JP3949848B2 - スカッテルダイト系熱電材料の製造方法 - Google Patents

スカッテルダイト系熱電材料の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゼーベック効果による熱を電気に直接変換するスカッテルダイト系熱電材料とこれを利用した熱電カップル、並びに、その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ゼーベック効果及びペルチェ効果を用いた熱電材料としては、Bi2 Te3系熱電材料がよく知られており、一部の用途には実用化されてはいるが、動作温度範囲が非常に狭く、室温付近での使用に限られていた。
【0003】
また、熱電材料には、スカッテルダイト型結晶構造を示すCoSb3 系金属間系化合物を利用したことも知られている。この系の化合物は、電子ないしホールの移動度が大きいという特徴を有し、高い熱電変換性能と広い動作温度範囲の両立が可能な材料として期待されている。
【0004】
熱電材料として重要な特性は、ゼーベック係数S、導電率σ及び熱伝導率κをパラメータとして、性能指数Z=S2σ/κで表されている。性能指数Zを高めるには、熱電材料のS及びσが共に大きく、且つκが小さいことが望ましい。これらの各パラメーターは熱電材料の主成分に対して添加する不純物の種類や量によって決定される。また、この他に、粒界に第二相として不純物を分散させることによっても各パラメーターが変化する。
【0005】
先行技術に関して、特開平9−260729号公報明細書には、CoSb3 を主成分とし、その粒界に第二相として金属Sb相を含む焼結体により、導電率σが改善されることが開示されている。
【0006】
また、前記公報には、焼結体の製造方法として、金属Sb相を含むCoSb3 系合金粉末を加圧成形後、Sbの液相析出温度以上で熱処理することによって、粒界にSb相が分散した焼結体とする方法が開示されている。
【0007】
近年、LnT4Pn12 (Lnは希土類金属、Tは遷移金属、Pnは、P、As、Sbなどの元素)の式で示されるフィルドスカッテルダイト(filled skutterudite)構造の化合物が、熱電材料として注目されている。フィルドスカッテルダイトは、スカッテルダイト結晶の単位胞の八分割点(octant)に存在する2つの空孔の一部を希土類金属などの重い元素で充填した結晶である。これは、スカッテルダイト型結晶の空孔に希土類金属を充填することによって、Sbとの弱い結合によってCe原子が振動し、フォノンの散乱中心になるため、熱伝導率を大幅に低減することが期待できる。
【0008】
これに関する先行技術について、例えば、D.T.Morelli, G.P.Meisner; " High figure of merit in Ce-filled Skutterdite", I.E.E.E., 15th International Conference on Thermoelectronics (1996),pp 91 は、Ceを充填しCoの一部をFeで置換したCeFexCo4-xSb12系スカッテルダイトの熱電材料の特性を開示している。これによると、Coに対するFeの置換数xが2〜4の範囲で大きくなるほど、導電率は高く、熱伝導率は小さくなるが、ゼーベック係数が小さくなるので、最も高い性能指数には、置換数には最適な範囲がある。
【0009】
これらの材料を熱電モジュールとして使用するためには、Co−Sb系フィルドスカッテルダイト系熱電材料でp−nジャンクションを作るのが好都合であるが、希土類を充填したフィルドスカッテルダイト構造はp型の熱電材料として利用できる。
【0010】
熱電材料を利用した熱電モジュールについては、特開平9−64422号には、Co―Pt―Sb系化合物をn型とし、n型にPbTe系化合物を利用し、両化合物材料が、直接に又は金属導体を介して間接に、p−n接合されことが開示されている。この方法は、両方の化合物粉末が尖端部で接合するよう一体にプレス成形して、馬蹄形成形体を焼結してモジュールを製造する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従来、CoSb3 系熱電材料に第二相として、Sb相を分散した材料は、導電率σは高くなるのであるが、ゼーベック係数Sが低下し、パワーファクタS2 σはさほど改善されない。また、Sb相の分散は、熱伝導率κを低減させない。CoSb3 系熱電材料のさらなる性能向上のためには低熱伝導率化という課題が残されていた。また、混合するSb相の粒径によっては、分散が不均一となり偏析とこれに伴う性能の不安定の問題が生じる。
【0012】
フィルドスカッテルダイト構造は、優れた性能が期待できるが、熱的に不安定であり、分解しやすいという問題がある。重い原子を空の1つの八分割点に希土類元素を充填するためには、セルにおける電荷がバランスされる必要がある。
例えば、4価の原子Lnを充填する場合には、スカッテルダイト構造の2価のCo原子4個を、例えば、3価のFe原子4個と置換することにより、電荷補償をすることができる。FeとSbだけではスカッテルダイト構造は得られないので、結晶中の充填元素の電子価数が一定でない場合には、フィルドスカッテルダイト構造の一部分がFeSb2とSbに分解する可能性がある。また、フォノン中心として作用するには、充填元素はSbと弱い結合をしている必要があるが、このことは、熱的に不安定な結合であり、高温では充填元素の脱落により分解が発生する問題があった。
【0013】
また、これらの材料を、熱電モジュールとして組み立てて使用するためには、二種類の熱電材料でp−nジャンクションを作る必要がある。従来、n型に関しては、CoSb3 結晶にPdやPtを添加することによって、高いゼーベック係数Sと高い導電率σとを両立することのできる材料が報告されている(特開平8−186294号公報明細書参照)。しかし、p型の熱電材料にするために、CoSb3 結晶に鉄族遷移金属Mn、Cr、Fe、Ru等の金属元素を添加することが考えられるが、これらの金属の添加は、ゼーベック係数Sが急激に低下するため、パワーファクタとしては向上されていない。p型としては、従来の熱電材料は性能には不満であった。
【0014】
また、フィルドスカッテルダイト系熱電材料は、希土類を充填したフィルドスカッテルダイト構造はp型であり、n型に関してはCoを添加しキャリア濃度を制御する方法が試みられているが、未だ良好な結果は得られていない。
【0015】
さらに、スカッテルダイト系熱電材料のように、高温で使用する材料をモジュール化する場合、高温端でのp−n接合には、直接接合や鑞付けなどの方法が用いられていたが、熱電材料との熱膨張係数の違いによって、高温で接触不良や断線を生じるという問題があった。
【0016】
本発明は、前記問題に鑑み、第1に、Co−Sb系のフィルドスカッテルダイト系熱電材料の性能指数をさらに向上させるようなフィルドスカッテルダイト系焼結体と、その製造方法を提供することを目的とする。このためには、本発明は、フィルドスカッテルダイト系焼結体の熱安定性を向上しながら、熱伝導率をさらに低減することを目的とする。
【0017】
本発明は、第2に、CoとSbの粉末、あるいはCoSb3 系化合物粉末に、遷移金属を均一に分散し、熱処理によってCoSb3 系焼結体とする製造方法を提供しようとするものである。
【0018】
本発明は、フィルドスカッテルダイト系熱電材料の性能指数をさらに向上させるようなフィルドスカッテルダイト系焼結体と、その製造方法を提供することを目的とする。
また、スカッテルダイト系熱電材料を用いた信頼性の高い熱電モジュールとその製造方法を提供することを目的とする。そのためには、本発明は、接合部が信頼性の高いp−n接合を提供するものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は、Sb含有スカッテルダイト熱電材料について、焼結体をスカッテルダイトの微細化された結晶粒から構成し、これにより、焼結体の結晶粒径に対する結晶粒界の面積が大きくなり粒界におけるフォノンの散乱を促進して、熱電材料としての熱伝導率を低下させる。
【0020】
本発明の熱電材料は、スカッテルダイト結晶相の粒界に金属酸化物の微細粒子を分散させた焼結体とする。金属酸化物の粒子は、焼結過程での結晶粒成長を抑え、結晶相を微細粒とし、熱電材料の熱伝導率を低下させる。
【0021】
即ち、金属酸化物相は、CoSb3系化合物相の粒界に存し、焼結過程でのCoSb3 結晶の粒成長を抑制して、焼結体を緻密な焼結組織とする。これにより、焼結体の結晶粒径に対する結晶粒界の面積が大きくなり粒界におけるフォノンの散乱を促進して、熱伝導率を低下させる。粒界に存在する多数の酸化物粒子自体も、フォノン散乱を生じ、熱伝導率を低下させる。このようにして、金属酸化物相は、スカッテルダイト型の熱電材料としての性能指数を向上させ、熱電素子の熱電変換効率を向上させる。
【0022】
金属酸化物には、特に、希土類金属の酸化物を利用する。少量の希土類金属は、粒界に析出したときに、ゼーベック係数Sを向上させる。希土類金属等の原子量の大きい粒子は、電子及びホールの散乱指数を増加させ、これにより、ゼーベック係数Sも高める。
【0023】
本発明において、CoとSbを主成分とするCoSb3系化合物に遷移金属を含有するのが好ましい。遷移金属は、Coの一部と置換して、ゼーベック係数Sを変え、その値を向上させる。遷移金属は、p型ドーパントとして、Cr、Mn、Fe、Ruが利用される。n型トーパントとして、Ni族(Ni、Pd、Pt)や貴金属(Cu、Ag、Au)を使用する。
【0024】
Sb含有スカッテルダイト系化合物は、LnyFexCo4-xSb12系のフィルドスカッテルダイトを含むが、本発明においては、フィルドスカッテルダイト結晶が分解するのを防止して、分解による熱電性能の低下を防止する。熱電材料は、特に、FeSb2及びSb等の析出相を低減して、これにより、熱伝導率を低下させる。
【0025】
このような分解は、焼結に至る過程で、熱電材料内の酸素により、フィルドスカッテルダイト結晶中の充填元素Lnが酸化されて結晶格子から除去され、これに起因して不安定なフィルドスカッテルダイト構造の一部分がFeSb2とSbに分解されるためである。このために、本発明は、原料調整から焼結に至る過程を非酸化性雰囲気中で行う。
【0026】
本発明のフィルドスカッテルダイト系熱電材料は、ドーパントとしてNi、Pd、Ptのいずれかの元素を選択し、LnyFex4-xSb12系の化合物を利用する。Coを添加した場合に安定なCoSb3相が生成され、格子へのLnの充填が不充分になるのが、NiやPdは、Sbとの安定な化合物が存在しないために、完全なドーパントとして作用する。従って、第2相を生成せずにキャリア濃度の制御が可能となり、n型フィルドスカッテルダイト系熱電材料を得ることができる。
【0027】
本発明の熱電カップルは、Sb含有スカッテルダイト系結晶を有するp型とn型の2種類の熱電材料から、直接接合により形成され、両者が同質で熱膨張差が非常に小さいから、接合部での割れや分離のない安定した熱電カップルを提供する。
このようなカップルは、低温側の部位を金属導体で接続して直列配置にして、熱電モジュールとして利用される。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明のSb含有スカッテルダイトには、InSb3系、CoSb3系のスカッテルダイト、LnyFexCo4-xSb12系等のSb主要成分として含むフィルドスカッテルダイト化合物を含む。CoをNi、Pd、Ptのいずれかの元素で置換したLnyFex4-xSb12系の化合物も利用される。
【0029】
熱電材料は、上記の化合物の焼結体であり、焼結体は、平均結晶粒度を、100μm以下に制限される。平均結晶粒度が100μmを越えると、特に、熱伝導度が上昇するので好ましくない。
特に、20μm以下の結晶粒度が、熱伝導度の低下に有効である。特に、結晶粒度5〜10μmの範囲に調整される。この焼結体の結晶粒度は、原料粉末の粒径も、予めこの粒度範囲に調整し、酸化物の配合により、焼結中の成長を抑制することにより得られる。
【0030】
本発明の熱電材料は、上記のスカッテルダイトの結晶粒と、粒界に分散した金属酸化物とから成る焼結体として構成される。金属酸化物は、原料粒子中に含まれ、焼結加熱時の主相粒子の粒成長や拡散を抑制する。原料のスカッテルダイト系化合物の粉末粒径を予め微細に調製することにより、焼結体は微細結晶が得られる。
【0031】
結晶粒の微細化は、熱伝導率κをさらに低下させることができ、性能指数を向上させることができる。即ち、焼結体の結晶粒径に対する結晶粒界の面積が大きくなり粒界におけるフォノンの散乱を促進して、熱伝導率を低下させ、熱電材料としての性能指数を向上させるのである。結晶粒界に散乱する酸化物粒子自体も、また、フォノンの散乱中心として作用し、熱伝導率の低下に寄与する。
【0032】
金属酸化物は、安定な金属酸化物が利用できるが、好ましくは、希土類金属の酸化物が使用される。希土類金属の酸化物粒子自体も、結晶粒界に存在してゼーベック係数を高めることができる。希土類金属には、La、Ce、Smが使用され、特に、Ceが好ましい。
【0033】
このような金属酸化物の分散は、後述のように、不安定なフィルドスカッテルダイト系電熱材料においては、焼結過程で粒子間の拡散が抑制されるので、フィルドスカッテルダイト系化合物の不安定性を克服でき、その熱的な安定性も向上する。
【0034】
金属酸化物は、好ましくは、熱電材料中に0.1〜15%(重量)が含まれる。0.1%未満では、粒成長抑制効果は小さく、15%を越えると効果は飽和する。好ましくは、酸化物含有量は、1〜10%の範囲がよい。
【0035】
上記熱電材料は、Sbを含むスカッテルダイトの粉末又はその構成原料と、分散されるべき金属酸化物との混合粉から、予め成形体を形成し、これを焼結して焼結体とする。原料粉末は、例えば、スカッテルダイトがCoSb3化合物であるときには、予め溶製されたCoSb3化合物粒子が利用でき、又は、CoSb3組成に配合調整した金属CoとSbの混合粉であってもよい。
【0036】
本発明においては、混合法には、スカッテルダイトの原料粉末に、当該金属を含む水溶液からの沈降法により水酸化物などの不溶性金属化合物を沈殿分散させる方法が採用される。不溶性金属化合物から加熱分解された金属酸化物の粒子は、スカッテルダイト粒子よりも微細であり、且つスカッテルダイト粒子に均一に分散される。焼結により成形された焼結体には、微細な結晶粒の粒界に微細な酸化物粒子を配置することが可能となる。
【0037】
沈降法においては、酸化物を得ようとする金属の塩又は水酸化物の水溶液中に、主相となるスカッテルダイト系結晶粉末を均一に分散し、これにpH調整をして、不溶性の微細結晶として沈殿させ、沈降時に、主相結晶表面に付着させる方法である。
【0038】
例えば、金属の塩化物水溶液を使用し、これに少量のアンモニア水を加えることによって、主相粒子の周囲に金属水酸化物を均一に付着させることができる。得られた混合物は、加熱分解することによって主相の表面に金属酸化物が均一にかつ薄く分散された混合粉末を得るものである。沈降法を用いることによって、微量の金属酸化物の均一分散が可能となり、成形後の焼結により焼結対組織の主晶の粒界を酸化物層が取り囲むような組織が得られる。
【0039】
上記の金属酸化物の均一分散は、フィルドスカッテルダイト系の熱電材料にも適用されるが、上記同様に、粒界に分散した金属酸化物は、焼結過程での粒子間の拡散も抑制されるために、フィルドスカッテルダイト系化合物の分解を抑制して、その熱的な安定性も向上するものである。
【0040】
本発明の別の実施形態は、特に、CoSb3系について、スカッテルダイト系化合物の結晶に遷移金属を含有するCoSb3系熱電材料を含む。
このような遷移金属には、CoSb3系スカッテルダイト化合物をp型に保持するドーパントとしてMn、Cr、Fe、Ruが利用される。遷移金属の置換量は、スカッテルダイト中1molのCoのうちの0.001〜0.01molの範囲がよい。本来、CoSb3スカッテルダイト自体は、p型であるが、これに、Mn、Cr、Fe、Ruを添加してゼーベック係数Sを高めて、パワーファクターを向上することができる。
【0041】
このようなp型元素をCoSb3系のスカッテルダイトのCoに置換するのは、従来の溶製法では、困難であった。本発明は、スカッテルダイト化合物と遷移金属との混合粉末を焼結する過程で、遷移金属をスカッテルダイト結晶に拡散させることにより、Coに対して比較的容易に置換することを可能にする。
【0042】
遷移金属には、CoSb3系スカッテルダイト化合物をn型に保持する元素として、Ni族(Ni、Pd、Pt)や貴金属(Cu、Ag、Au)を使用することもできる。これにより、p型のスカッテルダイト系熱電材料と、結晶構造が同じで、熱膨張特性も近似するn型のスカッテルダイト系熱電材料が得られ、両方のスカッテルダイト系熱電材料の焼結接合により、熱的に安定な熱電カップルを構成することができる。
【0043】
特に、前記遷移金属の置換には、本発明においては、CoSb3 系化合物などの原料粉末と遷移金属を均一に分散させる方法を利用する。
このような遷移金属の均一分散させる方法は、CoとSbとの粉末若しくはCoSb3 系化合物粉末に遷移金属を無電解メッキして混合粉とするものである。その混合粉を成形後に焼結する。
【0044】
さらに、均一分散の別の方法は、CoとSbの粉末若しくはCoSb3 系化合物粉末の表面に遷移金属をメカニカルアロイングして混合粉とするものが採用される。その混合粉は同様に成形後に焼結する。
さらにまた、均一分散の方法は、遷移金属を含む水溶液中で、CoとSbとの粉末若しくはCoSb3 系化合物粉末を分散して水素還元して混合粉末とする方法が採用される。
【0045】
このような遷移金属の均一分散させる方法は、CoSb3系スカッテルダイトをn型に変換する元素として、ニッケル族(Ni、Pa、Pt)や貴金属(Cu、Ag、Au)の添加にも利用される。
【0046】
焼結に先立って、予め、Sbを含むスカッテルダイト系化合物の原料粉末を調製するには、種々の方法が利用できる。好ましくは、Co及びSbを含む原料を溶融して後、凝固させ、次いで、均質化熱処理を行って、固体中に所望のスカッテルダイト結晶相、例えば、CoSb3化合物を均一に析出させ、所要の粒度に粉砕する方法が採用される。
【0047】
この方法は、CoSb3化合物を例示すれば、Co、Sb及び、その他の前記所要の金属を、前記化合物の組成になるように配合し、雰囲気を非酸化性、特に、不活性にした溶解炉でルツボ内で溶解する。溶解保持後、そのまま炉内でCoSb3化合物の析出開始温度(約876℃)以下の析出温度(600〜860℃)に高温保持して均質化熱処理を行う。均質化熱処理により、CoSb3 系化合物を完全に析出させて偏析をなくし均質化する。
【0048】
前記均質化熱処理後冷却した塊は、粉砕し、所望の粒径分布に分級して、CoSb3 系化合物の粉末に供される。
この粉砕・分級の段階で、スカッテルダイト系化合物の粒径は、焼結体の結晶粒度を決めるので、100μm以下の所望の範囲に調整する。
スカッテルダイト系化合物の粉末は、上述したような方法で、金属酸化物粉と、さらに好ましくは、遷移金属と、均一に混合され、混合粉末は、通常は、圧縮されて成形体にされる。
【0049】
本発明の熱電材料の焼結には、好ましくは、放電プラズマ焼結法が採用される。放電プラズマ焼結装置は、真空容器内に、炭素で形成された円筒ダイと、ダイ中空部に両端から挿入される2つの炭素パンチを有し、両方のパンチ間にパルス電流を供給する電源を備え、両方のパンチを加圧するための加圧手段を有している。円筒ダイ内に、予めスカッテルダイト粉末と所要の金属酸化物と所要の遷移金属を含む成形体を装入し、両方のパンチをダイ内に装入して、パンチ端面で成形体を加圧する。この加圧の際、真空下で、両方のパンチのパルス電流を流して、これにより成形体が加熱され圧縮され、緻密化する。
【0050】
成形体のスカッテルダイト結晶粒は導電性であって焼結の際に成形体には電流が流れるが、成形体内部では、加熱初期には多数の接触する結晶粒子の相互間でプラズマ放電を生じて発熱して、粒子表面から高温に加熱され、急速に緻密化が進行する。成形体は、電流が結晶内部を通る際のジュール熱によっても加熱される。混合物中の金属酸化物は、焼結の際の粒成長を防止して、配合時のスカッテルダイト粒径のレベルを維持することができる。
焼結温度は、焼結条件は、プレス圧力100〜1000kgf/cm2 、焼結温度は、スカッテルダイト結晶の溶融温度より低い、600〜800℃程度が好ましい。
【0051】
放電プラズマ焼結法によれば、成形体の寸法に対して適当な電流を選ぶと、10分以内で、通常は2〜5分で短時間で焼結度90%以上の焼結を完了することができる。
【0052】
本発明の熱電材料は、好ましくは、上記のように、LnyFexCo4-xSb12(希土類金属Lnは、0<y≦1、Feが0<X≦4)で表される組成式を有するフィルドスカッテルダイト化合物を含む。フィルドスカッテルダイト化合物は、CoSb3結晶構造の空孔に他の希土類元素を充填し、電荷補償のためにCoの一部あるいは全てをFeで置換した化合物であり、希土類元素Lnは、特に、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gdなどが利用される。
【0053】
希土類金属Lnは、好ましくは、Lnを0.4≦y≦1とし、且つ、Feを2≦X≦4とするのがよい。0.4>yとすると、充填率が下がりすぎて、フォノン散乱効果が小さくなり、y>1とすると、過剰となった希土類金属元素が異相として析出する。この場合、Feを2≦X≦4とするのは、スカッテルダイトがP型となるためのキャリア濃度を確保ためである。
【0054】
さらに好ましくは、LnとFeの組成が、3≦X≦4で、且つ0.8≦y≦1である。この組成範囲は、フォノン散乱による熱伝導率κの低減効果と適切なキャリア濃度が得られるので好ましい。
【0055】
Lnとして2種類以上の希土類金属を含むことができる。異なる種類の元素が充填された格子の質量及び歪みの差によって、フォノンの散乱を増大し、さらに熱伝導率κを低減することができる。例えば、LaとCeとの組み合わせが利用でき、La:Ceとの含有量のモル比が、40:60〜60:40の割合で選ばれる。このモル比の範囲が、格子質量及び歪みの差の効果が顕著であるので好ましい。
【0056】
本発明の熱電材料は、Lnに代えて、Hfを利用することができ、HfyFexCo4-xSb12(ここで、0<X≦4、0<y≦1)の組成を有するフィルドスカッテルダイト系化合物からなる熱電材料を主成分とする熱電材料を含む。
このようなHf含有スカッテルダイト系熱電材料には、Hfスカッテルダイト系化合物と共に、金属酸化物を含む焼結体であるのが好ましい。金属酸化物には、上記の一種以上の希土類金属Lnの酸化物が利用される。その酸化物の金属には、LaとCeとの組み合わせが利用できる。
【0057】
焼結体は、スカッテルダイト型結晶が、主として上記組成のスカッテルダイト化合物から成り、さらに、少量のFeSb3化合物および金属Fe、Co及びSb、他の金属元素を添加した化合物を含んでもよい。
【0058】
本発明の熱電材料は、上記金属酸化物が、上記組成の化合物の結晶の粒界に分散したものが利用される。このような酸化物分散焼結体は、予め調製された上記組成の化合物粉末に、酸化物の微粉を混合して、これから所望の形状に成形し、この成形体を焼成することによって得られる。
【0059】
焼結のためのフィルドスカッテルダイト系化合物の原料粉末の調製には、CoSb3系スカッテルダイトの溶製方法と同様の方法が利用できるが、好ましくは、Fe、Co、Sb、充填元素、例えば、Ceを含む金属原料を溶融して凝固させ、次いで、均質化熱処理を行って、固体中にフィルドスカッテルダイト系化合物を均一に析出させ、粉砕して、所要の粒度に分級調整する方法が採用される。
【0060】
このような溶融凝固法には、好ましくは、Ln、Fe、Co及びSbの原料金属を、前記化合物の組成になるように不活性ガス中で秤量し、石英管アンプル中に真空封止する。このアンプルを電気炉にて加熱し溶解した後、急冷して凝固させる。急冷後のアンプルを再度、電気炉内で融点以下で、フィルドスカッテルダイトの析出可能な温度、例えば600〜800℃に高温保持して均質化熱処理を行う。均質化処理により、フィルドスカッテルダイト系化合物を完全に析出させて均質化する方法が採用される。
【0061】
均質化熱処理後冷却した塊は、粉砕し、所望の粒径分布に分級して、フィルドスカッテルダイト化合物を含む焼結用の粉末に利用される。
【0062】
本発明においては、組成が調製されたフィルドスカッテルダイト系化合物は、さらにメカニカルアロイング処理により均質化処理をするのが好ましい。メカニカルアロイングは、合金中に残るFeSb2相を低減し、フィルドスカッテルダイトの均一な単相を得ることができる。焼結体は、金属相であるFeSb2相を低減することによって、ゼーベック係数Sを向上させ、且つ、熱伝導率κを低減することができる。
【0063】
本発明のLnyFexCo4-xSb12系フィルドスカッテルダイトの熱電材料においては、特に、FeSb2及びSbを含む不純物濃度を極力低減することが、熱電性能を維持するために、重要である。本発明においては、LnyFexCo4-xSb12の組成のフィルドスカッテルダイト系熱電材料において、フィルドスカッテルダイト結晶相中にFeSb2相が、X線回折によるフィルドスカッテルダイト結晶相のピーク回折強度に対するFeSb2相のピーク回折強度の強度比で、1%以下の含有量とする。熱電材料中にFeSb2相が回折強度比で1%を越える量に増加する時は、材料は、上記フィルドスカッテルダイトの分解を意味し、熱電材料の熱伝導率が上昇する。特に、FeSb2相の回折強度比は、0.1%以下に制限される。
【0064】
このようなフィルドスカッテルダイト系熱電材は、原料粉末の調整から焼結前の全ての処理を非酸化性雰囲気中で行い、酸素の混入を防止することにより行う。非酸化性雰囲気は、不活性ガス雰囲気、特に好ましくは、真空中が採用されるる。
【0065】
非酸化性雰囲気制御は、上述のように、石英管アンプル中に真空封止して、電気炉にて加熱溶解し、急冷後のアンプルを再度、電気炉内で均質化熱処理を行うことによりすることができる。
【0066】
さらに、均質化熱処理後冷却した塊は、粉砕し、分級して、フィルドスカッテルダイト化合物を含む焼結用の粉末を貯蔵する工程を、Ar雰囲気制御下で行う。組成が調製されたフィルドスカッテルダイト系化合物を、さらにメカニカルアロイング処理する場合も、Ar雰囲気制御下でなされる。
予備成形後に、好ましくは、上記の真空下での放電プラズマ焼結法により焼結され、焼結体を得る。
【0067】
焼結体は、このような雰囲気制御下で調製された粉末から形成されるので、焼結前の粉末表面に酸素が付着していないために、焼結時に充填元素である希土類金属の酸化によって生じる脱落によるフィルドスカッテルダイト分解が発生しない。これにより、焼結後もFeSb2などの第2相不純物相の発生を低く抑えることができる。
【0068】
本発明のフィルドスカッテルダイト系熱電材料は、ドーパントとしてNi、Pd、Ptのいずれかの遷移元素を選択し、熱処理により得られた焼結体を含み、Ni、Pd、Ptは、Coを完全に置換してもよい。
【0069】
特に、本発明のフィルドスカッテルダイト系熱電材料には、LnyFex4-xSb12(ここで、Lnは希土類金属、0≦X≦4、0≦y≦1)の組成比を有し、MがNi、Pd、Ptのいずれかであるフィルドスカッテルダイトを含む。
【0070】
Coを含むフィルドスカッテルダイトが、安定なCoSb3相を生成して、充填が不可能になるけれども、Coを置換したNi、Pd、Ptが、Sbとの安定な化合物が存在しないので、完全なドーパントとして作用する。従って、第2相を生成せずにキャリア濃度の制御が可能となる。
このようなフィルドスカッテルダイトは、特に、Ni、Pd、Ptを含んで、n型フィルドスカッテルダイト系熱電材料として利用することができる。
【0071】
このような、Ni、Pd又はPtで置換したLnyFex4-xSb12(ここで、Lnは希土類金属、0≦X≦4、0≦y≦1)のフィルドスカッテルダイト系熱電材料は、焼結の前処理工程を真空あるいは不活性ガス雰囲気中において行なわれる。
【0072】
また、本発明の熱電カップルは、p型とn型のSb含有スカッテルダイト熱電材料を焼結によって接合一体化したp−n接合部を有する焼結体である。
このような熱電カップルでは、高温端で電極材料のような熱膨張係数の異なる金属との接触がないため、断線や接触不良の発生を低減でき、信頼性及び耐久性を向上することが可能となる。
【0073】
Sb含有スカッテルダイト熱電材料は、p型として、上記のLnyFexCo4-xSb12系フィルドスカッテルダイトが利用され、n型には、Ni、Pd又はPtで置換したLnyFex4-xSb12系フィルドスカッテルダイトが利用され、熱電性能の高い熱電カップルを構成することができる。
【0074】
熱電カップルは、p型及びn型のスカッテルダイト材料粉末から、それぞれ、成形体にし、p型及びn型の成形体を接触するように合わせて、焼結して一体化する。一体化した焼結材料は、p−n接合面を含むように切断或いは加工し、p−n接合材料を形成し、次いで、p−n接合面の一部を材料の先端側に残して且つp−n接合面の残部を除去するように接合材料を切開する。このようにして形成たれた熱電カップルは、先端側でのみp−n接合面を有し、高温側とされ、後端部側は、切欠き部によりp型及びn型の熱電材料が分離される。後端側は、低温側であって、金属導体がリードとして通常の方法、例えば、蝋付けにより接続される。通常は、複数の熱電カップルが、リードにより直列に接続され、熱電モジュールとして、発電に使われる。
【0075】
本発明のフィルドスカッテルダイト系熱電材料を用いた熱電モジュールは、熱源を有する装置に使用される。熱源から温度差を熱電モジュールに与えることによって生じる電力で装置の内部駆動を行う電源コードレス装置として利用する。このようなフィルドスカッテルダイト系熱電モジュールを用いることによって、例えば触媒燃焼や石油バーナーなどの400℃を越える高温の熱源に対しても使用可能となる。
【0076】
【実施例】
(実施例1)
本実施例の熱電材料は、スカッテルダイトとしてCoSb3 化合物を使用し、スカッテルダイト粒子の周りに金属酸化物を細かく分散させるために、焼結前の混合粉の調製に溶液からの沈降法を利用した。
【0077】
沈降法を用いることによって、化合物粒子と微量の金属酸化物との均一分散が可能となる。この混合粉末を成形して焼結により緻密焼結体とする。
溶液からの沈降法は、酸化物を得ようとする金属の塩化物水溶液に、主相となる粉末を均一に分散させ、少量のアンモニア水を加えることによって、粉末粒子の周囲に金属水酸化物を均一に付着させるものである。これを脱水後に加熱して分解させて主相粒に金属酸化物が均一にかつ薄く分散された混合粉末を得るものである。混合粉末は、所望形状に成形した後に、焼結される。
【0078】
具体的には、金属Co(純度99.9985%)と金属Sb(純度99.9999%)及び金属Fe(純度99.9%)を、焼結後Co0.997Fe0.003Sb3の組成比になるように秤量した金属材料を、Ar雰囲気電気炉のルツボ内で溶解温度1100〜1200℃に加熱して2h保持して溶解した。次に、ルツボ内の溶湯をそのままCoSb3の析出温度(876℃)以下である850℃にて10h加熱保持して均質化処理し、固相拡散によりスカッテルダイト型結晶を得る。得られたインゴットは粗粉砕した後、遊星ボールミルにて平均粒径100μm以下に微粒化した。これによりCoSb3系化合物の粉末が得られた。
【0079】
この粉末を、LaCl3水溶液中に分散させ、少量のアンモニア水を滴下することによって、CoSb3 系化合物粉末に不溶性のLa(OH)3 を析出させ、混合沈殿物を得た。沈殿物は脱水乾燥され、加熱されて水酸化物を分解し、CoSb3 系化合物粉末の粒子表面にLa23 粒子が均一に分散した混合粉末を得た。この混合粉末を予備的にプレス成形した成形体を、放電プラズマ焼結機を用いて焼結した。焼結条件は、プレス圧力500kgf/cm2 、焼結温度700℃、4分保持とした。
【0080】
このようにして得られた化合物とLa23の混合焼結体のSEM写真を図1(a)に示す。また、図1(b)には比較のために、同じ条件で焼結したCo0.997Fe0.003Sb3化合物のみの焼結体のSEM写真を示す。図より、Co0.997Fe0.003Sb3化合物とLa23との混合焼結体は、粒成長が抑制された結果、微細な粒子で形成されていることが判る。これらの試料を測定した熱伝導率κを、図2に示すが、熱伝導率κは最小値で4.5W/mKとなり、従来の6W/mKから低減できた。
【0081】
(実施例2)
本発明の実施例は、CoSb3 系化合物粉末に遷移金属を均一に分散し、焼結して焼結体とした。
【0082】
遷移金属としてCuの場合を例示すると、塩化銅を水溶液中に溶解し、CoSb3 化合物粉末を添加して、40〜60℃で保持して、Cu皮膜により粒子が被覆されたCoSb3 化合物粉末が得られた。
Cu被覆粒子を圧縮成形して、成形体を、実施例1と同様の条件で、放電プラズマ焼結法により焼結した。成形体は、印可圧力500kgf/cm2 、焼結温度700℃の条件で4分保持された。
【0083】
このようにして得られたCu皮膜被覆CoSb3 化合物の焼結体のゼーベック係数と温度の関係を図3に示す。ゼーベック係数は負の値を示し、Cuの置換によってn型に変化したことが判る。従来、Cuを粉末の状態で添加した場合には、n型への変化は観察されておらず、均一分散によってCuからCoへの置換が促進されたことが判る。
【0084】
(実施例3)
CoSb3 系熱電材料について、遷移金属Feを添加する試験を行った。硝酸鉄の水溶液中にCo及びSbの粉末を、焼結後組成がCoに対して0.3mol%置換した組成(Co0.997 Fe0.003 Sb3 )となるように成分調製して分散させて、次いで、水溶液を蒸発乾固させて、粉末を得た。
【0085】
水素還元には粉末を700〜800℃に加熱して、3%水素含むAr気流中で保持して、酸化鉄を水素還元した。Co、Sb及びFe微粉末が均一に分散した混合粉末を得た。
【0086】
この混合粉末を、予備的に成形し、CoSb3 系化合物の溶解温度(876℃)以下においてAr雰囲気中で、10〜30h加熱処理を行った。得られた粉末を、さらに、粉砕して、実施例1と同様にして、放電プラズマ焼結法により焼結して、化合物焼結体を得た。
【0087】
図4及び図5に、この様にして作成したCo0.997 Fe0.003 Sb3 化合物焼結体のゼーベック係数S及びパワーファクタを示す。異相の析出が抑制された結果、ゼーベック係数Sが増大し、パワーファクタが増大している。また、この方法は出発原料にCoSb3系化合物粉末を用いても同様に行えるものであり、得られた混合粉末を放電プラズマ焼結することによって、Co0.997 Fe0.003 Sb3 化合物焼結体が得られる。
【0088】
(実施例4)
この実施例は、フィルドスカッテルダイト系化合物結晶に希土類金属酸化物を均一分散させた焼結体を扱っている。
原料には、金属セリウムCe(純度99.9%)と鉄Fe(純度99.9%)とコバルトCo(純度99.9985)及びアンチモンSb(純度99.9999%)を利用して、焼結後にCeFe3CoSb12の組成比になるように、Ar雰囲気中で秤量配合した金属材料を、石英管アンプルに真空封止した。アンプルは、電気炉内で溶解温度1000〜1100℃に加熱して20時間保持して金属材料を溶解した。
【0089】
次に、溶融金属を入れたアンプルを氷水に浸し、急冷して凝固させて、合金塊を得た。塊は、固相拡散によりフィルドスカッテルダイト型結晶構造を得るために、再度電気炉で700℃にて30時間加熱保持した。得られた塊は粗粉砕した後、遊星ボールミルにて平均粒径100μm以下に微粒化した。得られた粉末は、X線回折法によりフィルドスカッテルダイト結晶の粉末であることが確認された。
【0090】
この粉末を、LaCl3水溶液中に分散させ、少量のアンモニア水を滴下することによって、CeCoFe3Sb12物成の粉末とLa(OH)3の混合した沈殿物が生成される。これを乾燥し、加熱して水酸化物を分解し、CeCoFe3Sb12化合物組成の粉末の粒子表面にLa23が均一に分散した混合粉末が得られた。この混合粉末を予備的に成形して、放電プラズマ焼結機を用いて焼結した。焼結条件は、印可圧力300kgf/cm2、焼結温度600℃、4分保持とした。また、昇温速度は150℃/分以下とした。
【0091】
このようにして得られたCeFe3CoSb12化合物とLa23との混合焼結体の熱伝導率κと温度の関係を図6に示す。
また、図6には、酸化物を混合しないで、同じ条件で焼結したCeCoFe3Sb12化合物のみの熱伝導率κも併記した。
【0092】
この図から混合焼結体は、粒成長の抑制、粒界でのフォノン散乱の増大などによって熱伝導率κが低減され、かつ従来見られた高温側での熱伝導率の増大も抑制されている。これは粒界に分散したLaが拡散バリアとなったために、高温でのCeFe3CoSb12化合物の分解が抑制されたからである。
【0093】
(実施例5)
この実施例は、フィルドスカッテルダイト系化合物の充填元素として少なくとも2種類以上の希土類金属を用いた。金属原料として、La(純度99.9%)と、上記純度のCe、Fe、Co及びSbを、焼結後Ce0.5La0.5Fe3CoSb12の組成比になるようにAr雰囲気中で秤量・混合し、石英管アンプルに真空封止し、電気炉内で溶解温度1000〜1100℃に加熱して20時間保持して溶解した。次に、溶融金属は、アンプルを氷水に浸し急冷して凝固させた。得られた塊を再度電気炉で700℃にて30時間加熱保持し、固相拡散によりフィルドスカッテルダイト型結晶構造を得る。得られた塊は平均粒径100μm以下に微粒化した。
【0094】
この粉末を予備的に成形して、放電プラズマ焼結機を用いて焼結した。焼結条件は、印可圧力300kgf/cm2、焼結温度600℃、4分保持とした。また、昇温速度は150℃/分以下とした。このようにして得られた焼結体の熱伝導率κと温度の関係を図7に示す。フォノン散乱増大の効果によって、熱伝導率が低減された。
【0095】
(実施例6)
この実施例は、フィルドスカッテルダイト化合物の充填元素としてHfを用いるものである。従来希土類元素Lnは合金中で3価と4価の状態が混在するために、正確な電荷補償が困難であり、キャリア濃度の制御が困難であった。これに対し、Hfは合金中では4価にしかならないために、電荷補償をより正確に行うことが可能となる。
【0096】
金属ハフニウムHf(純度99.9%)とFe(純度99.9%)及びSb(純度99.9999%)を、焼結後HfFe4Sb12の組成比になるようにAr雰囲気中で秤量・混合した金属材料を、石英管アンプルに真空封止し、電気炉内で溶解温度1000〜1100℃に加熱して20時間保持して溶解した。次に、アンプルを氷水に浸し急冷して凝固させた。得られた塊を再度電気炉で700℃にて30時間加熱保持し、固相拡散によりスカッテルダイト型結晶構造を得た。得られた塊は乳鉢にて粗粉砕した後、遊星ボールミルにて平均粒径100μm以下に微粒化した。
【0097】
この例では、酸化物を混合することなく、この結晶粉末を予備的に圧縮成形して、放電プラズマ焼結機を用いて焼結した。焼結条件は、印可圧力300kgf/cm2、焼結温度600℃、4分保持とした。また、昇温速度は150℃/分以下とした。
【0098】
このようにして得られた焼結体のゼーベック係数及び導電率と温度の関係を図8及び図9に示す。図より希土類金属を充填したフィルドスカッテルダイト系熱電材料に比較して、ゼーベック係数が向上し、導電率が低下していることが判る。これは、従来、価数の違いによって、充填されなかった希土類金属から放出されていたキャリアが減少したためであり、Hfを充填することによって、より正確な電荷補償が可能となり、容易にキャリア濃度の制御が行えるものである。
【0099】
(実施例7)
この実施例については、Ce、Fe、Co及びSbを主成分とするフィルドスカッテルダイト系熱電材料の製造方法において、その合金を調製する工程にメカニカルアロイング法を用いることによって、合金中に微少量残留した異相の反応を促進し、単相でかつ均一なフィルドスカッテルダイト化合物粉末を得るものである。
【0100】
原料金属Ce(純度99.9%)とFe(純度99.9%)とCo(純度99.9985)及びSb(純度99.9999%)を、焼結後CeFe3CoSb12の組成比になるようにAr雰囲気中で秤量・混合した金属材料を、石英管アンプルに真空封止し、電気炉内で溶解温度1000〜1100℃に加熱して20時間保持して溶解した。
【0101】
次に、アンプル中で氷水に浸して急冷して溶融金属を凝固させた。得られた塊を再度電気炉で700℃にて30時間加熱保持し、固相拡散によりフィルドスカッテルダイト型結晶構造を得る。
【0102】
得られた塊は乳鉢にて粗粉砕した後、遊星ボールミルにて3時間メカニカルアロイング処理を行った。メカニカルアロイングにはめのう製のポッド及び直径5mmのジルコニア製ボールを用いた。メカニカルアロイング処理前と、処理により得られた化合物粉末のX線回折結果を、それぞれ図10(A)と図10(B)に示す。X線回折結果は、メカニカルアロイング処理前に比較してFeSb2相が低減され、均一な単相が得られたことを示している。
【0103】
このようなメカニカルアロイング処理後の粉末に、実施例4と同様にしてLaCl3水溶液からの沈降法により、Lnの酸化物Ln23粉末を均一分散させ、予備成形した。成形体は、放電プラズマ焼結機を使用して、実施例4と同じ条件で焼結した。焼結体は、金属相であるFeSb2相を低減することによって、ゼーベック係数Sを向上し、かつ熱伝導率κを低減することができた。
【0104】
(実施例8)
原料として、金属Ce(純度99.9%)とFe(純度99.9%)及びSb(純度99.9999%)を、焼結後CeFe4Sb12の組成比になるようにAr雰囲気中で秤量・混合した金属材料を、石英管アンプルに真空封止し、電気炉内で溶解温度1000〜1100℃に加熱して20時間保持して溶解した。次に、アンプルを氷水に浸し急冷して凝固させた。固相拡散によりフィルドスカッテルダイト型結晶構造を得るために、上記の塊を再度電気炉で700℃にて30時間加熱保持し、得られた塊は、Ar雰囲気中で乳鉢にて粗粉砕した後、遊星ボールミルにて平均粒径100μm以下に微粒化した。
【0105】
この粉末を、Ar雰囲気中でカーボンダイスに封入し、さらに予備的に圧力を印加して成形した。このように、焼結のための前処理を全てAr雰囲気中で行うことによって、粉末表面への酸素の付着を防止でき、高温での酸化による充填元素の脱落を防止できる。この得られた予備成形体を、放電プラズマ焼結機を用いて焼結した。焼結条件は、印可圧力300kgf/cm2、焼結温度700℃、4分保持とした。また、昇温速度は100℃/分以下とした。
【0106】
このようにして得られたCeFe4Sb12化合物焼結体のX線回折結果を図11(A)に示す。また、図11(B)には大気中でダイスに封入し予備成形をした焼結体のX線回折結果を併記した。大気中の処理は、X線回折チャートには、CeFe4Sb12のピーク回折強度が、回折角2Θが31°付近に、またFeSb2相のピークがCeFe4Sb12ピーク回折線に近接して並んでおり、CeFe4Sb12に対するFeSb2 の回折線強度比が約0.5にも及ぶことが判る。図11(A)、Ar雰囲気中でダイス封入した試料ではFeSb2の相が減少し、CeFe4Sb12単相が得られていることが判る。この例では、FeSb2 の回折線強度比は0.01以下であった。
また、この試料をEPMAにて解析した結果、不純物相の含有率は5重量%以下であり、酸素の含有量は1重量%以下であることが判った。
【0107】
次に、これらの試料の熱伝導率κと温度の関係を図12に示す。図よりAr雰囲気中で予備成形した焼結体では、熱伝導率κが低減されている。これは金属であるFeSb2が減少し、フォノン散乱が増大したためである。また、この試料のゼーベック係数及び導電率と温度との関係を図13に、さらに、これらより計算される無次元性能指数(ZT)と温度との関係を図14に示す。不純物の低減によって、導電率の低下を抑制しながら、ゼーベック係数を増大することができ、ZTは450℃で1.4に達することが判る。
【0108】
(実施例9)
この実施例は、ドーパントとしてPtを用いて、CeFe2.5Pt1.5Sb12の組成を有するn型フィルドスカッテルダイト系熱電材料を調製した。
原料に、Ce(純度99.9%)とFe(純度99.9%)とPt(純度99.9)及びSb(純度99.9999%)を使用して、焼結後にCeFe2.5Pt1.5Sb12の組成比になるようにAr雰囲気中で秤量・混合した金属材料から、実施例8と同一の条件で処理して、焼結体を得た。
このようにして得られた焼結体の熱伝導率κと温度の関係を図15に示す。また、ゼーベック係数及び導電率と温度の関係を図16(A、B)に示す。充填元素の脱落を抑制しながらn型キャリアを増大させたことによって、熱伝導率を低く保ちながらn型フィルドスカッテルダイト系熱電材料を得ることができた。
【0109】
(実施例10)
この実施例は、p型とn型のフィルドスカッテルダイト系熱電材料から、熱電カップルが、焼結によって一体成形された。
【0110】
先ず、p型のフィルドスカッテルダイトは、実施例8において得られたCeFe4Sb12系化合物粉末を用いて、Ar雰囲気中でカーボンダイスに封入し予備的に加圧成形して、p型の成形層とした。
【0111】
他方の、n型のフィルドスカッテルダイト系熱電材料は、実施例9において得られたCeFe2.5Pt1.5Sb12系化合物粉末を用いて、このn型の化合物粉末を、既に成形されてダイス中に残された上記のp型の成形層(CeFe4Sb12系化合物)上に、Ar雰囲気中で封入し、再度圧縮して成形を行った。これにより、p−n2層の予備成形体を得た。
【0112】
得られた2層成形体を放電プラズマ焼結機を用いて焼結した。焼結条件は、印可圧力300kgf/cm2、焼結温度700℃、4分保持とした。また、昇温速度は100℃/分以下とした。これによって、図17に示すような、円板状のp型焼結層2とn型焼結層3がその間で接合された熱電材料焼結体1が得られた。この円板状の焼結体1を、垂直な面で幅2〜5mmに切断してp−n接合した多数の焼結片10に分離した。
【0113】
p−n接合した焼結片は、先端部にのみp−n接合面4を残して、他の接合面を切除した。このようにして切欠き部5によりp型とn型の熱電材料部分を分離した断面がU字状の切片10にした。
【0114】
次に、焼結片10は、さらに、長手方向と垂直に切断されて、この例では開放端の断面が正方形となるように、熱電カップル6に成形された。このようにして、焼結によって直接にpn接合されたフィルドスカッテルダイト系熱電カップル6が得られた。
【0115】
さらに、この熱電カップルの開放端は、低温側であるので、金属電極を、例えば半田付けし、複数のカップルをpnpnの順に複数個直列に接合することによって熱電モジュールを得ることができる。
【0116】
従来、高温で使用する熱電材料の高温端は、pn接合するために、例えば鑞付けなどによってMo電極が接合されていた。
しかし、400℃を越えるような高温状態では、熱電材料と電極材料の熱膨張係数の差によって生じる歪みによって断線や接触不良が発生する危険性があった。これに対し、焼結によって直接pn接合をすることによって、異種金属を介さない接合が可能となり、信頼性・耐久性を大幅に向上することが可能となる。
【0117】
フィルドスカッテルダイト系熱電モジュールは、熱源を有する装置において熱源により熱電モジュールを加熱することにより、発電するのに利用される。装置内部の駆動電力を発生させ、装置内部に制御用電源として利用され、これにより、装置を電力コードレスにする。
【0118】
このような装置には、触媒燃焼装置や石油バーナーなどがある。これらの熱源は、温度は400℃を越えるために、従来の熱電材料では燃焼熱を十分に加えることができなかった。これに対して、フィルドスカッテルダイト系熱電モジュールを用いることによって、400℃以上での動作が可能となり、少量のモジュールで大きな電力を得ることが可能となる。
【0119】
熱電モジュールによって得られた電力は、例えばレギュレータ等を用いて昇圧され、内部電気装置の電源に利用される。また、高容量のパワーキャパシタ等を用いることによって、装置の待機中電源や起動時の電力にも用いることができる。
【0120】
図18には、電源コードレス化した装置を例示したが、装置本体8は、熱源7を内臓するが、熱源7に接触して熱電モジュール61が配置されている。熱源7が作動中は、熱電モジュール61により発電された電力が、電流制御部により制御されて、例えば、冷却ファン82、送風ファン83に供給され、装置制御部84には、制御電源として利用される。熱電モジュール61からの給電に余力があるときは、キャパシタ91で蓄電され、熱源7が休止中の場合の電源に使用する。
【0121】
【発明の効果】
本発明の熱電材料は、Sb含有スカッテルダイト化合物の結晶粒子の周囲に金属酸化物を分散してなる焼体としたから、結晶粒の微細化と粒界分布の粒子により、熱電材料としての熱伝導率の低い熱電材料を得ることが可能となり、熱電素子の熱電変換効率を向上できる。
【0122】
熱電材料は、Sb含有スカッテルダイト化合物に、希土類金属LnやHfを充填し且つFe置換したフィルドスカッテルダイトを利用することにより、結晶粒の微細化を図ることにより、熱伝導率が低く、性能指数の高い熱電素子の熱電変換効率を提供することができる。
【0123】
本発明の熱電材料は、特に、CoとSbとを主成分に含むCoSb3化合物にCr、Mn、Fe、Ru等の遷移金属を含むことにより、ゼーベック係数を上昇させ、パワーファクターを高める効果がある。
【0124】
本発明の熱電材料は、希土類金属Lnを充填し且つCoの一部をFe置換したLnyFexCo4-xSb12系フィルドスカッテルダイト系結晶について、特に不純物相を5重量%以下に分解を抑えることにより、優れたフィルドスカッテルダイト系熱電材料の安定性を確保し、熱電特性を高めることができる。
【0125】
さらに、フィルドスカッテルダイト系熱電材料を、LnyFex4-xSb12(ここで、Lnは希土類金属、MがNi、Pd、Pt)の組成としたので、熱電特性の良好なn型熱電材料として、利用することができる。このn型熱電材料は、特に、上記のようなに安定化されたLn充填Fe置換したフィルドスカッテルダイト結晶をp型熱電材料として、熱電カップルを形成することができる。
【0126】
本発明の熱電カップルは、p型熱電材料とn型熱電材料とを、何れも熱膨張係数の小さいSb含有スカッテルダイト系熱電材料から焼結により直接接合して形成されるから、p−n接合面も焼結により接続されており、従って、高温において使用されても、p−n接合面が割れたり、欠損したりすることなく、熱的に安定で耐久性の高い熱電カップルとすることができる。
【0127】
本発明の熱電材料の製造方法は、Sb含有スカッテルダイト系化合物又はその構成成分と金属酸化物の混合粉末を焼結することにより、焼結過程での結晶粒成長を抑制して、スカッテルダイト系化合物の結晶粒を微細化する。これにより、熱伝導率が低く、性能指数の高い熱電素子の熱電変換効率を有する熱電材料を製造することができる。
【0128】
遷移金属微粉末を均一分散する方法に水溶液からの沈降法を利用することにより、微細な酸化物粒子を化合物粒子表面に均一に分布させることが可能であり、焼結過程での結晶粒の成長を有効に抑制することができ、 熱電材料の熱伝導率を低くするのに有効である。
【0129】
また、本発明の熱電材料の製造方法は、特に、CoSb3系の、スカッテルダイト化合物粉末中に遷移金属微粉末を均一に分散して混合粉末を調製し、これを焼結することによって、スカッテルダイト中Coの遷移金属への置換を促進し、CoSb3系熱電材料のゼーベック係数を上昇させ、パワーファクターを高める効果がある。特に、遷移金属にMn、Cr、Fe、Ru等のp型ドーパントの使用により、特にp型CoSb3 系熱電材料の性能改善に寄与する。
【0130】
CoSb3系合金粉末への遷移金属の混合が、無電解メッキ法、溶液乾固後のの水素還元法、メカニカルアロイングによって均一に分散した遷移金属微粉末との混合粉末を調製し、これを焼結することによって、Coと遷移金属の置換を促進することができる。
【0131】
混合粉末の焼結に放電プラズマ焼結法を利用することにより、短時間で均一緻密な焼結体を容易に得ることができ、金属酸化物分散による結晶粒成長抑制の効果とともに、結晶が高密度化され且つ微細化された熱電特性に優れた熱電材料を製造することができる。
【0132】
本発明の熱電材料の製造方法は、また、LnyFexCo4-xSb12系フィルドスカッテルダイト系化合物を利用する熱電材料の製造の過程で、焼結に至るまで、非酸化性雰囲気中で処理するので、処理過程で酸素により汚染されることがなく、焼結過程で、フィルドスカッテルダイト中のLnなどの酸化とフィルドスカッテルダイトの分解とが防止でき、フィルドスカッテルダイトの安定化を図り、その熱電特性が改善される。
【0133】
フィルドスカッテルダイト系化合物焼結体の作製工程において、焼結の前処理の工程を全て真空あるいは不活性ガス中で行うことによって、化合物粉末への酸素の吸着を低減し、焼結時に発生する充填元素の酸化による脱落を防止し、不純物濃度の極めて低い焼結体を得ることができる。
【0134】
本発明は、熱電カップルを、p型スカッテルダイト系化合物の粉末と、n型のスカッテルダイト化合物粉末とから形成してた成形層を重ねて、焼結するので、カップルのp−n接合を焼結によって形成され、高温における信頼性や耐久性に優れた熱電カップルを得ることができる。
【0135】
さらに、フィルドスカッテルダイト系熱電モジュールと熱源を有する装置において、熱源から熱電モジュールに与えられる温度差で発生した電力で装置内部の駆動を行うことによって、高温の熱源に対しても信頼性がありかつ低コストなコードレス装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例のCo0.999 Fe0.001 Sb3 化合物とLa23 の混合焼結体の破断面の粒子の分布を示すSEM写真(A)と、Co0.999 Fe0.001 Sb3 の単独の同様のSEM写真(B)。
【図2】本発明の実施例に係るCo0.999 Fe0.001 Sb3 化合物とLa23 の混合焼結体の熱伝導率と温度の関係を表すグラフ。
【図3】 本発明の実施例に係るCuメッキを施したCoSb3 化合物焼結体のゼータベック係数と温度の関係を示すグラフ。
【図4】本発明の実施例に係るFe添加CoSb3 化合物焼結体及びCo0.999 Fe0.0010Sb3 化合物焼結体のゼーベック係数と温度の関係を表すグラフ。
【図5】本発明の実施例に係るFe添加CoSb3 化合物焼結体及びCo0.999 Fe0.001 Sb3 化合物焼結体のパワーファクタと温度の関係を表すグラフ。
【図6】本発明の実施例に係るCeCoFe3Sb12化合物とLa23との混合焼結体の熱伝導率κと温度の関係を表すグラフ。
【図7】本発明の実施例に係るCe0.5La0.5CoFe3Sb12化合物の熱伝導率κと温度の関係を表すグラフ。
【図8】本発明の実施例に係るHfFe4Sb12化合物のゼーベック係数と温度の関係を表すグラフ。
【図9】本発明の実施例に係るHfFe4Sb12化合物熱電材料の導電率と温度の関係を表すグラフ。
【図10】本発明の実施例に係るメカニカルアロイングの前と後のCeCoFe3Sb12化合物粉末のX線回折チャート(A、B)。
【図11】Ar中処理(A)と、空気中処理(B)とを行った後に放電プラズマ焼結したCeFe4Sb12化合物焼結体のX線回折結果。
【図12】本発明の実施例に係るCeFe4Sb12化合物焼結体の熱伝導率κと温度の関係を表すグラフ。
【図13】Ar中及び空気中で処理されて後焼結されたCeFe4Sb12化合物焼結体の温度−ゼーベック係数の環形(A)と温度−導電率の関係(B)を表すグラフ。
【図14】本発明の実施例に係るCeFe4Sb12化合物焼結体の無次元性能指数(ZT)と温度との関係を表すグラフ。
【図15】本発明の実施例に係るCeFe2.5Pt1.5Sb12化合物焼結体の熱伝導率κと温度の関係を表すグラフ。
【図16】本発明の実施例に係るCeFe2.5Pt1.5Sb12化合物焼結体の温度−ゼーベック係数の関係(A)と、温度−導電率の関係(B)を表すグラフ。
【図17】本発明の実施形態により、p−n接合を有する熱電カップル
を製造する工程を示す斜視図(A〜D)。
【図18】熱源と熱電モジュールとを備えた装置のブロック図。
【符号の説明】
1 熱電材料焼結体
10 焼結片
2 p型焼結層
3 n型焼結層
4 p−n接合面
5 切欠き部
6 熱電カップル
61 熱電モジュール
7 熱源
8 装置本体
80 電流制御部
81 キャパシタ
84 装置制御部

Claims (13)

  1. Sb含有スカッテルダイト化合物の結晶とその結晶粒界に分散した金属酸化物とを備えたスカッテルダイト系熱電材料の製造方法であって、
    前記Sb含有スカッテルダイト化合物と前記金属酸化物との混合粉末を放電プラズマ焼結法によって焼結することにより、焼結体の平均結晶粒径を20μm以下にしたことを特徴とする熱電材料の製造方法。
  2. 前記混合粉末が、前記Sb含有スカッテルダイト化合物と、前記Sb含有スカッテルダイト化合物に対して0.1〜15重量%の前記金属酸化物と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の熱電材料の製造方法。
  3. 前記Sb含有スカッテルダイト化合物が、LnyFexCo4-xSb12(ここで、Lnは希土類金属、0<X≦4、0<y≦1)の組成のフィルドスカッテルダイト化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱電材料の製造方法。
  4. 前記組成が、特に、3≦X≦4で、且つ0.8≦y≦1であることを特徴とする請求項3に記載の熱電材料の製造方法。
  5. 前記混合粉末は、金属含有水溶液からの沈降により前記Sb含有スカッテルダイト化合物の粉末に金属含有沈降物を分散させ、その後に加熱分解することにより、前記Sb含有スカッテルダイト化合物の粉末に前記金属酸化物を分散させたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の熱電材料の製造方法。
  6. 前記Sb含有スカッテルダイト化合物が、Co及びSbを主成分とするCoSb3系化合物であり、前記混合粉末が、前記Sb含有スカッテルダイト化合物とCo族金属を除く遷移金属とを混合した粉末であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱電材料の製造方法。
  7. 前記混合粉末は、前記CoSb3系化合物の粉末に前記遷移金属を無電解メッキして成ることを特徴とする請求項6に記載の熱電材料の製造方法。
  8. 前記混合粉末が、CoとSbの混合粉末若しくは前記CoSb3系化合物粉末の表面に前記遷移金属をメカニカルアロイングにより混合して成ることを特徴とする請求項6に記載の熱電材料の製造方法。
  9. 前記混合粉末が、前記遷移金属を溶解した水溶液中にCoとSbとの粉末若しくは前記CoSb3系化合物粉末を分散し、前記水溶液を蒸発乾固後に水素還元して成ることを特徴とする請求項6に記載の熱電材料の製造方法。
  10. 前記遷移金属が、Mn、Cr、Fe、Ru、Ni、Pd、Pt、又はCuのいずれかであることを特徴とする請求項6ないし9のいずれか1項に記載の熱電材料の製造方法。
  11. 前記Sb含有スカッテルダイト化合物がLnFe4−xSb12(ここで、Lnは希土類金属、0≦X≦4、0≦y≦1、MはNi、Pd又はPt)の組成比のフィルドスカッテルダイト化合物であり、
    前記フィルドスカッテルダイト化合物の形成から前記フィルドスカッテルダイト化合物粉末の焼結に至る前処理工程が、非酸化性雰囲気中において行われることを特徴とする請求項1または2に記載の熱電材料の製造方法。
  12. 前記前処理工程が、前記フィルドスカッテルダイト化合物の粉砕の工程と、前記フィルドスカッテルダイト化合物粉末の予備成形の工程と、成形体の焼結ダイスへの装入の工程と、前記成形体の焼結の工程と、を含むことを特徴とする請求項11に記載の熱電材料の製造方法。
  13. 請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする熱電材料。
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