JP4671553B2 - 熱電半導体の製造方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子冷却機器等に使用されるペルチェ効果を利用したペルチェモジュールに使用される熱電半導体の製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
従来より、P型半導体とN型半導体とを金属を介して接合しPN接合対を形成し、接合部に流す電流の方向によって一端が発熱されるとともに他端が冷却される所謂ペルチェ効果を利用した熱電半導体素子は、小型で構造が簡単でありフロンレス冷却技術、光検出素子、半導体製造装置等の電子冷却素子、レーザーダイオードの温度調節等の種々のデバイスへの幅広い利用が期待されている。
【0003】
これらの熱電半導体素子のうち、Bi2Te3、Sb2Te3、Bi2Se3のカルコゲン系化合物及びこれらの固溶体であるBixSb2-xTe3、Bi2Te3-ySeyが室温付近で最も性能が良い熱電半導体として主に用いられている。
【0004】
これらの熱電素子の性能は一般に性能指数Zで評価する。ここで、Zはα2/(ρ・κ)という式で表すことができ、αはゼーベック係数、ρは比抵抗、κは熱伝導率である。この式からわかるようにZを向上するためにはαを大きくし、ρ及びκを小さくする必要がある。
【0005】
αは材料に固有の物性値であるため、同一の材料系では大きな改善が期待できない。これに対して、結晶粒径を微細にすることによって粒界でのフォノン散乱が増え、κを小さくすることができ、また、ρは粉末の表面に形成されている酸化膜を除去し、酸素含有量を減少することによって比抵抗を減少できることが知られている。
【0006】
この結晶の微細化と酸化膜の除去とを同時に実現する焼結法として、最近、放電プラズマ焼結(以下、SPSと言う:Spark Plasma Sintering)法が注目されている。この方法では、原料粉末をダイスに充填し、原料粉末に圧力を加えるとともに、パルス状の電圧を印加し、発生する放電及びジュール熱による自己発熱を用いた焼結方法であり、低温、短時間焼結、結晶粒微細化等が特徴である。
【0007】
ところが、原料粉末に電圧を印加すると、電流の流れる道筋がサンプル内で不均一になると、放電により酸化膜が不均一に除去されるため、除去された部分でのみジュール発熱が起こり、つまり加熱が局所的に起こり、溶融、偏析、焼結の偏り等がおこり、組織及び特性が不均一になる恐れがあった。
【0008】
そこでパルス電流の印加前に高圧の圧縮応力をかけ、ピーク電流とパルス電流の周期を制御し焼結を行うことにより、緻密で均一な組織を有する焼結体を作製することが特開平3−56604号公報で提案されている。
【0009】
また、2種以上の化合物、元素を原料粉末に用い、これらの原料粉末にパルス状の電流を通電することによる固相反応によって均一組織を有する化合物を合成及び焼結する熱電半導体の製造方法が特開2000−49392号公報に開示されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平3−56604号公報に記載の方法では、圧縮応力が5〜20T/cm2と非常に高い圧力を必要とするため、ダイスの寿命が短くなり、且つ加圧装置が大がかりになるため、冶具コスト、装置コストが大きくなり、しいては製品コストの上昇につながるという問題があった。
【0011】
また、パルス電流の印加する振幅を制御して焼結することが記載されているものの、その詳細は不明であり、作用効果も明確ではなく、その結果、特性がばらつくという問題があった。
【0012】
特開2000−49392号公報に記載の方法では、焼結時間が2時間と長時間を要しており、コストが上昇するとともに、組織が不均一になるという問題があった。
【0013】
従って、本発明は、短時間に均一な組織を有し、特性のばらつきの少ない熱電半導体の製造方法を低コストで提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、SPS法を用いて熱電半導体を作製する際に、原料粉末に印加するパルス電圧の印加時間と印加停止時間を制御することで、均一な組織を有し、特性のばらつきが小さい熱電半導体を低コストで作製できるという知見に基づくものである。
【0015】
即ち、本発明の熱電半導体の製造方法は、Bi、Sb、Te及びSeのうち少なくとも2種を含む化合物を主体とする原料粉末に圧力を加えるとともに、該原料粉末にパルス電圧を印加して焼成する熱電半導体の製造方法において、前記パルス電圧の印加を不活性ガス雰囲気、非酸化性雰囲気又は真空雰囲気中で行ない、前記パルス電圧の一回の印加時間をton、印加停止時間をtoffとしたときに、toff 6〜20ms、tonとtoffの比ton/toff 5以上とすることを特徴とするものである。
【0016】
この方法によれば、粒子間に効率的、且つ均一に放電プラズマが生じるため、粒子表面の酸化膜も均一に除去でき、均一な加熱が可能となる。そのため、作製した熱電半導体の焼結体から熱電モジュール用に小さな素子形状に切り出す際に、素子間での熱電性能の差が小さく、均一な特性を有する熱電素子が作製可能となる。
【0017】
特に、前記パルス電圧の印加により流れる電流の電流密度400A/cm2以下とすることが好ましい。これにより、試料内の結晶粒子に過剰なエネルギーを与えることなく焼結することができ、均一で微細な結晶粒径を有する熱電半導体を作製することができる。
【0018】
また、前記化合物がBi2Te3、Bi2Se3及びSb2Te3のうち少なくとも1種であることが好ましい。これらの合金及びその固溶体を用いることによって、目的とする組成を得るために、原料粉末を一度溶融して合金を作製し、それを粉砕する必要がないため、溶融時の組成ずれが起こる危険がなく、均一な組成及び組織を有する焼結体をより安定して得ることができる。また、溶融に必要とする装置を特別に必要としないため、安価に製造することができる。
【0019】
さらに、熱電半導体となる前記原料粉末の塊の収縮が開始する温度Tに対して、(T−30)〜(T+50)℃の温度で前記圧力を加えることが好ましい。これにより、余分なエネルギーを加える必要がなく、また、収縮開始前後に加圧するため、低圧力、短時間で緻密化が可能となり、より均一な微細結晶組織を作製することができる。
【0020】
さらにまた、前記圧力25〜50MPaとすることが好ましい。これにより、より微細でより緻密な焼結体を容易に作製することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の熱電半導体の製造方法は、SPS法により緻密で、均一な組織を有し、特性のばらつきが小さい熱電半導体を低コストで作製するものであり、以下にその製造方法を説明する。
【0022】
まず、熱伝半導体からなる原料粉末を準備する。この原料は、Bi、Sb、Te及びSeのうち少なくとも2種を含む化合物を主体とする原料粉末であれば、特別に制限されるものではないが、特にBi2Te3、Bi2Se3及びSb2Te3のうち少なくとも1種を含むことが好ましく、これによって組成ずれの危険が低くなり、より均一な組成及び組織を有する焼結体を得ることができる。
【0023】
例えば、P型熱電半導体として(Bi2Te320(Sb2Te3)80を作製する場合、Bi2Te3とSb2Te3とを2:8の割合で混合して用いればよく、また、N型熱電半導体として(Bi2Te395(Bi2Se35を作製する場合、Bi2Te3とBi2Se3とを95:5の割合で混合して用いればよく、組成のずれが起こり難く、また混合を十分することにより原料粉末の均一性が確保しやすい。
【0024】
また、この際これらの原料粉末の純度はいずれも99.9%以上、特に99.99%以上、更には99.999%以上であることが好ましい。原料粉末に含まれる不純物は、半導体特性及び熱電特性を低下させる傾向があるため、安定して高性能の熱電半導体を作製するためには上記の純度を有することが好ましい。
【0025】
なお、N型熱電半導体を作製するため、ドーパントとしてキャリア濃度の調整を目的として、HgBr2やSbI3等のハロゲンを含む化合物を添加することが好ましい。これにより、安定した半導体特性を得ることができる。
【0026】
上記の化合物粉末を目的の組成になるよう秤量し、乾式もしくは湿式で混合及び/又は粉砕を行って原料粉末を作製することができる。
【0027】
次いで、上記の原料粉末を混合及び/又は粉砕する。混合や粉砕には公知の方法であるスタンプミル、ボールミル、振動ミル等を挙げることができる。そして、混合や粉砕後に原料粉末中の酸素を除去するため、水素ガス等の還元性雰囲気中で還元処理を行うことが好ましい。この還元処理によって、予め原料粉末中の酸素量を低減し、焼結体の熱電特性を向上することができる。なお、この還元処理は、焼成の前であれば成形後でも差し支えない。
【0028】
次に、この原料粉末をSPS装置にセッティングする。例えば、円柱状のカーボン製ダイスに原料粉末を充填し、圧縮通電パンチで上下から挟み込み、これらの冶具を焼結炉内にセットする。なお、このセッティングの際にダイスを保持するため1MPa程度の圧力が必然的に付加されるが、5MPa以下と低い圧力であれば焼結に影響しないので差し支えない。また、原料粉末を予め一軸プレス法、CIP法、鋳込み法、射出成形法等の公知の成形方法により成形体を作製し、この成形体を上下の圧縮通電パンチ間に位置するようにダイスに装入しても良い。なお、プレス法による成形方法を用いる場合、容易に製造でき、且つ取扱いが十分可能な成形体を作製するため、45〜100MPa程度の成形圧力で成形し、所望の形状を得ることが望ましい。
【0029】
次いで、焼成を開始する。即ち、原料粉末にパルス状の電圧を印加し、電流を間歇的に流し、放電及びジュール熱による自己発熱によって昇温を行う。本発明によれば、この時のパルス電圧の印加時間と印加停止時間を制御することが重要である。即ち、ダイスに加えるパルス電圧の時間変化は、図1に示すようになり、パルス電圧の一回の印加時間をton、印加停止時間をtoffとしたとき、toffが6〜20ms、tonとtoffの比ton/toffが5以上とすることが重要である。
【0030】
offが6msより小さいと通電がパルス的ではなく、実質的に連続的な通電状態に近くなり、放電による酸素除去効果が低くなり、20msより大きいと製造時間が長くなって効率的な加熱が難しくなるとともに、長時間の運転により製造コストが上昇する。
【0031】
また、tonとtoffの比ton/toffが5未満であっても、粒子間での放電が起こりにくくなり、均一な電流のパスが形成されないため、局所的な加熱が発生しやすく、部分的に溶融、偏析等が生じ、均一な組織を得ることができにくくなる。
【0032】
従って、toffは特に6〜15ms、更には6〜10msが、また、ton/toffは特に6〜10が、均一性をより向上させるために望ましい。
【0033】
また、焼成雰囲気は、酸素との反応を極力抑え、性能指数をさらに改善するため、He、Ar及びNe等の不活性ガス雰囲気、H2、N2等の非酸化性雰囲気又は真空雰囲気であることが望ましい。これらの中で、焼結と同時に還元効果を得ることができるため、H2雰囲気が、安全性、コストの面ではAr雰囲気が好ましく、これらの混合ガスでも良い。
【0034】
さらに、パルス電圧の印加により、ダイスに流れる電流の電流密度は400A/cm2以下、特に350A/cm2以下、更には300A/cm2以下であることが好ましい。これにより、結晶粒子に過剰なエネルギーを局所的に与えないため、粒成長を抑制でき、また平均結晶粒子径が均一になり、特性のばらつきをより少なくすることができる。
【0035】
さらにまた、圧力印加は、ダイスに充填された原料粉末の収縮が開始する温度Tに対して、(T−30)〜(T+50)℃、特に(T−10)〜(T+20℃)の温度において加圧することが好ましい。このように、収縮開始とほぼ同時に圧力を加えることによって、焼結を促進し、低圧力、短時間で緻密化できるため、均一な微細結晶粒を有する焼結体を作製することが可能となる。なお、ここで用いた原料粉末の意味は、粉末をダイスに充填したものとともに、成形後にダイスに充填したものも含む。つまり、成形の有無によらず、ダイスに充填された粉体を意味するものである。
【0036】
また、加圧の圧力は、25〜50MPa、特に28〜40MPaであることが好ましい。25MPa未満の圧力では緻密体を得にくくなり、緻密体を得るために温度を上げると昇華しやすいTeやSeが飛散しやすくなり、組成ずれ等を起こしてしまう。また、50MPaを超える圧力では過剰なエネルギーを与えることになり、結晶粒子が粒成長を起こし、その結果熱伝導率が上昇し、特性が低下する。また、50MPaを超える圧力ではダイスの劣化を招き、破損しやすくなり、歩留まり低下及びコストアップにつながることがある。
【0037】
このようにして得られた熱電半導体は、スライス、ダイシング等を実施して熱電素子を作製し、モジュールとして組み立てることができる。例えば、上記の熱電素子を複数配列し、一対の熱交換基板で挟持するとともに、熱電素子を電気的に接続して熱電モジュールを作製し、上記の配列した熱電素子に電気を供給して、熱交換基板の一方を冷却することにより、冷却効率の高い熱電モジュールを実現することができる。
【0038】
【実施例】
原料粉末として、純度99.99%のBi2Te3(テルル化ビスマス)粉末、Sb2Te3(テルル化アンチモン)粉末及びBi2Se3(セレン化ビスマス)粉末を準備し、表1に示す割合で秤量、混合して主原料を作製した。また、N型半導体材料には、ドーパントとしてSbI3粉末を、上記主原料を100重量部としたとき表1に示す量となるように添加した。
【0039】
これらの混合粉末をイソプロピルアルコール中でセラミックボールを使用し、20時間振動ミルを施し、原料粉末を粉砕した。その後、得られた粉末を乾燥し、一軸プレスにおいて49MPaの圧力で加圧し、直径20mm、厚み15mmの成形体を作製し、雰囲気炉にて水素気流中400℃×5時間の還元処理を行った。
【0040】
還元処理を行った成形体をカーボン製の円柱状ダイスに装入し、カーボン製の圧縮通電パンチで上下から挟み込み、焼成炉の内部にセッティングし、焼成炉の内部をArで置換し、パルス電圧の印加を開始した。パルス電圧の印加は、ダイスに印加するパルス電圧の一回の印加時間をton、印加停止時間をtoffとしたときに、toffとton/toffを表1に示すように設定し、昇温を行った。この際に、原料粉末に流れる電流密度も表1になるように制御した。
【0041】
また、圧縮通電パンチに連動した変位計により変位が開始した時点を収縮開始温度Tとし、表1に示す条件において加圧圧力を付加した。そして、表1に示す保持条件によって焼成を行った。
【0042】
焼成終了後は自然冷却により50℃以下でサンプルを取り出し、アルキメデス法より比重を測定し、理論密度から相対密度を算出した。
【0043】
また、比抵抗ρ及びゼーベック係数αは真空理工社製熱電能評価装置により、熱伝導率κはレーザーフラッシュ法により、それぞれ20℃の条件下で測定し、性能指数ZをZ=α2/(ρ・κ)の計算式から算出して平均値を求め、Zのばらつきを調べるため標準偏差を求めた。また、同様に、成形後Ar雰囲気中で圧力49MPa、温度500℃で10分間のホットプレスを行い、相対密度、Zの平均値及び標準偏差を求めた。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
Figure 0004671553
【0045】
本発明の範囲内の試料は、全て450℃×10分の短時間で相対密度が98.2%以上になっており、性能指数Zが3.52×10-3/K以上、その標準偏差が0.095以下であった。
【0046】
パルス電圧を印加しない本発明の範囲外の試料No.25及び26は、相対密度が97.3%以下と低く、性能指数Zは2.94×10-3/K以下、その標準偏差も0.232以上であった。
【0047】
また、時間toffが3.3msと短い本発明の範囲外の試料No.1、時間toffが23.1msと長い本発明の範囲外の試料No.6は、相対密度が97.7%以下、性能指数Zが3.23×10-3/K以下、その標準偏差が0.186×10-3以上とばらつきが大きかった。
【0048】
また、ton/toffが4と小さい本発明の範囲外の試料No.7は、相対密度が97.6%、性能指数Zが3.21×10-3/K、その標準偏差が0.252×10-3とばらつきが大きかった。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、Bi、Sb、Te及びSeのうち少なくとも2種を含む化合物を主体とする原料粉末に圧力を加えるとともに、該原料粉末にパルス電圧を印加して焼成する熱電半導体の製造方法において、前記パルス電圧の印加を不活性ガス雰囲気、非酸化性雰囲気又は真空雰囲気中で行ない、前記パルス電圧の一回の印加時間をt on 、印加停止時間をt off としたときに、t off を6〜20ms、t on とt off の比t on /t off を5以上とすることにより、均一な組成及び組織を有し、特性のばらつきが小さく均一な熱電半導体を低圧力・短時間で得ることができ、その結果、歩留まりが高く、低コストに大きく寄与でき、且つ熱電性能のばらつきが少ない優れた熱電半導体素子を実現できる。
【0050】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱電半導体の製造方法におけるパルス電圧の印加状態を示すグラフである。

Claims (5)

  1. Bi、Sb、Te及びSeのうち少なくとも2種を含む化合物を主体とする原料粉末に圧力を加えるとともに、該原料粉末にパルス電圧を印加して焼成する熱電半導体の製造方法において、前記パルス電圧の印加を不活性ガス雰囲気、非酸化性雰囲気又は真空雰囲気中で行ない、前記パルス電圧の一回の印加時間をton、印加停止時間をtoffとしたときに、toff 6〜20ms、tonとtoffの比ton/toff 5以上とすることを特徴とする熱電半導体の製造方法。
  2. 前記パルス電圧の印加により流れる電流の電流密度400A/cm以下とすることを特徴とする請求項1記載の熱電半導体の製造方法。
  3. 前記化合物がBiTe、BiSe及びSbTeのうち少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2記載の熱電半導体の製造方法。
  4. 熱電半導体となる前記原料粉末の塊の収縮が開始する温度Tに対して、(T−30)〜(T+50)℃の温度で前記圧力を加えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の熱電半導体の製造方法。
  5. 前記圧力25〜50MPaとすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱電半導体の製造方法。
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