JP3953622B2 - 多層配線基板とその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層配線基板に関するもので、特に、配線の多様化に対応できる多層配線基板とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子機器の高密度化に伴い、これに用いられる配線基板においても、高密度化の要求に対応するため、金属配線の片面配線から両面配線への転換、更に多層化、薄型化も進められている。
このような中、配線基板の金属配線の形成は、一般には、絶縁性の基板の上全面に金属配線部を形成するための金属層を形成しておき、これをエッチング等により金属層の所定領域を除去して配線部を形成するサブトラクティブ法、あるいはめっき等により形成された金属配線部を直接ないし間接的に絶縁性の基板に、付け加え形成していくアディティブ法が用いられている。
サブトラクティブ法の場合は、通常、絶縁性基板に貼りつけられた金属層(銅箔)をエッチング加工により配線部を形成するもので、技術的に完成度が高く、コストも安いが、金属層の厚さ等によるる制約から配線部の微細加工が難しいという問題がある。
一方、アディティブ法の場合は、めっきにより金属配線部を形成するため、配線部の微細化は可能であるが、コスト信頼性の面で難がある。
尚、配線基板のベース基板としてはBTレジン基板等の、ガラスクロスをその中に含んだ絶縁性のエポキシ樹脂基板が一般に用いられる。そして、ベース基板の一面ないし両面に金属配線部を形成したものが単層の配線基板である。
【0003】
多層配線基板は、ベース基板の片面ないし両面に金属配線部を形成した単層の配線基板、複数層を、各単層の配線基板間にガラス布にエポキシ樹脂等を含浸させた半硬化状態のプリプレグを置き、加圧積層したものである。
多層配線基板の単層配線基板同志の接続は、通常、ドリル加工により作成されたスルホール内部に無電界メッキを施す等により行っており、その作製が煩雑で製造コスト面でも問題があった。
また、バイアホールを作成することにより層間接続を行う場合には、複雑なフォトリソグラフィー工程が必要であり、製造コストの低減の妨げとなっていた。
【0004】
結局、サブトラックティブ法により作製された多層基板は、配線の微細化に限界があるという理由で高密度化には限界があり、且つ、製造面や製造コスト面でも問題があった。
これに対応するため、基材上に、めっきにより形成された金属層(銅めっき層)をエッチングすることにより作成された金属配線(配線部)と絶縁層とを順次積層して作製する多層基板の作製方法が試みられるようになってきた。
この方法の場合には、高精細の配線と任意の位置での金属配線間の接続が可能となる。
絶縁性の基材上ないし絶縁層上への金属層(銅めっき層)からなる配線部の形成は、通常、絶縁性の基材上ないし絶縁層上へスパッタリング、蒸着、無電解めっき等で導通層となる金属薄膜を直接形成した後、電気めっき等により全面に厚付け金属層を形成し、次いで該金属層上にレジストを所定のパターンに形成して、該レジストを耐腐蝕マスクとしてレジストの開口部から露出した部分のみをエッチングすることにより行う。
しかし、この多層基板の作製方法は、金属層のめっき形成工程、レジストのパターニング工程、エッチング工程を交互に複数回行うため、工程が複雑となる。
また、基材上に金属配線(配線部)、絶縁層を1層づつ積み上げる直接プロセスのため、中間工程でトラブルが発生すると、製品の再生が困難となり、製造コストの低減に支障を来すという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来の配線部を複数層設けた多層配線基板としては、その作製方法から、配線の微細化に対応でき、且つ量産性に優れた構造のものは得られていなかった。
本発明は、これに対応するもので、配線の微細化に対応でき、量産性に優れ、且つ多層配線にも対応できる配線基板を提供しようとするものである。
同時に、そのような配線基板の製造方法を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の多層配線基板は、ベース基板の少なくとも一面に面全体わたり絶縁層を設け、該絶縁層上に、めっき形成された金属配線層を複数層順次転写して設けた多層配線基板であって、1層目の金属配線層は、金属配線の全てが前記絶縁層上に直接、一面を絶縁層の上側の面に揃え全体が絶縁層に埋まるように形成されており、且つ、2層目以降の金属配線層は、金属配線の全ての配線部の下に絶縁性樹脂層あるいは導電性樹脂層を介して、前記絶縁層ないし配線の上に積層されていることを特徴とするものである。
そして、上記において、絶縁層は、粘着性もしくは接着性を有するものである。
あるいは、絶縁層が熱可塑性樹脂であることを特徴とするものであり、該熱可塑性樹脂がポリイミドであることを特徴とするものである。
そしてまた、上記において、絶縁性樹脂層をその下に設けた配線ないし配線部と、導電性樹脂層をその下に設けた配線ないし配線部とを共に有することを特徴とするものである。
尚、ここでは、ベース基板面に垂直方向のベース基板の一面側への距離の大小を上下と言っている。
配線が他の配線と上下に重なり合う箇所で、絶縁性樹脂層を隣接する上下の配線間に設けた部分においては、上下の配線はこの箇所において電気的に分離されており、配線が他の配線と上下に重なり合う箇所で、導電性樹脂層を隣接する上下の配線間に設けた部分においては、上下の配線はこの箇所において電気的に接続されている。
【0007】
本発明の多層配線基板の製造方法は、ベース基板の少なくとも一面に面全体わたり粘着性もしくは接着性を有する絶縁層、あるいは熱可塑性の絶縁層を設け、該絶縁層上に、めっき形成された金属配線層を複数層順次転写して形成する多層配線基板の製造方法であって、第1層目の金属配線層は、導電性基板の一面上に全ての配線をめっき形成し、該導電性基板の配線側を、全ての配線を埋めるように絶縁層で覆った後、絶縁層を介して該導電性基板の配線部側をベース基板の一面に圧着し、導電性基板のみを分離することにより、絶縁層を介して、全ての配線を絶縁層とともに、ベース基板の一面上に転写形成され、第2層目以降の金属配線層は、配線ないし配線部分の下に、絶縁性樹脂層あるいは導電性樹脂層を介して、ベース基板側に転写して設けられることを特徴とするものである。
そして、上記において、第2層目以降の金属配線層のうち少なくとも1つの金属配線層の全配線は、表面が導電性でめっき剥離性の良い導電性基板の面上に、配線の形状を露出させるように、絶縁材料からなる耐めっき性のマスクを形成し、めっきにより該導電性基板の露出した部分に導電性金属薄膜を形成して作成されるもので、該導電性基板を転写用基板として、導電性基板から導電性金属薄膜をベース基板側に圧着して転写することを特徴とするものである。
あるいは、上記において、第2層目以降の金属配線層のうち少なくとも1つの金属配線層の全配線は、表面が導電性でめっき剥離性の良い導電性基板の面上に、配線の形状を露出させるように、絶縁材料からなる耐めっき性のマスクを形成し、めっきにより該導電性基板の露出した部分に導電性金属薄膜を形成して作成されるもので、該めっきにより形成された導電性金属薄膜を、一旦、補助基板に転写し、更に補助基板から導電性金属薄膜をベース基板側に圧着して転写することを特徴とするものである。
そして、上記において、第2層目以降の金属配線層は、絶縁性樹脂層あるいは導電性樹脂層を、ベース基板側に、あるいは導電性基板にめっき形成された金属配線層の配線上に、ディスペンス法あるいは印刷法により塗布した後に、ベース基板側に転写されるものであることを特徴とするものである。
あるいは、上記において、絶縁性樹脂層あるいは導電性樹脂層を、導電性基板にめっき形成された金属配線層の配線上に電着により形成することを特徴とするものである。
【0008】
【作用】
本発明の多層配線基板は、このような構成にすることにより、配線の微細化に対応でき、量産性に優れ、且つ多層配線にも対応できる配線基板の提供を可能としている。また、フィルム、ガラス金属等、種々の材質からなるベース基板に適用が可能で、配線の自由度も大きく、薄型化も可能としており、結局、材質や配線の自由度が大きく、且つ量産性に優れた、高密度な配線基板の提供を可能としている。
詳しくは、ベース基板の少なくとも一面に面全体わたり絶縁層を設け、該絶縁層上に、めっき形成された金属配線層を複数層順次転写して設けた多層配線基板であって、1層目の金属配線層は、金属配線の全てが前記絶縁層上に直接、一面を絶縁層の上側の面に揃え全体が絶縁層に埋まるように形成されており、且つ、2層目以降の金属配線層は、金属配線の全ての配線部の下に絶縁性樹脂層あるいは導電性樹脂層を介して、前記絶縁層ないし配線の上に積層されていることにより、更に具体的には、該絶縁層は、粘着性もしくは接着性を有するものである、あるいは、熱可塑性樹脂であることにより、これを達成している。
即ち、めっき形成により金属配線層を形成するために配線の微細化を可能とし、転写によりベース基板に金属配線層を複数層順次形成していくことにより、生産性の面でも量産に対応できるものである。
特に、ベース基板の一面に面全体わたり粘着性ないし接着性を有するあるいは熱可塑性の絶縁層を設けていることにより、2層以降の金属配線層の転写を容易としている。また、ベース基板の材質としてはフィルム、ガラス金属等、種々の材質が適用できる。
更に、2層目以降の金属配線は、その下(ベース基板側)に絶縁性樹脂層あるいは導電性樹脂層を介して前記絶縁層上に積層されていることにより、配線の自由度を大きくしている。
即ち、配線あるいは配線部が他の配線ないし配線部と上下に重なり合う箇所で、絶縁性樹脂層を隣接する上下の配線間に設けた部分においては、上下の配線はこの箇所において電気的に分離でき、導電性樹脂層を隣接する上下の配線間に設けた部分においては、上下の配線はこの箇所において電気的に接続することができる。
結果、サブトラクティブ法のようなフォトリソを用いたエッチング加工では、達成困難な3次元構造の形成が可能である。
尚、熱可塑性樹脂としてはポリイミド樹脂が絶縁性、耐熱性の点で好ましい。
【0009】
本発明の配線基板の製造方法は、このような構成にすることにより、本発明の配線の微細化に対応でき、量産性に優れ、且つ配線の多様化にも対応できる配線基板の製造を可能としている。
詳しくは、アディティブ法により金属配線部を製造するために、配線部の微細化に対応でき、転写工程により作製するために、生産性の面で量産化に対応できるものとしている。
詳しくは、ベース基板の少なくとも一面に面全体わたり粘着性もしくは接着性を有するか、あるいは熱可塑性の絶縁層を設け、該絶縁層上に、めっき形成された金属配線層を複数層順次転写して、設ける多層配線基板の製造方法であって、第1層目の金属配線層は、導電性基板の一面上に全ての配線をめっき形成し、該導電性基板の配線側を、全ての配線を埋めるように絶縁層で覆った後、絶縁層を介して該導電性基板の配線部側をベース基板の一面に圧着し、導電性基板のみを分離することにより、絶縁層を介して、全ての配線を絶縁層とともに、ベース基板の一面上に転写形成され、第2層目以降の金属配線層は、配線ないし配線部分の下に、絶縁性樹脂層あるいは導電性樹脂層を介して、ベース基板側に転写して設けられることにより、これを達成している。
更に、具体的には、第2層目以降の金属配線層のうち少なくとも1つの金属配線層の全配線は、表面が導電性でめっき剥離性の良い導電性基板の面上に、配線の形状を露出させるように、絶縁材料からなる耐めっき性のマスクを形成し、めっきにより該導電性基板の露出した部分に導電性金属薄膜を形成して作成されるもので、該導電性基板を転写用基板として、導電性基板から導電性金属薄膜をベース基板側に圧着して転写するか、あるいは、第2層目以降の金属配線層のうち少なくとも1つの金属配線層の全配線は、表面が導電性でめっき剥離性の良い導電性基板の面上に、配線の形状を露出させるように、絶縁材料からなる耐めっき性のマスクを形成し、めっきにより該導電性基板の露出した部分に導電性金属薄膜を形成して作成されるもので、該めっきにより形成された導電性金属薄膜を、一旦、補助基板に転写し、更に補助基板から導電性金属薄膜をベース基板側に圧着して転写することにより、これを達成している。
導電性基板としては、ステンレス材(SUS304等)が用いられる。
特に、ベース基板の一面に面全体わたり粘着性ないし接着性を有するか、あるいは熱可塑性の絶縁層を設けていることにより、2層目以降の金属配線層のベース基板への転写性を良いものとしている。
また、ベース基板側への、あるいは転写するめっき形成された金属配線層側への絶縁性樹脂層あるいは導電性樹脂層の形成をディスペンス法にて行うことができ、工程を簡略化でき、生産性の面で優れている。
また、絶縁性樹脂層あるいは導電性樹脂層をめっき形成した導電性の金属薄膜上に、更に電着形成することにより、更に、作業性の良いものとしている。
【0010】
【発明の実施の形態】
先ず、本発明の多層配線基板の実施の形態を挙げ、図面に基づいて説明する。
図1(a)は本発明の多層配線基板の実施の形態の第1の例を示した概略斜視図で、図1(b)は、図1(a)の金属配線140に沿う断面図で、図2は、本発明の多層配線基板の実施の形態の第2の例を示した概略斜視図で、図2(b)は、図2(a)の金属配線140に沿う断面図で、図3(a)は本発明の多層配線基板の実施の形態の第3の例を示した概略斜視図で、図3(b)は、図3(a)の金属配線140に沿う断面図である。
尚、図1〜図3はともに、説明を分かり易くするため、回路構成をごく簡単なものとして特徴部を示してある。
また、図1〜図3中点線部は、絶縁層に埋もれて見えない部分で、分かり易くするため外形のみを示してある。
図1〜図3中、100、200、300は多層配線基板、110はベース基板、120は絶縁層、130、131、132、133、134、140、160、161、162は金属配線、135、136は端子部、150は絶縁性樹脂層、155は導電性樹脂層、170、171は絶縁性樹脂層、172は導電性樹脂層である。
【0011】
実施の形態の第1の例について説明する。
図1に示す第1の例の多層配線基板は、ベース基板の少なくとも一面に面全体わたり絶縁層を設け、該絶縁層上に、めっき形成された金属配線層を、複数層順次転写して設けた多層配線基板で、1層目の金属配線層は、金属配線の全てが前記絶縁層上に直接、一面を絶縁層の上側の面に揃え全体が絶縁層に埋まるように形成されており、且つ、2層目以降の金属配線層は、金属配線の全ての配線部の下に絶縁性樹脂層あるいは導電性樹脂層を介して、前記絶縁層ないし配線の上に積層されている多層基板の1例で、金属配線層を2層とするものである。
1層目の金属配線層は金属配線層130、131、132、133、134および端子部135、136とからなり、金属配線の全てが絶縁層120上に直接、一面を絶縁層120の上側の面に揃え全体が絶縁層120に埋まるように形成されている。
2層目の金属配線層は金属配線層140からなり、絶縁性樹脂層150を介して、金属配線130、131および絶縁層120の上に設けられ、且つ、導電性樹脂層を介して、金属配線132、133上に配設されている。
【0012】
絶縁層120としては、粘着性もしくは接着性を有するもので、特に、その製造面からは、熱可塑性の樹脂層が好ましい。
熱可塑性の樹脂としては、ポリイミド樹脂、シリコーン含有ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリブタジエン、ポリウレタン、セルロース、ポリスチレンが挙げられ、特に、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、アルキル鎖含有ポリイミド等のポリイミド樹脂が絶縁性耐熱性の点で好ましい。
また、絶縁性確保のためにフッ素樹脂、シリコーン等を樹脂中に、混入しても良い。
絶縁層120の厚さとしては、転写性を考慮して決めるが、通常、1μm〜1mm程度が好ましい。
【0013】
金属配線や金属端子を形成する金属薄膜の材質としては、導電性や、コスト的な面からはめっき銅が好ましいが必要に応じてNi(ニッケル)、Au(金)、Cr(クロム)、Ag(銀)、Pt(白金)等でも良く、めっき銅の場合、その厚さは、配線の幅にもよるが1μm以上は必要である。
【0014】
絶縁性樹脂層150、導電性樹脂層155としては、熱硬化性樹脂が好ましいが、これに限定はされない。熱可塑性樹脂でも使用できる。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ、フェノール、メラミンポリエステル、シリコーン等がある。それぞれ、必要に応じ、硬化剤、変成剤、充填剤等を、適宜選んで使用する。
熱可塑性の樹脂としては、絶縁層120の材質として挙げたものが適用できる。
【0015】
ベース基板110としては、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン等の導電性の金属板、あるいは、ガラス板、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレン、アクリル等の絶縁性樹脂基板等が挙げられる金属配線層としてめっき銅配線層が用いられる場合には、ベース基板の材質としては、銅の熱膨張係数に近い熱膨張係数をもつもの、例えばステンレス(SUS304)やBTレジン等のプリント基板に用いられるガラスクロス入りのエポキシ樹脂が用いられる。
ステンレス(SUS304)やBTレジン等のプリント基板に用いられるガラスクロス入りのエポキシ樹脂の熱膨張係数は、銅とほぼ同じで、17ppmである。
【0016】
(変形例)
図1に示す第1の例の多層配線基板100において、導電性樹脂層155をもたず、且つ、金属配線140の下側に全て絶縁性樹脂層を設ける構造とした場合には、金属配線140を、金属配線130〜132のいずれとも電気的に分離した状態で設けることができる。
【0017】
次に、実施の形態の第2の例について説明する。
図2に示す第2の例の多層配線基板200は、第1の例と同様、ベース基板の少なくとも一面に面全体わたり絶縁層を設け、該絶縁層上に、めっき形成された金属配線層を、複数層順次転写して設けた多層配線基板で、1層目の金属配線層は、金属配線の全てが前記絶縁層上に直接、一面を絶縁層の上側の面に揃え全体が絶縁層に埋まるように形成されており、且つ、2層目以降の金属配線層は、金属配線の全ての配線部の下に絶縁性樹脂層あるいは導電性樹脂層を介して、前記絶縁層ないし配線の上に積層されている多層基板の1例で、金属配線層を3層とするものである。
図2に示す多層基板200としては、説明を分かり易くするため、図1に示す多層配線基板100に対し、更に、3層目の金属配線層(金属配線160)を設けたものを挙げてある。
金属配線層160を絶縁性樹脂層170を介して、金属配線層131、140上に設けている。
図2(a)の金属配線140に沿う断面の形状は図2(b)のようになり、第2の例では、金属配線層140と金属配線層160、および金属配線層131と金属配線層160とは、絶縁性樹脂層170により電気的に分離された状態である。
勿論、金属配線140と、金属配線130、131とは電気的に絶縁性樹脂層150により電気的に分離され、金属配線140と、金属配線132、133とは導電性樹脂層155を介して電気的に接続されている。
絶縁性樹脂層170としては、絶縁性樹脂層150と同じものが適用可能である。
金属配線160については、第1の例と同様、めっき銅配線が好ましい。
尚、他の各部の材質については、第1の例で挙げたものが適用される。
【0018】
次に、実施の形態の第3の例について説明する。
図3に示す第3の例の多層配線基板300は、ベース基板の少なくとも一面に面全体わたり絶縁層を設け、該絶縁層上に、めっき形成された金属配線層を、複数層順次転写して設けた多層配線基板で、1層目の金属配線層は、金属配線の全てが前記絶縁層上に直接、一面を絶縁層の上側の面に揃え全体が絶縁層に埋まるように形成されており、且つ、2層目以降の金属配線層は、金属配線の全ての配線部の下に絶縁性樹脂層あるいは導電性樹脂層を介して、前記絶縁層ないし配線の上に積層されている多層配線基板の1例で、第2の例と同様に、金属配線層を3層とするものである。
第3の例の多層配線基板300は、図1に示す第1の例の多層配線基板100に対し、金属配線161、162を3層目の金属配線層として設けたもので、金属配線層161を絶縁性樹脂層171を介して金属配線層131、140上に設け、且つ、金属配線層162を導電性樹脂層172を介して金属配線140上に、そして、絶縁性樹脂層171を介して金属配線層130上に設けている。
図3(a)の金属配線140に沿う断面の形状は図3(b)のようになる。
金属配線層140と金属配線層161、および金属配線層131と金属配線層161とは電気的に分離され、金属配線140と金属配線162とは電気的に接続され、金属配線130と金属配線162とは電気的に分離されている。
勿論、金属配線140と、金属配線130、131とは電気的に絶縁性樹脂層150により電気的に分離されている。
絶縁性樹脂層171、導電性樹脂層172としては、絶縁性樹脂層150と同じものが適用可能である。
金属配線層161、162については、第1の例、第2の例と同様、めっき銅配線が好ましい。
尚、他の各部の材質については、第1の例で挙げたものが適用される。
【0019】
(変形例)
第1の例〜第3の例の変形例としては、金属配線層が4層以上の多層配線基板で、同様に、ベース基板の少なくとも一面に面全体わたり絶縁層を設け、該絶縁層上に、めっき形成された金属配線層を、複数層順次転写して設けた多層配線基板で、1層目の金属配線層は、金属配線の全てが前記絶縁層上に直接、一面を絶縁層の上側の面に揃え全体が絶縁層に埋まるように形成されており、且つ、2層目以降の金属配線層は、金属配線の全ての配線部の下に絶縁性樹脂層あるいは導電性樹脂層を介して、前記絶縁層ないし配線の上に積層されている多層配線基板が挙げられる。
【0020】
次いで、本発明の多層配線基板の製造方法の実施の形態を挙げる。
実施の形態の第1の例の工程を図4に基づいて説明する。
第1の例は、図1に示す多層配線基板の実施の形態の第1の例(多層配線基板100)の製造方法の1例を示したものである。
まず、めっき剥離性の良い導電性基板410(図4(a))の面に、耐めっき性のレジスト420を所定の形状に製版して(図4(b))、1層目の金属配線430(図1の金属配線130、131に相当)をめっき形成しておく。(図4(c))
次いで、導電性基板410からレジスト420を除去し(図4(d))、めっき形成された金属配線430全体が完全に埋まるように、導電性基板410上に、絶縁層440(図1の絶縁層120に相当)を塗膜する。(図4(e)) この後、導電性基板410上の絶縁層120側を、作製する多層配線基板(図1の100に相当)のベース基板110の一面に圧着して(図4(f))、その後、導電性基板410のみを分離することにより、絶縁層440と金属配線430をベース基板110側に転写する。(図4(g))
これにより、めっき形成された金属配線430(図1の金属配線130〜133等に相当)の全てが、絶縁層120上に直接、一面を絶縁層120の上側の面に揃え全体が絶縁層に埋まるようにして、ベース基板110上に絶縁層120を介して形成される。
金属配線430の全てが1層目の金属配線層である。
次いで、絶縁性樹脂層150、導電性樹脂層155をそれぞれ、重ねる2層目の金属配線層(図1の金属配線140に相当)下の、金属配線130〜133、および絶縁層120の上側の所定の位置に、略同じ厚みで、ディスペンス塗布方法により形成しておく。(図4(h))
絶縁層440(図1の絶縁層120に相当)としては、粘着性もしくは接着性を有するか、熱可塑性を有する樹脂で、熱可塑性を有する樹脂である場合には、所定の温度に熱をかけて転写する。
感光性のレジスト420としては、特に限定されないが、耐めっき性や処理性の良いものが好ましい。
金属配線430としてめっき銅配線層が一般に用いられるが、この場合、ベース基板110の材質としては、銅の熱膨張係数に近い熱膨張係数をもつもの、例えばステンレス(SUS304)やBTレジン等のプリント基板に用いられるガラスクロス入りのエポキシ樹脂が用いられる。また、導電性基板410としてはステンレス基板(SUS304)が用いられる。
絶縁性樹脂層150、導電性樹脂層155としては、熱硬化性樹脂が好ましいが、これに限定されない。
一方、別のめっき剥離性の良い導電性基板415(図4(i)に、2層目の金属配線140作製のため、耐めっき性のレジスト425を所定形状に形成し(図4(j))、露出したレジストの開口部425Aに金属配線435(図1の金属配線140に相当)を形成しておく。(図4(k))
この場合も、金属配線435としてめっき銅配線層が一般に用いられ、導電性の基板415としてはステンレス基板(SUS304)が用いられる。
次いで、同様にして、金属配線435(図1の140に相当)側を、ベース基板110上の金属配線130〜133側に向け(図4(l))、圧着し、金属配線435を導電性の基板415からベース基板110側に転写する。(図4(m))
絶縁層120として熱可塑性樹脂、そして絶縁性樹脂層150、導電性樹脂層155として熱硬化性樹脂を用いた場合には、所定の熱をかけて絶縁層120に金属配線435(金属配線140)が転写しやすいようにし、更に、絶縁性樹脂層150を硬化させる。
【0021】
実施の形態の第2の例の工程を図5に基づいて説明する。
第2の例は、図2に示す多層配線基板の実施の形態の第2の例(多層配線基板200)の製造方法の1例を示したものである。
図4に示す第1の例のようにして、図1に示す多層配線基板100を作製した(図5(a))後、3層目の金属配線160(図2)下となる、金属配線140の上、および金属配線131上に、絶縁性樹脂層170をディスペンス塗布方法により塗布する。(図5(b))
一方、別のめっき剥離性の良い導電性の基板510(図5(c)に、3層目の金属配線160(図2)作製のため、耐めっき性のレジスト520を所定形状に形成し(図5(d))、露出したレジストの開口部520Aに金属配線530(金属160に相当)を形成しておく。(図5(e))
次いで、同様にして、金属配線535(金属配線160)側を、ベース基板110上の金属配線140側に向け(図5(f))、圧着し、金属配線160を導電性の基板510からベース基板110側に転写する。(図5(g))
絶縁層120として熱可塑性樹脂、絶縁性樹脂層170として熱硬化性樹脂を用いた場合には、所定の熱をかけ絶縁層120に金属配線160が転写しやすいようにし、更に、絶縁性樹脂層170を硬化させる。
【0022】
実施の形態の第3の例の工程を図6に基づいて説明する。
第3の例は、図3に示す多層配線基板の実施の形態の第3の例(多層配線基板300)の製造方法の1例を示したものである。
図4に示す第1の例のようにして、図1に示す多層基板100を作製した(図6(a))後、3層目の金属配線161(図3)の下となる、金属配線140の上、および金属配線130上、および、金属配線162(図3)の下となる金属配線130上にのみ、絶縁性樹脂層171をディスペンス塗布方法により塗布し、更に、3層目の金属配線162の下となる、金属配線140の上のみに導電性樹脂層172をディスペンス塗布方法により塗布しておく。(図6(b))
一方、別のめっき剥離性の良い導電性の基板610(図6(c)に、3層目の金属配線161、162作製のため、耐めっき性のレジスト620を所定形状に形成し(図6(d))、露出したレジストの開口部620Aに金属配線630(図3の161、162に相当)を形成しておく。(図6(e))
次いで、同様にして、金属配線630(金属配線161、162)側を、ベース基板110上の金属配線側に向け(図6(f))、圧着し、金属配線630(金属配線161、162)を導電性の基板610からベース基板110側に転写する。(図6(g))
絶縁層120として熱可塑性樹脂、絶縁性樹脂層171、導電性樹脂層172として熱硬化性樹脂を用いた場合には、所定の熱をかけ絶縁層120に金属配線161、162が転写しやすいようにし、更に、絶縁性樹脂層171、導電性樹脂層172を硬化させる。
【0023】
実施の形態の第4の例の工程を図7に基づいて説明する。
第4の例は、図3に示す多層配線基板の実施の形態の第3の例(多層配線基板300)の製造方法の別の1例を示したもので、第3の例の製造方法において、デイスペンス塗布方法によるベース基板110の金属配線、絶縁層120上への絶縁性樹脂層171、導電性樹脂層172の形成を行わずに、めっき形成された金属配線(金属配線161、162に相当)上にディスペンス塗布方法により、それぞれ、絶縁性樹脂層171、導電性樹脂層172の塗布を行い、絶縁性樹脂層171、導電性樹脂層172を介して、それぞれ、金属配線161、162をベース基板110側に転写するものである。
【0024】
実施の形態の第5の例の工程を図8に基づいて説明する。
第5の例は、図2に示す多層配線基板200の製造方法の別の1例で、第2の例における、ディスペンス塗布方法による金属配線140上への絶縁性樹脂層170の形成を行わずに、めっき形成された金属配線(金属配線160に相当)上に電着により絶縁樹脂層(電着接着層とも言う)173を形成するもので、絶縁樹脂層173を介して金属配線160をベース基板110側に転写するものである。以下説明する。
図4に示す第1の例のようにして、図1に示す多層配線基板100を作製しておく。(図8(a))
一方、別のめっき剥離性の良い導電性の基板810(図8(b)に、3層目の金属配線160作製のため、耐めっき性のレジスト820を所定形状に形成し(図8(c))、露出したレジストの開口部820Aに金属配線160を形成しておく。(図8(d))
この後、図8(d)に示す金属配線160上に、更に、絶縁樹脂層173を電着形成しておく。(図8(d))
次いで、同様にして、金属配線160側を、ベース基板110上の金属配線140側に向け、圧着し(図8(f))、金属配線160を導電性の基板810からベース基板110側に転写する。(図8(g))
【0025】
絶縁樹脂層173は、金属配線160上に電着により設けられたものをそのまま接着剤層として用いたものであり、金属配線160の形成と絶縁樹脂層173の形成を連続して行うことができ、これにより量産性の良いものとなる。
絶縁樹脂層173は、電着性を持ち、常温もしくは、加熱により粘着性を示すものであれば良く、例えば、使用する高分子としては、粘着性を有するアニオン性、またはカチオン性合成高分子樹脂を挙げることができる。
【0026】
アニオン性合成高分子樹脂としては、アクリル性樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン化油樹脂、ボリブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等を単独で、あるいは、これらの樹脂の任意の組合せによる混合物として使用できる。さらに、上記のアニオン性合成樹脂とメラミン樹脂、フエノール樹脂、ウレタン樹脂等の架橋性樹脂とを併用しても良い。
また、カチオン性合成高分子樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等を単独で、あるいは、これらの任意の組合せによる混合物として使用できる。さらに、上記のカチオン性合成高分子樹脂とポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の架橋性樹脂を併用しても良い。
また、上記の高分子樹脂に粘着性を付与するために、ロジン系、テルペン系、石油樹脂等の粘着性付与樹脂を必要に応じて添加することも可能である。
上記高分子樹脂は、アルカリ性または酸性物質により中和して水に可溶化された状態、または水分散状態で電着法に供される。すなわち、アニオン性合成高分子樹脂は、トリメチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアミン類、アンモニア、苛性カリ等の無機アルカリで中和する。カチオン性合成高分子樹脂は、酢酸、ぎ酸、プロピオン酸、乳酸等の酸で中和する。そして、中和された水に可溶化された高分子樹脂は、水分散型または溶解型として水に希釈された状態で使用される。
【0027】
実施の形態の第6の例の工程を図9に基づいて説明する。
第6の例は、図3に示す多層配線基板300の製造方法の別の1例で、めっき形成された金属配線(金属配線161、162に相当)上に、それぞれ、電着により、絶縁性樹脂層171A、導電性樹脂層172Aを形成し、且つ、ベース基板110側の金属配線140上には、これらを形成せずに、金属配線161、162を絶縁性樹脂層171A、導電性樹脂層172Aを介して、ベース基板110側に転写するものである。以下説明する。
図4に示す第1の例のようにして、図1に示す多層基板100を作製しておく。(図9(a))
一方、別のめっき剥離性の良い導電性の基板910(図9(b)に、3層目の金属配線161、162作製のため、耐めっき性のレジスト920を所定形状に形成し(図9(c))、露出したレジストの開口部920Aに金属配線930(金属配線161、162に相当)を形成しておく。(図9(d))
次いで、絶縁性樹脂層171Aを形成する金属配線161上を露出させ、且つ導電性樹脂層172Aを形成する金属配線162上を覆うように、別の耐めっき性レジスト925を所定形状に製版する。(図9(e))
次いで、絶縁性樹脂層171Aを金属配線161上に電着形成し(図9(f))、レジスト925のみを剥離除去した後、導電性樹脂層172Aを金属配線162上に電着形成する。(図9(g))
次いで、同様にして、金属配線161、162側を、ベース基板110上の金属配線140側に向け、圧着し(図9(h))、金属配線161、162を導電性の基板910からベース基板110側に転写する。(図9(g))
【0028】
(変形例)
上記第1の例〜第6の例の工程の変形例としては、2層目以降の金属配線層のベース基板110側への転写を、補助基材を用い、めっき形成された金属配線層を、一旦、補助基材側に転写し、更に、ベース基板110側に転写する方法が挙げられる。
即ち、導電性基板の一面上にめっき形成した2層目以降の金属配線をそのままベース基板110側に転写するものではなく、一面に接着剤層を設けた、ベース基材と接着剤層からなる補助基材の、接着剤層側に、一旦、めっき形成した金属配線を転写し、更に、補助基材に転写された、金属配線をベース基材110上へと転写するものである。
また、ここでは、説明を簡単にするため、金属配線層が2層、3層の多層配線基板を作製する場合について、その製造方法を示したが、これらの方法は、4層以上の多層配線基板を作製する場合についても、適用できるものである。
【0029】
【実施例】
(実施例1)
実施例1は、図4に示す多層基板の製造方法の第1の例の工程に従い、図1に示す多層配線基板を形成した後に、図6に示す多層基板の製造方法の実施の形態の第3の例の工程に従い、図3に示す多層配線基板を製造する例である。
以下、図4、図6及び図3に基づきこれを説明する。
【0030】
1層目の金属配線層(図3の配線130〜134、端子部134、135に相当)を以下のようにして、厚さ約100μmのポリイミドフィルム基板をベース基材110の一面上に、金属配線の全てが絶縁層120上に直接、一面を絶縁層120の上側の面に揃え全体が絶縁層120に埋まるように形成した。
まず、導電性基板410として0.1mm厚のステンレス板(図4(a))を用い、この一面に、市販のフォトレジスト(東京応用化株式会社製、PMERP−AR900)を厚さ8μmに塗布乾燥し、所定のマスクを用いて密着露光を行った後、現像、水洗、乾燥、熱硬化処理等を行って、該フォトレジストを所定の形状に製版した。(図4(b))
次いで、その一面上にフォトレジストが製版された導電性基板410と含燐銅電極を対向させて下記の組成の硫酸銅めっき浴中に浸漬し、直流電源の陽極に含燐銅電極を陰極に、それぞれ、導電性基板410を接続し、電流密度2A/dm2 で24分間の通電を行い、フォトレジストで被膜されていない導電性基板の露出部に膜厚約10μmの銅めっき膜を形成し、金属配線とした。
(めっき浴組成)
CuSo4 ・5H2 O 200g/l
2 SO4 50g/l
Hcl 015ml/l(Clとして60ppm)
この後、導電性基板410の一面上のフォトレジストを除去し(図4(d))、導電性基板410の銅めっきが施された側、一面上に接着性を有する絶縁層材料(宇部興産株式会社製 UPA−221C)を全面塗布し、乾燥して、約25μmの厚さに絶縁層(接着剤層)440(絶縁層120に相当)を形成した。(図4(e))
この後、導電性基板410上の絶縁層120側を、作製する多層配線基板(図1の100に相当)のベース基板110の一面に圧着して(図4(f))、その後、導電性基板410のみを分離することにより、絶縁層440と金属配線430をベース基板110側に転写した。(図4(g))
圧力:3Kgf/cm2 、温度:200°Cの圧着条件のもとで転写を行った。
このようにして、1層目の金属配線層がベース基板110の一面に形成された。
【0031】
2層目の金属配線層(図3の配線140に相当)、3層目の金属配線層(図3の161、162に相当)については、それぞれ、以下のようにして、導電性基板上にめっき形成した。
先ず、導電性基板として、0.1mm厚のステンレス板を準備し、このステンレス板上に市販のフォトレジスト(東京応化工業株式会社製 OMR−85)をスピンコート法により膜厚約1μmに塗布し、オーブンで85°C、30分間乾燥を行った。
そして、各金属配線層に対応する所定のフォトマスクを用いて、露光装置P−202−G(大日本スクリーン製造株式会社製)を用いて密着露光を行った。
その後、現像、水洗、乾燥をし、所定のパターンを有するフォトレジスト層を形成した。
次いで、1層目の金属層の形成と同じように、導電性基板に所定形状のレジストを形成したもの(以下、転写用原版とも言う)を、それぞれ、含燐銅電極を対向させて硫酸銅めっき浴中に浸漬し、直流電源の陽極に含燐銅電極を陰極に、それぞれ、転写用原版を接続し、通電を行い、フォトレジストで被膜されていない導電性基板の露出部に膜厚約10μmの銅めっき膜を形成し、金属配線とした。
このようにして、2層目、3層目の金属配線層を形成した。
【0032】
次いで、1層目の金属配線が形成されたベース基板110の転写された第1層目の金属配線(130〜133)側に、2層目の金属配線層を、上記と同様の条件で圧着して、第2層目の配線金属層を転写し(図4(k))、同様にして、3層目の金属配線を、2層目の金属配線が形成されたベース基板110側に転写した。(図6(g))
尚、2層目、3層目の金属配線層の転写に際しては、絶縁性樹脂層150、171、導電性樹脂層155、172を、それぞれ、2層目以降の金属配線層下の、ベース基板110側の金属配線、絶縁層120の上側の所定の位置に、ディスペンス塗布方法により形成した。(図4(h))
絶縁性が必要な箇所においては、絶縁性樹脂層をディスペンス塗布方法により絶縁層を有する接着剤(信越化学工業株式会社製 KE3479)をベース基板側に塗布し、厚み10μmの接着性を有する絶縁樹脂層を形成し、且つ、導電性が必要な箇所に導電性樹脂層をディスペンス塗布方法により導電層を有する接着剤(信越化学工業株式会社製 KE3472)をベース基板側に塗布し、厚み10μmの接着性を有する導電性樹脂層を形成した。
【0033】
この後、200°C、1時間の条件でベース基材の絶縁樹脂層150、絶縁樹脂層161、導電樹脂層162を硬化させて、3層の配線パターン層を備えた多層配線基板を得た。
【0034】
(実施例2)
実施例2は、図4に示す多層基板の製造方法の第1の例の工程に従い、図1に示す多層配線基板を形成した後に、図7に示す多層基板の製造方法の実施の形態の第4の例の工程に従い、図3に示す多層配線基板を製造する例である。
絶縁樹脂層あるいは導電樹脂層の形成以外は実施例1と同様に行った。
他は、実施例1と同様に行った。
【0035】
(実施例3)
実施例3は、図4に示す多層基板の製造方法の第1の例の工程に従い、図1に示すような多層配線基板を形成した後に、図9に示す多層基板の製造方法の実施の形態の第6の例の工程に従い、図3に示すような多層配線基板を製造する例である。
以下、図4、図9及び図3に基づきこれを説明する。
1層目〜3層目の金属配線層の形成、およびベース基板110、絶縁層120は実施例1と同じで、転写の際の圧着条件も実施例1と同じとした。
実施例1における3層目の金属配線層下の絶縁性樹脂層171、導電性樹脂層172を、それぞれ、電着性の絶縁性樹脂層(図9の171A)、電着性の導電性樹脂層(図9の172A)としたもので、電着性の絶縁性樹脂層(171A)、導電性樹脂層(172A)を、導電性基板910上にめっき形成金属配線930上に形成して、これを介してベース基板110側に金属配線層930を転写形成したものである。
以下のようにして、3層目のめっき形成された金属配線(図9の金属配線層161に相当)上に設ける絶縁性樹脂層171Aは、以下のようにポリイミドワニスを作製し、電着液の調整を行った。
<ポリイミドワニスの製造>
11容量の三つ口セパラブルフラスコにステンレス製イカリ攪拌器,窒素導入管及びストップコックの付いたトラップの上に玉付き冷却管をつけた還流冷却器を取り付ける。窒素気流中を流しながら温度調整機のついたシリコーン浴中にセパラブルフラスコをつけて加熱した。反応温度は浴温で示す。
3、4、3’、4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジ無水物(以後BTDAと呼ぶ)32.22g(0.1モル)、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン(m−BAPS)21.63g(0.05モル),γ−バレロラクトン1.5g(0.015モル)、ピリジン2.4g(0.03モル)、NMP(N−メチル−2−ピロリドンの略)200g、トルエン30gを加えて、窒素を通じながらシリコン浴中,室温で30分撹件(200rpm)、ついで昇温して180℃、1時間、200rpmに攪拌しながら反応させる。トルエン−水留出分15mlを除去し、空冷して、BTDA16.11g(0.05モル)、3、5ジアミノ安息香酸(以後DABzと呼ぶ)15.216g(0.1モル)、NMP119g、トルエン30gを添加し、室温で30分攪拌したのち(200rpm)、次いで昇温して180℃に加熱攪拌しトルエン−水留出分15mlを除去した。その後、トルエン−水留出分を系外に除きながら、180℃、3時間、加熱、撹拌して反応を終了させた。20%ポリイミドワニスを得た。酸当量(1個のC00Hあたりのボリマー量は1554)は70である。
<電着液の調製>
20%濃度ポリイミドワニス100gに3SN(NMP:テトラヒドロチオフェン−1、1−ジオキシド=1:3(重量)の混合溶液)150g、ベンジルアルコール75g、メチルモルホリン5.0g(中和率200%)、水30gを攪拌して水性電着液を調製した。得られた水性電着液は、ポリイミド7.4%、pH7.8、暗赤褐色透明液であった。
【0036】
また、以下のように、3層目の電着形成された金属配線(金属配線162に相当)上に設ける導電性樹脂層172Aの電着液の調整を行った。
<電着液の調整>
メチルメタクリレート40重量部、エチルメタクリレート35重量部、2一ヒドロキシエチルメタクリレート15重量部、アクリル酸10重量部、およびアゾビスイソプチロニトリル2重量部からなる混合液を、窒素ガス雰囲気中において105℃に維持したジオキ酸100重量部中に3時間を要して滴下し、さらに、同じ温度で1時間熟成させて、アクリル樹脂(酸価75、ガラス転移点65℃)溶液を得た。
次いで、このアクリル樹脂溶液をトリエチルアミンで0.6当量中和した後、固形分含有率が20重量%になるように水を加え溶液Aを調整した。
一方、コータックWE−866(東レ(株)製:固形分酸価56.8、水酸基価43)68重量部、サイメル285(三井東圧(株)製、メラミン樹脂)35.5重量部、トリエチルアミン0.7重量部からなる混含液に、脱イオン水721重量部を加え、均一なエマルジョンBを調整した。
次いで、溶液A160重量部に銀粉末15重量部を加え、さらにエマルジョンB826重量部を加えて、アニオン型の導電樹脂層用の電着液を調整した。
【0037】
また、レジスト925としては、ネガ型感光性レジスト(日本合成ゴム株式会社製THB−37)を塗布乾燥し、所定のフオトマスクを用いて密着露光を行った後、指定のアルカリ現像液で現像し、絶縁樹脂層171Aが形成される所定の位置のみを露出させ、それ以外の部分を覆うように製版した。(図9(e))
この後、基板910と白金電極とを対向させて上記で調整したアニオン型の絶縁樹脂層用の電着液中に浸潰し、定電圧電源の陽極に基板910を陰極に白金電極を接続し、150Vの電圧で5分間の電着を行い、これを150℃5分間で乾燥、熱処理して、導電性層161上に厚さ15μmの接着性を有する絶縁樹脂層171Aを形成した。(図9(f))
【0038】
指定の剥離液によりレジスト925を剥離除去した後、導電性層162上に、導電性基板910と白金電極とを対向させて、上記で調整レたアニオン型の導電樹脂層用の電着液中に浸漬し、直流電源の陽極に導電性基板910を、陰極に白金電極を接続し、50Vの電圧で1分問の電着を行い、これを80°C30分間乾燥、熱処理して、導電性層162上の接続部位に厚さ15μmの接着性を有する導電樹脂層172Aを形成した。(図9(g))
【0039】
実施例1と同様にして、1層目、2層目の金属配線層をベース基板110側に転写した後、上記のようにして得られた、3層目の金属配線161、162と、その上に電着形成された絶縁性樹脂層171A、導電性樹脂層172Aとを、ベース基板110の1層目、2層目の金属配線層が形成された側に、圧着し、絶縁性樹脂層171A、導電性樹脂層172Aを介して金属配線161、162をベース基板110側に転写した。(図9(i))
1層目、2層目の金属配線層のベース基板110側への転写は、圧力:3kgf/cm2、温度:200℃の圧着条件下で行ない、3層目の金属配線層の転写は、圧力:5kgf/cm2、温度:200℃の圧着条件下で行った。
この後、200℃1時間の条件でベース基板110の絶縁接着層150、絶縁樹脂層171A、導電樹脂層172Aを硬化させて、3層の金属配線層を備えた多層配線基板を得た。
【0040】
(実施例4)
実施例4は、図3に示すような多層配線基板を作製するに際し、図4に示す多層配線基板の製造方法の第1の例の工程に従い、図1に示すような多層配線基板を形成した後に、3層目の金属配線層(図3の金属配線161、162に相当)を転写する際、予め、絶縁性と接着固定をするための絶縁樹脂層の形成を実施例3と同様の条件で、めっき形成された金属配線(図3の161に相当)上に電着形成し、且つ、導電性と接着固定をするための導電樹脂層の形成を実施例1と同様の条件で、ディスペンス塗布方法により、転写後、金属配線(図3の162に相当)と上下に重なる金属配線140上にのみ行ったものである。
1層目、2層目の金属配線層のベース基板110側への転写は、圧力:3kgf/cm2、温度:200℃の圧着条件下で行ない、3層目の金属配線層の転写は、圧力:5kgf/cm2、温度:200℃の圧着条件下で行った。
その他の条件は、実施例1と同じである。
【0041】
(実施例5)
実施例5は、多層配線基板を作製するに際し、2層目、3層目の金属配線層を転写するに際し、導電性と接着固定をするための導電樹脂層の形成を実施例1と同様の条件で、ディスペンス塗布方法によりベース基板側に形成し、且つ、2層目、3層目の金属配線層を転写する際の、絶縁性維持と接着固定をするための絶縁樹脂層の形成を実施例3と同様の条件で、めっき形成された金属配線上に電着形成したものである。
1層目、2層目の金属配線層のベース基板110側への転写は、圧力:3kgf/cm2、温度:200℃の圧着条件下で行ない、3層目の金属配線層の転写は、圧力:5kgf/cm2、温度:200℃の圧着条件下で行った。
その他の条件は、実施例1と同じである。
【0042】
【発明の効果】
本発明は、上記のように、配線の微細化に対応でき、量産性に優れ、且つ多層配線にも対応できる配線基板の提供を可能としており、フィルム、ガラス金属等、種々の材質からなるベース基板への適用を可能としている。
特に、配線が他の配線と上下に重なり合う箇所で、絶縁性樹脂層を上下の配線間に設けた部分と、導電性樹脂層を上下の配線間に設けた部分とを共に有することにより、配線の自由度を上げ、サブトラクティブ法のようなフォトリソを用いたエッチング加工では達成困難な3次元構造の形成を可能としている。
同時に、そのような配線基板の製造方法の提供を可能としている。
具体的には、PCBやFPCの他、MCM、BGA等の高密度配線形成や、磁気ヘッドサスペンション等の配線の作製に応用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多層配線基板の実施の形態の第1の例を示した概略図
【図2】本発明の多層配線基板の実施の形態の第2の例を示した概略図
【図3】本発明の多層配線基板の実施の形態の第3の例を示した概略図
【図4】本発明の多層配線基板の製造方法の実施の形態の1例を示した工程図
【図5】本発明の多層配線基板の製造方法の実施の形態の2例を示した工程図
【図6】本発明の多層配線基板の製造方法の実施の形態の3例を示した工程図
【図7】本発明の多層配線基板の製造方法の実施の形態の4例を示した工程図
【図8】本発明の多層配線基板の製造方法の実施の形態の5例を示した工程図
【図9】本発明の多層配線基板の製造方法の実施の形態の6例を示した工程図
【符号の説明】
100、200、300 多層配線基板
110 ベース基板
120 絶縁部
130〜133、140、160、161、162 金属配線
135、136 端子部
150 絶縁性樹脂層
155 導電性樹脂層
170、171、171A、173 絶縁性樹脂層
172、172A 導電性樹脂層
410、415、 導電性基板
420、425 レジスト
420A、425A 開口部
430、435 金属配線
440 絶縁層
510、610、710、810 導電性基板
520、620、720、820 レジスト
520A、620A、720A、820A 開口部
530、630、730、830 金属配線
910 導電性基板
920 レジスト
920A 開口部
925 レジスト
930 金属配線

Claims (10)

  1. ベース基板の少なくとも一面に面全体わたり絶縁層を設け、該絶縁層上に、めっき形成された金属配線層を複数層順次転写して設けた多層配線基板であって、1層目の金属配線層は、金属配線の全てが前記絶縁層上に直接、一面を絶縁層の上側の面に揃え全体が絶縁層に埋まるように形成されており、且つ、2層目以降の金属配線層は、金属配線の全ての配線部の下に絶縁性樹脂層あるいは導電性樹脂層を介して、前記絶縁層ないし配線の上に積層されていることを特徴とする多層配線基板。
  2. 請求項1において、絶縁層は、粘着性もしくは接着性を有するものであることを特徴とする多層配線基板。
  3. 請求項1における絶縁層が熱可塑性樹脂であることを特徴とする多層配線基板。
  4. 請求項3における熱可塑性樹脂がポリイミドであることを特徴とする多層配線基板。
  5. 請求項1ないし4において、絶縁性樹脂層をその下に設けた配線ないし配線部と、導電性樹脂層をその下に設けた配線ないし配線部とを共に有することを特徴とする多層配線基板。
  6. ベース基板の少なくとも一面に面全体わたり粘着性もしくは接着性を有する絶縁層、あるいは熱可塑性の絶縁層を設け、該絶縁層上に、めっき形成された金属配線層を複数層順次転写して形成する多層配線基板の製造方法であって、第1層目の金属配線層は、導電性基板の一面上に全ての配線をめっき形成し、該導電性基板の配線側を、全ての配線を埋めるように絶縁層で覆った後、絶縁層を介して該導電性基板の配線部側をベース基板の一面に圧着し、導電性基板のみを分離することにより、絶縁層を介して、全ての配線を絶縁層とともに、ベース基板の一面上に転写形成され、第2層目以降の金属配線層は、配線ないし配線部分の下に、絶縁性樹脂層あるいは導電性樹脂層を介して、ベース基板側に転写して設けられることを特徴とする多層配線基板の製造方法。
  7. 請求項6において、第2層目以降の金属配線層のうち少なくとも1つの金属配線層の全配線は、表面が導電性でめっき剥離性の良い導電性基板の面上に、配線の形状を露出させるように、絶縁材料からなる耐めっき性のマスクを形成し、めっきにより該導電性基板の露出した部分に導電性金属薄膜を形成して作成されるもので、該導電性基板を転写用基板として、導電性基板から導電性金属薄膜をベース基板側に圧着して転写することを特徴とする多層配線基板の製造方法。
  8. 請求項6において、第2層目以降の金属配線層のうち少なくとも1つの金属配線層の全配線は、表面が導電性でめっき剥離性の良い導電性基板の面上に、配線の形状を露出させるように、絶縁材料からなる耐めっき性のマスクを形成し、めっきにより該導電性基板の露出した部分に導電性金属薄膜を形成して作成されるもので、該めっきにより形成された導電性金属薄膜を、一旦、補助基板に転写し、更に補助基板から導電性金属薄膜をベース基板側に圧着して転写することを特徴とする多層配線基板の製造方法。
  9. 請求項6ないし8において、第2層目以降の金属配線層は、絶縁性樹脂層あるいは導電性樹脂層を、ベース基板側に、あるいは導電性基板にめっき形成された金属配線層の配線上に、ディスペンス法あるいは印刷法により塗布した後に、ベース基板側に転写されるものであることを特徴とする多層配線基板の製造方法。
  10. 請求項6ないし7において、絶縁性樹脂層あるいは導電性樹脂層を、導電性基板にめっき形成された金属配線層の配線上に電着により形成することを特徴とする多層配線基板の製造方法。
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