基を有する樹脂を用い、トップコート層6の樹脂として上記のいずれか一方のみの反応性基しか持たない樹脂を用い、接着剤層8の樹脂としてトップコート層6の樹脂とは異なる反応性基を有する樹脂を用いる。そして、プレコート紙7の製造の際、トップコート層6を塗工した後にトップコート層6と含浸樹脂3の一方を共に硬化させ、トップコート層6の樹脂と含浸樹脂3の一部とを架橋させる。その結果、接着剤層8の樹脂と同じ反応性基が含浸樹脂3に残っているプレコート紙7が得られる。最後にこのプレコート紙7を接着剤層8を介して基板9に積層した後、化粧紙7の含浸樹脂3を接着剤層8と共に上記のトップコート層6の硬化手段とは異なる手段で硬化させて、接着剤層8の樹脂と含浸樹脂3とを架橋させる。尚、上記の含浸樹脂3として電離放射線硬化性及び熱硬化性の両方の性質を示す樹脂としては、両硬化性樹脂を混合したもの、又は1分子中に電離放射線硬化性及び熱硬化性の両方の反応性基を有する樹脂のいずれを使用してもよい。
【0063】
▲3▼トップコート層6の樹脂として電離放射線硬化性(RC)及び熱硬化性(HC)の両方の反応性基を有する樹脂を用い、含浸樹脂3として上記のいずれか一方のみの反応性基しか持たない樹脂を用い、接着剤層8の樹脂として含浸樹脂3と同じ反応性基のみを有する樹脂を用いる。そして、プレコート紙7の製造の際、トップコート層6を塗工した後に含浸樹脂3が硬化しない方の硬化手段によって、トップコート層6を半硬化させて含浸樹脂3が未硬化のプレコート紙7を得る。このプレコート紙7を基板9に積層した後に、トップコート層6を硬化した手段とは異なる手段でプレコート紙7のトップコート層6の一部の未硬化の樹脂、含浸樹脂3及び接着剤層8の樹脂を硬化させる
【0064】
化粧板1を製造する場合、含浸樹脂、トップコート層の樹脂又は接着剤層の樹脂のいずれかに電離放射線硬化性樹脂を用いた場合、電離放射線照射装置が用いられる。
【0065】
電離放射線照射装置は、電離放射線として紫外線を照射する場合、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、ブラックライトランプ、メタルハライドランプ等の光源が用いられ、又、電子線を照射する場合には、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器等を用いる。尚、電子線を照射する場合、通常100〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを持つ電子を0.1〜30Mrad程度の照射量で照射して硬化させるのが化粧紙(原紙等)の劣化を防止する点から好ましい。
【0066】
又、各層の何れかに熱硬化性樹脂を用いた場合の硬化装置としては、各種の加熱手段を備えた装置が用いられる。加熱装置としては例えば、赤外線照射、温風吹付、加熱ローラーからの熱伝導等の公知の方法が用いられる。
【0067】
プレコート紙7を基板9へ積層するには、プレスラミネート、ロールラミネート等の方法が用いられる。好ましい積層方法は、樹脂含浸のし易さの点からプレスラミネートである。
【0068】
本発明の化粧板1は、トップコート層6及び接着剤層8と樹脂含浸紙5の界面では、樹脂含浸紙の樹脂が完全に硬化しない状態で樹脂含浸紙と各層が接触するため、樹脂どうしがよくなじんで、層間強度が向上する。
【0069】
また、含浸樹脂の含浸量が多少多くても、乾燥又は冷却後に指触乾燥性を有するため、プレコート紙の製造ラインのガイドロール等を汚染する虞れはない。また、含浸樹脂の含浸量がやや少なくても、乾燥又は冷却後は固体状に形成されるため、含浸紙の表面に塗工するトップコート層の塗工組成物の粘度が多少低い際に、塗工組成物が含浸紙の裏面にまで達して流落したり、含浸樹脂と塗工組成物とが混合してしまう虞れがない。
【0070】
本発明の化粧板1は、トップコート層6に該層の硬化性樹脂よりも高硬度の球状粒子10が含有されていることが好ましい。球状粒子10は、真球状、あるいは球を偏平にした楕円球状ならびに該真球や楕円球状に近い形状等のように、表面が滑らかな曲面で囲まれていればよい。球状粒子10は、特に粒子表面に突起や角のない、いわゆるカッティングエッジのない球状が好ましい。
【0071】
球状粒子10をトップコート層6の塗工組成物に含有せしめる量は、球状粒子10が硬化後のトップコート層において、硬化性樹脂からなるバインダー成分100重量部に対し5〜20重量部となるようにトップコート層の塗工組成物を調整するのが好ましい。
【0072】
球状粒子10の粒子径は、通常0.1〜100μm(平均粒径)のものが使用可能である。球状粒子10の粒子径が小さくなると耐摩耗性は低下し、一方、粒子径が大きくなると耐摩耗性が向上するが、粒子径が大きくなりすぎると、塗工の際の均一な塗工が困難になる。又、好ましい球状粒子10の粒子径はトップコート層6の厚みによっても異なり、例えば、トップコート層6の厚みを10〜30μmに形成する場合には、球状粒子10の粒子径は10〜50μmの範囲が好ましく、更に好ましくは10〜30μmである。
【0073】
球状粒子10の材質はトップコート層6に用いられる硬化性樹脂よりも高硬度であればよく、無機粒子及び有機樹脂粒子のいずれも用いることができる。球状粒子10の硬化性樹脂との硬度の差は、硬度はモース硬度、ビッカース硬度等の方法で計測され、例えばモース硬度で表した場合1以上あるのが好ましい。
【0074】
球状粒子10の具体的な材質として、α−アルミナ、シリカ、酸化クロム、酸化鉄、ダイヤモンド、黒鉛等の無機粒子、及び、架橋アクリル等の合成樹脂ビーズ等の有機樹脂粒子が挙げられる。特に好ましい球状粒子10として、非常に硬度が高く耐摩耗性に対する効果が大きいこと、及び球形状のものが比較的容易に得やすい等の理由から、球形のα−アルミナを挙げることができる。
【0075】
球形のα−アルミナは、特開平2−55269号公報に記載されているように、アルミナ水和物、ハロゲン化合物、硼素化合物等の鉱化剤あるいは結晶剤を、電融アルミナあるいは焼結アルミナの粉砕品に少量添加し、1400℃以上の温度で2時間以上熱処理することで、アルミナ中のカッティングエッジが減少し同時に形状が球形化したものが得られる。このような球形状のアルミナは、昭和電工(株)より「球状アルミナ(Spherical Alumina)AS−10、AS−20、AS−30、AS−40、AS−50」として各種の平均粒子径のものが市販されている。
【0076】
球状粒子10は、その粒子表面を処理することができる。例えばステアリン酸等の脂肪酸で処理することで分散性が向上する。又、表面をシランカップリング剤で処理することで、バインダーとして使用する硬化性樹脂との間の密着性や塗工組成物中での粒子の分散性が向上する。シランカップリング剤としては、分子中にビニルやメタクリル等のラジカル重合性不飽和結合を有するアルコキシシランや、分子中にエポキシ、アミノ、メルカプト等の官能基を有するアルコキシシランが挙げられる。シランカップリング剤は、球状粒子と共に使用する硬化性樹脂の種類に応じて適宜選択できる。
【0077】
球状粒子10の表面を処理するシランカップリング剤は、例えばトップコート層6の硬化性樹脂として(メタ)アクリレート等の電離放射線硬化性樹脂を用いた場合には、ラジカル重合性不飽和結合を有するアルコキシシランを用いる。又トップコート層6の硬化性樹脂として、二液硬化型のウレタン樹脂を用いた場合には、エポキシ基やアミノ基を有するアルコキシシランを用いる。このように、シランカップリング剤は、トップコート層の硬化性樹脂に応じてラジカル重合性不飽和結合や官能基の種類等を選択することが好ましい。
【0078】
ラジカル重合性不飽和結合を有するアルコキシシランとして具体的には、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどの分子中にラジカル重合性不飽和結合を有するアルコキシシランや、分子中にエポキシ、アミノ、メルカプト等の官能基を有するアルコキシシラン等がある。
【0079】
球状粒子10の表面をシランカップリング剤で処理する方法は、特に制限はなく、公知の方法が使用できる。例えば、乾式法として球状粒子10を激しくかくはんしながら所定量のシランカップリング剤を吹きつける方法や、湿式法としてトルエン等の溶剤中に球状粒子10を分散させた後に、所定量のシランカップリング剤を加え反応させる方法が挙げられる。
【0080】
球状粒子に対するシランカップリング剤の処理量(所要量)は、球状粒子の比表面積100に対してシランカップリング剤の最小被覆面積が10以上となる処理量が好ましい。球状粒子の最小被覆面積が球状粒子の比表面積100に対して10未満の場合はあまり効果がない。
【0081】
トップコート層6に用いる硬化性樹脂は、その架橋密度が高くなるほど耐摩耗性は向上するが、柔軟性(可撓性)は低下する。そのため硬化性樹脂の架橋密度は、化粧板の用途等によって耐摩耗性と柔軟性に応じて適宜選定するのが好ましい。
【0082】
トップコート層6に柔軟性を持たせることで、一旦プレコート紙7を製造し該プレコート紙7を基板9に積層接着する場合に、プレコート紙をロール状に巻き取る際、トップコート層6に亀裂が入ったり割れが生じるのを防ぐことができる。又、化粧板1として成形された後では、表面の感触に優れ、表面に対する強い衝撃等による割れを防止できる。
【0083】
トップコート層6の架橋密度は、硬化性樹脂が多成分のプレポリマー、オリゴマー、モノマー等を混合して構成される場合、下記の数1に示す平均架橋間分子量で表すことができる。
【0084】
【数1】
平均架橋間分子量=全体の分子量/架橋点の数・・・・・・・・・・〔1〕
但し、上記〔1〕式において、全体の分子量は、Σ(各成分の配合モル数×各成分の分子量)であり、架橋点の数は、Σ[{(各成分の官能基数−1)×2}×各成分のモル数]である。
【0085】
トップコート層6の硬化性樹脂について、平均架橋間分子量と塗膜の耐摩耗性と可撓性の関係をみた実験例を下記の表2に示した。表2は、硬化性樹脂をウレタンアクリレートオリゴマーと2種類のアクリレートモノマーとの3成分から構成し各成分の混合比を変えて平均架橋間分子量を異ならしめ、塗布量25g/m2 として塗工したものを硬化させた場合の耐摩耗性と可撓性を比較したものである。
【0086】
表2の耐摩耗性試験はJIS K6902に準じて行い樹脂層の厚みが半分になるまでの回数を示した。また可撓性は、硬化した硬化性樹脂が非常に柔軟であるのを◎、良好を○、やや柔軟性が低いのを△、柔軟性がかなり低いものを×で示した。
【0087】
尚、上記の塗膜組成物中に、実験No.1〜5は球状粒子としてA:平均粒径30μmの球状のα−アルミナを硬化性樹脂100重量部に対し11重量部添加し、実験No.6は球状粒子を用いずにB:平均粒子径30μmの不定形のカドを有する従来型のα−アルミナを同量添加したものである。
【0088】
【表2】
Figure 0003954665
【0089】
表2の樹脂系では、平均架橋間分子量は100〜1000の範囲で用いることができるが、より好ましくは100〜700である。また、プレコート紙7を基板9に貼着して化粧板1を製造する場合、トップコート層6に柔軟性が要求されるが、平均架橋間分子量が300〜700のものを用いた場合には、柔軟性及び耐摩耗性ともに良好なトップコート層6が得られる。
【0090】
又、トップコート層6の硬化性樹脂の平均架橋間分子量が小さい程(即ち、架橋密度が大きい)、バインダーとしての硬化性樹脂が球状粒子10をしっかりと保持し、耐摩耗性が更に向上することを示すものである。従って、可撓性を損なわない範囲で硬化性樹脂の平均架橋間分子量を小さく調節することで、更に耐摩耗性を向上させることができる。
【0091】
〔参考例〕
現在市販されている一般的な各種化粧材について、上記実験例と同様にして耐摩耗性試験を行った結果を、参考例として下記の表3に示した。
【0092】
【表3】
Figure 0003954665
【0093】
高硬度の球状粒子10を含有せしめることで、更に耐摩耗性が向上する。また、球状粒子10は、不定形粒子と比較して、トップコート層の耐摩耗性が向上するにも係わらず、それ自身は他の物を摩耗させにくいため、トップコート層塗工時のローラーやブレード等を摩耗させず、トップコート層として形成した後にトップコート層と接触する物体を摩耗させないという利点がある。また、球状粒子10の、耐摩耗性を大きく向上させ、塗工装置を摩耗させず、硬化塗膜と接する他の物を摩耗させないといった特徴は、カッティングエッジがない場合特に効果が大きい。これらの理由について以下に述べる。
【0094】
化粧材に限らず一般的に表面の樹脂層の耐摩耗性を改良する手段として、硬い粒子を添加することは、従来から行われている。例えば特開昭60−23462号公報には、従来からサンドブラスト法やブラシ研磨法等の研磨剤として使用されていた平均粒子径が約1〜50μmのSiO2 及びAl2 3 を主成分とする天然ガラスの粉末を配合した塗料を用いて表面樹脂層を構成することが開示されている。上記の塗料は優れた硬度の被膜を形成し、摩擦や引っかき力等に対して優れた耐久性を与えるとされている。
【0095】
また、表面の耐摩耗性や耐擦傷性を向上させる目的で、電離放射線硬化型樹脂に該樹脂100重量部当たり10〜30重量部の粒径1〜5μmのα−アルミナ粉体を添加して構成した樹脂層を、転写シートの転写後に被転写体の表面に位置する表面保護層として構成した転写シートを本願出願人は先に出願している(特開平3−76698号公報)。
【0096】
しかしながら、上記のα−アルミナや天然ガラスの粉末等の無機材料を添加した塗料を用いて化粧材とした場合、化粧材の耐摩耗性は無機材料を添加しないものと比較して向上するものの、いまだ不十分なものである。特に、床面に使用される化粧材のように高い耐摩耗性が要求される場合には、更に優れた耐摩耗性が望まれている。
【0097】
また、含浸紙等の化粧材の基材表面に上記の塗料を用いて塗工して耐摩耗性を有する表面樹脂層(トップコート層)を形成する際、グラビアロールコートを用いる場合にはグラビアロールやドクターブレードが上記塗料と直接接するが、α−アルミナは菱面晶系の結晶であり、塗料に研削材や研磨材等として利用されるα−アルミナや天然ガラスの粉末等は不定形、乃至は多角形状のカドの尖った形状の為、グラビアロールやドクターブレードを摩耗させたり傷を付けたりする。
【0098】
また上記の不定形のα−アルミナの様な粉末を添加した塗膜は、白濁して透明性が低下し化粧材の意匠が充分に生かせない。更に、硬質で多角形状の粉末を添加した塗膜は、手触り感が荒く、又、靴等のそれに隣する物体を摩耗させてしまう欠点がある。
【0099】
図3は本発明の化粧板の作用を説明するための図であり、同図(a)は球状粒子を用いたトップコート層の表面に応力が加わった場合の表面付近を拡大した状態を表し、また同図(b)は従来の不定形乃至多角形状粒子を用いたトップコート層の表面に応力が加わった場合の表面付近を拡大した状態を表している。
【0100】
同図(a)に示すように本発明の化粧板の表面に他の接触物11により応力が加わった場合、トップコート層6の球状粒子10は滑らかな表面を有するため、該粒子10の表面を接触物11がすべり易く、応力が分散される。従って、バインダーとしての硬化性樹脂から球状粒子10が脱落したりする虞れがない。
【0101】
そのため本発明の化粧板のトップコート層は滑りがよく耐摩耗性が著しく向上する。これに対し、同図(b)に示すように従来の不定形粒子12を使用した場合には、該粒子12の表面の突起状に形成された部分に接触物11が引っ掛かり応力が加わり易くなって、不定形粒子12は硬化性樹脂から脱落し易い。
【0102】
また、トップコート層6の球状粒子10は不定形粒子11と比較してぞうきんがけ等の際に引っ掛かる虞れがなく、他の接触物の表面を傷つけたり、摩耗させたりすることがない。
【0103】
又、熱可塑性樹脂のような非架橋性樹脂である軟質の樹脂に、それより格段に硬い粒子を添加分散させた場合は、粒子外力が加わった際に、樹脂が硬質粒子により破壊されて脱落したり、或いは摩耗物に引きずられて鍬が畑を耕す如く樹脂表面を傷つける作用をなし、耐摩耗性は期待した程向上しない。
【0104】
これに対し本発明に於いては、バインダー樹脂として硬化性樹脂を用いているため強度が高く此のような硬質粒子の脱落、傷付けを起こさず、よって著しく塗膜の耐摩耗性を向上させることができる。
【0105】
更に、同図(b)に示すように、従来の不定形粒子11を使用したトップコート層6は、不定形粒子10の周囲に空隙13等が存在し易くなるが、本願発明の場合には球状粒子であるためそのような空隙13は発生しにくい。従って、トップコート層には空気の層ができにくく、表面が白化しないので意匠性を低下させない。また、隙間ができないことはバインダーの硬化性樹脂との結合強度も強まり上記の耐摩耗性の向上にも寄与している。
【0106】
以下、具体的実施例を挙げ本発明を更に詳細に説明する。
実施例1
絵柄印刷が表面に施された坪量60gの化粧紙原紙の表面に、メラミン樹脂(乾燥後に常温で固体状となる樹脂)を含浸して乾燥し樹脂含浸紙を製造し、この樹脂含浸紙の印刷面に下記組成Aのトップコート層塗工組成物をロールコートにて30g/m2 塗工した後、175kv・5Mradの電子線を照射して、トップコート層を半硬化させたプレコート紙を得た。尿素系接着剤が30g/m2 塗工された厚さ10mmのパーチクルボードを上記プレコート紙の裏面側に積層し、加熱してラミネートプレスを行って、含浸紙の未硬化のメラミン樹脂とトップコート層の未硬化のメラミンポリマー、及び接着剤の尿素系樹脂とを同時に硬化させて、化粧板を得た。
【0107】
〔組成A:トップコート層の塗工物組成〕
・ウレタンアクリレートオリゴマー 30重量部
・2官能アクリレートモノマー 20重量部
・シリコンアクリレート 0.5重量部
・メラミンポリマー 30重量部
・溶剤 20重量部
【0108】
得られた化粧板は、トップコート層と含浸紙、含浸紙と接着剤層との間の層間強度に優れたものであり、又、プレコート紙形成の際に含浸樹脂が常温で固体状であるため、トップコート層の塗工を安定して行うことができ、作業性が良好であった。又、プレコート紙はトップコート層が半硬化した状態で流動性がないため、プレコート紙からトップコートの樹脂が垂れる等の不具合がなく、基板への積層も作業性良く行うことができた。
【0109】
実施例2
絵柄印刷が表面に施された坪量30gの化粧紙原紙の表面に、電子線硬化型ポリエステルアクリレート樹脂(乾燥後に未硬化の状態で固体状となる樹脂)を含浸した後、この化粧紙の印刷面に下記組成Bの塗工組成物をロールコートにて30g/m2 塗工した後、160W×3Pの紫外線を照射して半硬化の状態のトップコート層を形成したプレコート紙を得た。次いで、厚さ10mmのパーチクルボードの表面に電子線硬化型ウレタンアクリレート接着剤を30g/m2 塗工した該接着剤面に、上記のプレコート紙を積層し、ラミネートプレスを行い加熱によりトップコート層のメラミン樹脂を完全に硬化させた後、175kv・10Mradの電子線を照射して含浸樹脂及び接着剤層の樹脂を完全に硬化させて化粧板を得た。
【0110】
〔組成B:トップコート層の塗工物組成〕
・ウレタンアクリレートオリゴマー 20重量部
・2官能アクリルモノマー 20重量部
・メラミンポリマー 20重量部
・光開始剤 2重量部
・溶剤 20重量部
【0111】
得られた化粧板は、トップコート層と含浸紙、含浸紙と接着剤層との間の層間強度、及び耐摩耗性に優れたものであり、又、プレコート紙形成の際に含浸樹脂が常温で固体状であるため、トップコート層の塗工を安定して行うことができ、作業性が良好であった。又、プレコート紙はトップコート層が半硬化した状態で流動性がないため、プレコート紙からトップコートの樹脂が垂れる等の不具合がなく、基板への積層も作業性良く行うことができた。
【0112】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の化粧板は、含浸樹脂が完全に硬化しない状態の樹脂含浸紙にトップコート層及び接着剤層が積層され硬化されてなる構成を採用したことにより、樹脂含浸紙とトップコート層、及び樹脂含浸紙と基板との間で強固に密着しているため、層間強度が高く良好な耐摩耗性が得られる。しかも、化粧板であるためアフターコート化粧板と比較して生産性に優れる。
【0113】
本発明の化粧板は、含浸樹脂として完全に硬化しない状態に於いて乾燥又は冷却によって常温で非流動性であり且つ非粘着性の塗膜を与える樹脂を用いているため、化粧板製造の際に樹脂含浸紙の表面に均一なトップコート層を形成可能であり、更にトップコート層の塗工の際に含浸樹脂が垂れる虞れがなく、周囲を汚さずに製造が容易に行える。
【0114】
更に、化粧板の製造の際に、特殊な製造装置や含浸樹脂を保持するためのフィルム等が不要であり、製造する際に幅広い製造方法に対応することができる。例えば樹脂含浸紙を形成する工程、トップコート層を形成する工程、及び基板に積層する工程等を別々のラインに分けて行うことができる。また、含浸樹脂が未硬化の状態でトップコート層が形成されたプレコート紙を一旦製造しておいて、しかる後に、別の工程で上記プレコート紙を基板に積層一体化することで化粧板を容易に製造可能である。このように、従来の化粧板の化粧紙を製造する場合のような、含浸樹脂を含浸して直ぐにトップコート層を塗工して両者を硬化させる必要はないため、生産ラインを自由に設計することができる。
【0115】
本発明の化粧板において、トップコート層の硬化性樹脂が、完全に硬化しない状態に於いて乾燥又は冷却によって常温で非流動性であり且つ非粘着性の塗膜を与える樹脂である場合は、化粧板を製造する際、含浸樹脂及びトップコート層を完全に硬化させない状態のプレコート紙を一旦製造し、接着剤層を介して基板に積層する場合に全体を一度に硬化させることができる。上記のプレコート紙の場合、トップコート層が流動する虞れがなく、作業性に優れる。
【0116】
又、上記の化粧板において、トップコート層の硬化性樹脂が、樹脂含浸紙の含浸樹脂と反応する樹脂である場合や、接着剤層の硬化性樹脂が、樹脂含浸紙の含浸樹脂と反応する樹脂である場合は、更に各層の層間強度が良好であり、耐久性が向上する。
【0117】
又、化粧板のトップコート層に球状粒子を含有せしめた場合には、更に優れた耐摩耗性が得られる。特に、上記のトップコート層の硬化性樹脂の平均架橋間分子量が100〜1000である場合には、柔軟性と耐摩耗性が共に良好な化粧板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化粧板の1例を示す縦断面図である。
【図2】本発明の化粧板の製造方法の1例を示す工程図である。
【図3】本発明の化粧板の作用を説明するための図である。
【符号の説明】
1 化粧板
2 化粧紙原紙
3 含浸樹脂
5 樹脂含浸紙
6 トップコート層
7 プレコート紙
8 接着剤層
9 基板
10 球状粒子

Claims (4)

  1. 化粧紙原紙に硬化性樹脂からなる含浸樹脂が含浸された樹脂含浸紙の表面に、電離放射線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂とからなる硬化性樹脂にて形成されるトップコート層が設けられたプレコート紙を、樹脂含浸紙の裏面接着剤層を介して基板に積層一体化して化粧板を製造する方法であって、上記含浸樹脂及び接着剤層の樹脂が互いに反応する反応基を有する硬化性樹脂であり、上記プレコート紙の含浸樹脂が完全に硬化しない状態であり、常温で非流動性且つ非粘着性に形成され、トップコート層の上記硬化性樹脂が完全に硬化しない状態であり、常温で非流動性且つ非粘着性に形成され、上記プレコート紙の含浸樹脂を未硬化の接着剤層と接触させた後、含浸樹脂、接着剤層及びトップコート層を完全に硬化せしめて、プレコート紙と基板とを積層一体化するものであることを特徴とするプレコート紙を用いた化粧板の製造方法。
  2. トップコート層の上記硬化性樹脂が含浸樹脂と互いに反応する反応基を有するものである請求項1記載のプレコート紙を用いた化粧板の製造方法。
  3. トップコート層に該層の硬化性樹脂よりも高硬度の球状粒子が含有せしめられている請求項1〜2のいずれか1項に記載のプレコート紙を用いた化粧板の製造方法。
  4. トップコート層の熱硬化性樹脂がメラミン樹脂である請求項1〜3のいずれか1項に記載のプレコート紙を用いた化粧板の製造方法。
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