JP3931552B2 - 物体浮揚搬送装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば音波等の放射圧を用いて物体を浮揚状態で搬送する物体浮揚搬送装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の物体浮揚搬送装置は、例えば特開平7−137824号公報、特開平9−202425公報等に開示されている。これらの装置では長尺の平板状の振動板を使用し、浮揚させるべき物体の前記振動板の表面と対向する面を平面とし、振動板の振動による音波の放射圧により物体が浮揚する。また、浮揚した物体に空気を噴射したり、前記振動板で進行波を発生させて浮揚した物体を移動させることにより、物体を浮揚状態で搬送する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
長尺の振動板を使用すると撓みが大きくなり、振動板の端部と中央付近で高さが変化し、物体を安定した浮揚状態で搬送するのが困難になる。振動板を励振させる振動子の配置間隔を短くすれば撓みが小さくなるが、振動子の数が増えてコストが高くなる。また、複数平行に配置した振動板で物体を搬送する構成とした場合は、各振動板の撓み状態が異なることにより物体の浮揚状態が不安定になり易い。
【0004】
本発明は前記の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は長尺の振動板を使用して物体を浮揚状態で搬送する際、簡単な構成で振動板の撓みを抑制して物体を安定した浮揚状態で搬送できる物体浮揚搬送装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、長尺の振動板を励振手段で励振させて、振動板からの音波の放射圧により物体を浮揚状態で搬送する物体浮揚搬送装置であって、前記振動板の中間部において振動板の下面と当接して該振動板の撓みを抑制する撓み抑制部材を設けるとともに、前記撓み抑制部材と前記振動板との当接部近傍に吸気装置を設けた
【0006】
従って、この発明では、撓み抑制部材が振動板の中間部において振動板の下面に当接することにより、振動板の撓みが抑制される。その結果、物体が安定して浮揚状態で搬送される。また、振動板との当接の繰り返しにより塵埃が発生しても吸気装置に吸引される。その結果、物体の搬送環境のクリーン度が低下するのが防止される。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記撓み抑制部材は前記振動板に対して振動の小さな位置で当接するように配設されている。従って、この発明では、振動の大きな箇所で振動板に繰り返し当接する場合に比較して、撓み抑制部材が振動板から受ける衝突の力が弱くなり、摩耗の進行が抑制される。そのため、衝突に伴う騒音が低減されるとともに、所望の振動への悪影響が少なくなる。
【0009】
請求項に記載の発明では、請求項1又は請求項に記載の発明において、前記振動板は複数平行に設けられている。この発明では、幅の広い物体を複数の振動板で安定して搬送できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図1及び図2に従って説明する。
図1に示すように、物体浮揚搬送装置1は平行に配設された複数(この実施の形態では2個)の長尺の振動板2a,2bを備えている。両振動板2a,2bは同じ大きさの矩形平板状に形成され、搬送すべき物体3を両者で共同して浮揚保持可能になっている。各振動板2a,2bには励振手段を構成するホーン4a,4bが、その先端において図示しないネジにより締結されている。ホーン4a,4bは偏平なほぼ直方体状に形成され、各振動板2a,2bに対してその長手方向両端部において長手方向と直交する状態で取付けられている。
【0011】
各ホーン4a,4bは振動板2a,2bが締結される面の反対側の面において振動子5に固定されている。ホーン4a,4bの先端面は振動子5の軸方向と直交する平面に形成され、ホーン4a,4b及び振動子5の中心軸が鉛直方向に延びる状態で配置されている。
【0012】
振動子5には所謂ランジュバン形振動子が使用され、一対のリング状のピエゾ素子6a,6bと、ピエゾ素子6a,6b間に配置されたリング状の電極板7と、ピエゾ素子6a,6bの外側面と当接する位置に配置された金属ブロック8a,8bとを、図示しないボルトによって締め付け固定することにより構成されている。ボルトは金属ブロック8aに形成された図示しないねじ穴に、金属ブロック8b側から螺合されている。両金属ブロック8a,8bはボルトを介して互いに導通された状態となっている。
【0013】
各振動板2a,2bの一端側に締結されたホーン4aを励振させる振動子5はそれぞれ発振器9に接続されている。電極板7は配線10aを介して発振器9と接続され、発振器9の接地端子が配線10bを介して金属ブロック8bに接続されている。ホーン4a,4b、振動子5、発振器9により各振動板2a,2bを励振させる励振手段が構成されている。
【0014】
各振動板2a,2bの他端側に締結されたホーン4bを励振させる振動子5は、抵抗R及びコイルLからなるエネルギー変換手段としての負荷回路11にそれぞれ接続されている。
【0015】
各振動板2a,2bの下方には、振動板2a,2bの中間部(この実施の形態ではほぼ中央部)と対向する位置に撓み防止装置12が配設されている。図2(a)に示すように、撓み防止装置12は、筒状の支持部材13と、その上部に取り付けられた吸気装置としての吸気ノズル14と、吸気ノズル14内に配設された撓み抑制部材15とを備え、支持部材13が図示しないブラケットを介して図示しないベースプレートの所定位置に固定されている。支持部材13はパイプ16を介して図示しない負圧源に接続されている。
【0016】
吸気ノズル14は基端内側に雌ねじ部が形成され、該雌ねじ部において支持部材13の上部に突設された雄ねじ部13aに螺合されている。そして、雄ねじ部13aの雌ねじ部への螺入量を調整することにより吸気ノズル14の高さが調整可能となっている。吸気ノズル14は先端側がロート状に拡径されている。
【0017】
撓み抑制部材15は棒状に形成され、吸気ノズル14の中心部に沿って延びるとともに、先端が吸気ノズル14から突出するように形成されている。図2(b)に示すように、吸気ノズル14の内部には支持壁17が吸気ノズル14の軸方向と直交する状態で形成されている。支持壁17には吸入された塵埃をパイプ16へ排出するための円弧状の長孔17aが形成されるとともに、その中央に撓み抑制部材15の基端が突設されている。撓み抑制部材15の先端は半球状に形成されるとともに、摩擦抵抗の小さな材質(例えば、テフロン)で被覆されている。
【0018】
撓み抑制部材15は振動板2a,2bに対して、振動の小さな位置で当接するように配設されている。この位置は、支持部材13の固定位置を決める際、振動板2a,2bを励振させた状態で、撓み抑制部材15を当接させてその振動が小さな位置を探して決定する。
【0019】
次に前記のように構成された装置の作用を説明する。
振動子5が所定の共振周波数(例えば、20kHz前後)で励振され、ホーン4a,4bが縦振動してホーン4a,4bを介して振動板2a,2bが励振されて撓み振動を行う。振動板2a,2bから放射される音波の放射圧によって、物体3は振動板2a,2bの表面から浮揚する。浮揚距離は例えば数10〜数100μmである。
【0020】
振動板2a,2bの振動は負荷回路11に接続された振動子5に伝達され、振動子5を構成するピエゾ素子6a,6bにより機械エネルギーである振動のエネルギーが電気エネルギーに変換される。この電気エネルギーが負荷回路11の抵抗Rでジュール熱に変換されて放散される。そのため、各振動板2a,2bに生じる振動の波が一方向へ進む進行波(この実施の形態ではホーン4a側からホーン4b側へ進む進行波)となり、物体3は振動板2a,2bの一端側から他端側へ浮揚状態で搬送される。搬送の停止は発振器9の駆動を停止することにより行われる。
【0021】
各振動板2a,2bは長尺のため、撓み防止装置12がないと図2に鎖線で示すように大きく撓み、物体3が進行波によって振動板2a,2bの一端から中央に向かって搬送される際は、その姿勢が前下がりとなり、中央から他端に向かって搬送される際は、前上がりとなる。その結果、浮揚状態での搬送が不安定となる。しかし、各振動板2a,2bのほぼ中央に振動板2a,2bの水平度の調整が可能な撓み防止装置12が配設されているため、各振動板2a,2bの撓みが抑制され、物体3はほぼ水平状態で振動板2a,2bの一端から他端まで安定した浮揚状態で搬送される。
【0022】
この実施の形態では以下の効果を有する。
(1) 長尺の振動板2a,2bの中間部において振動板2a,2bの下面と当接して該振動板2a,2bの撓みを抑制する撓み抑制部材15を設けた。従って、振動板2a,2bの撓みが抑制され、物体3を安定した浮揚状態で搬送することができる。
【0023】
(2) 撓み抑制部材15は振動板2a,2bに対して振動の小さな位置で当接するように配設されている。従って、振動の大きな箇所で振動板2a,2bに繰り返し当接する場合に比較して、撓み抑制部材15が振動板2a,2bから受ける衝突の力が弱くなり、摩耗の進行が抑制される。
【0024】
(3) 撓み抑制部材15と振動板2a,2bとの当接部近傍に、吸気ノズル14が設けられている。従って、振動板2a,2bとの当接の繰り返しにより塵埃が発生しても吸気ノズル14に吸引され、物体3の搬送環境のクリーン度が低下するのを防止することができる。
【0025】
(4) 各振動板2a,2bと当接する撓み抑制部材15側を振動板2a,2bより摩耗し易くしたため、振動板2a,2bは殆ど摩耗せず、振動板2a,2bの摩耗の進行で耐久性が悪化することはない。
【0026】
(5) 吸気ノズル14は先端側が拡径された形状に形成されているため、撓み抑制部材15と振動板2a,2bとの当接の繰り返しにより発生する塵埃を効率良く吸収できる。
【0027】
(6) 振動板2a,2bが複数平行に設けられているため、幅の広い物体3を複数の振動板2a,2bで安定した浮揚状態で搬送できる。
(7) 撓み抑制部材15が高さ調整可能に設けられているため、組み付け時に撓み抑制部材15と振動板2a,2bとの距離を適正な値に調整することができる。また、長期使用によって撓み抑制部材15が摩耗した場合に、先端の位置を適正位置に簡単に調整できる。
【0028】
実施の形態は前記に限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
○ 振動板2a,2bに進行波を発生させる構成に代えて、定在波を発生させる構成としてもよい。例えば、図3に示すように、振動板2a,2bの他端側に設けられた振動子5は発振器9にも負荷回路11にも接続しない構成とする。そして、振動板2a,2bに浮揚保持された物体3に対してエアを噴射するノズル18を振動板2a,2bに沿って所定間隔で配置して物体3を搬送するようにしてもよい。
【0029】
○ 吸気装置(吸気ノズル14)を設けずに、図3に示すように、撓み抑制部材15を振動板2a,2bと当接する位置に配置してもよい。この場合も撓み抑制に関しては同様の効果を発揮する。
【0030】
○ 吸気ノズル14の雌ねじ部を支持部材13の雄ねじ部13aに螺合させる構成に代えて、支持部材13の上部に雌ねじ部を形成するとともに、吸気ノズル14の下部にその雌ねじ部に螺合する雄ねじ部を形成する。そして、前記雄ねじ部の螺入量を変更してし、吸気ノズル14の高さ即ち撓み抑制部材15の高さ調整を可能にしてもよい。
【0031】
○ 吸気ノズル14の下端をねじ部のないの筒部に形成するとともに、筒部の壁にねじ孔を形成する。そして、その筒部を支持部材13に形成された筒部に嵌合し、所望の位置において前記ねじ孔に螺合された止めねじで吸気ノズル14を支持部材13に固定する構成としてもよい。
【0032】
○ 吸気装置は撓み抑制部材15を囲繞する吸気ノズル14に限らず、撓み抑制部材15と別体に形成されたノズルを、撓み抑制部材15と振動板2a,2bとの当接部近傍に配設してもよい。
【0033】
○ 撓み抑制部材15をばね等の付勢手段で、振動板2a,2b側に押圧付勢した構成としてもよい。この場合、撓み抑制部材15の先端が振動板2a,2bに常に当接した状態に保持されるため、撓み抑制部材15の先端と振動板2a,2bとの衝突が繰り返される構成に比較して、当接部が摩耗し難くなる。
【0034】
○ 進行波を利用して物体3を浮揚状態で搬送する装置において、各振動板2a,2bの両端に設けられた振動子5をそれぞれ発振器9と負荷回路11とに選択的に切り換え接続可能に構成する。この場合、発振器9に接続された状態と、負荷回路11に接続された状態との切換を行うことにより、物体3の搬送方向を選択することができる。
【0035】
○ 振動板2a,2bの数は2個に限らず、幅が広い物体3を浮揚搬送する場合、振動板2a,2bの間にさらに振動板を平行に配置してもよい。間に配置する振動板は必ずしも進行波を発生する構成とする必要はなく、定在波を発生する構成としてもよい。この場合、物体3の重さによる物体3自身の撓みが抑制され、物体3を円滑に浮揚状態で搬送できる。
【0036】
○ 複数の振動板2a,2bで物体3を浮揚保持する構成に代えて、1個の振動板で物体3を浮揚保持する構成としてもよい。
○ 搬送距離が長い場合は、複数の物体浮揚搬送装置を直列に配設して物体浮揚搬送装置を構成してもよい。
【0037】
○ 各振動子5の発振器9を共通にしてもよい。
○ ホーン4a,4bの形状は扁平な直方体状に限らず、円柱状やほぼ円錐台状等先端側が細くなった形状としてもよい。
【0038】
○ 浮揚保持する物体3の形状は矩形等の四角形に限らず、三角形や他の多角形あるいは円形等任意の形状としてよい。
○ 振動板2a,2bのホーン4a,4bへの固定はネジによる締結に限らず、接着剤を使用したり、ロウ付けや溶接で固着してもよい。
【0039】
○ 振動子5はランジュバン形振動子に限らず他の振動子を使用してもよい。
前記実施の形態から把握される技術思想について、以下に記載する。
【0040】
(1) 請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の発明において、物体浮揚搬送装置は前記各振動板から進行波を発生するように構成されている。
(2) 請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の発明において、物体浮揚搬送装置は前記各振動板から定在波を発生するように構成され、浮揚状態の物体に推進力を与える推進力付与手段を備えている。
【0041】
(3) 請求項に記載の発明において、前記吸気装置は吸気ノズルを備え、前記撓み抑制部材は先端が前記吸気ノズルから突出する状態で前記吸気ノズル内に収容された状態で設けられている。
【0042】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項に記載の発明によれば、長尺の振動板を使用して物体を浮揚状態で搬送する際、簡単な構成で振動板の撓みを抑制して物体を安定した浮揚状態で搬送できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 一実施の形態の物体浮揚搬送装置の模式斜視図。
【図2】 (a)は撓み防止装置の正面図、(b)は吸気ノズルの平面図。
【図3】 別の実施の形態の物体浮揚搬送装置の模式正面図。
【符号の説明】
1…物体浮揚搬送装置、2a,2b…振動板、3…物体、4a,4b…励振手段を構成するホーン、5…同じく振動子、9…同じく発振器、14…吸気手段としての吸気ノズル、15…撓み防止部材。

Claims (3)

  1. 長尺の振動板を励振手段で励振させて、振動板からの音波の放射圧により物体を浮揚状態で搬送する物体浮揚搬送装置であって、前記振動板の中間部において振動板の下面と当接して該振動板の撓みを抑制する撓み抑制部材を設けるとともに、前記撓み抑制部材と前記振動板との当接部近傍に吸気装置を設けた物体浮揚搬送装置。
  2. 前記撓み抑制部材は前記振動板に対して振動の小さな位置で当接するように配設されている請求項1に記載の物体浮揚搬送装置。
  3. 前記振動板は複数平行に設けられている請求項1又は請求項2に記載の物体浮揚搬送装置
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