JP3949975B2 - ラテックス、重合体、および、重合体の凝固、回収方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、乳化重合で得られるラテックス、重合体の凝固、回収方法、および、この凝固、回収方法により得られる重合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)、ハイインパクトスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂等には、乳化重合で得られるラテックスから凝固、回収された重合体を改質剤として添加する場合がある。乳化重合によるラテックスから凝固、回収された重合体をこれらの樹脂等に添加することにより、耐衝撃性、熱的特性、成形加工性等が向上することは広く知られている。
【0003】
ラテックスから重合体を凝固、回収する方法として、一般的には、塩化アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硝酸ナトリウム等の無機塩を添加する方法、あるいは、硫酸等の酸を添加する方法などがある。しかしながら、これらの方法では、使用した無機塩や酸の種類によっては凝固、回収された重合体が影響を受け、例えば以下のような問題が起こることがある。
▲1▼塩素イオンを有する無機塩を使用した場合、得られた重合体が金属を発錆させることがあり、製造工程で問題になることがある。
▲2▼アルミニウムイオンあるいは硝酸イオンを有する無機塩を使用した場合、回収した重合体が着色することがある。
▲3▼ナトリウムのような一価のカチオンを有する無機塩を使用した場合、重合体を安定して回収するためには多量の無機塩を添加しなければならないことがあり、そのため、得られた重合体をメタクリル樹脂等に添加すると温水白化性が悪化することがある。
▲4▼硫酸を使用した場合、回収した重合体の着色は少ないが、この重合体を添加したABS樹脂は成形加工時に金型付着物が多かったり、表面の光沢が低下して成型物の外観が劣ることがある。
【0004】
このように、従来の無機塩や酸を添加する方法では上記のような問題が起こることがあるので、重合体への悪影響が少ない凝固、回収方法が望まれている。
【0005】
一方、回収した湿潤状の重合体を圧搾脱水機や熱風乾燥機を用いて乾燥させる際、重合体の含水率が低いほど乾燥速度が速くなり、効率的である。この湿潤状の重合体の含水率は重合体の構造によって異なるものであるが、乳化剤と凝固剤の組み合わせによっても大きな影響を受ける。したがって、ラテックスから重合体を凝固、回収する際には、用いる乳化剤と凝固剤とをうまく組み合わせて重合体の含水率をできるだけ低くすることが好ましい。
【0006】
また、ラテックスの製造に用いる乳化剤としては、−OSO3M、−SO3M、−COOM(ただし、MはKまたはNa)で表される基を有する化合物が広く知られている。しかしながら、これらの乳化剤を使用した場合、凝固、回収した重合体を添加したメタクリル樹脂が着色することがあって意匠性、透明性を特に必要とする用途には必ずしも満足のいくものではなかった。
【0007】
特開平7−216004号公報には、乳化剤として特定の構造を有するリン酸エステル金属塩を用いて単量体を重合して得られたポリマーラテックスを酢酸カルシウム水溶液(凝固剤)と接触させて重合体を凝固、回収して、製造することにより、上記のような問題点を改善できることが提案されている。つまり、この重合体の製造方法によれば、比較的少量の凝固剤の添加で重合体をラテックスから凝固、回収でき、得られる重合体の着色性や機械的物性を損うことなく、湿潤状ポリマーの含水率を効果的に低減することができる。したがって、回収された重合体は金属の腐食性が小さく、また、重合体の乾燥に要する熱量も少なくすることができる。しかしながら、乳化重合で得られるラテックスは保存、移液の際に重合体が析出しないための安定性が求められるが、この公報に開示されている特定の構造を有するリン酸エステル金属塩を乳化剤として用いたラテックスは安定性が十分とは必ずしもいえず、長期の保存安定性や、移液の際に速度をあまり上げられないといった生産性に懸念が残されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ラテックスの安定性に優れ、回収される重合体の含水率が低いので乾燥させる際の乾燥効率に優れており、得られる重合体は着色性、機械的強度に優れ、成形加工時の金属腐食性が小さいラテックス、このラテックスを用いた重合体の凝固、回収方法、および、このラテックスから得られる重合体を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはこのような現状に鑑み、鋭意検討した結果、特定の構造を有するリン酸エステル金属塩を乳化剤として使用することにより、前記特開平7−216004号公報の着色性の低減、金属の発錆の低減等の性能を損なうことなく、ラテックスの安定性を向上できることを見いだし、本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち、本発明の上記目的は、以下の本発明により解決できる。
(1)単量体を乳化重合してなるラテックスであって、乳化剤として、モノ−イソトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムと、ジ−イソトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムと、イソトリデシルオキシペンタオキシエチレンオキシエタノールの1:0.2〜2:0.03〜0.6(質量比)の混合物、又は、モノ−n−ドデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムと、ジ−n−ドデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムと、ドデシルオキシペンタオキシエチレンオキシエタノールの1:0.2〜2:0.03〜0.6(質量比)の混合物を含有するラテックス。
【0012】
(2)前記単量体が、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリルまたはブタジエンのいずれか一種以上を、合計で80質量%以上含むことを特徴とする前記(1)のラテックス。
(3)前記(1)または(2)のラテックスを酢酸カルシウム水溶液と接触させる重合体の凝固、回収方法。
(4)前記酢酸カルシウム水溶液の濃度が、0.1〜20質量%であることを特徴とする前記(3)の重合体の凝固、回収方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のラテックスは、単量体を乳化重合してなるラテックスであって、乳化剤として、モノ−イソトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムと、ジ−イソトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムと、イソトリデシルオキシペンタオキシエチレンオキシエタノールの1:0.2〜2:0.03〜0.6(質量比)の混合物、又は、モノ−n−ドデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムと、ジ−n−ドデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムと、ドデシルオキシペンタオキシエチレンオキシエタノールの1:0.2〜2:0.03〜0.6(質量比)の混合物を含有するものである。そして、このラテックスを凝固剤、好ましくは酢酸カルシウム水溶液と接触させて凝固させることによって重合体を得る。用いる酢酸カルシウム水溶液の濃度は0.1〜20質量%であることが好ましい。
【0014】
乳化剤として、モノ−イソトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムと、ジ−イソトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムと、イソトリデシルオキシペンタオキシエチレンオキシエタノールの1:0.2〜2:0.03〜0.6(質量比)の混合物、又は、モノ−n−ドデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムと、ジ−n−ドデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムと、ドデシルオキシペンタオキシエチレンオキシエタノールの1:0.2〜2:0.03〜0.6(質量比)の混合物を含有する本発明のラテックスは安定性に優れており、保存、移液の際に重合体が析出することがほとんどない。また、乳化剤として上記の混合物を用い、凝固剤として好ましくは酢酸カルシウム水溶液を用いることにより、比較的少量の凝固剤の添加で重合体を回収でき、しかも、凝固、回収される重合体の含水率が低いので重合体を乾燥させる際の乾燥効率に優れている。さらに、得られる重合体は着色性、機械的強度に優れ、成形加工時の金属腐食性が小さく、他の樹脂に添加した際に得られる樹脂組成物の物性をほとんど低下させない。
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
ラテックスを得るのに使用される単量体としては、得られる重合体が添加される他の樹脂の種類や目的によって最適なものが異なり、特に限定されないが、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂の耐衝撃性、熱的特性、成形加工性を改善するためには、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリルまたはブタジエンのいずれか一種以上を合計で80質量%以上、特に90質量%以上含むものが好ましい。さらには、高度な透明性、耐候性を必要とする用途には、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステルまたは芳香族ビニル化合物のいずれか一種以上を合計で80質量%以上、特に90質量%以上含むものが好ましい。
【0017】
メタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0018】
上記の単量体と共に重合体を構成する成分としては、これらと共重合可能なビニル系単量体や複合可能な重合体であれば特に制限されないが、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、グリシジルメタクリレートなどの他、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、マレイン酸ジアリル、ジビニルベンゼン、フタル酸ジアリル、フマル酸ジアリル、トリメリット酸トリアリルなどの多官能性単量体や、ポリテトラフルオロエチレンエマルション、ポリオルガノシロキサンエマルションなどの重合体エマルションが挙げられる。
【0019】
また、本発明において使用される乳化剤は、モノ−イソトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムと、ジ−イソトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムと、イソトリデシルオキシペンタオキシエチレンオキシエタノールの1:0.2〜2:0.03〜0.6(質量比)の混合物、又は、モノ−n−ドデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムと、ジ−n−ドデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムと、ドデシルオキシペンタオキシエチレンオキシエタノールの1:0.2〜2:0.03〜0.6(質量比)の混合物を含有するものである。
【0030】
また、単量体を乳化重合する過程でリン酸エステルにアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の水酸化物を添加し、所望のリン酸エステル塩に中和してもよい。
【0031】
乳化剤の添加量は、用いる乳化剤や単量体によって適宜決めればよいが、通常、ラテックスの安定性を高くするため、単量体100質量部に対して0.1質量部以上、特に0.5質量部以上であることが好ましい。また、乳化剤の添加量は、重合体への残存量を抑えるため、単量体100質量部に対して10質量部以下、特に5質量部以下であることが好ましい。
【0032】
本発明においては、これらのリン酸エステル塩類に別の乳化剤を併用してもかまわない。ラテックスの安定性、重合体の着色性等のラテックスやそれから回収される重合体の性能を損なわないためには、併用する乳化剤の割合は、全乳化剤の80質量%以下、特に50質量%以下であることが好ましい。
【0033】
併用する乳化剤としては、アルキルフェニルポリオキシエチレンリン酸塩などのリン酸塩系陰イオン界面活性剤や、アルキルフェニルポリオキシエチレンオキシエタノールやアルキルポリオキシエチレンオキシエタノールなどの非イオン界面活性剤が好ましい。
【0034】
本発明においては、乳化剤として、nが1の一般式(I)
【化1】
で表される化合物、モノ−イソトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムと、nが2の一般式(I)で表される化合物、ジ−イソトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムと、アルキルポリオキシエチレンオキシエタノールとの混合物を使用することにより、ラテックスの安定性がより高くなる。その混合比は、モノ−イソトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウム:ジ−イソトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウム:アルキルポリオキシエチレンオキシエタノール=1:0.2〜2:0.03〜0.6(質量比)であり、1:0.3〜1.5:0.05〜0.5(質量比)が好ましい。本発明に用いる乳化剤として、モノ−n−ドデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムと、モノ−n−ドデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムと、ドデシルオキシペンタオキシエチレンオキシエタノールの1:0.2〜2:0.03〜0.6(質量比)の混合物が挙げられる。
【0035】
本発明では、上記混合物を乳化剤として用いて単量体を乳化重合し、ラテックスを得る。乳化重合は公知の方法にしたがって行えばよい。
【0036】
重合開始の方法も特に限定されないが、ラジカル重合開始剤としてはベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物、アジビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸化合物、過塩素酸化合物、過ホウ酸化合物、過酸化物と還元性スルホキシ化合物との組み合わせからなるレドックス系開始剤などが挙げられる。これらのラジカル重合開始剤の添加量は、用いるラジカル重合開始剤や単量体によって異なるが、通常、単量体100質量部に対して0.01〜10質量部程度である。
【0037】
前記単量体および重合開始剤等は、一括添加法、分割添加法、連続添加法あるいはモノマー添加法、エマルション添加法等公知の方法で添加することができる。
【0038】
また、反応を円滑に進めるために反応系を窒素置換してもよい。また、残存単量体を除去するために、反応終了後にさらにラジカル重合開始剤を添加してもよい。
【0039】
このようにして得られる本発明のラテックス中の固形分の量は、重合体の生産性を高くするために、10質量%以上、特に30質量%以上であることが好ましい。また、ラテックス中の固形分の量は、ラテックスの安定性を損なわないために、60質量%以下、特に50質量%以下であることが好ましい。
【0040】
本発明では、このようなラテックスを凝固剤、好ましくは硫酸マグネシウム水溶液や酢酸カルシウム水溶液と接触させて重合体を凝固する。そして、凝固した湿潤状の重合体を脱水等によって回収し、さらに、圧搾脱水機や熱風乾燥機を用いて乾燥させる。
【0041】
ラテックスから重合体を凝固、回収する際に用いる凝固剤としては、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、酢酸カルシウムなどの無機塩や、硫酸等の酸などが挙げられるが、回収される重合体を添加した樹脂組成物の着色性を抑えるためには硫酸マグネシウム、または酢酸カルシウムを用いることが好ましい。回収される重合体の含水率を低くするためには酢酸カルシウムを用いることが好ましい。これらの凝固剤は1種を用いても2種類以上を併用してもよいが、併用する場合は水に不溶性の塩を形成しない組み合わせを選択することが必要である。例えば、酢酸カルシウムと、硫酸やその塩(ナトリウム塩等)、炭酸塩(ナトリウム塩)とを併用すると、水に不溶性のカルシウム塩を形成するので好ましくない。
【0042】
上記の凝固剤は、通常、水溶液として用いられる。凝固剤、好ましくは酢酸カルシウムの水溶液の濃度は、安定して重合体を凝固、回収できるので、0.1質量%以上、特に1質量%以上であることが好ましい。また、凝固剤、好ましくは酢酸カルシウムの水溶液の濃度は、回収した重合体に残存する凝固剤の量が少なく、着色性などの成形物の性能をほとんど低下させないので、20質量%以下、特に15質量%以下であることが好ましい。また、凝固剤が酢酸カルシウムの場合には、濃度が20質量%を越えると10℃以下では酢酸カルシウム水溶液が飽和して析出することがある。
【0043】
ラテックスを凝固剤水溶液に接触させる方法は特に限定されないが、通常、凝固剤水溶液を攪拌しながら、そこにラテックスを連続的に添加して一定時間保持する方法や、凝固剤水溶液とラテックスとを一定の比率で攪拌機付きの容器に連続的に注入しながら接触させ、凝固された重合体と水とを含む混合物を容器から連続的に抜き出す方法等が挙げられる。
【0044】
用いる凝固剤水溶液の量は特に限定されないが、ラテックス100質量部に対して10質量部以上であることが好ましく、また、ラテックス100質量部に対して500質量部以下であることが好ましい。
【0045】
ラテックスを凝固剤水溶液に接触させるときの温度は特に限定されないが、30℃以上であることが好ましく、また、100℃以下であることが好ましい。接触時間は特に限定されない。
【0046】
このとき析出した重合体は、1〜100質量倍程度の水で洗浄し、ろ別した湿潤状の重合体を流動乾燥機や圧搾脱水機等を用いて乾燥させる。乾燥温度、乾燥時間は得られる重合体によって適宜決めればよい。
【0047】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」をそれぞれ表す。
【0048】
また、得られたラテックスについては下記のようにして安定性を評価し、重合体については乾燥前の湿潤状の重合体の含水率、および、重合体を樹脂に添加して下記の条件で射出成形し、得られる成形体のアイゾット衝撃強度および着色性を下記のようにして評価した。
【0049】
[ラテックスの安定性]
特殊機化工業製、T.K.AUTO HOMO MIXERを用い、回転数:12000rpm、ラテックス温度:70℃でラテックスを激しく攪拌し、ラテックスの流動性が目視で完全に失われるまでの時間を測定し、次のように評価した。
【0050】
◎:8分以上
○:5〜8分
△:3〜5分
×:3分未満
【0051】
[射出成形]
日精樹脂(株)製PS−60E型射出成型機を用い、シリンダー温度:260℃で、100mm×50mm×2mm厚の試験片と127mm×12.7mm×6.35mm厚の試験片とになるように射出成形した。
【0052】
[アイゾット衝撃強度]
ASTM−D−256に準拠して測定した。
【0053】
[着色度]
100mm×50mm×2mm厚の試験片の着色度を目視で判断し、次のように評価した。
【0054】
○:着色なし
△:わずかに黄着色
×:黄着色
【0055】
[含水率]
凝固剤にラテックスを接触させ、脱イオン水で洗浄しながら遠心脱水でろ別して得た湿潤状の重合体5gを180℃で1時間熱風乾燥して乾燥質量(WD)を測定し、
式:含水率(%)=[(5−WD)/5]×100
を用いて求めた。
【0056】
<参考例1>攪拌機、還流冷却器、窒素吹き込み口、単量体追加口、温度計を備えた5口フラスコに、以下の成分を仕込んだ。
成分 量(部)
脱イオン水 300 ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(以下、SFSという)
0.48 硫酸第1鉄 0.4×10-6 エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 1.2×10-6
【0057】
次に、系を窒素置換しながら80℃に昇温し、下記の組成の混合物(a−1)を2時間かけて投入し、80℃に保ったまま1時間保持して重合を完結させた。得られたラテックス(A−1)の重合率は99%以上であった。
【0058】
引き続き、上記(A−1)に下記の組成の混合物(a−2)を入れ、15分間保持した後、下記の組成の混合物(a−3)を3時間かけて滴下し、3時間保持して重合を完結させた。得られたラテックス(A−3)の重合率は99%以上であった。
【0059】
引き続き、上記(A−3)に下記の組成の混合物(a−4)を入れ、15分間保持した後、下記の組成の混合物(a−5)を2時間かけて滴下し、1時間保持して重合を完結させた。得られた最終ラテックス(A−5)の重合率は99%以上であった。
【0060】
この最終ラテックス(A−5)の安定性を前記方法にしたがって評価した。その結果を表1に示す。
【0061】
<参考例2〜6、実施例7、参考例8、9、実施例10〜13、参考例14>乳化剤Aを表1のように変更した以外は参考例1と同様にしてラテックスを製造し、その安定性を評価した。その結果を表1に示す。
【0062】
<比較例1〜5>
乳化剤Aを表1のように変更した以外は実施例1と同様にしてラテックスを製造し、その安定性を評価した。その結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1中、乳化剤B〜Sは、以下のものである。
乳化剤B:ジ−n−ドデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸ナトリウム
乳化剤C:乳化剤Aと乳化剤Bの1:1(質量比)の混合物
乳化剤D:乳化剤Aと乳化剤Bとドデシルオキシトリオキシエチレンオキシエタノールの1:1:0.2(質量比)の混合物
乳化剤E:モノ−n−ドデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウム
乳化剤F:ジ−n−ドデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウム
乳化剤G:乳化剤Eと乳化剤Fとドデシルオキシペンタオキシエチレンオキシエタノールの1:0.3:0.3(質量比)の混合物
乳化剤H:モノ−イソトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウム
乳化剤I:ジ−イソトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウム
乳化剤J:乳化剤Hと乳化剤Iとイソトリデシルオキシペンタオキシエチレンオキシエタノールの1:1:0.2(質量比)の混合物
乳化剤K:乳化剤Hと乳化剤Iとイソトリデシルオキシペンタオキシエチレンオキシエタノールの1:1:0.1(質量比)の混合物
乳化剤L:乳化剤Hと乳化剤Iとイソトリデシルオキシペンタオキシエチレンオキシエタノールの1:1.5:0.05(質量比)の混合物
乳化剤M:乳化剤Hと乳化剤Iとイソトリデシルオキシペンタオキシエチレンオキシエタノールの1:0.4:0.4(質量比)の混合物
乳化剤N:モノ−n−ドデシルオキシペンタオキシエチレンリン酸カリウム、ジ−n−ドデシルオキシペンタオキシエチレンリン酸カリウムとn−ドデシルオキシテトラオキシエチレンオキシエタノールの1:3:1(質量比)の混合物
乳化剤O:モノ−n−ペンチルフェニルヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムとジ−n−ペンチルフェニルヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムの1:1(質量比)の混合物
乳化剤P:モノ−n−ノニルフェニルヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムとジ−n−ノニルフェニルヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムの1:1(質量比)の混合物
乳化剤Q:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
乳化剤R:ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム
乳化剤S:ラウリル硫酸ナトリウム
【0065】
本発明の上記乳化剤を含有する実施例7、10〜13のラテックスは、参考例1〜6、8,9や比較例1〜5のラテックスと比べて安定性に優れていた。
【0066】
<参考例15>ステンレス製の容器に凝固剤として1.6%酢酸カルシウム水溶液300部を仕込み、混合攪拌下90℃に昇温し、これに参考例1の最終ラテックス(A−5)300部を10分間にわたって連続的に添加し、その後5分間保持した。そして、室温まで冷却し、脱イオン水で洗浄しながら遠心脱水(1300G、3分間)でろ別して湿潤状の重合体を得た。
【0067】
この湿潤状の重合体の含水率を前記方法にしたがって評価した。その結果を表2に示す。
【0068】
そして、この湿潤状の重合体を75℃で48時間乾燥させて白色粉体状の重合体を得た。
【0069】
次に、この粉体状重合体1600部とメタクリル樹脂(三菱レイヨン(株)製、アクリペット(登録商標)VH)2400部との混合物を、外形30mmφの2軸スクリュー型押し出し機((株)池貝製、PCM−30型、L/D=25)を使用し、シリンダー温度230℃〜260℃、ダイ温度260℃で溶融混練してペレットを作製した。そして、このペレットを用いて前記のように射出成形し、成形体を作製した。
【0070】
この成形体のアイゾット衝撃強度と着色度を前記方法にしたがって評価した。その結果を表2に示す。
【0071】
<参考例16〜20、実施例21、参考例22、23、実施例24〜27、参考例28>ラテックス(A−5)を表2のように変更した以外は参考例15と同様にして重合体と、この重合体を添加した樹脂の成形体を製造し、評価した。その結果を表2に示す。
【0072】
<参考例29、実施例30、31>参考例18,実施例21,24において、凝固剤の酢酸カルシウムを表2のように変更した以外は参考例18,実施例21,24と同様にして重合体と、この重合体を添加した樹脂の成形体を製造し、評価した。その結果を表2に示す。
【0073】
<比較例6〜10>ラテックス(A−5)を表2のように変更した以外は参考例15と同様にして重合体と、この重合体を添加した樹脂の成形体を製造し、評価した。その結果を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
本発明の乳化剤を含有するラテックスから得られる参考例15〜20、実施例21、参考例22、23、実施例24〜27、参考例28、29、実施例30、31の重合体は、湿潤状重合体の含水率が低かった。また、この重合体を添加した樹脂は、アイゾット衝撃強度、着色性に優れていた。
【0076】
また、凝固剤として酢酸カルシウムを用いて得られた参考例18、実施例21、24の重合体は、凝固剤として硫酸マグネシウムを用いて得られた参考例29、実施例30、31の重合体と比べて、湿潤状重合体の含水率がさらに低かった。
【0077】
【発明の効果】
本発明によれば、ラテックスの安定性に優れ、回収される重合体の含水率が低いので乾燥させる際の乾燥効率に優れており、得られる重合体は着色性、機械的強度に優れ、成形加工時の金属腐食性が小さいラテックス、このラテックスを用いた重合体の凝固、回収方法、および、このラテックスから得られる重合体を提供することができる。
Claims (4)
- 単量体を乳化重合してなるラテックスであって、乳化剤として、モノ−イソトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムと、ジ−イソトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムと、イソトリデシルオキシペンタオキシエチレンオキシエタノールの1:0.2〜2:0.03〜0.6(質量比)の混合物、又は、モノ−n−ドデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムと、ジ−n−ドデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸ナトリウムと、ドデシルオキシペンタオキシエチレンオキシエタノールの1:0.2〜2:0.03〜0.6(質量比)の混合物を含有するラテックス。
- 前記単量体が、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリルまたはブタジエンのいずれか一種以上を、合計で80質量%以上含むことを特徴とする請求項1に記載のラテックス。
- 請求項1または2に記載のラテックスを酢酸カルシウム水溶液と接触させる重合体の凝固、回収方法。
- 前記酢酸カルシウム水溶液の濃度が、0.1〜20質量%であることを特徴とする請求項3に記載の重合体の凝固、回収方法。
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