JP4097534B2 - 透明積層ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステルからなる基材層の少なくとも片面に被膜層を設けた積層フィルムに関する。更に詳しくは、液晶表示装置の部材のプリズムレンズシート、タッチパネル、バックライト等のベースフィルムや反射防止用フィルムのベースフィルム、プラズマディスプレイの電磁波シールドフィルム、有機ELディスプレイのベースフィルム、ディスプレイの防爆用ベースフィルム等の光学用途に用いられるポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレートの二軸延伸フィルムは、優れた機械的性質、耐熱性、耐薬品性を有するため、磁気テープ、強磁性金属薄膜テープ、写真フィルム、包装用フィルム、電子部品用フィルム、電気絶縁フィルム、金属板ラミネート用フィルム、ガラスディスプレイなどの表面に貼るフィルム、各種部材の保護用フィルム等の素材として広く用いられている。
【0003】
近年、特に各種光学用途に多く用いられ、液晶表示装置の部材のプリズムレンズシート、タッチパネル、バックライト等のベースフィルムや反射防止用フィルムのベースフィルム、プラズマディスプレイの電磁波シールドフィルム、有機ELディスプレイのベースフィルム、ディスプレイの防爆用ベースフィルム等の用途に用いられている。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−152324号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平11−152325号公報
【0006】
【特許文献3】
特公平4−57692号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このような光学用フィルムに用いられるベースフィルムには優れた透明性が要求される。一方、透明なフィルムの表面は一般的に平滑であるため加工時に傷が入りやすく、優れた耐擦り傷性を兼ね備えることも必要とされる。光学用フィルムには透明性、および表面平坦性が要求されるため、ポリエステルフィルム中にアンチブロッキング剤として通常添加する粒子を極力減らすか、まったく添加しないことが必要である。このようなフィルムは滑り性が悪く、巻き取れないので、少なくとも片面に易滑性の塗膜を形成させる必要がある。また、フィルムが過度に結晶化し易いと透明性が低下し易くなる。
【0008】
本発明は、かかる従来技術課題を解消し、透明性と耐擦り傷性を両立するポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の透明積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルからなる基材層の少なくとも片面に被膜層を設けた積層フィルムであって、基材層には実質的に粒子を含有せず、被膜層には平均粒径10nm以上150nm以下の不活性粒子を含有し、基材層は、Mn化合物をMn元素量で30〜200重量ppm、Sb化合物をSb元素量で30〜300重量ppm、さらにジエチレングリコール成分を0.1〜2.5重量%含有し、ポリエステルのフィルム厚み方向の屈折率は1.490以上1.510以下であり、積層フィルムは厚みが20〜300μmかつ全光線透過率が86%以上であることを特徴とする。
【0010】
好ましい実施態様として、被膜層を設けた側の基材層表面の中心線表面粗さRaが1nm以上20nm以下であること、被膜層中の不活性粒子の含有量が0.1〜20重量%であること、基材層が、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリエチレン−2,6−ナフタレートを主体とするポリエステルフィルムであること等を包含する。
【0011】
[ポリエステル]
本発明におけるポリエステルとしては、主たる酸成分が芳香族ジカルボン酸からなり、主たるグリコール成分が脂肪族グリコールからなる、フィルム形成性の芳香族ポリエステルが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、アンスラセンジカルボン酸などを挙げることができる。脂肪族グリコールとしては、例えばエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコールなどの炭素数2〜10のポリメチレングリコールあるいはシクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族ジオールなどを挙げることができる。
【0012】
ポリエステルとしては、アルキレンテレフタレートまたはアルキレンナフタレートを主たる構成成分とするものが好ましく用いられる。前記ポリエステルのうちでも、特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートをはじめとして、例えば全酸成分の80モル%以上がテレフタル酸または2,6−ナフタレンジカルボン酸であり、全グリコール成分の80モル%以上がエチレングリコールである共重合体が力学的物性や光学物性等のバランスが良いので好ましい。その際、透明性を損なわない程度であれば、全酸成分の20モル%以下はテレフタル酸または2,6−ナフタレンジカルボン酸以外の上記芳香族ジカルボン酸であることができ、また例えば、アジピン酸、セバチン酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸などであることができる。また、全グリコール成分の20モル%以下は、エチレングリコール以外の上記グリコールであることができ、また例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどの脂肪族ジオール、1,4−ジヒドロキシジメチルベンゼンなどの芳香環を有する脂肪族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール(ポリオキシアルキレングリコール)などであることもできる。
【0013】
本発明におけるポリエステルには、また、本発明の効果を損なわないかぎり、例えばヒドロキシ安息香酸などの芳香族オキシ酸、ω−ヒドロキシカプロン酸などの脂肪族オキシ酸などのオキシカルボン酸に由来する成分を、ジカルボン酸成分およびオキシカルボン酸成分の総量に対し、20モル%以下で共重合あるいは結合するものも包含される。前記ポリエステルには、さらに、ポリマーが実質的に線状である範囲の量であり、かつ本発明の効果を損なわないかぎり、例えば全酸成分に対し2モル%以下の量で、3官能以上のポリカルボン酸またはポリヒドロキシ化合物、例えばトリメリット酸、ペンタエリスリトールなどを共重合したものも包含される。前記ポリエステルは、それ自体公知であり、かつそれ自体公知の方法で製造することができる。
【0014】
本発明におけるポリエステルは、マンガン元素Mnおよびアンチモン元素Sbを単独または複合の化合物として含有する。そして、これら化合物はポリエステル中に可溶化している。そこでMn元素およびSb元素の含有量並びにその比率を適正化することが必要である。これら元素の化合物としては、ポリエステル製造時の反応触媒活性、安定化特性を向上させ得る作用を奏するものが好ましい。Mn化合物としては、酸化物、塩化物、炭酸塩、カルボン酸塩などが好ましく、特に酢酸塩が好ましい。Sb化合物としては、例えば三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、酒石酸アンチモンカリウム、オキシ塩化アンチモン、トリフェニルアンチモンなどが挙げられる。なお、これらの化合物はグリコールに可溶なものが好ましい。また、これらの化合物は、単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0015】
本発明においては基材層のポリエステル中に、Mn化合物をMn元素の含有量で30〜200重量ppm含有させることを必要とし、50〜200重量ppmがより好ましく、一方Sb化合物はSb元素量で30〜300重量ppm含有させることを必要とし、50〜250重量ppmがより好ましい。いずれかの元素が下限以下であると重合が困難であり、上限以上であると着色して光学用途に不適である。
【0016】
本発明において、Mn化合物、およびSb化合物の添加時期および添加方法については、特に限定されるものではないが、例えばMn化合物については、反応物の固有粘度(ο−クロロフェノール中の溶液として35℃で測定)が0.2dl/gに到達するまでの間に添加するのが好ましい。特に、エステル交換法ではエステル交換反応開始前に該化合物を添加すると、エステル交換触媒として利用することができて好適である。その際、反応を常圧または加圧下で実施してもよく、特に加圧で行なうことは反応時間を短縮することができて好ましい。前記Sb化合物は、反応物の固有粘度が0.3dl/gに到達する以前の任意の時期に添加するのが好ましい。本発明では、さらに、本発明の効果を妨げない範囲で、ポリエステル中に、ポリマー可溶の他の金属成分が含まれてもよく、例えばCa、Mg、Zn、Coなどの各元素を含む化合物を含有してもよい。
【0017】
エステル交換反応を経由して重合を行う場合は、重合反応前にエステル交換触媒を失活させる目的でトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、正リン酸等のリン化合物が通常は添加されるが、ポリエステルの熱安定性の点からリン元素としての含有量は30〜100重量ppmであることが好ましい。
【0018】
なお、ポリエステルは、溶融重合後これをチップ化し、加熱減圧下または窒素などの不活性気流中において更に固相重合を施してもよい。
【0019】
ポリエステルの固有粘度は0.40dl/g以上であることが好ましく、0.40〜0.90dl/gであることが更に好ましい。固有粘度が0.40dl/g未満では工程切断が多発することがあり、またフィルムがデラミネーション(層状剥離)を起こしやすい。また0.90dl/gより高いと溶融粘度が高いため溶融押出しが困難になり、また重合時間が長く不経済であり好ましくない。
【0020】
本発明において基材層には実質的に粒子を含有させないとは、製膜時のフィルムの巻取り性や、ハードコート層や粘着剤等を塗設する際のフィルムの搬送性等を良くするための滑剤としての有機又は無機の不活性粒子を、基材層に含有させないことである。滑り性の確保については、後に述べる。
【0021】
本発明におけるポリエステルは、その製造過程で副生成したまたは共重合成分として添加されたジエチレングリコール(以下、DEGと称することがある)成分の含有量が0.1〜2.5重量%の範囲である必要であり、好ましいDEG成分の含有量は、0.2〜2.2重量%、特に0.3〜2.0重量%の範囲である。DEG量が2.5重量%を超えると耐熱性が不足して、製膜工程の熱で透明性が劣りやすい。一方、ポリエステルに含有されるDEG量を0.1重量%未満にするには、ポリマーの生産性を著しく低下させるような過度の負担が必要なため、好ましくない。
【0022】
本発明で使用するポリエステル中のDEG量を2.5重量%以下にするには、エステル交換反応を経由して重縮合反応するエステル交換法の場合、エステル交換反応が終了してから重縮合反応の減圧開始までの時間を例えば20分以内にすること、また、高温反応下でのエチレングリコールの飛散速度を早めることが有効である。本発明のポリエステルフィルムは、本発明の効果を阻害しない限りは、添加剤として例えば、帯電防止剤、UV吸収剤、酸化防止剤、安定剤等を添加しても差し支えない。
【0023】
[被膜層]
本発明の透明積層ポリエスエルフィルムは、少なくとも基材層の片面に、粒径10nm以上150nm以下の不活性粒子を含む被膜層を設ける必要がある。この被膜層を形成させる樹脂としては特に限定されないが、共重合ポリエステル系樹脂を主成分とすることが好ましい。共重合ポリエステル樹脂としては、例えば多塩基酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等が挙げられ、また、ポリオール成分としては、エチレングリコール、1、4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1、6−ヘキサンジオール、1、4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジメチロールプロパン、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール等が挙げられる。特にガラス転移点が40〜100℃の範囲にあるポリエステル樹脂が好ましい。また、アクリル系樹脂との接着性を向上させ、且つ被膜層の耐スクラッチ性を向上させるために、アルキルアクリレート、アルキルアクリレート等のモノマーと主成分とするアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、架橋剤等を含有させてもよい。
【0024】
被膜層には、耐スクラッチ性、ハンドリング性付与のために不活性粒子を含有することが好ましい。不活性粒子の粒子径は10〜150nmの範囲であることを必要とし、含有量は0.1〜20重量%であることが好ましい。粒子径が10nm未満であるか、被膜層中の不活性粒子の含有量が0.1重量%より少ないとフィルムが滑らなくなり、スクラッチ傷耐性やハンドリング性が不十分となる。不活性粒子の粒子径が150nmを超えるか、含有量が20重量%を超えると不活性粒子の脱落が起こりやすくなり、また被膜層の透明性が損なわれる。
【0025】
かかる不活性粒子からなるフィラーは、有機又は無機の微粒子であり、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン、酸化珪素、酸化亜鉛、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子等が例示される。不活性粒子は単成分でもよく、また2種類以上の他成分でも構わない。2種類以上の不活性粒子を用いた場合は、その数平均粒径を用いる。
【0026】
本発明で用いられる被膜層は、水溶性、水分散性、或いは乳化液等の水性塗液の形態で使用されることが好ましい。被膜を形成するために、必要に応じて、上記組成物以外の他の樹脂や化合物、例えば帯電防止剤、界面活性剤、ワックス、架橋剤などを添加することができる。
【0027】
本発明において塗布層の塗設に用いられる組成物は、塗布層(以下「塗膜」ということがある)を形成させるために、水溶液、水分散液或いは乳化液等の水性塗液の形態で使用されることが好ましい。塗膜を形成するために、必要に応じて、塗膜組成物以外の他の樹脂、例えば帯電防止剤、着色剤、界面活性剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。特に、滑剤を添加することで滑性、耐ブロッキング性を更に良好なものにすることができる。
【0028】
本発明に用いる水性塗液の固形分濃度は、通常20重量%以下であるが、特に1〜10重量%であることが好ましい。この割合が1重量%未満であると、基材層への塗れ性が不足することがあり、一方、20重量%を超えると塗液の安定性や塗工が困難になることがある。
【0029】
水性塗液の基材層への塗布は、任意の段階で実施することができるが、基材層フィルムの製造過程で実施するのが好ましく、更には配向結晶化が完了する前の基材層フィルムに塗布するのが好ましい。ここで、結晶配向が完了する前の基材層フィルムとは、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向または横方向の何れか一方に配向せしめた一軸配向フィルム、更には縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸配向せしめたもの(最終的に縦方向また横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)等を含むものである。なかでも、縦方向に配向せしめた一軸延伸フィルムに、上記組成物の水性塗液を塗布し、そのまま横延伸と熱固定とを施すのが好ましい。
【0030】
水性塗液をフィルムに塗布する際には、塗布性を向上させるための予備処理としてフィルム表面にコロナ表面処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施すか、あるいは組成物と共にこれと化学的に不活性な界面活性剤を併用することもできる。
【0031】
かかる界面活性剤は、基材層への水性塗液の濡れを促進するものであり、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン型、ノニオン型界面活性剤を挙げることができる。界面活性剤は、塗膜を形成する組成物中に、1〜10重量%含まれていることが好ましい。
【0032】
塗液の塗布量は、塗膜の厚さが0.01〜0.3μm、好ましくは0.02〜0.25μmの範囲となるような量であることが好ましい。塗膜の厚さが薄過ぎると、接着力が不足したり不活性粒子が脱落したりする。逆に厚過ぎると、ブロッキングを起こしたり、塗工が難しくなる可能性がある。
【0033】
塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等を単独または組合せて用いることができる。尚、塗膜は、必要に応じ、フィルムの片面のみに形成してもよいし、両面に形成してもよいがハンドリング性の観点から両面に形成することが好ましい。
【0034】
[物性]
本発明の透明積層ポリエスエルフィルムは、全光線透過率が86%以上である必要があり、好ましくは88%以上である。86%未満であると工学用途に用いることが難しくなる。
【0035】
被膜層を設けた側の表面の中心線表面粗さRaは、1nm以上20nm以下であることが好ましく、2nm以上18nm以下であることがより好ましい。中心線表面粗さRaが1nmであると滑り性が悪く、傷が入りやすくなり、また巻取り性も悪くなる。また、Raが20nmを超えると透明性が不足する。
【0036】
ポリエステルの厚み方向の屈折率は、1.490以上1.510以下である必要があり、好ましくは1.493以上1.505以下である。厚み方向の屈折率が1.490未満であるとフィルムがデラミネーション(層状剥離)し易くなり、プリズムレンズ層、ハードコート層、粘着剤、反射防止処理、スパッタ層等を設けた際、これらの層とポリエステルフィルムとの密着性が不足する。一方、1.510を超えると全光線透過率が小さくなる。
【0037】
フィルムの厚みは光学用途としては20〜300μmであることが必要であり、好ましくは50〜250μmである。フィルム厚みが20μmに満たない場合はフィルム剛性が不充分となりやすく、また300μmを超える場合は透明性が不充分となりやすい。
【0038】
[製造方法]
次に、本発明の透明積層ポリエステルフィルムの好ましい製造方法について説明する。なおガラス転位温度をTgと略記する。
【0039】
本発明におけるポリエステルフィルムは、不活性粒子を添加しない所定の組成のポリエステルチップを充分に乾燥した後、ダイに通してフィルム状に溶融押出し、ポリエチレンテレフタレートの場合予め20〜40℃程度、ポリエチレン−2,6−ナフタレートの場合予め30〜60℃程度に設定されたキャスティングドラムで冷却固化させて未延伸フィルムとし、この未延伸フィルムをTg〜(Tg+60)℃で長手方向に1回もしくは2回以上合計の倍率が3倍〜5倍になるよう延伸し、その後前述の被膜層を片面又は両面に塗布した後、Tg〜(Tg+60)℃で幅方向に倍率が3〜6倍になるように延伸される。被膜層の塗布は、縦延伸後に限定されないが、逐次二軸延伸においてはここでの塗工が最適である。次いで200〜240℃で1〜60秒間熱処理を行う。熱処理温度が200℃未満であると、熱収縮率が大きくなり、加工適性が悪化する。熱処理温度が240℃を超えると、全光線透過率、ヘーズが悪化したり、ΔTcmが40℃未満になったりして、光学用に不適である。また、必要に応じて熱処理工程で把持具のレール幅減少を実施することができ、熱収縮率を低下できる。
【0040】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は以下の方法により評価した。
【0041】
(1)粒子の粒径
試料フィルム小片を走査型電子顕微鏡用試料台に固定し、スパッターリング装置(日本電子(株)製の商品名「JIS−1100型イオンスパッターリング装置」)を用いてフィルム表面をイオンエッチング処理し、高分解能電界放出形走査型電子顕微鏡にて1〜3万倍で観測し、ニレコ(株)製ルーゼックスFSにて、50個の粒子の面積相当粒径を求め、数平均値を平均粒径とした。
【0042】
(2)全光線透過率
JIS K6714−1958に準じて、日本電色工業社製のヘーズ測定器(NDH−2000)を使用して全光線透過率Tt(%)を測定する。
【0043】
(3)ヘーズ値
JIS K7136に準じ、日本電色工業社製のヘーズ測定器(NDH−2000)を使用してフィルムのヘーズ値を測定し、下記の基準で評価した。
◎:ヘーズ値≦1.0% …フィルムのヘーズ極めて良好
○:1.0%<ヘーズ値≦1.5% …フィルムのヘーズ良好
×:1.5%<ヘーズ値 …フィルムのヘーズ不良。
【0044】
(4)屈折率
アッベ屈折計((株)アタゴ製)を用い、ナトリウムD線(589nm)を光源としてフィルムの屈折率を求めた。フィルムサンプルの表裏両面について厚み方向の屈折率を測定し、その平均値をnZとした。
【0045】
(5)中心線表面粗さRa
三次元粗さ計(小坂研究所製SE−3CK)を用いて、針径2μmR、針圧30mg、測定長さ1mm、サンプリングピッチ2μm、カットオフ0.25mm、縦方向拡大率2万倍、横方向拡大率200倍、走査本数100本の条件にて測定し、Raを測定する。両面に被膜層を設けた場合は、両面を測定し平均値を求めた。
【0046】
(6)フィルム厚み
マイクロメータで100点測定し、この平均値を求めてフィルムの厚みとする。
【0047】
(7)ジエチレングリコール量
ポリエステル層からポリエステルを削り出し、CDCl3/CF3COOD混合溶媒にて溶解し、1H−NMRにて測定する。
【0048】
(8)耐擦り傷性
直径6mmの硬質クロムメッキしたピンを固定し、長手方向に20cm、幅方向に15mmにカットしたフィルムをピンに対して90°で接触させ、一定速度(20mm/s)でピン上を滑らせて、フィルム表面に入る傷の度合を評価した。
◎:全体面積に対する傷の面積が、0%以上 10%未満
○:全体面積に対する傷の面積が、10%以上、20%未満
×:全体面積に対する傷の面積が、20%を超えるもの。
【0049】
(9)接着性
ポリエステルフィルムの塗膜形成面に厚さ10μmのハードコート層を形成して碁盤目のクロスカット(1mm2 のマス目を100個)を施し、その上に24mm幅のセロハンテープ(ニチバン社製)を貼り付け、180°の剥離角度で急激に剥がした後、剥離面を観察し、下記の基準で評価した。
◎:剥離面積が10%未満
○:剥離面積が10%以上30%未満
×:剥離面積が30%を超えるもの
[実施例1]
ジメチルテレフタレート100部とエチレングリコール60部とを、エステル交換触媒として酢酸マンガン4水塩をマンガン元素で70重量ppmになるように使用して、常法に従ってエステル交換反応させた後、トリメチルホスフェート0.023部(1.64モル)を添加し、実質的にエステル交換反応を終了させた。次に酢酸アンチモンをアンチモン元素で120重量ppmになりように添加した後、引続き高温高真空下で常法通り重縮合反応を行ない(真空反応開始までの時間20分)、その後、常法によって大量の流水中に抜出し、固有粘度0.63dl/gの実質的に滑剤粒子を添加しないポリエチレンテレフタレートチップを得た。このチップを160℃で3時間乾燥したのち、290℃で溶融押出し、20℃に保持した冷却ドラム上で急冷固化せしめて未延伸フィルムを得た。
【0050】
続いて、該未延伸フィルムを95℃で縦方向に3.2倍に延伸し、次いで両面に下記の塗剤を乾燥後の厚みがそれぞれ0.08μmになるように塗布し、さらに110℃で横方向に3.5倍に延伸したのち、225℃で5秒間熱固定し、更に190℃の温度で幅方向に0.5%弛緩させ、厚みが100μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0051】
ここで用いた塗剤は下記構成からなる。
・ポリエステル:78重量部
・アクリル:15重量部
・不活性粒子:シリカ(粒径80nm、触媒化成株式会社製 「商品名SI−80P」)2重量部
・濡れ剤:ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル(三洋化成株式会社製 商品名「ナロアクティーN−70」)5重量部
更にここでのポリエステルは、酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸90モル%/イソフタル酸5モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%で構成されている(Tg=110℃、平均分子量10000)。なお、このポリエステルは、特開平06−116487号公報の実施例1に記載の方法に準じて下記の通り製造した。すなわち、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル60部、イソフタル酸ジメチル3部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル4部、エチレングリコール31部、ジエチレングリコール2部を反応器に仕込み、これにテトラブトキシチタン0.05部を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃にコントロールして加熱し、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行った。次いで反応系の温度を徐々に255℃まで上昇させ系内を1mmHgの減圧にして重縮合反応を行い、ポリエステル1を得た。このポリエステル25部をテトラヒドロフラン75部に溶解させ、得られた溶液に10000回転/分の高速攪拌下で水75部を滴下して乳白色の分散体を得、次いでこの分散体を20mmHgの減圧下で蒸留し、テトラヒドロフランを留去し、20重量%のポリエステル水分散体を得た。
【0052】
アクリルはメチルメタクリレート10モル%/2−イソプロペニル−2−オキサゾリン70モル%/ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート5モル%/アクリルアミド15モル%で構成されている(Tg=100℃)。アクリルは、特開昭63−37167号公報の製造例1〜3に記載の方法に準じて下記の通り製造した。すなわち、四つ口フラスコに、イオン交換水302部を仕込んで窒素気流中で60℃まで昇温させ、次いで重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5部、亜硫酸水素ナトリウム0.2部を添加し、更にモノマー類である、メタクリル酸メチル7.8部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン52.8部、ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリル酸20.4部、アクリルアミド6.6部の混合物を3時間にわたり、液温が60〜70℃になるよう調整しながら滴下した。滴下終了後も同温度範囲に2時間保持しつつ、撹拌下に反応を継続させ、次いで冷却して25重量%のアクリルの水分散体を得た。こうして得られた積層フィルムの評価結果を、表1に示す。
【0053】
[実施例2]
フィルム厚みを188μmとして、縦延伸倍率を3.1倍、横延伸倍率を3.4倍とした以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。こうして得られたフィルムの評価結果を、表1に示す。
【0054】
[実施例3]
三酸化アンチモンを、Sb元素として60重量ppmとする以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。こうして得られたフィルムの評価結果を、表1に示す。
【0055】
[実施例4]
酢酸マンガンを、Mn元素として110重量ppmとする以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。こうして得られたフィルムの評価結果を、表1に示す。
【0056】
[実施例5]
被膜層中の不活性粒子からなるフィラーを、平均粒径100nmのアクリルフィラー(株式会社日本触媒製 商品名「エポスターMX−100W」)に変更する以外は、実施例2と同様にして厚み188μmのポリエステルフィルムを得た。こうして得られた積層フィルムの評価結果を、表1に示す。
【0057】
[比較例1]
基材層に、平均粒径0.9μmのカオリンクレーの粒子を0.25重量%添加した以外は実施例2と同様にして厚み188μmの積層ポリエステルフィルムを得た。こうして得られたフィルムの評価結果を、表1に示す。
【0058】
[比較例2]
被膜層中に不活性粒子からなるフィラー添加せずに、代わりにアクリルを17重量部とする以外は実施例2と同様にして厚み188μmの積層ポリエステルフィルムを得た。こうして得られたフィルムの評価結果を、表1に示す。
【0059】
[比較例3]
被膜層中の不活性粒子からなるフィラーを、平均粒径200nmのシリカフィラー(日産化学株式会社製 商品名「MP−2040」)に変更する以外は、実施例2と同様にして厚み188μmの積層ポリエステルフィルムを得た。こうして得られたフィルムの評価結果を、表1に示す。
【0060】
[比較例4]
ポリエステル重合触媒のMn化合物の量をMn元素として250重量ppmとする以外は実施例1と同様にして厚み100μmの積層ポリエステルフィルムを得た。こうして得られたフィルムの評価結果を、表1に示す。
【0061】
[比較例5]
ポリエステル重合触媒のSb化合物の量をSb元素として350重量ppmとする以外は実施例1と同様にして厚み100μmのポリエステルフィルムを得た。こうして得られたフィルムの評価結果を、表1に示す。
【0062】
[比較例6]
ポリエステル樹脂を重合する際に、エステル交換反応終了後、真空反応開始までの時間を40分間にした結果、DEG(ジエチレングリコール)量3.0重量%の樹脂を得た。固有粘度は0.60dl/gであった。それ以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。こうして得られたフィルムの評価結果を、表1に示す。
【0063】
[比較例7]
ポリエステル製膜の熱固定温度を200℃とし、縦円新倍率を3.6倍、横延伸倍率を3.8倍とする以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。こうして得られたフィルムの評価結果を、表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【発明の効果】
本発明の透明積層ポリエステルフィルムは、高透明でありながら作業性に優れているので、液晶表示装置の部材のプリズムレンズシート、タッチパネル、バックライト等のベースフィルムや反射防止用フィルムのベースフィルム、プラズマディスプレイの電磁波シールドフィルム、有機ELディスプレイのベースフィルム、ディスプレイの防爆用ベースフィルム等の各種光学用途に有用である。
Claims (4)
- ポリエステルからなる基材層の少なくとも片面に被膜層を設けた積層フィルムであって、基材層には実質的に粒子を含有せず、被膜層には平均粒径10nm以上150nm以下の不活性粒子を含有し、基材層は、Mn化合物をMn元素量で30〜200重量ppm、Sb化合物をSb元素量で30〜300重量ppm、さらにジエチレングリコール成分を0.1〜2.5重量%含有し、ポリエステルのフィルム厚み方向の屈折率は1.490以上1.510以下であり、積層フィルムは厚みが20〜300μmかつ全光線透過率が86%以上であることを特徴とする透明積層ポリエステルフィルム。
- 被膜層を設けた側の基材層表面の中心線表面粗さRaが、1nm以上20nm以下であることを特徴とする請求項1記載の透明積層ポリエステルフィルム。
- 被膜層中の不活性粒子の含有量が0.1〜20重量%であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の透明積層ポリエステルフィルム。
- 基材層が、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリエチレン−2,6−ナフタレートを主体とするポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明積層ポリエステルフィルム。
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