JP3928343B2 - 物体浮揚装置の制御方法及び物体浮揚装置 - Google Patents

物体浮揚装置の制御方法及び物体浮揚装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば音波等の放射圧を用いて物体を浮揚させる物体浮揚装置の制御方法及び物体浮揚装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
物体を空中に浮揚させる物体浮揚装置として、振動手段により振動される振動体の音波の放射圧により振動体の表面上において物体を浮揚させる物体浮揚装置が特開平7−24415号公報、特開平7−137824号公報、特開平9−202425公報等に開示されている。これらの装置では平板状の振動体を使用し、浮揚させるべき物体の前記平板状の振動体の表面と対向する面を平面とし、振動体の振動による音波の放射圧により物体が浮揚する。また、浮揚した物体に空気を噴射したり、前記振動体で進行波を発生させて浮揚した物体を移動させる物体搬送装置も開示されている。
【0003】
また、物体を浮揚状態で搬送する方法として、台車に前記浮揚装置を装備して浮揚装置を移動させる方法がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
浮揚させる物体が板状で面積が広い場合、物体を安定した状態で浮揚させるには、複数の振動板で物体に放射圧を作用させるのが好ましい。しかし、単純に複数の振動板に縦振動を発生させた場合、物体を所定の位置に保持する作用が不十分で、横方向から僅かな力が作用するだけで物体の位置ずれが発生する。また、各振動体を振動させる励振手段による振動力にばらつきがあると物体が水平方向に移動して振動体と対応する位置からずれる。従って、物体を浮揚状態で保持するタイプの物体浮揚装置では、ずれを放置すると物体が物体浮揚装置から落下する。また、長尺の振動体に進行波を発生させて浮揚した物体を移動させる装置では、物体が蛇行したり装置から落下するという問題がある。
【0005】
そのため、水平方向への移動を規制するガイドあるいは規制部材が必要となる。しかし、ガイド等を設ける場合、長尺の振動体を使用して物体を浮揚搬送する装置では大掛かりなガイドが必要になり、製造コストが高くなる。また、物体を浮揚状態で保持するタイプの物体浮揚装置では、物体を物体浮揚装置から移載する際にガイドが邪魔になるという問題がある。
【0006】
特開平特開平9−202425公報には物体搬送装置の搬送路の搬送方向端に物体が近づいたことを検知するフォトセンサを設け、その検知信号に基づいて搬送を停止させたり、搬送方向を転換させることが開示されている。しかし、フォトセンサで物体の位置を検知して物体が搬送経路からはみ出さないようにするには、長い搬送経路に沿って多数のセンサを設けることが必要となる。
【0007】
本発明は前記の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は複数の振動体を使用して物体を浮揚させる場合、ガイドや規制部材あるいは多数のセンサを設けずに、物体を所定範囲に保持することができる物体浮揚装置の制御方法及び物体浮揚装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願発明者等は、振動体を振動子で振動させる場合、物体の有無及び物体の位置のずれによって、振動体を振動させる振動系のインピーダンスが変化することに着目して、前記の目的を達成する本願発明を完成した。
【0009】
請求項1に記載の発明では、複数の振動体を励振手段で励振させて、振動体の音波の放射圧により振動体の表面上において物体を浮揚させる物体浮揚装置において、前記各振動体を振動させる各振動系のインピーダンスの変化に基づいて物体の状態を把握し、前記物体の状態が所定の範囲からずれている場合にそのずれを修復するように、前記各振動系に装備された発振器の周波数及び電圧及び電流の少なくとも一つを制御する。
【0010】
従って、この発明では、励振手段で励振される複数の振動体からの音波の放射圧により、振動体の表面上において物体が浮揚される。各振動体を振動させる各振動系のインピーダンスと物体のずれ量との関係が予め判っているため、インピーダンスの変化に基づいて物体の状態が所定の状態か否かが判断される。そして、物体の状態が所定の範囲からずれていれば、各発振器の周波数及び電圧及び電流の少なくとも一つが制御されて、前記ずれが修復される。従って、ガイドや規制部材等を設けずに、物体を所定範囲に保持することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、複数の振動体を励振手段で励振させて、振動体の音波の放射圧により振動体の表面上において物体を浮揚させる物体浮揚装置であって、前記各振動体を振動させる各振動系のインピーダンスをそれぞれ検出するインピーダンス検出手段と、前記インピーダンス検出手段の検出信号に基づいて物体の状態を判断する判断手段と、前記判断手段の判断結果に基づいて前記物体の状態が所定の範囲からずれている場合にそのずれを修復するように前記各振動系に装備された発振器の周波数及び電圧及び電流の少なくとも一つを制御する制御手段とを備えた。
【0012】
この発明では、励振手段で励振される複数の振動体からの音波の放射圧により、振動体の表面上において物体が浮揚される。各振動体を振動させる各振動系のインピーダンスがインピーダンス検出手段により検出され、その検出信号に基づいて物体の状態が判断手段によって判断される。物体の状態が所定の範囲からずれていると判断手段が判断すると、制御手段からの指令により、そのずれを修復するように発振器の周波数、電圧及び電流の少なくとも一つが制御される。
【0013】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、前記各振動体は昇降手段により昇降可能に構成され、前記制御手段は前記物体を所定の位置に保持するように前記各振動体の高さを制御する。この発明では、判断手段によって物体の状態が所定の範囲からずれていると判断されると、各振動体の高さが制御されてそのずれが修復される。
【0014】
請求項4に記載の発明では、請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記各振動体は定在波を発生させるように振動される。この発明では、各振動体から発生する定在波に基づく音波の放射圧のバランスにより、物体が所定位置において浮揚状態に保持される。
【0015】
請求項5に記載の発明では、請求項2〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記物体浮揚装置は台車上に装備されている。この発明では、台車の移動により物体が浮揚状態で所定の位置まで確実に搬送される。
【0016】
請求項6に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、前記各振動体は長尺の平板状に形成されるとともに互いに平行に配置され、前記励振手段は各振動体から進行波が発生するように構成され、前記制御手段は浮揚状態で移動する物体の前記振動体の幅方向へのずれを抑制するように前記発振器の周波数、電圧及び電流の少なくとも一つを制御する。
【0017】
この発明では、各振動体は進行波が発生するように振動される。そして、物体は進行波の推進力により振動体の長手方向に沿って浮揚状態で移動する。物体が振動体の幅方向へずれると、インピーダンスの変化でそれが検出される。そして、制御手段からの指令により発振器の周波数、電圧及び電流の少なくとも一つが制御されて、ずれが修復される。
【0018】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、本発明を矩形状の平板を浮揚保持するのに適した物体浮揚装置に具体化した第1の実施の形態を図1〜図4に従って説明する。図1は物体浮揚装置の模式平面図である。
【0019】
図1に示すように、物体浮揚装置1は矩形板状に形成された複数(この実施の形態では5個)の振動体2a〜2d,3を備えている。各振動体2a〜2d,3は同じ大きさに形成されている。4個の振動体2a〜2dは矩形板状の物体4(鎖線で図示)の四隅と対応する位置に配設され、1個の振動体3は4個の振動体2a〜2dから等距離の位置に配設されている。各振動体2a〜2d,3には励振手段を構成するホーン5a,5bが、その先端において図示しないネジにより締結されている。図4に示すように、振動体2a〜2dに締結されたホーン5aは偏平な直方体状に形成され、各振動体2a〜2dの長手方向中央部において長手方向と直交する状態で取付けられている。振動体3に締結されたホーン5bはほぼ円柱状に形成され、振動体3の中央に位置するように取付けられている。
【0020】
図3に示すように、振動体3はその表面が水平に配置されている。物体4の長手方向に沿って配設された各一対の振動体2a,2c、2b,2dは、その表面が物体4の底面に対して逆方向に内側に向かって傾斜した状態に、かつ物体4に作用する放射圧が釣り合うように配置されている。各振動体2a,2b,2c,2dの水平面と成す角度θは、物体4の質量、振動体2a,2b,2c,2dの面積などによって適正値は変化するが、例えば、ほぼ1°前後であり、通常3°以下である。
【0021】
図3に示すように、各ホーン5a,5bは振動体2a〜2d,3が締結される面の反対側の面において振動子6に固定されている。ホーン5a,5bの先端面は振動子6の軸方向と直交する平面に形成され、ホーン5a,5b及び振動子6の中心軸が鉛直方向に対して、水平面と振動体2a〜2d,3との成す角度と同じ角度傾斜した状態で配置されている。
【0022】
振動子6には所謂ランジュバン形振動子が使用され、一対のリング状のピエゾ素子7a,7bと、ピエゾ素子7a,7b間に配置されたリング状の電極板8と、ピエゾ素子7a,7bの外側面と当接する位置に配置された金属ブロック9a,9bとを、図示しないボルトによって締め付け固定することにより構成されている。ボルトは金属ブロック9aに形成された図示しないねじ穴に、金属ブロック9b側から螺合されている。両金属ブロック9a,9bはボルトを介して互いに導通された状態となっている。
【0023】
図3に示すように、物体浮揚装置1は台車としての搬送車10上に支持ブラケット11を介して取り付けられている。各振動子6は各振動体2a〜2d,3が所定の角度θ又は水平となるように支持ブラケット11に固定されている。
【0024】
図1及び図3に示すように、各振動体2a〜2d,3を励振させる振動子6は、発振器12a〜12eに接続されている。図3に示すように、電極板8は配線13aを介して発振器12a〜12eと接続され、発振器12a〜12eの接地端子が配線13bを介して金属ブロック9bに接続されている。ホーン5a,5b、振動子6、発振器12a〜12eにより各振動体2a〜2d,3を励振させる励振手段が構成されている。
【0025】
発振器12a〜12eは制御装置14からの制御信号により駆動される。制御装置14は判断手段及び制御手段としてのCPU15を備えている。各振動子6には各振動体2a〜2d,3を振動させる各振動系のインピーダンスをそれぞれ検出するインピーダンス検出手段16(図1にのみ図示)が装備されている。インピーダンス検出手段16はA/D変換器、インタフェース(いずれも図示せず)を介して、CPU15に接続されている。
【0026】
制御装置14は各振動子6毎にインピーダンスと物体の位置ずれ量との関係を示すマップ又は関係式が記憶されたメモリ(図示せず)を備えている。CPU15はインピーダンス検出手段16の検出信号に基づいて物体4の状態、即ち所定の範囲からずれているか否かを判断し、ずれていると判断したときはずれを修復するように、発振器12a〜12eの周波数及び電圧の少なくとも一方を制御する。
【0027】
次に前記のように構成された装置の作用を説明する。
物体浮揚装置1は、搬送すべき板状の物体4を浮揚状態に保持しつつ搬送車10の移動により目的位置まで搬送される。
【0028】
図1及び図3に示すように、物体4は各エッジ4aが各振動体2a〜2dの外側のエッジ17に揃うように各振動体2a〜2d,3上に載置される。その状態で発振器12a〜12eの駆動により、振動子6が所定の共振周波数(例えば、20kHz前後)で励振され、ホーン5a,5bが縦振動してホーン5a,5bを介して振動体2a〜2d,3が励振されて撓み振動を行う。振動体2a〜2d,3が撓み振動を行うことにより、振動体2a〜2d,3から音波(定在波)が発生する。振動体2a〜2d,3から放射される音波の放射圧によって、物体4は振動体2a〜2d,3の表面から浮揚する。
【0029】
互いに内側に傾斜した振動体2a,2b、2c,2dから物体4に対して斜めに放射圧が作用し、物体4は互いに向かい合う水平方向の分力が釣り合う状態で浮揚する。浮揚距離は数10〜数100μmである。
【0030】
振動体2a〜2dのエッジ17と物体4のエッジ4aとが揃った状態に配置された状態では、振動体2a〜2dのエッジ17からはみ出そうとした物体4が、振動体2a〜2dが放射する音波の作用によって内側に引き戻される作用があるため、物体4が所定の位置に安定した状態で保持される。
【0031】
振動体2a〜2d,3を振動させる振動子6を所定の共振周波数で振動させた際のインピーダンスは、物体4の存在時と非存在時とで異なり、また位置ずれによっても異なる。そして、図2に示すように、インピーダンスは物体4が所定の位置に保持された状態で最大値を示し、その位置からずれるに従って値が小さくなり、完全に外れた状態、即ち荷無し状態になると小さな値で一定になる。
【0032】
CPU15は各インピーダンス検出手段16の検出信号に基づいて物体4が所定の位置からずれているか否か、即ち物体4の状態を判断する。そして、物体4が所定の範囲からずれていると判断すると、そのずれを修復するように各発振器12a〜12eに周波数及び電圧の少なくとも一方を変更する指令信号を出力する。物体4が所定の範囲からずれている場合、各振動体2a〜2d,3の物体4に対する放射圧のバランスを、ずれている側と反対側が弱くなるように制御すれば、物体4はずれている側と反対側へ移動する。各発振器12a〜12eの周波数及び電圧がそのように制御されて放射圧が変更され、ずれが拡大するのが防止されるとともに、ずれが修復されて所定の位置に保持される。
【0033】
この実施の形態では以下の効果を有する。
(1) 振動体2a〜2d,3を振動させる各振動系のインピーダンスの変化に基づいて物体4が所定の範囲からずれているか否かを判断できる。従って、物体4の位置を直接検出するためのセンサがなくても、物体4の有無及び位置ずれ量を容易に検出できる。
【0034】
(2) 物体4が所定の範囲からずれている場合に発振器12a〜12eの周波数及び電圧の少なくとも一方を制御することにより、そのずれが修復される。従って、ガイドや規制部材を設けずに、物体4を所定範囲に浮揚状態で保持することができる。
【0035】
(3) 各振動体2a〜2d,3は定在波を発生させるように振動されるため、進行波を発生する構成に比較して構造が簡単になる。
(4) 物体浮揚装置1は搬送車10上に装備されている。従って、搬送車10の移動により物体4を浮揚状態で所定の位置まで確実に搬送することができる。
【0036】
(5) 物体4の四隅と対応する位置に配置される振動体2a〜2dを水平面に対して所定角度θ傾斜した状態に配設されているため、各振動体2a〜2dを水平に配置した場合より、物体4を所定位置に保持する効果が向上する。
【0037】
(6) 浮揚すべき物体4は底面がフラットで、直線状のエッジ4aを有し、振動体2a〜2dは物体4を浮揚状態で保持する際、その外側のエッジ17が物体4の直線状のエッジ4aの近傍で該エッジ4aに沿って延びるように配置されている。従って、物体4を所定位置により安定した状態で保持できる。
【0038】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態を図5に従って説明する。この実施の形態では各振動体2a〜2d,3が昇降手段により昇降可能に構成されるとともに、物体4の位置ずれの修復を各振動体2a〜2d,3の高さを制御することにより行う点が前記実施の形態と大きく異なっている。前記実施の形態と同一部分は同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0039】
各支持ブラケット11は昇降手段としてのアクチュエータ18のロッド18aに固定されている。アクチュエータ18としては例えば電動シリンダやリニアアクチュエータのように、電気信号により制御可能なものが使用される。CPU15は各インピーダンス検出手段16の検出信号に基づいて物体4が所定の位置からずれているか否かを判断する。そして、物体4が所定の範囲からずれていると判断すると、そのずれを修復するように各アクチュエータ18に制御指令を出力する。そして、振動体2a〜2d,3の高さが変更される。
【0040】
振動体2a〜2d,3の振動周波数及び振幅が同じでも、物体4との距離を変更することにより物体4に対する放射圧の強さが変化する。従って、振動体2a〜2d,3の高さを変更することにより、物体4に対する各振動体2a〜2d,3からの放射圧のバランスが調整されて物体4の位置ずれが修復されて所定の位置に保持される。
【0041】
従って、この実施の形態の物体浮揚装置1は、前記実施の形態の(1),(3)〜(6)に記載の効果の他に次の効果を有する。
(7) 物体4が所定の範囲からずれている場合、アクチュエータ18を制御して振動体2a〜2dの高さを調整することにより、物体4を水平状態から傾けるて、物体4の自重を利用して移動させることが可能になり、位置ずれをより修復し易くなる。
【0042】
(第3の実施の形態)
次に第3の実施の形態を図6に従って説明する。この実施の形態では、物体浮揚装置が単に物体4を所定位置に浮揚保持するだけでなく、長尺の振動体を使用するとともに、振動体に一方向へ進む進行波を発生させて、物体4を浮揚状態で振動体に沿って移動させる点が前記両実施の形態と大きく異なっている。第1の実施の形態と基本的に同じ部分は同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0043】
物体浮揚装置(物体搬送装置)19は、複数(この実施の形態では2個)の長尺の振動体20a,20bが平行に配設されている。各振動体20a,20bの一端側に締結されたホーン21aを励振させる振動子6はそれぞれ別の発振器22a,22bに接続されている。発振器22a,22bはそれぞれ制御装置14に接続されている。各振動体20a,20bの他端側に締結されたホーン21bを励振させる振動子6は、抵抗R及びコイルLからなるエネルギー変換手段としての負荷回路23にそれぞれ接続されている。
【0044】
この実施の形態の装置では発振器22a,22bに接続された振動子6が励振されると、ホーン21a,21bを介して振動体20a,20bが撓み振動し、物体4が振動体20a,20bから浮揚する。振動体20a,20bの振動は負荷回路23に接続された振動子6に伝達され、振動子6を構成するピエゾ素子7a,7bにより機械エネルギーである振動のエネルギーが電気エネルギーに変換される。この電気エネルギーが負荷回路23の抵抗Rでジュール熱に変換されて放散される。そのため、各振動体20a,20bに生じる振動の波が一方向へ進む進行波となり、物体4は発振器22a,22bに接続された側の振動子6と対応する側から他方へ向かって浮揚状態で搬送される。搬送の停止は発振器22a,22bの駆動を停止することにより行われる。
【0045】
両振動体20a,20bから発生する音波の放射圧の物体4に対するバランスが崩れて左右の推進力に差が生じると、物体4が振動体20a,20bの幅方向へずれる状態となる。CPU15は各インピーダンス検出手段16の検出信号に基づいて物体4が振動体20a,20bの幅方向にずれているか否かを判断する。そして、物体4がずれていると判断すると、そのずれを修復するように各発振器22a,22bに周波数及び電圧の少なくとも一方の制御指令を変更する。その結果、振動体20a,20bからの放射圧のバランスが変更され、位置ずれが修復されて物体4の蛇行が防止される。
【0046】
この実施の形態では進行波を発生させて物体4を浮揚状態で長尺の振動体20a,20bに沿って移動させる物体浮揚装置19において、ガイドや規制部材あるいは多数のセンサを設けずに、蛇行を抑制した状態で物体4を移動させることができる。
【0047】
実施の形態は前記に限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
○ 第2の実施の形態のように各振動体2a〜2d,3がアクチュエータ18により昇降可能に構成された物体浮揚装置1において、物体4に位置ずれが発生した際にそのずれが小さい場合、物体4は調和振動を行う。この際、発振器12a〜12eの周波数等を変更してそのずれを完全に0となるように調整する代わりに、アクチュエータ18を作動させて振動体2a〜2d,3の高さを変更することで物体4を静止させるようにしてもよい。この場合、発振器12a〜12eの周波数等を変更(調整)してずれを完全になくして物体4を静止させるより、早く物体4を静止させることができる。
【0048】
○ 第3の実施の形態において、幅が広い物体4を浮揚搬送させる場合、振動体20a,20bの間にさらに振動体を平行に配置してもよい。この振動体は必ずしも進行波を発生する構成とする必要はなく、定在波を発生する構成としてもよい。この場合、物体4の自重による撓みが抑制され、物体4を円滑に浮揚した状態で搬送できる。
【0049】
○ 第3の実施の形態のように進行波を利用して物体4を浮揚状態で搬送する装置において、各振動体20a,20bの両端に設けられた振動子6をそれぞれ発振器22a,22bと負荷回路23とに選択的に切り換え接続可能に構成する。この場合、発振器22a,22bに接続された状態と、負荷回路23に接続された状態との切換を行うことにより、物体4の搬送方向を選択することができる。
【0050】
○ ホーン5a,5bの形状は扁平な直方体状や円柱状に限らず、ほぼ円錐台状等先端側が細くなった形状としてもよい。
○ 矩形状の物体4を所定位置に浮揚保持する物体浮揚装置1において、各振動体2a〜2dの配設位置は、物体4の四隅と対応する位置に限らず、各辺の中央と対応する位置に配置してもよい。また、振動体2a〜2d,3の数は5個に限らず、中央に配置される振動体3を省略して4個としたり、物体4の大きさにより複数であれば適宜変更し、配置位置も適宜変更してもよい。
【0051】
○ 浮揚保持する物体4の形状は矩形等の四角形に限らず、三角形や他の多角形あるいは円形等任意の形状としてよい。
○ 振動体2a〜2dを水平面に対して所定角度θ傾斜した状態に配設する構成に代えて、全ての振動体2a〜2dを水平に配置する構成としてもよい。この場合、振動体2a〜2dを所定角度θ傾斜させた場合より、物体4がずれ易いが、制御装置14からの指令によりずれを修復できるため支障はない。
【0052】
○ 板状の物体4を浮揚保持する際、物体を水平に保持する構成に代えて、物体が傾いた状態で複数の振動体2a〜2d,3の放射圧のバランスを取って浮揚保持する構成にしてもよい。
【0053】
○ 各振動体2a〜2d等のエッジ17の一部が物体4のエッジ4aと対応せず、物体4がエッジ17からはみ出す大きさのものに適用してもよい。
○ 底面がフラットな物体を浮揚保持する装置に限らず、特開平7−137824号公報に開示された装置のように、物体の底面がV字状の物体を浮揚させる装置に適用してもよい。
【0054】
○ 振動体2a〜2d,3のホーン5a、5bへの固定はネジによる締結に限らず、接着剤を使用したり、ロウ付けや溶接で固着してもよい。
○ 振動子6はランジュバン形振動子に限らず他の振動子を使用してもよい。
【0055】
前記実施の形態から把握される請求項記載以外の発明(技術思想)について、以下に記載する。
(1) 複数の振動体を励振手段で励振させて、振動体の音波の放射圧により振動体の表面上において物体を浮揚させる物体浮揚装置において、前記各振動体を振動させる各振動系のインピーダンスの変化に基づいて、物体の物体浮揚装置への移載又は物体浮揚装置からの移載の完了あるいは移載異常の有無を確認する方法。
【0056】
(2) 請求項3に記載された発明において、物体が調和振動をしていると前記判断手段が判断したときに、前記制御手段は前記発振器の周波数等を変更せずに前記振動板の高さを調整して物体を静止させる。
【0057】
(3) 請求項6に記載された発明において、前記励振手段は2個のホーンと、各ホーンを励振させる振動子と、一方の振動子を振動させる発振器と、他方のホーンに連結された振動子の振動を減衰させるエネルギー変換手段とを備えている。
【0058】
(4) 請求項1〜請求項6に記載された発明において、前記物体は矩形状であり、少なくとも前記物体の四隅と対応する位置に前記振動体が配置されている。
【0059】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1〜請求項6に記載の発明によれば、複数の振動体を使用して物体を浮揚させる場合、ガイドや規制部材あるいは多数のセンサを設けずに、物体を所定範囲に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施の形態の物体浮揚装置の模式平面図。
【図2】 振動子のインピーダンスと物体のずれ量の関係を示すグラフ。
【図3】 搬送車に装備された物体浮揚装置の模式正面図。
【図4】 振動体及び振動子の模式斜視図。
【図5】 第2の実施の形態の物体浮揚装置の模式正面図。
【図6】 第3の実施の形態の物体浮揚装置の模式斜視図。
【符号の説明】
1,19…物体浮揚装置、2a〜2d,3,20a,20b…振動体、4…物体、5a,5b,21a,21b…励振手段を構成するホーン、6…同じく振動子、10…台車としての搬送車、12a〜12e,22a,22b…同じく発振器、15…判断手段及び制御手段としてのCPU、16…インピーダンス検出手段、18…昇降手段としてのアクチュエータ。

Claims (6)

  1. 複数の振動体を励振手段で励振させて、振動体の音波の放射圧により振動体の表面上において物体を浮揚させる物体浮揚装置において、
    前記各振動体を振動させる各振動系のインピーダンスの変化に基づいて物体の状態を把握し、前記物体の状態が所定の範囲からずれている場合にそのずれを修復するように、前記各振動系に装備された発振器の周波数及び電圧及び電流の少なくとも一つを制御する物体浮揚装置の制御方法。
  2. 複数の振動体を励振手段で励振させて、振動体の音波の放射圧により振動体の表面上において物体を浮揚させる物体浮揚装置であって、
    前記各振動体を振動させる各振動系のインピーダンスをそれぞれ検出するインピーダンス検出手段と、
    前記インピーダンス検出手段の検出信号に基づいて物体の状態を判断する判断手段と、
    前記判断手段の判断結果に基づいて前記物体の状態が所定の範囲からずれている場合にそのずれを修復するように前記各振動系に装備された発振器の周波数及び電圧及び電流の少なくとも一つを制御する制御手段と
    を備えた物体浮揚装置。
  3. 前記各振動体は昇降手段により昇降可能に構成され、前記制御手段は前記物体を所定の位置に保持するように前記各振動体の高さを制御する請求項2に記載の物体浮揚装置。
  4. 前記各振動体は定在波を発生させるように振動される請求項2又は請求項3に記載の物体浮揚装置。
  5. 前記物体浮揚装置は台車上に装備されている請求項2〜請求項4のいずれか一項に記載の物体浮揚装置。
  6. 前記各振動体は長尺の平板状に形成されるとともに互いに平行に配置され、前記励振手段は各振動体から進行波が発生するように構成され、前記制御手段は浮揚状態で移動する物体の前記振動体の幅方向へのずれを抑制するように前記発振器の周波数、電圧及び電流の少なくとも一つを制御する請求項2に記載の物体浮揚装置。
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