JP4447830B2 - 製鋼用精錬剤及び製鋼方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、製鋼精錬に用いる製鋼用精錬剤及びそれを用いた製鋼方法に関し、詳しくは、プラスチックの含有する炭化水素を熱源若しくは還元剤として利用した製鋼用精錬剤及び製鋼方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
製鋼精錬工程では、溶銑あるいは溶鋼を溶融状態に保持するために莫大な熱を付与するだけでなく、製鋼精錬工程の効率化のためにも、又、高品質鋼を製造するためにも、熱的に余裕のある状態を維持することが望ましい。例えば、溶銑中に精錬剤を吹き込む場合、吹き込みガスが溶銑の顕熱を奪うために溶銑の温度降下が避けられず、処理時間及び精錬剤の使用量について制約を受けることが多い。又、転炉からの出鋼温度を制御する場合でも、溶銑温度が低い場合や十分な炭素が溶銑に含まれていない場合には、温度調整のために通常より多くの酸素を使用して昇温させる必要があるが、その場合には溶鋼中の溶存酸素量が増加し、結果として鋼の品質を下げることになる。
【0003】
このような観点から、溶銑や溶鋼中にコークス粉等の炭素源をインジェクションして加炭する方法(例えば特許文献1参照)や、廃プラスチック及び廃ゴムを溶銑中にインジェクションし、廃プラスチック及び廃ゴムの燃焼熱を利用する方法(例えば特許文献2参照)が提案されている。
【0004】
しかしながら、一般に製鋼精錬工程で用いられる炭素源である石炭、コークス、黒鉛には、硫黄、燐、窒素等の不純物が混入しているため、使用量を制限せざるを得ない。つまり、これらを大量に使用して多大な熱付加を行う場合には、不可避的に混入した硫黄、燐、窒素の除去工程を設ける必要があり、製造コストの上昇につながる。更に、炭素源を単体で溶銑や溶鋼に投入するか、あるいはインジェクションにより付加しようとした場合、炭素源の飛散、溶解残等が発生するため、炭素付加における歩留は上がらない。加えて、脱炭工程に先立ってこれらの炭素付加処理を行った場合には、溶銑中への炭素溶解度上限に近い条件で加炭処理を行うことになることから、加炭歩留は更に低下する。又、廃プラスチックや廃ゴムの燃焼熱を利用する方法は、未だ具体的な手法が確立されておらず、十分に有効利用されていないのが現状である。
【0005】
ところで、製鋼精錬工程の1つである、転炉を用いた溶銑の脱炭精錬では、上吹きランスから超音速ジェットの酸素を吹き付けて行っているが、通常、一つのランスを用いて精錬初期から末期までの全域を精錬するため、精錬の全域に亘っては、必ずしも最適な条件で送酸されてはいない。すなわち、上吹きランス先端のノズルチップ形状を、広い送酸条件の全てに最適化することが不可能であり、やむを得ず脱炭最盛期に最適な形状としているため、送酸量を低減する吹錬末期においては最適な送酸条件が得られない。
【0006】
従って、溶融鉄中の炭素濃度が低下した、脱炭反応が炭素の移動律速となる脱炭精錬末期には、送酸条件を適正にすることができず、結果として溶鉄表面に過剰な鉄酸化物を生成させたり、あるいは溶鉄中の合金成分であるMnやCrを酸化させてしまう。この現象は、鉄歩留まりの低下をもたらすのみならず、溶鉄からの合金成分のロスを意味し、後工程で高価な合金鉄を使用せざるを得ない。
【0007】
こうした操業状況の悪化を防止するため、上吹きランス形状のハード面を適正化し、更に、上吹きランスの先端と浴面との距離(以下「ランス高さ」と記す)や送酸速度等の操業条件を制御した対策が多数提案されている。
【0008】
例えば特許文献3には、上吹きランスの形状を適正化すると共に、送酸速度及びランス高さをラバールノズルの形状に合わせた適正範囲内に制御した吹錬方法が開示されている。しかし、特許文献3のように、高流量化した際の鉄飛散やダストを抑制する目的でラバールノズルの構造やランス高さの変更を行う場合には、上吹きランスから噴出される酸素ジェットの軌跡及び幾何学的形状は大きく変化するので、不必要な二次燃焼が生じたり、反応界面積の変動に起因して反応効率が悪化するという二次的な悪影響が発生する。
【0009】
又、特許文献4には、ラバールノズルのスロート径と送酸速度とで決定されるラバールノズルの適正膨張出口径Dに対し、高炭素域では0.85D〜0.94Dの出口径を有する上吹きランスを用い、低炭素域では0.96D〜1.15Dの出口径を有する上吹きランスを用いた転炉吹錬方法が開示されている。しかしながら、この吹錬方法では、精錬の制御を確実に行うためには形状の異なる2種類以上の上吹きランスを使用しなければならず、設備上並びに操業上の煩雑さが無視できない。
【0010】
【特許文献1】
特開昭60−169510号公報
【0011】
【特許文献2】
特開平7−11320号公報
【0012】
【特許文献3】
特開平6−228624号公報
【0013】
【特許文献4】
特開平10−30110号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その第1の目的とするところは、精錬容器を用いた製鋼精錬工程において、溶銑や溶鋼等の溶湯を汚染することなく、且つ効率的に熱付加を行うことができる製鋼用精錬剤並びに製鋼方法を提供することであり、その第2の目的とするところは、転炉内に存在するスラグの鉄酸化物濃度を低く抑え、すなわち炉内スラグの酸素ポテンシャルを低く抑え、鉄歩留まりやMn及びCr等の合金成分の歩留まりを高めることが可能な製鋼方法を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための第1の発明に係る製鋼用精錬剤は、水素及び炭素を主体とするプラスチックであって、硫黄、燐、窒素、アルミニウム及び珪素の含有量が可及的に少ないプラスチックと金属又は金属酸化物を含有する物質との混合物が、押出し成形されて製造される成形体からなり、還元剤として脱炭反応が酸素供給律速から炭素移動律速に変わった時点以降に添加される製鋼用精錬剤であって、前記成形体のプラスチック配合量は50mass%以上であり、前記成形体単体の見掛け密度は1100kg/m3 以上であり、前記成形体1個の質量は20g以上であることを特徴とするものである。
【0017】
の発明に係る製鋼用精錬剤は、第1の発明において、前記金属酸化物を含有する物質は、鉄鉱石、ミルスケール、製鉄ダスト、Mn鉱石、Cr鉱石、Ni鉱石のうちの少なくとも1種であることを特徴とするものである。
【0022】
の発明に係る製鋼方法は、酸素又は酸化鉄を用いて精錬容器内の溶銑に対して脱炭処理を施す際に、脱炭反応が酸素供給律速から炭素移動律速に変わった時点以降に、第1又は第2の発明に記載の製鋼用精錬剤を、前記精錬容器の上部から精錬容器内に投入して、精錬容器内のスラグ若しくは溶湯成分の酸化物を還元することを特徴とするものである。
【0023】
の発明に係る製鋼方法は、第の発明において、前記精錬容器が転炉であることを特徴とするものである。
【0024】
の発明に係る製鋼方法は、第又は第の発明において、溶銑中の炭素を除去する際に、合金成分の金属酸化物を精錬容器内に添加し、当該金属酸化物を溶銑中の炭素によって還元することを特徴とするものである。
【0025】
の発明に係る製鋼方法は、第の発明において、前記金属酸化物は、Mn酸化物又はCr酸化物であることを特徴とするものである。
【0026】
の発明に係る製鋼方法は、第ないし第の発明の何れかにおいて、前記精錬容器から排出される排ガスの成分分析に基づいて、脱炭反応が酸素供給律速から炭素移動律速に変わった時点を把握することを特徴とするものである。
【0027】
本発明においては、熱源として従来のコークス等に代えてプラスチックを用いており、プラスチックは従来の炭素源のような硫黄や窒素等の不純物成分が少ないものを選択することができるため、溶湯を汚染することがなく、これらの除去工程を不要とすることができる。
【0028】
ラスチックは一般的に炭素及び水素を主体としていて密度が小さく、ガス発生量が多いプロセスにおいては単体では溶湯面やスラグ面に到達させることが困難であり、加炭材・着熱材として有効に機能する分は多くはなく、形状によっては投入量の半分以上は排ガス流により系外に排出されるが、上述のように、プラスチックと金属又は金属酸化物を含有する物質とを混合し、この混合物を押出し成形して製造した成形体として投入することにより、見掛け密度が大きくなり、精錬容器下部から吹き上げる上昇流に流されることなく、有効に炭素及び水素を主体とするプラスチックを溶湯面又はスラグ面に到達させることができる。従って、効率的に熱付加を行うことができる。
【0029】
この場合、金属及び金属酸化物を含有する物質は、成形体の密度調整用原料としての機能を有することになる。金属酸化物を含有する物質としては、鉄鉱石、ミルスケール、製鉄ダスト、Mn鉱石、Cr鉱石、Ni鉱石のうちの少なくとも1種を用いることができる。
【0030】
プラスチックと、金属又は金属酸化物を含有する物質とから成形体を成形する方法として、これらを混合して強い押出し力で多孔ダイスあるいは金網等から押出して成形する押出し成形方法、これらを混合して一定の容器内で強く圧縮して成形する圧縮成形方法、これらの混合物を加熱してプラスチックを溶融して成形する溶融成形方法等がある。
【0031】
しかしながら、ブリケットマシンに代表される圧縮成形方法では、プラスチックはバインダーとして作用し、従って、プラスチックの配合量を多くし過ぎると成形することができず、本発明者等の経験では、プラスチックの配合量はその上限値が5mass%前後であることを確認している。そのため、大量のプラスチックを投入しようとすると、付随的に大量の金属又は金属酸化物を添加しなければならず、一方、金属又は金属酸化物の添加量には自ずと制限があり、そのため、製鋼精錬工程において大量のプラスチックを投入できないという問題点、すなわち、従来の昇熱用炭素源の代替として有効に利用できないという問題点が生じる。又、圧縮成形方法は、基本的にバッチ処理であるために生産性が低い上に、成形体の周囲に所謂バリが発生し、歩留まり(60%程度)が低いという問題点がある。更に、成形前にプラスチックと金属又は金属酸化物を含有する物質とを、プラスチックが溶融若しくは半溶融する程度に、加熱しなければならないという問題点がある。
【0032】
溶融成形方法では、プラスチックを溶融する必要があり、生産性が低いという問題点がある。又、単にプラスチックを溶融しただけでは成形体のサイズが不揃いであり、使用の際に添加シュートに詰まる等の問題点もある。
【0033】
これに対して押出し成形方法では、プラスチックと、密度調整用原料としての金属又は金属酸化物を含有する物質とを混合したものを連続的に押出し成形することが可能であるために生産性が高く、且つ、成形体の外径サイズが一定にそろっており、高歩留まり(80%程度)で成形することができる。この場合、成形体の外径サイズは、多孔ダイスあるいは金網等のサイズを変更することにより任意に選択することができる。
【0034】
そして、押出し成形の場合には、成形体の表面に位置するプラスチックのみを溶融若しくは半溶融させることにより、成形体の形状を維持させることができるので、外部から熱を加える場合には、少ない加熱量で成形することができ、又、外部から加熱しなくても押出し成形時の摩擦熱のみで成形することもできる。すなわち、プラスチックの全量を溶融しなくても成形することができるので、極めて低い熱コストで成形体を製造することができる。
【0035】
更に、プラスチックの配合量が40mass%以上であれば任意の配合量で押出し成形することが可能であり、従って、成形体中のプラスチックの含有量を高くすることにより、溶銑又は溶鋼を昇熱させるためのプラスチックを大量に投入することができる。尚、プラスチックの配合量が40mass%未満の場合には、成形体の外周部の一部がプラスチックで覆われず、成形体の形状を維持できなくなることが発生し、成形体を安定して製造することができない。この場合には、混合した金属及び金属酸化物を含有する物質が剥離して脱落することが発生する。
【0036】
密度調整用原料である金属又は金属酸化物を含有する物質は、その顕熱や潜熱及び還元熱等により溶銑や溶鋼から熱を奪い、製鋼精錬工程に添加された際には冷却剤となり、一方、プラスチックは昇熱剤として機能する。従って、プラスチックの含有量に依存して、成形体は冷却剤となったり、昇熱剤となったりする。金属又は金属酸化物を含有する物質による冷却効果と、プラスチックの燃焼熱による昇熱効果とがバランスする質量比を調査した結果、密度調整用原料の種類によっても差が生ずるものの、成形体において50mass%のプラスチック配合量が確保されていれば、少なくとも昇熱剤として作用することが分かった。従って、プラスチックの燃焼熱により溶銑又は溶鋼を昇熱させる観点からみた場合、成形体中のプラスチックの配合量を50mass%以上とすることが好ましく、溶銑又は溶鋼を効率的に昇熱する場合には、プラスチックの配合量を70mass%以上、更には80mass%以上とすることが望ましい。
【0037】
この場合に、精錬容器下部から吹き上げる上昇流に流されることなく、成形体を確実に溶湯面又はスラグ面に到達させるために、成形体単体の見掛け密度を1100kg/m3 以上とし、成形体の質量を20g以上とする。尚、成形体の形状は実質的に円柱体又は角柱体とすることが好ましい。
【0038】
高温状態でプラスチックを分解すると、還元効果のある炭素、水素及び炭化水素等が生成される。すなわち、プラスチックを転炉脱炭精錬等の高温下に投入すると、分解して還元効果のある炭素、水素ガス、及び炭化水素ガス等が発生するため、プラスチックは、製鋼精錬工程においては熱源のみならず、還元剤としても利用することができる。
【0039】
脱炭反応が炭素移動律速の領域になると、反応界面で余剰となった酸素は必然的に溶湯を構成する鉄、Mn、Cr等の成分元素と反応し、これら成分を酸化させ、スラグ中若しくは溶湯表面にこれら成分の酸化物を形成させるが、炭素及び水素を主体とするプラスチックと金属又は金属酸化物を含有する物質との混合物から成形された製鋼用精錬剤を、スラグ中の鉄酸化物濃度が上昇する脱炭反応の末期、すなわち、脱炭反応が酸素供給律速から炭素移動律速に変わった時点以降に脱炭精錬容器内に添加することで、生成した鉄酸化物、更にはMn酸化物及びCr酸化物等が効率的に還元され、スラグの酸素ポテンシャルの上昇が抑制される。その結果、鉄歩留まりやMn及びCr等の合金成分の歩留まりを高めることが可能となる。
【0040】
本発明で用いるプラスチックとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルアセチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブダジエン、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−プロピレン弾性物質(EPM、EPDM)、ブチルゴム、ABS樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、セルロイド、ナイロン等のエンジニアリングプラスティックに分類されるプラスティック等、炭素及び水素を主体としたプラスチックであれば特に制限はなく、又、製品プラスチックであっても廃プラスチックでもよく、必要に応じてこれらを粉状に加工したものを用いることができるが、コスト面及び産業廃棄物の有効利用を図る観点から廃プラスチックを利用することが好ましい。
【0041】
尚、ここでの廃プラスチックとは、工場等での製造・加工時に生じる屑や不良品を含み、更に、一般家庭から発生する所謂ゴミとしての廃棄物たるプラスチック類であり、その性質上プラスチック以外の異物(金属、紙、その他の無機物及び有機物)が付着若しくは混入しているプラスチック類を含むものである。このような廃プラスチックの具体例としては、プラスチックボトル、プラスチック袋、プラスチック包み、プラスチックフィルム、プラスチックトレイ、プラスチックカップ、磁気カード、磁気テープ、ICカード、フレキシブルコンテナ、プリント基板、プリントシート、電線被覆材、事務機器又は家電製品用ボディー及びフレーム、化粧合板、パイプ、ホース、合成繊維及び衣料、プラスチック成型ペレット、ウレタン材、梱包用シート、梱包用バンド、梱包用クッション材、電気用部品、玩具、文房具、トナー、自動車用部品(例えば、内装品、バンパー)、自動車又は家電製品等のシュレッダーダスト、イオン交換樹脂、合成紙、合成樹脂接着樹剤、合成樹脂塗料、固形化燃料(廃棄プラスチック減容物)、映画フィルム、高分子吸収体、農業用ポリエチレン、農業用プラスティック等が例示され、これらを廃棄物としての状態のまま、あるいは必要に応じて所定の処理を施したものを利用することができる。又、これら廃プラスチックと製品プラスチックとの混合物を利用してもよい。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明では、精錬容器内に収納された溶銑又は溶鋼を処理する製鋼精錬工程において、炭素及び水素を主体とするプラスチックと、金属又は金属酸化物を含有する物質とを押出し成形して製造した成形体を製鋼用精錬剤として、当該精錬容器における精錬中に精錬容器の上部から精錬容器内に投入する。
【0043】
製鋼精錬工程としては、転炉吹錬に先立って行われる脱硫・脱燐等の溶銑予備処理工程、転炉における脱炭工程、転炉吹錬の後に行われる二次精錬等が挙げられ、これらの何れか、又は2つ以上の工程において上記処理が行われる。又、本発明の製鋼方法とは、転炉における溶銑の脱炭吹錬による溶鋼の製造方法のみならず、転炉に装入する前段階である溶銑の脱硫・脱燐等の予備処理による予備処理溶銑の製造方法及び転炉出鋼後の二次精錬における精錬反応による溶鋼の製造方法の何れか又は2つ以上の方法である。
【0044】
炭素及び水素を主体とするプラスチックは、熱付加のための熱源又は鉄酸化物等の還元剤として使用するものであり、このようなプラスチックとしては、上述したようにポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルアセチレン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネートなどほとんどの炭素及び水素を主体とするプラスチックを挙げることができ、2種類以上のプラスチックを混合して使用することも可能である。又、このような炭素及び水素を主体とするプラスチックを含有する物質として、上述したように廃プラスチックを好適に用いることができるが、もちろんバージンであっても構わない。但し、上述したように、硫黄、燐、窒素などを多量に含む場合には溶鋼汚染源となり好ましくなく、珪素、アルミニウムなどを多量に含む場合にもスラグの増大につながるため好ましくない。従って、炭素及び水素を主体とするプラスチックとしては、これらの少ないものを選択する。
【0045】
炭素及び水素を主体とするプラスチックを、溶湯面又はスラグ面に有効に到達させるための密度調整用の原料としては、金属及び金属酸化物を含有する物質の何れか、又は両方を用いることができる。
【0046】
ここで金属とは、製鋼精錬工程で発生したスラグを磁力選別して回収した磁選粉、機械工場で発生する鋼の切削屑、チョッパー屑のような小型の鉄スクラップ、及び、成分調整用の各種合金鉄等のうちの少なくとも1種を用いることができる。このような金属を用いることにより、単に密度調整のみならず、鉄源の回収や溶鋼の成分調整を行うことができる。又、このような金属を添加することにより、顕熱及び潜熱により従来法では熱を奪い熱ロスが生じるが、本発明ではプラスチックの発熱によってその熱ロスを補償することができる。
【0047】
又、金属酸化物を含有する物質は、固体酸素源又は金属源として用いるものであり、鉄鉱石、ミルスケール、製鉄ダスト、Mn鉱石、Cr鉱石、Ni鉱石のうちの少なくとも1種を好適に用いることができる。このような金属酸化物を含有する物質を用いることにより、単に密度調整のみならず、不純物を酸化させて除去したり、還元することにより金属成分として回収したりすることができる。但し、硫黄分などを多く含む酸化鉄源等は溶湯の汚染の原因となるため好ましくない。金属酸化物を還元する際には還元剤が必要であるが、プラスチックからは炭素のみならず還元性の高い水素ガスや炭化水素ガスが発生するため、プラスチックが還元剤として有効に作用する。
【0048】
そして、炭素及び水素を主体とするプラスチックと密度調整用の物質とを混合混練し、円柱体状又は角柱体状に押出し成形する。その際、プラスチックの配合量は40mass%以上を確保する必要があり、好ましくは50mass%以上を確保する。押出し成形機としては押出しスクリューを用いた通常の押出し成形機を用いることができ、プラスチックと密度調整用物質とを外部から強制的に加熱しなくても、押出し時の摩擦熱により成形することができる。摩擦熱により、少なくとも成形体の表面に位置するプラスチックを溶融若しくは半溶融させることができ、成形体の形状を維持させることができるからである。当然ではあるが、外部から強制的に加熱してもよい。押出し成形機による長尺の成形体を所定の長さに切断して、プラスチックと密度調整用の物質とからなる成形体を製鋼用精錬剤として得る。
【0049】
このようして製造した成形体を、精錬容器内に収納された溶銑又は溶鋼を処理する製鋼精錬工程において、当該精錬容器における精錬中に精錬容器の上部から精錬容器内に投入する。
【0050】
特に転炉内に投入する際には、転炉炉口近傍での排ガスの上昇速度が10〜20m/secと速く、成形体が溶湯面又はスラグ面に到達する前にプラスチック分が燃焼したり分解したりして、プラスチックの燃焼熱が溶湯やスラグに着熱しない場合もあるが、上記形状への成形の際に、更に、成形体単体の見掛け密度を1100kg/m3 以上とし、且つ、成形体1個の質量を20g以上とすることにより、確実に溶湯面又はスラグ面に成形体を到達させることができる。
【0051】
成形体の見掛け密度、質量及び形状を、このように限定した理由は以下の通りである。すなわち、本発明者等は、円柱体状に押出し加工した成形体1個の質量を約30gに統一し、成形体単体の見掛け密度を800kg/m3 、1100kg/m3 及び2200kg/m3 の3水準に変更して、これら成形体を排ガスの上昇速度が約20m/secの条件で転炉炉口から炉内に投入し、その際の着熱量を調査した。調査結果を図1に示す。
【0052】
その結果、見掛け密度が800kg/m3 の成形体は排ガスとともに炉口から排出されてしまい、プラスチックの燃焼熱は溶湯及びスラグには着熱されなかったが、見掛け密度が1100kg/m3 の成形体ではプラスチック1kg当たり4600kJの計算熱余剰(計算熱余剰については実施例で説明する)すなわち着熱が認められ、見掛け密度が2200kg/m3 の成形体ではプラスチック1kg当たり5200kJの計算熱余剰が認められた。このように成形体単体の見掛け密度が1100kg/m3 以上であれば、成形体を溶湯面又はスラグ面に到達させることが可能であることが分かった。
【0053】
次いで、円柱体状に押出し加工した成形体の見掛け密度を1100kg/m3 に統一し、成形体1個の質量を10g、20g、30g及び40gの4水準に変更して、これら成形体を排ガスの上昇速度が約20m/secの条件で転炉炉口から炉内に投入した。その結果、成形体1個の質量が10gの成形体ではプラスチック1kg当たり2000kJの計算熱余剰が認められたにすぎなかった。すなわち、投入した50%以上の成形体は排ガスとともに排出されていることが分かった。一方、成形体1個の質量が20g以上の場合には、プラスチック1kg当たり約4600kJの計算熱余剰が認められた。このように成形体1個の質量が20g以上であれば、成形体を溶湯面又はスラグ面に到達させることが可能であることが分かった。
【0054】
ここで、成形体の形状に依存して空力抵抗係数(「形状係数」ともいう)は異なり、空力抵抗係数が大きい成形体ほど上昇流の影響を受け、炉内から排出され易くなる。上記の試験で用いた円柱体状の成形体では、空力抵抗係数が1.0程度となる。すなわち、空力抵抗係数が1.0以下の形状であれば、上記の試験と同等若しくは同等以上の計算熱余剰が期待できる。角柱体は円柱体と同等の空力抵抗係数であり、従って、成形体が角柱体の場合には、上記試験と同様に成形体を溶湯面又はスラグ面に到達させることができる。
【0055】
このようにして製造した成形体を熱源として使用する場合には、製鋼精錬工程の処理初期の段階に添加しても又処理末期の段階に添加しても同等の効果を発揮するが、還元剤として使用する場合には、添加時期を還元される対象物が存在する時期に合わせる必要があり、自ずと添加時期は決まってくる。この観点から、転炉を用いた溶銑の脱炭精錬の場合には、脱炭精錬の末期すなわち脱炭反応が酸素供給律速から炭素移動律速に変わった時点以降に成形体を添加する。尚、還元剤として使用した場合も、当然ながら熱源としての効果が発揮される。
【0056】
溶銑を脱炭する場合、一般に、脱炭反応速度は、脱炭速度が徐々に増加する第1期、脱炭速度が大きくて且つ安定している第2期、及び、脱炭速度が徐々に低下する第3期の3つの期間に大別される。吹錬初期の第1期は、脱炭速度が時間と共に増大する時期であり、吹錬初期の脱炭速度が小さいのは、鉄浴温度が低く、又、溶銑中のSi等が優先的に酸化するためである。第2期は鉄浴温度が上昇し、火点への浴中炭素の移動速度が十分大きく、供給される酸素がほぼ100%脱炭に消費され、供給酸素量に比例して脱炭速度が決定される時期であり、この第2期が酸素供給律速の時期である。第3期は脱炭が進み、鉄浴中の炭素濃度が低下して、火点への浴中炭素の移動速度が反応を律速し、脱炭速度が低下してくる時期である。この第3期が炭素移動律速の時期である。本発明においては、第3期即ち脱炭反応が炭素移動律速になった以降に、上記成形体を転炉内に投入する。これ以前から投入しても構わないが、スラグや金属酸化物の還元には有効ではない。
【0057】
脱炭反応が酸素供給律速の場合には、供給される酸素は優先的に溶銑中の炭素と反応するため、鉄の酸化は抑えられ、スラグ中の鉄酸化物濃度は上昇しない。しかし、溶銑中の炭素濃度が低下して脱炭反応が炭素移動律速の領域になると、供給される酸素が過剰になるため、供給された酸素は鉄と反応して酸化鉄が形成され、スラグ中の鉄酸化物濃度が上昇する。この鉄酸化物濃度が上昇する時期に合わせて上記成形体を添加することで、プラスチックによる鉄酸化物の還元反応が効率的に起こり、スラグ中の鉄酸化物濃度の上昇を抑えることが可能となり、その結果、鉄歩留まりやMn及びCr等の合金成分の歩留まりを高めることが達成される。
【0058】
脱炭反応が、酸素供給律速から炭素移動律速に変わる時期は操業条件によって異なるが、例えば、溶銑中炭素濃度が0.6mass%程度になった時点である。この時点は、種々の方法によって捉えることができる。1つの方法として、転炉排ガスの成分を分析することから把握することができる。炭素移動律速の領域では脱炭酸素効率(供給した酸素のうちで脱炭に使用された比率)が低下するため、送酸量に対して生成されるCOガス量が低下する。従って、排ガス中のCOガス流量及びCO2 ガス流量を連続的に捉え、これらから各時点の脱炭量(モル数)を求め、この脱炭量をその時点の送酸量(モル数)で除算した数値、すなわち脱炭酸素効率を連続的に監視することで、反応律速が変わる時点を把握することができる。具体的には、酸素供給律速の領域では、ほぼ100%であった脱炭酸素効率が、炭素移動律速の領域になると70%程度以下まで低下する。従って、脱炭酸素効率が100%から例えば70%以下に低下した時点を、反応律速が変わった時点とすることができる。このように、転炉排ガス組成を連続的に分析することにより、反応律速が変わる時点を確実に把握することができる。
【0059】
又、他の方法としては、積算送酸量から求めることができる。酸素供給律速の領域においては、供給される酸素のほとんど全てが溶銑中の炭素と反応するため、精錬開始前に溶銑中の炭素濃度を分析しておき、溶銑中炭素濃度が0.6mass%程度になるまでの必要酸素量を求め、この値と積算送酸量が一致する時点を、反応律速の変更時点とすることができる。具体的には、積算送酸量が計画した総送酸量(1回の精錬で使用する総酸素量)の80%程度になった時点であり、更に具体的に表現すれば、脱炭吹錬終点よりも2分ないしは2分30秒程度前の時期である。
【0060】
この場合、脱炭精錬が行われる転炉内にはMnやCr等の合金成分の金属酸化物を添加することが好ましい。添加したこれらの金属酸化物は、一部スラグ中に溶け込み、脱炭精錬中、溶銑中の炭素により還元され、鉄浴中の合金成分濃度が上昇する。そして、精錬末期にはプラスチックによってスラグが還元され、スラグの酸素ポテンシャルが低く抑えられるので、MnやCr等の合金成分の還元反応が促進され、高い歩留まりを得ることができる。その結果、高価な合金剤を削減することが可能となり、製造コストが大幅に削減される。Mn酸化物としては、Mn鉱石、Mn焼結鉱、Mnを5mass%以上含有する製鋼スラグ等、Cr酸化物としてはCr鉱石を用いることができる。
【0061】
転炉内に合金成分の金属酸化物を添加する場合、転炉内のスラグ量が多いとスラグ中に留まる合金成分量が多くなり、歩留まりが低下する。従って、これを抑制するために、転炉内のスラグ量を溶鋼トン当たり30kg(以下「kg/T」と記す)以下とすることが好ましい。生石灰等の媒溶剤の添加量を15kg/T以下に制限することにより、精錬終点における転炉内のスラグ量を30kg/T以下に規定することができる。
【0062】
【実施例】
[実施例1]
この実施例では密度調整用物質としてMn鉱石を用いた例について説明する。先ず、Mn鉱石を焼結させてMnの酸化度を低下させたものと、ポリエチレン及びポリプロピレンの合計が全体の70mass%となるように配合したプラスチックとを混合混練し、1個の質量が30〜40g、単体の見掛け密度が約1200kg/m3 の円柱体状の押出し成形体を製造した。次いで、この押出し成形体を製鋼用精錬剤として転炉吹錬中の溶湯上にフィーダーを介して転炉炉口から連続的に供給し、操業中のMn鉱石歩留と含有させたプラスチックの燃焼熱の利用度とを評価した。
【0063】
試験に当たっては、転炉炉体の履歴、装入物の温度、装入物の量、及び炉内での反応熱を考慮して終点温度を正確に推定するシステムを用いた。このシステムは、本来はプラスチックを配合していないMn鉱石を用いることを前提として計算するシステムであるため、試験に供した押出し成形体中のMn鉱石純分を算出し、プラスチック等が有効に熱源として作用していれば終点の温度が高くなり、そのため温度調整用に吹錬末期に投入する鉄鉱石の量が配合したプラスチックの量に応じて増加することになる。
【0064】
図2は、横軸に配合したプラスチックの量をとり、縦軸に温度調整に用いた鉄鉱石の量から換算した熱付加量つまり熱余剰をとって、これらの関係を示す図である。横軸のプラスチックの量は投入したプラスチックの量を転炉に装入した溶銑の量で除した値を用いた。プラスチックは物質によって燃焼熱が異なるため代表的な物質の熱量に基準化した量を用いている。又、ここではプラスチックの投入がないものとして熱計算を行ったため、プラスチックの燃焼熱などによって溶鋼の温度実績が計算による推定値より高くなる。そのため終点温度を計算通りに下げることが必要であり、その冷却剤として鉄鉱石を利用したため、その冷却能から熱余剰を計算によって求めた。この図から、配合したプラスチックの量が増加するに伴って終点での熱余剰すなわち熱的余裕度が増加し、結果として吹錬末期に鉄鉱石を多く投入したことが分かる。熱余剰はプラスチック等の投入量が増加するに伴って増加し、その傾きは計算によって求めたプラスチックの昇温能力とほぼ一致した。つまり、この熱余剰は、プラスチックの燃焼熱からプラスチックの分解熱及び発生ガスへの顕熱ロスなどを除いた熱量と一致することが確認された。
【0065】
以上から、Mn鉱石を密度調整用物質とした、プラスチックの押出し成形体を製鋼用精錬剤として転炉内に投入することにより、プラスチックが有効に溶湯面に供給されて熱源として有効に利用することができ、且つ、プラスチックによってMn鉱石の還元に必要な熱を与えることができることが確認された。
【0066】
[実施例2]
この実施例では密度調整用物質として、所謂OGダストと呼ばれる製鉄ダストを用いた例について説明する。先ず、製鉄ダストと、ポリエチレン及びポリプロピレンの合計が全体の85mass%となるように配合したプラスチックとを混合混練し、1個の質量が50〜55g、見掛け密度が約1100kg/m3 の円柱体状の押出し成形体を製造した。次いで、この押出し成形体を製鋼用精錬剤として転炉吹錬中の溶湯上にフィーダーを介して転炉炉口から連続的に供給し、操業中のプラスチックの燃焼熱の利用度とを評価した。
【0067】
試験に当たっては、上記の実施例1と同一の転炉を用い、そして、前述した実施例1と同一方法によりプラスチックの燃焼熱による熱余裕を算出した。その結果、プラスチックの燃焼熱による熱余裕は、実施例1の結果と同等であり、プラスチックを3kg/T投入した際の熱余裕は42000kJ/Tであった。
【0068】
以上から、製鉄ダストを密度調整用物質とした、プラスチックの押出し成形体を製鋼用精錬剤として転炉内に投入することにより、プラスチックが有効に溶湯面に供給されて熱源として有効に利用することができ、且つ、プラスチックによって製鉄ダストの還元に必要な熱を与えることができることが確認された。
【0069】
[実施例3]
この実施例では密度調整用物質として製鋼ダスト(OGダスト)を用い、容量が250トンの転炉における溶銑の脱炭精錬時に、押出し成形体の添加時期を変更させて、添加時期とスラグの還元状況との関係を調査した試験について説明する。先ず、製鉄ダストと、ポリエチレン及びポリプロピレンの合計が全体の70mass%となるように配合したプラスチックとを混合混練し、1個の質量が50〜55g、見掛け密度が約1200kg/m3 の円柱体状の押出し成形体を製造した。次いで、この押出し成形体を、投入時期を変更して、転炉脱炭吹錬中の溶湯上にフィーダーを介して転炉炉口から投入し、炉内スラグ中の鉄酸化物の還元状況を調査した。押出し成形体の投入量は全ての試験で1kg/Tの一定量とし、1分間に亘って炉内に投入した。添加時期は、積算送酸量が、計画した総送酸量の70%を越えた時期から100%の範囲、更には、送酸終了後にも添加した。スラグの還元状況は、出鋼時にスラグを採取してスラグ中の鉄酸化物濃度(T.Fe濃度)を調査した。又、全ての試験において転炉内のスラグ量が約17kg/Tの一定量になるように、造滓剤の添加量を調整した。
【0070】
図3は、横軸を押出し成形体の投入開始時期とし、縦軸をスラグ中のT.Fe濃度指数として両者の関係を示す図である。横軸の積算送酸量が100%の時点が送酸終了時点であり、縦軸は、押出し成形体を使用せずに、その他の条件を同一として精錬した場合(従来方法)の精錬終了時のスラグ中T.Fe濃度の平均値を1.0として指数化したものである。
【0071】
図3から明らかなように、押出し成形体を、積算送酸量が80%よりも以前に投入した場合にはスラグ中のT.Fe濃度は従来方法の場合と大差なく、スラグは有効には還元されていない。これに対して、積算送酸量が80%を越えてから投入した場合には、従来方法の場合に比較して40%もスラグ中のT.Fe濃度は減少し、効率的に還元されることが分かった。又、送酸終了後に添加した場合には、スラグは還元されるものの、その効果は少ないことが分かった。
【0072】
尚、転炉排ガスの分析結果から、積算送酸量が80%を越えた時点から、脱炭反応は炭素移動律速になっていることが確認できた。又、押出し成形体を積算送酸量が80%を越えてから投入した場合には、転炉内に添加したMn鉱石の歩留まりも、従来方法の場合に較べて大幅に向上していることが確認できた。
【0073】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、製鋼精錬工程において、熱付加のための熱源又は鉄酸化物等の還元剤としてプラスチックを用い、プラスチックと密度調整用物質との混合物の押出し成形体であって、成形体のプラスチック含有量が50mass%以上、成形体単体の見掛け密度が1100kg/m3 以上であり、成形体1個の質量が20g以上である成形体を製鋼用精錬剤として使用するので、熱源及び還元剤を不純物の少ないものとすることができると共に、容器下部から吹き上げる上昇流に流されることなく、有効に炭素及び水素を主体とするプラスチックを溶湯面又はスラグ面に到達させることが可能となり、効率的に熱付加並びに還元を行うことができる。又、本発明によれば、スラグ中の鉄酸化物濃度が上昇する脱炭反応の末期に前記製鋼用精錬剤を添加するので、スラグの酸素ポテンシャルの上昇が抑制され、鉄歩留まりやMn及びCr等の合金成分の歩留まりを高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】押出し成形体単体の見掛け密度と着熱量との関係を示す図である。
【図2】実施例1における配合したプラスチックの量と温度調整に用いた鉄鉱石の量から換算した熱余剰との関係を示す図である。
【図3】実施例3における押出し成形体の投入時期とスラグ中のT.Feとの関係を示す図である。

Claims (7)

  1. 水素及び炭素を主体とするプラスチックであって、硫黄、燐、窒素、アルミニウム及び珪素の含有量が可及的に少ないプラスチックと金属又は金属酸化物を含有する物質との混合物が、押出し成形されて製造される成形体からなり、還元剤として脱炭反応が酸素供給律速から炭素移動律速に変わった時点以降に添加される製鋼用精錬剤であって、前記成形体のプラスチック配合量は50mass%以上であり、前記成形体単体の見掛け密度は1100kg/m3 以上であり、前記成形体1個の質量は20g以上であることを特徴とする製鋼用精錬剤。
  2. 前記金属酸化物を含有する物質は、鉄鉱石、ミルスケール、製鉄ダスト、Mn鉱石、Cr鉱石、Ni鉱石のうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の製鋼用精錬剤。
  3. 酸素又は酸化鉄を用いて精錬容器内の溶銑に対して脱炭処理を施す際に、脱炭反応が酸素供給律速から炭素移動律速に変わった時点以降に、請求項1又は請求項2に記載の製鋼用精錬剤を、前記精錬容器の上部から精錬容器内に投入して、精錬容器内のスラグ若しくは溶湯成分の酸化物を還元することを特徴とする製鋼方法。
  4. 前記精錬容器が転炉であることを特徴とする請求項に記載の製鋼方法。
  5. 溶銑中の炭素を除去する際に、合金成分の金属酸化物を精錬容器内に添加し、当該金属酸化物を溶銑中の炭素によって還元することを特徴とする請求項又は請求項に記載の製鋼方法。
  6. 前記金属酸化物は、Mn酸化物又はCr酸化物であることを特徴とする請求項に記載の製鋼方法。
  7. 前記精錬容器から排出される排ガスの成分分析に基づいて、脱炭反応が酸素供給律速から炭素移動律速に変わった時点を把握することを特徴とする請求項ないし請求項の何れか1つに記載の製鋼方法。
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