JPH09202425A - 物体浮揚装置を具備した物体搬送装置 - Google Patents

物体浮揚装置を具備した物体搬送装置

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JPH09202425A
JPH09202425A JP8031261A JP3126196A JPH09202425A JP H09202425 A JPH09202425 A JP H09202425A JP 8031261 A JP8031261 A JP 8031261A JP 3126196 A JP3126196 A JP 3126196A JP H09202425 A JPH09202425 A JP H09202425A
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Yoshiki Hashimoto
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 形状の大きな物体を同相かつ均一な整った進
行波に乗せて円滑に搬送することができ、また、遮音対
策も無用か最小限で足り、しかも、エネルギーの利用効
率が高い物体搬送装置を提供すること。 【解決手段】 幅の狭い振動体3を平行に複数並べ、こ
れらの振動体の音圧によって物体7を浮揚させて搬送す
る。これにより、上記効果が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は超音波の放射圧を利
用して物体を空中に浮揚させる物体浮揚装置を具備した
物体搬送装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の装置として、本願出願人
に係る特開平7−187388号公報において開示され
ているものがあり、該公報の開示内容の一部である物体
搬送装置を図10に示す。
【0003】図示のように、当該物体搬送装置は、矩形
板状に形成された振動体101と、この振動体101の
長手方向一端側に設置されて該振動体101を励振する
超音波励振手段130と、該超音波励振手段130とほ
ぼ同様の構成を有して該振動体101の他端側に配置さ
れたエネルギー変換手段131とを備えている。
【0004】上記超音波励振手段130はホーン102
を具備しており、上記振動体101は該ホーン102の
先端に固着されている。
【0005】なお、図において、ホーン102による超
音波振動の方向を矢印Uにて示している。このように、
ホーン102は縦振動を行う。振動体101の長さ(図
の左右方向の寸法)及び幅(図で紙面に直角な方向の寸
法)は、ホーン2から伝達される振動に基づく撓み振動
の共振長に定められ、図で記号Tで示す撓み曲線のよう
な振動をする。この撓み振動は振動体101の長さ方向
及び幅方向において生じ、縞状の振動モードとなる。
【0006】上記ホーン102は、振動体101に対す
る結合部とは反対側において振動子104と結合されて
いる。この振動子104の電極104aと発振器105
とが接続されており、振動子104は該発振器105に
よって駆動されて超音波振動を発する。ホーン102
は、この振動子104が発する振動を機械的に増幅する
ものである。
【0007】上記ホーン102にはフランジ部102b
が形成されており、該ホーン102の下半部分及び上記
振動子104を収容するケース106に対して、該フラ
ンジ部102bでパッキン102cを介して締結されて
いる。
【0008】一方、振動体101の他端側に配設された
エネルギー変換手段131は、搬送対象たる物体107
を振動体101上で搬送させる搬送手段として作用する
もので、超音波励振手段130により励振された振動体
101が発する超音波のエネルギーを再び電気エネルギ
ーに戻すべく変換する。
【0009】具体的には、該エネルギー変換手段131
が具備する振動子104の電極104aに、抵抗R及び
コイルLからなる回路が接続されており、機械的エネル
ギーである超音波エネルギーより変換された電気エネル
ギーはこの回路を経ることによって更にジュール熱に変
換され、放散される。
【0010】上述した物体搬送装置においては、超音波
励振手段130の作動によって振動体101が撓み振動
を行い、該振動体101より音波が放射される。よっ
て、物体107はこの音波の放射圧により振動体101
上で僅かに浮揚する。
【0011】この浮揚状態で上記エネルギー変換手段1
31が作動することによって、図で矢印Sにて示すよう
に、振動体101に生ずる撓み振動の波が進行波とな
り、物体107はこの進行波に乗る状態にて搬送され
る。
【0012】上記構成の物体搬送装置は、物体を完全に
非接触の状態で搬送することが出来ると共に、次のよう
な優位点を有する。
【0013】 磁性体であるや否やなど、扱う物体の
材質等の制約を受けることがなく、また、磁界中におく
ことができないもの等、あらゆる物体を搬送することが
でき、しかも、物体の重量及び寸法が比較的大きくとも
対処可能である。
【0014】 装置自体に関しては、実質的に、振動
体とこれを励振する超音波励振手段を最小限設けるだけ
でよいから、小型化及びコストの低減が達成されると共
に、消費電力も極めて少なくて済み、省エネルギー化に
寄与する。
【0015】 電気エネルギーを変換した音波の放射
圧による浮揚作用であるため、作業者の安全性について
も容易に確保し得ると共に、給電及びその断をなすこと
により簡単に制御できる。
【0016】上記した各優位点に鑑み、装置の実用化の
一例として、液晶ディスプレイなどとして利用されるガ
ラス基板やシリコンウェハーの搬送に利用することを考
えている。何となれば、これらの品物は、その主たる面
に対して塵埃(particle)が付着すること、お
よび微細にても傷が発生することを可能な限り避けねば
ならないと同時に、磁場等に曝すことは厳禁とされる故
である。
【0017】ところで、近年、エレクトロニクス産業の
発展に伴って上記ガラス基板及びシリコンウェハーの需
要が増加し、その形状も大型化している。そこで、この
ような形状の大きい品物を搬送するためには、上述した
物体搬送装置において振動体101を大きくすることが
考えられ、実際に試作が行われた。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この試
作装置による搬送実験の結果、下記の問題が判明した。
【0019】まず、実用化を目指すことを前提とした該
試作装置においては、図10及び図11に示すように、
円錐(corn)状のホーン102によって略一点に集
中して伝達される振動を幅広な振動体101の全幅に均
一に伝える必要があることから、ホーン102と振動体
101との間に副振動体111が介装された。この副振
動体111とは、有限要素法解析で先端面が均一な振動
分布になるように設計されたプレート状のホーンであ
る。
【0020】ところが、ホーン102からは縦振動のみ
が付与されるにも拘らず、この副振動体111のポアソ
ン(Poisson)比の影響によって横方向の振動が
誘起され、これによって振動分布が不均一になり、きれ
いな進行波を得ることが難しい。
【0021】また、図11に示すように、上記横方向の
振動を抑圧すべく副振動体111にスリット111aが
形成されたが、その効果は充分ではない。反面、このス
リット111aを設けたことによって、同図で破線の矢
印E1 ,E2 にて示すように、振動体101の搬送経路
中央部に対するとその両側部に対するとではエネルギー
の伝達距離が大きく異なり、甚しい場合は正常な進行波
(矢印W1 にて示す)とは逆向きに進む波(矢印W2
示す)が両側で発生してしまい、振動体101の全幅に
わたって同相の進行波を得ることは必ずしも容易ではな
い。
【0022】他方、振動体101の大型化、すなわち、
音波が放射される面積の増加によって、発生する音が大
きくなり、この音を騒音レベル以下に抑えるための大掛
りな遮音壁等を必要とし、コスト面から好ましくない。
【0023】更に、大きな振動体101を振動させるた
めにはそのエネルギーのロスも大きく、この点、省エネ
ルギー化の観点から解決されるべき問題となっている。
【0024】本発明は上記した点に鑑みてなされたもの
であって、その主目的とするところは、形状の大きな物
体を同相かつ均一な整った進行波に乗せて円滑に搬送す
ることができ、また、遮音対策も無用か最小限で足り、
しかも、エネルギーの利用効率が高い物体搬送装置を提
供することである。
【0025】また、本発明は、上記に加えて更に他の効
果をも併せ奏し得る物体搬送装置を提供することも目的
とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】上記主目的達成のため
に、本発明による物体搬送装置は、振動面が略同一平面
となるように平行に配された複数の振動体と、該振動体
を励振する超音波励振手段と、物体を搬送させる搬送手
段とを備え、該振動体の音波の放射圧により該振動体の
表面上に物体を浮揚させ、搬送させるように構成されて
いる。
【0027】
【発明の実施の形態】本発明は、比較的大きな寸法のガ
ラス基板やシリコンウェハー等を超音波の放射圧により
浮揚させて搬送する場合に、整然とした進行波に乗せて
搬送させると共に、騒音の発生とエネルギーの無駄な消
費を極力抑えるために実施される。
【0028】
【実施例】次に、本発明の実施例としての物体搬送装置
を、添付図面を参照しながら説明する。
【0029】図1乃至図4に示すように、この本発明に
係る物体搬送装置は、2基の搬送ユニット1を互いに平
行に並べてなる。両搬送ユニット1は全く同様に構成さ
れている故、以下、片方の搬送ユニット1の説明を以て
双方の搬送ユニットの説明に代える。但し、両搬送ユニ
ット1の各構成部分について、互いに対応するものには
同じ参照符号を付して示している。
【0030】図1乃至図4に示すように、搬送ユニット
1は、長手矩形板状に形成された振動体3を有してお
り、2基の搬送ユニット1が夫々具備する該振動体3
は、夫々の振動面が略同一平面となるように平行に配さ
れている。該振動体3は、搬送されるべき物体7をその
表面上で浮揚させるためのものである。この振動体3の
長手方向両端部には、副振動体4が各々結合されてい
る。該副振動体4は、後述する超音波励振手段が発する
縦振動を該振動体3に対して該振動体3の厚み方向で伝
達すべく介装されたものである。
【0031】上記振動体3は、その材質としてジュラル
ミン等が選定され、寸法としては、一例として、長さL
(図2参照)が1029mm、幅B(図2及び図5参
照)が70mm、厚みt(図3及び図5参照)が3mm
に設定されている。
【0032】また、副振動体4としては、有限要素法解
析で先端面が均一な振動分布になるように設計されたプ
レート状のホーンが用いられ、振動体3の端部に対して
複数のねじ9(図1及び図2に図示)を用いて締結して
ある。但し、振動体3と副振動体4の結合は、このよう
にねじによる他、接着、ロウ付け、溶接等によってもよ
い。
【0033】上記副振動体4は、その下端部にて略円錐
型のホーン12の先端部に結合されている。該ホーン1
2に対する副振動体4の取付けに関しても、上記ロウ付
けや溶接など、種々の手段が用いられる。該ホーン12
は略円錐形状であるが故に、後述する振動子が発する振
動を略一点に集中して伝達するが、副振動体4はこの集
中する振動を振動体3の全幅に、すなわち物体搬送路の
幅方向において均一に拡散して伝える作用をなす。
【0034】上記のホーン12は、上記振動体3の両端
部に対応して配設された2つの超音波振動発生部14が
夫々具備するものである。図1及び図2から明らかなよ
うに、該超音波振動発生部14は、隣り合う2基の搬送
ユニット1に関して2つずつ、合計4つ設けられてお
り、これら4つの超音波振動発生部14は図7に示す発
振器15と共に超音波励振手段を構成する。但し、上記
した副振動体4も、この超音波励振手段に含まれる。続
いて、該超音波振動発生部14について詳述する。
【0035】図3に示すように、該超音波振動発生部1
4において、上記ホーン12は、副振動体4に対する結
合部とは反対側、すなわち下端側において振動子16と
結合されている。この振動子16の電極16aと上記発
振器15(図7参照)とが接続(接続の形態は後述す
る)されており、振動子16は該発振器15によって駆
動されて超音波振動を発生する。ホーン12は、この振
動子16が発する振動を機械的に増幅するものである。
【0036】なお、図3において、ホーン12による超
音波振動の振動方向を矢印Uにて示している。このよう
に、ホーン12は縦振動を行う。
【0037】また、上記ホーン12にはそのノーグルポ
イント部にフランジ部12bが形成されており、該ホー
ン12の下半部分と上記振動子16を収容するケース1
8に対して、該フランジ部12bにてパッキン12cを
介して締結されている。
【0038】かかる構成の物体搬送装置においては、上
記ホーン12を通じて伝達される縦振動に基づき、振動
体3がその長さ方向及び幅方向で撓み振動をする。すな
わち、平面的には縞状の振動モードとなる。具体的に
は、駆動周波数は19.51kHzに設定され、該ホー
ン12の先端に締着したねじ9(図1及び図2参照)の
頭部に10μmp−p程度の振動振幅がのせられる。
【0039】ここで、平行に2基設けられた搬送ユニッ
ト1が各々具備する振動体3の形状について詳述する。
【0040】図1乃至図6に示すように、両振動体3は
長尺の矩形板状に形成され、特に図5及び図6から明ら
かなように、各々外側にして下面側にほぼ全長にわたっ
て断面矩形状の切欠部3aが形成されている。但し、こ
の切欠部3aは、副振動体4との結合部にまでは及んで
いない。
【0041】上記切欠部3aを形成したことにより、両
振動体3は、物体搬送路の中央及びその両側に対応する
各部位が夫々、厚肉部3b及び薄肉部3cとなってい
る。すなわち、両振動体3はその厚みが、物体搬送路の
幅方向における中央から両縁側に向って段階的に小さく
なるように変化している。この変化は、このように段階
的に限らず、連続的、すなわちテーパ状に形成すること
によってもよい。
【0042】図5において、上記切欠部3aの深さと幅
は各々、0.2mm、20mmに設定されている。従っ
て、振動体3の上記厚肉部3bの厚みは3mm(=t:
前述)、幅は50mm(=B−20:〔B=70mm:
前述〕)である。
【0043】また、薄肉部3cの厚みは2.8mm(=
3−0.2)、幅は20mmである。
【0044】次に、当該物体搬送装置が備える2基の搬
送ユニット1(図1等参照)について、図7に示す発振
器15との接続の構成を説明する。
【0045】なお、図7に示すように、この発振器15
にはプラスの端子15aとマイナスの端子15bが各々
2つずつ設けられ、このプラス及びマイナスで1組とさ
れる端子が2基の搬送ユニット1の夫々に対して接続さ
れる。双方の搬送ユニット1と発振器15との接続は全
く同様になされる故、図では1基の搬送ユニット1と発
振器15に関する接続のみを示し、以下、これを説明
し、他方の搬送ユニットとの接続状態の図示、説明は省
略する。
【0046】図7において、両振動子16が並列に設け
られ、共に陰極が接地されている。同様に発振器15に
ついても陰極が接地されている。発振器15の陽極はリ
レー21のスイッチ21aに接続されている。このリレ
ー21の一方の端子21bは他のリレー22の一方の端
子22bと共に片方の振動子16の陽極に接続されてい
る。
【0047】また、リレー21の他方の端子21cは該
リレー22の他方の端子22cと共に他方の振動子16
の陽極に接続されている。このリレー22のスイッチ2
2aには、並列に設けられた負荷抵抗R及び整合用イン
ダクタンス(コイル)Lの各一端が接続され、該負荷抵
抗R及びインダクタンスLの他端は接地されている。そ
して、図示のように、両リレー21及び22の各スイッ
チ21a,22aは互いに連動するようになされてい
る。本例では、該負荷抵抗Rは300Ω、インダクタン
スLは4.81mHとなされ、上記発振器15について
は55W〜85Wとされている。
【0048】上記各スイッチ21a及び22aの切替え
は、図1に示した2つのフォトセンサ24及び25から
発せられる検知信号に基づいて行われる。これらのフォ
トセンサ24,25は夫々いわゆる反射型のもので、発
光素子と受光素子とを内蔵し、該発光素子から発せられ
た照射光が搬送中の物体7の表面で反射し、この反射光
が該受光素子に入射することによって該受光素子が上記
検知信号としての受光出力を発する。
【0049】なお、図1から明らかなように、上記両フ
ォトセンサ24及び25は、振動体3による物体搬送路
の搬送方向端よりも所定距離だけ手前側に配設されてい
る。
【0050】次に、上記した構成の物体搬送装置の動作
を説明する。
【0051】まず、図7において、両リレー21及び2
2の各スイッチ21a,22aが同図に示すように該両
リレーの端子21c,22bに夫々接触している場合、
一方の振動子16(図3も参照)が発振器15によって
励振される。但し、図7には、前述したように片方の搬
送ユニット(1:図1等参照)の作動部分のみが示され
ており、この振動子の励振は他方の搬送ユニットの作動
部分(図示せず)においても同時に行われる。
【0052】上記のように一方の振動子16が励振され
ることによって、両振動体3(図1等参照)が縞状振動
モードにて振動を行い、該両振動体3の表面から音波が
放射される。この状態で、図1乃至図4に示すように該
両振動体3上に物体7が供給されると、該物体7はこの
音波の放射圧によって該振動体3の表面から距離e
1(図3に図示)を隔てた状態で浮揚する。
【0053】図7に示す一方の振動子16(図3も参
照)の振動によって物体7が上述のように振動体3上で
浮揚するのと同時に、該振動体3の振動は同じく図7
(図3も参照)に示す他の振動子16に伝わって、該振
動子16によって機械的エネルギーである超音波エネル
ギーが電気エネルギーに変換される。この電気エネルギ
ーは、図7に示す負荷抵抗R及びインダクタンスLから
なる回路を経ることによって更にジュール熱に変換さ
れ、放散される。これにより、両振動体3に生ずる振動
の波が進行波となり、物体7はこの進行波に乗る状態で
矢印G(図1及び図3参照)にて示すように一方向へと
搬送される。
【0054】なお、上記エネルギー変換に関しては、詳
しくは、電気エネルギーは負荷抵抗Rにてジュール熱に
変換されて消費され、インダクタンスLはエネルギー変
換の整合作用をなすもので、効率が最も大きくなる値に
設定されている。
【0055】上記のようにして物体7が矢印G方向に搬
送されると、図1に示す2つのフォトセンサ24及び2
5による検知位置を次々と通過することになる。この場
合、これら2つのフォトセンサ24及び25の両者から
物体7の通過を示す検知信号が順に発せられる。マイク
ロプロセッサ等からなって当該物体搬送装置の作動制御
を司る制御部(図示せず)は、これらフォトセンサ2
4,25からの各検知信号の順番によって物体の搬送方
向を確認することができる。そして、該制御部は、これ
らのフォトセンサ24,25からの検知信号が共に得ら
れたならば、図7に示した両リレー21及び22の各ス
イッチ21a,22aを切り替える。
【0056】両リレー21,22の各スイッチ21a,
22aが切り替えられて該両リレーの他方の端子21
b,21cに夫々接触すると、進行波の向きが逆とな
り、物体7は減速して停止し、直ちに上記矢印G方向と
は逆の方向に搬送される。この方向転換時、物体7はそ
の慣性によって、停止までにある距離を走ることとな
る。前述したように、上記両フォトセンサ24及び25
を物体搬送路の搬送方向端よりも所定距離だけ手前側に
配置したのはこのためである。これによって、物体7が
物体搬送路をその慣性により行き過ぎて脱落することが
防止される。
【0057】上記から明らかなように、図7において、
一方の振動子16が超音波エネルギーを発しているとき
に、他方の振動子16は、インダクタンスL及び負荷抵
抗Rからなる回路と協働して該超音波エネルギーを電気
エネルギーに変換して音波を進行波とするエネルギー変
換手段として作用する。このエネルギー変換手段が、物
体7を搬送させる搬送手段となる。
【0058】なお、物体7を搬送させる搬送手段として
は、上記のようなエネルギー変換手段に限らず、例え
ば、当該物体搬送装置全体を傾斜せしめて重力の作用に
よって搬送する方式や、圧搾空気を物体7の後から吹き
付ける方式等、種々の構成のものが適用可能である。す
なわち、物体7に推力を付与させればよい訳である。
【0059】本実施例においては、上述のように、振動
体3の長手方向両端に対応して2台の超音波振動発生部
14(図1など参照)を配設し、該両超音波振動発生部
14が発する超音波エネルギーについて選択的にエネル
ギー変換を行うことにより、物体7を往復搬送させるこ
とが可能となっている。
【0060】なお、上記は、単に物体7の往復動につい
ての説明であるが、物体7を所望の位置に停止させる場
合、次のような制御が行われる。
【0061】すなわち、一方向に向って搬送されている
物体7について、その搬送の慣性力を打ち消すように上
記のスイッチ21a,22aを切り替え、停止するまで
逆方向の進行波を生じさせる。そして、物体7が停止し
たら、受動側すなわちエネルギー消費側の端子をオープ
ン状態にし、定在波振動モードにするか、あるいは、駆
動側である超音波振動発生側の駆動周波数をそれまでと
は異なる共振点に変化させ、浮揚状態を保ったまま完全
に停止させる。
【0062】ところで、当該物体搬送装置においては、
下記の構成によって、物体搬送路側方への物体7の逸脱
が防止されている。
【0063】すなわち、前述したように、両振動体3
が、物体搬送路の中央及びその両側をなす厚肉部3bと
薄肉部3cとを有している。つまり、両振動体3の厚み
が、物体搬送路の幅方向における中央から両縁側に向っ
て漸次変化、具体的には漸次小となるように設定されて
いる。
【0064】かかる構成を採用したことにより、図6に
て多数の矢印で示すように、両振動体3が発する音波の
放射圧は、物体搬送路の幅方向における両縁側が中央に
比して大となる。
【0065】この構成によれば、搬送中の物体7には、
これを物体搬送路の中央に留めようとする力が常に作用
し、該物体7が物体搬送路から側方に逸脱しようとする
と該物体搬送路の両縁側の大きな放射圧により中央側へ
と押し戻される。よって、物体7は逸脱することなく物
体搬送路の中心30(図2に図示)に沿って確実に搬送
される。
【0066】このような逸脱防止作用は、本実施例のよ
うに、物体搬送路の幅方向において振動体3の厚みに変
化をもたせること等によって比較的簡単に実施できるか
らコストが安く済むものであり、しかも、当該物体搬送
装置の構造の簡略化と小型化も併せて達成され、実用上
非常に有効である。
【0067】以上から明らかなように、当該物体搬送装
置においては、複数、この場合2枚の振動体3をその各
々の振動面が略同一平面となるように平行に配してい
る。
【0068】かかる構成によれば、個々の振動体3の幅
寸法B(図2等参照)は小さくて済み、例えば副振動体
4に関して言うなら、該副振動体4も幅の狭いものとな
るからそのポアソン比やエネルギー伝達距離の相違等、
振動体3の振動態様に悪影響を及ぼす因子は抑えられ、
その結果、同相にして振動分布が均一な整った進行波が
得られて物体7の搬送を円滑に行うことができる。
【0069】より具体的には、各振動体3の幅寸法B
(本実施例で70mmとしている)は、ホーン12より
該振動体3の厚み方向に付与される縦振動の1波長の1
/3以下に設定することにより、理想に近い結果が得ら
れている。
【0070】また、本発明に係る上記の構成では、1枚
の振動体3とその励振をなすための超音波振動発生部1
4(振動子16を含む)とを1つのユニット(本実施例
における各搬送ユニット1に相当)として製作すれば、
このユニットの数を必要に応じて2基、3基、4基、…
と適宜増やすことによって、かなり大きな物体まで広範
な種類の物体に対処し得、汎用性に優れる。
【0071】更に、本発明のように、幅の狭い振動体3
を並設する構成では、その全体として発生する音のレベ
ルも低くなり、遮音対策は不必要か、設けるとしても小
規模のもので充分であり、コストが安く済む。
【0072】また、幅の狭い振動体3では、消費する電
力、すなわちエネルギーのロスも少なく、エネルギー利
用効率が高い。
【0073】なお、本実施例では、上述した如きユニッ
ト化を図るために、各振動体3に対して個別に超音波振
動発生部14(振動子16を含む)を設けているが、こ
れら2枚の振動体3を共通の超音波振動発生部によって
励振させるようにしてもよい。
【0074】ここで、前述した構成の物体搬送装置を使
用して行った物体搬送実験の結果について説明する。
【0075】<単位面積当たりの重量と浮揚距離との関
係>1枚の幅が70mmの振動板(前記振動体3)をレ
ールのように2つ並列に並べ、駆動側のホーン振動振幅
を互いに10μmp-p 一定に保ち、アクリル板(160
×160×板厚2mm、重量63.6g)及び、8イン
チシリコンウエハー(54.79g)を浮揚させ、駆動
側のネジの近傍で浮揚距離を測定した結果を図8に示
す。
【0076】振動板の間隔を20mm〜70mm(最大
幅160mm〜210mm)に広げることで、物体が音
波を直接受ける部分の底面積が変化し、単位底面積当た
りにかかる重量が変化するので、これをパラメータにし
て浮揚距離を測定した。図8から浮揚距離は、物体の単
位底面積当たりの重量のほぼ−1乗に比例することが判
明した。
【0077】<振動板の幅と搬送速度の関係>次に同じ
ように、振動板の間隔を20mm〜70mm(最大幅1
60mm〜210mm)に広げることで、単位底面積当
たりにかかる重量を可変させ、同物体の平均搬送速度を
測定した結果を図9に示す。
【0078】搬送速度は単位底面積当たりの重量に反比
例することが確認出来た。また、浮揚に寄与する部分の
底面積を変化させた場合、浮揚距離は大きく変化した
が、平均搬送速度の変化率は少ないことが明らかになっ
た。
【0079】<まとめ> 進行波を励振させたたわみモード振動板を2枚用いて、
非接触で大きい形状の物体を搬送する装置を試作した。
その結果、次のことが明らかになった。 振動板を2枚並列に用いることにより、振動板の幅よ
り大きな形状の物体の非接触搬送が可能であること。こ
の結果から、さらに大きな形状の物体を非接触搬送させ
る場合は、3連、4連と振動板を複数用いればよいこ
と。 浮揚距離は、浮揚物体の単位底面積あたりの重量の−
1乗に比例すること。 搬送速度は、浮揚物体の単位底面積あたりの重量に反
比例すること。 最も安定した搬送が得られるのは、2つの振動板の幅
と浮揚物体の幅が一致した場合であること。
【0080】
【発明の効果】以上説明したように、本発明による物体
搬送装置においては、複数の振動体をその各々の振動面
が略同一平面となるように平行に配している。かかる構
成によれば、個々の振動体の幅寸法は小さくて済み、例
えば副振動体におけるポアソン比やエネルギー伝達距離
の相違等、振動体の振動態様に悪影響を及ぼす因子は抑
えられ、その結果、同相にして振動分布が均一な整った
進行波が得られて物体の搬送を円滑に行うことができ
る。また、この構成では、1つの振動体とその励振をな
すための超音波振動発生部とをユニット化すれば、該ユ
ニットの数を必要に応じて増やすことによって、かなり
大きな物体まで広範な種類の物体に対処し得、汎用性が
高い。更に、本発明のように、幅の狭い振動体を並設す
る構成では、その全体として発生する音のレベルも低く
なり、遮音対策は不必要か、設けるとしても小規模のも
ので充分であり、コストが安く済む。また、幅の狭い振
動体では、消費する電力、すなわちエネルギーのロスも
少なく、エネルギー利用効率が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の実施例としての物体搬送装置
の要部の、一部断面を含む斜視図である。
【図2】図2は、図1に示した物体搬送装置の平面図で
ある。
【図3】図3は、図1及び図2に示した物体搬送装置
の、一部断面を含む正面図である。
【図4】図4は、図2に関するA−A矢視図である。
【図5】図5は、図3に関するC−C矢視図である。
【図6】図6は、図1乃至図3に示した物体搬送装置の
一部の拡大図である。
【図7】図7は、図1乃至図3に示した物体搬送装置が
具備するエネルギー変換部の回路図である。
【図8】図8は、本発明に係る物体搬送装置を用いて行
われた搬送実験の結果を示すグラフである。
【図9】図9は、本発明に係る物体搬送装置を用いて行
われた搬送実験の結果を示すグラフである。
【図10】図10は、従来の物体搬送装置の、一部断面
を含む正面図である。
【図11】図11は、図10に示した物体搬送装置の一
部を拡大した斜視図である。
【符号の説明】
1 搬送ユニット 3 振動体 4 副振動体 7 物体 12 ホーン 14 超音波振動発生部 15 発振器 16 振動子 21,22 リレー

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 振動面が略同一平面となるように平行に
    配された複数の振動体と、 該振動体を励振する超音波励振手段と、 物体を搬送させる搬送手段とを備え、 該振動体の音波の放射圧により該振動体の表面上に物体
    を浮揚させ、搬送させることを特徴とする物体搬送装
    置。
  2. 【請求項2】 前記超音波励振手段は、超音波振動を発
    する振動子と、該振動子を駆動する発振器とを有し、該
    振動子は前記振動体各々に対して個別に設けられている
    ことを特徴とする請求項1記載の物体搬送装置。
  3. 【請求項3】 前記振動体は平板状に形成され、その厚
    み方向に付与される縦振動の1波長の1/3以下に幅寸
    法が設定されていることを特徴とする請求項1又は請求
    項2記載の物体搬送装置。
  4. 【請求項4】 前記放射圧が、物体搬送路の幅方向にお
    ける両縁側が中央に比して大であるように設定されてい
    ることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれ
    か1記載の物体搬送装置。
  5. 【請求項5】 前記超音波励振手段は、前記振動体に伝
    える振動を物体搬送路の幅方向において均一化するため
    の幅振動体を有することを特徴とする請求項1乃至請求
    項4のうちいずれか1記載の物体搬送装置。
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