JP3949359B2 - 2−アルキル−2−アダマンチルエステルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体レジスト原料として有用な2−アルキル−2−アダマンチルエステルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
2−アルキル−2−アダマンチルエステルを原料として得られるレジストには、半導体製造プロセスにおけるドライエッチング耐性が高いことが報告され(例えば特開平5−265212号公報)、半導体用レジスト材料としての可能性が注目されている。
【0003】
2−アルキル−2−アダマンチルエステルの製造方法としては、有機金属化合物からなるアルキル化試薬によって2−アダマンタノンをアルキル化し、続いて得られた2−アルキル−2−アダマンタノールの金属塩をカルボン酸ハライド化合物によってアシル化する方法が知られており、具体的には、特開平10−182552号公報に、2−アダマンタノンからメチルマグネシウムブロマイド及びメタクリル酸クロライドを用いて2−メチル−2−アダマンチルメタクリレートが収率85.0%で得られたことが記載されている。
【0004】
このような製造方法においては、メチルマグネシウムブロマイドを用いてのアルキル化反応は化学量論的に進行する条件が知られており、後段のアシル化反応の収率が目的物の収率や純度に影響を与えることになるが、本発明者等が上記公報に記載されているアシル化反応を追試したところ、室温で15時間反応させても反応は完結せず、その転化率は86%に留まり得られた目的物の純度は77%であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
2−アルキル−2−アダマンチルエステルを半導体用レジスト材料として用いる際には高純度のものが要求されているが、従来の製造方法においては、上記のようにアシル化反応の添加率が低く効率的に高純度の2−アルキル−2−アダマンチルエステルを製造することができなかった。
【0006】
そこで、本発明は、効率的に高純度の2−アルキル−2−アダマンチルエステルを製造する方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく、2−アルキル−2−アダマンタノールのマグネシウムハライド塩とカルボン酸ハライド化合物の反応を効率的に進行させる方法について鋭意検討を行った。その結果、2−アルキル−2−アダマンタノールのマグネシウムハライド塩とカルボン酸ハライド化合物とを3級アミン化合物の存在下で混合して反応させることにより、短時間で定量的に反応が進行することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記一般式(1)
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、R1は炭素数1〜3のアルキル基であり、Xはハロゲン原子である。)で示される2−アルキル−2−アダマンタノールのマグネシウムハライド塩とカルボン酸ハライド化合物とを3級アミン化合物の存在下に反応させる2−アルキル−2−アダマンチルエステルの製造方法において、カルボン酸ハライド化合物1モルに対して0.01〜0.5モルの3級アミン化合物の存在下に反応を行なうことを特徴とする2−アルキル−2−アダマンチルエステルの製造方法である。
【0011】
本発明は理論に拘束されるものではないが、本発明においては、共存する3級アミン化合物がカルボン酸ハライド化合物を活性化することにより転化率が向上し、最終的に得られる2−アルキル−2−アダマンチルエステルの純度も向上するものと思われる。しかも、驚くべきことに上記活性化において3級アミン化物は触媒的に作用し、カルボン酸ハライド化合物1モルに対して1モル以下と量論量以下の3級アミン化合物を用いた場合において十分な効果が得られる。すなわち、2−アルキル−2−アダマンタノールのマグネシウムハライド塩として前記一般式(1)においてR1が炭素数1〜3のアルキル基である2−アルキル−2−アダマンタノールのマグネシウムハライド塩を使用し、カルボン酸ハライド化合物1モルに対して0.01〜0.5モルの3級アミン化合物の存在下に反応を行なった場合には、短時間で95%程度の転化率で反応を行なうことが出来る。
【0012】
また、通常、反応時にカルボン酸ハライドを過剰量使用した場合には、過剰のカルボン酸ハライド若しくはその熱分解である酸等により生成した2−アルキル−2−アダマンチルエステルが分解する可能性があるが、本発明の製造方法においては、3級アミン化合物がこれら酸等を捕捉することによりこのような分解を防止するためと思われるが、広い原料モル比や反応条件下でも上記の効果を発現することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法では、2−アルキル−2−アダマンタノールのマグネシウムハライド塩とカルボン酸ハライド化合物とを3級アミン化合物の存在下に混合して反応させてアシル化し、対応する構造の2−アルキル−2−アダマンチルエステルを製造する。
【0014】
本発明で原料として使用する2−アルキル−2−アダマンタノールの金属又はマグネシウムハライド塩は、前記一般式(1)で示される化合物であれば特に限定されない。なお、前記一般式(1)において、R1は炭素数1〜3のアルキル基であり、Xはハロゲン原子である。
【0015】
上記R1は、半導体用レジスト材料の原料としての有用性が高いという観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基であるのが好適である。また、上記Xであるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられるが、合成のし易さの観点からは塩素又は臭素原子が好適であり、さらに反応性の観点から、臭素原子が最も好適である。
【0016】
本発明で好適に使用できる前記一般式(1)で示される2−アルキル−2−アダマンタノールのマグネシウムハライド塩を具体的に例示すれば、2−メチル−2−アダマンタノールのマグネシウムクロライド塩、2−メチル−2−アダマンタノールのマグネシウムブロマイド塩、2−エチル−2−アダマンタノールのマグネシウムクロライド塩、2−エチル−2−アダマンタノールのマグネシウムブロマイド塩等が挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から2−アルキル−2−アダマンタノールのマグネシウムハライド塩、特に2−メチル−2−アダマンタノールのマグネシウムブロマイド塩等を使用するのが好適である。
【0017】
前記一般式(1)で示される化合物は、該化合物が2−アルキル−2−アダマンタノールのマグネシウムハライド塩である場合には、2−アルキル−2−アダマンタノンとグリニアール試薬から容易に得ることができ、これらの反応生成物がそのままの形で、或いは必要に応じて濾過、洗浄等の精製を行った後に使用することが出来る。
【0018】
また、本発明において原料として使用するカルボン酸ハライド化合物としては、カルボキシル基を有する有機化合物の酸ハライド化合物であれば特に限定されず使用できる。本発明で使用できるカルボン酸ハライド化合物を具体的に例示すれば、アセチルフロライド、アセチルクロライド、アセチルブロマイド、沃化アセチル、プロピオン酸クロライド、プロピオン酸ブロマイド、沃化プロピオニル等の飽和カルボン酸ハライド化合物;アクリル酸フロライド、アクリル酸クロライド、アクリル酸ブロマイド、沃化アクリロイル、メタクリル酸フロライド、メタクリル酸クロライド、メタクリル酸ブロマイド、沃化メタクリロイル等の不飽和カルボン酸ハライド化合物;ベンゾイルフロライド、ベンゾイルクロライド、ベンゾイルブロマイド、沃化ベンゾイル、トルイル酸フロライド、トルイル酸クロライド、トルイル酸ブロマイド、沃化トルオイル、ナフトエ酸フロライド、ナフトエ酸クロライド、ナフトエ酸ブロマイド等の芳香族カルボン酸ハライド化合物等を挙げることが出来る。
【0019】
これらの中でも反応性の観点から、炭素数2〜7のカルボン酸クロライドを用いるのが好ましく、半導体用レジスト材料の原料としての有用性が高いという観点から、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドを使用するのが特に好適である。
【0020】
これらのカルボン酸ハライド化合物は、試薬及び工業原料として入手したものをそのまま、或いは必要に応じて再結晶、蒸留等の精製を行った後に使用することが出来る。また、入手が困難であるカルボン酸ハライド化合物については次のようにして合成することが出来る。即ち、カルボン酸弗化物、カルボン酸塩化物、カルボン酸臭化物、及びカルボン酸沃化物は、それぞれ弗化シアヌル、塩化チオニル、ジブロモトリフェニルホスホラン、及び沃化ナトリウムを対応するカルボン酸又はカルボン酸塩化物と反応させることにより容易に合成がすることができる。
【0021】
これらカルボン酸ハライド化合物の使用量は特に制限されるものではないが、少なすぎると未反応原料が残留して純度が低下し、多すぎると未反応のカルボン酸ハライド化合物を除去するためにアルカリ処理等の操作が必要となって煩雑となるため、2−アルキル−2−アダマンタノールのマグネシウムハライド塩1モルに対して0.8〜2.0モル、特に1〜1.5モル使用するのが好適である。
【0022】
本発明の製造方法においては、2−アルキル−2−アダマンタノールのマグネシウムハライド塩とカルボン酸ハライド化合物とを混合して反応させるに際して、3級アミン化合物を共存させる必要がある。3級アミン化合物の非存在下で反応を行なった場合には、転化率が低くなり、所期の目的を達成することができない。
【0023】
本発明で使用できる3級アミン化合物としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の脂肪族3級アミン化合物;N-メチルピロリジン、N-メチルピペリジン、N-エチルピペリジン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等の環状3級アミン化合物、ピリジン、N,N-ジメチルアミノピリジン等の環状不飽和炭化水素3級アミン化合物;N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'-テトラエチルエチレンジアミン等の脂肪族3級ジアミン化合物等を挙げることが出来る。これらの中でも、特に工業的な入手の容易さ、安価であるという点からトリエチルアミン、N-メチルモルホリンが好適に用いられる。なお、これらの3級アミン化合物はすべて試薬及び工業原料として入手可能である。
【0024】
これら3級アミン化合物の使用量は、カルボン酸ハライド化合物1モルに対して0.01〜0.5モルの使用量で十分な効果が得られる。過剰使用を防止し、反応速度や副反応を抑制するという観点から、カルボン酸ハライド化合物1モルに対して、0.1〜0.3モル使用するのが好適である。
【0025】
本発明において、2−アルキル−2−アダマンタノールのマグネシウムハライド塩とカルボン酸ハライド化合物とを3級アミン化合物の存在下で反応させる方法は特に制限されず、これら反応試剤を適宜混合することにより行うことが出来るが、作業性、反応温度等の反応条件の制御し易さ等の点から、溶媒を使用し、2−アルキル−2−アダマンタノールのマグネシウムハライド塩と3級アミン化合物とを溶媒に溶解又は懸濁させ、カルボン酸ハライド化合物を加えて攪拌するのが好適である。
【0026】
本発明で使用できる溶媒は、2−アルキル−2−アダマンタノールのマグネシウムハライド塩、カルボン酸ハライド化合物及び3級アミン化合物に安定な溶媒であれば特に制限なく使用できるが、化合物の溶解性、反応速度等の観点から、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類が好適に用いられる。
【0027】
これらの有機溶媒は単独でも使用しても、2種類以上混合して用いても差し支えない。また、これらの有機溶媒の使用量は特に限定されないが、釜収量や溶解度、反応速度の観点から、2−アルキル−2−アダマンタノールのマグネシウムハライド塩1モルに対して5リットル以下、特に0.2〜3リットルとなる量を使用するのが好適である。
【0028】
本発明の製造方法における反応条件は、使用する反応試剤の種類、量、濃度等に応じて、例えばガスクロマトグラフィー等で反応の進行を確認しながら調整する等して適宜設定すればよいが、反応時間及び反応時間に関しては、副反応を抑制しながら高い反応速度で反応を行うという観点から0℃〜50℃で、0.5時間〜24時間程度反応を行うのが好適である。また、この反応は発熱反応であるため、反応温度を均一にするために攪拌を行うのが好適である。
【0029】
このようにして反応を行うことにより、使用原料の構造に対応した構造の2−アルキル−2−アダマンチルエステルを得ることが出来る。例えば、2−アルキル−2−アダマンタノールのマグネシウムハライド塩として2−メチル−2−アダマンタノールのマグネシウムブロマイド塩を用い、カルボン酸ハライド化合物としてメタクリル酸クロライドを用いた場合には、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレートが生成する。
【0030】
得られた2−アルキル−2−アダマンチルエステルの反応液からの回収は、反応液を酸水溶液で洗浄してマグネシウムハライドを除去した後、アルカリ水溶液、水等で洗浄した後、有機層から溶媒を減圧留去して目的物である2−アルキル−2−アダマンチルエステルを分離すればよい。
【0031】
本発明によれば、目的の2−アルキル−2−アダマンチルエステルが定量的に生成するので、このような簡単な分離方法で生成物を分離しても、その純度は高く、用途によっては特に精製することなくそのまま使用することも出来る。より高純度のものを得たい場合には、得られる2−アルキル−2−アダマンチルエステルの性状に応じて、カラムクロマトグラフィー、蒸留、再結晶等の方法によって精製すればよい。
【0032】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0033】
実施例1
攪拌機、塩化カルシウムを充填した200mlの4つ口フラスコに、44mlのメチルマグネシウムブロマイド(0.06mol)のテトラヒドロフラン溶液を加えた。室温、窒素雰囲気下で予めテトラヒドロフラン30mlに溶解させた、2−アダマンタノン7.5g(0.05mol)を反応液が40℃を超えないように滴下した。滴下終了後反応液を50℃で3時間攪拌した。反応をガスクロマトグラフィー(GC)で確認したところ、2−メチル−2−アダマンタノ−ルのマグネシウムブロマイド塩がほぼ100%生成していた。
【0034】
得られた2−メチル−2−アダマンタノ−ルのマグネシウムブロマイド塩のテトラヒドロフラン溶液を、室温まで冷却し、トリエチルアミン1.62g(0.016mol)を加えたのち、窒素雰囲気下でメタクリル酸クロライド6.90g(0.066mol)を反応液の温度が25℃となるように保ちながら滴下した。滴下終了後も25℃で攪拌を続けた。反応をGCで追跡したところ、3時間で反応がほぼ終了した(GC分析による2−メチル−2−アダマンタノ−ルマグネシウムブロマイド塩基準の転化率は、95.5%であった。)。反応液にイオン交換水1.25mlを加えて反応を停止し、重合禁止剤としてフェノチアジン0.02g加えて溶媒を減圧留去し、残渣にヘプタン75gを加え、1mol/lの塩化アンモニウム水溶液で洗浄した。さらに有機層を、10%水酸化ナトリウム水溶液、イオン交換水で洗浄した後、溶媒を減圧留去し、11.6gの2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート粗生成物(0.048mol、2−メチル−2−アダマンタノ−ルマグネシウムブロマイド塩換算での取得収率99.1%)を得た。この2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート粗生成物のGC分析を行なったところ、GCピーク面積基準の純度(以下、GC純度ともいう。)は93.1%であった。
【0035】
なお、GC純度93.1%という値は、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレートの純度としては高いものであり、用途によっては特に精製を行わずそのまま製品としてすることも可能である。
【0036】
実施例2〜7
実施例1において、メタクリル酸クロライドの添加温度及び反応温度を表1に示したように変えた以外は実施例1と同様に操作した。その結果を表1に示す。なお、表中の添加率は、GC分析による2−メチル−2−アダマンタノ−ルマグネシウムブロマイド塩基準の転化率を意味し、収率とは2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート粗生成物の収率を意味し、純度とはGCのピーク面積基準の純度を意味する(以下の表についても同様である)。
【0037】
【表1】
【0038】
実施例8〜9
実施例1において、表2に示した3級アミン化合物を用いた以外は実施例1と同様に操作した。その結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
実施例10〜11
実施例1において、表3に示した溶媒を用いた以外は実施例1と同様に操作した。その結果を表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
実施例12〜14
実施例1において、表4に示したカルボン酸ハライド化合物を用いた以外は実施例1と同様に操作した。その結果を表4に示す。
【0043】
【表4】
【0044】
実施例15
攪拌機、塩化カルシウムを充填した3リットル(l)の4つ口フラスコに、マグネシウム28.6g(1.18mol、2−アダマンタノンに対して1.1倍モル)、テトラヒドロフラン950mlを加えて攪拌した。室温、窒素雰囲気下で臭化メチル112g(1.18mol、2−アダマンタノンに対して1.1倍モル)を反応液が30℃以下となるように添加した。添加終了後25℃で3時間攪拌させ、メチルマグネシウムブロマイドを合成した。次に予め2−アダマンタノン160g(1.07mol)をテトラヒドロフラン460mlに溶解させた2−アダマンタノンのテトラヒドロフラン溶液を反応液が50℃を超えないように滴下した。滴下終了後反応液を50℃で3時間攪拌した。反応をGCで確認したところ、2−メチル−2−アダマンタノ−ルのマグネシウムブロマイド塩がほぼ100%生成していた。
【0045】
得られた2−メチル−2−アダマンタノ−ルのマグネシウムブロマイド塩のテトラヒドロフラン溶液を、室温まで冷却し、トリエチルアミン27.1g(0.27mol)を加えたのち、40℃に加温した後、窒素雰囲気下でメタクリル酸クロライド139.9g(1.34mol)を反応液の温度が45℃を超えないように滴下した。滴下終了後50℃で攪拌した。反応をGCで追跡したところ、3時間で反応がほぼ終了した(GC分析による2−メチル−2−アダマンタノ−ルマグネシウムブロマイド塩基準の転化率は、97.4%であった。)。反応液にイオン交換水25mlを加えて反応を停止し、重合禁止剤としてフェノチアジン0.5g加えて溶媒を減圧留去し、残渣にヘプタン750gを加え、1mol/lの塩化アンモニウム水溶液で洗浄した。さらに有機層を、10%水酸化ナトリウム水溶液、イオン交換水で洗浄した後、溶媒を減圧留去し、247.8gの2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート粗生成物(1.05mol、2−メチル−2−アダマンタノ−ルマグネシウムブロマイド塩基準で取得収率94.9%)を得た。この2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート粗生成物のGC純度は90.7%であった。
【0046】
得られた2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート粗生成物のうち50.2gを真空度0.3mmHgで減圧蒸留し、GC純度で98%以上の留分を集めたところ、GC純度98.4%の2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート38.0g(0.16mol、2−メチル−2−アダマンタノ−ルマグネシウムブロマイド塩換算の取得収率74.9%)を得ることができた。
【0047】
比較例1
攪拌機、塩化カルシウムを充填した200mlの4つ口フラスコに、44mlのメチルマグネシウムブロマイド(0.06mol)のテトラヒドロフラン溶液を加えた。室温、窒素雰囲気下で予めテトラヒドロフラン30mlに溶解させた、2−アダマンタノン7.5g(0.05mol)を反応液が40℃を超えないように滴下した。滴下終了後反応液を50℃で3時間攪拌した。反応をGCで確認したところ、2−メチル−2−アダマンタノ−ルのマグネシウムブロマイド塩がほぼ100%生成していた。
【0048】
得られた2−メチル−2−アダマンタノ−ルのマグネシウムブロマイド塩のテトラヒドロフラン溶液を、室温まで冷却し、窒素雰囲気下でメタクリル酸クロライド6.27g(0.06mol)を反応液の温度を25℃に保ちながら滴下した。滴下終了後も25℃で攪拌を続け、反応をGCで追跡したところ、2−メチル−2−アダマンタノ−ルマグネシウムブロマイド塩基準の転化率は、3時間で69.4%、15時間後で86.3%であった。反応液にイオン交換水1.25mlを加えて反応を停止し、重合禁止剤としてフェノチアジン0.02g加えて溶媒を減圧留去し、残渣にヘプタン75gを加え、1mol/lの塩化アンモニウム水溶液で洗浄した。さらに有機層を、10%水酸化ナトリウム水溶液、イオン交換水で洗浄した後、溶媒を減圧留去し、12.2gの2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート粗生成物(0.052mol、2−メチル−2−アダマンタノ−ルマグネシウムブロマイド塩基換算での取得収率104.3%)を得た。この2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート粗生成物のGC純度は77.1%であった。
【0049】
比較例1は実施例1及び4において3級アミン化合物を用いないで反応を行なった例である。実施例1及び5の結果に示されるように3級アミン化合物を共存させて反応を行なった場合の転化率は、3時間及び15時間後でそれぞれ95.5%及び98.1%であるのに対し、比較例1では15時間後の転化率が86.3%と低くなっている。また、同じようにして得た粗生成物の純度も比較例1では悪くなっている。このように、同一の反応系で比較した場合には、3級アミン化合物を共存させて反応させることにより転化率及び粗生成物の純度が向上することが分かる。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、2−アルキル−2−アダマンタノールのマグネシウムハライド塩とカルボン酸ハライド化合物とから高純度の2−アルキル−2−アダマンチルエステルを短時間で収率良く、しかも簡単な操作で得ることができる。
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