JP3948636B2 - 物体浮揚装置を具備した物体搬送装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は超音波の放射圧を利用して物体を空中に浮揚させる物体浮揚装置を具備した物体搬送装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の装置として、本願出願人に係る特開平7−187388号公報において開示されているものがあり、該公報の開示内容の一部である物体搬送装置を図10に示す。
【0003】
図示のように、当該物体搬送装置は、矩形板状に形成された振動体101と、この振動体101の長手方向一端側に設置されて該振動体101を励振する超音波励振手段130と、該超音波励振手段130とほぼ同様の構成を有して該振動体101の他端側に配置されたエネルギー変換手段131とを備えている。
【0004】
上記超音波励振手段130はホーン102を具備しており、上記振動体101は該ホーン102の先端に固着されている。
【0005】
なお、図において、ホーン102による超音波振動の方向を矢印Uにて示している。このように、ホーン102は縦振動を行う。振動体101の長さ(図の左右方向の寸法)及び幅(図で紙面に直角な方向の寸法)は、ホーン2から伝達される振動に基づく撓み振動の共振長に定められ、図で記号Tで示す撓み曲線のような振動をする。この撓み振動は振動体101の長さ方向及び幅方向において生じ、縞状の振動モードとなる。
【0006】
上記ホーン102は、振動体101に対する結合部とは反対側において振動子104と結合されている。この振動子104の電極104aと発振器105とが接続されており、振動子104は該発振器105によって駆動されて超音波振動を発する。ホーン102は、この振動子104が発する振動を機械的に増幅するものである。
【0007】
上記ホーン102にはフランジ部102bが形成されており、該ホーン102の下半部分及び上記振動子104を収容するケース106に対して、該フランジ部102bでパッキン102cを介して締結されている。
【0008】
一方、振動体101の他端側に配設されたエネルギー変換手段131は、搬送対象たる物体107を振動体101上で搬送させる搬送手段として作用するもので、超音波励振手段130により励振された振動体101が発する超音波のエネルギーを再び電気エネルギーに戻すべく変換する。
【0009】
具体的には、該エネルギー変換手段131が具備する振動子104の電極104aに、抵抗R及びコイルLからなる回路が接続されており、機械的エネルギーである超音波エネルギーより変換された電気エネルギーはこの回路を経ることによって更にジュール熱に変換され、放散される。
【0010】
上述した物体搬送装置においては、超音波励振手段130の作動によって振動体101が撓み振動を行い、該振動体101より音波が放射される。よって、物体107はこの音波の放射圧により振動体101上で僅かに浮揚する。
【0011】
この浮揚状態で上記エネルギー変換手段131が作動することによって、図で矢印Sにて示すように、振動体101に生ずる撓み振動の波が進行波となり、物体107はこの進行波に乗る状態にて搬送される。
【0012】
上記構成の物体搬送装置は、物体を完全に非接触の状態で搬送することが出来ると共に、次のような優位点を有する。
【0013】
▲1▼ 磁性体であるや否やなど、扱う物体の材質等の制約を受けることがなく、また、磁界中におくことができないもの等、あらゆる物体を搬送することができ、しかも、物体の重量及び寸法が比較的大きくとも対処可能である。
【0014】
▲2▼ 装置自体に関しては、実質的に、振動体とこれを励振する超音波励振手段を最小限設けるだけでよいから、小型化及びコストの低減が達成されると共に、消費電力も極めて少なくて済み、省エネルギー化に寄与する。
【0015】
▲3▼ 電気エネルギーを変換した音波の放射圧による浮揚作用であるため、作業者の安全性についても容易に確保し得ると共に、給電及びその断をなすことにより簡単に制御できる。
【0016】
上記した各優位点に鑑み、装置の実用化の一例として、液晶ディスプレイなどとして利用されるガラス基板やシリコンウェハーの搬送に利用することを考えている。何となれば、これらの品物は、その主たる面に対して塵埃(particle)が付着すること、および微細にても傷が発生することを可能な限り避けねばならないと同時に、磁場等に曝すことは厳禁とされる故である。
【0017】
ところで、近年、エレクトロニクス産業の発展に伴って上記ガラス基板及びシリコンウェハーの需要が増加し、その形状も大型化している。そこで、このような形状の大きい品物を搬送するためには、上述した物体搬送装置において振動体101を大きくすることが考えられ、実際に試作が行われた。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この試作装置による搬送実験の結果、下記の問題が判明した。
【0019】
まず、実用化を目指すことを前提とした該試作装置においては、図10及び図11に示すように、円錐(corn)状のホーン102によって略一点に集中して伝達される振動を幅広な振動体101の全幅に均一に伝える必要があることから、ホーン102と振動体101との間に副振動体111が介装された。この副振動体111とは、有限要素法解析で先端面が均一な振動分布になるように設計されたプレート状のホーンである。
【0020】
ところが、ホーン102からは縦振動のみが付与されるにも拘らず、この副振動体111のポアソン(Poisson)比の影響によって横方向の振動が誘起され、これによって振動分布が不均一になり、きれいな進行波を得ることが難しい。
【0021】
また、図11に示すように、上記横方向の振動を抑圧すべく副振動体111にスリット111aが形成されたが、その効果は充分ではない。反面、このスリット111aを設けたことによって、同図で破線の矢印E1 ,E2 にて示すように、振動体101の搬送経路中央部に対するとその両側部に対するとではエネルギーの伝達距離が大きく異なり、甚しい場合は正常な進行波(矢印W1 にて示す)とは逆向きに進む波(矢印W2 で示す)が両側で発生してしまい、振動体101の全幅にわたって同相の進行波を得ることは必ずしも容易ではない。
【0022】
他方、振動体101の大型化、すなわち、音波が放射される面積の増加によって、発生する音が大きくなり、この音を騒音レベル以下に抑えるための大掛りな遮音壁等を必要とし、コスト面から好ましくない。
【0023】
更に、大きな振動体101を振動させるためにはそのエネルギーのロスも大きく、この点、省エネルギー化の観点から解決されるべき問題となっている。
【0024】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであって、その主目的とするところは、形状の大きな物体を同相かつ均一な整った進行波に乗せて円滑に搬送することができ、また、遮音対策も無用か最小限で足り、しかも、エネルギーの利用効率が高い物体搬送装置を提供することである。
【0025】
また、本発明は、上記に加えて更に他の効果をも併せ奏し得る物体搬送装置を提供することも目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
上記主目的達成のために、本発明による物体搬送装置は、長手矩形板状の第1の振動体と第2の振動体とを進行方向に対して互いに平行に所定の距離離間させて配し、前記第1の振動体と第2の振動体の振動面を略同一平面に配し、前記第1の振動体と第2の振動体とを同時に励振する超音波励振手段と、物体を搬送させる搬送手段とを備え、前記第1の振動体の厚みは、物体搬送路の幅方向における中央側が厚肉に構成され、縁側が薄肉に構成されてなり、前記第2の振動体は前記前記第1の振動体と同一の構成を有し、前記第1の振動体と第2の振動体とは厚肉の中央側で対向し、前記第1の振動体と第2の振動体の放射圧は、物体搬送路の幅方向における両縁側が中央に比して大であるように設定され、
同時に励振される前記第1の振動体と第2の振動体との音波の放射圧により該振動体の表面上に被搬送物体を浮揚させ、搬送させるように構成されている。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明は、比較的大きな寸法のガラス基板やシリコンウェハー等を超音波の放射圧により浮揚させて搬送する場合に、整然とした進行波に乗せて搬送させると共に、騒音の発生とエネルギーの無駄な消費を極力抑えるために実施される。
【0028】
【実施例】
次に、本発明の実施例としての物体搬送装置を、添付図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1乃至図4に示すように、この本発明に係る物体搬送装置は、2基の搬送ユニット1を互いに平行に並べてなる。両搬送ユニット1は全く同様に構成されている故、以下、片方の搬送ユニット1の説明を以て双方の搬送ユニットの説明に代える。但し、両搬送ユニット1の各構成部分について、互いに対応するものには同じ参照符号を付して示している。
【0030】
図1乃至図4に示すように、搬送ユニット1は、長手矩形板状に形成された振動体3を有しており、2基の搬送ユニット1が夫々具備する該振動体3は、夫々の振動面が略同一平面となるように平行に配されている。該振動体3は、搬送されるべき物体7をその表面上で浮揚させるためのものである。この振動体3の長手方向両端部には、副振動体4が各々結合されている。該副振動体4は、後述する超音波励振手段が発する縦振動を該振動体3に対して該振動体3の厚み方向で伝達すべく介装されたものである。
【0031】
上記振動体3は、その材質としてジュラルミン等が選定され、寸法としては、一例として、長さL(図2参照)が1029mm、幅B(図2及び図5参照)が70mm、厚みt(図3及び図5参照)が3mmに設定されている。
【0032】
また、副振動体4としては、有限要素法解析で先端面が均一な振動分布になるように設計されたプレート状のホーンが用いられ、振動体3の端部に対して複数のねじ9(図1及び図2に図示)を用いて締結してある。但し、振動体3と副振動体4の結合は、このようにねじによる他、接着、ロウ付け、溶接等によってもよい。
【0033】
上記副振動体4は、その下端部にて略円錐型のホーン12の先端部に結合されている。該ホーン12に対する副振動体4の取付けに関しても、上記ロウ付けや溶接など、種々の手段が用いられる。該ホーン12は略円錐形状であるが故に、後述する振動子が発する振動を略一点に集中して伝達するが、副振動体4はこの集中する振動を振動体3の全幅に、すなわち物体搬送路の幅方向において均一に拡散して伝える作用をなす。
【0034】
上記のホーン12は、上記振動体3の両端部に対応して配設された2つの超音波振動発生部14が夫々具備するものである。図1及び図2から明らかなように、該超音波振動発生部14は、隣り合う2基の搬送ユニット1に関して2つずつ、合計4つ設けられており、これら4つの超音波振動発生部14は図7に示す発振器15と共に超音波励振手段を構成する。但し、上記した副振動体4も、この超音波励振手段に含まれる。続いて、該超音波振動発生部14について詳述する。
【0035】
図3に示すように、該超音波振動発生部14において、上記ホーン12は、副振動体4に対する結合部とは反対側、すなわち下端側において振動子16と結合されている。この振動子16の電極16aと上記発振器15(図7参照)とが接続(接続の形態は後述する)されており、振動子16は該発振器15によって駆動されて超音波振動を発生する。ホーン12は、この振動子16が発する振動を機械的に増幅するものである。
【0036】
なお、図3において、ホーン12による超音波振動の振動方向を矢印Uにて示している。このように、ホーン12は縦振動を行う。
【0037】
また、上記ホーン12にはそのノーグルポイント部にフランジ部12bが形成されており、該ホーン12の下半部分と上記振動子16を収容するケース18に対して、該フランジ部12bにてパッキン12cを介して締結されている。
【0038】
かかる構成の物体搬送装置においては、上記ホーン12を通じて伝達される縦振動に基づき、振動体3がその長さ方向及び幅方向で撓み振動をする。すなわち、平面的には縞状の振動モードとなる。具体的には、駆動周波数は19.51kHzに設定され、該ホーン12の先端に締着したねじ9(図1及び図2参照)の頭部に10μmp−p程度の振動振幅がのせられる。
【0039】
ここで、平行に2基設けられた搬送ユニット1が各々具備する振動体3の形状について詳述する。
【0040】
図1乃至図6に示すように、両振動体3は長尺の矩形板状に形成され、特に図5及び図6から明らかなように、各々外側にして下面側にほぼ全長にわたって断面矩形状の切欠部3aが形成されている。但し、この切欠部3aは、副振動体4との結合部にまでは及んでいない。
【0041】
上記切欠部3aを形成したことにより、両振動体3は、物体搬送路の中央及びその両側に対応する各部位が夫々、厚肉部3b及び薄肉部3cとなっている。すなわち、両振動体3はその厚みが、物体搬送路の幅方向における中央から両縁側に向って段階的に小さくなるように変化している。この変化は、このように段階的に限らず、連続的、すなわちテーパ状に形成することによってもよい。
【0042】
図5において、上記切欠部3aの深さと幅は各々、0.2mm、20mmに設定されている。従って、振動体3の上記厚肉部3bの厚みは3mm(=t:前述)、幅は50mm(=B−20:〔B=70mm:前述〕)である。
【0043】
また、薄肉部3cの厚みは2.8mm(=3−0.2)、幅は20mmである。
【0044】
次に、当該物体搬送装置が備える2基の搬送ユニット1(図1等参照)について、図7に示す発振器15との接続の構成を説明する。
【0045】
なお、図7に示すように、この発振器15にはプラスの端子15aとマイナスの端子15bが各々2つずつ設けられ、このプラス及びマイナスで1組とされる端子が2基の搬送ユニット1の夫々に対して接続される。双方の搬送ユニット1と発振器15との接続は全く同様になされる故、図では1基の搬送ユニット1と発振器15に関する接続のみを示し、以下、これを説明し、他方の搬送ユニットとの接続状態の図示、説明は省略する。
【0046】
図7において、両振動子16が並列に設けられ、共に陰極が接地されている。同様に発振器15についても陰極が接地されている。発振器15の陽極はリレー21のスイッチ21aに接続されている。このリレー21の一方の端子21bは他のリレー22の一方の端子22bと共に片方の振動子16の陽極に接続されている。
【0047】
また、リレー21の他方の端子21cは該リレー22の他方の端子22cと共に他方の振動子16の陽極に接続されている。このリレー22のスイッチ22aには、並列に設けられた負荷抵抗R及び整合用インダクタンス(コイル)Lの各一端が接続され、該負荷抵抗R及びインダクタンスLの他端は接地されている。そして、図示のように、両リレー21及び22の各スイッチ21a,22aは互いに連動するようになされている。本例では、該負荷抵抗Rは300Ω、インダクタンスLは4.81mHとなされ、上記発振器15については55W〜85Wとされている。
【0048】
上記各スイッチ21a及び22aの切替えは、図1に示した2つのフォトセンサ24及び25から発せられる検知信号に基づいて行われる。これらのフォトセンサ24,25は夫々いわゆる反射型のもので、発光素子と受光素子とを内蔵し、該発光素子から発せられた照射光が搬送中の物体7の表面で反射し、この反射光が該受光素子に入射することによって該受光素子が上記検知信号としての受光出力を発する。
【0049】
なお、図1から明らかなように、上記両フォトセンサ24及び25は、振動体3による物体搬送路の搬送方向端よりも所定距離だけ手前側に配設されている。
【0050】
次に、上記した構成の物体搬送装置の動作を説明する。
【0051】
まず、図7において、両リレー21及び22の各スイッチ21a,22aが同図に示すように該両リレーの端子21c,22bに夫々接触している場合、一方の振動子16(図3も参照)が発振器15によって励振される。但し、図7には、前述したように片方の搬送ユニット(1:図1等参照)の作動部分のみが示されており、この振動子の励振は他方の搬送ユニットの作動部分(図示せず)においても同時に行われる。
【0052】
上記のように一方の振動子16が励振されることによって、両振動体3(図1等参照)が縞状振動モードにて振動を行い、該両振動体3の表面から音波が放射される。この状態で、図1乃至図4に示すように該両振動体3上に物体7が供給されると、該物体7はこの音波の放射圧によって該振動体3の表面から距離e1 (図3に図示)を隔てた状態で浮揚する。
【0053】
図7に示す一方の振動子16(図3も参照)の振動によって物体7が上述のように振動体3上で浮揚するのと同時に、該振動体3の振動は同じく図7(図3も参照)に示す他の振動子16に伝わって、該振動子16によって機械的エネルギーである超音波エネルギーが電気エネルギーに変換される。この電気エネルギーは、図7に示す負荷抵抗R及びインダクタンスLからなる回路を経ることによって更にジュール熱に変換され、放散される。これにより、両振動体3に生ずる振動の波が進行波となり、物体7はこの進行波に乗る状態で矢印G(図1及び図3参照)にて示すように一方向へと搬送される。
【0054】
なお、上記エネルギー変換に関しては、詳しくは、電気エネルギーは負荷抵抗Rにてジュール熱に変換されて消費され、インダクタンスLはエネルギー変換の整合作用をなすもので、効率が最も大きくなる値に設定されている。
【0055】
上記のようにして物体7が矢印G方向に搬送されると、図1に示す2つのフォトセンサ24及び25による検知位置を次々と通過することになる。この場合、これら2つのフォトセンサ24及び25の両者から物体7の通過を示す検知信号が順に発せられる。マイクロプロセッサ等からなって当該物体搬送装置の作動制御を司る制御部(図示せず)は、これらフォトセンサ24,25からの各検知信号の順番によって物体の搬送方向を確認することができる。そして、該制御部は、これらのフォトセンサ24,25からの検知信号が共に得られたならば、図7に示した両リレー21及び22の各スイッチ21a,22aを切り替える。
【0056】
両リレー21,22の各スイッチ21a,22aが切り替えられて該両リレーの他方の端子21b,21cに夫々接触すると、進行波の向きが逆となり、物体7は減速して停止し、直ちに上記矢印G方向とは逆の方向に搬送される。この方向転換時、物体7はその慣性によって、停止までにある距離を走ることとなる。前述したように、上記両フォトセンサ24及び25を物体搬送路の搬送方向端よりも所定距離だけ手前側に配置したのはこのためである。これによって、物体7が物体搬送路をその慣性により行き過ぎて脱落することが防止される。
【0057】
上記から明らかなように、図7において、一方の振動子16が超音波エネルギーを発しているときに、他方の振動子16は、インダクタンスL及び負荷抵抗Rからなる回路と協働して該超音波エネルギーを電気エネルギーに変換して音波を進行波とするエネルギー変換手段として作用する。このエネルギー変換手段が、物体7を搬送させる搬送手段となる。
【0058】
なお、物体7を搬送させる搬送手段としては、上記のようなエネルギー変換手段に限らず、例えば、当該物体搬送装置全体を傾斜せしめて重力の作用によって搬送する方式や、圧搾空気を物体7の後から吹き付ける方式等、種々の構成のものが適用可能である。すなわち、物体7に推力を付与させればよい訳である。
【0059】
本実施例においては、上述のように、振動体3の長手方向両端に対応して2台の超音波振動発生部14(図1など参照)を配設し、該両超音波振動発生部14が発する超音波エネルギーについて選択的にエネルギー変換を行うことにより、物体7を往復搬送させることが可能となっている。
【0060】
なお、上記は、単に物体7の往復動についての説明であるが、物体7を所望の位置に停止させる場合、次のような制御が行われる。
【0061】
すなわち、一方向に向って搬送されている物体7について、その搬送の慣性力を打ち消すように上記のスイッチ21a,22aを切り替え、停止するまで逆方向の進行波を生じさせる。そして、物体7が停止したら、受動側すなわちエネルギー消費側の端子をオープン状態にし、定在波振動モードにするか、あるいは、駆動側である超音波振動発生側の駆動周波数をそれまでとは異なる共振点に変化させ、浮揚状態を保ったまま完全に停止させる。
【0062】
ところで、当該物体搬送装置においては、下記の構成によって、物体搬送路側方への物体7の逸脱が防止されている。
【0063】
すなわち、前述したように、両振動体3が、物体搬送路の中央及びその両側をなす厚肉部3bと薄肉部3cとを有している。つまり、両振動体3の厚みが、物体搬送路の幅方向における中央から両縁側に向って漸次変化、具体的には漸次小となるように設定されている。
【0064】
かかる構成を採用したことにより、図6にて多数の矢印で示すように、両振動体3が発する音波の放射圧は、物体搬送路の幅方向における両縁側が中央に比して大となる。
【0065】
この構成によれば、搬送中の物体7には、これを物体搬送路の中央に留めようとする力が常に作用し、該物体7が物体搬送路から側方に逸脱しようとすると該物体搬送路の両縁側の大きな放射圧により中央側へと押し戻される。よって、物体7は逸脱することなく物体搬送路の中心30(図2に図示)に沿って確実に搬送される。
【0066】
このような逸脱防止作用は、本実施例のように、物体搬送路の幅方向において振動体3の厚みに変化をもたせること等によって比較的簡単に実施できるからコストが安く済むものであり、しかも、当該物体搬送装置の構造の簡略化と小型化も併せて達成され、実用上非常に有効である。
【0067】
以上から明らかなように、当該物体搬送装置においては、複数、この場合2枚の振動体3をその各々の振動面が略同一平面となるように平行に配している。
【0068】
かかる構成によれば、個々の振動体3の幅寸法B(図2等参照)は小さくて済み、例えば副振動体4に関して言うなら、該副振動体4も幅の狭いものとなるからそのポアソン比やエネルギー伝達距離の相違等、振動体3の振動態様に悪影響を及ぼす因子は抑えられ、その結果、同相にして振動分布が均一な整った進行波が得られて物体7の搬送を円滑に行うことができる。
【0069】
より具体的には、各振動体3の幅寸法B(本実施例で70mmとしている)は、ホーン12より該振動体3の厚み方向に付与される縦振動の1波長の1/3以下に設定することにより、理想に近い結果が得られている。
【0070】
また、本発明に係る上記の構成では、1枚の振動体3とその励振をなすための超音波振動発生部14(振動子16を含む)とを1つのユニット(本実施例における各搬送ユニット1に相当)として製作すれば、このユニットの数を必要に応じて2基、3基、4基、…と適宜増やすことによって、かなり大きな物体まで広範な種類の物体に対処し得、汎用性に優れる。
【0071】
更に、本発明のように、幅の狭い振動体3を並設する構成では、その全体として発生する音のレベルも低くなり、遮音対策は不必要か、設けるとしても小規模のもので充分であり、コストが安く済む。
【0072】
また、幅の狭い振動体3では、消費する電力、すなわちエネルギーのロスも少なく、エネルギー利用効率が高い。
【0073】
なお、本実施例では、上述した如きユニット化を図るために、各振動体3に対して個別に超音波振動発生部14(振動子16を含む)を設けているが、これら2枚の振動体3を共通の超音波振動発生部によって励振させるようにしてもよい。
【0074】
ここで、前述した構成の物体搬送装置を使用して行った物体搬送実験の結果について説明する。
【0075】
<単位面積当たりの重量と浮揚距離との関係>
1枚の幅が70mmの振動板(前記振動体3)をレールのように2つ並列に並べ、駆動側のホーン振動振幅を互いに10μmp-p 一定に保ち、アクリル板(160×160×板厚2mm、重量63.6g)及び、8インチシリコンウエハー(54.79g)を浮揚させ、駆動側のネジの近傍で浮揚距離を測定した結果を図8に示す。
【0076】
振動板の間隔を20mm〜70mm(最大幅160mm〜210mm)に広げることで、物体が音波を直接受ける部分の底面積が変化し、単位底面積当たりにかかる重量が変化するので、これをパラメータにして浮揚距離を測定した。図8から浮揚距離は、物体の単位底面積当たりの重量のほぼ−1乗に比例することが判明した。
【0077】
<振動板の幅と搬送速度の関係>
次に同じように、振動板の間隔を20mm〜70mm(最大幅160mm〜210mm)に広げることで、単位底面積当たりにかかる重量を可変させ、同物体の平均搬送速度を測定した結果を図9に示す。
【0078】
搬送速度は単位底面積当たりの重量に反比例することが確認出来た。また、浮揚に寄与する部分の底面積を変化させた場合、浮揚距離は大きく変化したが、平均搬送速度の変化率は少ないことが明らかになった。
【0079】
<まとめ>
進行波を励振させたたわみモード振動板を2枚用いて、非接触で大きい形状の物体を搬送する装置を試作した。その結果、次のことが明らかになった。
▲1▼振動板を2枚並列に用いることにより、振動板の幅より大きな形状の物体の非接触搬送が可能であること。この結果から、さらに大きな形状の物体を非接触搬送させる場合は、3連、4連と振動板を複数用いればよいこと。
▲2▼浮揚距離は、浮揚物体の単位底面積あたりの重量の−1乗に比例すること。
▲3▼搬送速度は、浮揚物体の単位底面積あたりの重量に反比例すること。
▲4▼最も安定した搬送が得られるのは、2つの振動板の幅と浮揚物体の幅が一致した場合であること。
【0080】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明による物体搬送装置においては、複数の振動体をその各々の振動面が略同一平面となるように平行に配している。
かかる構成によれば、個々の振動体の幅寸法は小さくて済み、例えば副振動体におけるポアソン比やエネルギー伝達距離の相違等、振動体の振動態様に悪影響を及ぼす因子は抑えられ、その結果、同相にして振動分布が均一な整った進行波が得られて物体の搬送を円滑に行うことができる。
また、この構成では、1つの振動体とその励振をなすための超音波振動発生部とをユニット化すれば、該ユニットの数を必要に応じて増やすことによって、かなり大きな物体まで広範な種類の物体に対処し得、汎用性が高い。
更に、本発明のように、幅の狭い振動体を並設する構成では、その全体として発生する音のレベルも低くなり、遮音対策は不必要か、設けるとしても小規模のもので充分であり、コストが安く済む。
また、幅の狭い振動体では、消費する電力、すなわちエネルギーのロスも少なく、エネルギー利用効率が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の実施例としての物体搬送装置の要部の、一部断面を含む斜視図である。
【図2】図2は、図1に示した物体搬送装置の平面図である。
【図3】図3は、図1及び図2に示した物体搬送装置の、一部断面を含む正面図である。
【図4】図4は、図2に関するA−A矢視図である。
【図5】図5は、図3に関するC−C矢視図である。
【図6】図6は、図1乃至図3に示した物体搬送装置の一部の拡大図である。
【図7】図7は、図1乃至図3に示した物体搬送装置が具備するエネルギー変換部の回路図である。
【図8】図8は、本発明に係る物体搬送装置を用いて行われた搬送実験の結果を示すグラフである。
【図9】図9は、本発明に係る物体搬送装置を用いて行われた搬送実験の結果を示すグラフである。
【図10】図10は、従来の物体搬送装置の、一部断面を含む正面図である。
【図11】図11は、図10に示した物体搬送装置の一部を拡大した斜視図である。
【符号の説明】
1 搬送ユニット
3 振動体
4 副振動体
7 物体
12 ホーン
14 超音波振動発生部
15 発振器
16 振動子
21,22 リレー
Claims (1)
- 長手矩形板状の第1の振動体と第2の振動体とを進行方向に対して互いに平行に所定の距離離間させて配し、前記第1の振動体と第2の振動体の振動面を略同一平面に配してなる物体搬送装置において、
前記第1の振動体と第2の振動体とを同時に励振する超音波励振手段と、
物体を搬送させる搬送手段とを備え、
前記第1の振動体の厚みは、物体搬送路の幅方向における中央側が厚肉に構成され、縁側が薄肉に構成されてなり、前記第2の振動体は前記前記第1の振動体と同一の構成を有し、前記第1の振動体と第2の振動体とは厚肉の中央側で対向し、
前記第1の振動体と第2の振動体の放射圧は、物体搬送路の幅方向における両縁側が中央に比して大であるように設定され、
同時に励振される前記第1の振動体と第2の振動体との音波の放射圧により該振動体の表面上に被搬送物体を浮揚させ、搬送させること
を特徴とする物体搬送装置。
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