JP3941330B2 - 製鋼方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、製鋼工程において鉄鉱石などの金属酸化物を還元する製鋼方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
製鋼工程では、コスト的な利点から、脱炭工程やそれに先行する溶銑予備処理工程の脱硫・脱燐処理において溶鋼や溶銑中に鉱石等の金属酸化物含有物質を供給し、これを還元して金属として回収することが行われている。このように鉱石等の金属酸化物含有物質を溶鋼や溶銑に供給して還元する場合には、金属酸化物の昇温に必要な顕熱分に加えて、酸化物の還元のための還元熱も必要であるため、溶鋼や溶銑に十分な熱的余裕が必要である。
【0003】
このため、十分な熱的余裕を付与する観点から、溶銑の昇温や加炭等の熱付加技術が重要となっており、特に転炉装入前に溶銑予備処理を施す工程を採用する場合には、熱付加技術は製品品質および製造コスト上も重要な技術である。
【0004】
これらの観点から、消極的には処理時間を短くして放熱を抑制する技術や、積極的に溶銑や溶鋼中にコークス粉等の炭素源をインジェクションして加炭する技術が開発されてきている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、一般に製鋼工程で用いられる炭素源としては石炭、コークス、黒鉛等が考えられるが、これらの物質には硫黄、燐、窒素等の不純物が混入しているため、使用量を制限せざるを得ない。つまり、これらを大量に使用して多大な熱付加を行う場合には、不可避的に混入した硫黄、燐、窒素の除去工程を設ける必要があり、製造コストの上昇につながってしまう。
【0006】
また、これらの加炭材には不可避的にシリカ、アルミナを主体とする脈石を含有し、結果的に転炉における吹錬あるいは溶銑予備処理工程においてスラグの増大に直結し、特にMn鉱石などの還元を行う場合にはスラグ中にこれら有用物質が希釈された状態で残留し、Mnなどの還元を目的とした場合には還元効率が劣化することがわかっている。
【0007】
また、炭素源を単体で溶銑や溶鋼に投入するか、あるいはインジェクションにより付加しようとした場合、炭素源の飛散、溶解残等が発生するため炭素付加における歩留は上がらない。加えて、脱炭工程に先立ってこれらの炭素付加処理を行った場合には、溶鉄中への炭素溶解度上限に近い条件で加炭処理を行うことになることから、さらに加炭歩留は低下する。このように熱源としての炭素源の添加歩留が低いため、金属酸化物の還元によって当該金属を回収することがコスト上も望ましい状況においても、熱的な制約で金属酸化物を含有する鉱石等の物質の使用量を制限せざるを得ないのが現状である。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、製鋼工程において、還元剤および熱源として用いる添加剤によって溶銑や溶鋼等の溶湯を汚染することなく、かつ効率的に金属酸化物の還元を行うことができる製鋼方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、製鋼工程において、Mn酸化物を含有する物質と、プラスチックとをブリケット化して、上記工程を実施するための反応容器内に一定速度で連続的に投入してMn酸化物を還元し、Mnとして溶鋼中に回収することを特徴とする製鋼方法を提供する。
【0010】
本発明においては、熱源および金属酸化物の還元剤として従来のコークス等に代えてプラスチックを用いるが、プラスチックは炭素と水素が主体であるので従来の炭素源のような硫黄や窒素等の不純物成分が少ないものを選択することができるため、溶湯を汚染することがなく、これらの除去工程を不要とすることができる。一方、水素は炭素等よりも強力な還元剤として知られており、流動層などを用いてガスの利用効率を上げることができる場合には非常に有用な物質であり、高炉において重油を吹き込んだ際には重油に含まれる水素によって高炉を通過する熱風内の水素含有量が通常操業に比較して大きく増えるため鉄鉱石の還元率が高くなることが知られているが(鉄鋼便覧参照)、転炉吹錬や溶銑予備処理工程においては水素の利用は容易ではなく、一般には用いられない。これに対して本発明においては、炭素および水素を主体とするプラスチックを熱源および還元剤として利用するため、固体状態の水素源を用いてMn酸化物を還元することとなり、還元効率を極めて高くすることができる。しかも、このようなプラスチックを含有する物質としてシリカ、アルミナを主体とする脈石を含有しないものを選択することができるので、それに伴う還元効率の低下も生じない。さらに、プラスチックとMn酸化物を含有する物質とをブリケット化するので反応容器の実質的に同じ位置に投入でき、還元剤を溶湯にとけ込ませることなく直接的にMn酸化物の還元に用いることができ、熱供給のロスが少なく、この点からも還元効率が高く望ましい。このように、本発明によれば、還元剤によって溶銑や溶鋼等の溶湯を汚染することなく、かつ極めて効率的にMn酸化物の還元を行うことができる。
【0012】
また、Mn酸化物としてMn鉱石を用いることができる。
【0014】
本発明で用いるプラスチックとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルアセチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ポリビニルアルコール、セルロイド等、炭素および水素を主体としたプラスチックであれば特に制限はなく、また、製品プラスチックであっても廃プラスチックでもよく、必要に応じてこれらを粉状に加工したものを用いることができるが、コスト面および産業廃棄物の有効利用を図る観点から廃プラスチックを利用することが好ましい。
【0015】
なお、ここでの廃プラスチックとは、工場等での製造・加工時に生じる屑や不良品を含む所謂ゴミとしての廃棄物たるプラスチック類であり、その性質上プラスチック以外の異物(金属、紙、その他の無機物および有機物)が付着もしくは混入しているプラスチック類を含むものである。このような廃プラスチックの具体例としては、プラスチックボトル、プラスチック袋、プラスチック包み、プラスチックフィルム、プラスチックトレイ、プラスチックカップ、磁気カード、磁気テープ、ICカード、フレキシブルコンテナ、プリント基板、プリントシート、電線被覆材、事務機器または家電製品用ボディーおよびフレーム、化粧合板、パイプ、ホース、合成繊維および衣料、プラスチック成型ペレット、ウレタン材、梱包用シート、梱包用バンド、梱包用クッション材、電気用部品、玩具、文房具、トナー、自動車用部品(例えば、内装品、バンパー)、自動車または家電製品等のシュレッダーダスト、イオン交換樹脂、合成紙、合成樹脂接着樹剤、合成樹脂塗料、固形化燃料(廃棄プラスチック減容物)等が例示され、これらを廃棄物としての状態のまま、あるいは必要に応じて所定の処理を施したものを利用することができる。また、これら廃プラスチックと製品プラスチックとの混合物を利用してもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明では、上述したように、製鋼工程において、Mn酸化物を含有する物質と、プラスチックを含有する物質とを、上記工程を実施するための転炉等の反応容器内に投入してMn酸化物を還元する。この場合に、これら物質を実質的に同じ位置に投入することが好ましい。
【0017】
製鋼工程における脱炭工程およびそれに先行する溶銑予備処理工程においては、Mn酸化物を含有する物質であるMn鉱石を転炉または溶銑容器に投入して金属成分として回収することが従来から行われており、本発明では製鋼工程のうち、主に、脱炭工程およびそれに先行する溶銑予備処理工程のいずれか、または両方に適用される。
【0018】
本発明におけるMn酸化物を含有する物質としては、上述したようなMn鉱石、Mn鉱石を一部焼結により還元したものや、未還元のMn酸化物が含まれる転炉から排出されるスラグを挙げることができる。
【0019】
ラスチックは、熱源および上記Mn酸化物の還元剤として使用するものであり、このようなプラスチックとしては、上述したようにポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルアセチレン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネートなどほとんどのプラスチックを挙げることができ、2種類以上のプラスチックを混合して使用することも可能である。また、このようなプラスチックとして、上述したように廃プラスチックを好適に用いることができるが、もちろんバージンであってもかまわない。ただし、上述したように、硫黄、燐、窒素などを多量に含む場合には溶鋼汚染源となり好ましくなく、珪素、アルミニウムなどを多量に含む場合にはスラグの増大につながるため、還元効率が低下し好ましくない。したがって、プラスチックを含有する物質としては、これらの少ないものを選択する。
【0020】
本発明において、Mn酸化物を含有する物質と、プラスチックとを反応容器内の実質的に同じ位置に投入するのが好ましいのは、これにより還元剤を溶湯にとけ込ませることなく直接的にMn酸化物の還元に用いることができ、熱供給のロスが少なく還元効率の向上に寄与するからである。これらを実質的に同じ位置に投入するために、これらを混合混練し、ブリケット化して投入する方法が好適である。すなわち、これらをブリケット化することによりこれらを一体的に投入することができるので確実に同じ位置に投入することが可能となるからである。
【0021】
具体的な実施形態としては、還元しようとするMnを含有する鉱石と、プラスチック例えばポリプロピレンを主体とするものとを配合してブリケットを製造し、このブリケットを転炉吹錬中の溶湯に上方から一定速度で連続的に供給する。連続投入するのは、プラスチックの存在により通常の吹錬よりも過剰に発生するガスの量が転炉の排ガス能力の上限を超えないようにするためであり、一定速度で投入するのは排ガス量が転炉の排ガス能力以下の一定値となるようにするためである。
【0022】
本発明によれば、プラスチックを熱源および還元剤として利用するため、還元剤によって溶銑や溶鋼等の溶湯を汚染することなく、かつ極めて効率的にMn酸化物の還元を行うことができ、高価な有価金属であるMnを高効率で回収できるので、工業上極めて有意義である。
【0023】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
この実施例ではMn酸化物を含有する物質としてMn鉱石を用いた例について説明する。まず、Mn鉱石を焼結させてMnの酸化度を低下させたもの(以下、Mn鉱石焼結粉という)と、ポリエチレンおよびポリプロピレンをそれぞれ全体の3mass%および17mass%となるように配合したプラスチックとを混合混練してブリケットを試作した。次いで、このブリケットを転炉吹錬中の溶湯上にフィーダーから供給し、操業中のMn鉱石歩留と含有させたプラスチックの燃焼熱の利用度を評価した。
【0024】
試験にあたっては、転炉炉体の履歴、装入物の温度、装入物の量、および炉内での反応熱を考慮して終点温度を正確に推定するシステムを用いた。このシステムは本来はプラスチックを配合していないMn鉱石を用いることを前提として計算するシステムであるため、試験に供したブリケット中のMn鉱石純分を算出し、プラスチック等が有効に熱源として作用していれば終点の温度が高くなり、そのため温度調整用に吹錬末期に投入する鉄鉱石の量が配合したプラスチックの量に応じて増加することになる。
【0025】
図1は、横軸に配合したプラスチックの量をとり、縦軸に温度調整に用いた鉄鉱石の量から換算した熱付加量つまり熱余剰をとって、これらの関係を示すグラフである。横軸のプラスチックの量は投入したプラスチックの量を転炉に装入した溶銑の量で除した値を用いた。プラスチックは物質によって燃焼熱が異なるため代表的な物質の熱量に基準化した量を用いている。また、ここではプラスチックの投入がないものとして熱計算を行ったため、プラスチックの燃焼熱などによって溶鋼の温度実績が計算による推定値より高くなる。そのため終点温度を計算通りに下げることが必要であり、その冷却剤として鉄鉱石を利用したため、その冷却能から熱余剰を計算によって求めた。この図から、配合したプラスチックの量が増加するに従って終点での熱余剰すなわち熱的余裕度が増加し、結果として吹錬末期に鉄鉱石を多く投入したことがわかる。熱余剰はプラスチック等の投入量が増加するに従って増加し、その傾きは計算によって求めたプラスチックの昇温能力とほぼ一致した。つまり、この熱余剰は、プラスチックの燃焼熱からプラスチックの分解熱および発生ガスへの顕熱ロスなどを除いた熱量と一致することが確認された。
【0026】
また、図2は、横軸に吹錬終点における溶鋼中酸素濃度をとり、縦軸にMn歩留をとって、これらの関係を本実施例の場合、通常操業の場合、土壌黒鉛による熱付加の場合で比較して示すグラフである。Mn還元歩留は転炉吹錬の終点における溶鋼中の酸素濃度と強い相関があるため、横軸に吹錬終点における溶鋼中酸素濃度をとっている。また、縦軸のMn鉱石の還元歩留は、転炉に装入した溶銑中の溶融Mn量と本ブリケットなど転炉吹錬中にMn酸化物の状態で投入されたMnの量との和を分母とし、吹錬の終点における溶鋼中のMn量を分子として表すことができる。つまり、
Mn歩留=(転炉吹錬終点における溶鋼中のMn量)/((装入した溶銑・冷銑などのMn量)+(Mn酸化物として転炉に投入されたMn量))
で表される。ここでは、通常操業において溶鋼中酸素濃度が300ppmの時の歩留を1.0として基準化してMn歩留をインデックスで表示した。この図から本ブリケットを用いた場合にはMn歩留が通常の場合および土壌黒鉛による熱付加の場合と比較して10%程度向上しており、本発明によってMn鉱石歩留まりが向上することが確認された。
【0030】
以上の実施例から、本発明により鉱石の還元に必要な熱をプラスチックで有効に与えることができ、また還元剤を鉱石近傍に配置したことおよびプラスチック中の水素が有効に還元に利用されたことにより従来に比べて高い鉱石の還元歩留を得ることができることが確認された。また、大量に投入された鉱石はその近傍に存在する還元剤とその近傍で発生する高い熱によって十分に速く還元し、スラグ中に長く滞留しないことが確認された。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、Mn酸化物を還元するための熱源および還元剤としてプラスチックを含有する物質を投入するので、還元剤および熱源を不純物の少ないものとすることができる。また、プラスチックは炭素のみならず強力な還元作用を有する水素も還元に寄与させることができ、極めて効率的にMn酸化物を還元することができる。また、反応容器内または溶湯搬送容器内の実質的に同じ位置にMn酸化物を含有する物質とともに炭素および水素を主体とするプラスチックを含有する物質を投入してMn酸化物を還元することにより、熱供給のロスを少なくして直接的にMn酸化物の還元を行うことができるので、一層効率的にMn酸化物を還元することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1における配合したプラスチックの量と温度調整に用いた鉄鉱石の量から換算した熱余剰との関係を示すグラフ。
【図2】 実施例1における吹錬終点の溶鋼中酸素濃度とMn歩留との関係を、本実施例の場合、通常操業の場合、土壌黒鉛による熱付加の場合で比較して示すグラフ。

Claims (2)

  1. 鋼工程において、Mn酸化物を含有する物質と、プラスチックとをブリケット化して、上記工程を実施するための反応容器内に一定速度で連続的に投入してMn酸化物を還元し、Mnとして溶鋼中に回収することを特徴とする製鋼方法。
  2. 前記Mn酸化物としてMn鉱石を用いることを特徴とする請求項1に記載の製鋼方法。
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