JP3942494B2 - 高透明易接着性ポリエステルフィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、易接着性フィルムに関し、更に詳しくは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、特定の組成物からなる易接着性塗膜を形成したポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの二軸延伸フィルムは、優れた機械的性質、耐熱性、耐薬品性を有するため、磁気テープ、強磁性薄膜テープ、写真フィルム、包装用フィルム、電子部品用フィルム、電気絶縁フィルム、金属ラミネート用フィルム、ガラスディスプレイ等の表面に貼るフィルム、各種部材の保護用フィルム等の素材として広く用いられている。
【0003】
ポリエステルフィルムは、近年、特に各種光学用フィルムに多く用いられ、液晶表示装置の部材のプリズムレンズシート、タッチパネル、バックライト等のベースフィルムや反射防止用フィルムのベースフィルムやディスプレイの防爆用ベースフィルム等の用途に用いられている。このような光学用フィルムに用いられるベースフィルムは優れた透明性とプリズムレンズ、ハードコート、粘着剤、反射防止処理等に対する優れた易接着性と表面平坦性が要求される。
【0004】
二軸配向ポリエステルフィルムは一般的に他の材料、例えばアクリル系樹脂を主成分とするプリズムレンズやハードコートとの接着性が悪いため、ポリエステルフィルムの表面に、ポリエステル樹脂やアクリル樹脂やウレタン樹脂等の易接着層を積層して用いることが提案されている(例えば、特開平10−119215、特開2000−246855等)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これら樹脂からなる易接着層を形成したものでは、接着力が不足する場合がある。例えば、CRT用のフィルムではハードコート層への接着は良好だが反対面の粘着層への接着が不十分であり、汎用性に乏しい。また、光学用フィルムには透明性および表面平坦性が要求されるため、ポリエステルフィルム中にアンチブロッキング剤として通常添加する粒子を極力減らすか、まったく添加しない必要がある。
【0006】
一方、上記易接着性を満足させるためには,従来易接着層にはガラス転移温度の低い樹脂が用いられてきたが、高度に表面が平坦なフィルムに対して、ガラス転移温度の低い樹脂を易接着層に用いると、フィルムを巻いたり,重ね合わせたときに貼り付きが発生し、フィルム同士が滑らずハンドリング性が悪化したり、滑りにくいために製膜や加工工程で表面に傷が入りやすくなる問題がある。
【0007】
また、光学用途に使用されるポリエステルフィルムは、用途に応じて,ガスバリア層、導電体層、半導体層、発光体層などが積層されるが、これらの層の積層においては、蒸着、イオンプレーティング、スパッタ、プラズマCDV等々の手法が用いられる。上記手法を適用する際には、フィルムロールに一定の張力をかけて、フィルムの平面性を維持しつつ実施されるが、手法によって高低はあるものの、かなりの高温にフィルムがさらされるため、フィルムの伸縮の挙動が積層体の伸縮挙動と大きく異なると、積層体のひび割れや、しわなどが発生し、十分な性能が発揮できないという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解消し、種々の光学用途に用いられる層との接着力に優れ、しかも透明性および表面平坦性に優れたポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、実質的に粒子を含有しないポリエステルフィルムの片面に、ポリエステル樹脂とオキサゾリン基およびポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂を含む塗布層が設けられた高透明易接着性ポリエステルフィルムであって、該フィルムの長手方向の140g/mm2荷重下の200℃での寸法変化率が−2〜+2%であり、かかるポリエステルフィルム表面の3次元中心線平均粗さが0.0005〜0.004μmであり、塗布層表面の3次元中心線平均粗さが0.0001〜0.02μmであることを特徴とする高透明易接着性ポリエステルフィルムである。
【0010】
本発明は好ましい態様として、ポリエステルフィルムのヘーズ値が1.5%である態様、
塗布層中にポリエステル樹脂が5〜90重量%、オキサゾリン基およびポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂が5〜90重量%含まれる態様、
塗布層中に脂肪族ワックスが0.5〜30重量%含まれる態様、
塗布層中に平均粒子径0.005〜0.5μmの粒子が0.1〜20重量%含まれる態様、
ポリエステルフィルムを構成するポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートである態様を包含する。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明において、ポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、芳香族二塩基酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルである。
【0013】
かかるポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等を例示することができ、これらの共重合体またはこれと小割合の他樹脂とのブレンドであってもよい。これらのポリエステルのうち、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが力学的物性や光学物性等のバランスが良いので好ましい。特にポリエチレン−2,6−ナフタレートは機械的強度の大きさ、熱収縮率の小ささ、加熱時のオリゴマー発生量の少なさなどの点でポリエチレンテレフタレートにまさっているので最も好ましい。
【0014】
ポリエステルは、ホモポリマーでも、第三成分を共重合したコポリマーでもよいが、ホモポリマーが好ましい。ポリエステルがポリエチレンテレフタレートである場合、コポリマーとしてイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートが最適である。このイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートは、イソフタル酸が5mol%以下であることが好ましい。ポリエステルにはイソフタル酸以外の共重合成分または共重合アルコール成分が、その特性を損なわない範囲、例えば全酸成分又は全アルコール成分に対して3モル%以下の割合で、共重合されていてもよい。該共重合酸成分としては、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の如き芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸等が例示でき、またアルコール成分としては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の如き脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオール等が例示できる。これらは単独または二種以上を使用することができる。
【0015】
ポリエステルがポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートである場合、主たるジカルボン酸成分としてナフタレンジカルボン酸が用いられ、主たるグリコール成分としてエチレングリコールが用いられる。ナフタレンジカルボン酸としては、たとえば2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸を挙げることができ、これらの中で2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。ここで「主たる」とは、本発明のフィルムの成分であるポリマーの構成成分において全繰返し単位の少なくとも90mol%、好ましくは少なくとも95mol%を意味する。
【0016】
コポリマーである場合、コポリマーを構成する共重合成分としては、分子内に2つのエステル形成性官能基を有する化合物を用いることができ、かかる化合物としては例えば、蓚酸、アジピン酸、フタル酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸等の如きジカルボン酸、p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸の如きオキシカルボン酸、或いはプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール、ポリエチレンオキシドグリコールの如き2価アルコールを好ましく用いることができる。
【0017】
これらの化合物は1種のみ用いてもよく、2種以上を用いることができる。またこれらの中で好ましくは酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、4,4'−ジフェニルジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、p−オキシ安息香酸であり、グリコール成分としてはトリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールネオペンチルグリコール、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物である。
【0018】
また、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートは、例えば安息香酸、メトキシポリアルキレングリコールなどの一官能性化合物によって末端の水酸基および/またはカルボキシル基の一部または全部を封鎖したものであってよく、極く少量の例えばグリセリン、ペンタエリスリトール等の如き三官能以上のエステル形成性化合物で実質的に線状のポリマーが得られる範囲内で共重合したものであってもよい。
【0019】
本発明におけるポリエステルは従来公知の方法で、例えばジカルボン酸とグリコールの反応で直接低重合度ポリエステルを得る方法や、ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとを従来公知のエステル交換触媒である、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、マンガン、コバルトを含む化合物の一種または二種以上を用いて反応させた後、重合触媒の存在下で重合反応を行う方法で得ることができる。重合触媒としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンのようなアンチモン化合物、二酸化ゲルマニウムで代表されるようなゲルマニウム化合物、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラフェニルチタネートまたはこれらの部分加水分解物、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルカリウム、チタントリスアセチルアセトネートのようなチタン化合物を用いることができる。
【0020】
エステル交換反応を経由して重合を行う場合は、重合反応前にエステル交換触媒を失活させる目的でトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、正リン酸等のリン化合物が通常は添加されるが、リン元素としてのポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート中の含有量が20〜100ppmであることがポリエステルの熱安定性の点から好ましい。
【0021】
なお、ポリエステルは、溶融重合後これをチップ化し、加熱減圧下または窒素などの不活性気流中において更に固相重合を施してもよい。
【0022】
本発明においてポリエステルは、エチレンテレフタレート単位またはエチレン−2,6−カルボキシレート単位を90モル%以上、好ましくは95%以上、更に好ましくは97%以上有するポリエステルが好ましい。
【0023】
ポリエステルの固有粘度は0.40dl/g以上であることが好ましく、0.40〜0.90dl/gであることが更に好ましい。固有粘度が0.40dl/g未満では工程切断が多発することがある。また0.9dl/gより高いと溶融粘度が高いため溶融押出しが困難になり、重合時間が長く不経済であり好ましくない。
【0024】
本発明におけるポリエステルフィルムは、実質的に粒子を含有していない必要がある。粒子を含有していると高透明性が損なわれたり、表面が粗面化してしまう。
【0025】
本発明におけるポリエステルフィルムの少なくとも片面には、ポリエステル樹脂とオキサゾリン基およびポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂を含む塗布層を設ける。
【0026】
本発明において塗布層に用いるポリエステル樹脂は、水(多少の有機溶剤を含有していても良い)に可溶性または分散性のポリエステルが好ましい。
【0027】
かかるポリエステル樹脂として、以下に示す多塩基酸またはそのエステル形成誘導体とポリオールまたはそのエステル形成誘導体から得られるポリエステルを挙げることができる。
【0028】
ポリエステル樹脂の多塩基酸成分としては例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を挙げることができる。これら酸成分が2種以上の共重合ポリエステルであることが好ましい。尚、ポリエステル樹脂には、若干量であればマレイン酸、イタコン酸等の不飽和多塩基酸成分が、或いはP−ヒドロキシ安息香酸の如きヒドロキシカルボン酸成分が含まれていてもよい。
【0029】
ポリエステル樹脂のポリオール成分としては、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジメチロールプロパンや、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールやこれらモノマーが挙げることができる。
【0030】
本発明で塗布層に用いるオキサゾリン基及びポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂は、水(多少の有機溶剤を含有していても良い)に可溶性または分散性のアクリルが好ましい。かかるオキサゾリン基及びポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂としては以下に示すようなモノマーを成分として含むものを挙げることができる。
【0031】
オキサゾリン基を有するモノマーとしては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリンを挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的に入手しやすく好適である。オキサゾリン基を有するアクリル樹脂を用いることにより塗布層の凝集力が向上し、ハードコートや粘着層との密着性がより強固になる。更にフィルム製膜工程内やハードコートの加工工程内の金属ロールに対する耐擦過性を付与できる。
【0032】
また、ポリアルキレンオキシド鎖を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸のエステル部にポリアルキレンオキシドを付与させたものを挙げることができる。ポリアルキレンオキシド鎖はポリメチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド等を挙げることができる。ポリアルキレンオキシド鎖の繰り返し単位は3〜100であることが好ましい。ポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂を用いることで塗布層中のポリエステル樹脂とアクリル樹脂の相容性がポリアルキレンオキシド連鎖を含有しないアクリル樹脂と比較し良くなり、塗布層の透明性を向上させることができる。尚、ポリアルキレンオキシド鎖の繰り返し単位が3より少ないとポリエステル樹脂とアクリル樹脂との相容性が悪く塗布層の透明性が悪くなり、100より大きいと塗布層の耐湿熱性が下がり、高湿度、高温下でハードコート等との密着性が悪化する。
【0033】
アクリル樹脂のその他の共重合成分として例えば以下のモノマーを挙げることができる。即ち、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等);2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシ含有モノマー;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等のカルボキシル基またはその塩を有するモノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリレート(アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等)、アクリロイルモルホリン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド等のアミド基を有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物のモノマー;ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマール酸モノエステル、アルキルイタコン酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ブタジエン等である。
【0034】
塗布層を形成するポリエステル樹脂の塗布層中の含有割合は5〜95重量%であることが好ましく、特に50〜90重量%であることが好ましい。塗布層を形成するオキサゾリン基及びポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂の塗布層中の含有割合は50〜90重量%であることが好ましく、特に10〜50重量%であることが好ましい。ポリエステル樹脂が95重量%を超え、もしくはオキサゾリン基及びポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂が5重量%未満になると塗布層の凝集力が低下し、ハードコートや粘着剤への接着性が不十分となる場合があり、好ましくない。アクリル樹脂が90重量%を超えるとポリエステルフィルムとの密着性が低下し、ハードコートや粘着剤への接着性が不十分となる場合があり好ましくない。
【0035】
塗布層中には脂肪族ワックスを0.5〜30重量%含有させることが好ましく、1重量%〜10重量%含有させることが更に好ましい。この割合が0.5重量%より少ないとフィルム表面の滑性が得られないことがあり、好ましくない。30重量%を超えるとポリエステルフィルム基材への密着やハードコートや粘着剤等に対する易接着性が不足する場合があり好ましくない。
【0036】
上記の脂肪族ワックスの具体例は、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、パームワックス、ロジン変性ワックス、オウリキュリーワックス、サトウキビワックス、エスバルトワックス、バークワックス等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン、鯨ロウ、イボタロウ、セラックワックス等の動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシンワックス等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス、フィッシャートロプッシュワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリフロピレンワックス等の合成炭化水素系ワックス等である。更に、ハードコートや粘着剤等に対する易接着性と滑性が良好なことから、カルナバワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがより好ましい。特に環境問題や取扱のし易さから水分散体がより好ましい。
【0037】
塗布層中には、平均粒子径が0.005〜0.5μmの範囲のフィラーを0.1〜20重量%含有させることが好ましい。塗布層中のフィラーの含有量が0.1重量%より少ないとフィルムの滑り性が不足し、ロール状に巻き取ることが困難になることがあり、20重量%を超えると塗布層の透明性が不足して、ディスプレイ用途に使用できなくなることがあり好ましくない。
【0038】
上記のフィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、ケイ酸ソーダ、水酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化錫、三酸化アンチモン、カーボンブラック、二硫化モリブデン等の無機微粒子、アクリル系架橋重合体、スチレン系架橋重合体、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレンワックス等の有機微粒子等を挙げることができる。これらのうち、水不溶性の固体物質は、水分散液中で沈降するのを避けるため、比重が3を超えない超微粒子を選ぶことが好ましい。
【0039】
本発明におけるポリエステルフィルムは、長手方向の140g/mm2荷重下の200℃での寸法変化率が−2〜+2%である必要がある。−2%未満または+2%を越えると、ポリエステルフィルム上に機能層を積層する際、あるいは積層した後に積層体にひび割れが生じたり、逆にしわが寄ることで積層体が破壊されるなどして充分な機能が発揮できなくなる。140g/mm2荷重下の200℃での寸法変化率は、より好ましくは−1.5〜+1.5%、さらに好ましくは−1〜+1%、特に好ましくは−0.5〜+0.5%である。
【0040】
本発明の高透明性易接着ポリエステルフィルムは、ヘーズ値が1.5%以下であることが好ましい。さらに好ましいヘーズ値は1.0%以下、特に好ましくは0.5%以下である。
【0041】
3次元中心線平均粗さは、両面共に好ましくは0.0001〜0.02μm、さらに好ましくは、0.0001〜0.015μm、さらに好ましくは0.0001〜0.010μmである。特に、少なくとも片面の3次元中心線平均粗さが0.0001〜0.005μmであると、機能層を積層したときの機能層表面が極めて平坦となるので好ましい。少なくとも片面の最も好ましい表面粗さは、0.0005〜0.004μmである。
【0042】
本発明における高透明易接着ポリエステルフィルムの厚みは1〜500μmであることが好ましく、より好ましくは3〜400μm、更に好ましくは6〜300μm、特に好ましくは12〜250μmである。
【0043】
次に、本発明の高透明易接着フィルムの好ましい製造方法について説明する。なおガラス転位温度をTgと略記する。
【0044】
本発明におけるポリエステルフィルムは、ポリエステルをフィルム状に溶融押出し、キャスティングドラムで冷却固化させて未延伸フィルムとし、この未延伸フィルムをTg〜(Tg+60)℃で長手方向に1回もしくは2回以上合計の倍率が3倍〜6倍になるよう延伸し、その後Tg〜(Tg+60)℃で幅方向に倍率が3〜5倍になるように延伸し、必要に応じて更にTm180℃〜255℃で1〜60秒間熱処理を行うことにより得ることができる。
【0045】
本発明において塗布層の塗設に用いられる組成物は、塗布層(以下『塗膜』いうことがある)を形成させるために、水溶液、水分散液或いは乳化液等の水性塗液の形態で使用されることが好ましい。塗膜を形成するために、必要に応じて、前記組成物以外の他の樹脂、例えば帯電防止剤、着色剤、界面活性剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。特に、滑剤を添加することで滑性、耐ブロッキング性を更に良好なものにすることができる。
【0046】
本発明に用いる水性塗液の固形分濃度は、通常20重量%以下であるが、特に1〜10重量%であることが好ましい。この割合が1重量%未満であると、ポリエステルフィルムへの塗れ性が不足することがあり、一方、20重量%を超えると塗液の安定性や塗布層の外観が悪化することがある。
【0047】
水性塗液のポリエステルフィルムへの塗布は、任意の段階で実施することができるが、ポリエステルフィルムの製造過程で実施するのが好ましく、更には配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムに塗布するのが好ましい。
【0048】
ここで、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムとは、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向または横方向の何れか一方に配向せしめた一軸配向フィルム、更には縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸配向せしめたもの(最終的に縦方向また横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)等を含むものである。
【0049】
なかでも、未延伸フィルムまたは一方向に配向せしめた一軸延伸フィルムに、上記組成物の水性塗液を塗布し、そのまま縦延伸および/または横延伸と熱固定とを施すのが好ましい。
【0050】
水性塗液をフィルムに塗布する際には、塗布性を向上させるための予備処理としてフィルム表面にコロナ表面処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施すか、あるいは組成物と共にこれと化学的に不活性な界面活性剤を併用することが好ましい。
【0051】
かかる界面活性剤は、ポリエステルフィルムへの水性塗液の濡れを促進するものであり、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン型、ノニオン型界面活性剤を挙げることができる。界面活性剤は、塗膜を形成する組成物中に、1〜10重量%含まれていることが好ましい。
【0052】
塗液の塗布量は、塗膜の厚さが0.01〜0.3μm、好ましくは0.02〜0.25μmの範囲となるような量であることが好ましい。塗膜の厚さが薄過ぎると、接着力が不足し、逆に厚過ぎると、ブロッキングを起こしたり、ヘーズ値が高くなったりする可能性がある。
【0053】
塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等を単独または組合せて用いることができる。尚、塗膜は、必要に応じ、フィルムの片面のみに形成してもよいし、両面に形成してもよい。
【0054】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
尚、例中の各特性値は、下記の方法により測定した。
【0055】
(1)寸法変化率
セイコーインスツルメンツ(株)製のTMA/SS120Cを用い、140g/mm2の荷重をかけた状態で30℃から250℃まで20℃/分の昇温速度で昇温させ、寸法変化を測定し、下記式により寸法変化率を算出した。
【0056】
【数1】
Figure 0003942494
【0057】
(2)ヘーズ
JIS K6714−1958に従い、全光線透過率Tt(%)と散乱光透過率Td(%)を求め、ヘーズ(Td/Tt×100)(%)を算出した。
【0058】
(3)3次元中心線平均粗さ
非接触式3次元粗さ計(小坂研究所製、ET30HK)を用いて波長780nmの半導体レーザー、ビーム径1.6μmの光触針で測定長(LX)1mm、サンプリングピッチ2μm、カットオフ0.25mm、縦方向拡大倍率10万倍、横方向拡大倍率200倍、走査線数100本(従って、Y方向の測定長LY=0.2mm)の条件にてフィルム表面の突起プロファイルを測定し、その粗さ曲面をZ=F(X、Y)で表したとき、次の式で得られる値(Ra、単位nm)をフィルムの表面粗さとして定義した。
【0059】
【数2】
Figure 0003942494
【0060】
(4)ポリエステルフィルムの厚み
アンリツ(株)製電子マイクロメータ(K−312A型)を用いて、針圧30gにてフィルム厚みを測定した。
【0061】
(5)塗布層の厚み
フィルムの小片をエポキシ樹脂(リファインテック(株)製エポマウント)中に包埋し、Reichert-Jung社製Microtome2050を用いて包埋樹脂ごと50nm厚さにスライスし、透過型電子顕微鏡(LEM-2000)にて加速電圧100KV、倍率10万倍にて観察し、塗膜層の厚みを測定した。
【0062】
(6)平均粒径
塗布層厚みの測定と同様の操作を行ない、100個の粒子の粒子径を測定し、平均値を平均粒子径とした。
【0063】
(7)接着性
・ハードコート
易接着性ポリエステルフィルムの塗膜形成面に厚さ10μmのハードコート層を形成して碁盤目のクロスカット(1mm2のマス目を100個)を施し、その上に24mm幅のセロハンテープ(ニチバン社製)を貼り付け、180℃の剥離角度で急激に剥がした後、剥離面を観察し、下記の基準で評価した。
5:剥離面積が10%未満……接着力極めて良好
4:剥離面積が10%以上20%未満……接着力良好
3:剥離面積が20%以上30%未満……接着力やや良好
2:剥離面積が30%以上40%未満……接着力不良
1:剥離面積が40%を超えるもの……接着力極めて不良
・粘着力(PSA)
易接着性ポリエステルフィルムの塗布層形成面に厚さ20μmの粘着剤(PSA)層を形成してフロートガラスに粘着剤層面を貼付、23℃、65%RHの雰囲気下で1日経時させ、90°の剥離角度にて剥離し、ガラス表面に粘着剤(PSA)の残留状態を観察し、下記の基準で評価した。
【0064】
尚、粘着剤(PSA:Pressure-Sensitive-Adhesive)には、ウレタン含有アクリレート共重合体(アクリル成分n−ブチルアクリレート(86モル%)、メチルアクリレート(14モル%))を用いた。
5:粘着剤(PSA)残留面積が10%未満……接着力極めて良好
4:粘着剤(PSA)残留面積が10%以上20%未満……接着力良好
3:粘着剤(PSA)残留面積が20%以上30%未満……接着力やや良好
2:粘着剤(PSA)残留面積が30%以上40%未満……接着力不良
1:粘着剤(PSA)残留面積が40%を超えるもの……接着力極めて不良
【0065】
(8)耐ブロッキング性
2枚のフィルムを、塗布層形成面と非形成面が接するように重ね合せ、これに60℃、90%RHの雰囲気下で17時間にわたって0.6Kg/cm2の圧力をかけ、その後、剥離して、その剥離力により耐ブロッキング性を下記の基準で評価した。
◎:剥離力<98mN/5cm ……耐ブロッキング性極めて良好
○:98mN/5cm≦剥離力<147mN/5cm……耐ブロッキング性良好
△:147mN/5cm≦剥離力<196mN/5cm……耐ブロッキング性やや良好
×:196mN/5cm≦剥離力 ……耐ブロッキング性不良
【0066】
(9)ガラス転移温度
サンプル約10mgを測定用のアルミニウム製パンに封入して示差熱量計(TAinstruments社製DSC2920)に装着し、25℃から20℃/分の速度で300℃まで昇温させ、300℃で5分間保持した後取出し、直ちに氷の上に移して急冷する。このパンを再度示差熱量計に装着し、−70℃から10℃/分の速度で昇温させてガラス転移温度(Tg:℃)を測定した。
【0067】
(10)固有粘度
固有粘度([η]dl/g)は、35℃のo−クロロフェノール溶液で測定した。
【0068】
(11)熱収縮率
フィルムサンプルに30cm間隔で標点をつけ、荷重をかけずに所定の温度のオーブンで熱処理を実施し、熱処理後の標点間隔を測定して、下記式にて熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)
=(熱処理前標点間距離−熱処理後標点間距離)/熱処理前標点間距離×100
【0069】
[塗布層中の樹脂組成と各成分の配合比]
実施例、比較例で用いた塗布層の組成と配合比は表1の通りである。
【0070】
【表1】
Figure 0003942494
【0071】
ポリエステル1:酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸70モル%/イソフタル酸25モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%、グリコール成分がエチレングリコール80モル%/ジエチレングリコール20モル%で構成されている(Tg=80℃、平均分子量13000)。
【0072】
尚、ポリエステル1は、特開平06−116487号公報の実施例1に記載の方法に準じて下記の通り製造した。即ち、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル47部、イソフタル酸ジメチル13部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル4部、エチレングリコール31部、ジエチレングリコール5部を反応器に仕込み、これにテトラブトキシチタン0.05部を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃にコントロールして加熱し、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行った。次いで反応系の温度を徐々に255℃まで上昇させ系内を1mmHgの減圧にして重縮合反応を行い、ポリエステル1を得た。
【0073】
ポリエステル2:酸成分がテレフタル酸60モル%/イソフタル酸35モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%、グリコール成分がエチレングリコール80モル%/ジエチレングリコール20モル%で構成されている(Tg=40℃、平均分子量14000)。
【0074】
尚、ポリエステル2は、特開平06−116487号公報の実施例1に記載の方法に準じて下記の通り製造した。即ち、テレフタル酸ジメチル35部、イソフタル酸ジメチル21部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル4部、エチレングリコール34部、ジエチレングリコール6部を反応器に仕込み、これにテトラブトキシチタン0.05部を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃にコントロールして加熱し、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行った。次いで反応系の温度を徐々に255℃まで上昇させ系内を1mmHgの減圧にして重縮合反応を行い、ポリエステル2を得た。
【0075】
アクリル1:メチルメタクリレート40モル%/2−イソプロペニル−2−オキサゾリン30モル%/ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート10モル%/アクリルアミド20モル%で構成されている(Tg=50℃)。
【0076】
尚、アクリル1は、特開昭63−37167号公報の製造例1〜3に記載の方法に準じて下記の通り製造した。即ち、四つ口フラスコに、界面活性剤としてラウリルスルホン酸ナトリウム3部、およびイオン交換水181部を仕込んで窒素気流中で60℃まで昇温させ、次いで重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5部、亜硝酸水素ナトリウム0.2部を添加し、更にモノマー類である、メタクリル酸メチル30.1部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン21.9部、ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリル酸39.4部、アクリルアミド8.6部の混合物を3時間にわたり、液温が60〜70℃になるよう調整しながら滴下した。滴下終了後も同温度範囲に2時間保持しつつ、攪拌下に反応を継続させ、次いで冷却して固形分が35%のアクリル1の水分散体を得た。
【0077】
アクリル2:メチルメタクリレート40モル%/2−イソプロペニル−2−オキサゾリン40モル%/アクリルアミド20モル%で構成されている(Tg=80℃)。
【0078】
尚、アクリル2は、特開昭63−37167号公報の製造例1〜3に記載の方法に準じて下記の通り製造した。即ち、四つ口フラスコに、界面活性剤としてラウリルスルホン酸ナトリウム3部、およびイオン交換水181部を仕込んで窒素気流中で60℃まで昇温させ、次いで重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5部、亜硝酸水素ナトリウム0.2部を添加し、更にモノマー類である、メタクリル酸メチル44.4部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン43.0部、アクリルアミド12.6部の混合物を3時間にわたり、液温が60〜70℃になるよう調整しながら滴下した。滴下終了後も同温度範囲に2時間保持しつつ、攪拌下に反応を継続させ、次いで冷却して固形分が35%のアクリル2の水分散体を得た。
【0079】
アクリル3:構成成分がメチルメタクリレート10モル%/エチルアクリレート80モル%/N−メチロールアクリルアミド10モル%のアクリル共重合体(Tg=−5℃)。
【0080】
尚、アクリル3は、特開昭63−37167号公報の製造例1〜3に記載の方法に準じて下記の通り製造した。即ち、四つ口フラスコに、界面活性剤としてラウリルスルホン酸ナトリウム3部、およびイオン交換水181部を仕込んで窒素気流中で60℃まで昇温させ、次いで重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5部、亜硝酸水素ナトリウム0.2部を添加し、更にモノマー類である、メタクリル酸メチル10.1部、アクリル酸エチル81.1部、N−メチロールアクリルアミド8.8部の混合物を3時間にわたり、液温が60〜70℃になるよう調整しながら滴下した。滴下終了後も同温度範囲に2時間保持しつつ、攪拌下に反応を継続させ、次いで冷却して固形分が35%のアクリル3の水分散体を得た。
【0081】
添加剤1:シリカフィラー(平均粒径:100nm)(日産化学株式会社製 商品名スノーテックスZL)
添加剤2:カルナバワックス(中京油脂株式会社製 商品名セロゾール524)
濡れ剤:ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル(三洋化成株式会社製 商品名ナロアクティーN−70)
【0082】
[実施例1]
ナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジメチル100部、およびエチレングリコール60部を、エステル交換触媒として酢酸マンガン四水塩0.03部を使用し、150℃から238℃に徐々に昇温させながら120分間エステル交換反応を行なった。途中反応温度が170℃に達した時点で三酸化アンチモン0.024部を添加し、エステル交換反応終了後、リン酸トリメチル(エチレングリコール中で135℃、5時間0.11〜0.16MPaの加圧下で加熱処理した溶液:リン酸トリメチル換算量で0.023部)を添加した。その後反応生成物を重合反応器に移し、290℃まで昇温し、27Pa以下の高真空下にて重縮合反応を行って、固有粘度が0.61dl/gの、実質的に粒子を含有しない、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを得た。
【0083】
このポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのペレットを170℃で6時間乾燥後、押出機ホッパーに供給し、溶融温度305℃で溶融し、平均目開きが17μmのステンレス鋼細線フィルターで濾過し、3mmのスリット状ダイを通して表面温度60℃の回転冷却ドラム上で押出し、急冷して未延伸フィルムを得た。このようにして得られた未延伸フィルムを120℃にて予熱し、さらに低速、高速のロール間で15mm上方より900℃のIRヒーターにて加熱して縦方向に3.0倍に延伸した。この縦延伸後のフィルムの片面に上記の塗剤1を乾燥後の塗膜厚みが0.1μmになるようにロールコーターで塗工した。
【0084】
続いてテンターに供給し、145℃にて横方向に、3.1倍に延伸した。得られた二軸配向フィルムを240℃の温度で5秒間熱固定し厚み75μmの高透明ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
【0085】
【表2】
Figure 0003942494
【0086】
[実施例2〜4]
フィルムの延伸倍率、熱固定温度、塗膜層の組成と厚み、フィルムの最終厚みを表2のとおりとする以外は実施例1と同様にして、高透明易接着ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
【0087】
[実施例5]
ジメチルテレフタレート96部、エチレングリコール58部、酢酸マンガン0.038部及び三酸化アンチモン0.041部を夫々反応器に仕込み、攪拌下内温が240℃になるまでメタノールを留出せしめながらエステル交換反応を行い、該エステル交換反応が終了したのちトリメチルホスフェート0.097部を添加した。引き続いて、反応生成物を昇温し、最終的に高真空下280℃の条件で重縮合を行って固有粘度([η])0.64の実質的に粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートを得た。
【0088】
次にこのポリエチレンテレフタレートのチップを170℃で3時間乾燥したのち、290℃で溶融押出し、20℃に保持した冷却ドラム上で急冷固化せしめ未延伸フィルムを得た。該未延伸フィルムを95℃で縦方向に3.3倍延伸し、次いでロールコーターで片面に上記の塗剤1を乾燥後の厚み0.10μmになるように塗布し、110℃で横方向に3.5倍に延伸したのち、235℃で熱処理し厚み125μmの二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
【0089】
[比較例1]
実施例1で用いたポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートに、平均粒径0.35μmの球状シリカ粒子を0.1重量%練り込んだものを作成し、これを実施例1と同様に乾燥、押出し、縦延伸を行なった。その後、塗液組成を上記の塗液5とする以外は実施例1と同様にして、厚み75μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0090】
得られたフィルムは粒子を含有しているためヘーズが高く、かつ表面が粗れており、また塗膜層の組成が本発明の範囲外であるため、粘着層との密着性が悪かった。
【0091】
[比較例2]
延伸倍率、熱固定温度、塗膜層組成を表2のとおり変更する以外は実施例1と同様にして、厚み75μmの二軸配向フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。寸法変化率が大きく、かつ粘着剤との密着性や、耐ブロッキング性に劣るものであった。
【0092】
[比較例3]
塗膜層の組成を表1の塗液7とする以外は、実施例1と同様にして、二軸配向フィルムを得た。得られたフィルムは粘着剤との密着性に劣るものであった。
【0093】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた透明性、表面平坦性、易接着性、加工適性を有し、特に有機エレクトロ・ルミネッセンス(有機EL)素子用、電子ペーパー用、太陽電池用の基板フィルムとして有用なフィルムを得ることができる。

Claims (6)

  1. 実質的に粒子を含有しないポリエステルフィルムの片面に、ポリエステル樹脂とオキサゾリン基およびポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂を含む塗布層が設けられた高透明易接着性ポリエステルフィルムであって、該フィルムの長手方向の140g/mm2荷重下の200℃での寸法変化率が−2〜+2%であり、かかるポリエステルフィルム表面の3次元中心線平均粗さが0.0005〜0.004μmであり、塗布層表面の3次元中心線平均粗さが0.0001〜0.02μmであることを特徴とする高透明易接着性ポリエステルフィルム。
  2. ポリエステルフィルムのヘーズ値が1.5%以下である請求項1記載の高透明易接着性ポリエステルフィルム。
  3. 塗布層中にポリエステル樹脂が5〜90重量%、オキサゾリン基およびポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂が5〜90重量%含まれる請求項1または2記載の高透明易接着性ポリエステルフィルム。
  4. 塗布層中に脂肪族ワックスが0.5〜30重量%含まれる請求項1〜3いずれかに記載の高透明易接着性ポリエステルフィルム。
  5. 塗布層中に平均粒子径0.005〜0.5μmの粒子が0.1〜20重量%含まれる請求項1〜4いずれかに記載の高透明易接着性ポリエステルフィルム。
  6. ポリエステルフィルムを構成するポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートである請求項1〜5いずれかに記載の高透明易接着性ポリエステルフィルム。
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